【実施例】
【0039】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、例示的な実施形態を詳細に記載する。本発明概念は、本明細書に述べられた例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形で具体化され得る。明確とするために既知の部分についての記述は省いている。
【0040】
参考例1:水分離複合膜(I)
1重量部の酸化グラフェン粉末(modified Hummer’s methodを用いて合成)を脱イオン水と混合して、固形分が0.05wt%の溶液を得た。次いで、その組成物に対し吸引堆積(suction deposition)を行うことによって、厚さ約400nmの選択層を形成した。次いで、その選択層を多孔質親水性ナイロン支持材(平均径200nmの細孔を備えるもの)上に配置し、50℃で60分加熱乾燥し、水分離複合膜(I)を得た。
図4は、水分離複合膜(I)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0041】
参考例2:水分離複合膜(II)
選択層の厚さを約400nmから800nmに増やしたこと以外は、
参考例1と同じように
参考例2を進行して、水分離複合膜(II)を得た。
図5は、水分離複合膜(II)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0042】
参考例3:水分離複合膜(III)
【0043】
選択層の厚さを約400nmから2000nmに増やしたこと以外は、
参考例1と同じように
参考例3を進行して、水分離複合膜(III)を得た。
図6は、水分離複合膜(III)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0044】
参考例4:除湿性能試験
参考例1〜3の水分離複合膜(I)〜(III)の水蒸気透過率および水/空気分離係数を除湿装置100により評価した。その結果は表1に示されている。
図7に示されるように、除湿装置100は、特定の温度下で特定の湿度(例えば25℃/80%RH)を持つ気流(gas flow)を、本発明の水分離複合膜106を通過させるよう導くための恒温恒湿装置102を含むものとした。水分離複合膜106を通過する前の気流の湿度および温度を、第1の温湿度計104を用いて測定し、水分離複合膜106を通過した後の気流の湿度および温度を、第2の温湿度計108を用いて測定した。除湿装置100は、気流が確実に水分離複合膜106を通過するように真空ポンプ110をさらに備えるものであった。第1の温湿度計104および第2の温湿度計108の測定値から、水分離複合膜106の水蒸気透過率および水/空気分離係数を算出した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示されるように、選択層の厚さが増すと、水分離複合膜の水/空気分離係数が向上する。
【0047】
参考例5:水分離複合膜(IV)
1重量部の酸化グラフェン粉末(modified Hummer’s methodを用いて合成)を脱イオン水と混合して、固形分が0.05wt%の第1の溶液を得た。次に、0.1重量部のグリオキサール(ethanedial)を脱イオン水と混合して、固形分が1.0wt%の第2の溶液を得た。次いで、第1の溶液と第2の溶液とを混合して、50℃で60分静置し、第3の溶液を得た(酸化グラフェン粉末とグリオキサールとの重量比は1:0.1であった)。次いで、その第3の組成物に対し吸引堆積(suction deposition)を行うことにより、選択層を形成した。次いで、その選択層を多孔質親水性ナイロン支持材(平均径200nmの細孔を備えるもの)上に配置し、50℃で60分加熱乾燥し、水分離複合膜(IV)を得た。乾燥膜状態における水分離複合膜(IV)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。次いで、水分離複合膜(IV)を水中に60分置いた後に再び、水分離複合膜(IV)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。その結果は表2に示してある。
【0048】
参考例6:水分離複合膜(V)
グリオキサールの重量を0.1重量部から5重量部に増やしたこと以外は、
参考例6を
参考例5と同じように進行し(よって、第3の組成物の酸化グラフェン粉末とグリオキサールとの重量比は1:5)、水分離複合膜(V)(厚さ800nm)を得た。乾燥膜状態における水分離複合膜(V)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。次いで、水分離複合膜(V)を水中に60分置いた後に再び、水分離複合膜(V)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。その結果は表2に示してある。
図8は、水分離複合膜(V)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0049】
参考例7:水分離複合膜(VI)
グリオキサールの重量を0.1重量部から10重量部に増やしたこと以外は、
参考例7を
参考例5と同じように進行し(よって、第3の組成物の酸化グラフェン粉末とグリオキサールとの重量比は1:10)、水分離複合膜(VI)を得た。乾燥膜状態における水分離複合膜(VI)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。次いで、水分離複合膜(VI)を水中に60分置いた後に再び、水分離複合膜(VI)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。その結果は表2に示してある。
【0050】
参考例8:水分離複合膜(VII)
グリオキサールの重量を0.1重量部から15重量部に増やしたこと以外は、
参考例8を
参考例5と同じように進行し(よって、第3の組成物の酸化グラフェン粉末とグリオキサールとの重量比は1:15)、水分離複合膜(VII)を得た。乾燥膜状態における水分離複合膜(VII)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。次いで、水分離複合膜(VII)を水中に60分置いた後に再び、水分離複合膜(VII)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。その結果は表2に示してある。
【0051】
参考例9:水分離複合膜(VIII)
グリオキサールの重量を0.1重量部から20重量部に増やしたこと以外は、
参考例9を
参考例5と同じように進行し(よって、第3の組成物の酸化グラフェン粉末とグリオキサールとの重量比は1:20)、水分離複合膜(VIII)を得た。乾燥膜状態における水分離複合膜(VIII)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。次いで、水分離複合膜(VIII)を水中に60分置いた後に再び、水分離複合膜(VIII)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。その結果は表2に示してある。
【0052】
参考例10:水分離複合膜(IX)
グリオキサールの重量を0.1重量部から80重量部に増やしたこと以外は、
参考例10を
参考例5と同じように進行し(よって、第3の組成物の酸化グラフェン粉末とグリオキサールとの重量比は1:80)、水分離複合膜(IX)を得た。乾燥膜状態における水分離複合膜(IX)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。次いで、水分離複合膜(IX)を水中に60分置いた後に再び、水分離複合膜(IX)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。その結果は表2に示してある。
【0053】
【表2】
【0054】
参考例11:水分離複合膜(X)
第3の組成物を多孔質親水性ナイロン支持材上に直接塗布したこと以外は、
参考例5と同じように
参考例11を進行し、水分離複合膜(X)を得た。
【0055】
実施例1:水分離複合膜(XI)
1重量部の酸化グラフェン粉末を脱イオン水と混合して、固形分が0.5wt%の第1の溶液を得た。次に、5重量部の1,2−エタンジアミンを脱イオン水と混合して、固形分が1.0wt%の第2の溶液を得た。次いで、第1の溶液と第2の溶液とを混合して、50℃で60分静置し、第3の溶液を得た(酸化グラフェン粉末と1,2−エタンジアミンとの重量比は1:5であった)。次いで、その第3の組成物に対し吸引堆積(suction deposition)を行うことにより、選択層を形成した。次いで、その選択層を多孔質親水性ナイロン支持材(平均径200nmの細孔を備えるもの)上に配置し、50℃で60分加熱乾燥して水分離複合膜(XI)を得た。
図9は、水分離複合膜(XI)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0056】
実施例2:水分離複合膜(XII)
1,2−エタンジアミンの重量を5重量部から10重量部に増やしたこと以外は、
実施例2を
実施例1と同じように進行し(よって、第3の組成物の酸化グラフェン粉末と1,2−エタンジアミンとの重量比は1:10)、水分離複合膜(XII)を得た。
【0057】
実施例3:水分離複合膜(XIII)
1重量部の酸化グラフェン粉末を脱イオン水と混合して、固形分が0.5wt%の第1の溶液を得た。次に、10重量部の1,3−プロパンジアミンを脱イオン水と混合して、固形分が1.0wt%の第2の溶液を得た。次いで、第1の溶液と第2の溶液とを混合して、50℃で60分静置し、第3の溶液を得た(酸化グラフェン粉末と1,3−プロパンジアミンとの重量比は1:10であった)。次いで、その第3の組成物に対し吸引堆積(suction deposition)を行うことにより、選択層を形成した。次いで、その選択層を多孔質親水性ナイロン支持材(平均径200nmの細孔を備えるもの)上に配置し、50℃で60分加熱乾燥し、水分離複合膜(XIII)を得た。乾燥膜状態における水分離複合膜(XIII)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。次いで、水分離複合膜(XIII)を水中に60分置いた後に再び、水分離複合膜(XIII)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。その結果は表3に示してある。
【0058】
実施例4:水分離複合膜(XIV)
1,3−プロパンジアミンの重量を10重量部から20重量部に増やしたこと以外は、
実施例4を
実施例3と同じように進行し(よって、第3の組成物の酸化グラフェン粉末と1,3−プロパンジアミンとの重量比は1:20)、水分離複合膜(XIV)を得た。
図10は、水分離複合膜(XIV)の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。乾燥膜状態における水分離複合膜(XIV)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。次いで、水分離複合膜(XIV)を水中に60分置いた後に再び、水分離複合膜(XIV)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。その結果は表3に示してある。
【0059】
実施例5:水分離複合膜(XV)
1,3−プロパンジアミンの重量を10重量部から40重量部に増やしたこと以外は、
実施例5を
実施例3と同じように進行し(よって、第3の組成物の酸化グラフェン粉末と1,3−プロパンジアミンとの重量比は1:40)、水分離複合膜(XV)を得た。乾燥膜状態における水分離複合膜(XV)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。次いで、水分離複合膜(XV)を水中に60分置いた後に再び、水分離複合膜(XV)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。その結果は表3に示してある。
【0060】
実施例6:水分離複合膜(XVI)
1,3−プロパンジアミンの重量を10重量部から80重量部に増やしたこと以外は、
実施例6を
実施例3と同じように進行し(よって、第3の組成物の酸化グラフェン粉末と1,3−プロパンジアミンとの重量比は1:80)、水分離複合膜(XVI)を得た。乾燥膜状態における水分離複合膜(XVI)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。次いで、水分離複合膜(XVI)を水中に60分置いた後に再び、水分離複合膜(XVI)の酸化グラフェン層の平均間隔幅をX線回折測定により測定した。その結果は表3に示してある
【0061】
【表3】
【0062】
表2および表3から分かるように、有機化合物(グリオキサールまたは1,3−プロパンジアミン)を含まない選択層を有した水分離複合膜(I)は、間隔の膨潤度が比較的高い。反対に、有機化合物(グリオキサールまたは1,3−プロパンジアミン)の重量が増加するのに伴って、水分離複合膜の間隔の膨潤度は減少している。このことは、有機化合物の添加によって2層の隣接する酸化グラフェン層間が確実に架橋され、任意の隣接する2層の酸化グラフェン層間の間隔幅を所定の範囲内に維持できるということを意味する。結果として、水分子が通る通路が2層の隣接する酸化グラフェン層間に形成され得るため、水分離複合膜の水蒸気透過率および水/空気分離係数が改善されることとなる。
【0063】
実施例7:除湿性能試験
参考例6および
実施例2の水分離複合膜(V)および(XII)の水蒸気透過率および水/空気分離係数を、
図7に示される除湿装置100により、25℃/80%RHで評価した。その結果は表4に示されている。さらに、
参考例6の水分離複合膜(V)の水蒸気透過率および水/空気分離係数を、
図7に示される除湿装置100により、29℃/60%RHで評価した。その結果も表4に示されている。
【0064】
【表4】
【0065】
表4に示されるように、有機化合物を含む選択層を有した本発明の水分離複合膜は、式(I)または(II)で表される構造の有機化合物を選択層中に含まない水分離複合膜に比べ、水蒸気透過率および水/空気分離係数が高かった。また、29℃/60%RHで測定したときに、水分離複合膜(V)の水/空気分離係数は約3.79×106であった。
【0066】
参考例12:水分離複合膜(XVII)
厚さを約800nmから約1400nmに増やしたこと以外は、
参考例12を
参考例6と同じように進行し、水分離複合膜(XVII)を得た。
【0067】
参考例13:水分離複合膜(XVIII)
厚さを約800nmから約3000nmに増やしたこと以外は、
参考例13を
参考例6と同じように進行し、水分離複合膜(XVIII)を得た。
【0068】
参考例14:除湿性能試験
参考例12および13の水分離複合膜(XVII)および(XVIII)の水蒸気透過率および水/空気分離係数を、
図7に示される除湿装置100により、25℃/80%RHで評価した。その結果は表5に示されている。
【0069】
【表5】
【0070】
開示した方法および物質に各種修飾および変化を加え得るということは明らかであろう。明細書および実施例は単に例示として見なされるように意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。