(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下部側環状被覆部の径方向に沿った厚みをt1とし、前記上部側環状被覆部の径方向に沿った厚みをt2とした場合に、前記厚みt1および前記厚みt2が、0.24<t2/t1<0.84の条件を充足している、請求項1または2に記載のガス発生器。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に組み込まれるディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス発生器の概略図であり、
図2は、
図1に示すガス発生器の点火器近傍の構造を示す拡大模式断面図である。また、
図3は、
図1に示すガス発生器の下部側シェルに設けられた突状筒部近傍の平面図である。まず、これら
図1ないし
図3を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Aの構造について説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Aは、軸方向の両端が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に構成部品としての固定部30、点火器40、エンハンサカップ50、伝火薬56、ガス発生剤61、下部側支持部材62、上部側支持部材63、クッション材64、フィルタ70等が収容されることで構成されている。また、ハウジングの内部には、上述した構成部品のうちのガス発生剤61が主として収容された燃焼室60が位置している。
【0023】
短尺略円筒状のハウジングは、下部側シェル10と上部側シェル20とを含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20のそれぞれは、金属製の部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。
【0024】
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と周壁部22とを有している。これにより、ハウジングの軸方向の端部は、天板部21と底板部11とによって閉塞されている。なお、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザー溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
【0025】
図1ないし
図3に示すように、下部側シェル10の底板部11の中央部には、天板部21側に向かって突出する突状筒部13が設けられており、これにより下部側シェル10の底板部11の中央部には、窪み部14が形成されている。突状筒部13は、上述した固定部30を介して点火器40が固定される部位であり、窪み部14は、固定部30に雌型コネクタ部34を設けるためのスペースとなる部位である。
【0026】
突状筒部13は、有底略円筒状に形成されており、その天板部21側に位置する軸方向端部には、平面視円形状の開口部15が設けられている。当該開口部15は、点火器40の一対の端子ピン42が挿通される部位である。また、突状筒部13の天板部21側に位置する軸方向端部には、上述した開口部15を取り囲むように天板部21側に向けて複数の凸部13aが突設されている。
【0027】
下部側シェル10は、上述したように金属製の部材をプレス加工することによって製作されている。具体的には、下部側シェル10は、たとえば上型および下型からなる一対の金型を用いて一枚の金属製の板状部材を上下方向からプレスすることにより、図示する如くの形状に成形されることで製作される。
【0028】
ここで、下部側シェル10を構成する金属製の板状部材としては、たとえばプレス前の板厚が概ね1.5mm以上3.0mm以下のステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用され、好適には440MPa以上780MPa以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が好適に利用される。なお、プレス後の板厚としては、その最も薄肉の部分の厚みが概ね1.0mm以上とされることが好ましい。また、プレス加工としては、熱間鍛造で行なわれてもよいし冷間鍛造で行なわれてもよいが、寸法精度の向上の観点から、より好適には冷間鍛造で行われる。
【0029】
上部側シェル20は、上述したように金属製の部材をプレス加工することによって製作されている。具体的には、上部側シェル20は、たとえば上型および下型からなる一対の金型を用いて一枚の金属製の板状部材を上下方向からプレスすることにより、図示する如くの形状に成形されることで製作される。ここで、上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、上述した下部側シェル10の場合と同様に、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用可能である。
【0030】
図2に示すように、点火器40は、点火部41と、当該点火部41に接続された一対の端子ピン42とを含んでいる。点火部41は、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生させる点火薬46と、この点火薬46を着火させるための図示しない抵抗体(ブリッジワイヤ)とを有している。一対の端子ピン42は、点火薬46を着火させるために点火部41に接続されている。
【0031】
より詳細には、点火部41は、上端が閉塞しかつ下端が開口した略円筒状の部材からなるカップ体としてのスクイブカップ44と、当該スクイブカップ44の下端を閉塞する略円盤状の部材からなる塞栓43とを含んでおり、上述した点火薬46および抵抗体は、これらスクイブカップ44と塞栓43とによって規定される空間である点火室45に収容されている。
【0032】
スクイブカップ44は、金属製の内側カップ44aおよび樹脂製の外側カップ44bが重ね合わされた二重構造を有しており、点火室45の上壁および側壁を構成している。塞栓43は、金属製の部材かなり、点火室45の下壁を構成している。また、スクイブカップ44の内側カップ44aの上壁を構成する部分には、スコア44a1が設けられている。
【0033】
点火部41は、スクイブカップ44の下端に設けられた開口に塞栓43が内挿されることで構成されている。このため、スクイブカップ44の側壁は、塞栓43に接触する接触部Aと、点火室45に面することで塞栓43には接触しない非接触部Bとを有している。ここで、接触部Aは、ハウジングの底板部11側に位置しており、非接触部Bは、ハウジングの天板部21側に位置している。なお、スクイブカップ44と塞栓43とは、たとえば溶接等によって接合されている。
【0034】
また、塞栓43は、一対の端子ピン42を支持している。具体的には、塞栓43の中央部には貫通孔が設けられており、当該貫通孔を挿通するように一対の端子ピン42の一方が挿入されて絶縁性の接合部43aによってこれが塞栓43に接合されており、塞栓43の下面の所定位置には、一対の端子ピン42の他方が溶接等によって接合されている。なお、絶縁性の接合部43aの具体的な材質としては、ガラスまたは樹脂等が挙げられる。
【0035】
上記一対の端子ピン42のうちの一方の、点火室45内に位置する先端部分には、塞栓43との間を連結するように上述した抵抗体が取付けられており、当該抵抗体を囲むようにまたはこの抵抗体に近接するように点火薬46が位置している。
【0036】
ここで、抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬46としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。
【0037】
衝突を検知した際には、端子ピン42を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬46が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬46を収納しているスクイブカップ44がスコア44a1を起点に破裂することで外部に流出する。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
【0038】
点火器40は、突状筒部13に設けられた開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態で底板部11に取付けられている。具体的には、底板部11に設けられた突状筒部13の周囲には、樹脂成形体からなる固定部30が設けられており、点火器40は、当該固定部30によって保持されることにより、底板部11に固定されている。
【0039】
固定部30は、型を用いた射出成形(より特定的にはインサート成形)によって形成されるものであり、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15を経由して底板部11の内面の一部から外面の一部にまで達するように絶縁性の流動性樹脂材料を底板部11および点火器40に付着させてこれを固化させることによって形成されている。
【0040】
点火器40は、固定部30の成形の際に、端子ピン42が開口部15を挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態とされ、この状態において点火器40と下部側シェル10との間の空間を充填するように上述した流動性樹脂材料が流し込まれることにより、固定部30を介して底板部11に固定される。
【0041】
射出成形によって形成される固定部30の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において固定部30の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
【0042】
固定部30は、下部側シェル10の底板部11の内面の一部を覆う内側固定部31と、下部側シェル10の底板部11の外面の一部を覆う外側固定部32と、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15内に位置し、上記内側固定部31および外側固定部32にそれぞれ連続する連結部33とを有している。
【0043】
固定部30は、内側固定部31、外側固定部32および連結部33のそれぞれの底板部11側の表面において底板部11に固着している。また、固定部30は、点火器40の点火部41の下端寄りの外周面および下面と、点火器40の端子ピン42の上端寄りの部分の表面とにおいてそれぞれ点火器40に固着している。これにより、開口部15は、端子ピン42と固定部30とによって完全に埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が確保されることで燃焼室60の気密性が確保されている。
【0044】
ここで、
図2に示すように、内側固定部31は、点火器40のスクイブカップ44の外周面を覆う環状の被覆部35を含んでいる。また、当該被覆部35は、段形成面38を有する段形状とされることで下部側環状被覆部36と上部側環状被覆部37とを含んでいる。これら部分の詳細については、後述することとする。
【0045】
図1および
図2に示すように、固定部30の外側固定部32の外部に面する部分には、雌型コネクタ部34が形成されている。この雌型コネクタ部34は、点火器40とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位であり、下部側シェル10の底板部11に設けられた窪み部14内に位置している。この雌型コネクタ部34内には、点火器40の端子ピン42の下端寄りの部分が露出して配置されている。雌型コネクタ部34には、雄型コネクタが挿し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン42との電気的導通が実現される。
【0046】
ここで、固定部30は、上述した突状筒部13に設けられた複数の凸部13aを覆うように形成されている。具体的には、複数の凸部13aは、固定部30の内側固定部31によって覆われることにより、固定部30の内部に埋設された状態とされている。これにより、射出成形後において、底板部11に対して固定部30が相対的に回転してしまうことが未然に防止できることになる。
【0047】
また、固定部30によって覆われることとなる部分の底板部11の表面の所定位置に予め接着剤層が設けられてなる下部側シェル10を用いて上述した射出成形を行なうこととしてもよい。当該接着剤層は、上記底板部11の所定位置に予め接着剤を塗布してこれを硬化させておくことにより、その形成が可能である。
【0048】
このようにすれば、底板部11と固定部30との間に硬化した接着剤層が位置することになるため、樹脂成形体からなる固定部30をより強固に底板部11に固着させることが可能になる。したがって、射出成形後において、底板部11に対して固定部30が相対的に回転してしまうことが未然に防止可能となる。また、底板部11に設けられた開口部15を囲うように上記接着剤層を周方向に沿って環状に設けることとすれば、当該部分においてより高いシール性を確保することも可能になる。
【0049】
ここで、底板部11に予め塗布しておく接着剤としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を原料として含むものが好適に利用され、たとえばシアノアクリレート系樹脂やシリコーン系樹脂を原料として含むものが特に好適に利用される。なお、上述の樹脂材料以外にも、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶ポリマー、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム等を含むものが、上述した接着剤として利用可能である。
【0050】
また、接着剤を塗布する位置は特に限定されるものではないが、たとえば底板部11の突状筒部13が形成された部分における外面(すなわち、固定部30の外側固定部32によって覆われる部分の底板部11の表面)の全面あるいはその一部のみとしたり、底板部11の突状筒部13が形成された部分における内面(すなわち、固定部30の内側固定部31によって覆われる部分の底板部11の表面)の全面あるいはその一部のみとしたりすることができ、さらには固定部30によって覆われる部分の底板部11の表面の全面とすることもできる。
【0051】
また、固定部30によって覆われることとなる部分の点火器40の表面の所定位置に予め接着剤を塗布することで接着剤層を設けておいてもよい。このように構成すれば、上述した底板部11に接着剤層を予め設けた場合と同様に、樹脂成形体からなる固定部30をより強固に点火器40に固着させることが可能になり、当該部分においてより高いシール性を確保することが可能になる。
【0052】
図1に示すように、底板部11には、突状筒部13、固定部30および点火器40を覆うようにエンハンサカップ50が組付けられている。エンハンサカップ50は、底板部11側の端部が開口した略円筒形状を有しており、内部に伝火薬56が収容された伝火室55を含んでいる。エンハンサカップ50は、その内部に設けられた伝火室55が点火器40の点火部41に面することとなるように、ガス発生剤61が収容された燃焼室60内に向けて突出して位置するように配置されている。
【0053】
エンハンサカップ50は、上述した伝火室55を規定する頂壁部51および側壁部52と、側壁部52の開口端側の部分から径方向外側に向けて延設された延設部53とを有している。延設部53は、下部側シェル10の底板部11の内底面に沿って延びるように形成されており、より具体的には、突状筒部13が設けられた部分およびその近傍における底板部11の内底面の形状に沿うように断面略S字状となるように曲成されている。エンハンサカップ50の延設部53は、その径方向外側の部分にフランジ状に延出する先端部54を含んでいる。
【0054】
エンハンサカップ50は、その側壁部52の開口端側の部分が固定部30の被覆部35(より厳密には、下部側環状被覆部36)に圧入されている。また、エンハンサカップ50の延設部53に設けられた先端部54は、底板部11と下部側支持部材62とによって挟み込まれている。これにより、エンハンサカップ50は、固定部30および底板部11に対して固定されている。
【0055】
エンハンサカップ50は、頂壁部51および側壁部52のいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた伝火室55を取り囲んでいる。このエンハンサカップ50は、点火器40が作動することによって伝火薬56が着火された場合に伝火室55内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものであり、その機械的強度は比較的低いものが使用される。
【0056】
そのため、エンハンサカップ50としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。
【0057】
なお、エンハンサカップ50としては、このようなものの他にも、鉄や銅等に代表されるような機械的強度の高い金属製の部材からなり、その側壁部52に開口を有し、当該開口を閉塞するようにシールテープが貼着されたもの等を利用することも可能である。
【0058】
伝火室55に充填された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬56としては、ガス発生剤61を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO
3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物などが用いられる。伝火薬56は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成型されたもの等が利用される。バインダによって成型された伝火薬56の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
【0059】
下部側シェル10および上部側シェル20からなるハウジングの内部の空間のうち、上述のエンハンサカップ50が配置された部分を取り巻く空間には、ガス発生剤61が収容される燃焼室60が位置している。具体的には、上述したように、エンハンサカップ50は、ハウジングの内部に形成された燃焼室60内に突出して配置されており、このエンハンサカップ50の側壁部52の外表面に面する部分に設けられた空間が燃焼室60として構成されている。
【0060】
ガス発生剤61は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤61としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤61が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0061】
ガス発生剤61の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤61の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤61の形状の他にもガス発生剤61の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0062】
また、燃焼室60をハウジングの径方向に取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿ってフィルタ70が配置されている。フィルタ70は、円筒状の形状を有しており、その中心軸がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されることにより、ガス発生剤61が収容された燃焼室60を径方向において取り囲んでいる。
【0063】
フィルタ70は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの、あるいは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。ここで、網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。また、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
【0064】
フィルタ70は、燃焼室60にて発生したガスがこのフィルタ70中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ(残渣)等を除去する除去手段としても機能する。
【0065】
フィルタ70に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、ガス噴出口23が複数設けられている。このガス噴出口23は、フィルタ70を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。上部側シェル20の周壁部22のフィルタ70側に位置する主面には、上記ガス噴出口23を閉塞するようにシールテープ24が貼付されている。このシールテープ24としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、燃焼室60の気密性が確保されている。
【0066】
燃焼室60のうち、底板部11側に位置する端部近傍には、下部側支持部材62が配置されている。下部側支持部材62は、底部に開口が設けられた有底円筒状の形状を有しており、フィルタ70と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ70と底板部11とに実質的に宛がわれて配置されている。これにより、下部側支持部材62は、燃焼室60の上記端部近傍において、底板部11とガス発生剤61との間に位置している。
【0067】
当該下部側支持部材62は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ70の下端と底板部11との間の隙間からフィルタ70の内部を経由することなく流出してしまうことを防止するための流出防止手段である。下部側支持部材62は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
【0068】
燃焼室60のうち、天板部21側に位置する端部には、上部側支持部材63が配置されている。上部側支持部材63は、有底円筒状の形状を有しており、フィルタ70と天板部21との境目部分を覆うように、これらフィルタ70と天板部21とに宛がわれて配置されている。これにより、上部側支持部材63は、燃焼室60の上記端部近傍において、天板部21とガス発生剤61との間に位置している。
【0069】
当該上部側支持部材63は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ70の上端と天板部21との間の隙間からフィルタ70の内部を経由することなく流出してしまうことを防止するための流出防止手段である。上部側支持部材63は、下部側支持部材62と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
【0070】
この上部側支持部材63の内部には、燃焼室60に収容されたガス発生剤61に接触するように環状形状のクッション材64が配置されている。これにより、クッション材64は、燃焼室60の天板部21側の部分において天板部21とガス発生剤61との間に位置することになり、ガス発生剤61を底板部11側に向けて押圧している。このクッション材64は、成形体からなるガス発生剤61が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン)等からなる部材にて構成される。
【0071】
次に、
図1を参照して、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aの動作について説明する。
【0072】
本実施の形態におけるガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。伝火室55に収容された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。この伝火薬56の燃焼によってエンハンサカップ50は破裂または溶融し、上述の熱粒子が燃焼室60へと流れ込む。
【0073】
流れ込んだ熱粒子により、燃焼室60に収容されたガス発生剤61が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。燃焼室60にて発生したガスは、フィルタ70の内部を通過し、その際、フィルタ70によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70によって除去されてハウジングの外周縁部に流れ込む。
【0074】
ハウジングの内圧の上昇に伴い、上部側シェル20のガス噴出口23を閉塞していたシールテープ24による封止が破られ、ガス噴出口23を介してガスがハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。以上により、ガス発生器1Aの動作が完了する。
【0075】
図2を参照して、上述したように、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、樹脂成形体からなる固定部30が、点火器40のスクイブカップ44の外周面に固着して当該外周面を覆う環状の被覆部35を含んでおり、当該被覆部35が、底板部11側に位置する下部側環状被覆部36と、天板部21側に位置する上部側環状被覆部37とを有している。
【0076】
ここで、下部側環状被覆部36は、スクイブカップ44の接触部Aの一部を覆うように設けられており、上部側環状被覆部37は、スクイブカップ44の非接触部Bの一部を覆うように設けられている。また、上部側環状被覆部37の径方向に沿った厚みt2は、下部側環状被覆部36の径方向に沿った厚みt1よりも小さく構成されている(すなわちt1
>t2)。
【0077】
これにより、被覆部35は、スクイブカップ44の軸方向に対して実質的に直交する略平面環状の段形成面38を有する段形状に形成されることになり、点火器40の点火部41は、径方向において当該段形状を有する被覆部35によって保持されることになる。
【0078】
なお、下部側環状被覆部36は、主として、ガス発生器1Aの動作時においても点火器40が固定部30から脱落してしまうことを防止するための保持力を発揮するように設けられた部位である。一方、上部側環状被覆部37は、主として、ガス発生器1Aの動作時において点火器40が作動することによって発生する衝撃を受け止めるように設けられた部位である。
【0079】
このように構成することにより、ガス発生器1Aの動作時において、点火器40が作動することによって生じる衝撃により、樹脂成形体からなる固定部30自体や当該固定部30とこれが固着する部材である下部側シェル10および点火器40(特に点火器40)との間の界面において、ガス発生器1Aの動作に不具合をもたらすような意図しない亀裂が発生することが確実に防止できる。以下、その理由について詳細に説明する。
【0080】
図4は、
図1に示すガス発生器の動作後の点火器近傍の状態を示す模式断面図であり、
図5は、
図1に示すガス発生器において、動作時において不具合が発生しない理由を説明するための模式図である。
【0081】
上述したように、点火器40の作動時においては、点火薬46が燃焼を開始することでスクイブカップ44がスコア44a1を起点に破裂する。その際、点火室45の内部の圧力は大幅に上昇しているため、スクイブカップ44の破裂部分は、径方向外側に向けて大きく開くことになり、その結果、ガス発生器1Aの動作後においては、
図4に示す如くの状態となる。このとき、スクイブカップ44の破裂部分は、上述した点火室45の内部の圧力を受けて変形するため、その変形の基点は、スクイブカップ44の接触部Aと非接触部Bとの境界面近傍となる。
【0082】
ここで、上述したように被覆部35が段形状を有しているため、
図5に示すように、スクイブカップ44が破裂した際に発生する衝撃(その力を図中においてF0で表わしている)は、主として被覆部35のうちの上部側環状被覆部37に加わり(その力を図中においてF1で表わしている)、当該衝撃が、直接的に下部側環状被覆部36に加わる割合が小さくなる。加えて、被覆部35が段形状を有しているため、上部側環状被覆部37が当該力F1を受けて変形することにより、そのエネルギーが上部側環状被覆部37の変形に費やされることになり、上部側環状被覆部37を介して下部側環状被覆部36に伝わる力も大幅に小さいものとなる。
【0083】
したがって、下部側環状被覆部36に加わる衝撃(その力を図中においてF2で表わしている)は、下部側環状被覆部36自体あるいは下部側環状被覆部36と点火器40との界面において亀裂を発生させる程の大きなものとはならず、ガス発生器1Aの動作に不具合をもたらすような意図しない亀裂がこれら部分に発生することがなくなる。
【0084】
なお、上述した上部側環状被覆部37の変形は、単に径方向外側に向けてこれが開くように変形することに限られず、割れや欠け等が生じてこれが破損するような変形となってもよい。すなわち、上部側環状被覆部37は、これが設けられていない場合に下部側環状被覆部36に加わってしまう衝撃を緩和する目的で設けられるものであるため、下部側環状被覆部36自体あるいは下部側環状被覆部36とこれが固着する部材である点火器40(特に点火器40)との間の界面において亀裂が発生していない限りにおいては、これが破損しても差し支えない。
【0085】
以上において説明したように、本実施の形態におけるガス発生器1Aとすることにより、樹脂成形体からなる固定部30と点火器40との界面において大きな亀裂が発生したり、樹脂成形体からなる固定部30自体または当該固定部30とこれが固着する下部側シェル10および点火器40との間の界面においてガス発生器1Aの外部に達するような大きな亀裂が発生したりすることが未然に防止できる。したがって、点火器40に浮き上がりが生じてガス発生剤61の燃焼状態が意図しないものとなったり、ガス発生器1Aの外部に火炎が噴き出されてしまったりするような動作時における不具合の発生が確実に防止できることになる。
【0086】
なお、上述した効果をより確実なものとするためには、
図2を参照して、下部側環状被覆部36の径方向に沿った厚みt1および上部側環状被覆部37の径方向に沿った厚みt2が0.24<t2/t1<0.84の条件を充足するように、ガス発生器1Aを構成することが好ましい(第1条件)。
【0087】
これは、t2/t1≦0.24である場合には、上部側環状被覆部37の厚みが小さ過ぎるため、上部側環状被覆部37の変形による衝撃の吸収が不十分となり、結果として下部側環状被覆部36に大きな衝撃が加わってしまうおそれが高くなるためである。また、0.84≦t2/t1である場合には、上部側環状被覆部37の厚みが大き過ぎるため、上部側環状被覆部37の変形自体が十分に生じないこととなり、結果として下部側環状被覆部36に大きな衝撃が加わってしまうおそれが高くなるためである。
【0088】
また、上述した効果をより確実なものとするためには、
図2を参照して、点火部41の底板部11側の端部から接触部Aと非接触部Bとの境界面までの軸方向長さをL0とし、下部側環状被覆部36の軸方向長さをL1とした場合に、これら軸方向長さL0および軸方向長さL1が0.46<L1/L0<1.47の条件を充足するように、ガス発生器1Aを構成することが好ましい(第2条件)。
【0089】
これは、L1/L0≦0.46である場合には、下部側環状被覆部36によって覆われる部分の接触部Aの軸方向長さが小さ過ぎるため、点火器40の作動時において点火器40を十分に保持することが困難になり、結果として点火器40の浮き上がりが発生してしまうおそれが高くなるためである。また、1.47≦L1/L0である場合には、下部側環状被覆部36によって覆われる部分の非接触部Bの軸方向長さが大き過ぎるため、点火器40の作動時に生じる衝撃を下部側環状被覆部36が直接的に受ける割合が大きくなり、結果として下部側環状被覆部36に大きな衝撃が加わってしまうおそれが高くなるためである。
【0090】
また、上述した効果をより確実なものとするためには、
図2を参照して、点火部41の底板部11側の端部から接触部Aと非接触部Bとの境界面までの軸方向長さL0および下部側環状被覆部36の軸方向長さL1が、L1/L0≦1.00の条件を充足するように、ガス発生器1Aを構成することが好ましい(第3条件)。すなわち、被覆部35の段形成面38が、上記境界面と同一平面上に位置しているか、あるいはハウジングの軸方向に沿って上記境界面よりも底板部11側に位置していることが好ましい。このように構成すれば、下部側環状被覆部36によって非接触部Bが覆われない構成となるため、点火器40の作動時に生じる衝撃を下部側環状被覆部36が直接的に受ける割合を大幅に小さくすることができる。
【0091】
この点に関し、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aは、点火部41の底板部11側の端部から接触部Aと非接触部Bとの境界面までの軸方向長さL0および下部側環状被覆部36の軸方向長さL1がL1<L0となるように構成されたものである。
【0092】
ここで、上記第1条件および第2条件は、共にこれが充足されていることがより好ましいが、これらのいずれかのみが充足されている場合であっても十分な効果が得られ、またこれらのいずれもが充足されていない場合であっても相当程度の効果が得られる。また、上記第1条件および第3条件は、共にこれが充足されていることがより好ましいが、これらのいずれかのみが充足されている場合であっても十分な効果が得られ、またこれらのいずれもが充足されていない場合であっても相当程度の効果が得られる。
【0093】
なお、
図2に示す上部側環状被覆部37の軸方向長さL2は、スクイブカップ44の非接触部Bの少なくとも一部が当該上部側環状被覆部37によって覆われるだけの長さであればよい。しかしながら、上述した衝撃を当該上部側環状被覆部37によってより多く吸収する観点からは、当該軸方向長さL2は、より大きいことが好ましい。
【0094】
また、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aにおいては、下部側環状被覆部36の外周面と上面(すなわち段形成面38)とが繋がる部分の角部、および、下部側環状被覆部36の上面(すなわち段形成面38)と上部側環状被覆部37の外周面とが繋がる部分の角部が、それぞれ傾斜面にて構成されており、また、上部側環状被覆部37の上端がテーパ形状を有するように構成されているが、このような形状を採用する場合においては、上述した下部側環状被覆部36の径方向に沿った厚みt1、上部側環状被覆部37の径方向に沿った厚みt2、点火部41の底板部11側の端部から接触部Aと非接触部Bとの境界面までの軸方向長さL0、および、下部側環状被覆部36の軸方向長さをL1は、図示する如くいずれも実効的な意味においてその寸法が把握されるべきである。
【0095】
(第1変形例)
図6は、本実施の形態に基づいた第1変形例に係るガス発生器の下部側シェルに設けられた突状筒部近傍の平面図である。以下、この
図6を参照して、本実施の形態に基づいた第1変形例に係るガス発生器1A1について説明する。
【0096】
本第1変形例に係るガス発生器1A1は、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aと、下部側シェル10の構成および樹脂成形体からなる固定部30の構成においてのみ相違している。具体的には、
図6に示すように、本第1変形例に係るガス発生器1A1においては、下部側シェル10に設けられた突状筒部13の天板部21側に位置する軸方向端部に平面視略D字状の開口部15が設けられており、当該突状筒部13の軸方向端部には、凸部は設けられていない。一方、固定部30は、当該平面視略D字状の開口部15を埋め込むように設けられており、これに伴って固定部30の突状筒部13に固着する部分の形状が上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aのそれと異なっているものの、その他の部分の形状および構成については、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aのそれと同様である。なお、上述した平面視略D字状の開口部15は、点火器40の一対の端子ピン42が挿通される部位である。
【0097】
このように構成された本第1変形例に係るガス発生器1A1においては、平面視略D字状の開口部15が、底板部11に対して固定部30が相対的に回転してしまうことを防止する手段として機能することになる。すなわち、開口部15の形状が平面視した状態において非点対称であるため、樹脂成形体からなる固定部30が容易には回転することができないことになり、射出成形後において、底板部11に対して固定部30が相対的に回転してしまうことが未然に防止できることになる。
【0098】
このように構成した場合にも、上述した本実施の形態において説明した効果と同様の効果が得られ、さらには、突状筒部13に回転防止のための凸部を設ける必要がなくなるため、さらに容易にかつ安価にガス発生器を製造することが可能になる。
【0099】
(第2変形例)
図7は、本実施の形態に基づいた第2変形例に係るガス発生器の下部側シェルに設けられた突状筒部近傍の平面図である。以下、この
図7を参照して、本実施の形態に基づいた第2変形例に係るガス発生器1A2について説明する。
【0100】
本第2変形例に係るガス発生器1A2は、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aと、下部側シェル10の構成および樹脂成形体からなる固定部30の構成においてのみ相違している。具体的には、
図7に示すように、本第2変形例に係るガス発生器1A2においては、下部側シェル10に設けられた突状筒部13の天板部21側に位置する軸方向端部に平面視樽型形状の開口部15が設けられており、当該突状筒部13の軸方向端部には、凸部は設けられていない。一方、固定部30は、当該平面視樽型形状の開口部15を埋め込むように設けられており、これに伴って固定部30の突状筒部13に固着する部分の形状が上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aのそれと異なっているものの、その他の部分の形状および構成については、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aのそれと同様である。なお、上述した平面視樽型形状の開口部15は、点火器40の一対の端子ピン42が挿通される部位である。
【0101】
このように構成された本第2変形例に係るガス発生器1A2においては、平面視樽型形状の開口部15が、底板部11に対して固定部30が相対的に回転してしまうことを防止する手段として機能することになる。すなわち、開口部15の形状が平面視した状態において非点対称であるため、樹脂成形体からなる固定部30が容易には回転することができないことになり、射出成形後において、底板部11に対して固定部30が相対的に回転してしまうことが未然に防止できることになる。
【0102】
このように構成した場合にも、上述した本実施の形態において説明した効果と同様の効果が得られ、さらには、突状筒部13に回転防止のための凸部を設ける必要がなくなるため、さらに容易にかつ安価にガス発生器を製造することが可能になる。
【0103】
(確認試験)
以下、上述した実施の形態1におけるガス発生器、第1変形例に係るガス発生器および第2変形例に係るガス発生器のそれぞれについて、下部側シェルに設けられた突状筒部の構成が異なることによる性能の差を確認するために行なった第1確認試験および第2確認試験について説明する。
【0104】
第1確認試験においては、実施の形態1におけるガス発生器1A、第1変形例に係るガス発生器1A1および第2変形例に係るガス発生器1A2のそれぞれを実際に複数試作し、それらに設けられた樹脂成形体からなる固定部に回転方向に外力を実際に加えて破損が生じた(すなわち、固定部が底板部に対して相対的に回転した)際の外力の大きさを計測することでその平均値を求めるとともに、当該固定部に設けられた雌型コネクタ部に雄型コネクタを挿し込んで当該雄型コネクタに回転方向に外力を実際に加えて雄型コネクタに破損が生じた際の外力の大きさを計測することでその平均値を求めることとし、これにより固定部に関連する部分の耐久性を確認した。
【0105】
図8は、当該第1確認試験の結果を示すグラフである。当該グラフの縦軸は、固定部または雄型コネクタに加えた外力のトルクの大きさを表わしており、グラフ中に示した各ポイントの当該縦軸に対応したそれぞれの位置が、破損が生じた際のトルクの平均値を表わしている。一方、グラフ中に示した各ポイントに括弧書きで付記した数値は、実施の形態1におけるガス発生器1Aの固定部および雄型コネクタに破損が生じた際のトルクの平均値を基準として、当該実施の形態1におけるガス発生器1A、第1変形例に係るガス発生器1A1および第2変形例に係るガス発生器1A2の固定部および雄型コネクタに破損が生じた際のトルクの平均値をそれぞれ百分率で示したものである。
【0106】
図8に示したように、第1変形例に係るガス発生器1A1および第2変形例に係るガス発生器1A2ともに、雄型コネクタに回転方向に外力が加わった場合における当該雄型コネクタの耐久性は、実施の形態1におけるガス発生器1Aのそれと同等であることが確認された。一方で、第1変形例に係るガス発生器1A1および第2変形例に係るガス発生器1A2ともに、固定部に回転方向に外力が加わった場合における当該固定部の耐久性は、実施の形態1におけるガス発生器1Aのそれよりも低下することが確認された。
【0107】
しかしながら、当該第1変形例に係るガス発生器1A1および第2変形例に係るガス発生器1A2における固定部の破損トルクは、いずれもそれらにおける雄型コネクタの破損トルクを上回っているため、実使用状態を想定した場合に、雄型コネクタが破損するよりも先に固定部が破損することはないと判断でき、いずれの構造を採用しても、固定部が底板部に対して相対的に回転してしまうことが十分に抑制できることが確認された。
【0108】
第2確認試験においては、実施の形態1におけるガス発生器1A、第1変形例に係るガス発生器1A1および第2変形例に係るガス発生器1A2のそれぞれを実際に複数試作し、それらをハイドロバースト試験機にかけることにより、その破壊圧を計測した。ここで、計測に際しては、ハウジングの内部の圧力上昇に伴って突状筒部の開口部が設けられた天板部側の軸方向端部に変形が生じ始めた際の内圧を一次ピークとして計測し、ハウジングの内部から外部に向けてリークが生じた際の内圧を二次ピークとして計測した。なお、ガス発生器の作動時における安定的な動作を確保する観点からは、特に一次ピークが高い値をとることが好ましいと言える。
【0109】
図9は、当該第2確認試験の結果を示すグラフである。当該グラフの縦軸は、ハウジングの内部の圧力の大きさを表わしており、グラフ中に示した各ポイントの当該縦軸に対応したそれぞれの位置が、上述した一次ピークおよび二次ピークが計測された際の圧力の平均値を表わしている。一方、グラフ中に示した各ポイントに括弧書きで付記した数値は、実施の形態1におけるガス発生器1Aの一次ピークおよび二次ピークが計測された際の圧力の平均値を基準として、当該実施の形態1におけるガス発生器1A、第1変形例に係るガス発生器1A1および第2変形例に係るガス発生器1A2の一次ピークおよび二次ピークが計測された際の圧力の平均値をそれぞれ百分率で示したものである。
【0110】
図9に示したように、第1変形例に係るガス発生器1A1および第2変形例に係るガス発生器1A2ともに、一次ピークおよび二次ピークの値は、実施の形態1におけるガス発生器1Aのそれらと同等であることが確認された。したがって、いずれの構造を採用した場合にも、ハウジングの耐圧性を十分に確保することができることが確認された。
【0111】
以上の結果より、実施の形態1におけるガス発生器1A、第1変形例に係るガス発生器1A1および第2変形例に係るガス発生器1A2のいずれの構造を採用しても、高性能でかつ高信頼性のガス発生器とすることができることが実験的にも確認されたと言える。
【0112】
なお、その詳細な説明はここでは省略するが、実施の形態1におけるガス発生器1A、第1変形例に係るガス発生器1A1および第2変形例に係るガス発生器1A2のそれぞれについて実使用条件を想定し、当該実使用条件に基づいてガス発生器が作動した際に生じるハウジングの内部の圧力上昇に伴って樹脂成形部からなる固定部に圧縮変形が生じても当該ガス発生器に不具合が発生しない安全率を算出したところ、いずれの構造のものでもその安全率が非常に高く確保できることも確認されている。
【0113】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2におけるガス発生器の点火器近傍の構造を示す拡大模式断面図である。以下、この
図10を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Bについて説明する。
【0114】
図10に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Bは、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと基本的に同様の構成を有するものであり、点火部41の底板部11側の端部から接触部Aと非接触部Bとの境界面までの軸方向長さL0および下部側環状被覆部36の軸方向長さL1がL0=L1の条件を充足するように構成されている点においてのみ、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと相違している。すなわち、本実施の形態におけるガス発生器1Bは、被覆部35の段形成面38が上記境界面と同一平面上に位置するように構成されたものである。
【0115】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られ、動作時における不具合の発生が確実に防止できる。
【0116】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3におけるガス発生器の点火器近傍の構造を示す拡大模式断面図である。以下、この
図11を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Cについて説明する。
【0117】
図11に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Cは、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと基本的に同様の構成を有するものであり、点火部41の底板部11側の端部から接触部Aと非接触部Bとの境界面までの軸方向長さL0および下部側環状被覆部36の軸方向長さL1がL0<L1の条件を充足するように構成されている点、および、上部側環状被覆部37の軸方向長さL2がより大きく構成されている点においてのみ、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと相違している。すなわち、本実施の形態におけるガス発生器1Cは、被覆部35の段形成面38が上記境界面よりも天板部21側に位置するように構成されたものである。
【0118】
ただし、本実施の形態におけるガス発生器1Cにあっては、点火器40の作動時に生じる衝撃を下部側環状被覆部36が直接的に受ける割合が増加してしまうことを防止するために、点火部41の底板部11側の端部から接触部Aと非接触部Bとの境界面までの軸方向長さL0と下部側環状被覆部36の軸方向長さL1とが、L1/L0<1.47の条件を充足するように構成されている。
【0119】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られ、動作時における不具合の発生が確実に防止できる。
【0120】
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4におけるガス発生器の点火器近傍の構造を示す拡大模式断面図である。以下、この
図12を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Dについて説明する。
【0121】
図12に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Dは、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと基本的に同様の構成を有するものであり、下部側環状被覆部36の外周面と上面(すなわち段形成面38)とが繋がる部分の角部、下部側環状被覆部36の上面(すなわち段形成面38)と上部側環状被覆部37の外周面とが繋がる部分の角部、および、上部側環状被覆部37の外周面と上面とが繋がる部分の角部が、それぞれ被覆部35の軸線を含む断面において直角形状となるように構成されている点においてのみ、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと相違している。
【0122】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られ、動作時における不具合の発生が確実に防止できる。
【0123】
(実施の形態5)
図13は、本発明の実施の形態5におけるガス発生器の点火器近傍の構造を示す拡大模式断面図である。以下、この
図13を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Eについて説明する。
【0124】
図13に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Eは、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと基本的に同様の構成を有するものであり、スクイブカップ44の軸方向長さおよび塞栓43の軸方向がいずれもより小さく構成されている点、および、上部側環状被覆部37の径方向に沿った厚みt2がより大きく構成されている点においてのみ、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと相違している。
【0125】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られ、動作時における不具合の発生が確実に防止できる。
【0126】
(検証試験)
以下、上述した本発明の実施の形態1ないし5に従った実施例に係るガス発生器を実際に試作し、これを動作させた場合の動作状況を検証した検証試験について説明する。なお、比較のために、上述した本発明の実施の形態1ないし5に従っていない比較例に係るガス発生器についてもこれを実際に試作し、それらを動作させた場合の動作状況についてもあわせて説明を行なう。
【0127】
図14は、実施例および比較例に係るガス発生器を動作させた場合の動作状況を検証した検証試験の条件および結果をまとめた表である。なお、
図14中に示す実施例1ないし10に係るガス発生器は、いずれも被覆部が段形状を有するように構成したものであり、比較例1ないし3に係るガス発生器は、いずれも被覆部に段形状を設けずにこれが所定の厚みを有する円筒状となるように構成したものである。なお、比較例1ないし3に係るガス発生器については、当該円筒状の被覆部の寸法を下部側環状被覆部の寸法を示す欄において記載している。
【0128】
図14に示すように、実施例1ないし10および比較例1ないし3に係るガス発生器においては、いずれも点火部の底板部側の端部から接触部と非接触部との境界面の軸方向長さL0を2.00mmに設定した。また、実施例1ないし10に係るガス発生器においては、下部側環状被覆部の径方向の厚みt1を2.65mmに設定し、比較例1ないし3に係るガス発生器においては、円筒状の被覆部の径方向の厚みを2.65mmに設定した。
【0129】
実施例1ないし10に係るガス発生器においては、下部側環状被覆部の軸方向長さL1、上部側環状被覆部の径方向の厚みt2および軸方向長さL2がそれぞれのガス発生器の間で異なることとなるように、これらの寸法を異ならせた。また、比較例1ないし3に係るガス発生器においても、円筒状の被覆部の軸方向長さがそれぞれのガス発生器の間で異なることとなるように、当該寸法を異ならせた。なお、その具体的な寸法は、
図14に示すとおりである。
【0130】
また、実施例1ないし10および比較例1ないし3に係るガス発生器においては、突状筒部に設けられる端子ピンを挿通させるための開口部の形状をいずれも平面視円形状とし、当該突状筒部の天板部側に位置する軸方向端部に当該開口部を取り囲むように天板部側に向けて突出する凸部をいずれも合計4つずつ設けた。
【0131】
ここで、実施例1ないし10および比較例1ないし3に係るガス発生器としてそれぞれ6サンプルずつ試作品を準備し、このうちの3サンプルを高温環境下において動作させ、残る3サンプルを低温環境下において動作させた。
【0132】
検証に際しては、実施例1ないし10に係るガス発生器について、動作後の各サンプルにおける下部側環状被覆部の破損の有無および破損の程度、上部側環状被覆部の破損の有無、点火器の浮き上がりの有無をそれぞれ目視等によって確認し、比較例1ないし3に係るガス発生器について、円筒状の被覆部の破損の有無および破損の程度、点火器の浮き上がりの有無をそれぞれ目視等によって確認した。なお、比較例1ないし3に係るガス発生器の各サンプルにおける円筒状の被覆部の破損の有無および破損の程度については、下部側環状被覆部の破損の有無および破損の程度を示す欄において記載している。
【0133】
また、判定に際しては、各サンプルのうちのいずれか1つ以上に下部側環状被覆部の大きな破損または点火器の浮き上がりが有った場合にこれを「不可」とし、各サンプルのうちのいずれにも下部側環状被覆部の破損および点火器の浮き上がりが無かった場合にこれを「良」とし、下部側環状被覆部に破損があるもののその程度が小さくかつ点火器の浮き上がりが無かった場合にこれを「可」とした。なお、下部側環状被覆部の破損の程度は、外部にまで達する亀裂が発生したものを大きな破損(破損大)とし、外部にまで達しない軽微な損傷が発生したものを小さな破損(破損小)とした。
【0134】
その結果、
図14に示すように、実施例1ないし4,6,7,9および10におけるガス発生器においていずれも「良」の結果が得られ、実施例5および8におけるガス発生器においていずれも「可」の結果が得られ、比較例1ないし3におけるガス発生器においていずれも「不可」の結果が得られた。
【0135】
ここで、比較例1に係るガス発生器において点火器の浮き上がりが生じた原因は、円筒状の被覆部によって覆われる部分の接触部の軸方向長さが小さ過ぎるため、点火器の作動時において点火器を十分に保持することが困難になったためと考察される。
【0136】
また、比較例2,3に係るガス発生器において円筒状の被覆部に破損が生じた原因は、接触部のみならず非接触部を覆う部分の被覆部についてもこれが分厚いものであるため、点火器の作動時に生じる衝撃が当該円筒状の被覆部の全体に大きな衝撃として加わったためと考察される。
【0137】
一方、実施例1ないし10に係るガス発生器において、下部側環状被覆部に破損が生じないかあるいは生じてもこれが軽微であり、また点火器の浮き上がりも生じなかった理由は、適切な寸法の下部側環状被覆部および上部側環状被覆部としたことにより、点火器の作動時に生じる衝撃が直接的に下部側環状被覆部に加わる割合が小さくなるとともに、当該衝撃によって上部側環状被覆部が適切に変形することでそのエネルギーが吸収され、そのため上部側環状被覆部を介して下部側環状被覆部に伝わる力が大幅に小さいものなり、結果として下部側環状被覆部に加わった衝撃が非常に小さいものとなったためと考察される。
【0138】
なお、「良」または「可」と判定された実施例1ないし10に係るガス発生器において、上部側環状被覆部の径方向に沿った厚みt2の最小値は0.65mmであり、また最大値は2.20mmであることに鑑み、これらを下部側環状被覆部の径方向に沿った厚みt1(2.65mm)に関連付けた場合に、その比率(t2/t1)は、上述した0.24<t2/t1<0.84の範囲が好適であることが理解される。また、「良」と判定された実施例1ないし4,6,7,9および10に係るガス発生器において、上部側環状被覆部の径方向に沿った厚みt2の最大値が1.75mmであることを考慮すれば、上記比率(t2/t1)は、0.24<t2/t1<0.67の範囲が特に好適であることが理解される。
【0139】
また、「良」または「可」と判定された実施例1ないし10に係るガス発生器において、下部側環状被覆部の軸方向長さL1の最小値は0.93であり、また最大値は2.93であることに鑑み、これらを点火部の底板部側の端部から接触部と非接触部との境界面の軸方向長さL0(2.00mm)に関連付けた場合に、その比率(L1/L0)は、上述した0.46<L1/L0<1.47の範囲が好適であることが理解される。また、「良」と判定された実施例1ないし4,6,7,9および10に係るガス発生器において、上部側環状被覆部の軸方向長さL1の最大値が2.33mmであることを考慮すれば、上記比率(L1/L0)は、0.46<L1/L0<1.17の範囲が特に好適であることが理解される。
【0140】
以上の結果より、上述した本発明の実施の形態1ないし5におけるガス発生器とすることにより、動作時における不具合の発生が確実に防止できることが確認された。
【0141】
上述した本発明の実施の形態1ないし5およびその変形例においては、金属製の部材をプレス加工することによって成形されたプレス成形品にて上部側シェルおよび下部側シェルを構成した場合を例示したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、プレス加工と他の加工(鍛造加工や絞り加工、切削加工等)との組み合わせによって形成された上部側シェルおよび下部側シェルを使用することとしてもよいし、上記他の加工のみによって形成された上部側シェルおよび下部側シェルを使用することとしてもよい。
【0142】
また、上述した本発明の実施の形態1ないし5およびその変形例においては、下部側シェルに突状筒部を設けた場合を例示したが、当該突状筒部が設けられない構成のガス発生器に本発明を適用することも当然に可能である。
【0143】
さらには、上述した本発明の実施の形態1ないし5およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨に照らして許容される範囲で当然に相互に組み合わせることが可能であり、たとえば実施の形態4において示した被覆部の角部の形状を、実施の形態2,3および5に適用することが可能である。また、実施の形態1に基づいた第1変形例または第2変形例において示した突状筒部の構成を、実施の形態2ないし5に適用することも可能である。また、ハウジングや点火器、固定部、エンハンサカップ等の各種構成部品の具体的な形状等についても、当然に適宜その変更が可能である。たとえば、点火器のスクイブカップを二重構造とせずに、これを上述した内側カップおよび外側カップのいずれか一つにて構成することとしてもよい。
【0144】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は請求の範囲によって画定され、また請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。