【実施例】
【0029】
次の実施例は、如何なる意味でも本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の特定の実施態様を説明するものとして提供される。
【0030】
下記のいくつかの実施例は、アルブミン結合アルギニンデイミナーゼ融合たんぱく質の生産方法に関する。クローニングおよびインテイン媒介性たんぱく質連結を含む様々な技術を利用できる。ここで使用されるように、「クローニング」の語は、幅広く用いられ、アルブミン結合アルギニンデイミナーゼ融合たんぱく質コードする融合遺伝子を構築して、融合遺伝子をベクターに挿入し、ベクターを宿主に挿入し、アルブミン結合アルギニンデイミナーゼ融合たんぱく質を含有するたんぱく質を発現することを含む。この技術の数多くの変形を実行できるが、本発明によって検討されたクローニング内に含まれる。
【0031】
実施例1
アルブミン結合ドメイン/ペプチド/たんぱく質(ABD)の遺伝子コーディングの構築
【0032】
ABDの遺伝子コーディングはポリメラーゼ連鎖反応を二巡することにより構成される。一巡目ではポリメラーゼ連鎖反応混合物(総量25μl)は次の物質を含む。
1×iProof PCR緩衝液(Bio−Rad製)
50 µM dNTP 混合物
0.5単位のiProof DNAポリメラーゼ(Bio−Rad製)
各10nMの下記オリゴ
ABD−F1 フォワードプライマー(配列番号01):
5’-CATGATGCGAATTCCTTAGCTGAAGCTAAAGTCTTAGCTAACAGAGAACT-3’
ABD−R2 リバースプライマー(配列番号02):
5’-TAGTCACTTACTCCATATTTGTCAAGTTCTCTGTTAGCTAAGACTTTAGC-3’
ABD−F3 フォワードプライマー(配列番号03):
5’-GAACTTGACAAATATGGAGTAAGTGACTATTACAAGAACCTAATCAACAA-3’
ABD−R4 リバースプライマー(配列番号04):
5’-TACACCTTCAACAGTTTTGGCATTGTTGATTAGGTTCTTGTAATAGTCAC-3’
ABD−F5 フォワードプライマー (配列番号05):
5’-GCCAAAACTGTTGAAGGTGTAAAAGCACTGATAGATGAAATTTTAGCTGC-3’
ABD−R6 リバースプライマー (配列番号06):
5’-AGCTACGATAAGCTTAAGGTAATGCAGCTAAAATTTCATCTATCAGTG-3’
以下のPCRプログラムが用いられる:
98°C 30秒; 20サイクルの{98℃ 10秒、50℃ 20秒、72℃ 20秒}
【0033】
PCRポリメラーゼ連鎖反応の2ラウンド二巡目において、PCRポリメラーゼ連鎖反応混合物(総量50nμl)は次の材料物質を含む:
1×iProof PCR緩衝液(Bio−Rad製);
50μM dNTP混合物;
1μlのDNAテンプレートとしての1ラウンド目のPCR反応物;
1単位のiProof DNAポリメラーゼ(Bio−Rad製);
各200nMの下記オリゴ:
ABD−F7 フォワードプライマー(配列番号07):
5’-CATGATGCGAATTCCTTAGCTGAAGCTAAAGTCTTAGCTAACAGAGAACT-3’
ABD−R8 リバースプライマー(配列番号08):
5’-AGCTACGATAAGCTTAAGGTAATGCAGCTAAAATTTCATCTATCAGTG-3’
以下のPCRプログラムが用いられる:
98℃ 30秒;35サイクルの{98℃ 10秒、60℃ 20秒、72℃ 20秒}; 72℃ 5分
【0034】
ABDのDNA配列(169塩基対)を含むPCR産物を得て、クローニングの目的でQiagenのDNA Gel Extraction Kitによって精製する。
【0035】
実施例2A
AAD融合たんぱく質の融合遺伝子コーディングの構築
【0036】
1回目のPCRにおいて、PCR混合物(総量50μl)は、以下の材料を含む:
1×iProof PCR緩衝液(Bio−Rad製);
50μM dNTP混合物;
25ngのマイコプラズマ・アルギニニゲノムDNA;
1単位のiProof DNAポリメラーゼ(Bio−Rad製);
各200nMの下記オリゴ:
ADINde−F フォワードプライマー(配列番号09):
5’-ATCGATCGATGTCTGTATTTGACAGTAAATTTAAAGG-3’
ADIhis−R リバースプライマー(配列番号10):
5’-AGCTAAGGAATTCGCATCATGATGGTGATGGTGGTGGCTACCCCACTTAAC-3’
以下のPCRプログラムが用いられる:
98℃ 1分;35サイクルの{98℃ 10秒、50℃ 20秒、72℃ 40秒};72℃ 5分
1280塩基対の長さを持つPCR産物を得て、Qiagen製のDNA Gel Extraction Kitによって精製する。その後、2回目のPCRを行う。PCR混合物(総量50μl)は以下の物質を含む:
1×iProof PCR緩衝液(Bio−Rad製);
50μM dNTP混合物;
10ngの1280塩基対のPCR産物;
10ngの169塩基対のPCR産物;
1単位のiProof DNAポリメラーゼ(Bio−Rad製);
各200nMの下記オリゴ:
ADINde−F フォワードプライマー(配列番号11):
5’-ATCGATCGATGTCTGTATTTGACAGTAAATTTAAAGG-3’
ABD−R10 リバースプライマー(配列番号12):
5’-AGCTACGATAAGCTTAAGGTAATGCAGCTAAAATTTCATCTATCAGTG-3’
以下のPCRプログラムが用いられる:
98℃ 1分;35サイクルの{98℃ 10秒、50℃ 20秒、72℃ 45秒};72℃ 5分
【0037】
塩基対1428のPCR産物を得て、Qiagen製のDNA Gel Extraction Kitによって精製する。その後、制限酵素NdeIとHindIIIで分解し、同酵素であらかじめ分解したプラスミドpREST A(Invitrogen製)とライゲーションする。ライゲーション産物は、大腸菌BL21(DE3)細胞に形質転換する。構築した融合遺伝子の配列は、DNAシークエンシングによって確認する。
【0038】
実施例2B
His−ABD−ポリN−ADIのクローンニング
【0039】
His−ABD−ポリN−ADIの構築(
図3E中、配列番号40)は、オーバーラップPCRの2つの段階を経て行われ、最終段階で得られるPCRフラグメントをベクターpET3aのNdeIとBamHIサイトの間に挿入する。His−ABD−ポリN−ADIの遺伝子マップ、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を
図6に示す。
His−ABD−ポリN−ADIの構築に含まれるプライマー:
hisABDNde−F フォワードプライマー(配列番号13):
5’-GGAGATATACATATGCATCATCACCATCACCATGATGAAGCCGTGGATG-3’
ABDnn−R1 リバースプライマー(配列番号14):
5’-TTGTTATTATTGTTGTTACTACCCGAAGGTAATGCAGCTAAAATTTCATC-3’
ABDn−R2 リバースプライマー(配列番号15):
5’-AGAACCGCCGCTACCATTGTTATTATTGTTGTTACTACCCGA-3’
ADln−F フォワードプライマー(配列番号16):
5’-AATAATAACAATGGTAGCGGCGGTTCTGTATTTGACAGTAAATTTAAAGG-3’
ADIBam−R リバースプライマー(配列番号17):
5’-TAGATCAATGGATCCTTACCACTTAACATCTTTACGTGATAAAG-3’
【0040】
PCRの第1ラウンドにおいて、50μlの既知濃度の構成成分物質を含む反応ボリュームを2つのPCRチューブ内に調整する。各チューブにおいて、dNTP、iProof 緩衝液(BIO−RAD製)、iProof DNAポリメラーゼ(BIO−RAD製))、プライマーおよびDNAテンプレートを混合し、50μlまでddH
2Oを加える。反応で用いるDNAテンプレートは、ADI遺伝子のたんぱく質配列を変えずに、内部NdeIサイト変異を除去したマイコプラズマ・アルギニニ由来のADIの遺伝子を含むpET3aベクターである。
【0041】
2つの反応チューブは、(A)10pmolのhisABDNde−F(配列番号13)、0.5pmolのABDnn−R1(配列番号14)および10pmolのABDn−R2(配列番号15)、および(B)10pmolのADIn−F(配列番号16)および10 pmolのADIBam−R(配列番号17)のプライマー混合物をそれぞれ含む。
【0042】
PCRプログラムは、マニュアルにて推奨される段階にしたがって、50℃(20秒)と72℃(40秒)それぞれでアニーリングと伸展の温度(時間)でセットする。237bpと1278bpの大きさを有する2つの産物をPCRによって生成する。この産物を抽出し、次のラウンドのPCRのテンプレートとして用いる。
【0043】
2回目のオーバーラップ段階において、使用するテンプレートが1ラウンド目のPCRより得られた1pmolの237bpPCR産物と1pmolの1278bpPCR産物の混合物であるということ以外は、1ラウンド目と同様に反応混合物を調整する。使用するプライマーは、10pmolのhisABDNde−F(配列番号13)および10pmolのADIBam−R(配列番号17)に変更する。
【0044】
アニーリングと伸展の温度(時間)は、それぞれ50℃(20秒)と72℃(60秒)である。1484bpの大きさのPCR産物が反応により生じる。PCR産物を精製し、NdeIとBamHIによって分解し、あらかじめ分解されたpET3aプラスミドとライゲーションする。ライゲーション産物は、組換えたんぱく質の製造のために大腸菌BL21(DE3)に形質転換する。
【0045】
実施例2C
His−ABD−ポリN−bcADIのクローンニング
【0046】
His−ABD−ポリN−bcADIの構築(
図3F中、に示す配列番号41)は、オーバーラップPCRの2つの段階を経て行い、最終段階で得られるPCRのフラグメントをベクターpET3aのNdeIとBamHIサイトの間に挿入する。His−ABD−ポリN−bcADIの遺伝子マップ、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を
図7に示す。
His−ABD−ポリN−bcADIの構築に含まれるプライマー:
hisABDNde−F2 フォワードプライマー(配列番号18):
5’-GGAGATATACATATGCATCATCACCATCACCATGATGAAGCCGTGGATG-3’
bcABDnn−R1 リバースプライマー(配列番号19):
5’-TTGTTATTATTGTTGTTACTACCCGAAGGTAATGCAGCTAAAATTTCATC-3’
bcABDn−R2 リバースプライマー(配列番号20):
5’-TTTACCGCCGCTACCATTGTTATTATTGTTGTTACTACCCGA-3’
bcADln−F フォワードプライマー(配列番号21):
5’-AATAATAACAATGGTAGCGGCGGTAAACATCCGATACATGTTACTTCAGA-3’
bcADIBam−R リバースプライマー(配列番号22):
5’-TAGATCAATGGATCCCTAAATATCTTTACGAACAATTGGCATAC-3’
【0047】
ポリメラーゼ連鎖反応の第1ラウンド目において、50μlの既知濃度の構成成分を含む反応ボリュームを2つのPCRチューブ内に調整する。各チューブにおいて、dNTP、iProof buffer(BIO−RAD製)、iProof DNA ポリメラーゼ(BIO−RAD製)、プライマーおよびDNAテンプレートを混合し、50μlまでddH
2Oを加える。反応で用いるDNAテンプレートは、ADI遺伝子のたんぱく質配列を変えずに、内部NdeIサイト変異を除去したセレウス菌由来のADIの遺伝子を含むpET3aベクターである。
【0048】
2つの反応チューブは、(A)10pmolのhisABDNde−F2(配列番号18)、0.5pmolのbcABDnn−R1(配列番号19)および10pmolのbcABDn−R2(配列番号20);および(B)10pmolのbcADIn−F(配列番号21)および10pmolのbcADIBam−R(配列番号22)のプライマー混合物をそれぞれ含む。PCRプログラムは、マニュアルにて推奨される段階にしたがってアニーリングと伸展の温度(時間)をそれぞれ50℃(20秒)と72℃(40秒)でセットする。237bpと1250bpの大きさの2つの産物がPCRによって生成する。それらの産物を抽出し、次のラウンドのPCRのテンプレートとして適用する。
【0049】
2回目のオーバーラップ段階において、使用するテンプレートが一ラウンド目のPCRにより得た1pmolの237bpPCR産物と1pmolの1250bpPCR産物の混合物であるということ以外は、1ラウンド目と同様に反応混合物を調整する。使用するプライマーは、10pmolのhisABDNde−F2(配列番号18)および10pmolのbcADIBam−R(配列番号22)に変更する。
【0050】
アニーリングと伸展の温度(時間)は、それぞれ50℃(20秒)と72℃(60秒)である。1512bpの大きさのPCR産物が反応により生じる。PCR産物を精製し、NdeIとBamHIによって分解し、あらかじめ分解したpET3aプラスミドにライゲートする。ライゲート産物は、組換えたんぱく質の製造のために大腸菌BL21(DE3)に形質転換する。
【0051】
実施例3
AAD融合たんぱく質の発現と精製
【0052】
種培養の準備のために、AAD融合たんぱく質(
図5)をコードするプラスミドのキャリアである大腸菌株BL21(DE3)を5mlの2×TY培地にて、30℃、250rpmで一晩培養する。一晩の種培養(2.5ml)に、37℃、250rpm、2.5時間(OD
600≒0.6〜0.7まで)で250mlの2×TYを加える。OD
600に到達した時点で、IPTGを培地に加える(最終濃度0.2mM)。20℃でさらに22時間成長を続け、その後遠心分離によって細胞を回収する。細胞ペレットをpH7.4の10mMリン酸ナトリウム緩衝液25mlに再懸濁する。細胞を超音波処理によって溶解する。遠心分離の後、可溶性部分を回収する。その後、融合たんぱく質(Hisタグを含む)をニッケルアフィニティクロマトグラフィーによって精製する。表2は、培養温度が、発現した宿主から得られるAAD融合たんぱく質(アミノ酸配列を
図3Eの配列番号40に示す)の、溶解性に影響を与える重要な要因であることを示す。
【0053】
AAD融合たんぱく質の可溶性画分を単離するために、細胞ペレットをpH7.4、25mlのリン酸ナトリウム緩衝液10mMに再懸濁する。細胞を超音波処理によって溶解する。可溶性部分を遠心分離の後、回収する。その後、AAD融合たんぱく質(Hisタグを含む)を、ニッケルアフィニティクロマトグラフィーによって精製する。
【0054】
AAD融合たんぱく質の不溶性画分を単離するために、トリトン−X−100を1%含む、20mMトリス塩酸25ml、pH7.4に細胞ペレットを再懸濁する。細胞を超音波処理によって溶解する。不溶性部分(封入体)を遠心分離によって回収する。たんぱく質を、6Mのグアニジン塩酸塩を含む20mMトリス塩酸10ml、pH7.4によってアンフォールドし、溶解するまでボルテックスする。アンフォールドしたたんぱく質液を高速攪拌している20mMリン酸ナトリウム緩衝液100ml、pH7.4、に一滴ずつ加えることによって、たんぱく質を再びフォールドする。不溶性材料を遠心分離によって除去する。たんぱく質の塩析は、固体の硫酸アンモニウム粉末を70%の飽和状態となるまで上澄みに加えることによって行う。不溶性部分を遠心分離によって回収し、20mMリン酸ナトリウム緩衝液10mlに再懸濁する。その後、AAD融合たんぱく質(Hisタグを含む)をニッケルアフィニティクロマトグラフィーにより精製する。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例4
AAD融合たんぱく質の酵素活性アッセイおよび酵素反応速度論
【0057】
野生型ADIおよび本発明のAAD融合たんぱく質の酵素活性を測定するために、シトルリン検出のためのジアセチルモノオキシム(DAM)−チオセミカルバジド(TSC)アッセイを用いる。反応を以下に示す。
【数1】
【0058】
このアッセイは、DAM−TSC液に酸性塩化鉄溶液を混合して作られた呈色試薬を検体に加えることにより行う。簡単にいえば、20mMアルギニンおよび10mMリン酸ナトリウムとともに、pH7.4、37℃で5分間、酵素を培養する。反応混合物を100℃で5分間加熱すると、発色し、540nm(光路=1cm)で読み取る。様々な濃度のシトルリンを用いて、標準曲線を作成する。ADI天然酵素の一単位は、アッセイの条件下で、37℃で1分間に1μmolのアルギニンを1μmolのシトルリンに転換する酵素活性量である。野生型ADIと本発明のAAD融合たんぱく質の特異的な活性は、それぞれ8.4U/mgおよび9.2U/mg(pH7.4、生理的pH)である。異なるpH範囲(pH5.5〜9.5)においても、野生型ADIと本発明のAAD融合たんぱく質の特異的な活性を測定し、最適なpHは6.5である。それゆえ、この結果は、アルブミン結合たんぱく質がADIの酵素活性に影響を与えないので、AAD融合たんぱく質がアルギニンを効果的に枯渇させることを示している。
【0059】
ミカエリス定数K
mは、反応速度が最大速度の半分であるときの基質濃度であり、酵素に対する基質の親和性の逆の尺度である。K
mの値が小さいことは、基質への親和性が高いことを示し、これは反応速度が最大反応速度により速く近づくことを意味する。酵素反応速度論またはK
mの値を測定するために、異なる基質濃度のアルギニン(2000μM、1000μM、500μM、250μM、125μM、62.5μM)、pH7.4のもとで、野生型ADIおよびAAD融合たんぱく質の活性を測定する。
図3Eに示す(配列番号40、ADIたんぱく質はマイコプラズマ・アルギニニ由来である)AAD融合たんぱく質および
図3Fに示す(配列番号41、ADIたんぱく質はバチルス・セレウス由来である)で測定したK
mの値は、それぞれ0.0041mMおよび0.132mMである。この結果は、ABDへの融合が異種のAAD融合たんぱく質のアルギニンに対する結合親和性に影響を与えないことを示唆する。
【0060】
実施例5
がん細胞株上におけるAAD融合たんぱく質の細胞増殖アッセイおよび生体外での有効性
【0061】
DMEM培地をヒト黒色腫A375およびSK−mel−28、ヒト膵臓がんPancIならびにヒト子宮頸がんC−33A株の成長に用いる。EMEM培地をヒト肝臓がんSK−hep1およびヒト子宮頸がんC−33A株の培養に使用する。培地100μl中の細胞株(2〜5×10
3)を96ウェルプレートのウェルに播種し、24時間培養する。その培地を異なる濃度のAAD融合たんぱく質を含有する培地と交換する。プレートをさらに3日間、37℃、95%空気、5%CO
2の雰囲気で培養する。製造指示書にしたがって、培地中の生細胞の数を、MTTアッセイで測定する。細胞成長を、50%阻害を達成するのに必要な酵素の量をIC
50と定義する。
【0062】
表1および
図9に示すとおり、結果は、AAD融合たんぱく質は、アルギニンを効果的に枯渇させ、生体外の組織培養研究において様々な型のヒトがん細胞株の成長を阻害することを示す。たとえば、ヒト黒色腫、ヒト結腸がん、ヒト膵臓がん、ヒト肝臓がん、ヒト子宮頸がんすべてにおいて、これらのすべての型のがんは、AAD融合たんぱく質によってただちに阻害されているので、IC
50の値が低い(表1参照)。予想どおり、AAD融合たんぱく質はアルギニン依存性であるすべての型のがん(たとえばASS陰性がん)を阻害する。
【0063】
実施例6
生体内におけるAAD融合たんぱく質の半減期の測定
【0064】
balb/cマウス(生後5〜7週)を本研究に用い、マウスを実験の一週前に環境に順応させる。マウス(n=3)を4つの群に分け、0、100、500、1000μgのAAD融合たんぱく質(配列番号40,
図3E)を有する100μlのPBSを腹腔内に注射する。各マウスの血液を0時間および1〜7日に得る。遠心分離後に血清を得る。血清を除たんぱくし、アルギニン用のアミノ酸分析によって分析する。
【0065】
図11に示すように、AAD融合たんぱく質(配列番号40、
図3E)は、最も低い投与量である100μgであっても、1日、3日および5日目に血漿アルギニンを効果的に枯渇させており、AADが生体内で少なくとも5日間は効果的にアルギニンを枯渇させることができることを示唆する。アルギニンのレベルは、6日および7日目にすべての処理群においてゆっくり正常に戻っている。
【0066】
実施例7
異種移植したがん細胞におけるAAD融合たんぱく質の生体内効果
【0067】
balb/cヌードマウス(生後5〜7週)を本研究に使用し、実験の一週前に環境に順応させる。2×10
6のがん細胞を有する新しい培地100μlをマウスに皮下接種する。10日後、マウスを無作為に対照群と処理群に分ける。対照群にはPBS100μlを毎週腹腔内に投与し、処理群にはAAD融合たんぱく質100μlを毎週腹腔内に投与する。腫瘍の大きさをキャリパにより測定し、腫瘍の容積を式:(長さ×幅
2)/2を用いて計算する。各処理後5日目にアルギニンの血漿測定のために採血する。