特許第6243398号(P6243398)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243398投写ディスプレイおよび全体画像を投写する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243398
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】投写ディスプレイおよび全体画像を投写する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20171127BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20171127BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20171127BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20171127BHJP
   G02B 3/08 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G02B27/02 Z
   H04N5/64 511A
   H04N5/74 A
   G02B3/00 A
   G02B3/08
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-502361(P2015-502361)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公表番号】特表2015-518575(P2015-518575A)
(43)【公表日】2015年7月2日
(86)【国際出願番号】EP2013056749
(87)【国際公開番号】WO2013144311
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年11月19日
(31)【優先権主張番号】102012205164.3
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ズィーラー マルセル
(72)【発明者】
【氏名】クラウス マティーアス
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−328261(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/035607(WO,A1)
【文献】 特開2002−122806(JP,A)
【文献】 特開2009−145617(JP,A)
【文献】 米国特許第05883606(US,A)
【文献】 特開2012−003232(JP,A)
【文献】 特開2003−043409(JP,A)
【文献】 特開2008−241822(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/066475(WO,A1)
【文献】 特表2001−525564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/02
H04N 5/64
H04N 5/74
G02B 3/00 − 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドマウント・ディスプレイにおいて用い、投写光学系アレイ(120)が眼の近くに配置されるとき、仮想の全体画像(150)を表示するように、前記投写光学系アレイ(120)を備える投写ディスプレイ(100)は、
表示素子(110)のサブ領域(115)の二次元配列にサブ画像を表示するための前記表示素子(110)と、
前記投写光学系アレイ(120)は、画像平面(140)においてペアをなす前記サブ画像の投写(135)の相互領域重複(135)が全てのペア(137)に対して0.1と0.8の間になるよう、前記画像平面(140)における全体画像(150)への前記サブ画像の投写(135)を重畳するように実装される投写光学的素子(125)の二次元配列(122)を備え、完全な重複は1に対応し、且つ重複なしは0に対応し、
前記全体画像(150)が前記仮想の全体画像であり、
前記投写光学的素子(125)は前記表示素子(110)のサブ領域(115)にそれぞれ割り当てられ、前記表示素子(110)は、前記投写光学的素子(125)に割り当てられる前記表示素子(110)の前記サブ領域(115)における前記投写光学系アレイ(120)の光軸(101)への距離が大きくなるにともない、前記表示素子(110)に出力されて表示されるためのますます偏心される全体画像の一部であるサブ画像(215)を表示するために実装され、そこでは、前記光軸(101)が前記表示素子(110)のサブ領域(115)の二次元配列の中心を通る、投写ディスプレイ(100)。
【請求項2】
前記画像平面(140)における前記投写(135)の重複は、また、前記投写光学的素子(125)における互いの隣接でもある、請求項1に記載の投写ディスプレイ(100)。
【請求項3】
前記投写光学的素子(125)は、前記表示素子(110)の前記サブ領域(115)にそれぞれ割り当てられ、そこでは、前記投写光学的素子(125)のピッチ(127)は、前記投写光学的素子(125)に割り当てられる前記表示素子(110)の前記サブ領域(115)のピッチ(117)と等しい、請求項1または請求項2に記載の投写ディスプレイ(100)。
【請求項4】
前記投写光学系アレイ(120)は、前記投写ディスプレイ(100)の使用者の瞳孔(103)に前記サブ画像の投写(135)を導くために、投写方向(111)における前記投写光学的素子(125)の二次元配列(122)の下流に視野レンズ(130)をさらに備え、そうすると、前記画像平面(140)は仮想の画像平面であり、前記表示素子(110)および前記投写光学的素子(125)の二次元配列(122)が前記画像平面(140)と前記視野レンズ(130)との間に配置される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の投写ディスプレイ(100)。
【請求項5】
前記視野レンズ(130)はフレネル・レンズである、請求項4に記載の投写ディスプレイ(100)。
【請求項6】
前記投写光学的素子(125)の二次元配列(122)は、複数の平凸または両凸の投写レンズを備える、請求項1から請求項5のいずれかに記載の投写ディスプレイ(100)。
【請求項7】
前記投写光学系アレイ(120)は、前記投写方向(111)において互いの上に積み重ねられる投写光学的素子の複数の二次元配列を備え、そこでは、前記投写光学的素子の複数の二次元配列が前記投写光学系アレイ(120)の収差を補正するように実装される、請求項1から請求項6のいずれかに記載の投写ディスプレイ(100)。
【請求項8】
前記表示素子(110)は、前記サブ画像(215)の縁(218)に向かって連続的に低下する画像輝度を有する前記サブ画像(215)のそれぞれを表示するように実装され、その結果、前記画像平面(140)の投写(135)の重複領域(139)における人為現象が抑制または防止される、請求項1から請求項7のいずれかに記載の投写ディスプレイ(100)。
【請求項9】
前記投写光学的素子(122)の二次元配列(125)は、複数のレンズ断片(425)を備え、前記複数のレンズ断片(425)は、それらの隙間に関して異なって偏心され、そこでは、前記複数のレンズ断片(425)が前記投写ディスプレイ(100)の使用者の瞳孔(103)に前記サブ画像の投写を導くように実装される、請求項1から請求項8のいずれかに記載の投写ディスプレイ(100)。
【請求項10】
前記表示素子(110)は、全てのサブ画像(215)を前記表示素子(110)の前記サブ領域(115)の二次元配列の側面拡張の方向(212)において均一に変位させるように実装され、そこでは、前記サブ画像(215)の均一な変位が、前記投写光学系アレイ(120)の光軸(101)に関して、使用者の眼球の被測定部位に依存して調節可能である、請求項1から請求項9のいずれかに記載の投写ディスプレイ(100)。
【請求項11】
前記表示素子(110)は透過型または反射型の表示素子である、請求項1から請求項10のいずれかに記載の投写ディスプレイ(100)。
【請求項12】
ヘッドマウント・ディスプレイにおいて用い、投写光学系アレイ(120)が眼の近くに配置されるとき、仮想の全体画像(150)を表示するように、前記投写光学系アレイ(120)を用いる方法であって、
前記方法は、
表示素子(110)のサブ領域(115)の二次元配列における表示素子(110)を用いてサブ画像を表示するステップと、
投写光学系アレイ(120)によって、画像平面(140)における全体画像(150)にサブ画像の投写(135)を重畳するステップとを備え、前記投写光学系アレイ(120)は、画像平面(140)においてペアをなすサブ画像の投写(135)の相互領域重複(139)が全てのペア(137)に対して0.1と0.8の間になるよう、投写光学的素子(125)の二次元配列(122)を備え、完全な重複は1に対応し、且つ重複なしは0に対応し、
前記全体画像(150)が前記仮想の全体画像であり、
前記投写光学的素子(125)は前記表示素子(110)のサブ領域(115)にそれぞれ割り当てられ、前記表示素子(110)は、前記投写光学的素子(125)に割り当てられる前記表示素子(110)の前記サブ領域(115)における前記投写光学系アレイ(120)の光軸(101)への距離が大きくなるにともない、前記表示素子(110)に出力されて表示されるためのますます偏心される全体画像の一部であるサブ画像(215)を表示するために実装され、そこでは、前記光軸(101)が前記表示素子(110)のサブ領域(115)の二次元配列の中心を通る、全体画像を投写する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、投写ディスプレイおよび全体画像を投写する方法に関する。本発明のさらなる実施形態は、多チャンネル光学系を用いて仮想の画像を得るための投写ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)は、一般に、明視距離と無限遠との間の視覚化に適した距離にマイクロ・ディスプレイをマップする接眼レンズ光学系(ocular optics)に関連するLCD(液晶ディスプレイ)、LCoS(登録商標)(シリコン基板上の液晶)、OLED(有機発光ダイオード)を用いるマイクロ・ディスプレイなどのマイクロ・ディスプレイを用いて実現される。接眼レンズの焦点距離fOkが、マイクロ・ディスプレイの対角線Dと共に、ヘッドマウント・ディスプレイの視野(FOV)を決定する。
【0003】
【0004】
2/3の模範的な対角線スクリーンと共に既存のマイクロ表示素子(micro imagers)を有する40°〜60°の範囲のヘッドマウント・ディスプレイの一般的な視野を得るため、15mm〜23mmの間の範囲の接眼レンズの焦点長さが要求される。ここで、接眼レンズの瞳孔直径Dpupilが、見る人の眼が動作可能な範囲(眼球運動ボックス、EMB)の寸法を決定する。瞳孔寸法またはEMBは、焦点幅fOkと接眼レンズのF値f/#との比から得られる。
【0005】
【0006】
約f/2.8の範囲内の模範的なF値に対して、5mm〜8mmの大きさ順のEMBが得られる。ここで、二つの主な問題が生じる。一方では、比較的大きい必要な接眼レンズの焦点長さが大きいシステム寸法となり、ヘッドマウント・ディスプレイの付け心地を悪くする。他方では、大きいFOVと共に大きいEMBに対して必要な小さいF値は、マッピング誤りの補正をより難しくし、且つその寸法および質量が故に、接眼レンズ光学系の複雑さをさらに増大させる。
【0007】
与えられる焦点長さで光学的素子の寸法を小さくするため、従来技術では、例えば、非特許文献1における「キャノン・ビデオ・シースルー」システムなどの数回折り重ねられる光学的パス、または非特許文献2などにおける眼の中へのミラーニングのための後述する画像ガイドの側面部分の方向における接眼レンズ光学系の変位などが用いられる。これら既知の光学系機構の主な欠点は、結果として、比較的に大きいシステム寸法および質量になることのみならず、非特許文献1などにおける従来技術による収差補正のために必要な複雑な自由形式の光学系、または非特許文献2などにおける非常に複雑な製造の画像ガイド構成要素になることである。
【0008】
従来技術に記載されている代わりとなる光学的な手法は、レンズ・アレイ(レンズ格子)光学系を用いている。そこでは、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載されているように、一つの小型レンズ(レンズ要素)は、マイクロ表示素子それぞれの1ピクセルに割り当てられる。この既知の代わりとなる光学系機構は、光学系の非常に小さい構造長さを約束する一方で、それは、非常に少ない表示可能なピクセル数および非常に低い透過のみを許す。結果として、ネットワークから独立する装置にとって、低い画像輝度および短い電池の実行時間になる。
【0009】
さらなる既知の手法は、特許文献5に記載されているように、アレイ・プロジェクタまたはラスタ・プロジェクタの使用法である。この手法を用いて、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載されているアレイ光学系またはラスタ光学系と比較して、明らかにより高い画像輝度を得ることができる。しかしながら、多チャンネル投写に基づいた既知のアレイ・プロジェクタは、例えば、非特許文献1および非特許文献2などにおけるような1チャンネル光学系よりも表示可能なピクセル数がさらに劣るという欠点を有する。
【0010】
特許文献6は、大きい光学系ディスプレイを記載する。この大きい光学系ディスプレイは、より小さいディスプレイ装置のアレイが協働して完全な画像を表示するように、(それぞれが表示される画像の一部を表す、)より小さいディスプレイ装置またはモジュールのアレイを備える。ディスプレイ装置は、重複するサブ画像を生成するために、狭い縁を有さず、且つ隣接しないディスプレイ要素を用いることができる。「インターフェイス」そうでなければギャップである画像ピクセルは、重複するサブ画像の重複する領域などにおいて、画像データによって生成され、且つ表示される画像の中で正しい位置および輝度で表示される。
【0011】
特許文献7は、少なくとも一つの光源と、サブ領域の二次元配列に個々の画像を表示するように実装される少なくとも一つの反射型表示素子と、(個々の画像のマッピングが画像平面における全体画像に重複するために、一つの画像レベルそれぞれに対して少なくとも一つの表示素子の割り当てられるサブ領域をマップするように実装される、)投写光学的素子の二次元配列を有する投写光学系アレイ(projection optics array)と、一方では少なくとも一つの反射型表示素子と投写光学的素子の二次元アレイとの間の光路において、他方では少なくとも一つの光源と少なくとも一つの反射型表示素子との間の光路において配置される少なくとも一つのビーム・スプリッタ(beam
splitter)とを有する投写ディスプレイを記載する。
【0012】
特許文献1は、画像ディスプレイ器具(例えば、使用者の眼の網膜に対して正しいピッチでピクセルを投写することにより、高解像度の画像を複写することが可能な眼鏡型の画像ディスプレイ器具)を記載する。画像ディスプレイ器具は、マイクロレンズアレイを備える。マイクロレンズアレイの代わりに、フレネル・ゾーン・プレート・アレイ(Fresnel zone plate array)を用いることもできる。
【0013】
特許文献1に記載される投写システムの欠点は、一つのマイクロレンズそれぞれに対して、ただ一つの(シングルの)ディスプレイ・ピクセル(例えば、非常に少ないLEDチップまたはLCDピクセル)の割り当てである。このように、この既知の手法は、結果として、大きい側面の光学的素子寸法を有すると同時に、より少ない表示可能なピクセル数になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国第5,499,138号明細書
【特許文献2】米国第5,561,538号明細書
【特許文献3】米国第6,816,313B2号明細書
【特許文献4】米国第2008/020473A1号明細書
【特許文献5】国際公開第2010/145784A1号
【特許文献6】米国第6,611,241B1号明細書
【特許文献7】国際公開第2011/157632A1号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A. Takagi, S. Yamazaki, Y. Saito, and N. Taniguchi "Development of a stereo video see-through HMD for AT systems", in Int. Symp. On Augmented Reality, Munich, Germany, Oct. 5-6 2000
【非特許文献2】Ichiro Kasai Yasushi, Yasushi Tanijiri, Takeshi Endo, Hiroaki Ueda "A Forgettable Near Eye Display", Proc. 4th Int. Symp. on Wearable Computers, ISWC 2000, Atlanta
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
それ故、より多い表示可能なピクセル数のための多チャンネル投写に、投写ディスプレイの小さい構造長さを併せ持つ従来技術のコンセプトが存在しないことが基本的な問題である。
【0017】
それ故、本発明の目的は、投写ディスプレイのより小さい構造長さと同時に、より多い表示可能なピクセル数を有する多チャンネル投写を可能とするコンセプトを提供することである。
【0018】
この目的は、請求項1に係る投写ディスプレイおよび請求項15に係る方法により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の実施形態は、表示素子のサブ領域の二次元配列におけるサブ画像を表示するための表示素子と、投写光学的素子の二次元配列を有する投写光学系アレイとを備える投写ディスプレイを提供する。投写光学系アレイは、画像平面においてペアをなすサブ画像の投写の相互領域重複が、結果として全てのペアに対して0.1と0.8の間になるよう、画像平面における全体画像へのサブ画像の投写を重畳するように実装される。ここで、投写ディスプレイは、全体画像が仮想の全体画像であるように実装される。
【発明の効果】
【0020】
そこでは、投写ディスプレイが、全体画像が仮想の全体画像であるように実装され、画像平面においてペアをなすサブ画像の投写の相互領域重複が結果として、全てのペアに対して0.1と0.8の間になるように、表示素子のサブ領域の二次元配列における表示素子にサブ画像が表示されるとき、および投写光学的素子の二次元配列を有する投写光学系アレイによりサブ画像の投写が画像平面において全体画像に重畳されるとき、上述したように、投写ディスプレイのより小さい構造長さと同時に、多チャンネル投写のより多い表示可能なピクセル数を得られることが、本発明の核心的な発想である。このように、一方では、多チャンネル投写のより多い表示可能なピクセル数(つまり、より高い画質)が得られ、他方では、同時に、投写ディスプレイのより小さい構造長さが実現され得る。ここで、サブ画像を表示することが用いられ得、且つ(仮想の)全体画像への画像平面におけるサブ画像の投写の特別な重複が用いられ得る。
【0021】
本発明の実施形態において、投写光学系アレイは、投写ディスプレイの使用者の瞳孔にサブ画像の投写を導くために、投写方向における投写光学的素子の二次元配列の下流に視野レンズ(field lens)をさらに備える。このようにして、画像平面は仮想の画像平面であり得、そこにおいて、表示素子および投写光学的素子の二次元配列は、画像平面(the same)と視野レンズとの間に配置される。
【0022】
本発明の実施形態において、表示素子は、サブ画像の縁に向かって連続的に低下する画像輝度を有するサブ画像のそれぞれを表示するように実装される。このように、画像平面の投写の重複領域における人為現象は、抑制または防止され得る。
【0023】
本発明の実施形態において、表示素子は、表示素子のサブ領域の二次元配列の側面拡張の方向に均一にサブ画像を変位させるように実装される。ここで、サブ画像の均一な変位は、投写光学系アレイの光軸に関する使用者の眼球の被測定部位に依存して調節し得る。このようにして、投写光学系アレイの光軸に関する使用者の眼球の分散(decentralization)の補償が得られ得る。この分散を補償することによって、ゴースト画像の認識が抑制され得または防止され得る。
【0024】
本発明の実施形態は、同じ(same)または等しい(equal)要素が同じ参照番号で示される添付図面に関する以下においてより詳細に記述されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a】本発明の一実施の形態に係る投写ディスプレイの側面図である。
図1b】創意に富んだ画像平面のサブ画像の投写の相互領域重複を示す概略図である。
図2a】創意に富んだ画像平面の全体画像を示す概略図である。
図2b】本発明の一実施の形態に係る表示素子のサブ領域の二次元配列のサブ画像を示す概略図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る表示素子のサブ領域の二次元配列のサブ画像を示す概略図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る投写光学的素子の二次元配列の側面図である。
図5a】本発明に係るサブ画像の変位を表すための表示素子の側面図である。
図5b】本発明に係るサブ画像の変位を表すための表示素子の側面図である。
図6a】表示可能な全体のピクセル数を得るための創意に富んだ数式を導くためのFOVの光路および分解の概略図である。
図6b】表示可能な全体のピクセル数を得るための創意に富んだ数式を導くためのFOVの光路および分解の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を図面に基づいてより詳細に後述する前に、以下の実施形態において、図面において同じ構成要素または機能的に等しい構成要素は、同じ参照番号を備えていることを留意されたい。このように、同じ参照番号を有する構成要素の説明は、異なる実施形態において相互に交換可能および/または適用可能である。
【0027】
図1aは、本発明の一実施の形態に係る投写ディスプレイ100の側面図を示す。図1aに示すように、投写ディスプレイ100は、表示素子(imager)110のサブ領域115の二次元配列にサブ画像を表示するための表示素子110を備える。さらに、図1aの投写ディスプレイ100は、投写光学的素子125の二次元配列122を有する投写光学系アレイ120を備える。図1bは、創意に富んだ画像平面におけるサブ画像の投写の相互領域重複を示す概略図である。図1aおよび図1bに関して、投写ディスプレイ100の投写光学系アレイ120は、画像平面140においてペアをなすサブ画像の投写135の相互領域重複139が結果として、全てのペア137に対して0.1と0.8の間になるよう、画像平面140における全体画像150へのサブ画像の投写135を重畳するように実装される。ここで、投写ディスプレイ100は、全体画像150が仮想の全体画像となるように実装される。全てのペアに対して0.1と0.8の間の相互領域重複を提供することによって、投写ディスプレイのより小さい構造長さと同時に、高い画質を有する多チャンネル投写が得られ得る。
【0028】
特に、投写ディスプレイ100は、全体画像150が(投写)スクリーンを必要としない仮想の全体画像であるように実装される。
【0029】
実施形態において、ペア137は、ペアをなして重複する投写135によって形成され得、且つペア137(the same)(それらの全て)は、0.1と0.8の間である相互領域重複139を備える。ここで、図1bも参照して、ここでは、画像平面140において重複し得る全ての(隣接する)ペア137が模範的に示される。
【0030】
さらに、図6aおよび図6bを参照する。図6aおよび図6bは、角度空間(angular space)において隣接する投写光学的素子125(またはマイクロレンズ)によって投写される視野(FOV)の一部の重複に基づいて記載される。実施形態において、直接に隣接するだけでなく、「次の後」の隣同士(つまり、二次元配列122において直接に並んで配置されない投写光学的素子125の投写135)が重複することが可能である。これは、図3の文字「B」の投写において、さらに模範的に示される。
【0031】
このように、実施形態において、次の後またはさらにもっと遠くに離れた投写(または、隣接するサブ画像)の重複(つまり「ペアリング」)が実現され得る。言い換えると、直接に隣接しない投写光学的素子125(つまり「小型レンズ」)によって引き起こされるFOVの一部の投写または表示される重複が可能となる。
【0032】
相互領域重複は、基本的に、図6aおよび図6bに基づいて模範的に導き出される創意に富んだ数式6のパラメータσに対応することを留意されたい。ここで、σ=0は重複が存在しないという場合を記載する。一方で、σ=1は完全な重複が存在するという場合を記載する。実施形態において、相互領域重複は、0より大きく且つ1より小さい。これは、完全ではなく部分的な重複があることを意味する。
【0033】
実施形態において、マイクロレンズの焦点距離fおよび視野レンズのFの選択によって一意的にまたは明確に決定される、創意に富んだ数式6に従う個々の画像コンテンツの重複は、特に有利である。
【0034】
図1aおよび図1bによる実施形態において、投写光学系アレイ120は、ペア137の投写の相互領域重複139の配列の中心的傾向が0.2と0.8の間となるよう、画像平面140における全体画像150へのサブ画像の投写135を重畳するように実装され得る。相互領域重複の配列の中心的傾向は、例えば、0.5の値を有し得る。概して、この値は、画像平面における全体画像の表示に高い画質を与える。
【0035】
図1aおよび図1bによる実施形態において、画像平面140において重複する投写135は、また、投写光学的素子125における互いの隣接である。言い換えると、相互領域重複139を形成する図1bに示されるペア137の投写は、図1aに示される投写光学系アレイ120の2つの隣接する投写光学的素子125に割り当てられる。
【0036】
実施形態において、投写光学的素子125は、表示素子110(図1aを参照)のサブ領域115にそれぞれ割り当てられる。ここで、投写光学的素子125のピッチ127は、投写光学的素子125に割り当てられる表示素子110のサブ領域115のピッチ117に等しい。投写光学的素子および割り当てられるサブ領域の等しいピッチを用いることにより、表示素子110の割り当てられるサブ領域115によって提供される個々のサブ画像が、無限遠にマップされ得る。ここで、表示素子110のサブ領域115の二次元配列から投写光学的素子125の二次元配列122の距離は、例えば、結果として、焦点距離fを有する投写光学的素子125の屈折力の追加と、焦点距離Fを有する視野レンズ130の屈折力とからなる焦点距離Fresに対応する。
【0037】
図1aおよび図1bによる実施形態において、投写光学系アレイ120は、さらに、投写ディスプレイ100の使用者の瞳孔103にサブ画像の投写135を導くために、投写方向111における投写光学的素子125の二次元配列122の下流に視野レンズ130を備える。このように、画像平面140は、仮想の画像平面であり得、そこでは、表示素子110および投写光学的素子125の二次元配列122が、画像平面140(the same)と視野レンズ130との間に配置される。使用者の眼105が図1aにおいて模式的に示される。
【0038】
図1aに模範的に示されるように、視野レンズ130は、光学的チャンネルが使用者の眼105へと瞳孔103を通り抜けるように、投写光学系アレイ120の光軸101の方向に関して、光学的チャンネルの角度102を変更するように実装され得る。好ましくは、視野レンズの焦点は、眼球の回転中心に近い。ここで、光学的チャンネルそれぞれは、投写方向111において個々の投写光学的素子125を通る光路を備える。画像平面上のサブ画像の投写に対していくつかの光学的チャンネルを用いることによって、多チャンネル投写が基本的に得られ得る。
【0039】
図1aに示される視野レンズ130は、例えば、フレネル・レンズ(Fresnel lens)であり得る。概して、フレネル・レンズは比較的薄い。それ故、視野レンズとしてフレネル・レンズを用いることにより、投写ディスプレイの構造長さがさらに小さくされ得る。
【0040】
このように、図1aは、投写ディスプレイ100の光学系機構の概略図を模範的に示す。図1aに示される実施形態の基本的な構造は、以下の通り要約され得る。透過される全ての画像コンテンツのサブ画像は、表示素子110またはマイクロ表示素子のアレイ(二次元の格子)のようにサブ領域115にそれぞれ表される。これらのサブ画像のそれぞれは、二次元配列122(レンズ・アレイ)の投写光学的素子125(例えば、マイクロレンズ)に割り当てられることによってマップされる。投写方向111における下流または次の視野レンズ130は、見る人の眼105への重複される方法において全てのサブ画像をマップする。図1aによるこのアレイによって、画像平面140において、使用者または見る人にとって、隣接する仮想の全体画像となる。
【0041】
図2aは、画像平面における創意に富んだ全体画像を示すための概略図を示す。図2aは、投写される仮想の全体画像150を模範的に示す。図2aの投写される仮想の全体画像150は、図1aに示される投写ディスプレイ100の画像平面140の中にある。画像平面140の中の全体画像150は、画像コンテンツ205を備える。例えば、全体画像150の画像コンテンツ205は、シンボル「ABC」(完全な画像コンテンツ)を表す。
【0042】
図2bは、本発明の一実施形態に係る表示素子のサブ領域の二次元配列におけるサブ画像を表すための概略図を示す。図2bは、表示素子110またはマイクロ・ディスプレイ上の一部またはサブ画像215を模範的に示す。図2bに示されるように、サブ画像215は、表示素子110のサブ領域115の二次元配列における表示素子110によって表示される。表示素子110のサブ領域115の二次元配列に出力されるサブ画像215は、画像コンテンツ205を有する図2aにおいて示される全体画像150の一部を表す。さらに、図1aに示される投写光学的素子125は、図2bに示される表示素子110のサブ領域115にそれぞれ割り当てられる。さらに、図2bの概略図は、投写光学系アレイ120の光軸101を示す。図2bに示される光軸101は、基本的に、表示素子110のサブ領域115の二次元配列の中心を通る。
【0043】
図2bに示される実施の形態において、サブ画像215(the same)が表示素子110に出力されて表示されるためのますます偏心される全体画像の一部であるように、表示素子110が、投写光学系アレイ120の光軸101からの距離が大きくなるにともない、投写光学的素子125に割り当てられる表示素子110のサブ領域115におけるサブ画像215を表示するために実装される。表示素子110に出力されて表示される全体画像は、基本的に画像平面140に画像コンテンツ205を有する、投写される仮想の全体画像150に対応する。
【0044】
実施形態において、光軸101は、自ら(the same)が表示素子110のサブ領域115の二次元配列の中心を基本的に通り抜けるように定められる。
反射系の実施例も、以下に提示する。
【0045】
図2bにおいて、光軸101に対して最も小さい距離を有する表示素子110のサブ領域に表されるサブ画像213と比較して、光軸101までより大きい距離を有する表示素子110のサブ領域で表されるサブ画像217−1、217−2は、表示素子110に表示および出力される全体画像の一部がより偏心される。サブ画像213は、例えば、投写される全体画像150の画像コンテンツにとっての比較的中央の一部(例えば、シンボル「B」)を表す。一方で、サブ画像217−1、217−2は、投写される全体画像150の画像コンテンツ205にとってのより偏心された一部(例えば、シンボル「A」または「C」)を表す。いくつかの光学的チャンネルにわたる多チャンネル投写によって、サブ画像215、または表示素子110に表示および出力されるますますより偏心された全体画像の一部は、画像平面140における全体画像150に重畳され得る。このように、画像平面140において、完全な画像コンテンツ(例えば、「ABC」)を有する投写される仮想の全体画像150になる。
【0046】
図3は、本発明の一実施形態に係る表示素子のサブ領域の二次元配列におけるサブ画像を表すための概略図を示す。図3は、投写される仮想の全体画像における人為現象(artefacts)を抑制するための表示素子の縁の上のサブ画像の画像輝度の連続的な縁低下を模範的に示す。図3の実施形態は、サブ画像215が表示素子110のサブ領域115の二次元配列において表されることについて、表示素子110を再び示す。図3において示されるサブ画像215は、例えば、図2bの実施形態に基づいて述べられたように、全体画像の一部が表示素子110に出力され、それが表示されるように、ますます偏心され得る。
【0047】
図3による実施形態において、表示素子110は、サブ画像215の縁218の方へ連続的に低下する画像輝度を有するサブ画像215のそれぞれを表示するように実装され得る。このことにより、画像平面の投写の重複する領域における人為現象は、抑制または防止され得る。
【0048】
表示素子110の上のサブ画像それぞれの画像輝度は、例えば、中心領域を囲む縁領域(縁218)よりも、サブ画像215の中心領域のほうがより高いように調節され得る。同時に、画像輝度は、自ら(the same)が最大値から最小値まで単調に低くなるように調節され得る。これは、画像輝度の連続的な縁低下を模範的に記述する。図3の実施形態において、模範的に画像輝度が連続的に低下することを用いることによって人為現象が抑制または防止される重複する領域は、図1bに示される画像平面140におけるサブ画像135の投写135の相互領域重複139に対応する。
【0049】
言い換えると、図3に示される実施形態において、表示素子は、重畳される全体画像における輝度上昇を抑制するために、表示素子の上のサブ画像の縁で画像輝度が連続的に低下するように実装され得る。
【0050】
図4は、本発明の一実施形態に係る投写光学的素子の二次元配列の側面図を示す。図4の側面図は、サブ領域115の二次元配列を有する表示素子110、および投写ディスプレイ100の投写光学的素子125の二次元配列122と共に表示素子110を示す。図4に示される実施形態において、投写光学的素子125は、表示素子110のサブ領域115にそれぞれ割り当てられる。図1aによる実施形態と同様に、図4に示される実施形態における投写光学的素子125のピッチ127は、投写光学的素子125に割り当てられる表示素子110のサブ領域115のピッチ117と等しい。
【0051】
実施形態において、投写光学的素子125の二次元配列122は、これらの隙間(aperture)に関して異なって偏心される複数のレンズ断片(lens segments)425からなる。ここで、複数のレンズ断片425は、図4に模範的に示されるように、投写ディスプレイ100の使用者の瞳孔103にサブ画像の投写を導くように実装される。いくつかの異なって偏心されるレンズ断片425を用いることによって、表示素子110のサブ領域115によって出力されるサブ画像の投写は、投写方向111における下流に視野レンズ(例えば、図1の視野レンズ130)を必要とすることなく、使用者の瞳孔103に直接的に導かれ得る。このような下流の視野レンズの機能は、例えば、異なって偏心されるレンズ断片425の全部によって備えられ得る。
【0052】
円401の中に、隙間に関して異なって偏心されるレンズ断片425が、拡大方式で示される。円401の中において、拡大方式で示されるレンズ断片425は、レンズ断片それぞれの隙間とは異なる偏心を有するレンズ頂点427からなる。レンズ頂点427の異なる偏心を備えることによって、投写方向111における下流に視野レンズ130と共に投写光学的素子125の二次元配列122を有するのと同じ効果が、単に複数のレンズ断片425によって得ることができる。
【0053】
言い換えると、図4に示される実施形態において、異なって偏心されるレンズ断片からなる小型レンズを含むレンズ・アレイを用いることによって、視野レンズの光学的な機能は、レンズ・アレイにまとめることができる。したがって、独立した視野レンズは、もはや必要ではない。
【0054】
図5aおよび図5bは、本発明の実施形態に係るサブ画像の変位を表すための表示素子の平面図を示す。図5aに示される実施形態において、表示素子110は、投写距離を調節するために、サブ画像215の中心201の間の距離を拡大まはた縮小させるように実装される。図5aは、二つの異なる設定で表示素子110に表されるサブ画像215を示す。さらに、図5aは、サブ画像215が表されることに関する投写光学系アレイ120の光軸101を示す。表示素子110の上の光軸101に関するサブ画像215の二つの異なる設定は、基本的に、画像平面に投写される仮想の全体画像にとっての二つの異なる投写距離に対応する。第一の設定において、サブ画像215は破線によって示される。一方で、第2の設定において、サブ画像215は実線によって示される。さらに、サブ画像215の中心201は、第一の設置において×印によって示される。一方で、これらは第二の設定において点によって示される。
【0055】
表示素子110の第一および第二の設定を切り替えるとき、サブ画像215の中心201は、例えば、光軸101(変位ベクトル211)に関して、放射相称方式(radial symmetrical manner)で変位され得る。光軸101に関するサブ画像215の中心201の放射相称変位によって、サブ画像215の中心201の間の距離は、設定それぞれにおいて変わる。サブ画像215の中心201の間の距離は、例えば、第一の設定から第二の設定までの変位ベクトル211に沿う変位によって拡大または縮小され得る。これは、投写される仮想の全体画像の位置を調節すること、つまり投写距離を拡大もしくは縮小させることを可能とする。
【0056】
図5aによる実施形態において、表示素子の上の互いのサブ画像の距離をソフトウェア制御で変更することによって、見る人に対する仮想の画像の異なる距離は、したがって、弱い視力であっても使用可能なことを補償するために調節され得る。
【0057】
図5bは、図5aに示される実施形態と同様に、表示素子110の二つの異なる設定に対する中心201を有するサブ画像215を示す。第一の設定においてサブ画像215は実線によって、且つこれらの中心201は点によって示される。一方で、第二の設定においてサブ画像215は破線によって、且つこれらの中心201は×印によって示される。さらに、また、投写光学系アレイ120の光軸101が示される。
【0058】
図5bの実施形態において、表示素子110は、表示素子110のサブ領域の二次元配列の側面拡張の方向(変位ベクトル212の方向212)に均一に全てのサブ画像215を変位するように実装される。ここで、サブ画像215の均一な変位(つまり、同じ量による変位ベクトルの方向に対する全てのサブ画像215の中心201の変位)は、投写光学系アレイ120の光軸101に関する使用者の眼球の測定される視線方向に依存して設定され得る。使用者の眼球の測定される視線方向に依存するサブ画像215の均一な変位のために、投写光学系アレイ120の光軸101に関して使用者が目を細めることが補償され得る。これによって、再びゴースト画像の認識が抑制または防止され得、それは多チャンネル投写の画質をさらに向上させ得る。
【0059】
このように、図5bによる実施形態において、異なる斜視角度およびそれ故の投写ディスプレイの光軸に対する見る人の眼の偏心は、表示素子におけるサブ画像の均一な変位をソフトウェア制御することによって補償され得る。
【0060】
さらに、図5bによる実施形態において、投写ディスプレイの光軸に関する眼球の位置は、また、視漂追跡センサー(eye−tracking sensor)によっても決定され得る。センサーによって提供される測定量から、表示素子の上のサブ画像の偏心または均一な変位に対する設定値が導かれ得る。
【0061】
実施形態において、投写光学的素子125の二次元配列122は、複数の平凸または両凸の投写レンズからなる。図1aにおいて、投写光学的素子125は、複数の両凸投写レンズによって模範的に示される。
【0062】
実施形態において、投写光学系アレイ120は、投写方向111において互いの上に積み重ねられる複数の投写光学的素子の二次元配列からなる(図示せず)。ここで、複数の投写光学的素子の二次元配列は、投写光学系アレイ120の正しい収差に実装され得る。複数(スタック)の投写光学的素子の二次元配列を備えることによって、個々の投写光学的素子による投写間のマッピング誤りの補正が得られ得る。
【0063】
実施形態において、表示素子110は、透過または反射する表示素子である。
【0064】
図6aおよび図6bは、表示可能な全体のピクセル数を得るための創意に富んだ数式を導くための光路と、視野つまりFOVの分解との概略図を示す。図6aは、無限遠にマッピングするための光路を模範的に示す。光路を示すために、以下に示す無限遠に仮想のマッピングをする場合は、投写光学的素子125の二次元配列122(レンズ・アレイ)と視野レンズ130との間の距離を無視することによって、模範的にみなされる。ここで、ディスプレイまたは表示素子110は、例えば、焦点長さfを有するアレイの個々の小型レンズ(つまり、個々の投写光学的素子125)と、焦点長さFを有する視野レンズ130とからなるシステムの焦点面の中にある。さらに、見る人の眼105は、例えば、距離Fで、視野レンズ130の焦点面の中にある。
【0065】
アレイの小型レンズによって透過される視野FOVlocalの一部は、サブ画像の拡張dと、結果として生じる全体の焦点長さFres=f*F/(f+F)との商から、無限遠に仮想の画像の投写に対する近軸近似が得られる。さらに、η=d/aで得られる表示素子におけるサブ画像の一次元の充填率(linear filing factor)(ここでのaは図6aに示される小型レンズの拡張)と、小型レンズのF値のf/#=f/aとが挿入される場合、次の式で得られる。
【0066】
【0067】
視野レンズは、視野の包括的な要素を生成する。
【0068】
【0069】
ここでのDは、図6aのいくつかのサブ画像215の全体的な拡張である。
【0070】
結果として生じる視野は、二つの要素の和から得られる。
【0071】
【0072】
可能な限り同質である隣接して投写されるサブ画像の間(つまり、画像平面140におけるサブ画像の投写135の間)の連結を得るために、投写される視野角(またはサブ画像の投写135)それぞれの部分的な重複が有利である。画像平面140におけるサブ画像の投写135の一次元の重複が算出される。
【0073】
【0074】
隣接するサブ画像の正確な連結は、σ=0(すなわち、少しも重複しない)に対応する。一方で、まったく正反対の完全な重複(同じサブ画像の多様な投写または多チャンネル投写の場合を記載する)は、σ=1に対応する。
【0075】
この光学系機構による一次元に表示可能なピクセル数が推定される場合、以下の連結が結果として生じる。1チャンネルのピクセル数は、表示素子のピクセル・ピッチ(つまり、ピクセルの中心間距離)pと、サブ画像の寸法dとから算出される。
【0076】
【0077】
一次元で表示される全体のピクセル数は、そこから得られる。
【0078】
【0079】
上記の数式の評価は、表示素子のピクセル数D/pと比較して、非常により少ないピクセル数のみが実際に表示可能である。このように、かね合い(tradeoff)が、多いピクセル数に対する要求と、上記した隣接して投写されるサブ画像の(よい画像連結を得るために可能な限り大きい)要求との間で見つけ出される。σ=1/2〜3/4の重複は、二つの要求の間の良好なかね合いを可能とする。図2bは、σ=0.5の模範的に特殊な場合と、η=50%のサブ画像215の模範的な領域フィル・ファクター(fill
factor)とに対する、表示素子110またはマイクロ表示素子の上のサブ画像215の配置を示す。
【0080】
FOVの近軸部分に対して、プロジェクタの眼球運動ボックスは、同様の軸に対して平行な光線に沿って屈折させられるため、視野レンズの上に必要なアレイ要素の局所的な(local)FOVと等しい入射角を有する光線の高さに対応する。
【0081】
【0082】
しかしながら、この数式は、眼球運動ボックスがサブ画像215の全体的な拡張Dを超えない限り、適用されるだけである。これがもはや局所的なFOVlocalσの大きい重複に対して与えられない限り、EMBの寸法はDに対応する。いずれにせよ、EMBは、個々の小型レンズの隙間よりもより大きい。
【0083】
FOVの軸から離間する部分に対して、眼球運動ボックスの寸法は小さくされ得る。これは、より少ない小型レンズがマッピングに貢献し得るためである。これらのFOVの軸から離間する部分に焦点を合わせる際の眼球の引き運動(duction)は、虹彩(iris)の偏心を引き起こす。視野レンズの焦点が虹彩の後ろに位置する場合(例えば、眼の回転の中心で)、この偏心の方向付けは、FOVのこれらの部分を正確に投写する小型レンズから生じる光線の位置に対応する。この状況は、FOVの軸から離間する部分に対するEMBの寸法の縮小を、少なくともある程度補償する。
【0084】
実施形態において、記載されるアレイは、LEDバックライト付きの透過LCDマイクロ表示素子、または自己発光性のOLEDマイクロ・ディスプレイによって、または代わりとして、ミラー・アレイを偏向する反射型LCoS(登録商標)またはDLP(「デジタル光処理」)を用いて、有利に実現され得る。
【0085】
実施形態において、1ミリメートルの範囲の模範的なレンズ・ピッチ(投写光学的素子の中心間距離)を有する平凸または両凸レンズ・アレイ122、および平凸または両凸視野レンズ120は、光学的素子をマッピングすることに役立ち得、または投写光学系アレイ120によって構成され得る。視野レンズ130の焦点長さFは、見る人の眼と十分な距離(アイ・クリアランス、EC)を得るために、ここでは、20mm〜40mmの範囲で選択され得る。眼に対する光学的素子の距離は、例えば、個々の小型レンズのサブ光線(つまり、投写光学的素子125を通る光路)が交わるところである視野レンズ130の焦点面が、見る人の眼球の角膜と回転の中心との間の領域に位置するように選択され得る。
【0086】
レンズ・アレイ122の改良された収差補正を得るために、上記したように、いくつかの積み重ねられるレンズ・アレイによる単純な平面または両凸レンズ・アレイ122の変位が有利である。
【0087】
さらに、実施形態において、視野レンズ130としてフレネル・レンズを用いることによって、光学的素子の省スペースの実現、または投写ディスプレイ100の小さい構造長さを得ることができる。
【0088】
できる限り良好な、画像平面における個々の投写サブ画像の連結を得るために、図1aおよび図1bに示される実施形態に基づいて述べられたように、視野の部分的な重複または隣接するサブ画像の投写が実現され得る。投写ディスプレイ100によって投写可能なピクセル数の限定と、上記した画像平面にある全体画像150の縁での画像輝度の低下とを避けるために、投写される仮想の全体画像150におけるサブ画像の投写それぞれの間の変わり目(transitions)の考えられる人為現象は、表示素子110の上のサブ画像それぞれの縁での画像輝度の連続的な低下によって軽減され得る。これは、すでに図3に示される実施形態に基づいて説明された。
【0089】
図5aの実施形態に関して、個々の投写されるサブ画像の重複である仮想の画像平面の位置は、マイクロ・ディスプレイまたは表示素子110におけるサブ画像215の中心201それぞれの間の距離を拡大まはた縮小させることによって、動かされ得る。このように、単にソフトウェア技術の見る人の考えられる不完全な視野への適応は、機械的に動作可能な部品なしで可能である。互いに画像中心の距離を拡大させることによって、例えば、見る人に対する仮想の画像平面の距離、または投写距離が拡大され得る。
【0090】
投写ディスプレイ100の光軸101に関する見る人の眼の偏心は、結果として、割り当てられるのを通してではなく、隣接する小型レンズまたは投写光学的素子のサブ画像を通して表示素子のサブ画像を見ることによるゴースト画像の投写になる(クロストーク、光クロストーク)。画像の前処理ソフトウェアによって制御される表示素子の上の全てのサブ画像の均一な側面の変位または高さの変位は、特定の範囲の中のこのような偏心の補償を得ることを可能とする(図5bの実施形態を参照)。投写ディスプレイが、視漂追跡(eye tracking)センサーによって補填される場合、サブ画像の偏心のための画像の前処理ソフトウェアに対するセット信号が、センサーによって得られる眼球の位置情報から導かれ得る。
【0091】
実施形態において、フルカラー・ディスプレイは、好ましくは主要な色RGBでサブ画像の時系列の切替えを通すことによって、得られる。あるいは、RGBピクセル・トリプルが、しかしながら、与えられるピクセル・サイズに対する表示可能なピクセル数の減少で、用いられる。仮想の画像における横の色収差は、例えば、主要なカラー画像の色に依存する予歪(pre−distortion)に対する適切な画像前処理によって、事前に補償され得る。
【0092】
実施形態において、フルカラー・ディスプレイは、照明の色を切り替え且つ主要な色に対する画像コンテンツの同期変更それぞれによる色系列ディスプレイを用いることによって、可能となり得る。
【0093】
実施形態において、光学的素子または投写光学的素子アレイのマッピングの横の色収差は、表示素子を用いる画像コンテンツの適切な適応によって、補償され得る。
【0094】
類似して、アレイの小型レンズと、視野レンズの作用とによって引き起こされる歪曲誤りの補償は、サブ画像コンテンツを予歪することによって可能である。
【0095】
要約すると、実施形態は、マイクロ・ディスプレイを有する投写ディスプレイと、投写光学的素子の均一な二次元アレイと、画像の割り当てられるサブ領域のマッピングそれぞれと、見る人の平面における光学的パスを重畳するための視野レンズとを提供する。そこでは、アレイ軸に対する小型レンズそれぞれの距離を有する状態で、表示素子ディスプレイのサブ領域の画像コンテンツが全体画像の一部にますます偏心される。平凸または両凸レンズ・アレイが、例えば、投写光学的素子アレイとして、用いられ得る。さらに、改良された収差補正を得るためのいくつかの積み重ねられるレンズ・アレイが、投写光学的素子アレイとして用いられ得る。
【0096】
実施形態において、表示素子の上の隣接するサブ画像のコンテンツは、画像平面における多チャンネル投写の後、部分的に重複し得る。
【0097】
実施形態において、左右に異なる画像コンテンツを有する二つ眼のシステムは、三次元シーンの立体的な表示のために用いることができる。
【0098】
本発明の実施形態は、全体画像150を投写するための方法を提供する。その方法は、例えば、次のステップを含む。サブ画像が、表示素子110のサブ領域115の二次元配列における表示素子110によって表示される。さらに、サブ画像の投写135は、画像平面140においてペアをなすサブ画像の投写135の相互領域重複139が全てのペア137に対して0.1と0.8の間になるよう、画像平面140における投写光学的素子125の二次元配列122を有する投写光学系アレイ120によって、全体画像150に重畳される。ここで、投写ディスプレイ100は、全体画像150が仮想の全体画像となるように実装される。
【0099】
上記の実施形態は、単に本発明のコンセプトの具体例のみを示す。本願明細書において記載されているアレイおよび詳細の修正変更が他の当業者とって自明であることは、明らかである。それ故、本発明は、単に以下の請求項の範囲によって限定され、実施形態の記述および議論または説明に基づいた本願明細書において示される具体的な詳細によっては限定されない。
【0100】
本発明の実施形態は、眼の近くに配置される表示素子またはマイクロ・ディスプレイおよび小型化された光学的素子または投写光学系アレイを備える投写ディスプレイを用いて仮想の画像を投写するための光学的なコンセプトを提供する。投写光学系アレイは、例えば、投写光学的素子の二次元配列(レンズ・アレイ)および視野レンズを備える。そこでは、アレイの投写光学的素子または小型レンズのそれぞれは、全体のFOVのサブ領域をマップする。創意に富んだ光学系機構は自ら(the same)が、従来技術に係る既知のアレイ・プロジェクタによって表示可能なピクセル数の限定を解決できるという利点を有する。同時に、短い構造長さの利点は、創意に富んだ光学系機構を用いて維持される。
【0101】
本発明の実施形態は、簡単な光学系を提供する。創意に富んだ光学系は、非常に簡潔な(short)ヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)という点を特徴とし、画像距離の電気的調節および偏心の電気的補償が実現され得る。
【0102】
本発明は、以下の利点を示す。視野(FOV)の重複およびこれ故のピクセル数と眼球運動ボックス(EMB)との間のより良好なかね合いが得られる。さらに、アレイの人為現象は、もはや見えない(望遠鏡を用いるときと同じ、かぎ穴のコンセプトまたは効果)またはFOV分割(segmentation)の非常に弱い人為現象のみ残存する。
【0103】
このように、本発明の実施形態は、電気的な焦点合わせ、偏心の電気的な補償と同様に、横の色収差の電気的な補償を可能とする。
【0104】
創意に富んだ投写ディスプレイは、例えば、ヘッドマウント・ディスプレイ(例えば、データ・ディスプレイ・グラスまたはスマート・グラス)に対して必要とされているような眼の近くに配置される小型化された光学的素子を用いて、動的および静的な仮想の画像を表示するために役立つ。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b