【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要約
本発明は、リチウムイオン電池を作成する方法に関わる。当該リチウムイオン電池において、 電極セパレータは、フッ化及びアクリル酸誘導体モノマーのコポリマーを有する。前記リチウムイオン電池は、好ましくは薄型電池である。
【0012】
本出願人は、この新規な方法により、電極セパレータがフッ化モノマーと親水性モノマーとを含有するコポリマーを有するリチウムイオン電池が得られることを見出した。前記リチウムイオン電池は、ポリオレフィンセパレータもしくはフッ化モノマーのみからなるポリマーのいずれかを有する従来のリチウムイオン電池と比べて、改善されたエネルギー密度を呈する。充電/放電サイクルの際のこれらの挙動もまた改善される。
【0013】
より具体的には、本発明は、
正極と;
電極セパレータと;
負極と
を有するLiイオン電池を作成する方法に関わる。前記方法は、
少なくとも1の電極活物質と少なくとも1のバインダとを有するインクから正極を製造するステップと;
少なくとも1のフッ化コポリマーを有するインクから電極セパレータを製造するステップであって、前記電極セパレータは厚さ1乃至20μm及び多孔率30%未満を有するステップと;
少なくとも1の電極活物質と少なくとも1のバインダとを有するインクから負極を製造するステップと
を有する。前記フッ化コポリマーは、
少なくとも1のフッ化モノマー99.99乃至90モル%、好ましくは99.9乃至95モル%及びより好ましくは99.5乃至97.5モル%;及び
式CR
1R
2=CR
3−C(=O)−O−R
4(式中、
互いに等しい、もしくは異なるR
1,R
2,R
3のそれぞれは、独立に水素原子もしくはC1−C3炭化水素基であり、且つ
R
4は、水素もしくは少なくとも1のヒドロキシル基を有するC1−C5炭化水素部分である)
の少なくとも1のアクリル酸誘導体0.01乃至10モル%、好ましくは0.1乃至5モル%、及びより好ましくは0.5乃至2.5モル%
を有する。
【0014】
従来技術膜と対称的に、得られる電極セパレータは薄くて、緻密である。実際、好ましい実施形態によると、電極は、厚さ1乃至20μm、及び30%未満を有する。他方、文献WO2008/129041は、ポアが平均直径少なくとも10μmを有する多孔質膜に関わる。さらに文献EP1621573は、多孔率55乃至90%、及び好ましくは150乃至500μmの範囲の厚さを有する膜を教示する。
【0015】
説明の残りにおいて、用語「フッ化コポリマー」は上に定義されたフッ化コポリマーを意味する。
【0016】
特定の実施形態によると、セパレータは1より多い高分子フィルムからなる。その高分子フィルムの少なくとも1つは、上で定義されたフッ化コポリマーから得られるフッ化高分子フィルムである。電極セパレータは、1より多い子ポリマーを含有してよく、また上で定義される1より多いフッ化コポリマーの混合物でもあり得る。
【0017】
電極セパレータは、追加のポリマーを有してよいが、好ましくは前記フッ化コポリマーもしくはフッ化ポリマーフィルムから構成される。
【0018】
ラジカル開始剤の存在下、水性媒体中で少なくとも1のフッ化モノマーと少なくとも1のアクリル酸誘導体モノマーとを重合することにより、フッ化コポリマーを得てよい。以下のステップ:
(1もしくは複数の)アクリル酸誘導体モノマーを有する水溶液を連続的に供給するステップ;及び
標準温度及び標準圧力において気体でよい(1もしくは複数の)フッ化モノマーの適当量を前記反応容器内で維持するステップ
によると、反応容器内でこの反応を実施してよい。
【0019】
その結果、フッ化コポリマーは、ランダムに分布したフッ化モノマーとアクリル酸誘導体モノマーとを有してよい。モノマーのランダムな分布は、むらのある(blocky−type)構造をもたらす。得られる不均等な分布は、コポリマーの特性に影響を及ぼす。
【0020】
アクリル酸誘導体のランダムに分布したユニットの割合(fraction)は、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70である。
【0021】
WO2008/129041に記載されるように、前記割合は100の同一フッ化モノマー当たりのアクリル酸誘導体モノマーシーケンスの平均数に対応する。これは
19F NMR分光計により決定できる。
【0022】
フッ化コポリマーは、前記アクリル酸誘導体モノマーから誘導された繰り返しユニットを好ましくは少なくとも0.01%モル、より好ましくは少なくとも0.1%モル、さらにより好ましくは多くとも0.5%モル有する。
【0023】
フッ化コポリマーは、前記アクリル酸誘導体モノマーから誘導された繰り返し単位を、好ましくは多くとも10%モル、より好ましくは多くとも5%モル、さらにより好ましくは多くとも2.5%モル有する。
【0024】
式 CR
1R
2=CR
3−C(=O)−O−R
4 アクリル酸誘導体モノマーは、好ましくは親水性である。アクリル酸誘導体モノマーの非限定的例は、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルヘキシル、及びこれらの混合物からなるからなるグループから選択される親水性モノマーを包含する。
【0025】
アクリル酸誘導体モノマーは、より好ましくはアクリル酸ヒドロキシエチル(HEA); アクリル酸2−ヒドロキシプロピル(HPA);アクリル酸(AA);及びこれらの混合物からなるグループから選択される。
【0026】
フッ化モノマーは、好ましくはフッ化ビニリデン(CF
2=CF
2);ヘキサフルオロプロピレン(CF
2=CF−CF
3);クロロトリフルオロエチレン(CClF=CF
2);トリフルオロエチレン(CF
2=CHF);その他、及びこれらの混合物からなるグループから選択される。好ましくは、フッ化ビニリデン(CF
2=CF
2);ヘキサフルオロプロピレン(CF
2=CF−CF
3);及びこれらの混合物である。
【0027】
好ましくはフッ化コポリマーは、フッ化ビニリデン(CF
2=CF
2)の繰り返し単位を少なくとも70%含有する。
【0028】
リチウムイオン電池の正極及び負極は、
電極の少なくとも1の活物質と;
少なくとも1のバインダと;
任意には、少なくとも1の電子半導体と
を有する電極インクから好ましくは製造される。
【0029】
電極インクは、水性インクもしくは有機インクであり得る。
【0030】
リチウムイオン電池の正極活物質は、式LiMY
2の複合金属カルコゲン化物を有してよい。式中、
Mは少なくとも1の遷移金属、例えばCo,Ni,Fe,Mn,Cr,Al及びVであり;及び
Yはカルコゲン、例えばOもしくはSである。
【0031】
正極材料は、好ましくは式LiMO
2のリチウム系金属酸化物である、式中、Mは上記と同一である。
【0032】
これらの好ましい例は、LiCoO
2,LiNiO
2,LiNi
xCo
1−xO
2 (0<x<1),LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2,及びスピネル構造LiMn
2O
4を包含してよい。
【0033】
他方、リチウムイオン電池の負極活物質は、好ましくは炭素系材料、例えばグラファイト、活性炭又はフェノール樹脂の炭素により得られた炭素系材料、ピッチを有してよい。
【0034】
すでに述べたように、電極インクは、少なくとも1の電子半導体を有してよい。この種の材料は、例えば活物質(例えばLiCoO
2もしくはLiFePO
4)の低い電子伝導性を改善するために添加される。
【0035】
前記電子半導体は、炭素系材料(例えばカーボンブラック、グラファイト微粉末及びファイバー)及び金属の微粉末微粉末及びファイバー(例えばニッケル及びアルミニウム)からなるグループから選択され得る。
【0036】
両電極に関して、バインダは、好ましくは上述のように少なくとも1のフッ化コポリマーである。
【0037】
好ましい実施形態によると、Liイオン電池の(1もしくは複数の)バインダ及びセパレータは、同一のフッ化コポリマーを有する。同一のフッ化コポリマーは、従って有利には(1もしくは複数の)電極及びセパレータに含まれる。
【0038】
換言すると、正極の製造に使用されるインク及び/もしくは負極の製造に使用されるインクの少なくとも1は、少なくとも1のバインダを有する。前記バインダは、
少なくとも1のフッ化モノマー99.99乃至90モル%、好ましくは99.9乃至95モル%、及びさらにより好ましくは99.5乃至97.5モル%;
式CR
1R
2=CR
3−C(=O)−O−R
4(式中、
互いに等しい、もしくは異なるR
1,R
2,R
3のそれぞれは、独立に水素原子もしくはC1−C3炭化水素基であり、且つ
R
4は、水素もしくは少なくとも1のヒドロキシル基を有するC1−C5炭化水素部分である)
のアクリル酸誘導体0.01乃至10モル%、及びさらにより好ましくは0.5乃至2.5モル%
を有するフッ化コポリマーである。
【0039】
特定の実施形態によると、正極の製造に使用されるインク及び負極の製造に使用されるインクの両方のバインダは、上に規定されたコポリマーである。
【0040】
両方の電極インクは、同一の(1もしくは複数の)バインダを有してよい。
【0041】
特定の実施形態によると、電極セパレータを製造するためのインクのフッ化コポリマーは、正極の製造に使用されるインク及び/もしくは負極の製造に使用されるインクのバインダのフッ化コポリマーと同一である。好ましくは、両方のインクについて同一のフッ化コポリマーである。
【0042】
他のバインダは、普通に使用される混合物、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)及びラテックス(SBR,スチレンブタジエンゴム、もしくはNBR,アクリロニトリルブタジエンコポリマー)を包含する。
【0043】
Liイオン電池は、電極セパレータのフッ化コポリマーであるバインダを有する少なくとも1の電極を好ましくは有する。
【0044】
当該技術における一般的常識である技術に従い、電極それぞれの集電体上に、電極を塗布もしくはプリントできる。
【0045】
ただし、本発明の好ましい実施形態によると、電極はいずれも集電体上にプリントされる。
【0046】
集電体は、アルミニウム,銅,・・・からなるグループから選択可能な材料からなり得る。
【0047】
当業者なら、適当な集電体と電極材料とを組み合わせることができよう。
【0048】
従来技術に従って、電極セパレータをプリント、塗布、押し出し、もしくはキャストされ得る。例えば、電極セパレータは、ガラス基板上に塗布され得る。プリント技術は、シルクスクリーンプリント、写真凹版プリント、フレキソプリント、グラビア印刷法(写真凹版法)、インクジェットプリントを包含する。
【0049】
電極セパレータは、正極もしくは負極いずれかの上にプリントもしくは塗布できる。電極セパレータはまた、両電極上にプリントもしくは塗布できる。別の特定実施形態によると、電極セパレータは、電極どうしの間に置かれる自立高分子フィルムであり得る。
【0050】
好ましい実施形態によると、電極セパレータは、1の電極もしくは2つの電極上プリントされる。好ましくは、電極セパレータは、負極上にプリントされる。
【0051】
電極セパレータの厚さは、好ましくは1μm乃至20μm、より好ましくは2乃至13μm、さらにより好ましくは2乃至8μmの範囲である。有利には、当該技術における常識に従いマイクロメータで測定される。
【0052】
電極セパレータは、多孔率好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、及びさらにより好ましくは10%未満を有する。多孔率は、電極セパレータの体積単位当たりのポアの体積に関する。
【0053】
電極セパレータの密度は、ASTM標準D792−00に従い測定される。この測定は、通常23℃(±2℃)且つ相対湿度50%(±5)において、行われる。多孔率は、
((ボイド容量/サンプルの全体積)×100)
と定義される。そのように定義された多孔率((ボイド容量/サンプルの全体積)×100)
が、以下の数式:
[1−(セパレータの密度/固体ポリマーの密度)]×100
を使用して密度から直接誘導されることは、当該技術において周知である。ここで、電極セパレータを水中に浸漬するとき、水はセパレータ内及び従ってそのポア内に入り込まず、且つ固体ポリマーはバルクポリマー(セパレータを形成するために使用されるものと同一)であると思われる。
【0054】
このプロセスによると、正極及び/もしくは負極は、集電体上にプリントもしくは塗布され得る。
【0055】
すでに述べたように、電極セパレータは、もっぱら高分子フィルムからできる。電極セパレータは、1の電極もしくは正極及び負極の両方の上にプリントもしくは塗布可能である。
【0056】
本発明の特定の実施形態によると、電極セパレータは、基板(例えばガラス基板)上に、フッ化コポリマーを有する組成物を塗布すること、及び得られる高分子フィルムを乾燥することによりまず製造される自立高分子フィルムである。前記フィルムを、次いで電極と電極との間に置く。
【0057】
以下の図面及び実施例から、本発明及びその利点は当業者にとって明らかになる。