(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243429
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】タイヤ用の共鳴騒音防止装置
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
B60C11/13 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-533564(P2015-533564)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公表番号】特表2015-533714(P2015-533714A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】EP2013069910
(87)【国際公開番号】WO2014048952
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】1259031
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ブルジョワ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノー フランソワ−グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】フィッキンガー パスカル
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−174198(JP,A)
【文献】
特開2012−116339(JP,A)
【文献】
特開2010−023728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッドであって、前記トレッドは、路面に接触するようになったトレッド表面(100)を有し、前記トレッド表面は、互いに向かい合った2つの壁(20,30)によって画定された幅W及び深さPの少なくとも1本の溝(1)を有し、前記壁は、溝底部(10)によって互いに接合され、少なくとも1本の溝(1)は、前記タイヤが前記路面と接触状態にある接触パッチを前記溝が通過しているときに前記溝を少なくとも部分的に閉鎖する少なくとも1つの可撓性装置を有し、各可撓性装置は、該可撓性装置が液体の循環の作用下において撓むことができるようにするのに適した厚さの少なくとも1つのブレード(4,4′)を含み、前記少なくとも1つのブレード(4,4′)は、前記溝(1)を画定する壁で支持され、厚さEの各ブレード(4)は、前記溝底部(10)に向いた底壁(40)、前記溝の他方の壁に向いた端壁(41)、前記路面に接触するようになった接触壁(42)及び前記ブレードの前記厚さEに等しい距離だけ互いに隔てられた側壁(43,44)によって境界付けられ、
前記トレッドは、前記ブレード(4)の前記底壁(40)が前記ブレードを支持した前記壁との連結箇所相互間に延びる第1の部分(401)、前記第1の部分の延長部として設けられた第2の部分(402)を有し、前記第2の部分(402)の延長部として前記ブレードの前記端部(41)まで第3の部分(403)が設けられ、前記ブレードの前記底壁に最大高さHの切欠きを形成するために、前記第1の部分と前記第2の部分が、前記ブレードを支持した前記壁との連結箇所と前記第3の箇所への前記第2の部分の連結箇所とを結ぶ平面に対して外側に向かってずらされており、前記トレッドは、前記第2の部分(402)と前記第3の部分(403)とのなす角度が110°を超え且つ180°未満であり、
前記溝の断面が前記ブレードによって閉鎖される程度を増大させるために、ブレード(7)の底壁(70)が前記溝内に少なくとも部分的に入り込んだままであるように、収容部(11)が前記溝の前記底部(10)上に横方向に形成されている、トレッド。
【請求項2】
前記第2の部分(402)と前記第3の部分(403)とのなす前記角度は、少なくとも130°に等しく且つ多くとも160°に等しい、請求項1記載のトレッド。
【請求項3】
前記底壁(40)の前記第1の部分(401)及び前記第2の部分(402)は、前記ブレードの前記底壁(40)上で測定して、前記ブレード(4)の全幅Lの少なくとも30%に等しい幅Tにわたって延びている、請求項1又は2記載のトレッド。
【請求項4】
前記底壁の前記第1の部分と前記第2の部分によって形成された前記切欠き(5)の深さHは、新品状態において、新品状態における前記トレッド表面(100)に対して測定して、前記底壁の前記第3の部分(403)の箇所の最大距離Rの少なくとも15%だけ小さい、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項5】
前記底壁の前記第1の部分(401)は、小さな曲率半径、即ち、前記溝(1)の前記幅Wの少なくとも5%に等しく且つ前記幅Wの多くとも30%に等しい半径を有する円弧で形成されている、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項6】
前記底壁の前記第1の部分(401)の延長部としての前記第2の部分(402)は、平面状である、若しくはほぼ平面状である、即ち極めて僅かな曲率を有する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項7】
前記底壁の前記第3の部分(403)を前記溝の前記底部(10)から隔てる距離は、前記溝(1)の深さPの多くとも10%に等しい、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一に記載のトレッドを備えた乗用車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッドに関し、特に溝を有するトレッドに関し、かかる溝は、運転中、空気が溝内で共鳴することによって生じる騒音(ノイズ)を軽減する可撓性装置を有する。
【背景技術】
【0002】
走行中のタイヤが路面に接触すると、溝、特に全体として円周方向の向きの溝及び路面それ自体によって形成された管の中で空気が循環するようになることが知られており、この管は、その両端が開口している。
【0003】
この管内における空気は、共鳴振動数が管の2つの端相互間の長さ及びかくして路面と接触状態にある溝の長さで決まる振動空気柱(気柱)を形成する。
【0004】
溝内における空気のこの共鳴は、これらタイヤを履いた車両について車両内外で騒音を発生させるという結果をもたらす。
【0005】
これら車内外の騒音は、通常、1kHz又はその近傍の振動数に相当しており、この振動数は、人の耳にとって特に敏感な振動数である。かかる共鳴騒音を軽減するため、各円周方向に向けられた又は全体と円周方向に向けられた溝内に、ゴムコンパウンドで作られた複数個の比較的薄いクロージャブレード又はメンブレンを配置することが慣例であり、各クロージャブレード又はメンブレンは、溝の断面全体又はこの断面の少なくとも大きな比率を占める。各クロージャメンブレンは、溝の底部から延びるのが良く又は溝を画定する壁のうちの少なくとも一方に固定されるのが良い。比較的薄いという表現は、各クロージャメンブレンが特に雨天における運転中、液体の流れの作用を受けて溝の断面を開くために撓むことができるということを意味している。
【0006】
これらクロージャメンブレンにより、各円周方向溝内の気柱の長さは、接触パッチ内における溝の全長と比較して短く、これにより、共鳴振動数の変化が生じる。振動数のシフトは、人の耳がそれほど敏感ではない共鳴振動数の値に向かう。
【0007】
当然のことながら、水で覆われた路面上を走行しているときにおける排水機能を維持するため、このメンブレンは、水の圧力の作用を受けて適度に撓むことができ、かくして溝の断面を開くことができるということが必要である。溝内で振動する気柱の共鳴を軽減するこの種の幾つかの解決手段が提案された。
【0008】
一方式は、例えば、仏国特許第2715891号明細書、日本国特開平03‐276802号公報、同08‐150812号公報、同04‐221807号公報に記載されている。
【0009】
これら装置は新品状態では有効であるが、これら閉鎖装置は、トレッドの厚さの約50%を超える部分摩耗後はもはや必要ではないことが判明した。したがって、本願の出願時点ではまだ公開されていない特許出願において、所定の摩耗レベルを超えた後、閉鎖装置をなくすことができるようにする解決手段が提案されている。この提案では、閉鎖装置の各メンブレンは、溝を画定する側壁に固定され、切欠きがこのメンブレンを支持した壁の付近でメンブレンの底壁に形成される。
図1は、先行技術のかかる実施形態を示している。この構成例は又、成形作業を容易にする。
【0010】
しかしながら、この最後に説明した形式のメンブレンでは、様々な出来事が成形品取り出し(以下、単に「取り出し」という場合がある)ステップの際に起こる場合があり、即ち、起こる出来事として、メンブレンの小片が引き裂き状態になる場合があり、それによりこれに対応して溝の閉鎖度が減少すると共に騒音を軽減する閉鎖装置の有効性が低下することが判明した。
【0011】
定義
【0012】
トレッドのトレッド表面(「踏み面」と呼ばれる場合がある)は、かかるトレッドを備えたタイヤの走行中、路面に接触する表面を意味している。
【0013】
溝は、トレッド内に形成された空間を意味し、この空間は、材料の壁によって画定され、これら壁は、溝の深さに等しい距離だけトレッド表面から離れた溝底部によって互いに接合されている。溝底部は、タイヤトレッドがもはや法上の使用要件を満たすことがない下限を示すトレッド摩耗インジケータの半径方向下に位置した溝の部分に対応している。
【0014】
ブロックは、トレッド上に形成された隆起要素であり、この要素は、空所又は溝によって画定され、この要素は、側壁及び接触フェースを有し、接触フェースは、走行中、路面に接触するようになっていて、トレッドのトレッド表面の一部をなしている。
【0015】
リブは、トレッド上に形成された隆起要素であり、この要素は、2本の溝によって画定されている。リブは、2つの側壁及び接触フェースを有し、接触フェースは、路面に接触するようになっている。
【0016】
半径方向は、タイヤの回転軸線に垂直な方向を意味している(この方向は、トレッドの厚さの方向に一致している。
【0017】
軸方向は、タイヤの回転軸線に平行な方向を意味している。
【0018】
円周方向は、中心が回転軸線上に位置する任意の円の接線の方向を意味している。この方向は、軸方向と半径方向の両方向に垂直である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】仏国特許第2715891号明細書
【特許文献2】日本国特開平03‐276802号公報
【特許文献3】日本国特開平08‐150812号公報
【特許文献4】日本国特開平04‐221807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、溝を画定する壁のうちの1つに固定されたブレードで形成される公知の装置と比較して、成形したり取り出したりするのが容易な溝閉鎖装置を得ることを目的としており、本発明は、取り出しの際における欠陥を極めて著しく減少させる。この装置の具体化例は、溝が円周方向に差し向けられるにせよ横方向に差し向けられるにせよ斜めに差し向けられるにせよいずれにせよ、任意形式の溝に関することが可能である。
【0021】
この目的のため、本発明の一要旨は、以下に説明するタイヤのトレッドにあり、トレッドは、路面に接触するようになったトレッド表面を有し、トレッド表面は、互いに向かい合った2つの壁によって画定された幅W及び深さPの少なくとも1本の溝を有し、壁は、溝底部によって互いに接合され、少なくとも1本の溝は、タイヤが路面と接触状態にある接触パッチを溝が通過しているときに溝を少なくとも部分的に閉鎖する少なくとも1つの可撓性装置を有し、各可撓性装置は、該可撓性装置が液体の循環の作用下において撓むことができるようにするのに適した厚さの少なくとも1つのブレードを含み、少なくとも1つのブレードは、溝を画定する壁で支持され、厚さEの各ブレードは、溝底部に向いた底壁、溝の他方の壁に向いた端壁、路面に接触するようになった接触壁及びブレードの厚さEに等しい距離だけ互いに隔てられた側壁によって境界付けられている。
【0022】
このトレッドは、ブレードの底壁がブレードを支持した壁との連結箇所相互間に延びる第1の部分、第1の部分の延長部として設けられた第2の部分を有し、第2の部分の延長部としてブレードの端部まで第3の部分が設けられ、ブレードの底壁に最大高さHの切欠きを形成するために、第1の部分と第2の部分が、ブレードを支持した壁との連結箇所と第3の箇所への第2の部分の連結箇所を結ぶ平面に対して外側に向かってずらされているようなものである。
【0023】
このトレッドは、第2の部分と第3の部分とのなす角度が110°を超え且つ180°未満であることを特徴とする。
【0024】
有利には、第2の部分と第3の部分とのなす角度は、少なくとも130°に等しく且つ多くとも160°に等しい。
【0025】
断面平面において同一の断面平面内における底壁の第1の部分の輪郭形状と第2の部分の輪郭形状との連結箇所と、同一断面平面内における第3の部分の輪郭形状の開始部を結ぶ直線(基準直線という)を考察する。本発明は、第2の部分の輪郭形状がこの基準直線の近くに位置したままであるべきこと又はそれどころかこの直線と一致すべきであることを推奨している。
【0026】
切欠きの高さHは、この基準直線と新品状態におけるトレッド表面の最も近くに位置する第1の部分の箇所との間で溝の深さ方向に測定される。切欠きの幅Tは、溝の幅の方向に測定される。
【0027】
本発明との関連において、「ブレードを支持した壁」という表現は、本明細書においては、溝を画定する側壁のうちの一方を意味していると解されなければならない。
【0028】
本発明により、切欠きを形成する部分とブレードの底壁の残部との連結部に作用する荷重の集中を回避することができる。
【0029】
有利には、底壁の第1の部分及び第2の部分は、ブレードの底壁上で測定してブレードの全幅Lの少なくとも30%に等しい幅Tにわたって延びる。
【0030】
有利には、トレッドは、新品状態において、底壁の第1の部分と第2の部分によって形成された切欠きの深さHが新品状態において新品状態における同一トレッド表面に対して測定して底壁の第3の部分の箇所の最大距離Rの15%よりも小さい。
【0031】
有利には、底壁の第1の部分は、小さな曲率半径、即ち、溝の幅Wの少なくとも5%に等しく且つこの幅Wの多くとも30%に等しい半径を有する円弧で形成される。
【0032】
有利な変形形態によれば、底壁の第1の部分の延長部としての第2の部分は、平面状又はほぼ平面状であり、即ち、極めて僅かな曲率を有する。極めて僅かな曲率とは、この場合、曲率半径が少なくとも100mmに等しいことを意味している。
【0033】
別の有利な変形形態によれば、底壁の第3の部分を溝の底部から隔てる距離は、溝の深さの多くとも10%に等しい。
【0034】
有利には、ブレードの底壁の第3の部分の輪郭形状は、溝の底部の輪郭形状に平行である。
【0035】
別の有利な変形形態によれば、第3の部分の輪郭形状は、第2の部分がブレードの端部に直接つながるような長さが短いものであるのが良い。かかる場合、第2の部分は、少なくとも20°且つ多くとも70°の角度をなしてブレードの端壁につながる。
【0036】
本発明は、上述のトレッドの変形形態に関する技術に加えて、かかるトレッドを備えたタイヤに関する。
【0037】
有利な変形形態では、新品状態におけるトレッド表面の近くに位置した連結部分のところで各ブレードとブレードを支持した壁との間に切欠きが形成される。この切欠きは、各ブレードの可撓性を増大させる。この切欠きは、幅の狭い又はそれどころか幅がゼロの切込みの形態をしているのが良い。
【0038】
また、溝の断面がブレードによって閉鎖される程度を増大させることを目的として、ブレードの底壁が溝内に少なくとも部分的に入り込んだままであることができるよう溝の底部上に横方向収容部を設けることが可能である。
【0039】
好ましくは、この収容部の深さは、ブレードが形成されている溝をブレードが可能な限り閉鎖するよう切欠きの高さに少なくとも等しい。
【0040】
同じ収容部を本発明のブレードが連結される壁に更に設けるのが良い。同様なレイアウトは、溝の断面を完全に閉鎖する単一のブレードの場合に当てはまり、この場合、各ブレードの端部のための収容部を形成する溝を設けることが有利である。
【0041】
本発明の特徴及び他の利点は、非限定的な例により本発明の内容の実施形態の取り得る形態を示す添付の図面を参照して以下に与えられる説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】先行技術の装置の1つの実施形態を示す図であり、この装置が溝の側壁によって支持された2つのブレードを有する状態を示す図である。
【
図2】本発明の2つのブレードを有する装置の第1の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の装置のブレードの2つの変形実施形態を示す図であり、これらブレードについて第3の部分の幅がブレードの端フェース上の線まで減少している状態を示す図である。
【
図4】本発明のトレッドの溝をほぼ完全に塞ぐ単一ブレードの図であり、この単一ブレードが溝の側壁及び底部に設けられた収容部内に部分的に差し込まれている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書に添付された図面の各図中、同一の参照符号が同一の性状の要素を示す限り(同一の性状という内容が構造的であるにせよ機能的であるにせよいずれにせよ)、同一の参照符号は、本発明の実施形態を説明するために使用される場合がある。
【0044】
図1は、先行技術のトレッドの部分断面図であり、このトレッドは、サイズ225/55R17のタイヤに取り付けられている。この図は、トレッドの2つの隆起要素2,3によって境界付けられた溝1を示し、この溝1は実質的に、トレッドが取り付けられたタイヤの円周方向に延びている。幅W(新品状態においてトレッド表面について測定される)が13mmに等しく、深さPが7.5mmに等しいこの溝1は、互いに向かい合った第1の壁20と第2の壁30及びこれら壁を互いに接合する溝底部10によって境界付けられている。トレッドは、運転中、路面と接触関係をなすようになったトレッド表面100を有する。以下の説明において、溝1の底壁10は、トレッドが国の規則によって定められた法上の限度まで摩耗した後に残っている溝の部分に対応している。
【0045】
この溝1は、複数個の障害物を形成するよう溝内に成形により設けられた複数個の可撓性ブレードで形成された騒音抑制(anti-noise:アンチノイズ)装置を有する。各騒音抑制装置は、各々が溝1の断面の半分を占めるブレード4,4′から成り、これらブレード4,4′は、相互に延長部をなし又は相互に延長方向に位置している。各ブレード4,4′は、それぞれの壁20,30から突き出ている。
【0046】
僅かな厚さ(この表現は、この場合、0.6mmに等しい厚さを意味している)の第1のブレード4が第1の壁20中に成形により設けられ、その結果、第1のブレードは、濡れた路面上における運転時に溝1に沿って水が流れることができるようにすると同時に乾いた路面上における運転時に空気の循環に対する障害物となることを目的として、この第1のブレード4とこの第1のブレードが連結された壁20との間の連結部にほぼ沿って軸線回りに容易に撓むことができるようになっている。
【0047】
この第1のブレード4は、溝の底部10に向いた底壁40、溝1の第2の壁30に向いた端壁41、路面に接触するようになった接触壁42及びブレードの厚さに等しい距離だけ互いに隔てられた側壁43,44によって境界付けられている。
【0048】
第1のブレード4の底壁40は、このブレードを支持した壁20につながっている連結部分401と呼ばれる第1の部分を有し、この連結部分401は、溝の主要方向に対して横方向の断面平面で見て、半円形の輪郭形状を有し、その曲率半径は、溝の底部10の側部と同一の側に位置すると共にその曲率半径は、この場合、1mmに等しい。
【0049】
「溝の底部10と同一の側に位置する」という表現は、連結部分401がブレードに一種の切欠きを形成していることを意味するものと理解されるべきであり、この切欠きの凹みは、溝1の底部10の方へ向いている。
【0050】
連結部分401の延長部としてブレード4の端部分41まで実質的に平面状の追加の部分402が設けられている。
【0051】
連結部分401と追加の部分402との接合部は、
図1の断面図で見て、変曲点Iのところに生じる。
【0052】
この第1のブレード4と組み合わせて、同一の幾何学的形状の第2のブレード4′が形成され、この第2のブレード4′は、溝の断面のほぼ全てを塞ぐよう第1の壁4に向いて位置した第2の壁30に連結されている。図示のやり方では、第1のブレード4と第2のブレード4′は、トレッドを成形した後、互いに向かい合い且つ互いに接触関係にあるこれらのそれぞれの端部分を有するように形成される。
【0053】
図2は、騒音軽減装置の実施形態を示しており、この騒音減少装置は、本発明の2つのブレード4,4′から成っている。これらブレード4,4′は、各ブレードの底部が本発明に従って構成されている点を除き、
図1に示されているブレードと全体としてほぼ同じである。タイヤのサイズは、
図1に示された先行技術の例のサイズと同一であり、重要な寸法、特にブレードの厚さは、この場合にも用いられている。
【0054】
ブレード4の底壁40は、ブレードを支持した壁との連結箇所相互間に延びる第1の部分401及び第1の部分の延長部としての第2の部分402を有し、この第2の延長部としてブレードの端部41まで第3の部分403が設けられ、第1の部分及び第2の部分は、ブレード4の底壁に最大高さH及び幅Tの切欠き5を形成するために、ブレード4を支持した壁20との連結箇所Aと第3の部分403への第2の部分402の連結箇所Bとを結ぶ平面(この図の平面内においてその線Mで示されている)に対して外側に向かってずらされている。
【0055】
第1の部分401は、円弧の形状をしており、この第1の部分401の延長部として第1の部分に接線方向につながる平面状の第2の部分が設けられている。この第2の部分402の延長部として、溝1の底部10に平行な平面状の第3の部分403が設けられている。第3の部分403は、溝の底部の近くに位置し、即ち、0.5mm未満しか離れていない。この特定の場合、溝の深さPは、7.5mmに等しく、第3の部分403の箇所をブレード4の頂壁42から隔てる距離Rは、6.5mmに等しく、この頂壁42は、僅かに外方にずらされている。
【0056】
さらに第2の部分402と第3の部分403との間で測定された角度Gは、この場合、145°に等しい。
【0057】
第1の部分401と第2の部分402は、ブレード4の底壁40上に切欠き5を形成している。この切欠き5は、この場合、0.5mmに等しい深さH及び溝の壁への連結箇所Aと第3の部分への連結箇所Cとの間で測定して2mmに等しい幅Tを有する。
【0058】
他方の可撓性ブレード4′は、ブレード4の幾何学的形状と同一の幾何学的形状を有するよう構成され、他方の可撓性ブレード4′は、ブレード4と協働して溝を閉鎖する(端壁41,41′は、閉鎖位置では互いに接触状態にある)。
【0059】
この構成は、溝を塞ぐブレードを備えたタイヤを成型したり脱型したりするのを容易にすると共に箇所Cの付近の損傷の恐れを減少させる。
【0060】
図3は、本発明の装置のブレードの2つの変形実施形態を示しており、これらブレードに関し、各第3の部分403,403′は、幅について、各ブレードの端壁上の線まで減少している。この
図3は、溝1を断面で示しており、この溝は、運転の際の共鳴騒音を軽減する装置を有する。この装置は、第1のブレード4及び第2のブレード4′から成り、これらブレードは両方共、
図2に示されたブレードの原理に基づいて構成されている。
【0061】
溝1は、隆起要素2,3の側方フェース20,30で画定されている。
【0062】
要素2の側壁20によって支持された第1のブレード4は、その底壁40上に設けられていてブレード4を支持した壁20との連結箇所A相互間に延びる第1の部分401及び第1の部分401の延長部としての第2の部分402を有し、この第2の部分402は、ブレードの端部41まで延長されている。この特定の場合、第3の部分は、この図の平面で見て、箇所Cまで減少している。第1及び第2の部分の箇所は全て、ブレード4の全幅にわたって延びる切欠き5を形成するように構成されている。
【0063】
ブレード4に向いた第2のブレード4′は、他方の壁3によって支持され、この第2のブレードは、切欠き5′の幾何学的形状の変形形態を示しており、第1の部分は、壁30上の箇所A′と箇所A″との間で円弧として形成され、この円弧の延長部としてこの箇所A″と箇所B′との間の直線セグメントが設けられ、このセグメントは、溝1の底部10に平行に延びている。この第1の部分の延長部としてブレード4′の端壁41′上に位置した箇所C′まで平面状部分(この図の平面で見て直線)が設けられている。
【0064】
これら2つの変形形態では、角度G,G′は、
図3の平面で溝の底部に平行な方向に対して測定される。これらの角度G,G′は、それぞれ、155°、130°に等しい。
【0065】
図4は、本発明のトレッドの溝1をほぼ完全に塞ぐ単一ブレード7の図であり、この単一ブレード7は、側壁20上に形成された収容部
21内に部分的に差し込まれている。このブレード7は、側壁20に連結された部分と反対側に位置した端壁71、底壁70及び運転中、路面に接触するようになった接触壁72を有している。この接触壁72は、新品状態では、トレッドのトレッド表面100の延長部をなし又は延長方向に位置している。
【0066】
底壁70には切欠き75が形成され、この切欠きは、壁20に連結された第1の部分701及びこの第1の部分の連続部としての第2の部分702によって画定されている。この第2の部分702は、溝の底部10に平行に延びる第3の部分703につながっている。第2の部分と第3の部分とのなす角度は、110°を超える。
【0067】
さらに、第1の収容部21の連続部として溝の底部10上に形成された第2の収容部11が設けられている。これら第1及び第2の収容部の深さは、ブレード7が溝1の断面を完全に閉鎖するよう切欠き57全体が材料によって隠されたままであるようにするのに適している。
【0068】
最後に、第2の収容部の延長部として、壁20と共に溝1を画定する壁30上に第3の収容部31が設けられている。
【0069】
本発明を一般的に且つ多くの形態を用いて説明したが、理解されなければならないこととして、本発明は、説明すると共に図示したに過ぎないこれらの形態に限定されることはない。当業者であれば、本明細書で説明した種々の形態を、最終目的を達成するよう互いに組み合わせることができる。
【0070】
また、本発明のブレードを2つ有する閉鎖装置を形成することが可能であり、これらブレードは、閉鎖装置が形成されている溝の主要方向に互いにずらされる。