特許第6243399号(P6243399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243399
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/10 20060101AFI20171127BHJP
   H02K 5/167 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H02K7/10 Z
   H02K5/167 A
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-503041(P2015-503041)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2014054997
(87)【国際公開番号】WO2014133118
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-38071(P2013-38071)
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】山岡 守
(72)【発明者】
【氏名】小川 吉典
(72)【発明者】
【氏名】春日 孝文
(72)【発明者】
【氏名】新宮 祐二
【審査官】 三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−64327(JP,A)
【文献】 特開2006−29400(JP,A)
【文献】 特開平11−193827(JP,A)
【文献】 実開昭51−123451(JP,U)
【文献】 特開2002−145082(JP,A)
【文献】 特開2010−167904(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/160622(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/10
H02K 5/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体から突出するモータ軸を備えたモータと、
前記モータ軸に伝達機構を介して連結され、外周面に螺旋溝が形成されたウォームと、
該ウォームに噛合するウォームホイールと、
を有するモータ装置において、
前記伝達機構は、前記ウォームの軸線方向において当該ウォームの前記モータ本体側の端面と対向する位置に前記モータ軸の回転を前記ウォームに伝達する伝達部材を備え、
前記ウォームの前記モータ本体側の端面、および前記伝達部材の前記ウォーム側の端面の一方の端面には、径方向で離間する位置で他方の端面に向けて突出した2つの凸部が形成され、前記他方の端面には前記凸部と係合する凹部が形成されており、
前記ウォームは、樹脂製であり、
前記ウォームと前記伝達部材との間には、圧縮コイルバネが前記2つの凸部の間に配置されており、
前記ウォームの内部には、該ウォームの前記モータ本体側の端面から当該ウォームの軸線方向に延在するバネ配置穴が形成され、
前記バネ配置穴に対して前記モータ本体側と反対側で当該バネ配置穴に連通して前記軸線方向に延在する連通穴が形成されており、
前記バネ配置穴は、前記ウォームと同軸に形成され、前記バネ配置穴の内部に前記圧縮コイルバネが配置されており、
当該連通穴の内径は、前記バネ配置穴の内径より小であることを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
前記バネ配置穴の前記軸線方向の寸法と前記連通穴の前記軸線方向の寸法との和は、前記圧縮コイルバネの前記軸線方向の寸法より長いことを特徴とする請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記バネ配置穴において前記連通穴との接続部分に形成された環状段部は、前記圧縮コイルバネの前記モータ本体側とは反対側の端部を受けるバネ受け面になっており、
前記バネ受け面の径方向の幅は、前記圧縮コイルバネの直径と前記バネ配置穴の内径との差より広いことを特徴とする請求項1に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記ウォームを径方向からみたとき、前記バネ配置穴の一部は、前記螺旋溝と前記ウォームホイールとが噛合している範囲と重なっていることを特徴とする請求項1に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記ウォームを径方向からみたとき、前記バネ受け面は、前記螺旋溝と前記ウォームホイールとが噛合している範囲より前記モータ本体側に位置することを特徴とする請求項1に記載のモータ装置。
【請求項6】
前記ウォームを前記ウォームホイールが位置する側とは反対側に向けて押圧する側圧印加機構を有していることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載のモータ装置。
【請求項7】
前記側圧印加機構は、前記ウォームの前記モータ本体側とは反対側の端部に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のモータ装置。
【請求項8】
前記側圧印加機構は、前記軸線方向に対して斜めに傾いて前記ウォームの前記モータ本体側とは反対側の端部を支持するスラスト軸受からなることを特徴とする請求項7に記載のモータ装置。
【請求項9】
前記モータ本体において前記モータ軸を回転可能に支持する2つのモータ側ラジアル軸受と、前記ウォームを回転可能に支持する2つのウォーム側ラジアル軸受と、を有することを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載のモータ装置。
【請求項10】
前記モータ本体において前記モータ軸を回転可能に支持する2つのモータ側ラジアル軸受と、前記ウォームを回転可能に支持する2つのウォーム側ラジアル軸受と、を有し、
前記ウォームを径方向からみたとき、前記2つのウォーム側ラジアル軸受のうち、前記モータ本体側に位置するウォーム側ラジアル軸受は、前記バネ配置穴と重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のモータ装置。
【請求項11】
前記2つのウォーム側ラジアル軸受のうち、前記モータ本体側に位置するウォーム側ラジアル軸受は、前記モータ本体側とは反対側に位置するウォーム側ラジアル軸受より、前記螺旋溝と前記ウォームホイールとが噛合している領域から遠いことを特徴とする請求項10に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転がウォームを介して伝達されるモータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータの回転がウォームを介して伝達されるモータ装置では、回転軸とウォームとの間に圧縮コイルバネを配置した構成が提案されている(特許文献1、2参照)。より具体的には、特許文献1には、ウォームのモータ本体側の端部とモータ軸に連結した連結手段との間に位置するシャフトの周りに圧縮コイルバネを設けた構造が提案されている。また、特許文献2には、ウォームにおいてモータ本体側に位置する端面に凹部を形成しておき、かかる凹部の底部とモータ軸との間に圧縮コイルバネを設けた構造が提案されている。ここで、凹部は、外周面に螺旋溝が形成されている領域まで到達しない程、浅く形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−152559号公報
【特許文献2】特許第4085802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載のモータ装置においては、モータ装置の製造時、モータおよびウォームを個別に搭載した際のウォームの中心軸線とモータ軸の中心軸線とのずれを吸収するために、軸線方向に直交する方向に相対移動可能なカップリングを設けることが好ましいが、このような構成を採用した場合には、圧縮コイルバネを配置するスペースを確保できないという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ウォームとモータ軸との間にカップリングを設けた場合でも、ウォームを軸線方向に付勢する圧縮コイルバネを配置することができるモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、モータ本体から突出するモータ軸を備えたモータと、前記モータ軸に伝達機構を介して連結され、外周面に螺旋溝が形成されたウォームと、該ウォームに噛合するウォームホイールと、を有するモータ装置において、前記伝達機構は、前記ウォームの軸線方向において当該ウォームの前記モータ本体側の端面と対向する位置に前記モータ軸の回転を前記ウォームに伝達する伝達部材を備え、前記ウォームの前記モータ本体側の端面、および前記伝達部材の前記ウォーム側の端面の一方の端面には、径方向で離間する位置で他方の端面に向けて突出した2つの凸部が形成され、前記他方の端面には前記凸部と係合する凹部が形成されており、前記ウォームは、樹脂製であり、前記ウォームと前記伝達部材との間には、圧縮コイルバネが前記2つの凸部の間に配置されており、前記ウォームの内部には、該ウォームの前記モータ本体側の端面から当該ウォームの軸線方向に延在するバネ配置穴が形成され、前記バネ配置穴に対して前記モータ本体側と反対側で当該バネ配置穴に連通して前記軸線方向に延在する連通穴が形成されており、前記バネ配置穴は、前記ウォームと同軸に形成され、前記バネ配置穴の内部に前記圧縮コイルバネが配置されており、当該連通穴の内径は、前記バネ配置穴の内径より小であることを特徴とする。
【0007】
本発明では、ウォームに対してモータ本体側には、2つの凸部が凹部に嵌ってカップリングを構成する伝達部材が設けられているため、モータ装置の製造時、モータおよびウォームを個別に搭載した際のウォームの中心軸線とモータ軸の中心軸線とのずれをカップリングによって吸収することができる。また、ウォームと伝達部材との間には圧縮コイルバネが配置され、かかる圧縮コイルバネは、ウォームをモータ本体側とは反対側に付勢している。このため、ウォームの軸線方向の位置を規定できるとともに、ウォームに加わったスラスト方向の力の影響を圧縮コイルバネによって吸収することができる。ここで、圧縮コイルバネは、カップリングを構成する2つの凸部の間に配置されている。このため、ウォームと伝達部材との間にカップリングを設けた場合でも、圧縮コイルバネを配置することができる。
【0008】
また、かかる構成によれば、巻回数が大の長い圧縮コイルバネを用いた場合でも、圧縮コイルバネの全体あるいは略全体をウォームの内部に収容されるので、モータ軸とウォームとの間のスペースが狭く済む。
【0010】
また、かかる構成によれば、ウォームを肉薄とすることができるので、成形時の樹脂のヒケに起因する成形精度の低下を抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記バネ配置穴の前記軸線方向の寸法と前記連通穴の前記軸線方向の寸法との和は、前記圧縮コイルバネの前記軸線方向の寸法より長いことが好ましい。
【0012】
本発明において、前記バネ配置穴において前記連通穴との接続部分に形成された環状段部は、前記圧縮コイルバネの前記モータ本体側とは反対側の端部を受けるバネ受け面になっており、前記バネ受け面の径方向の幅は、前記圧縮コイルバネの直径と前記バネ配置穴の内径との差より広いことが好ましい。かかる構成によれば、圧縮コイルバネが径方向に位置ずれした場合でも、圧縮コイルバネはバネ受け面に当接した状態にあり、連結穴内に入り込みにくい。それ故、圧縮コイルバネが傾くことを抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記ウォームを径方向からみたとき、前記バネ配置穴の一部は、前記螺旋溝と前記ウォームホイールとが噛合している範囲と重なっている構成を採用することができる。かかる構成によれば、螺旋溝とウォームホイールとが噛合している範囲において、成形時の樹脂のヒケに起因する成形精度の低下を抑制することができ。
【0014】
本発明において、前記ウォームを径方向からみたとき、前記バネ受け面は、前記螺旋溝と前記ウォームホイールとが噛合している範囲より前記モータ本体側に位置する構成を採用してもよい。かかる構成によれば、螺旋溝とウォームホイールとが噛合している部分の剛性を高めることができる。
【0015】
本発明において、前記ウォームを前記ウォームホイールが位置する側とは反対側に向けて押圧する側圧印加機構を有していることが好ましい。かかる構成によれば、ウォームとウォームホイールとを適正に噛合させることができる。
【0016】
本発明において、前記側圧印加機構は、前記ウォームの前記モータ本体側とは反対側の端部に設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、スペース的に余裕のある個所に側圧印加機構を設けることができる。
【0017】
本発明において、前記側圧印加機構は、前記軸線方向に対して斜めに傾いて前記ウォームの前記モータ本体側とは反対側の端部を支持するスラスト軸受からなることが好ましい。かかる構成によれば、簡素な構成でウォームに側圧を印加することができる。
【0018】
本発明において、前記モータ本体において前記モータ軸を回転可能に支持する2つのモータ側ラジアル軸受と、前記ウォームを回転可能に支持する2つのウォーム側ラジアル軸受と、を有することが好ましい。かかる構成によれば、モータ装置の製造時、モータおよびウォームを個別に搭載することができる。
【0019】
本発明において、前記モータ本体において前記モータ軸を回転可能に支持する2つのモータ側ラジアル軸受と、前記ウォームを回転可能に支持する2つのウォーム側ラジアル軸受と、を有し、前記ウォームを径方向からみたとき、前記2つのウォーム側ラジアル軸受のうち、前記モータ本体側に位置するウォーム側ラジアル軸受は、前記バネ配置穴と重なる位置に設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、モータ本体側に位置するウォーム側ラジアル軸受は、成形時の樹脂のヒケに起因する成形精度が低下しにくい個所を支持することができる。
【0020】
本発明において、前記2つのウォーム側ラジアル軸受のうち、前記モータ本体側に位置するウォーム側ラジアル軸受は、前記モータ本体側とは反対側に位置するウォーム側ラジアル軸受より、前記螺旋溝と前記ウォームホイールとが噛合している領域から遠いことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、ウォームに対してモータ本体側には、2つの凸部が凹部に嵌ってカップリングを構成する伝達部材が設けられているため、モータ軸とウォームとの芯ずれをカップリングによって吸収することができる。また、ウォームと伝達部材との間には圧縮コイルバネが配置され、かかる圧縮コイルバネは、ウォームをモータ本体側とは反対側に付勢している。このため、ウォームの軸線方向の位置を規定できるとともに、ウォームに加わったスラスト方向の力の影響を圧縮コイルバネによって吸収することができる。ここで、圧縮コイルバネは、カップリングを構成する2つの凸部の間に配置されている。このため、ウォームと伝達部材との間にカップリングを設けた場合でも、圧縮コイルバネを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態1に係るモータ装置の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るモータ装置の平面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るモータ装置に用いたモータ等の構成を示す断面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るモータ装置におけるモータとウォームとの連結部分をモータの出力側からみた説明図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るモータ装置におけるモータとウォームとの連結部分をモータの反出力側からみた説明図である。
図6】本発明の実施の形態1に係るモータ装置に用いた伝達部材の説明図である。
図7】本発明の実施の形態2に係るモータ装置の説明図である。
図8】本発明の実施の形態3に係るモータ装置の説明図である。
図9】本発明の実施の形態4に係るモータ装置におけるモータとウォームとの連結部分をモータの出力側からみた説明図である。
図10】本発明の実施の形態4に係るモータ装置におけるモータとウォームとの連結部分をモータの反出力側からみた説明図である。
図11】本発明の実施の形態4に係るモータ装置に用いた伝達部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照して、本発明を適用したモータ装置の一例を説明する。
【0024】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るモータ装置の斜視図である。図2は、本発明の実施の形態1に係るモータ装置の平面図である。
【0025】
図1および図2に示すモータ装置1は、駆動源としてのモータ10と、モータ10の回転を伝達する歯車機構14と、モータ10の回転が歯車機構14を介して伝達される従動部材(図示せず)と、モータ10、歯車機構14および従動部材等が搭載されたフレーム6とを有しており、従動部材に搭載あるいは接続された被可動部材等を変位させる。
【0026】
歯車機構14は、モータ10の回転が伝達されるウォーム2と、ウォーム2に噛合するウォームホイール3とを有している。ウォーム2の外周面20には螺旋溝21が形成されており、ウォームホイール3の大径部31には、ウォーム2の螺旋溝21に噛合する歯部36が形成されている。ウォームホイール3は、大径部31と同心状の小径部32を有しており、小径部32の外周面には歯部37が形成されている。小径部32には、フレーム6から起立する支軸65が嵌る軸穴320が形成されており、ウォームホイール3は、支軸65を中心に回転可能である。ウォームホイール3としては、ヘリカルギヤを用いることが好ましい。なお、支軸65の先端部にはワッシャー69が止められており、ワッシャー69によって、ウォームホイール3の支軸65からの抜けが防止されている。
【0027】
かかるモータ装置1において、モータ10の回転がウォーム2を介してウォームホイール3に伝達されると、ウォームホイール3は、支軸65を中心に時計周りCW、あるいは反時計周りCCWに回転する。
【0028】
(モータ10の構成)
図3は、本発明の実施の形態1に係るモータ装置1に用いたモータ10等の構成を示す断面図である。なお、以下の説明において、モータ軸線方向L(ウォーム2の軸線方向)のうち、モータ軸150がモータ本体110から突出している側を出力側L1とし、モータ軸150がモータ本体110から突出している側とは反対側を反出力側L2として説明する。
【0029】
図3に示すように、モータ10は、ステッピングモータであり、円柱状のモータ本体110からモータ軸150が突出した形状を有している。モータ本体110は、円筒状のステータ140を有しており、ステータ140では、A相用のステータとB相用のステータとがモータ軸線方向Lに重ねて配置された構造を有している。このため、ステータ140では、コイル線120が巻回された環状の2つのコイルボビン102(第1コイルボビン102Aと第2コイルボビン102B)がモータ軸線方向Lに重ねて配置されており、かかるコイルボビン102には各々、内ステータコア103および外ステータコア104が重ねて配置されている。より具体的には、第1コイルボビン102Aにおいてモータ軸線方向Lの両側には、環状の内ステータコア103A、および断面U字形状の外ステータコア104Aが重ねて配置され、第2コイルボビン102Bにおいてモータ軸線方向Lの両側には、環状の内ステータコア103B、および断面U字形状の外ステータコア104Bが重ねて配置されている。第1コイルボビン102Aおよび第2コイルボビン102Bの内周面では、内ステータコア103A、103Bおよび外ステータコア104A、104Bの複数の極歯131、141が周方向に並んだ構成となっている。このようにして、ロータ配置穴130を備えた円筒状のステータ140が構成されており、ステータ140の径方向内側にはロータ105が同軸状に配置されている。なお、本形態では、外ステータコア104A、104Bが断面U字形状に形成されており、外ステータコア104A、104Bが各々、コイル線120の径方向外側まで延在してモータケースを構成している。また、コイルボビン102(第1コイルボビン102Aおよび第2コイルボビン102B)には、端子台(図示せず)が一体に形成されており、かかる端子台に保持された端子に基板118が接続されている。
【0030】
ロータ105ではモータ軸150がモータ軸線方向Lに延在している。モータ軸150の反出力側L2寄りの位置には、円筒状のブシュ156が固着され、ブシュ156の外周面に円筒状の永久磁石159が接着剤等によって固着されている。この状態で、永久磁石159の外周面は、ステータ140の極歯131、141と所定の間隔を介して対向している。
【0031】
ステータ140に対して出力側L1には、溶接等の方法により端板160が固定されており、端板160には、モータ軸150に対する出力側のラジアル軸受170(モータ側ラジアル軸受)が嵌る穴166と、フレーム6との取り付け用の穴167とが形成されている。本形態において、ラジアル軸受170の外周面には段部171が形成されており、段部171が端板160の反出力側L2の面に当接することにより、ラジアル軸受170の出力側L1への移動が規制されている。
【0032】
モータ軸150の周りには、ラジアル軸受170とブシュ156との間に円環状のワッシャー176が装着されている。かかる構成のモータ10において、モータ軸150の出力側L1への可動範囲は、ラジアル軸受170によって規定されている。なお、ワッシャー176は省略されることがある。
【0033】
ステータ140に対して反出力側L2には、溶接等の方法によりプレート180が固定されており、プレート180には、モータ軸150に対する反出力側L2のラジアル軸受190(モータ側ラジアル軸受)が嵌る穴186が形成されている。本形態において、ラジアル軸受190の外周面には段部191が形成されており、段部191がプレート180の反出力側L2の面に当接することにより、ラジアル軸受190の出力側L1への移動が規制されている。
【0034】
モータ軸150の周りには、ラジアル軸受190とブシュ156との間に円環状のワッシャー196、197が装着されており、反出力側L2に位置するワッシャー197は、ラジアル軸受190の出力側L1の端面に接している。かかる構成のモータ10において、モータ軸150の反出力側L2への可動範囲は、ラジアル軸受190によって規定されている。なお、2枚のワッシャー196、197に代えて、1枚のワッシャーとしてもよい。
【0035】
(モータ軸150とウォーム2との連結構造)
図4は、本発明の実施の形態1に係るモータ装置1におけるモータ10とウォーム2との連結部分をモータ10の出力側L1からみた説明図であり、図4(a)、(b)は各々、モータ10とウォーム2との連結部分の斜視図、および分解斜視図である。図5は、本発明の実施の形態1に係るモータ装置1におけるモータ10とウォーム2との連結部分をモータ10の反出力側L2からみた説明図であり、図5(a)、(b)は各々、モータ10とウォーム2との連結部分の斜視図、および分解斜視図である。図6は、本発明の実施の形態1に係るモータ装置1に用いた伝達部材5の説明図であり、図6(a)、(b)、(c)は、伝達部材5のウォーム2側の端面と圧縮コイルバネ8の位置関係を示す説明図、第1凹部の説明図、および第2凹部の説明図である。なお、図6(a)では、第2凹部52をグレーの領域として示してある。
【0036】
図3図4および図5に示すように、モータ10のモータ軸150とウォーム2とは、カップリング13(伝達機構)を介して連結されており、カップリング13は、第1カップリング11と第2カップリング12との2段構造になっている。
【0037】
より具体的には、第1カップリング11において、モータ軸150のモータ本体110側とは反対側の端部151(先端部)にはモータ側カップリング部4(駆動側カップリング部)が連結され、ウォーム2のモータ本体110側の端部27には、モータ側カップリング部4と結合する伝達部材5(従動側カップリング部材)が連結されている。従って、モータ軸150とウォーム2とは、モータ側カップリング部4および伝達部材5を介して連結されている。
【0038】
モータ側カップリング部4は、円盤部41と、円盤部41のモータ本体110とは反対側の端面でモータ本体110とは反対側に向けて突出した第1凸部42とを備えている。モータ側カップリング部4の中心には軸穴43が形成されており、軸穴43にモータ軸150の端部151が嵌っている。ここで、モータ軸150の端部151には周方向の一部が平坦面152になっている一方、軸穴43の内周面は、周方向の一部が平坦面431になっており、平坦面152、431同士が重なることにより、モータ側カップリング部4とモータ軸150との空周りが防止されている。なお、軸穴43は、円盤部41および第1凸部42を貫通しており、第1凸部42は、軸穴43によって長さ方向で2つの第1凸部42に分割されている。
【0039】
伝達部材5は、略円柱状であり、モータ本体110側の端面には、モータ側カップリング部4の第1凸部42が嵌る溝状の第1凹部51が径方向の全体にわたって形成されている。
【0040】
このように構成した第1カップリング11では、第1凹部51が径方向の全体にわたって延在し、2つの第1凸部42が第1凹部51の両端に嵌っている。このため、モータ側カップリング部4の回転が伝達部材5に伝達される際のロスが小さい。また、第1凹部51の延在方向および2つの第1凸部42が並んでいる方向がモータ軸線方向Lに対して直交する第1方向L51であり、モータ側カップリング部4と伝達部材5とは、第1方向L51において相対移動可能である。
【0041】
第2カップリング12を構成するにあたって、伝達部材5のモータ本体110側とは反対側の端面には、溝状の第2凹部52が径方向の全体にわたって形成されており、ウォーム2の端部27には、第2凹部52に嵌るウォーム側カップリング部26が形成されている。かかる第2凹部52とウォーム側カップリング部26とによって、第2カップリング12が構成されている。ここで、ウォーム側カップリング部26は、ウォーム2のモータ本体110の端面292において、径方向で離間する位置から伝達部材5のウォーム2側の端面に向けて突出した2つの第2凸部28からなり、2つの第2凸部28が第2凹部52の両端に嵌っている。
【0042】
本形態において、ウォーム2の内部には、ウォーム2と同軸状にバネ配置穴23が形成されており、かかるバネ配置穴23は、モータ本体110側の端面292で開口している。このため、ウォーム2の端面292には、バネ配置穴23の開口の周りにおいて、周方向で180°離間する2個所に、モータ本体110側に向けて突出する2つの第2凸部28が形成されており、かかる2つの第2凸部28が伝達部材5の第2凹部52に嵌っている。従って、後述するように、バネ配置穴23に圧縮コイルバネ8を配置した状態において、圧縮コイルバネ8は、2つの第2凸部28の間に位置する。
【0043】
このように構成した第2カップリング12では、第2凹部52が径方向の全体にわたって延在し、2つの第2凸部28が第2凹部52の両端に嵌っているため、伝達部材5の回転がウォーム2に伝達される際のロスが小さい。また、第2凹部52の延在方向および2つの第2凸部28が並んでいる方向がモータ軸線方向Lに対して直交し、第1方向L51と交差する第2方向L52であり、ウォーム側カップリング部26と伝達部材5とは、第2方向L52において相対移動可能である。
【0044】
ここで、第1方向L51(第1凹部51の延在方向および2つの第1凸部42が並んでいる方向)と、第2方向L52(第2凹部52の延在方向および2つの第2凸部28が並んでいる方向)とは、軸線周りの角度方向が90°ずれている。このため、モータ側カップリング部4に対して伝達部材5が移動可能な方向(第1方向L51)と、ウォーム側カップリング部26に対して伝達部材5が移動可能な方向(第2方向L52)とは直交している。
【0045】
かかる構成のモータ装置1では、モータ10のモータ軸150が回転すると、第1カップリング11において、モータ側カップリング部4が回転し、モータ側カップリング部4の回転は、第1凸部42および第1凹部51を介して、伝達部材5に伝達される。また、伝達部材5の回転は、第2カップリング12において、第2凹部52および第2凸部28を介してウォーム2に伝達される。本形態では、モータ側カップリング部4が樹脂であり、伝達部材5はゴム等からなる弾性部材である。このため、モータ軸150が回転した際の振動を伝達部材5によって吸収することができる。
【0046】
本形態においては、図6に示すように、ウォーム側カップリング部26の第2凸部28のモータ軸線方向Lにおける高さH2は、伝達部材5の第2凹部52のモータ軸線方向Lにおける深さD2より小であり、第2凸部28の高さH2と第2凹部52の深さD2との差は、第2凹部52内での第2凸部28の第2方向L52と直交する第1方向L51への可動距離E2より大である。また、モータ側カップリング部4の第1凸部42のモータ軸線方向Lにおける高さH1は、伝達部材5の第1凹部51のモータ軸線方向Lにおける深さD1より小であり、第1凸部42の高さH1と第1凹部51の深さD1との差は、第1凹部51内での第1凸部42の第1方向L51と直交する第2方向L52への可動距離E1より大である。
【0047】
(ウォーム2および圧縮コイルバネ8の構成)
図3図4および図5に示すように、本形態のモータ装置1においては、ウォーム2の外周面20は、螺旋溝21が形成されている領域のモータ軸線方向Lの両側に、螺旋溝21が形成されていない領域22、25を備えており、ウォーム2は、螺旋溝21が形成されていない領域22、25でラジアル軸受71、72(ウォーム側ラジアル軸受)によって回転可能に支持されている。ラジアル軸受71、72は各々、円筒部711、721と、円筒部711、721に端部で拡径するフランジ部712、722とを備えており、フランジ部712、722がフレーム6の溝671、672(図1および図2参照)に保持されている。ウォーム2のモータ本体110とは反対側の端部291は半球面になっており、かかるウォーム2の端部291は、フレーム6の溝673に保持された板状のスラスト軸受73によって支持されている。
【0048】
本形態では、ウォーム2に形成されたバネ配置穴23を利用して、ウォーム2とモータ軸150との間には、ウォーム2をモータ本体110側とは反対側に付勢し、伝達部材5をモータ側カップリング部4に向けて付勢する圧縮コイルバネ8が配置されている。その結果、圧縮コイルバネ8は、伝達部材5およびモータ側カップリング部4を介してモータ軸150をモータ本体110側に付勢している。
【0049】
より具体的には、ウォーム2の内部において、バネ配置穴23は、ウォーム2のモータ本体110側の端面292から、外周面に螺旋溝21が形成されている位置まで届く深い穴になっており、かかるバネ配置穴23の内部に圧縮コイルバネ8が配置されている。この状態で、圧縮コイルバネ8の一方端(モータ本体110と反対側)は、バネ配置穴23の奥に形成された段部231に当接する一方、圧縮コイルバネ8の他方端(モータ本体110側)は、伝達部材5に当接している。このため、圧縮コイルバネ8は、伝達部材5とウォーム2の伝達部材5側とは反対側の端部との間に配置されている。
【0050】
本形態では、伝達部材5のモータ本体110とは反対側の面には、第2凹部52と重なる溝状の開口部701が形成されたスペーサー70が配置されており、圧縮コイルバネ8の他方端(モータ本体110側)は、スペーサー70を介して伝達部材5を付勢している。その結果、圧縮コイルバネ8は、ウォーム2をモータ本体110側とは反対側(出力側L1)に付勢し、スペーサー70およびカップリング12(伝達部材5およびモータ側カップリング部4)を介してモータ軸150をモータ本体110側(反出力側L2)に付勢している。本形態において、スペーサー70はステンレス板からなる。
【0051】
ここで、ウォーム2は、圧縮コイルバネ8の径方向外側に位置する2つの第2凸部28がカップリング13を介してモータ軸150に連結されているため、圧縮コイルバネ8の内側は、軸部等が存在しない中空になっている。
【0052】
本形態において、ウォーム2は樹脂製であり、ウォーム2の内部では、バネ配置穴23に対して端面292と反対側でバネ配置穴23に連通する連通穴24が軸線方向(モータ軸線方向L)に延在している。このため、ウォーム2には過大な肉厚部分が存在しない。また、図3に示すように、ウォーム2を径方向からみたとき、バネ配置穴23の一部は、螺旋溝21とウォームホイール3とが噛合している範囲W0と重なっている。バネ配置穴23のモータ軸線方向Lの寸法と連通穴24のモータ軸線方向Lの寸法との和は、圧縮コイルバネ8のモータ軸線方向Lの寸法より長い。なお、連通穴24は、テーパー穴になっており、端面292が位置する側から端面292から離間するに伴って内径寸法が連続的に縮小している。本形態において、ウォーム2はPOM(ポリアセタール樹脂)製である。
【0053】
ここで、連通穴24は、バネ配置穴23と同様、ウォーム2に対して同軸状に形成され、連通穴24の内径は、バネ配置穴23の内径より小である。このため、バネ配置穴23において連通穴24との接続部分に形成された段部231は、環状段部になっており、かかる段部231(環状段部)は、圧縮コイルバネ8のモータ本体110側とは反対側の端部を受けるバネ受け面230になっている。かかるバネ受け面230の径方向の幅は、圧縮コイルバネ8の直径とバネ配置穴23の内径との差より広い。
【0054】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のモータ装置1では、モータ軸150とウォーム2との間に圧縮コイルバネ8が配置され、かかる圧縮コイルバネ8は、ウォーム2をモータ本体110側とは反対側に付勢し、モータ軸150をモータ本体110側に付勢している。このため、ウォーム2の軸線方向(モータ軸線方向L)の位置を規定できるとともに、トルクを伝達する際にウォームホイール3からウォーム2に加わるスラスト方向の力の影響を圧縮コイルバネ8によって吸収することができる。例えば、圧縮コイルバネ8は、モータ軸150およびカップリング12をモータ本体110側(反出力側L2)に向けて付勢している。このため、ウォーム2がウォームホイール3を反時計周りCCWに駆動する際や、従動部材(図示せず)の側からウォームホイール3に時計周りCWの押圧力が加わっている場合、ウォーム2には、出力側L1に向かう押圧力が作用するが、かかる押圧力の影響を圧縮コイルバネ8によって吸収できる。従って、モータ軸150やカップリング13にスラスト方向のガタつきが発生しにくいので、振動や異音の発生を抑制することができる。また、圧縮コイルバネ8は、ウォーム2をモータ本体110とは反対側(出力側L1)に配置されたスラスト軸受73に向けて付勢している。このため、ウォーム2がウォームホイール3を時計周りCWに駆動する際や、従動部材(図示せず)の側からウォームホイール3に反時計周りCCWの押圧力が加わっている場合、ウォーム2には、反出力側L2に向かう押圧力が作用するが、かかる押圧力の影響を圧縮コイルバネ8によって吸収できる。従って、ウォーム2とスラスト軸受73とが当接している状態を維持することができる。それ故、ウォーム2のスラスト方向のガタつきが発生しにくいので、振動や異音の発生を抑制することができる。
【0055】
また、圧縮コイルバネ8は、ウォーム2のモータ本体110側の端面292から、外周面に螺旋溝21が形成されている位置まで届くバネ配置穴23に配置されている。このため、巻回数が大の長い圧縮コイルバネ8をモータ軸150とウォーム2との間に配置した場合でも、圧縮コイルバネ8の全体がバネ配置穴23の内部に収容され、圧縮コイルバネ8は、伝達部材5とウォーム2の伝達部材5側とは反対側の端部との間に配置される。従って、モータ軸150とウォーム2との間のスペースが狭く済む。すなわち、巻回数が大の圧縮コイルバネ8は、バネ定数が安定する一方、長くなってしまうが、本形態のように、外周面に螺旋溝21が形成されている位置まで届くバネ配置穴23の内部に圧縮コイルバネ8を配置すれば、長い圧縮コイルバネ8を用いた場合でも、モータ軸150とウォーム2との間のスペースが狭く済む。
【0056】
また、圧縮コイルバネ8は、外周面がバネ配置穴23の内周面で囲まれているので、圧縮コイルバネ8が撓んだ際、圧縮コイルバネ8が外側にずれることがない。従って、圧縮コイルバネ8の付勢方向がモータ軸線方向Lからずれにくいという利点がある。
【0057】
また、ウォーム2は、圧縮コイルバネ8の径方向外側に位置する第2凸部28がカップリング13を介してモータ軸150に連結されているため、圧縮コイルバネ8の内側は、軸部等が存在しない中空状態にある。このため、圧縮コイルバネ8の径寸法を小とすることができるので、小スペースでバネ圧を高めることができる。
【0058】
また、ウォーム2は樹脂製であり、ウォーム2の内部では、バネ配置穴23に対して端面292と反対側でバネ配置穴23に連通する連通穴24がウォーム2の軸線方向(モータ軸線方向L)に延在している。このため、ウォーム2を肉薄とすることができるので、成形時の樹脂のヒケに起因する成形精度の低下を抑制することができる。このため、ウォーム2の外形形状の真円度が高いので、ラジアル軸受71、72によって支持した際、ウォーム2とラジアル軸受71、72との接触精度が高い。それ故、ウォーム2の回転がスムーズであるため、振動を低減することができる。
【0059】
特に本形態では、ウォーム2を径方向からみたとき、バネ配置穴23の一部は、螺旋溝21とウォームホイール3とが噛合している範囲と重なっている。このため、螺旋溝21とウォームホイール3とが噛合している範囲において、成形時の樹脂のヒケに起因する成形精度の低下を抑制することができる。
【0060】
また、ウォーム2を径方向からみたとき、2つのラジアル軸受71、72のうち、モータ本体110側に位置するラジアル軸受71は、バネ配置穴23と重なる位置に設けられている。このため、ラジアル軸受72は、成形時の樹脂のヒケに起因する成形精度が低下しにくい個所を支持することができる。
【0061】
また、バネ配置穴23において連通穴24との接続部分に形成された環状の段部231は、圧縮コイルバネ8の端部を受けるバネ受け面230になっており、かかるバネ受け面230の径方向の幅は、圧縮コイルバネ8の直径とバネ配置穴23の内径との差より広い。このため、圧縮コイルバネ8が径方向に位置ずれした場合でも、圧縮コイルバネ8はバネ受け面230に当接した状態にあり、連通穴24内に入り込みにくい。それ故、圧縮コイルバネ8が傾くことを抑制することができる。
【0062】
また、モータ軸150のモータ本体110側とは反対側の端部151に、伝達部材5と結合したモータ側カップリング部4が連結され、ウォーム2のモータ本体110側の端部には、伝達部材5と結合したウォーム側カップリング部26が構成されている。このため、モータ軸150とウォーム2の軸芯がずれている場合でも、かかるずれをカップリング13(第1カップリング11および第2カップリング12)によって吸収することができる。このため、ウォームホイール3に対するウォーム2の位置精度を優先してウォーム2の位置(ラジアル軸受71、72の位置)を設定できるので、ウォームホイール3とウォーム2との噛み合い精度が高い。従って、トルクの伝達ロスを低減することができる。また、ウォーム2の中心軸線とモータ軸150の中心軸線とのずれに起因する振動が発生しにくいので、振動がフレーム6に伝わりにくい。また、モータ軸150とウォーム2との間にガタを設ける必要がないので、モータ軸150の回転をウォーム2に正確に伝達することができる。それ故、モータ10によって従動部材の位置を正確に制御することができるので、モータ装置1を被可動部材の向きを調整するための装置として構成することができる。また、伝達部材5は、弾性部材であるため、伝達部材5の弾性によって振動を吸収することができる。
【0063】
また、カップリング13を設けた場合でも、圧縮コイルバネ8は、ウォーム側カップリング部26を構成する2つの第2凸部28の間に配置されている。このため、このため、ウォーム2と伝達部材5との間に第2カップリング12を設けた場合でも、圧縮コイルバネを配置することができる。
【0064】
また、圧縮コイルバネ8によって、スペーサー70を介して伝達部材5がモータ側カップリング部4に向けて付勢され、その結果、モータ側カップリング部4がモータ軸150に向けて付勢されている。このため、スペーサー70、およびカップリング12(伝達部材5およびモータ側カップリング部4)にモータ軸線方向Lにおけるガタつきが発生しにくいので、振動や異音の発生を抑制することができる。
【0065】
また、伝達部材5の第1凹部51の延在方向(第1方向L51)と、伝達部材5の第2凹部52の延在方向(第2方向L52)とは、軸線周りの角度方向が90°ずれている。このため、モータ軸150とウォーム2の軸ずれを第1凹部51と第2凹部52のそれぞれの溝方向で吸収することができる。例えば、ウォームホイール3に対するウォーム2の位置精度を優先してウォーム2の位置を設定した結果、ウォーム2とモータ軸150との間に軸ずれが発生している場合でも、かかる軸ずれを第1凹部51と第2凹部52のそれぞれの溝方向で吸収することができる。また、モータ本体110を制振用のゴム等を介して取り付けた場合、ウォーム2とモータ軸150との間に軸ずれが発生しやすいが、かかる軸ずれを第1凹部51と第2凹部52のそれぞれの溝方向で吸収することができる。
【0066】
また、本形態においては、ウォーム側カップリング部26の第2凸部28のモータ軸線方向Lにおける高さH2は、伝達部材5の第2凹部52のモータ軸線方向Lにおける深さD2より小である。このため、第2凸部28と第2凹部52の底部との間に遊びがあるので、第2凸部28と第2凹部52の底部との当接に起因する振動や異音の発生を抑制することができる。また、モータ側カップリング部4の第1凸部42のモータ軸線方向Lにおける高さH1は、伝達部材5の第1凹部51のモータ軸線方向Lにおける深さD1より小である。このため、第1凸部42と第1凹部51の底部との間に遊びがあるので、第1凸部42と第1凹部51の底部との当接に起因する振動や異音の発生を抑制することができる。
【0067】
また、本形態では、モータ軸150を回転可能に支持する2つのラジアル軸受170、190(モータ側ラジアル軸受)と、ウォーム2を回転可能に支持する2つのラジアル軸受71、72(ウォーム側ラジアル軸受)とが設けられている。このため、モータ装置1の製造時、モータ10およびウォーム2を個別に搭載することができる。
【0068】
[実施の形態2]
図7は、本発明の実施の形態2に係るモータ装置1の説明図である。なお、本形態および後述する形態は、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0069】
図7に示すように、本形態のモータ装置1には、ウォーム2をウォームホイール3が位置する側とは反対側に向けて押圧する側圧Fを発生させる側圧印加機構7が設けられている。このため、ウォーム2とウォームホイール3とを適正に噛合させることができる。
【0070】
本形態において、側圧印加機構7は、ウォーム2のモータ本体110側とは反対側の端部291に設けられている。より具体的には、ウォーム2の端部291は半球面になっており、側圧印加機構7は、モータ軸線方向Lに対して斜めに傾いてウォーム2の端部291をモータ軸線方向Lで支持するスラスト軸受73を備えている。
【0071】
かかる構成によれば、ウォーム2の端部291というスペース的に余裕のある個所に側圧印加機構7を設けることができる。また、スラスト軸受73を傾かせるという簡素な構成でウォーム2に側圧Fを印加することができる。
【0072】
[実施の形態3]
図8は、本発明の実施の形態3に係るモータ装置1の説明図である。図8に示すように、本形態では、ウォーム2を径方向からみたとき、バネ受け面230は、螺旋溝21とウォームホイール3とが噛合している範囲よりモータ本体110側に位置する。このため、ウォーム2を径方向からみたとき、バネ配置穴23は、螺旋溝21とウォームホイール3とが噛合している範囲W0と重なっていない。このため、ウォーム2において、螺旋溝21とウォームホイール3とが噛合している部分の剛性を高めることができる。
【0073】
本形態において、2つのラジアル軸受71、72(ウォーム側ラジアル軸受)のうち、モータ本体側に位置するラジアル軸受71は、ラジアル軸受72より、螺旋溝21が形成されている領域W1から遠い。すなわち、螺旋溝21が形成されている領域W1とラジアル軸受71との距離d1は、螺旋溝21が形成されている領域W1とラジアル軸受72との距離d2より長い。
【0074】
また、2つのラジアル軸受71、72(ウォーム側ラジアル軸受)のうち、モータ本体側に位置するラジアル軸受71は、ラジアル軸受72より、螺旋溝21とウォームホイール3とが噛合している領域W0から遠い。すなわち、螺旋溝21とウォームホイール3とが噛合している領域W0とラジアル軸受71との距離d3は、螺旋溝21とウォームホイール3とが噛合している領域W0とラジアル軸受72との距離d4より長い。
【0075】
[実施の形態4]
図9は、本発明の実施の形態4に係るモータ装置1におけるモータ10とウォーム2との連結部分をモータ10の出力側L1からみた説明図であり、図9(a)、(b)は各々、モータ10とウォーム2との連結部分の斜視図、および分解斜視図である。図10は、本発明の実施の形態4に係るモータ装置1におけるモータ10とウォーム2との連結部分をモータ10の反出力側L2からみた説明図であり、図10(a)、(b)は各々、モータ10とウォーム2との連結部分の斜視図、および分解斜視図である。図11は、本発明の実施の形態4に係るモータ装置1に用いた伝達部材5の説明図であり、図11(a)、(b)、(c)は、伝達部材5のウォーム2側の端面と圧縮コイルバネ8の位置関係を示す説明図、第1凹部の説明図、および第2凹部の説明図である。なお、図11(a)では、第2凹部52をグレーの領域として示してある。
【0076】
図9および図10に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、モータ10のモータ軸150とウォーム2とは、カップリング13(伝達機構)を介して連結されており、カップリング13は、第1カップリング11と第2カップリング12との2段構造になっている。
【0077】
第1カップリング11において、モータ軸150のモータ本体110側とは反対側の端部151(先端部)にはモータ側カップリング部4が連結され、ウォーム2のモータ本体110側の端部27には、モータ側カップリング部4と結合する伝達部材5が連結されている。従って、モータ軸150とウォーム2とは、モータ側カップリング部4および伝達部材5を介して連結されている。モータ側カップリング部4は、モータ本体110とは反対側に向けて突出した第1凸部42とを備えている。伝達部材5は、モータ本体110側の端面に、モータ側カップリング部4の第1凸部42が嵌る溝状の第1凹部51が径方向の全体にわたって形成されている。
【0078】
第2カップリング12において、伝達部材5のモータ本体110側とは反対側の端面には、溝状の第2凹部52が径方向の全体にわたって形成されており、ウォーム2の端部27には、第2凹部52に嵌るウォーム側カップリング部26が形成されている。ウォーム側カップリング部26は、ウォーム2のモータ本体110の端面292において、径方向で離間する位置から伝達部材5のウォーム2側の端面に向けて突出した2つの第2凸部28からなり、2つの第2凸部28が第2凹部52に嵌っている。
【0079】
ウォーム2の内部には、ウォーム2と同軸状にバネ配置穴23が形成されており、ウォーム2の端面292には、バネ配置穴23の開口の周りにおいて、周方向で180°離間する2個所に、モータ本体110側に向けて突出する2つの第2凸部28が形成されている。従って、バネ配置穴23に圧縮コイルバネ8を配置した状態において、圧縮コイルバネ8は、2つの第2凸部28の間に位置する。
【0080】
本形態では、図4等を参照して説明したスペーサー70が設けられておらず、圧縮コイルバネ8の伝達部材5側とは反対側の一方端は、バネ配置穴23の内部でウォーム2に直接当接し、圧縮コイルバネ8の伝達部材5側の他方端は、伝達部材5のウォーム2側の端面に直接当接している。このため、圧縮コイルバネ8と伝達部材5との間や、圧縮コイルバネ8とウォーム2との間に他の部材が介在している場合に比して、振動が発生しにくい。
【0081】
本形態では、図9および図11に示すように、伝達部材5のウォーム側の端面は、圧縮コイルバネ8が当接する位置の中心を挟んで第2方向L52で離間する位置に第2凹部52が2つ形成され、2つの第2凹部52の各々に対して、ウォーム2に形成された第2凸部28が嵌っている。また、圧縮コイルバネ8は、2つの第2凹部52を跨いで伝達部材5に当接している。このため、第2凹部52は、圧縮コイルバネ8が当接する部分の内側で途切れている。従って、圧縮コイルバネ8の位置が径方向に位置ずれした場合でも、圧縮コイルバネ8の端部が第2凹部52に入り込みにくい。それ故、圧縮コイルバネ8が傾くことを抑制することができる。
【0082】
なお。本形態でも、実施の形態1と同様、図11に示すように、ウォーム側カップリング部26の第2凸部28のモータ軸線方向Lにおける高さH2は、伝達部材5の第2凹部52のモータ軸線方向Lにおける深さD2より小であり、第2凸部28の高さH2と第2凹部52の深さD2との差は、第2凹部52内での第2凸部28の第2方向L52と直交する第1方向L51への可動距離E2より大である。また、モータ側カップリング部4の第1凸部42のモータ軸線方向Lにおける高さH1は、伝達部材5の第1凹部51のモータ軸線方向Lにおける深さD1より小であり、第1凸部42の高さH1と第1凹部51の深さD1との差は、第1凹部51内での第1凸部42の第1方向L51と直交する第2方向L52への可動距離E1より大である。
【0083】
再び図9および図10において、本形態において、モータ本体110は、図1および図2に示すフレーム6との間にゴム製の部品からなる弾性体165を挟んでフレーム6に固定されている。より具体的には、モータ本体110の出力側L1に溶接等の方法により固定された端板160では、フレーム6との取り付け用の穴167が切り欠き状に形成されている。また、弾性体165は、円筒状であり、外周面にはモータ軸線方向Lの中央に周溝165aが形成されている。このため、弾性体165を端板160の穴167に装着した状態で、穴167の内周縁が周溝165aに嵌った状態となる。従って、弾性体165の反出力側L2からワッシャー162を介して弾性体165にねじ163を通した後、ねじ163をフレーム6に止めれば、フレーム6との間に弾性体165を挟んで端板160が固定される。従って、モータ本体110は、フレーム6との間に弾性体165を挟んでフレーム6に固定されている。かかる構成によれば、振動がフレーム6に伝わりにくい。
【0084】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、モータ側カップリング部4が第1凸部42を備え、伝達部材5には、第1凸部42が嵌る第1凹部51が形成されていたが、伝達部材5が第1凸部を備え、モータ側カップリング部4に第1凸部42が嵌る第1凹部が形成されている構成であってもよい。また、上記実施の形態では、ウォーム側カップリング部26が第2凸部28を備え、伝達部材5には、第2凸部28が嵌る第2凹部52が形成されていたが、伝達部材5が第2凸部を備え、ウォーム側カップリング部26に第2凸部が嵌る第2凹部が形成されている構成であってもよい。
【0085】
上記実施の形態では、圧縮コイルバネ8の全体をウォーム2のバネ配置穴23に収容した構成を採用したが、バネ配置穴23が、ウォーム2において外周面に螺旋溝21が形成されている位置まで届いておれば、圧縮コイルバネ8の一部がバネ配置穴23からはみ出している構成であってもよい。
【0086】
上記実施の形態では、ウォーム2を樹脂製としたが、他の材料から構成されていてもよい。また、ウォーム2については、軸と螺旋溝が異なる部品により構成されていてもよい。
【0087】
また、上記実施の形態では、モータ10としてステッピングモータを用いたが、他のブラシレスモータやブラシ付きモータ等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、圧縮コイルバネによって、ウォームの軸線方向の位置を規定できるとともに、ウォームに加わったスラスト方向の力の影響を圧縮コイルバネによって吸収することができるモータ装置を提供することができる。また、圧縮コイルバネは、カップリングを構成する2つの凸部の間に配置されているため、ウォームと伝達部材との間にカップリングを設けた場合でも、圧縮コイルバネを配置したモータ装置を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11