特許第6243419号(P6243419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243419フルオロポリマーセパレータを有するLiイオン電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243419
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】フルオロポリマーセパレータを有するLiイオン電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20171127BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20171127BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20171127BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20171127BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   H01M4/139
   H01M4/62 Z
   H01M2/18 Z
   H01M10/058
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-522050(P2015-522050)
(86)(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公表番号】特表2015-522928(P2015-522928A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013064820
(87)【国際公開番号】WO2014012860
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年5月25日
(31)【優先権主張番号】12176537.4
(32)【優先日】2012年7月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511152500
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジ アトミック エ オー エネルジス アルテルナティヴス
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L‘ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(73)【特許権者】
【識別番号】514326926
【氏名又は名称】ソルベー エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ルオー,エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アビュスレッメ,フリオ
(72)【発明者】
【氏名】グロエゼンナー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】パイエ,サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】ピカード,ライオネル
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/175417(WO,A1)
【文献】 特表2014−520377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
H01M 2/18
H01M 4/139
H01M 4/62
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と;
電極セパレータと;
負極と
を有するLiイオン電池を作成する方法であって、
前記方法は、
少なくとも1の電極活物質と少なくとも1のバインダとを有するインクから正極を製造するステップと;
少なくとも1のフッ化コポリマーを有するインクから電極セパレータを製造するステップであって、前記電極セパレータは厚さ1乃至20μm及び多孔率30%未満を有するステップと;
少なくとも1の電極活物質と少なくとも1のバインダとを有するインクから負極を製造するステップと
を有する;
前記フッ化コポリマーは、
少なくとも1のフッ化モノマー99.99乃至90モル%;
式CR=CR−C(=O)−O−R(式中、
互いに等しい、もしくは異なるR,R,Rのそれぞれは、独立に水素原子もしくはC1−C3炭化水素基であり、且つ
は、水素もしくは少なくとも1のヒドロキシル基を有するC1−C5炭化水素部分である)
の少なくとも1のアクリル酸誘導体0.01乃至10モル%
を有する、前記方法。
【請求項2】
正極及び/もしくは負極が集電体上にプリントもしくは塗布されることを特徴とする、請求項1に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項3】
電極セパレータが正極及び/もしくは負極上にプリントされることを特徴とする、請求項1又は2に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項4】
電極セパレータは自立ポリマーフィルムであって、前記ポリマーフィルムはまず基板上に塗布され、次いで2つの電極の間に置かれることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項5】
フッ化モノマーは、フッ化ビニリデン;ヘキサフルオロプロピレン;クロロトリフルオロエチレン;トリフルオロエチレン、及びこれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項6】
アクリル酸誘導体モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルヘキシル、及びこれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項7】
正極の製造に使用されるインク及び/もしくは負極の製造に使用されるインク少なくとも1は、少なくとも1のバインダを有し、
前記バインダは、
少なくとも1のフッ化モノマー99.99乃至90モル%;
式CR=CR−C(=O)−O−R(式中、
互いに等しい、もしくは異なるR,R,Rのそれぞれは、独立に水素原子もしくはC1−C3炭化水素基であり、且つ
は、水素もしくは少なくとも1のヒドロキシル基を有するC1−C5炭化水素部分である)
のアクリル酸誘導体0.01乃至10モル%
を有するフッ化コポリマーであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項8】
正極の製造に使用されるインク及び負極の製造に使用されるインクの両方のバインダは、請求項7に規定されたコポリマーであることを特徴とする、請求項7に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項9】
電極セパレータを製造するためのインクのフッ化コポリマーは、正極の製造に使用されるインク及び/もしくは負極の製造に使用されるインクのバインダのフッ化コポリマーと同一であることを特徴とする、請求項8に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項10】
フッ化コポリマーは、
少なくとも1のフッ化モノマー99.9乃至95モル%と;
少なくとも1のアクリル酸誘導体モノマー0.1乃至5モル%と
を有することを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項11】
フッ化コポリマーは、
99.5乃至97.5 モル%の少なくとも1のフッ化モノマーと;
0.5乃至2.5モル%の少なくとも1のアクリル酸誘導体モノマーと
を有することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項12】
電極セパレータは、厚さ2乃至13μmを有することを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項13】
電極セパレータは、厚さ2乃至8μmを有することを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項14】
電極セパレータは、多孔率20%未満を有することを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のLiイオン電池を作成する方法。
【請求項15】
電極セパレータは、多孔率10%未満を有することを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のLiイオン電池を作成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマーセパレータを有するLiイオン電池の製造方法に関する。
【0002】
本発明の分野は、電気エネルギーの需要に応じた貯蔵及び放出に大部分において関わる。この種の電池は、典型にはコンシューマエレクトロニクス(例えば携帯電子装置)に使用されてよい。
【背景技術】
【0003】
電池は、1以上の電気化学ユニットもしくはセルを有する。これらは、貯蔵された化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換することを図る。
【0004】
リチウムイオン(Liイオン)電池の各電気化学セルは、大部分は正極(カソード)、電極セパレータ、及び負極(アノード)からなる。各電極は、正極と負極とを互いに電子的に分離する集電体により支持され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらリチウムイオン電池において、カソードの活物質はリチウム化合物、例えば酸化リチウムを有する。他方、アノードの活物質は炭素系材料、例えばグラファイトでよい。これらの電池は、電極材料が金属リチウムではない点において普通のリチウム電池と本質的に異なる
【0006】
電極の活物質は、リチウムカチオンを挿入且つ脱挿入させる。電極の組成は、電子伝導を可能にする電子伝導体をも包含する。
【0007】
比較的薄い電池を製造するために、電極は集電体上にプリントもしくは塗布され得る。これらの技術は、マイクロメートルの電極を与える。この点について、電極にバインダを添加することは、集電体上にバインダを塗布する/プリントする能力を改善するかもしれない。また同様に、活物質の均一性を改善するかもしれない。
【0008】
電極セパレータに関する限り、従来技術電池は、ポリオレフィンもしくはフッ化モノマーのコポリマーを通常有する。
【0009】
技術革新は、電子デバイスのサイズ縮小をもたらしたが、リチウムイオン電池のエネルギー密度を改善する必要がまだ存在する。Liイオン電池の効率と容量とを維持しながら、電極、セパレータ及び集電体の厚さを最適化することは、この技術分野が対峙する主要な課題の一つである。
【0010】
今度、本出願人は、電極セパレータとしてフルオロポリマー薄膜を有するリチウムイオン電池を製造する方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要約
本発明は、リチウムイオン電池を作成する方法に関わる。当該リチウムイオン電池において、 電極セパレータは、フッ化及びアクリル酸誘導体モノマーのコポリマーを有する。前記リチウムイオン電池は、好ましくは薄型電池である。
【0012】
本出願人は、この新規な方法により、電極セパレータがフッ化モノマーと親水性モノマーとを含有するコポリマーを有するリチウムイオン電池が得られることを見出した。前記リチウムイオン電池は、ポリオレフィンセパレータもしくはフッ化モノマーのみからなるポリマーのいずれかを有する従来のリチウムイオン電池と比べて、改善されたエネルギー密度を呈する。充電/放電サイクルの際のこれらの挙動もまた改善される。
【0013】
より具体的には、本発明は、
正極と;
電極セパレータと;
負極と
を有するLiイオン電池を作成する方法に関わる。前記方法は、
少なくとも1の電極活物質と少なくとも1のバインダとを有するインクから正極を製造するステップと;
少なくとも1のフッ化コポリマーを有するインクから電極セパレータを製造するステップであって、前記電極セパレータは厚さ1乃至20μm及び多孔率30%未満を有するステップと;
少なくとも1の電極活物質と少なくとも1のバインダとを有するインクから負極を製造するステップと
を有する。前記フッ化コポリマーは、
少なくとも1のフッ化モノマー99.99乃至90モル%、好ましくは99.9乃至95モル%及びより好ましくは99.5乃至97.5モル%;及び
式CR=CR−C(=O)−O−R(式中、
互いに等しい、もしくは異なるR,R,Rのそれぞれは、独立に水素原子もしくはC1−C3炭化水素基であり、且つ
は、水素もしくは少なくとも1のヒドロキシル基を有するC1−C5炭化水素部分である)
の少なくとも1のアクリル酸誘導体0.01乃至10モル%、好ましくは0.1乃至5モル%、及びより好ましくは0.5乃至2.5モル%
を有する。
【0014】
従来技術膜と対称的に、得られる電極セパレータは薄くて、緻密である。実際、好ましい実施形態によると、電極は、厚さ1乃至20μm、及び30%未満を有する。他方、文献WO2008/129041は、ポアが平均直径少なくとも10μmを有する多孔質膜に関わる。さらに文献EP1621573は、多孔率55乃至90%、及び好ましくは150乃至500μmの範囲の厚さを有する膜を教示する。
【0015】
説明の残りにおいて、用語「フッ化コポリマー」は上に定義されたフッ化コポリマーを意味する。
【0016】
特定の実施形態によると、セパレータは1より多い高分子フィルムからなる。その高分子フィルムの少なくとも1つは、上で定義されたフッ化コポリマーから得られるフッ化高分子フィルムである。電極セパレータは、1より多い子ポリマーを含有してよく、また上で定義される1より多いフッ化コポリマーの混合物でもあり得る。
【0017】
電極セパレータは、追加のポリマーを有してよいが、好ましくは前記フッ化コポリマーもしくはフッ化ポリマーフィルムから構成される。
【0018】
ラジカル開始剤の存在下、水性媒体中で少なくとも1のフッ化モノマーと少なくとも1のアクリル酸誘導体モノマーとを重合することにより、フッ化コポリマーを得てよい。以下のステップ:
(1もしくは複数の)アクリル酸誘導体モノマーを有する水溶液を連続的に供給するステップ;及び
標準温度及び標準圧力において気体でよい(1もしくは複数の)フッ化モノマーの適当量を前記反応容器内で維持するステップ
によると、反応容器内でこの反応を実施してよい。
【0019】
その結果、フッ化コポリマーは、ランダムに分布したフッ化モノマーとアクリル酸誘導体モノマーとを有してよい。モノマーのランダムな分布は、むらのある(blocky−type)構造をもたらす。得られる不均等な分布は、コポリマーの特性に影響を及ぼす。
【0020】
アクリル酸誘導体のランダムに分布したユニットの割合(fraction)は、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70である。
【0021】
WO2008/129041に記載されるように、前記割合は100の同一フッ化モノマー当たりのアクリル酸誘導体モノマーシーケンスの平均数に対応する。これは19F NMR分光計により決定できる。
【0022】
フッ化コポリマーは、前記アクリル酸誘導体モノマーから誘導された繰り返しユニットを好ましくは少なくとも0.01%モル、より好ましくは少なくとも0.1%モル、さらにより好ましくは多くとも0.5%モル有する。
【0023】
フッ化コポリマーは、前記アクリル酸誘導体モノマーから誘導された繰り返し単位を、好ましくは多くとも10%モル、より好ましくは多くとも5%モル、さらにより好ましくは多くとも2.5%モル有する。
【0024】
式 CR=CR−C(=O)−O−R アクリル酸誘導体モノマーは、好ましくは親水性である。アクリル酸誘導体モノマーの非限定的例は、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルヘキシル、及びこれらの混合物からなるからなるグループから選択される親水性モノマーを包含する。
【0025】
アクリル酸誘導体モノマーは、より好ましくはアクリル酸ヒドロキシエチル(HEA); アクリル酸2−ヒドロキシプロピル(HPA);アクリル酸(AA);及びこれらの混合物からなるグループから選択される。
【0026】
フッ化モノマーは、好ましくはフッ化ビニリデン(CF=CF);ヘキサフルオロプロピレン(CF=CF−CF);クロロトリフルオロエチレン(CClF=CF);トリフルオロエチレン(CF=CHF);その他、及びこれらの混合物からなるグループから選択される。好ましくは、フッ化ビニリデン(CF=CF);ヘキサフルオロプロピレン(CF=CF−CF);及びこれらの混合物である。
【0027】
好ましくはフッ化コポリマーは、フッ化ビニリデン(CF=CF)の繰り返し単位を少なくとも70%含有する。
【0028】
リチウムイオン電池の正極及び負極は、
電極の少なくとも1の活物質と;
少なくとも1のバインダと;
任意には、少なくとも1の電子半導体と
を有する電極インクから好ましくは製造される。
【0029】
電極インクは、水性インクもしくは有機インクであり得る。
【0030】
リチウムイオン電池の正極活物質は、式LiMYの複合金属カルコゲン化物を有してよい。式中、
Mは少なくとも1の遷移金属、例えばCo,Ni,Fe,Mn,Cr,Al及びVであり;及び
Yはカルコゲン、例えばOもしくはSである。
【0031】
正極材料は、好ましくは式LiMOのリチウム系金属酸化物である、式中、Mは上記と同一である。
【0032】
これらの好ましい例は、LiCoO,LiNiO,LiNiCo1−x (0<x<1),LiNi0.8Co0.15Al0.05,及びスピネル構造LiMnを包含してよい。
【0033】
他方、リチウムイオン電池の負極活物質は、好ましくは炭素系材料、例えばグラファイト、活性炭又はフェノール樹脂の炭素により得られた炭素系材料、ピッチを有してよい。
【0034】
すでに述べたように、電極インクは、少なくとも1の電子半導体を有してよい。この種の材料は、例えば活物質(例えばLiCoOもしくはLiFePO)の低い電子伝導性を改善するために添加される。
【0035】
前記電子半導体は、炭素系材料(例えばカーボンブラック、グラファイト微粉末及びファイバー)及び金属の微粉末微粉末及びファイバー(例えばニッケル及びアルミニウム)からなるグループから選択され得る。
【0036】
両電極に関して、バインダは、好ましくは上述のように少なくとも1のフッ化コポリマーである。
【0037】
好ましい実施形態によると、Liイオン電池の(1もしくは複数の)バインダ及びセパレータは、同一のフッ化コポリマーを有する。同一のフッ化コポリマーは、従って有利には(1もしくは複数の)電極及びセパレータに含まれる。
【0038】
換言すると、正極の製造に使用されるインク及び/もしくは負極の製造に使用されるインクの少なくとも1は、少なくとも1のバインダを有する。前記バインダは、
少なくとも1のフッ化モノマー99.99乃至90モル%、好ましくは99.9乃至95モル%、及びさらにより好ましくは99.5乃至97.5モル%;
式CR=CR−C(=O)−O−R(式中、
互いに等しい、もしくは異なるR,R,Rのそれぞれは、独立に水素原子もしくはC1−C3炭化水素基であり、且つ
は、水素もしくは少なくとも1のヒドロキシル基を有するC1−C5炭化水素部分である)
のアクリル酸誘導体0.01乃至10モル%、及びさらにより好ましくは0.5乃至2.5モル%
を有するフッ化コポリマーである。
【0039】
特定の実施形態によると、正極の製造に使用されるインク及び負極の製造に使用されるインクの両方のバインダは、上に規定されたコポリマーである。
【0040】
両方の電極インクは、同一の(1もしくは複数の)バインダを有してよい。
【0041】
特定の実施形態によると、電極セパレータを製造するためのインクのフッ化コポリマーは、正極の製造に使用されるインク及び/もしくは負極の製造に使用されるインクのバインダのフッ化コポリマーと同一である。好ましくは、両方のインクについて同一のフッ化コポリマーである。
【0042】
他のバインダは、普通に使用される混合物、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)及びラテックス(SBR,スチレンブタジエンゴム、もしくはNBR,アクリロニトリルブタジエンコポリマー)を包含する。
【0043】
Liイオン電池は、電極セパレータのフッ化コポリマーであるバインダを有する少なくとも1の電極を好ましくは有する。
【0044】
当該技術における一般的常識である技術に従い、電極それぞれの集電体上に、電極を塗布もしくはプリントできる。
【0045】
ただし、本発明の好ましい実施形態によると、電極はいずれも集電体上にプリントされる。
【0046】
集電体は、アルミニウム,銅,・・・からなるグループから選択可能な材料からなり得る。
【0047】
当業者なら、適当な集電体と電極材料とを組み合わせることができよう。
【0048】
従来技術に従って、電極セパレータをプリント、塗布、押し出し、もしくはキャストされ得る。例えば、電極セパレータは、ガラス基板上に塗布され得る。プリント技術は、シルクスクリーンプリント、写真凹版プリント、フレキソプリント、グラビア印刷法(写真凹版法)、インクジェットプリントを包含する。
【0049】
電極セパレータは、正極もしくは負極いずれかの上にプリントもしくは塗布できる。電極セパレータはまた、両電極上にプリントもしくは塗布できる。別の特定実施形態によると、電極セパレータは、電極どうしの間に置かれる自立高分子フィルムであり得る。
【0050】
好ましい実施形態によると、電極セパレータは、1の電極もしくは2つの電極上プリントされる。好ましくは、電極セパレータは、負極上にプリントされる。
【0051】
電極セパレータの厚さは、好ましくは1μm乃至20μm、より好ましくは2乃至13μm、さらにより好ましくは2乃至8μmの範囲である。有利には、当該技術における常識に従いマイクロメータで測定される。
【0052】
電極セパレータは、多孔率好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満、及びさらにより好ましくは10%未満を有する。多孔率は、電極セパレータの体積単位当たりのポアの体積に関する。
【0053】
電極セパレータの密度は、ASTM標準D792−00に従い測定される。この測定は、通常23℃(±2℃)且つ相対湿度50%(±5)において、行われる。多孔率は、
((ボイド容量/サンプルの全体積)×100)
と定義される。そのように定義された多孔率((ボイド容量/サンプルの全体積)×100)
が、以下の数式:
[1−(セパレータの密度/固体ポリマーの密度)]×100
を使用して密度から直接誘導されることは、当該技術において周知である。ここで、電極セパレータを水中に浸漬するとき、水はセパレータ内及び従ってそのポア内に入り込まず、且つ固体ポリマーはバルクポリマー(セパレータを形成するために使用されるものと同一)であると思われる。
【0054】
このプロセスによると、正極及び/もしくは負極は、集電体上にプリントもしくは塗布され得る。
【0055】
すでに述べたように、電極セパレータは、もっぱら高分子フィルムからできる。電極セパレータは、1の電極もしくは正極及び負極の両方の上にプリントもしくは塗布可能である。
【0056】
本発明の特定の実施形態によると、電極セパレータは、基板(例えばガラス基板)上に、フッ化コポリマーを有する組成物を塗布すること、及び得られる高分子フィルムを乾燥することによりまず製造される自立高分子フィルムである。前記フィルムを、次いで電極と電極との間に置く。
【0057】
以下の図面及び実施例から、本発明及びその利点は当業者にとって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、本発明と従来技術の両方による、且つプリント電極を有する電池の放電容量の、充電/放電サイクルの数の関数のグラフである。
図2図2は、本発明と従来技術の両方による、且つプリント電極を有する電池の放電容量の、充電/放電サイクルの数の関数のグラフである。
図3図3は、本発明と従来技術の両方による、且つプリント電極を有する電池の放電容量の、充電/放電サイクルの数の関数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の実施形態の詳細な説明
表1の実施例は、フッ化ポリマーからなるセパレータを有する電池(例1乃至3,6,7)、及び市販のセパレータを有する電池(反証4,5及び8)に関わる。
【0060】
実施例3(VF2−MA)とVF2−HFP−MAの実施例6の自立フィルムの密度を、ASTM D792−00に従い測定し、(ボイド容量/サンプルの全体積)×100として定義された多孔率3.8%及び9%をそれぞれ得た。
【0061】
表1: 本発明による電池と従来の電池との対比
【表1】


(a) インクの乾燥重量と比較した重量%
(b) ポリエチレン = Celgard(R)2400 (Celgardから購入)
(c) 有機溶媒(NMP = N−メチルピロリドン)中で調製されたインク
(d) 水溶液中で調製されたインク
(e) THF/DMF(80/20重量比)中8.7wt%溶液から得られたセパレータ
(f) THF/DMF(80/20重量比)中22wt%溶液から得られたセパレータ
(g) MEK(ブタン−2−オン)中5wt%溶液から得られたセパレータ
(h) 実施例1a)−d)によるセパレータの厚さは、それぞれ3;4;5;6ミクロンである。
CMC=カルボキシメチルセルロース
NCA=LiNi0.8Co0.15Al0.05
VF2−MA=コポリマー組成物: 99モル%フッ化ビニリデン(CF=CF),及び1モル%アクリル酸(CH=CH−C(=O)−OH)
VF2−HFP=コポリマー組成物: 97.7モル%フッ化ビニリデン(CF=CF),及び2.3モル%ヘキサフルオロプロペン(CF=CF−CF
VF2−HFP−MA=コポリマー組成物:96.7モル%フッ化ビニリデン(CF=CF),2.3モル%ヘキサフルオロプロペン(CF=CF−CF),及び1モル%アクリル酸(CH=CH−C(=O)−OH)
NBRラテックス=アクリロニトリルブタジエンコポリマー(NBR)(PolymerLatexから購入)(41%における溶液)
EC=電子半導体(ShowaDenkoのCarbonSuperP(SuperC65))
【0062】
表1の組成物/インクに従い電池を製造し、3.0乃至4.25ボルトの電流負荷について異なる充電及び放電レートで試験した。
【0063】
実施例2,5及び8の電池において、電極セパレータを2つの電極の間に置く。
【0064】
実施例3,4及び6の電池において、電極セパレータを乾燥し、且つ2つの電極の間に置く。
【0065】
実施例1乃至2による電池は、軟包装へとパックされた薄型電池である。これらは、以下のサイクル:
C/20−D/20: 2サイクル;
C/10−D/10: 5サイクル;
C/5−D/5: 5サイクル;
C/2−D: 4サイクル;
C/2−2D;
C/20−D/20 数サイクル
に従い試験した。
【0066】
実施例3乃至5による電池はボタンセルである。これらは、以下のサイクル:
C/20−D/20: 2サイクル;
C/10−D/10: 5サイクル;
C/5−D/5: 5サイクル;
C/2−D: 4サイクル;
C/2−2D;
C/20−D/20: 数サイクル
に従い試験した。
【0067】
実施例6乃至8による電池は、軟包装へとパックされた平型電池である。これらは、以下のサイクル:
C/20−D/20: 3サイクル;
C/10−D/10: 4サイクル;
C/5−D/5: 4サイクル;
C/2−D: 4サイクル;
C/2−2D: 3サイクル;
C/20−D/20 数サイクル
に従い試験した。
【0068】
C/20充電サイクルは、20時間の定常電流に対応する。電流量は、20で割られた電池の容量Cに等しい。D/5の放電サイクルは、5時間続く放電に対応する。
【0069】
本発明によるこれら実施例の全てでは、ポリオレフィンセパレータもしくは完全にフッ化したセパレータを有する従来の電池に比べて、このように得られたリチウムイオン電池が改善された特性を示すことが見られる。
【0070】
セパレータが自立式であるか、集電体の上に塗布されているかに関わらず、類似の特性が得られることをも見て取れる。
図1
図2
図3