特許第6243477号(P6243477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243477
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】フィルムの引裂き強度を増加させる方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 7/00 20060101AFI20171127BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20171127BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20171127BHJP
   A61F 2/08 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B29D7/00
   C08J5/18CEW
   A61L31/04
   A61F2/08
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-110982(P2016-110982)
(22)【出願日】2016年6月2日
(62)【分割の表示】特願2013-528313(P2013-528313)の分割
【原出願日】2011年9月9日
(65)【公開番号】特開2016-180111(P2016-180111A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2016年7月4日
(31)【優先権主張番号】61/381,286
(32)【優先日】2010年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー タウラー
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭50−038755(JP,B1)
【文献】 特開昭62−148538(JP,A)
【文献】 国際公開第03/002027(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 7/00
A61F 2/08
A61L 31/04
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーフィルムの引張強度を増加させる方法であって、
平面内延伸を受けた手術用のポリマーフィルムに配列そのものが円周方向に向いた荷重分散要素の配列を作成する工程、
前記ポリマーフィルムに、前記荷重分散要素に、又は前記荷重分散要素に隣接してテザーを取り付ける工程、
前記荷重分散要素の配列に、又はその近くでポリマーフィルムに引張荷重を前記テザーにより加える工程を含んでなり、最大引張荷重が、荷重分散要素のないことを除いて実質的に等価なポリマーフィルムに対して増加しており、および、
ここで前記荷重分散要素が、前記の加えられた引張り荷重の下で変形でき、かつ荷重分散要素が全くないポリマーフィルムに比べて破断までの荷重の増加を生み出す方法。
【請求項2】
前記荷重分散要素がスリットまたは開口部を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーフィルムが0.10インチ未満の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テザーが、接着剤、又は機械的連動、又は縫い合わせを含んでなる取付け手段により前記ポリマーフィルムに付けられている、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーフィルムは平面内で放射状に延伸を受け、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2010年9月9日に出願された米国特許仮出願第61/381,286号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
薄いフィルムは、貴重な物品を包み、又は修理するために日常的に使用されている。多くの用途において、これらの薄いフィルムは、取付け手段により所定の位置に固定される必要がある。残念ながら、薄いフィルム自体と取付け手段との界面で起こる高い応力は、荷重を受けた早期破断をもたらす。取付け手段と薄いフィルムとの界面で破断が起こる多くの状況があり、例えば、ヘルニア修復の間の手術用ポリマーフィルムメッシュが体組織へ固定される場合、又はフィルターバッグのパネルが共に縫われる場合、又は人工の移植組織が医療行為で使用される場合がある。
【0003】
米国特許第5,527,341号は、追加の平坦膜層を使用して、腱の増大又は修復の間の穴の領域を強化する方法を記載している。米国特許第5,797,932号は、基礎膜の厚さとほぼ等しい「プラットフォーム上昇部分(platform-elevated part)」を使用する膜ヘルニア修復を議論している。この二重膜の厚さは、膜が手術の間に所定の位置に縫われた後に縫合糸による引き裂きを低減するように意図されている。
【0004】
米国特許第第6,544,167号は、強化「リング」であって、「円形である円周断面を有する環状の形状を典型的に有し、典型的には、プラスチック材料又は、曲げられた筋膜若しくは心膜などの自家組織、又は他の生体適合性材料でできているリング」を提供することによる、Dacron(Hemoshield)又はポリテトラフルオロエチレン(Gortex)などのシート材料を体組織に固定することを議論している。
【0005】
米国公開特許第2002/0026092Al号は、強化「リング」であって、「リング上及び材料を通る接着剤又は縫い目により材料に付けることのできるリング」を議論している。或いは、リングは2片のシート材料の間に挟むこともできる。この場合、シート材料の第二片は、シート材料とは反対のリング側に配置することができる。リングの周囲及び材料を通って伸びる適切な縫い目がリングを挟み、好ましい位置にそれを維持する。
【0006】
欧州特許出願第0352972A号は、薄肉延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)「血管グラフトであって、自身をペリグラフト材料に取り付ける縫い目による引裂きに耐える血管グラフトの必要性を議論している。「その発明の」組成物は、延伸された生体適合性フッ素プラスチック樹脂及びPTFE樹脂と化学的に適合性がある生体適合性で高耐熱性の繊維を含んでなり、前記繊維はランダムな配向で樹脂全体に分布している」。
【0007】
本発明は、本明細書に記載されるポリマーフィルムの引裂き強度を増加させる方法を提供する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様は、ポリマーフィルムの引裂き強度を増加させる方法に関する。この方法を利用して、取付け手段が付けられたポリマーフィルムから取付け手段を引くか、又は他の方法で除くのに必要な力を増加させることもできる。ポリマーフィルムの引裂き強度を増加させるこの方法は、少なくとも1つの荷重分散要素を、加えられた荷重又は取付け手段の中心付近の位置でポリマーフィルム中に含ませることにより実証される。スリット、孔線、及び他の開口部があるがこれらに限定されない荷重分散要素が本明細書に含まれる。前記荷重分散要素は、応力再分散手段として作用し、フィルム全体又はフィルム内の裂け目の伝播に要する荷重を増加させる。ソフトティシュパッチなどがあるがこれに限定されない医療用物品において、本発明を利用して、縫合保持及び類似の耐荷特性を増加させることができる。このように、ポリマーフィルムの耐荷力を増加させる本方法が本明細書に提供される。
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[14]に記載する。
[1]
ポリマーフィルムの引張強度を増加させる方法であって、
a.ポリマーフィルムを準備する工程、
b.前記ポリマーフィルムに荷重分散要素を作成する工程、
c.前記荷重分散要素に、又はその近くでポリマーフィルムに引張荷重を加える工程を含んでなり、最大引張荷重が、荷重分散要素のない実質的に等価な系に対して増加している方法。
[2]
前記荷重分散要素がスリットを含んでなる、項目[1]に記載の方法。
[3]
前記荷重分散要素が開口部を含んでなる、項目[1]に記載の方法。
[4]
前記ポリマーフィルムが0.10インチ未満の厚さを有する、項目[1]に記載の方法。
[5]
前記ポリマーフィルムが0.050インチ未満の厚さを有する、項目[1]に記載の方法。
[6]
前記ポリマーフィルムが0.010インチ未満の厚さを有する、項目[1]に記載の方法。
[7]
前記ポリマーフィルムが0.002インチ未満の厚さを有する、項目[1]に記載の方法。
[8]
前記引張荷重が、テザーにより前記ポリマーフィルムに加えられる、項目[1]に記載の方法。
[9]
前記テザーが、取付け手段により前記ポリマーフィルムに付けられている、項目[8]に記載の方法。
[10]
前記取付け手段が、接着剤、又は機械的連動、又は縫い合わせを含んでなる、項目[9]に記載の方法。
[11]
手術用ポリマーフィルムの引張強度を増加させる方法であって、
a.手術用ポリマーフィルムを準備する工程、
b.前記手術用ポリマーフィルムに荷重分散要素を作成する工程、
c.取付け手段を使用して、前記荷重分散要素に、又は前記荷重分散要素に隣接して前記手術用ポリマーフィルムにテザーを取り付ける工程であって、前記取付け手段が、接着剤、又は機械的連動、又は縫い合わせを含んでなる工程、
d.前記テザーにより前記ポリマーフィルムに引張荷重を加える工程を含んでなり、最大引張荷重が、荷重分散要素のない実質的に等価な系に対して増加している方法。
[12]
前記取付け手段が縫合糸を含んでなる、項目[11]に記載の方法。
[13]
前記取付け手段がステープルを含んでなる、項目[11]に記載の方法。
[14]
前記取付け手段が接着剤を含んでなる、項目[11]に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面中で、同様な参照記号は同様な要素を示す。
図1】長さ方向に向いた荷重分散要素、取付け手段、及び荷重源を有するポリマーフィルムの模式図である。
図2】横方向に向いた荷重分散要素、取付け手段、及び荷重源を有するポリマーフィルムの模式図である。
図3】「帽子」状の荷重分散要素及び点の荷重源を有するポリマーフィルムの模式図である。
図4】開口部荷重分散要素及び点の荷重源を有するポリマーフィルムの模式図である。
図5】複数の荷重分散要素及び荷重源を有する円形ポリマーフィルムの上面図である。
図6】複数の大きさの複数の荷重分散要素を有する円形ポリマーフィルムの上面図である。
図7】メッシュ張力試験法において、接触半径がどのように決定されたかを示す模式図である。
図8】楕円形開口部アスペクト比の関数としてのポリマーフィルムメッシュ配向角及び縫合糸引抜き力のグラフである。
図9】スリットの幅の関数としての、引張試験変位対縫合糸引抜きのグラフである。
図10】「帽子」状スリットの幅の関数としての、引張試験変位対縫合糸引抜きのグラフである。
図11】複数の荷重分散手段を有するメッシュの、機械方向、縦方向の引裂き伝播結果のグラフである。
図12】複数の荷重分散手段を有するメッシュの、横方向の引裂き伝播結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ポリマーフィルムの引裂き強度を増加させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、取付け点又は取付け手段により荷重が加えられるポリマーフィルムに好適である。本発明は、加えられる荷重の中心又はその付近でポリマーフィルム中に少なくとも1つの荷重分散要素を含むものである。この方法は、縫合保持力を増加させる必要がしばしばある手術用ポリマーフィルムメッシュなどの手術物品があるがこれに限定されない種々の用途に有用である。本発明を説明するために使用される薄く、強いポリマーフィルム系手術用ポリマーフィルムメッシュは、膣脱、腹圧性尿失禁、又は類似の骨盤底疾患を治すための低侵襲腹腔鏡技術に有用になり得る。
【0011】
本発明に好適なポリマーフィルムには、キャスティング又は押出のいずれか及び平面内(例えば、X−Y方向)延伸により製造されるポリマーがあるが、これらに限定されない。図1は、テザー(30)が取付け手段(20)を介して付いているポリマーフィルム(10)の平面シートを表す。荷重(40)がテザー(30)に加えられると、その力はテザー(30)により取付け手段(20)を介してポリマーフィルム(10)に伝えられる。当業者は、接着剤、機械的連動、溶接、結合、縫製、又はテープ巻きを含むがこれらに限定されない、ある種の取付け手段(20)が本発明とともに利用可能なことを認識するだろう。本発明の一態様は、系の破断に要する荷重を効果的に増加させる少なくとも1つの荷重分散要素(50)の包含である。この実施形態の荷重分散手段(50)は、取付け手段(20)の幅よりも長い縦方向に向いたスリットである。系の破断点は、ポリマーフィルム(10)を、加えられた荷重(40)から実質的に分離させるのに要する荷重と定義される。当業者は、この分離が、取付け手段(20)の脱離、ポリマーフィルム(10)破断、テザー(30)の破断、又はこれらの組み合わせから起こりうることを認識するだろう。
【0012】
本発明が適用されるポリマーフィルムは一般的に平面であり、平面内延伸を受けている。これらのポリマーフィルムは実質的に平らであり、薄く、柔軟性がある。それらは、任意の熱可塑性ポリマー、ペースト押出ポリマー、又はキャスタブルポリマーから製造できる。本発見が適用されるいくつかの典型的な薄いフィルムには、ポリオレフィンからできたもの、ポリウレタン、シリコーン、Teflon(登録商標)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びこれらのブレンド、コポリマー、又はコンポジットがあるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明に好適なポリマーフィルムは典型的には薄く、約0.10インチ未満の厚さを有する。いくつかの実施形態において、ポリマーフィルムの厚さは約0.050インチ未満である。他の実施形態において、ポリマーフィルムの厚さは約0.010インチ未満である。さらに他の実施形態において、ポリマーフィルムの厚さは0.002インチ未満である。これらのポリマーフィルムは柔軟性があり、巻くことも、皺にすることも、折ることもできる。
【0014】
当業者は、そのような薄いポリマーフィルムが、多くの場合、より厚いフィルムから製造され、その場合、湿式カレンダリング若しくは乾式カレンダリング、延伸、又はその両方により厚さが減らされることを認識するだろう。縦方向の平面内延伸(すなわち、X方向)は、厚さを減らしながら強度を増やす通常の方法である。その後に荷重分散要素を含むと、フィルムの縦方向の耐荷力をさらに増すことができる。本発明に記載されるフィルムの耐荷力は、試験片破断を起こすのに要する引張り荷重と定義される。横方向の延伸(すなわちY方向)は、横強度を増すために利用できる。負荷分散要素を含むと、フィルムの横方向の耐荷力をさらに増すことができる。
【0015】
本発見のいくつかのポリマーフィルムは、当業者に公知であり米国特許第3953566号に基づく方法により製造できる延伸PTFE(ePTFE)を含むことがある。本明細書に使用されるePTFEフィルムの具体的な性質は、PTFE樹脂の選択及び方法の条件により調整できる。医療用途では、得られるePTFEフィルムの細孔径を調整して、組織内殖を制限できる。ヒト用の多くの医療用途では、ePTFEの細孔径は、それが曝露される細胞の大きさ未満でなくてはならない。典型的には、このことから、得られるePTFEフィルムの平均細孔径が13μm以下である必要がある。
【0016】
図2は、テザー(30)が取付け手段(20)により付けられた二軸延伸ポリマーフィルム(10)を表す。縦方向を向いた荷重(40)がテザー(30)に加えられると、その力はテザー(30)から取付け手段(20)を介してポリマーフィルム(10)に伝えられる。横方向に向いた荷重分散要素(50)は、破断前に系の耐荷力を効果的に増加させる。図2の荷重分散要素(50)は、取付け手段(20)の幅よりも広い幅を有するスリットである。系の破断の点は、ポリマーフィルム(10)を、加えられた荷重(40)から実質的に分離させるのに要する荷重と定義される。上述のとおり、当業者は、この分離が、取付け手段(20)の脱離、ポリマーフィルム(10)の破断、テザー(30)の破断、又はこれらの組み合わせから起こりうることを認識するだろう。
【0017】
図3は、テザー(30)が位置(22)で直接付けられた二軸延伸ポリマーフィルム(10)を表す。横方向に向いた荷重(40)がテザー(30)に加えられると、その力はテザー(30)からポリマーフィルム(10)に位置(22)で伝えられる。非直交性荷重分散要素(50)は、破断前に系の縦方向耐荷力を効果的に増加させる。図3の荷重分散要素(50)は、テザー(30)がポリマーフィルム(10)に付いている位置(22)の幅よりも大きい縦方向の寸法を有する非直交性スリットである。系の破断は、ポリマーフィルム(10)を、加えられた荷重(40)から実質的に分離させるのに要する荷重と定義される。上述のとおり、当業者は、この分離が、ポリマーフィルム(10)の破断、テザー(30)の破断、又はこれらの組み合わせから起こりうることを認識するだろう。
【0018】
図4は、テザー(30)が位置(22)で直接付けられた二軸延伸ポリマーフィルム(10)を表す。横方向に向いた荷重(40)がテザー(30)に加えられると、その力はテザー(30)からポリマーフィルム(10)に位置(22)で伝えられる。開口部荷重分散要素(50)は、破断前の系の縦方向耐荷力を効果的に増加させる。図4の荷重分散要素(50)は、テザー(30)がポリマーフィルム(10)についている位置(22)の幅より大きい縦方向の寸法を有する開口部である。系の破断は、ポリマーフィルム(10)を、加えられた荷重(40)から実質的に分離させるのに要する荷重と定義される。上述のとおり、当業者は、この分離が、ポリマーフィルム(10)の破断、テザー(30)の破断、又はこれらの組み合わせから起こりうることを認識するだろう。
【0019】
図5は、テザー(30)が位置(22)で直接付けられた、穴のあいた放射状に延伸されたポリマーフィルム(10)を表す。横方向に向いた荷重(40)がテザー(30)に加えられると、その力はテザー(30)からポリマーフィルム(10)に位置(22)で伝えられる。テザーは、糸でも、綱でも、ロープでも、縫合糸でも、ケーブルでも、他の類似の引張り要素でもよい。位置(22)での取付け手段は、テザー(30)をポリマーフィルム(10)に通すことでも、それをポリマーフィルム表面に貼り付けることでもよい。円周方向に向いた数多くの荷重分散要素(50)は、破断の前に系の耐荷力を効果的に増加させる。図5の荷重分散要素(50)はスリットである。他の荷重分散要素の種類もこの実施形態において使用でき、例えば、クロスハッチスリット(cross-hatched slits)、円、楕円、曲線スリットなどがあるがこれらに限定されない。系の破断は、ポリマーフィルム(10)を、加えられた荷重(40)から実質的に分離させるのに要する荷重と定義される。上述のとおり、当業者は、この分離が、ポリマーフィルム(10)の破断、テザー(30)の破断、又はこれらの組み合わせから起こりうることを認識するだろう。
【0020】
図6は、異なる種類の荷重分散要素(50)が存在する、穴のあいた放射状に延伸されたポリマーフィルム(10)を表す。図6の荷重分散要素(50)のいくつかは、円周方向に向いた多数のスリットである。さらに、図6は、均一なパターンのより小さい穴(55)などの荷重分散要素(50)の追加の組を表す。荷重分散要素が、加えられた引張り荷重の下で変形でき、かつ荷重分散要素が全くないポリマーフィルムに比べて破断までの荷重の増加を生み出すならば、荷重分散要素の形状及び/又はパターンの任意の組み合わせを本発明に利用できる。
【0021】
本発明が、微孔性フルオロポリマー又は微孔性生体適合性ポリマーからできている手術用パッチ又は手術用ポリマーフィルムメッシュに適用される場合、第二の材料が微細構造に吸収されて追加の機能性を与えることができる。この場合、その物品は、巨視的な荷重分散要素と微孔性要素の両方を含んでなるだろう。ヒドロゲルなどがあるがこれに限定されない材料が微孔性要素に吸収されて、細胞内殖を促進できる。任意に、第二の材料は、微孔性材料の外部表面に塗布されても、微孔性材料の微細構造の内部表面に加えられてもよい。抗生物質又は防腐性物質などがあるがこれらに限定されないコーティング材料は、感染に耐えるのに有用になりうる。コーティング材料、レオロジー、及び工程パラメーターを調整して、利用可能な内部及び/又は外部のポリマーフィルムメッシュ表面に堆積される材料の量を制御できる。幅広い範囲の補足的な材料が、本発明により支持され、又は含まれて、多数の最終用途の需要を満たすことができる。
【0022】
損傷をうけたか、又は弱くなった体組織の修復には、複数の荷重分散要素を有する比較的強いポリマーフィルムメッシュが必要である。例えば腹壁ヘルニアの修復には、本発明は、32N/cmを超えるメッシュ張力を有するが5mmトロカールポートによる送達のために巻かれるほど薄い、15cm×19cmの楕円形のポリマーフィルムメッシュを提供できる。この32N/cmポリマーフィルムメッシュの場合、厚さは約0.01cmである。癒着バリアが望まれる場合、メッシュ張力が16N/mを超える、より薄いポリマーフィルムメッシュを利用できる。その場合、さらに大きいポリマーフィルムメッシュが、同じ5mm送達トロカールポート内に収まるだろう。或いは、類似の大きさのポリマーフィルムメッシュ(15cm×19cmの楕円形状)ならば、5mm未満の直径を有するトロカールに包装することができるだろう。外径4mmのトロカールを利用できる。又は外径3mmのトロカールを利用できる。
【0023】
少なくとも1つの荷重分散要素を含んでなる包装されたポリマーフィルムメッシュは、収納容器の中にある間に、収納容器への挿入の前に、又は手術用装置への移動の後に殺菌することができる。任意の好適な殺菌手段を利用でき、例えばγ線、蒸気、エチレンオキシド(EtO)、及び過酸化物があるがこれらに限定されない。
【0024】
いくつかの手術手順において、異なる大きさ又は直径の送達装置が認可されることがある。荷重分散要素(複数可)の数、大きさ、形状、及び位置を含む設計パラメーターをそれに応じて変えることができる。唯一の目的が癒着バリアである場合、16N/cm未満の強度が有用になり得るが、その場合、より少ない荷重分散要素が、あるポリマーフィルムの厚さに対して必要であるか、又はより薄いフィルムの厚さが、等しい又はより多い荷重分散要素と共に使用できる。或いは、小さい包装サイズ及び高い荷重要件を満たすには、荷重分散要素の数、形状、及びパターンを、ベースのポリマーフィルムの性質とともに変えることができる。
【0025】
(試験方法)
(メッシュ張力)
以下に記載される実施例のメッシュ張力を、測定された力及びボールとの接触半径(rcontact)に基づき、ASTM D3787に従って測定した。
メッシュ張力=力/2×Π×rcontact
接触半径(rcontact)は、下記のとおりコンタクトペーパーを使用して決定した。
【0026】
ニップインプレッションキット(nip impression kit)(Metso Paper,P.O. Box 155, Ivy Industrial Park, Clarks Summit, PA 18411から市販の10002002 Nip Impression Kit)を使用して、ポリマーフィルムメッシュとのボール接触の長さを測定する。このキットは、一巻きのカーボン紙及び一巻きの普通の白紙を含み、それらは、両者のある長さが、カーボンの側が白紙に接触した状態で得られるように分配できる。2種の紙をボールとポリマーフィルムメッシュとの間に挿入する。荷重又は圧力をボールとポリマーフィルムメッシュの間に加えると、カーボン紙は、白紙の上に編み目の形状でインクの印の模様を残す。白紙上の模様の長さを、0.5mm目盛り金属製定規で測定する。
【0027】
ボール接触の長さとボールの半径を利用して、図6に示されるとおり接触角を決定する。
2γ=ボール接触の長さ/rball
□=(ボール接触の長さ/rball)/2
contact=rball×sin(□)
式中、2□=接触角
ball=ボールの半径
contact=接触半径
【0028】
(縫合保持)
縫合保持は、物品中に配置された縫合部位で引っ張られている物品の機械的抵抗を反映する機械的性質である。縫合部位で縫合糸により加えられる荷重を表すには、小さいピン固定具を使用し、ピン(典型的には0.020インチ、又は多数のピン)を、被験物品の幅1インチのストリップに押しつけた。クーポン/付着ピン固定具の組み合わせを、Instron Tensile Testerなどの引張試験装置に取り付ける。クロスヘッドのスピードを200mm/分に設定した。この測定の目的では、示される最大の力は、「縫合保持」強度としてであった。しかし、図6及び7の応力歪みグラフに示される他のパラメーターも、本明細書に記載される強化現象の定義に利用できる。
【0029】
下記の非限定的な実施例は、本発明をさらに説明するために提供される。
【実施例】
【0030】
(テープ1)
米国特許第6,541,589号に記載及び教示される、ペルフルオロブチルエチレン改質剤を含んでなるPTFEポリマーの微粉を、Isopar K(Exxon Mobil Corp.,Fairfax,VA)と、0.200g/微粉のgの比率でブレンドした。滑沢剤を加えた粉体をシリンダー中で圧縮してペレットを形成し、70℃に設定したオーブンにおよそ8時間置いた。圧縮及び加熱されたペレットをラム押出して、幅がおよそ15.2cmで厚さが0.75mmである押出品テープを製造した。次いで、テープを圧縮ロールの間で圧延し、伸長させ、乾燥させると、6kpsi(機械方向)×6kpsi(横方向)のマトリックス引張強度を持つテープが生じた。得られた非対称ポリマーフィルムメッシュのテープ1に対応する表面は、密構造側であると考えられる。
【0031】
(テープ2)
PTFEポリマーの微粉(DuPont, Wilmington, DE)を、Isopar K(Exxon Mobil Corp.,Fairfax,VA)と、0.243g/微粉のgの比率でブレンドした。滑沢剤を加えた粉体をシリンダー中で圧縮してペレットを形成した。圧縮したペレットを室温でラム押出して、幅がおよそ15.2cmで厚さが0.75mmである押出品テープを製造した。次いで、テープを、38℃に設定した圧縮ロールの間で圧延して、厚さ0.28mmにした。次いで、テープを縦方向に8%伸長させ、乾燥させた。その過程で、3.2kpsi(機械方向)×1.4kpsi(横方向)のマトリックス引張強度を持つ圧延テープが生じた。得られた非対称ポリマーフィルムメッシュのテープ2に対応する表面は、開放構造側であると考えられる。
【0032】
(実施例1−薄い二面ポリマーフィルムパッチ)
テープ1の6層を、各層がその前の層と90度の角度をなすように、互いに積み重ねた。OEMプレスModel VAC-Q-LAM-1/75/14X13/2/4.0"/ E370C/N/N/N-C-480V (OEM Press Systems Inc., 311 S. Highland Ave., Fullerton, CA 92832)で、高真空(<29インチHg)下で、309℃及び100k−lbsの力で4分間完全密度(full density)まで積み重ねを圧縮してラミネートした。圧縮した積み重ねを放冷し、次いで、直径8.5インチの円に切り出した。
【0033】
円形試料の円周をつかみ、300℃で、軸方向延伸速度3.0インチ/秒で、延伸面積約11.25:1に放射状に延伸した。次いで、放射状に延伸した試料を緩和させ、1.5:1の面積減少を達成した。試料を取り除き、9インチ×9インチの試験片に切り出した。この過程を4回繰り返し、4つの放射状延伸PTFEディスクをつくった。
【0034】
上記の4つの放射状延伸PTFEディスクを、テープ2の1層と組み合わせ、単一の積み重ねた試験片にして、ポリマーフィルムメッシュを作成した。積み重ねた試験片を、OEMプレスModel VAC-Q-LAM-1/75/14X13/2/4.0"/ E370C/N/N/N-C-480V (OEM Press Systems Inc., 311 S. Highland Ave., Fullerton, CA 92832)で、高真空(<29インチHg)で、309℃及び約100k−lbsの力で、4分間ほぼ完全密度まで圧縮してラミネートした。圧縮して緻密にした積み重ねを放冷し、8.5インチの円に切り出した。円形試料の円周をつかみ、300℃で、0.2インチ/秒の軸方向変位の速度で、延伸比約11.25:1に延伸した。次いで、延伸したポリマーフィルムメッシュを、約1.5:1の面積減少に緩和させた。次いで、ポリマーフィルムメッシュを、350℃の対流オーブン(ESPEC Model SSPH-201, 4141 Central Parkway, Hudsonville, MI 49426)で10分間再び引っ張り、次いで放冷した。
【0035】
この微孔性延伸非対称PTFEポリマーフィルムメッシュ物品の断面SEMを図5に示す。
【0036】
(実施例2−縫合管理により予備縫合された薄い二面ポリマーフィルムパッチ)
実施例1のポリマーフィルムメッシュの試料を、CO2 Plotter/Laser (Universal Laser Systems Model PLS6.60-50 16000 M 81st Street, Scottsdale, AZ 85260)を使用して、15cm×19cmの楕円のデバイスに切り出した。次いで、GORE-TEX CV-2縫合糸(W.L.Gore and Associates,Inc.,301 Airport Road, Elkton, MD 21921)を4つの基本位置:12時、3時、6時、及び9時の位置に通した。各縫合糸を、端から約0.5cm内側に通した。各縫合糸を、自由端がデバイスの腹部側になるように、デバイスに通した。各縫合糸の輪の侵入及び脱出点は、約0.5cm離れていた。次に、フッ化エチレンプロピレン(FEP)/延伸PTFE(ePTFE)複合フィルムの薄くて強い片をおよそ1cm×0.5cmの長方形に切り出した。延伸PTFEフィルムは米国特許第5476589A号に準じて調製した。FEP層はおよそ1ミルの厚さであった。この切り出した長方形を、縫合したポリマーフィルムメッシュの開放面に、露出している縫合糸のそれぞれが隠れるように置いた。次いで、これらのFEP/ePTFE長方形をポリマーフィルムメッシュに溶接し、それにより縫合糸を所定の位置に固定した。溶接は、ブラントチップを備え800°Fに設定した半田ごて(Weller WSD161, APEX Tool Group LLC., 14600 York Road Suite A, Sparks, MD 21152)及び手の圧力を使用して行った。
【0037】
縫合糸のもつれを防ぐように設計された縫合管理は、米国特許第6,165,217号に準じて製造した生体吸収性ポリマーの「糸」から製造したコイルを利用して、配向した縫合糸の取り付けられた組を束ねることにより達成した。生体吸収性フィルムの質量は7mg/cm2であった。このフィルムを「たばこ状に巻き」、「糸」を作った。次いで、この「糸」を縫合糸に巻いて、対応する隣接縫合糸を固定した。熱(260°F、10秒間)を、ヒートガン(Steinel Model HL2010E, 9051 Lyndale Avenue, Bloomington, MN 55420)により加え、生体吸収性ポリマーを収縮させて熱硬化させた。
【0038】
(実施例3−予備縫合され5mmトロカールポートによる送達用に管に包装された薄い二面ポリマーフィルムパッチ)
実施例2の縫合されたポリマーフィルムメッシュ物品を、楕円の短軸で半分に折った。折ったポリマーフィルムメッシュを、水平式回転ドリルプレスにチャックで固定された2つの小さいマンドレル(又は分かれたマンドレル)(New England Precision Grinding, 0.013インチ×70インチのPTFE被覆304SSマンドレル、35 Jeffrey Avenue, Holliston, MA 01746-2027)の間に置き、ドリルプレスが回転して、縫合されたポリマーフィルムメッシュデバイスを巻き、マンドレルの周りの堅いパッケージにした。巻かれたアセンブリをチャックから外し、巻かれた縫合済みポリマーフィルムメッシュの中からマンドレルを外した。巻かれた縫合済みポリマーフィルムメッシュを、内径約5.2mmの管(Grilamid製、0.005インチの壁のナイロン管)に挿入した。管及び巻かれた縫合デバイスを、内径約5.5mmの5mmトロカールポート(Covidien 15 Hampshire Street, Mansfield, MA 02048)に挿入した。縫合済みポリマーフィルムメッシュの展開は、巻かれた縫合済みポリマーフィルムメッシュが容易にトロカールから押し出され、比較的水平に置かれたテーブルトップに広げられた時に実証された。
【0039】
(実施例4−荷重分散−5:1楕円形開口部)
楕円形開口部作成の縫合保持効果を、米国特許第7306729号に準じて作成したePTFEポリマーフィルムメッシュ物品を使用して決定した。ベースのePTFE材料は、マトリックス引張強度が、機械方向と横方向で、それぞれ48kpsi及び46kpsiであった。その材料を、CO2プロッター/レーザー(Universal Laser Systems Model PLS6.60-50 16000 M 81st Street, Scottsdale, AZ 85260)に取り付けた。材料の面にビームの焦点を合わせた。試験方向の向きで(機械方向、横方向、及び公称45度)、楕円がポリマーフィルムメッシュ物品の外周に実質的に平行であるような向きに、rmajor0.05インチ及びrminor0.010インチ(すなわち、5:1の比)の楕円を材料からレーザーカットした。縫合保持測定は、機械方向、横方向、及び45度方向のそれぞれで、レーザーによる開口部に試験ピンを連続的に配置して実施した。結果を図7に示す。
【0040】
(実施例5−荷重分散−2:1楕円形開口部)
楕円形開口部作成の縫合保持効果を、米国特許第7306729号に準じて作成したePTFEポリマーフィルムメッシュ物品を使用して決定した。ベースのePTFE材料は、マトリックス引張強度が、機械方向と横方向で、それぞれ48kpsi及び46kpsiであった。その材料を、CO2プロッター/レーザー(Universal Laser Systems Model PLS6.60-50 16000 M 81st Street, Scottsdale, AZ 85260)に取り付けた。材料の面にビームの焦点を合わせた。試験方向の向きで(機械方向、横方向、及び公称45度)、楕円がポリマーフィルムメッシュ物品の外周に実質的に平行であるような向きに、rmajor0.05インチ及びrminor0.025インチ(すなわち、5:1の比)の楕円を材料からレーザーカットした。縫合保持測定は、機械方向、横方向、及び45度方向のそれぞれで、レーザーによる開口部に試験ピンを連続的に配置して実施した。結果を図7に示す。
【0041】
(実施例6−荷重分散−1:1楕円形開口部)
楕円形開口部作成の縫合保持効果を、米国特許第7306729号に準じて作成したePTFEポリマーフィルムメッシュ物品を使用して決定した。ベースのePTFE材料は、マトリックス引張強度が、機械方向と横方向で、それぞれ48kpsi及び46kpsiであった。その材料を、CO2プロッター/レーザー(Universal Laser Systems Model PLS6.60-50 16000 M 81st Street, Scottsdale, AZ 85260)に取り付けた。材料の面にビームの焦点を合わせた。試験方向の向きで(機械方向、横方向、及び公称45度)、楕円がポリマーフィルムメッシュ物品の外周に実質的に平行であるような向きに、rmajor0.05インチ及びrminor0.050インチ(すなわち、5:1の比)の楕円を材料からレーザーカットした。縫合保持測定は、機械方向、横方向、及び45度方向のそれぞれで、レーザーによる開口部に試験ピンを連続的に配置して実施した。結果を図7に示す。
【0042】
(実施例7−荷重分散−対照、楕円形開口部なし)
楕円形開口部作成の縫合保持効果を、米国特許第7306729号に準じて作成したePTFEポリマーフィルムメッシュ物品を使用して決定した。ベースのePTFE材料は、マトリックス引張強度が、機械方向と横方向で、それぞれ48kpsi及び46kpsiであった。この対照試料は、機械方向、横方向、及び45度方向のそれぞれに対応する位置でポリマーフィルムメッシュ物品に試験ピンを押しつけることにより試験した。結果を図7に示す。
【0043】
(実施例8−荷重分散−スリット要素)
縫合位置付近の小さなスリット作成の縫合保持に対する効果を、米国特許第7306729号に準じて作成したePTFEポリマーフィルムメッシュ物品を使用して決定した。ベースのePTFE材料は、マトリックス引張強度が、機械方向と横方向で、それぞれ48kpsi及び46kpsiであった。ポリマーフィルムメッシュ物品の端からおよそ0.5cm内側で端に平行にカミソリの刃で切って、小さなスリットの切れ目をつくった。次いで、スリットと物品の端との間の位置で、ポリマーフィルムメッシュ物品に試験ピンを押しつけた。引張性質を測定した。図8は、スリットが全くない対照試料に比較した、スリットの長さの関数としての縫合糸引き抜き引張り結果を示す。
【0044】
(実施例9−荷重分散−「帽子」要素)
縫合位置付近の小さな「帽子」状スリット作成の縫合保持に対する効果を、米国特許第7306729号に準じて作成したePTFEポリマーフィルムメッシュ物品を使用して決定した。ベースのePTFE材料は、マトリックス引張強度が、機械方向と横方向で、それぞれ48kpsi及び46kpsiであった。ポリマーフィルムメッシュ物品の端からおよそ0.5cm内側で端に平行にカミソリの刃で切って、小さな「帽子」状スリットの切れ目をつくった。次いで、「帽子」状スリットと物品の端との間の位置で、試験ピンをポリマーフィルムメッシュ物品に押しつけた。引張性質を測定した。図8は、スリットが全くない対照試料に比較した、「帽子」状スリットの長さの関数としての、縫合糸引き抜き引張り結果を示す。
【0045】
(実施例10−複数の縦方向荷重分散要素)
複数の荷重分散要素を含んでなる材料の機械方向の引裂抵抗を、以下のとおり評価した。米国特許第7306729号に準じてePTFE物品を作成し、平均質量193g/m2、平均密度2.1g/cc、及びMTS(機械方向)36kpsi及び(横方向)55kpsiの材料を得た。その材料を、CO2プロッター/レーザー(Universal Laser Systems Model PLS6.60-50 16000 M 81st Street, Scottsdale, AZ 85260)に取り付けた。材料の面にビームの焦点を合わせた。rmajor0.02インチ及びrminor0.004インチの楕円のマトリックスを、連続的な材料中にレーザー処理した。楕円は、その短軸が材料の機械方向に平行になるように向けた。楕円は、縦方向には0.07インチ(公称の中心−中心間)離して、横方向には0.08インチ(公称の端−端間)離して配置した。得られた材料は、図6のより小さい穴(55)の均一パターンにより示される穴のパターンを有した。
【0046】
受け取ったままの材料及びこの実施例で上述のレーザー処理した荷重分散要素のマトリックスのある材料の両方から、1インチ×2インチの試料試験片を切り出した。各試料の引裂き伝播特性を、ASTM D1938 Trouser Tear Methodに実質的に従って試験した。試料試験片の長軸を、材料の機械方向に平行にした。鋭いカミソリの刃を使用して長軸に沿って試験片に手作業で切れ目を入れることにより、鋭い裂け目を作り始めた。各タブを、引張試験器の低いグリップ及び高いグリップに取付け、200mm/分のクロスヘッドスピードで試験し、生じた力のトレースを記録した。対照及びレーザー処理試料の両方の力対変位データを、図11に示す。レーザー処理試料により保持される最大の力は、対照試料より著しく高い。これは、最大の力又は耐荷力に関して、この薄いフィルム試験片に多数の穴を切ったことが、機械方向の引張性質をおよそ2倍増加させたことを証明する。
【0047】
(実施例11−複数の横方向荷重分散要素)
複数の荷重分散要素を含んでなる材料の横方向の引裂抵抗を、以下のとおり評価した。米国特許第7306729号に準じてePTFE物品を作成し、平均質量193g/m2、平均密度2.1g/cc、及びMTS(機械方向)36kpsi及び(横方向)55kpsiの材料を得た。その材料を、CO2プロッター/レーザー(Universal Laser Systems Model PLS6.60-50 16000 M 81st Street, Scottsdale, AZ 85260)に取り付けた。材料の面にビームの焦点を合わせた。rmajor0.02インチ及びrminor0.004インチの楕円のマトリックスを、連続的な材料中にレーザー処理した。楕円は、その短軸が材料の横方向に平行になるように向けた。楕円は、縦方向には0.07インチ(公称の中心−中心間)離して、横方向には0.08インチ(公称の端−端間)離して配置した。得られた材料は、図6のより小さい穴(55)の均一パターンにより示される穴のパターンを有した。
【0048】
受け取ったままの材料及びこの実施例で上述のレーザー処理した荷重分散要素のマトリックスのある材料の両方から、1インチ×2インチの試料試験片を切り出した。各試料の引裂き伝播特性を、ASTM D1938 Trouser Tear Methodに実質的に従って試験した。試料試験片の長軸を、材料の横方向に平行にした。鋭いカミソリの刃を使用して長軸に沿って試験片に手作業で切れ目を入れることにより、鋭い裂け目を作り始めた。各タブを、引張試験器の低いグリップ及び高いグリップに取付け、200mm/分のクロスヘッドスピードで試験し、生じた力のトレースを記録した。対照及びレーザー処理試料の両方の力対変位データを、図12に示す。レーザー処理試料により保持される最大の力は、対照試料より著しく高い。これは、最大の力又は耐荷力に関して、この薄いフィルム試験片に多数の穴を切ったことが、横方向の引張性質をおよそ2倍増加させたことを証明する。
図1
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図12