特許第6243416号(P6243416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243416インデン誘導体、その製造方法および医薬品としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243416
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】インデン誘導体、その製造方法および医薬品としての使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/14 20060101AFI20171127BHJP
   C07D 213/38 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 213/61 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 213/64 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 231/12 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 239/26 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 249/06 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 261/08 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 295/023 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 295/03 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 295/033 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 295/073 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 295/096 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 333/20 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 401/10 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/4453 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/451 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C07D211/14CSP
   C07D213/38
   C07D213/61
   C07D213/64
   C07D231/12 C
   C07D239/26
   C07D249/06 501
   C07D261/08
   C07D295/023
   C07D295/03
   C07D295/033
   C07D295/073
   C07D295/096
   C07D333/20
   C07D401/10
   A61K31/4453
   A61K31/451
   A61K31/495
   A61K31/496
   A61K31/506
   A61K31/5375
   A61K31/5377
   A61K31/55
   A61K31/551
   A61P1/04
   A61P1/12
   A61P3/04
   A61P3/06
   A61P9/12
   A61P19/02
   A61P19/06
   A61P25/06
   A61P25/08
   A61P25/22
   A61P25/24
   A61P25/28
   A61P25/30
   A61P27/06
   A61P29/00
   A61P35/00
   A61P37/00
   A61P43/00 111
【請求項の数】13
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2015-519201(P2015-519201)
(86)(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公表番号】特表2015-521990(P2015-521990A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】EP2013063989
(87)【国際公開番号】WO2014006071
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】12382268.6
(32)【優先日】2012年7月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515005356
【氏名又は名称】ラボラトリオス・デル・ドクトル・エステヴェ・エス・ア
【氏名又は名称原語表記】LABORATORIOS DEL DR. ESTEVE, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】アルカルデ‐パイス,マリア,デ・ラス・エルミタス
(72)【発明者】
【氏名】アルマンサ‐ロサレス,カルメン
(72)【発明者】
【氏名】ディアス‐フェルナンデス,ホセ‐ルイス
(72)【発明者】
【氏名】メスクィダ‐エステヴェス,マリア,デ・レス・ノイス
(72)【発明者】
【氏名】パロマ‐ロメウ,ラウラ
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−514915(JP,A)
【文献】 特表2008−510768(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/098961(WO,A1)
【文献】 米国特許第05292736(US,A)
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry,1998年,Vol.41,No.21,p.3940-3947
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、
、R、およびRは、独立して、水素または任意選択により少なくとも一置換されている分岐鎖状もしくは非分岐鎖状の飽和もしくは不飽和脂肪族基C1〜10から選択され、ただし、RおよびRは常に同一であり;
およびRは、架橋窒素と共に、C3〜9ヘテロシクロアルキルを形成し、前記C3〜9ヘテロシクロアルキルは、任意選択により環員として少なくとも1つの追加のヘテロ原子を含み、ならびに任意選択により分岐鎖状もしくは非分岐鎖状の飽和もしくは不飽和脂肪族基C1〜10によって置換されているか、または任意選択によりC1〜6アルキルまたはハロゲンで任意に一置換されるアリール基によって置換されており;
は、C1〜6アルキル基、直鎖状もしくは分岐鎖状のC1〜6アルコキシ基、任意選択により少なくとも一置換されているフェニル基、−F、−Cl、−I、−Br、−CF、−CHF、−CHF、−CN、−OH、−SH、−NH、オキソ、−(C=O)R’、−SR’、−SOR’、−SOR’、−N(C=O)OR’、−NHR’、及び−NR’R”(この場合、各置換基のR’および任意選択によりR”は、独立して、直鎖状もしくは分岐鎖状のC1〜6アルキル基を表す)からなる群から独立して選択される置換基によって、任意選択により一置換もしくは多置換されている5員環もしくは6員環のアリールもしくはヘテロアリール基である]の化合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩、立体異性体、もしくは溶媒和物。
【請求項2】
、R、およびRが、水素またはC1〜6アルキル基から独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRが、架橋窒素と共に、以下:
【化2】

[式中、各Rは、H、C1〜6アルキル基、または任意選択によりハロゲンで置換されているフェニル基から独立して選択される]から選択される基を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、以下:
【化3】

[式中、各Rは、H、C1〜6アルキル、ハロゲン、または−OR’基(この場合、R’は、直鎖状または分岐鎖状C1〜6アルキル基を表す)から独立して選択される]から選択される基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
、R、およびRが、水素またはC1〜6アルキル基から独立して選択され;
およびRが、架橋窒素と共に、以下:
【化4】

[式中、各Rは、H、C1〜6アルキル基、または任意選択によりハロゲンで置換されているフェニル基から独立して選択される]から選択される基を形成し、
が、以下:
【化5】


[式中、各Rは、H、C1〜6アルキル基、ハロゲン、または−OR’基(この場合、R’は、直鎖状または分岐鎖状C1〜6アルキル基を表す)から独立して選択される]から選択される基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
以下:
[1]4−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[2]1−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)アゼパンヒドロクロリド、
[3]4−(2−(7−(ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[4]1−(2−(7−(3−フルオロピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[5]1−メチル−4−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[6]1−フェニル−4−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[7]1−(3−クロロフェニル)−4−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[8]1−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペリジンマレエート、
[9]1−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)アゼパンマレエート、
[10]4−フェニル−1−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペリジンマレエート、
[11]4−(2−(2−メチル−7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[12]1−メチル−4−(2−(2−メチル−7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[13]4−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[14]1−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−フェニルピペラジンマレエート、
[15]1−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペリジンマレエート、
[16]1−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[17]1−(2−(7−(3−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[18]4−(2−(7−(3−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[19]4−(2−(7−(3,4−ジクロロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[20]1−(2−(7−(3,4−ジクロロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[21]4−(2−(7−(4−メトキシフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[22]1−(2−(7−(4−メトキシフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[23]1−(2−(7−(3,4−ジメトキシフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[24]4−(2−(7−(3,4−ジメトキシフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[25]4−(2−(7−(チオフェン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[26]1−メチル−4−(2−(7−(チオフェン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[27]1−(2−(7−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[28]3,5−ジメチル−4−(3−(2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル)−1H−インデン−7−イル)イソオキサゾールマレエート、
[29]5−(3−(2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル)−1H−インデン−7−イル)ピリミジンマレエート、
[30]1−メチル−4−(2−(7−(ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[31]1−メチル−4−(2−(7−(ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−1,4−ジアゼパンマレエート、
[32]1−メチル−4−(2−(2−メチル−7−(ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[33]1−(2−(7−(2−フルオロピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[34]4−(2−(7−(ピリジン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[35]1−メチル−4−(2−(7−(ピリジン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[36]1−(2−(7−(6−メトキシピリジン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[37]1−(2−(7−(6−フルオロピリジン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[38]1−メチル−4−(2−(7−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[39]4−(2−(7−(6−メトキシピリジン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[40]1−メチル−4−(2−(6−ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[41]1−(2−(6−(2−フルオロピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
並びにこれらの薬学的に許容可能な塩、及び溶媒和物からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
医薬品としての使用のための請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
シグマレセプター媒介性疾患または症状の処置または予防における使用のための化合物であって、
前記疾患または症状が、神経因性疼痛と炎症性疼痛とを含む疼痛、あるいは異痛および/または痛覚過敏を伴う他の疼痛の症状であり、または、
前記疾患が、下痢、リポタンパク異常、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肥満、偏頭痛、関節炎、高血圧症、不整脈、潰瘍、緑内障、学習障害、記憶障害、注意欠落、認知障害、神経変性疾患、脱髄性疾患、薬物中毒および化学物質中毒(コカイン、アンフェタミン、エタノール、およびニコチンなど)、遅発性ジスキネジア、てんかん、脳卒中、ストレス、癌、鬱病と不安神経症と統合失調症とを含む神経疾患;炎症または自己免疫疾患である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記異痛が、機械的異痛または熱的異痛である、請求項に記載の化合物。
【請求項10】
前記神経因性疼痛が痛覚過敏である、請求項に記載の化合物。
【請求項11】
下記の一般式(I):
【化6】

[式中、R、R、R、R、R、およびRは請求項1と同じ意味を有する]の化合物の製造方法であって、不活性溶媒中においての、塩基の存在下での、
一般式(II):
【化7】

の化合物と、一般式(III):
【化8】

の化合物との反応、それに続くプロトン酸および脱水剤の存在下での還元を含む、製造方法。
【請求項12】
一般式(I):
【化9】

[式中、R、R、R、R、R、およびRは請求項1と同じ意味を有する]の化合物の製造方法であって、不活性溶媒中においての、塩基および任意選択により触媒の存在下での、一般式(VI):
【化10】

[式中、Xはハロゲンである]の化合物と、一般式(V):
【化11】

[式中、各Rは、独立して、水素またはC1〜6アルキル基を表すか、あるいは両方のRが、架橋ホウ素と共に、ボロン酸環状エステルを形成する」の化合物との反応を含む、製造方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の一般式(I)の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、もしくは溶媒和物と、少なくとも薬学的に許容される担体、添加剤、助剤、またはビヒクルとを含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シグマレセプター、とりわけシグマ−1レセプターに対して高い親和性を有する新規のインデン誘導体、ならびにそれらの製造方法、それらを含む組成物、および医薬品としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
新規の治療剤に対する探求は、近年、標的の疾患に関連するタンパク質および他の生体分子の構造についてのより一層の理解によって大いに助力された。これらのタンパク質の重要な分類の1つは、オピオイドの不快性、幻覚誘発性、および心臓刺激性の作用に関連し得る中枢神経系(CNS)の細胞表面レセプターであるシグマ(σ)レセプターである。シグマレセプターの生物学的および機能についての研究から、シグマレセプターリガンドが、精神病、および運動性疾患(例えば、筋緊張異常および遅発性ジスキネジア)、およびハンチントン舞踏病もしくはトゥーレット症候群に関連する運動障害、およびパーキンソン病における運動障害、の処置において有用であり得る根拠が示されている(Walker,J.M et al,Pharmacological Reviews,1990,42,355(非特許文献1))。既知のシグマレセプターリガンドであるリムカゾールは、精神病の処置において臨床的に効果を示すことが報告されている(Snyder,S.H.,Largent,B.L.,J.Neuropsychiatry 1989,1,7(非特許文献2))。シグマ結合部位は、ある特定のオピエートベンゾモルファンの右旋性異性体、例えば、(+)−SKF−10047、(+)−シクラゾシン、および(+)−ペンタゾシン、に対して、さらにはいくつかの催眠剤、例えばハロペリドール、に対しても、優先的な親和性を有する。
【0003】
本出願において使用される「シグマレセプター」は周知であり、以下の引用:「この結合部位は、オピオイド、NMDA、ドーパミン作用性、および他の既知の神経伝達物質またはホルモンレセプターファミリーとは異なる典型的なタンパク質を表している」(G.Ronsisvalle et al.Pure Appl.Chem.73,1499−1509(2001)(非特許文献3))を用いて定義される。
【0004】
シグマレセプターには少なくとも2つのサブタイプがあり、これらのタイプは、その薬理活性薬(pharmacoactive drug)の立体選択的異性体によって識別され得る。SKF−10047は、シグマ1(σ−1)部位に対してナノモルの親和性を有し、シグマ2(σ−2)部位に対してマイクロモルの親和性を有する。ハロペリドールは、両方のサブタイプに対して同様の親和性を有する。
【0005】
シグマ−1レセプターは、多数の成体哺乳動物組織(例えば、中枢神経系、卵巣、睾丸、胎盤、副腎、脾臓、肝臓、腎臓、胃腸管)およびその初期段階からの胚発育において発現する非オピオイドタイプ(non−opiaceous type)のレセプターであり、ならびに、明らかに大多数の生理学的機能に関与している。様々な医薬品、例えば、SKF−10047、(+)−ペンタゾシン、ハロペリドール、およびリムカゾール、中でも特に、鎮痛作用、精神安定作用、抗うつ作用、抗健忘作用、抗精神病活性、および神経保護活性を有する既知のリガンド、に対する高い親和性について記載されている。シグマ−1レセプターは、無痛覚症、不安症、依存症、健忘症、うつ病、統合失調症、ストレス、神経保護作用、および精神病に関連するプロセスにおけるその生理的役割の可能性の観点から薬理学的に大きな関心が持たれている[Kaiser et al(1991) Neurotransmissions 7 (1):1−5](非特許文献4)、[Walker,J.M.et al,Pharmacological Reviews,1990,42,355](非特許文献5)、および[Bowen W.D. (2000) Pharmaceutica Acta Helvetiae 74:211−218](非特許文献6)。
【0006】
シグマ−2レセプターも、多くの成体哺乳動物組織(例えば、神経系、免疫系、内分泌系、肝臓、腎臓)において発現する。シグマ−2レセプターは、細胞増殖の調節または細胞の成長において重要な役割を果たし得る新規のアポトーシス経路における構成要素であり得る。この経路は、カルシウムを貯蔵する細胞小器官、例えば、小胞体およびミトコンドリア、に存在する、細胞内膜に結合したシグマ−2レセプターから構成されると思われ、これら細胞小器官からカルシウムを放出させる能力を有する。カルシウムシグナルは、正常な細胞のシグナル伝達経路および/またはアポトーシスの誘発において使用することができる。
【0007】
シグマ−2レセプターのアゴニストは、細胞形態における変化ならびにいくつかのタイプの細胞系統におけるアポトーシスを誘発し、p−糖タンパク質mRNAの発現を調節するので、癌の処置のための抗癌剤として潜在的に有用である。実際に、シグマ−2レセプターアゴニストは、DNAを損傷する一般的な抗癌剤に耐性を示す乳癌細胞系統においてアポトーシスを誘発することが観察されている。さらに、シグマ−2レセプターのアゴニストは、当該アゴニストが細胞毒性を示さない濃度において、これらの抗癌剤の細胞毒性効果を強める。
【0008】
したがって、シグマ−2レセプターのアゴニストは、抗癌剤として、アポトーシスを誘発する投与量または準毒性の投与量において、薬物に対する耐性を回復させる他の抗癌剤と組み合わせて使用することができ、結果、より少ない投与量での抗癌剤の使用を可能にし、その副作用を大幅に抑えることができる。
【0009】
シグマ−2レセプターのアンタゴニストは、典型的な神経弛緩薬によって引き起こされる不可逆の運動性副作用を防ぐことができる。実際に、シグマ−2レセプターのアンタゴニストは、典型的な抗精神病薬、例えば、ハロペリドール、による精神病の長期的な処置により患者に発現する遅発性ジスキネジアの弱化効果を向上させるための薬剤として有用であり得ることが見出されている。シグマ−2レセプターは、これらのレセプターの遮断が有用であり得るある特定の変性疾患においてもある役割を果たすようである。
【0010】
内因性シグマリガンドは知られていないが、プロゲステロンがそれらの1つであることが示唆されている。可能なシグマ−部位媒介性薬物効果としては、グルタミン酸レセプター機能の調節、神経伝達物質反応の調節、神経保護作用の調節、行動の調節、および認知の調節が挙げられる(Quirion,R.et al,Trends Pharmacol.Sci.,1992,13:85−86)(非特許文献7)。ほとんどの研究は、シグマ結合部位(レセプター)がシグナル伝達カスケードの原形質膜要素であることを示唆している。選択的シグマリガンドであると報告されている薬物は、抗精神病薬として評価されてきた(Hanner,M.et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,1996,93:8072−8077)(非特許文献8)。CNS系、免疫系、および内分泌系におけるシグマレセプターの存在は、当該レセプターが、当該3つの系の間をつなぐ役割を果たし得る可能性を示唆している。
【0011】
シグマレセプターのアゴニストもしくはアンタゴニストの治療への応用の可能性を考慮して、多大な努力が、選択的リガンドを見つけ出すことに向けられてきた。したがって、様々なシグマレセプターリガンドが報告されている。
【0012】
例えば、国際公開第2007/098961号(特許文献1)には、シグマレセプターに対して薬理活性を有する4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン誘導体について記載されている。
【0013】
シグマレセプターに対して薬理活性を有するピラゾール誘導体(欧州特許出願公開第1634873号(特許文献2))と同様に、スピロ[ベンゾピラン]またはスピロ[ベンゾフラン]誘導体についても欧州特許出願公開第1847542号(特許文献3)に開示されている。
【0014】
国際公開第2009071657号(特許文献4)においても、シグマレセプターに対して良好な活性を有する三環式トリアゾール化合物について報告されている。
【0015】
治療活性を有するいくつかのインデン誘導体が、先行技術において開示されており、例えば、特許文献米国特許第5092827号(特許文献5)、米国特許第6025394号(特許文献6)、米国特許第5958982号(特許文献7)、米国特許第5965619号(特許文献8)、米国特許第6028116号(特許文献9)、米国特許出願公開第2001/0006965号(特許文献10)、および米国特許出願公開第2001/0020020号(特許文献11)には、乾癬、座瘡、サルコイドーシス、前癌病変、および新生組織形成、ならびに糖尿病性網膜症および黄斑変性の処置に好適なインデン誘導体について記載されている。これらの化合物の治療効果は、特許文献米国特許第6177471号(特許文献12)に記載されているように、cGMP(cGMP PDE)の特異的ホスホジエステラーゼに対するそれらの抑制作用に由来すると思われる。これらの参考文献のいずれも、本発明のインデン誘導体について開示していない。さらに、これらの参考文献のいずれも、インデン誘導体がシグマレセプターに対して活性であり得ることを示唆していない。
【0016】
国際公開第2007054257号(特許文献13)においても、治療活性、すなわち、5−HT6レセプターに対する活性、を有するインデン誘導体について報告されている。しかしながら、これらのインデンはいずれもインデン部分のベンゼン環がスルホンアミド基で置換されているため、本発明のインデンとは異なっている。
【0017】
それにもかかわらず、シグマレセプターに対する薬理活性を有し、効果的かつ選択的であり、良好な「薬効」特性、すなわち、投与、分配、代謝、および排泄に関連する良好な薬剤学的特性を有する化合物を見出すことが依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2007/098961号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1634873号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1847542号
【特許文献4】国際公開第2009071657号
【特許文献5】米国特許第5092827号
【特許文献6】米国特許第6025394号
【特許文献7】米国特許第5958982号
【特許文献8】米国特許第5965619号
【特許文献9】米国特許第6028116号
【特許文献10】米国特許出願公開第2001/0006965号
【特許文献11】米国特許出願公開第2001/0020020号
【特許文献12】米国特許第6177471号
【特許文献13】国際公開第2007054257号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Walker,J.M et al,Pharmacological Reviews,1990,42,355
【非特許文献2】Snyder,S.H.,Largent,B.L.,J.Neuropsychiatry 1989,1,7
【非特許文献3】G.Ronsisvalle et al.Pure Appl.Chem.73,1499−1509(2001)
【非特許文献4】Kaiser et al(1991) Neurotransmissions 7 (1):1−5
【非特許文献5】Walker,J.M.et al,Pharmacological Reviews,1990,42,355
【非特許文献6】Bowen W.D. (2000) Pharmaceutica Acta Helvetiae 74:211−218
【非特許文献7】Quirion,R.et al,Trends Pharmacol.Sci.,1992,13:85−86
【非特許文献8】Hanner,M.et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,1996,93:8072−8077
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、シグマレセプター関連の障害または疾患の処置のために使用することができる、シグマレセプターに対して高い親和性を有する新規の化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
詳細には、本発明は、下記の一般式(I)に示す新規のインデン誘導体である。
【化1】
【0022】
本発明の別の態様は、一般式(I)の化合物を製造するための様々なプロセスである。
【0023】
本発明の別の態様は、シグマレセプター媒介性の疾患または症状の、特にシグマ−1媒介性の疾患または症状の処置または予防のための、一般式(I)のそのような化合物の使用に関する。本発明の化合物が有効な、シグマレセプターによって媒介される疾病または症状の群のうち、下痢、リポタンパク異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肥満、偏頭痛、関節炎、高血圧症、不整脈、潰瘍、緑内障、学習障害、記憶障害、注意欠落、認知障害、神経変性疾患、脱髄性疾患、薬物中毒および化学物質中毒(コカイン、アンフェタミン、エタノール、およびニコチンなど)、遅発性ジスキネジア、 虚血性発作、てんかん、脳卒中、ストレス、癌、神経疾患(特に、鬱病、不安神経症、統合失調症);炎症または自己免疫疾患を列挙することができる。本発明の化合物は、非常に良好であり、とりわけ、疼痛、とりわけ神経因性疼痛、炎症性疼痛、あるいは異痛および/または痛覚過敏を伴う他の疼痛の症状、の処置および予防に有効である。
【0024】
少なくとも1種の薬学的に許容可能な賦形剤と共に、一般式(I)の1種以上の化合物を含む医薬組成物も本発明の目的である。本発明による医薬組成物は、経口または非経口、例えば、経肺、経鼻、経直腸、および/または静脈内、の任意の投与経路において投与されるように適合させることができる。したがって、本発明による処方は、局所適用または全身適用、特に、皮膚、皮下、筋肉内、関節内、腹腔内、肺内、口腔、舌下、鼻腔、経皮、膣内、経口、または非経口適用のために適合させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第一は、一般式(I)に示される。
【化2】
[式中、
、R、およびRは、独立して、水素、または任意選択により少なくとも一置換されている分岐鎖状もしくは非分岐鎖状の飽和もしくは不飽和脂肪族基C1〜10から選択され、ただし、RおよびRは常に同一であり;
およびRは、架橋窒素と共に、(任意選択により環員として少なくとも1つの追加のヘテロ原子を含み、ならびに任意選択により分岐鎖状もしくは非分岐鎖状の飽和もしくは不飽和脂肪族基C1〜10によって置換されているか、または任意選択によりC1〜6アルキルまたはハロゲンで任意に一置換されているアリール基によって置換されている)C3〜9ヘテロシクロアルキルを形成し;
は、C1〜6アルキル基、直鎖状もしくは分岐鎖状のC1〜6アルコキシ基、任意選択により少なくとも一置換されているフェニル基、−F、−Cl、−I、−Br、−CF、−CHF、−CHF、−CN、−OH、−SH、−NH、オキソ、−(C=O)R’、−SR’、−SOR’、−SOR’、−N(C=O)OR’、−NHR’、−NR’R”(この場合、各置換基のR’および任意選択によりR”は、独立して、直鎖状もしくは分岐鎖状のC1〜6−アルキル基を表す)から独立して選択される置換基によって、任意選択により一置換もしくは多置換されている5員環もしくは6員環のアリールもしくはヘテロアリール基である]の化合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩、異性体、プロドラッグ、もしくは溶媒和物に関する。
【0026】
本発明において言及される場合、「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を表す。
【0027】
本発明において言及される場合、「脂肪族基C1〜10」は、任意選択により一置換もしくは多置換されており、ならびに分岐鎖状もしくは非分岐鎖状であってもよく、飽和もしくは不飽和であってもよい。不飽和脂肪族基は、本発明において定義される場合、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基を含む。本発明による好ましい脂肪族基としては、これらに限定されるわけではないが、メチル、エチル、ビニル(エテニル)、エチニル、プロピル、n−プロピル、イソプロピル、アリル(2−プロペニル)、1−プロピニル、メチルエチル、ブチル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルブテニル、ブチニル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、n−ペンチル、イソペンチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、1−メチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、およびn−デシルが挙げられる。本発明により、脂肪族基にとって好ましい置換基は、C1〜6アルキル基、シクロアルキルC3〜9基、直鎖状もしくは分岐鎖状C1〜6アルコキシ基、−F、−Cl、−I、−Br、−CF、−CHF、−CHF、−CN、−OH、−SH、−NH、オキソ、−(C=O)R’、−SR’、−SOR’、−SOR’、−NHR’、−NR’R”(この場合、各置換基におけるR’および任意選択によるR”は、独立して、直鎖状もしくは分岐鎖状のC1〜6−アルキル基を表す)である。
【0028】
本発明において言及される場合、「アルキル基」は、飽和脂肪族基である。それらは、直鎖状もしくは分岐鎖状であり得、ならびに任意選択により置換されている。本発明において表現されるC1〜6アルキルは、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子のアルキル基を意味する。
【0029】
本発明において言及される場合、「シクロアルキル基C3〜9」は、任意選択により非置換、一置換、または多置換であり得る飽和環状炭化水素を意味すると理解される。これらの基において、例えば、C3〜4−シクロアルキルは、C3−またはC4−シクロアルキルを表し、C3〜5−シクロアルキルは、C3−、C4−、またはC5−シクロアルキルを表す。本発明において言及される場合、シクロアルキル基は、任意選択により、少なくとも1つの不飽和を有していてもよいが、芳香族環ではあり得ない。好ましくは、シクロアルキル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、シクロプロピル、2−メチルシクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アセチル、tert−ブチル、アダマンチル、ノルアダマンチル、ピロリン、ピロリジン、ピロリジンオン、ピラゾリン、ピラゾリノン、オキソピラゾリノン、アジリジン、アゼチジン、テトラヒドロピロール、オキシラン、オキセタン、ジオキセタン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロ−2H−チオピラン、ジオキサン、ジオキソラン、オキサチオラン、オキサゾリジン、チイラン、チエタン、チオラン、チアン、チアゾリジン、ピラジンピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アゼパン、またはジアゼパンが挙げられる。シクロアルキル基C3〜9は、本発明において定義される場合、任意選択により、C1〜6アルキル基、直鎖状もしくは分岐鎖状C1〜6アルコキシ基、−F、−Cl、−I、−Br、−CF、−CHF、−CHF、−CN、−OH、−SH、−NH、オキソ、−(C=O)R’、−SR’、−SOR’、−SOR’、−NHR’、−NR’R”(この場合、各置換基におけるR’および任意選択によるR”は、独立して、直鎖状もしくは分岐鎖状のC1〜6−アルキル基を表す)から独立して選択される置換基によって一置換または多置換される。
【0030】
本発明において言及される場合、「ヘテロシクロアルキル」は、任意選択により非置換、一置換、または多置換であり得かつそれらの構造中にS、N、またはOから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する、3〜9個の炭素原子を有する飽和環状炭化水素を意味すると理解される。本発明において言及される場合、ヘテロシクロアルキル基は、任意選択により少なくとも1つの不飽和を有していてもよいが、芳香族環ではあり得ない。好ましくは、ヘテロシクロアルキル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、ピロリン、ピロリジン、ピラゾリン、アジリジン、アゼチジン、テトラヒドロピロール、オキシラン、オキセタン、ジオキセタン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロ−2H−チオピラン、ジオキサン、ジオキソラン、オキサチオラン、オキサゾリジン、チエタン、チオラン、チアン、チアゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アゼパン、またはジアゼパンが挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、本発明において定義される場合、任意選択により、C1〜6アルキル基、直鎖状もしくは分岐鎖状C1〜6アルコキシ基、−F、−Cl、−I、−Br、−CF、−CHF、−CHF、−CN、−OH、−SH、−NH、オキソ、−(C=O)R’、−SR’、−SOR’、−SOR’、−NHR’、−NR’R”(この場合、各置換基におけるR’および任意選択によるR”は、独立して、直鎖状もしくは分岐鎖状のC1〜6−アルキル基を表す)から独立して選択される置換基によって一置換または多置換されている。
【0031】
本発明において言及される場合、「アリール基」は、少なくとも1つの芳香族環を有するが環のうちの1つだけにおいてもヘテロ原子を有さない環系を意味すると理解される。これらのアリール基は、任意選択により、C1〜6アルキル基、直鎖状もしくは分岐鎖状C1〜6アルコキシ基、任意選択により少なくとも一置換されているフェニル基、−F、−Cl、−I、−Br、−CF、−CHF、−CHF、−CN、−OH、−SH、−NH、オキソ、−(C=O)R’、−SR’、−SOR’、−SOR’、−N(C=O)OR’、−NHR’、−NR’R”(この場合、各置換基におけるR’および任意選択によるR”は、独立して、直鎖状もしくは分岐鎖状のC1〜6−アルキル基を表す)から独立して選択される置換基によって一置換または多置換されていてもよい。アリール基の好ましい例としては、これらに限定されるわけではないが、フェニル、ナフチル、フルオランテニル、フルオレニル、テトラリニルもしくはインダニル、またはアントラセニル基が挙げられ、これらは、そうでないことが定義されていない場合、任意選択により一置換もしくは多置換されていてもよい。
【0032】
「ヘテロアリール基」は、少なくとも1つの芳香族環を有する複素環系であって、任意選択により窒素、酸素、および/または硫黄からなる群からの1つ以上のヘテロ原子を含有していてもよく、かつ任意選択により、C1〜6アルキル基、直鎖状もしくは分岐鎖状C1〜6アルコキシ基、F、Cl、I、Br、CF、CHF、CHF、CN、OH、SH、NH、オキソ、(C=O)R’、SR’、SOR’、SOR’、NHR’、NR’R”(この場合、各置換基におけるR’および任意選択によるR”は、独立して、直鎖状もしくは分岐鎖状のC1〜6−アルキル基を表す)から独立して選択される置換基によって一置換または多置換されていてもよい、複素環系を意味すると理解される。ヘテロアリールの好ましい例としては、これらに限定されるわけではないが、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ベンゾ−1,2,5−チアジアゾ−ル、ベンゾチアゾール、トリアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、インドール、ベンゾトリアゾール、ベンゾジオキソラン、ベンゾジオキサン、ベンゾイミダゾール、カルバゾール、およびキナゾリンが挙げられる。
【0033】
本発明によれば、「縮合した」なる用語は、環または環系が別の環または環系に結合していることを意味し、したがって、「環形成された」または「環化された」なる用語も、この種の結合を示すために当業者によって使用される。
【0034】
本発明によれば、「環系」なる用語は、任意選択により少なくとも1個のヘテロ原子を環員として含みかつ任意選択により少なくとも一置換されている飽和炭素環系、不飽和炭素環系、もしくは芳香族炭素環系を含む環系を意味する。当該環系は、他の炭素環系、例えば、アリール基、ナフチル基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基など、に縮合していてもよい。
【0035】
「シクリル基」または「環状系」は、本発明において定義される場合、任意選択により少なくとも1個のヘテロ原子を環員として含みかつ任意選択により少なくとも一置換されている任意の飽和炭素環系、不飽和炭素環系、もしくは芳香族炭素環系を包含する。シクリル基または環状系は、好ましくは、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリル、および/またはスピロ環系を含む。
【0036】
「ヘテロシクリル基」または「複素環系」は、本発明において定義される場合、任意選択により少なくとも一置換されておりかつ少なくとも1個のヘテロ原子を環員として含む任意の飽和炭素環系、不飽和炭素環系、もしくは芳香族炭素環系を包含する。これらのヘテロシクリル基にとって好ましいヘテロ原子は、N、S、またはOである。ヘテロシクリル基にとって好ましい置換基は、本発明によれば、F、Cl、Br、I、NH、SH、OH、SO、CF、カルボキシ、アミド、シアノ、カルバミル、ニトロ、フェニル、ベンジル、−SONH、C1〜6アルキル、および/またはC1〜6−アルコキシである。
【0037】
「塩」なる用語は、活性化合物がイオン形態を取るかまたは荷電されて、対イオン(カチオンまたはアニオン)に結合しているかまたは溶液中に存在しているような、本発明による当該活性化合物の任意の形態を意味すると理解される。これにより、他の分子およびイオンと当該活性化合物との錯体、特に、イオン性相互作用により錯体化されている錯体とも理解される。
【0038】
「生理学的に許容可能な塩」または「薬学的に許容可能な塩」なる用語は、特に、本発明との関連において、生理学的に許容される酸によって形成される(上記において定義されるような)塩、すなわち、特定の活性化合物と、(とりわけ、ヒトおよび/または哺乳動物に使用される場合に)生理学的に許容される無機酸もしくは有機酸とによる塩として、あるいは、(とりわけ、ヒトおよび/または哺乳動物に使用される場合に)生理学的に許容される少なくとも1種の(好ましくは無機の)カチオンによって形成される(上記において定義されるような)塩として、理解される。特定の酸の生理学的に許容される塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、モノ臭化水素酸塩、一塩酸塩もしくは塩酸塩、メチオジド、メタンスルホン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、マンデル酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩、馬尿酸塩、ピクリン酸塩、および/またはアスパラギン酸塩である。特定の塩基の生理学的に許容される塩の例は、アルカリ金属とNHとの塩およびアルカリ土類金属とNHとの塩である。
【0039】
「溶媒和物」なる用語は、本発明による活性化合物が非共有結合を介して別の分子(大抵の場合、極性溶媒)に結合しているような、本発明による活性化合物のあらゆる形態を意味すると理解され、とりわけ、そのようなものとして、水和物およびアルコラート、例えばメタノラート、が挙げられる。
【0040】
「プロドラッグ」なる用語は、その最も広い意味において使用され、in vivoにおいて本発明の化合物へと転化されるそれらの誘導体を包含する。そのような誘導体は、当業者であれば容易に思いつき、ならびに、そのような誘導体として、分子中に存在する官能基に応じて、これらに限定されるわけではないが、本発明の化合物の以下の誘導体:エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩のスルホン酸エステル、カルバメート、およびアミド、が挙げられる。所定の作用化合物のプロドラッグを製造するための周知の方法の例は当業者に既知であり、例えば、Krogsgaard−Larsen et al.“Textbook of Drug design and Discovery”Taylor&Francis(april 2002)に見出すことができる。
【0041】
式(I)の化合物のプロドラッグである任意の化合物が、本発明の範囲内である。特に好ましいプロドラッグは、本発明の化合物が患者に投与される場合に(例えば、経口投与された化合物が血液中により容易に吸収されるようにすることによって)かかる化合物のバイオアベイラビリティーを増大させるもの、または生物学的コンパートメント(例えば、脳またはリンパ系)への親化合物の送達を親種に比べて高めるものである。
【0042】
本発明の特に好ましい実施形態において、R、R、およびRは、水素またはC1〜6アルキルから独立して選択される。
【0043】
本発明の別の好ましい実施形態において、RおよびRは、架橋窒素と共に、以下:
【化3】
[式中、各Rは、H、C1〜6アルキル、または任意選択によりハロゲンで置換されているフェニル基から独立して選択される]から選択される基を形成する。
【0044】
本発明のさらなる別の好ましい実施形態において、Rは、以下:
【化4】
[式中、各Rは、H、C1〜6アルキル、ハロゲン、または−OR’基(この場合、R’は、直鎖状または分岐鎖状C1〜6−アルキル基を表す)から独立して選択される]から選択される基である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態は、式(I)、
、R、およびRが、水素またはC1〜6アルキルから独立して選択され、
およびRが、架橋窒素と共に、以下:
【化5】
[式中、各Rは、H、C1〜6アルキル、または任意選択によりハロゲンで置換されているフェニル基から独立して選択される]から選択される基を形成し、
が、以下:
【化6】
[式中、各Rは、H、C1〜6アルキル、ハロゲン、または−OR’基(この場合、R’は、直鎖状または分岐鎖状C1〜6−アルキル基を表す)から独立して選択される]から選択される基である、の化合物を含む。
【0046】
本発明の好ましい変形例において、式(I)のシグマリガンドは、以下:
[1]4−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[2]1−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)アゼパンヒドロクロリド、
[3]4−(2−(7−(ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[4]1−(2−(7−(3−フルオロピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[5]1−メチル−4−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[6]1−フェニル−4−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[7]1−(3−クロロフェニル)−4−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[8]1−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペリジンマレエート、
[9]1−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)アゼパンマレエート、
[10]4−フェニル−1−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペリジンマレエート、
[11]4−(2−(2−メチル−7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[12]1−メチル−4−(2−(2−メチル−7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[13]4−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[14]1−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−フェニルピペラジンマレエート、
[15]1−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペリジンマレエート、
[16]1−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[17]1−(2−(7−(3−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[18]4−(2−(7−(3−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[19]4−(2−(7−(3,4−ジクロロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[20]1−(2−(7−(3,4−ジクロロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[21]4−(2−(7−(4−メトキシフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[22]1−(2−(7−(4−メトキシフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[23]1−(2−(7−(3,4−ジメトキシフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[24]4−(2−(7−(3,4−ジメトキシフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[25]4−(2−(7−(チオフェン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[26]1−メチル−4−(2−(7−(チオフェン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[27]1−(2−(7−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[28]3,5−ジメチル−4−(3−(2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル)−1H−インデン−7−イル)イソオキサゾールマレエート、
[29]5−(3−(2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル)−1H−インデン−7−イル)ピリミジンマレエート、
[30]1−メチル−4−(2−(7−(ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[31]1−メチル−4−(2−(7−(ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−1,4−ジアゼパンマレエート、
[32]1−メチル−4−(2−(2−メチル−7−(ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[33]1−(2−(7−(2−フルオロピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[34]4−(2−(7−(ピリジン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[35]1−メチル−4−(2−(7−(ピリジン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[36]1−(2−(7−(6−メトキシピリジン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[37]1−(2−(7−(6−フルオロピリジン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
[38]1−メチル−4−(2−(7−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[39]4−(2−(7−(6−メトキシピリジン−3−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエート、
[40]1−メチル−4−(2−(6−ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)ピペラジンマレエート、
[41]1−(2−(6−(2−フルオロピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエート、
またはこれらの薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、もしくは溶媒和物、
から選択される。
【0047】
本明細書において言及される任意の化合物は、そのような特定の化合物ならびにある特定の変形または形態を表すことが意図される。特に、本明細書において言及される化合物は不斉中心を有し得、したがって、様々なエナンチオマー形態またはジアステレオマー形態において存在し得る。したがって、本明細書において言及される任意の所定の化合物は、ラセミ体、1種以上のエナンチオマー形態、1種以上のジアステレオマー形態、およびそれらの混合物のうちの任意の1つを表すことが意図される。同様に、二重結合に関する立体異性または幾何異性も可能であり、したがって、場合によって、当該分子は、(E)−異性体または(Z)−異性体(トランスおよびシス異性体)として存在し得る。当該分子がいくつかの二重結合を有する場合、各二重結合は、それぞれの立体異性を有するであろうし、それは、当該分子の他の二重結合の立体異性と同じかまたは異なり得る。さらに、本明細書において言及される化合物は、アトロプ異性体として存在し得る。本明細書において言及される化合物の、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体、およびアトロプ異性体、ならびにそれらの混合物を含む全ての立体異性体は、本発明の範囲内と見なされる。
【0048】
さらに、本明細書において言及される任意の化合物は、互変異性体として存在し得る。詳細には、互変異性体なる用語は、平衡状態において存在していて一方の異性体型から別の異性体型へと容易に転化される化合物の2つ以上の構造異性体のうちの1つを意味する。一般的な互変異性体の対は、アミン−イミン、アミド−イミド、ケト−エノール、ラクタム−ラクチムなどである。
【0049】
特に明記されない限り、本発明の化合物は、同位体標識された形態、すなわち、1つ以上の同位体富化された原子の存在においてのみ異なる化合物、を含むことも意味される。例えば、少なくとも1つの水素原子が重水素または三重水素によって置き換えられているか、または少なくとも1つの炭素が13C−または14C−富化炭素によって置き換えられているか、または少なくとも1つの窒素が15N−富化窒素によって置き換えられていることを除いて本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0050】
式(I)の化合物またはそれらの塩もしくは溶媒和物は、好ましくは、薬学的に許容可能な形態または実質的に純粋な形態である。薬学的に許容可能な形態とは、とりわけ、希釈剤および担体など通常の医薬品添加物を除いて、薬学的に許容可能なレベルの純度を有し、かつ通常の投与量レベルにおいて有毒であると見なされる物質を含まないことを意味する。原薬の純度レベルは、好ましくは、50%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは90%超である。好ましい実施形態において、純度レベルは、式(I)の化合物またはその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグの95%を超える。
【0051】
別の態様において、本発明は、一般式(I)の化合物を得るためのプロセスに関する。本発明の全ての化合物誘導体を得るための2つの手順が開発されており、本明細書において、当該手順は、以下の方法AおよびBにおいて説明される。
【0052】
方法A
第一プロセスにおいて、一般式(I):
【化7】
[式中、R、R、R、R、R、およびRは、上記において定義されたのと同じ意味を有する]の化合物は、不活性溶媒中において、塩基の存在下での、一般式(II):
【化8】
の化合物と、一般式(III):
【化9】
の化合物との反応、およびそれに続く、プロトン酸および脱水剤の存在下での還元によって調製される。
【0053】
方法Aによる式(I)の化合物の合成のための基本的経路は、下記のスキーム1に表される。
スキーム1
【化10】
【0054】
方法Aによって式(I)の化合物を得るプロセスは、塩基および好適な溶媒の存在下での、式(II)の化合物とアセトアミド(III)とのアルドールタイプの縮合と、それに続いてのアミド基の還元および異性化とを含む。
【0055】
この反応は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの反応不活性溶媒中において行われる。使用される塩基は、アセチル基から水素を脱離させるほど十分強くなければならず、例えば、強リチウム化塩基、例えば、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)、ブチルリチウム(BuLi)、である。脱水剤は、酸、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、HSO水溶液、p−トルエンスルホン酸、あるいはHSOおよび酢酸の水溶液から選択することができる。還元剤は、無機ヒドリド(例えば、水素化アルミニウムリチウムまたは水素化アルミニウム)、および無機酸の溶液(例えば、好適な溶媒中における硫酸または塩酸)に由来するプロトン酸から選択することができる。
【0056】
式(II)の化合物は、当業者に一般的に知られている方法により、ハロゲン化インダノン(IV)と有機ボロン酸誘導体(V)とのSuzukiカップリングによって得られる(J.Med.Chew.2005,48,5131;Org.Lett.2010,228)。
【0057】
アセトアミド(III)は、市販されているか、またはエタノールなどの好適な溶媒中においての、都合の良い置換アミンと無水酢酸とのN−アセチル化によって得られる。
【0058】
ハロゲン化インダノン(IV)および有機ボロン酸誘導体(V)は市販されている。
【0059】
方法B
第二プロセスにおいて、下記の一般式(I):
【化11】
[式中、R、R、R、R、R、およびRは、上記において言及されたのと同じ意味を有する]の化合物は、不活性溶媒中においての、塩基および任意選択により触媒の存在下での、下記の一般式(VI):
【化12】
[式中、Xはハロゲンである]の化合物と、下記の一般式(V):
【化13】
[式中、各Rは、独立して、水素またはC1〜6アルキルを表すか、あるいは両方のRが、架橋ホウ素と共に、ボロン酸環状エステル、例えばボロン酸ピナコールエステル、を形成する」の化合物との反応によって調製される。
【0060】
方法Bによる式(I)の化合物の合成のための基本的経路は、下記のスキーム2に表される。
スキーム2
【化14】
【0061】
方法Bによって式(I)の化合物を得るためのプロセスは、好適な触媒(例えば、パラジウム触媒)、塩基、および好適な溶媒の存在下での、式(VI)の化合物と有機ボロン酸誘導体(V)とによるSuzukiカップリングを含む。
【0062】
この反応は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルエーテル、エタノール、水などの反応不活性溶媒中において行われる。パラジウム触媒は、Pd(II)またはPd(0)触媒、例えば、Pd(OAc)、Pd(PPh、またはPd/C、から選択することができる。パラジウムの配位球体および金属交換反応の加速にかかわる塩基は、負に荷電された塩基、例えば、ナトリウムもしくはカリウムの炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、アルコキシドなど、から選択することができる(J.Med.Chem.2005,48,5131;Org.Lett.2010,228)。
【0063】
式(VI)の化合物は、塩基および好適な溶媒の存在下でのアセトアミド(III)とハロゲン化インダノン(IV)とのアルドールタイプの縮合と、それに続くアミド基の還元および異性体化によって得られる(方法Aを参照のこと)。
【0064】
アセトアミド(III)は、市販されているか、またはエタノールなどの好適な溶媒中においての、都合の良い置換アミンと無水酢酸とのN−アセチル化によって得られる。
【0065】
ハロゲン化インダノン(IV)および有機ボロン酸誘導体(V)は市販されている。
【0066】
本発明の追加の態様は、一般式(I)の化合物の治療使用に関する。上記において言及されるように、一般式(I)の化合物は、シグマレセプターに対して強い親和性を示し、ならびにそれらのアゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニスト、部分的アンタゴニスト、または部分的アゴニストとして振る舞うことができる。したがって、一般式(I)の化合物は、医薬品として有用である。
【0067】
それらは、シグマレセプター、とりわけ、シグマ−1レセプターによって媒介される障害および疾患の処置および予防に有用である。この意味において、式(I)の化合物は、非常に良好な抗不安薬および免疫抑制剤であり、下痢、リポタンパク異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肥満、偏頭痛、関節炎、高血圧症、不整脈、潰瘍、緑内障、学習障害、記憶障害、注意欠落、認知障害、神経変性疾患、脱髄性疾患、薬物中毒および化学物質中毒(コカイン、アンフェタミン、エタノール、およびニコチンなど)、遅発性ジスキネジア、虚血性発作、てんかん、脳卒中、ストレス、癌、神経疾患(特に、鬱病、不安神経症、統合失調症);炎症または自己免疫疾患、の処置および予防に非常に有用である。
【0068】
式(I)の化合物は、疼痛、とりわけ、神経因性疼痛、炎症性疼痛、あるいは異痛および/または痛覚過敏を伴う他の疼痛の処置に、とりわけ適している。疼痛は、国際疼痛学会(IASP)によって、「実際のまたは潜在的な組織損傷に関連付けられるか、またはそのような損傷に関連して説明される、不快な感覚的および精神的な体験」と定義されている(IASP,Classification of chronic pain,2nd Edition,IASP Press(2002),210)。疼痛は常に自覚的ではあるが、その原因または症候群は、分類することができる。
【0069】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は、異痛、より詳細には機械的異痛または熱的異痛、の処置および予防に使用される。
【0070】
別の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、痛感鋭敏の処置および予防に使用される。
【0071】
さらなる別の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、神経因性疼痛の処置および予防、より詳細には痛覚過敏の処置および予防に使用される。
【0072】
本発明における関連する態様は、下記において説明されるような、シグマレセプターによって媒介される障害および疾患の処置のための医薬品を製造するための、式(I)の化合物の使用に関する。
本発明の別の態様は、少なくとも一般式(I)の化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、異性体、もしくは溶媒和物と、少なくとも薬学的に許容可能な担体、添加剤、補助剤、もしくはビヒクルとを含む医薬組成物である。
【0073】
本発明の医薬組成物は、少なくともシグマレセプターに結合する化合物と、任意選択により少なくとも1種の活性物質および/または任意選択により少なくとも1種の補助物質とを含む様々な剤型において医薬品として製剤化することができる。
【0074】
補助物質または添加剤は、担体、賦形剤、支持材料、潤滑剤、充填剤、溶媒、希釈剤、着色剤、砂糖などの風味調整剤、酸化防止剤、および/または凝着剤の中から選択することができる。坐剤の場合、これは、ワックスまたは脂肪酸エステルまたは保存料、乳化剤、および/または非経口的用途のための担体を意味し得る。これらの補助材料および/または添加剤の選択ならびに使用される量は、当該医薬組成物の適用の形態に応じて変わるであろう。
【0075】
本発明による医薬組成物は、経口または非経口、例えば、経肺、経鼻、経直腸、および/または静脈内など、投与の任意の形態に適合させることができる。
【0076】
好ましくは、当該組成物は、経口もしくは非経口投与が好適であり、より好ましくは、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、髄腔内、直腸、経皮、経粘膜、経鼻投与が好適である。
【0077】
本発明の組成物は、好ましくは錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸薬、チューイングガム、粉末剤、ドロップ、ゲル、ジュース、シロップ、溶液、および懸濁液からなる群より選択される任意の形態において、経口投与用に製剤化することができる。
【0078】
経口投与用の本発明の組成物は、多粒子の形態、好ましくはミクロ粒子、マイクロタブレット、ペレット、または顆粒の形態であってもよく、任意選択により、タブレット状に圧縮してもよく、カプセル中に充填してもよく、あるいは好適な液体中に懸濁させてもよい。好適な液体は、当業者に既知である。
【0079】
非経口適用のための好適な調製物は、溶液、懸濁液、再構成可能な乾燥調製物、または噴霧剤である。
【0080】
本発明の化合物は、経皮適用のため、溶存形態もしくはパッチ剤においての付着物として製剤化することができる。
【0081】
皮膚外用剤としては、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、ローション、懸濁液、またはエマルションが挙げられる。
【0082】
直腸適用の好ましい形態は、坐剤である。
【0083】
それぞれの医薬品は、(その投与経路に応じて)当業者に既知の1種以上の補助物質も含有していてもよい。本発明による医薬品は、当業者に既知の標準的な手順に従って製造することができる。
【0084】
ヒトおよび動物への1日の投与量は、それぞれの種に根拠を有する要因または他の要因、例えば、年齢、性別、体重、または病気の程度など、に応じて変わり得る。ヒトへの1日の投与量は、1日あたり1回以上の摂取において投与される活性物質、好ましくは1〜2000、好ましくは1〜1500、より好ましくは1〜1000ミリグラムの範囲であり得る。
【0085】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態の単なる例示であり、いずれにおいても本発明を制限すると見なすことはできない。
【実施例】
【0086】
実施例1(方法A):4−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエートの合成
a)4−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−オンの合成
【化15】
【0087】
4−ブロモインダン−1−オン(500mg、2.36mmol)、フェニルボロン酸(317mg、2.6mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(761mg、2.36mmol)、およびKCO(3.26g、23.6mmol)の混合物を、アルゴンパージした水(7.0mL)に懸濁させ、さらに15分間アルゴンでパージした。Pd(OAc)(6.0mg、0.024mmol)を加え、結果として得られる懸濁液を80℃で3時間加熱した。当該溶液を室温まで冷却した後、水で希釈し、CHClで抽出した。収集した抽出物をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。得られた残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液として、極性を増加させたヘキサン:CHCl混合物)によって精製して、黄色固体として所望の生成物を得た(404mg、82%)。
【0088】
[NMR]
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) d: 7.78 (dd, J= 7.6, 1.2 Hz, 1H), 7.6 (dd, J= 7.2, 1.2 Hz, 1H), 7.50-7.45 (m, 5H), 7.41 (m, 1H), 3.17 (t, J= 6 Hz, 2H), 2.70 (m, 2H) ppm.
EI-MS m/z: 208.1 (M).
【0089】
b)4−(2−(7−フェニル−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエートの合成
【化16】
【0090】
−78℃に冷却した4mLのTHFに、アルゴン雰囲気下においてLDAの溶液(THF中における1.5M、2mL、2.95mmol)を加えた。次いで、N−アセチルモルホリン(274μL、2.36mmol)を加え、結果として得られる混合物を、−78℃で1時間撹拌した。最後に、THF(10mL)中における4−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−オン(246mg、1.18mmol)の溶液を加え、結果として得られる混合物を−78℃で4時間維持した。当該反応混合物を、1NのHClで酸性化し、EtOAcで抽出した。当該有機抽出物をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。CHCl(12mL)中における前の残留物の溶液に、p−トルエンスルホン酸(30mg、0.12mmol)を加え、結果として得られる混合物を一晩撹拌した。当該反応混合物を、飽和NaHCO水溶液で塩基性化し、CHClで抽出した。当該有機抽出物をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。0℃に冷却したTHF(15mL)中における前の残留物の溶液に、AlH−NMeEt(トルエン中における0.5M、4.8mL、2.38mmol)を加え、結果として得られる混合物を5時間撹拌した。当該反応混合物にEtOAc:HO(40mL、1:1)を加え、結果として得られる懸濁液をCelite(登録商標)を通してろ過した。当該層を分離し、水相をEtOAcで抽出した。当該有機抽出物を、NaSOで乾燥させた後、乾固するまで蒸発させた。37%HCl:EtOH(30mL、1:1)中における前の残留物の溶液を一晩還流させた。当該反応混合物を乾固するまで蒸発させ、水に溶解させ、KOHで塩基性化し、EtOAcで抽出した。当該有機層をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液として、極性を増加させたヘキサン:EtOAc混合物)による当該残留物の精製により、所望の生成物を得た(100mg、28%)。アセトン(0.6mL)中におけるマレイン酸(39mg、0.33mmol)を加えることにより、当該生成物を対応するマレイン酸塩へと転化させ、続いて、結果として得られる固体をろ過し、真空下において乾燥させた。
【0091】
[NMR]
1H-NMR (DMSO-d6, 300 MHz) d: 7.60 (dd, J=8.4, 1.5 Hz, 2H), 7.50-7.44 (m, 4H), 7.40 (m, 1H), 7.26 (dd, J=6.0, 2.4 Hz, 1H), 6.40 (s, 1H), 6.04 (s, 2H), 3.79 (m, 4H), 3.47 (s, 2H), 3.31 (m, 8H), 2.95 (m, 2H) ppm.
ESI(+)-HRMS: 306.1852 [M+H]+.
【0092】
実施例2(方法A):1−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)アゼパンヒドロクロリドの合成
a)1−(アゼパン−1−イル)エタノンの合成
【化17】
【0093】
EtOH(30mL)中におけるアゼピン(2.0g、20.17mmol)の溶液に、無水酢酸(3.8mL、40.34mmol)を加えた。結果として得られる溶液を一晩攪拌した。当該反応混合物を乾固するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液として、極性を増加させたCHCl:MeOH混合物)による当該残留物の精製により、所望の生成物を得た(2.59g、91%)。
【0094】
[NMR]
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) d: 3.52 (t, J= 5.7 Hz, 2H), 3.42 (t, J= 6 Hz, 2H), 2.09 (s, 3H), 1.71 (m, 4H), 1.57 (m, 4H) ppm.
【0095】
b)4−(4−フルオロフェニル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−オンの合成
【化18】
【0096】
4−ブロモインダン−1−オン(500mg、2.36mmol)、(4−フルオロフェニル)ボロン酸(363mg、2.6mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(761mg、2.36mmol)、およびKCO(3.26g、23.6mmol)の混合物を、アルゴンパージした水(7.0mL)に懸濁させ、さらに15分間アルゴンでパージした。Pd(OAc)(6.0mg、0.024mmol)を加え、結果として得られる懸濁液を80℃で4時間加熱した。当該溶液を室温まで冷却した後、水で希釈し、CHClで抽出した。収集した有機抽出物をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。得られた残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液として、極性を増加させたヘキサン:EtOAc混合物)によって精製して、黄色固体として所望の生成物を得た(443mg、82%)。
【0097】
[NMR]
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) d: 7.78 (dd, J= 7.6, 1.2 Hz, 1H), 7.56 (dd, J= 7.2, 1.2 Hz, 1H), 7.47 (d, J= 7.6 Hz, 1H), 7.42 (m, 3H), 7.17 (m, 2H), 3.14 (t, J= 5.8 Hz, 2H), 2.70 (m, 2H).
EI-MS m/z: 226.1 (M).
【0098】
c)1−(2−(7−(4−フルオロフェニル)−1H−インデン−3−イル)エチル)アゼパンの合成
【化19】
【0099】
−78℃に冷却したTHF(6mL)中における1−(アゼパン−1−イル)エタノン(500mg、3.54mmol)の溶液に、LDAの溶液(THF中における1.5M、2.9mL、4.43mmol)を加え、結果として得られる混合物を、アルゴン雰囲気下において−78℃で1時間撹拌した。最後に、THF(12mL)中における4−(4−フルオロフェニル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−オン(400mg、1.77mmol)の溶液を加え、結果として得られる混合物を−78℃で5時間維持した。当該反応混合物を、1NのHClで酸性化し、EtOAcで抽出した。当該有機抽出物をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。AcOH:HSO:HO(26mL、85:10:5)中における前の残留物の溶液を、5時間撹拌した。当該反応混合物を水に注ぎ入れ、5MのNaOHで塩基性化し、EtOAcで抽出した。当該有機抽出物を、NaSOで乾燥させた後、乾固するまで蒸発させた。0℃に冷却したTHF(20mL)中における前の残留物の溶液に、AlH−NMeEt(トルエン中における0.5M、7.9mL、3.97mmol)を加え、結果として得られる混合物を4時間撹拌した。当該反応混合物にEtOAc:HO(20mL、1:1)を加え、結果として得られる懸濁液をCelite(登録商標)を通してろ過した。当該層を分離し、水相をEtOAcで抽出した。当該有機抽出物をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。37%HCl:トルエン(44mL、1:1)中における前の残留物の溶液を一晩還流させた。当該反応混合物を乾固するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液として、極性を増加させたEtOAc/NH:MeOH混合物)による当該残留物の精製により、所望の生成物を得た(116mg、21%)。HCl(ジエチルエーテル中における1M、0.25mL)の溶液を加えることにより、当該生成物を対応する塩酸塩へと転化させ、続いて、結果として得られる固体をろ過し、真空下において乾燥させた。
【0100】
[NMR]
1H-NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d: 9.90 (s, 1H), 7.64 (m, 2H), 7.51 (d, J= 6.4 Hz, 1H), 7.44 (t, J= 7.6 Hz, 1H), 7.31-7.25 (m, 2H), 6.45 (s, 1H), 3.48 (m, 2H), 3.41 (m, 2H), 3.31 (s, 4H), 3.20 (m, 2H), 3.01 (m, 2H), 1.84 (4H), 1.64 (m, 4H) ppm.
ESI(+)-HRMS: 336.2021 [M+H]+
【0101】
実施例3(方法A):4−(2−(7−(ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンマレエートの合成
a)4(−ピリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−オンの合成
【化20】
【0102】
4−ブロモインダン−1−オン(1.25g、5.90mmol)、Pd(PPh)4(1.7g、1.48mmol)、ピリジン−4−イルボロン酸(940mg、6.49mmol)、およびTHF(70mL)中におけるKCO(15mL)の2M溶液の混合物を、アルゴン雰囲気下において、撹拌しながら1日還流させた。当該反応混合物を1NのHClで抽出した。当該水層を2NのNaOHで塩基性化し、EtOAcで抽出した。当該有機層をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液として、極性を増加させたヘキサン:EtOAc混合物)による当該残留物の精製により、所望の生成物を得た(756mg、60%)。
【0103】
[NMR]
1H-NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d: 8.75 (m, 2H), 7.84 (d, J= 7.6 Hz, 1H), 7.63 (dd, J= 7.6, 0.8 Hz, 1H), 7.53 (d, J= 7.6 Hz, 1H), 7.42 (d, J= 5.2 Hz, 2H), 3.19 (t, J= 6 Hz, 2H), 2.73 (t, J= 5.8 Hz, 2H) ppm.
EI-MS m/z: 209.2 (M).
【0104】
b)4−(2−(7−(ピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)モルホリンの合成
【化21】
【0105】
−78℃に冷却したTHF(10mL)中におけるN−アセチルモルホリン(0.42mL、3.61mmol)の溶液に、LDAの溶液(THF中における1.5M、3mL、4.52mmol)を加え、結果として得られる混合物を、アルゴン雰囲気下において−78℃で1時間撹拌した。最後に、THF(15mL)中における4−(−ピリジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−オン(378mg、1.81mmol)の溶液を加え、結果として得られる混合物を−78℃で4時間維持した。当該反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。当該有機抽出物をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。AcOH:HSO:HO(28mL、85:10:5)中における前の残留物の溶液を、2.5日撹拌した。当該反応混合物を水に注ぎ入れ、4MのNaOHで塩基性化し、EtOAcで抽出した。当該有機抽出物を、NaSOで乾燥させた後、乾固するまで蒸発させた。0℃に冷却したTHF(12mL)中における前の残留物の溶液に、AlH−NMeEt(トルエン中における0.5M、7mL、3.49mmol)を加え、結果として得られる混合物を4時間撹拌した。当該反応混合物にEtOAc:HO(40mL、1:1)を加え、結果として得られる懸濁液をCelite(登録商標)を通してろ過した。当該層を分離し、水相をEtOAcで抽出した。当該有機抽出物を、NaSOで乾燥させた後、乾固するまで蒸発させた。37%のHCl:トルエン(50mL、1:1)中における前の残留物の溶液を一晩還流させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液として、極性を増加させたEtOAc/NH:MeOH混合物)による当該残留物の精製により、所望の生成物を得た(54mg、10%)。アセトン(0.3mL)中におけるマレイン酸(20mg、0.18mmol)を加えることにより、当該生成物を対応するマレイン酸塩へと転化させ、続いて、結果として得られる固体をろ過し、真空下において乾燥させた。
【0106】
[NMR]
1H-NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d: 8.65 (d, J= 5.2 Hz, 2H), 7.65 (d, J= 4.4 Hz, 2H), 7.56-7.48 (m, 2H), 7.37 (dd, J= 7.4, 1 Hz, 1H), 6.48 (s, 1H), 6.05 (s, 2H), 3.82 (m, 4H), 3.55 (s, 2H), 3.36 (m, 2H), 3.25 (m, 4H), 2.96 (m, 2H) ppm.
ESI(+)-HRMS: 307.1809 [M+H]+
【0107】
実施例4(方法B):1−(2−(7−(3−フルオロピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエートの合成
a)1−(4−メチルピペラジン−1−イル)エタノンの合成
【化22】
【0108】
EtOH(60mL)中におけるN−メチルピペラジン(2.0g、19.97mmol)、トリエチルアミン(3.35mL、23.96mmol)、および無水酢酸(2.3mL、23.96mmol)の溶液を、室温で一晩撹拌した。当該反応混合物を乾固するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液として、極性を増加させたCHCl:MeOH混合物)による当該残留物の精製により、黄色オイルとして所望の生成物を得た(2.16g、76%)。
【0109】
[NMR]
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) d: 3.65 (t, J= 6.8 Hz, 2H), 3.49 (t, J= 6.8 Hz, 2H), 2.46-2.39 (m, 4H), 2.32 (s, 3H), 2.10 (s, 3H) ppm.
【0110】
b)1−(2−(7−ブロモ−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンの合成
【化23】
【0111】
−78℃に冷却したTHF(25mL)中における1−(4−メチルピペラジン−1−イル)エタノン(1.68g、11.8mmol)の溶液に、LDAの溶液(THF中における1.5M、9.8mL、14.75mmol)を加え、結果として得られる混合物を、アルゴン雰囲気下において、−78℃で1時間撹拌した。最後に、THF(50mL)中における4−ブロモインダン−1−オン(1.25g、5.9mmol)の溶液を加え、結果として得られる混合物を−78℃で4時間維持した。当該反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。当該有機抽出物をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。AcOH:HSO:HO(79mL、85:10:5)中における前の残留物の溶液を、6時間撹拌した。当該反応混合物を水に注ぎ入れ、50%のNaOHで塩基性化し、EtOAcで抽出した。当該有機抽出物を、NaSOで乾燥させた後、乾固するまで蒸発させた。0℃に冷却したTHF(75mL)中における前の残留物の溶液に、AlH−NMeEt(トルエン中における0.5M、20mL、10.34mmol)を加え、結果として得られる混合物を5時間撹拌した。当該反応混合物にEtOAc:HO(90mL、1:1)を加え、結果として得られる懸濁液をCelite(登録商標)を通してろ過した。当該層を分離し、水相をEtOAcで抽出した。当該有機抽出物をNaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。37%のHCl:EtOH(150mL、1:1)中における前の残留物の溶液を一晩還流させた。当該反応混合物を乾固するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液として、極性を増加させたEtOAc/NH:MeOH混合物)による当該残留物の精製により、所望の生成物を得た(981mg、51%)。
【0112】
[NMR]
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) d: 7.32 (m, 2H), 7.18 (t, J= 7.6 Hz, 1H), 6.30 (s, 1H), 3.31 (d, J= 1.8 Hz, 2H), 2.72 (m, 4H), 2.60 (m, 4H), 2.51 (m, 4H), 2.30 (s, 3H) ppm.
EI-MS m/z: 320.1 (M).
【0113】
c)1−(2−(7−(3−フルオロピリジン−4−イル)−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジンマレエートの合成
【化24】
【0114】
1−(2−(7−ブロモ−1H−インデン−3−イル)エチル)−4−メチルピペラジン(150mg、0.47mmol)、Pd(PPh(92mg、0.08mmol)、2−フルオロ−4−ピリジンボロン酸ピナコールエステル(364mg、1.63mmol)、およびトルエン:EtOH(17mL、4:1)中におけるKCO(4mL)の2M溶液の混合物を、アルゴン雰囲気下において、撹拌しながら1日還流させた。当該反応混合物を水に注ぎ入れ、EtOAcで抽出した。当該水層を2NのNaOHで塩基性化し、EtOAcで抽出した。当該有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、乾固するまで蒸発させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液として、極性を増加させたEtOAc/NH:MeOH混合物)での当該残留物の精製により、所望の生成物を得た(70mg、44%)。アセトン(0.2mL)中におけるマレイン酸(24mg、0.21mmol)を加えることにより、当該生成物を対応するマレイン酸塩へと転化させ、続いて、結果として得られる固体をろ過し、真空下において乾燥させた。
【0115】
[NMR]
1H-NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d: 8.32 (d, J= 5.2 Hz, 1H), 7.62 (dt, J= 5.2, 2 Hz, 1H), 7.53 (dd, J= 7.8, 1 Hz, 1H), 7.50-7.45 (m, 2H), 7.39 (d, J= 7.4 Hz, 1H), 6.43 (s, 1H), 6.12 (s, 2H), 3.54 (s, 2H), 3.29 (m, 8H), 2.85 (m, 2H), 2.79 (m, 2H), 2.70 (m, 3H) ppm.
ESI(+)-HRMS: 338.2025 [M+H]
【0116】
以下の実施例は、示されるように、前述において説明した方法(AまたはB)を用いて得た。
【0117】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【0118】
生物活性
薬理学的研究
脳膜標品およびσ1−レセプターに対する結合アッセイを、いくつかの変更を加えて、(DeHaven−Hudkins,D.L.,LC.Fleissner,and F.Y.Ford−Rice,1992,Characterization of the binding of [H](+)pentazocine to σ recognition sites in guinea pig brain,Eur.J.Pharmacol.227,371−378)に記載されているように実施した。モルモット(Guinea pig)の脳を、Kinematica Polytron PT 3000を用いて15000 r.p.mで30秒間、50mMのTris−HClおよび0.32Mのショ糖(pH7.4)の10倍容量(w/v)においてホモジナイズした。当該ホモジネートを1000gにおいて4℃で10分間遠心分離し、上清を収集して、再び48000gにおいて4℃で15分間遠心分離した。当該ペレットを、10倍量のTris−HCl緩衝液(50mM、pH7.4)に再懸濁させ、37℃で30分間インキュベートし、48000gにおいて4℃で20分間遠心分離した。続いて、当該ペレットを新鮮なTris−HCl緩衝液(50mM、pH7.4)に再懸濁させ、使用するまで氷上で保存した。
【0119】
使用する放射性リガンドは、5.0nMの[H]−(+)−ペンタゾシンであり、最終体積は200μlであった。およそ5mg/mLの組織正味質量の最終組織濃度において100μlの膜を追加してインキュベートを開始し、インキュベート時間は37℃で150分間であった。インキュベート後、当該膜を、前処理したグラスファイバーフィルタープレート(MultiScreen−FC、ミリポア)上に、ポリエチレンイミン0.1%により収集した。当該フィルターを200μlの洗浄緩衝液(50mMのTris HCl、pH=7.4)で2回洗浄し、次いで25μlのEcoscint H液体シンチレーションカクテルを加えた。マイクロプレートを数時間セットし、続いて液体シンチレーション吸光分光分析法(1450 Microbeta、ウォーレス)により定量化した。1μMのハロペリドールで非特異的結合を特定した。
【0120】
得られた結果のいくつかを表2に示す。
【0121】
【表2-1】
【表2-2】