特許第6243485号(P6243485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243485
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】混焼用バーナ装置及びボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23D 17/00 20060101AFI20171127BHJP
   F23C 1/08 20060101ALI20171127BHJP
   F23Q 9/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F23D17/00 101
   F23C1/08
   F23Q9/00 G
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-136740(P2016-136740)
(22)【出願日】2016年7月11日
(62)【分割の表示】特願2014-55442(P2014-55442)の分割
【原出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-194408(P2016-194408A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】593196849
【氏名又は名称】ボルカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】樋上 真一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博一
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−235909(JP,A)
【文献】 特開2011−112346(JP,A)
【文献】 特開平02−050011(JP,A)
【文献】 特開2012−117781(JP,A)
【文献】 特開2006−029763(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第00735409(GB,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01980788(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D17/00
F23C 1/08
F23Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスタの中心軸に配設された燃料ノズルと、
前記燃料ノズルの周囲に配設された略円形のスワラと、
前記スワラの外径位置の仮想円上に相互間隔をあけて配設された複数本のガスノズルとを備えた混焼用バーナ装置において、
前記ガスノズルは、前記スワラよりも軸方向下流側に突出するとともに、
パイロット火炎を形成するために、前記スワラによって形成される再循環領域に向けてガス燃料が噴射されるパイロット火炎用ガス開口と、
メイン火炎を形成するために、ガス燃料が噴射されるメイン火炎用ガス開口と
を設け
前記パイロット火炎用ガス開口が、前記スワラの外径位置の仮想円の内側に配置されるとともに、スワラの火炎保持領域側の開口面より下流の位置に向けてガスを噴出するようにし、
前記メイン火炎用ガス開口は、前記スワラの外径位置の仮想円の外側に配置されるとともに、ガスノズルの先端部の先端面に前記スワラの半径方向外向きに開口するメイン火炎用ガス開口を備えて構成されたことを特徴とする混焼用バーナ装置。
【請求項2】
前記ガスノズルの前記パイロット火炎用ガス開口が、前記ガスノズルの外周面に開口されている請求項1に記載の混焼用バーナ装置。
【請求項3】
前記スワラにはその外径位置の仮想円よりもスワラ中心側に位置する凹部を形成し、その凹部内にガスノズルを配置した請求項1又は2に記載の混焼用バーナ装置。
【請求項4】
ボイラケーシングに請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の混焼用バーナ装置を組み込んだボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば重油等の液体燃料と天然ガス等のガス燃料との異種燃料を同時に燃焼することが可能な混焼用バーナ装置、その混焼用バーナ装置を組み込んだボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の混焼用バーナ装置は、産業用や船舶用ボイラに採用されている。そして、特許文献1においてこの種の混焼用バーナ装置が開示されている。この特許文献1に開示された混焼用バーナ装置においては、バーナ中心部に保炎用のスワラが配され、その中心軸上に重油等の液体燃料を霧化して供給するアトマイザが設置されている。また、スワラの羽根部及びスワラ外の2つの仮想配設円上には、それぞれ複数本のパイロット火炎用ガスノズル及びメイン火炎用ガスノズルが設置されている。そして、空気は、風箱に導入された後、レジスタ内を通り燃焼室内に導かれる。この際、空気がスワラを通ることにより、スワラ下流の燃焼室内において渦(再循環領域)が形成され、パイロット火炎用ガスノズルからのガスによる火炎がメイン火炎用ガスノズルからのガス及びアトマイザからの霧化燃料に伝播されて燃焼室内において所要の火炎が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−29763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の混焼用バーナ装置は、一般には大型ボイラにおいて搭載されるものであって、大容量の燃焼量を有するものであった。このようなバーナ装置は大きく、また部品数も多い。このため、混焼用バーナ装置を中型ボイラまたは小型のボイラに適用することが困難であった。また、このような中型または小型のボイラは、大型ボイラと比較して燃焼室の単位容積あたりの燃焼量、すなわち燃焼室負荷が大きいため、火炎の安定性やコンパクト性を達成することが難しい。従って、中型または小型のバーナ装置においては、振動燃焼や不完全燃焼等が生じやすい。
【0005】
特許文献1に記載されたバーナ装置は、安定した火炎を形成できるとともに、ボイラのコンパクト化に対応できるとしているが、火炎用ガスノズルとしてメイン火炎用ガスノズル及びパイロット火炎用ガスノズルの双方の種類が必要であるため、部品点数が多くなって、構造が複雑である。また、両火炎用ガスノズルがレジスタ内の異なる2つの仮想配設円上に配列されるため、バーナ装置の径が大きくなって、小型化には限界があった。
【0006】
本発明は、安定した火炎の形成を実現でき、しかも中型・小型用ボイラ用として対応できるとともに、構成が簡単な混焼用バーナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明においては、レジスタの中心軸に配設された燃料ノズルと、前記燃料ノズルの周囲に配設された略円形のスワラと、前記スワラの外径位置の仮想円上に相互間隔をあけて配設された複数本のガスノズルとを備えた混焼用バーナ装置において、前記ガスノズルには、パイロット火炎を形成するために、前記スワラによって形成される再循環領域に向けてガス燃料が噴射されるパイロット火炎用ガス開口と、メイン火炎を形成するために、ガス燃料が噴射されるメイン火炎用ガス開口とを設けたことを特徴としている。
【0008】
前記の構成においては、スワラの外径位置の仮想円上に相互間隔をあけて配設された複数本のガスノズルを備え、その一つひとつのガスノズルにパイロット火炎用ガス開口と、メイン火炎用ガス開口とがそれぞれ設けられているため、ひとつのガスノズルがパイロット火炎形成用及びメイン火炎形成用の機能を有する。従って、2種類のノズルを設ける必要はない。このため、混焼用バーナ装置の部品点数が少なくなるとともに、同装置の小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品点数を減らして構成を簡単にできるとともに、小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】混焼用バーナ装置の断面図。
図2】混焼用バーナ装置の燃焼室を示す断面図。
図3】スワラの斜視図。
図4】スワラ部分の一部破断正面図。
図5】実施形態のガスノズルの斜視図。
図6】実施形態のガスノズルの断面図。
図7】実施形態のガスノズルの正面図。
図8】(a)〜(c)は、第1変形例を示すガスノズルの斜視図、横断面図、縦断面図。
図9】(a)〜(c)は、第2変形例を示すガスノズルの斜視図、横断面図、縦断面図。
図10】(a)〜(d)は、第3変形例を示すガスノズルの斜視図、平面図、横断面図、縦断面図。
図11】(a)〜(i)は、第4変形例を示すガスノズルの斜視図、右側面図、左側面図、平面図、底面図、背面図、正面図、(b)のA−A断面図、(g)のB−B断面図。
図12】(a)〜(i)は、第5変形例を示すガスノズルの斜視図、右側面図、左側面図、平面図、底面図、背面図、正面図、(b)のA−A断面図、(g)のB−B断面図。
図13】(a)〜(j)は、第6変形例を示すガスノズルの斜視図、右側面図、左側面図、平面図、底面図、背面図、正面図、(b)のA−A断面図、(g)のC−C断面図、(b)のB−B断面図。
図14】(a)〜(j)は、第7変形例を示すガスノズルの斜視図、右側面図、左側面図、平面図、底面図、背面図、正面図、(b)のA−A断面図、(b)のB−B断面図、(g)のC−D−E断面図。
図15】ボイラを示す簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
図1に示すように、混焼用バーナ装置の外殻を形成する風箱31の前部には先端部をコーン状に拡径したレジスタ32が突出されており、この拡径部の内部が火炎保持領域33になっている。なお、この明細書においては、図1の左側を前部とする。風箱31の後端には空気受入口311が形成されている。そして、この空気受入口311に接続されたブロワ装置(図示しない)のダクト34から燃焼に用いられる空気が風箱31内に送り込まれ、その空気がレジスタ32を介して火炎保持領域33に供給される。
【0012】
図1に示すように、風箱31の中心には円筒状の第1ステー35が固定され、その先端部には前記レジスタ32の中心軸上に位置する燃料ノズルとしてのアトマイザ36が支持されている。アトマイザ36には給油管38を介して液体燃料が供給されるとともに、給気管37を介して蒸気等の圧力気体よりなる噴霧媒体が供給される。液体燃料としては、A重油,B重油,C重油,灯油,軽油,アルコール,バイオ燃料等が用いられる。そして、アトマイザ36の先端の噴油開口から噴出された液体燃料が同じくアトマイザ36の先端の噴気開口からの圧力気体によって霧化されて火炎保持領域33の中心部に噴出される。前記第1ステー35の外周側には第1ステー35と平行をなす円筒状の第2ステー41が固定され、その先端内部には着火用バーナの着火用バーナノズル42が支持されている。着火用バーナノズル42には給油管43を介して液体燃料が供給される。そして、着火用バーナノズル42から放出された液体燃料がイグナイタ(図示しない)の火花により着火され、その火炎が火炎保持領域33内の燃料に伝播される。この場合の液体燃料としては、A重油、軽油、灯油等が用いられる。
【0013】
図1図3に示すように、前記第1ステー35の前端には保炎用のスワラ51がその中心の軸筒52において支持されている。軸筒52の外周には複数枚の螺旋形状の羽根53が固定されている。羽根53の先端には前記軸筒52と同心円上に位置する案内環54が固定されている。そして、レジスタ32の後方側からの空気が案内環54によって案内されて羽根53間を通過するとともに、火炎保持領域33内において火炎が形成されることにより、図4に示すように、火炎保持領域33内においてアトマイザ36及びスワラ51の火炎保持領域33の中心軸線100を中心にしたスワル流が形成される。また、図2に示すように、火炎保持領域33内において中心軸線100の領域を周囲より負圧にした再循環領域が形成される。
【0014】
図1に示すように、風箱31内の後端にはガス燃料室61が区画されている。このガス燃料室61には供給管62を介してガス燃料が供給される。ガス燃料としては、液化天然ガス,液化石油ガス,低カロリーガス等が用いられる。ガス燃料室61には複数本の円筒状の5本の供給管63が接続されている。なお、この供給管63はブラケット(図示しない)により風箱31の内側面に固定されている。供給管63は、後端側の接続部64と、その接続部64の前端にネジにより着脱可能に固着されたガスノズル65とを備えている。ガスノズル65はガスバーナを構成する。本実施形態においては、図4に示すように、各ガスノズル65は前記中心軸線100を中心とした仮想配設円101上において相互間隔をおいた等ピッチで配置されている。ガスノズル65の先端面652は円錐状に形成されている。前記仮想配設円101は前記ガスノズル65の中心軸線102上を通る。
【0015】
図1及び図3に示すように、前記スワラ51の外径位置の内側には1つの収容筒55が固定されており、その内部に前記着火用バーナノズル42が収容されている。前記案内環54の等間隔をおいた複数箇所(実施形態では5箇所)には前記ガスノズル65を収容するための凹部56が形成されている。前記ガスノズル65は、この凹部56内に凹部56の内周面との間にわずかの間隙を設けて収容されている。従って、ガスノズル65は、スワラ51の外径面よりスワラ51の径方向の内方に位置している。そして、着火用バーナノズル42の先端は、収容筒55内においてスワラ51の前端の開口面511より後方に位置している。また、ガスノズル65は、その先端部が前記開口面511から火炎保持領域33側に突出している。
【0016】
図5図7に示すように、ガスノズル65の先端部には、その外周面651に開口するひとつのパイロット火炎用ガス開口(以下、パイロット開口という)66が貫設されている。このパイロット開口66は、前記中心軸線100と平行な方向から見て(以下、正面視という)、図4に示すように、前記仮想配設円101の半径方向の中心向きを指向している。従って、パイロット開口66から中心軸線100の方向に向けてガスが噴出される。このパイロット開口66のガスノズル65の中心軸線102に対する中心角θ1は、前記仮想配設円101の半径線103に対してマイナス45度〜プラス45度の範囲内に設定され、この実施形態では0度に設定されている。
【0017】
図4図7に示すように、ガスノズル65の先端部には、その外周面651に開口するメイン火炎用ガス第1開口(以下、第1開口という)67と、メイン火炎用ガス第2開口(以下、第2開口という)68とが形成されている。第1開口67は、前記中心軸線102を中心とした中心角θ2が前記半径線103に対してスワル流の前方方向104へ15度〜90度の範囲内に位置している。本実施形態では中心角θ2は36度である。このため、第1開口67は正面視において前記仮想配設円101の半径方向の中心向きで、かつスワル流の前方方向104を指向していて、その指向方向にガスが噴出される。従って、第1開口67により、仮想配設円101の半径方向内向きに形成される仮想半径線103と、仮想配設円101の接線方向であって、スワラ51による燃焼用空気,すなわちスワル流の前方方向104と同じ向きに形成される仮想接線との間の角度範囲内に第1開口67によるガス燃料の噴出方向が設定されている。
【0018】
第2開口68は前記半径線103に対してガスノズル65の中心軸線102を中心とした中心角θ3が90度〜180度の範囲内に位置している。本実施形態では中心角θ3は108度である。従って、第2開口68は、正面視において前記仮想配設円101の半径方向の反対向きにおいて、スワル流の前方方向104を指向していて、その指向方向にガスが噴出される。すなわち、第2開口68により、仮想配設円101の半径方向外向きに形成される仮想半径線103と、該仮想配設円101の接線方向であってスワラ51による燃焼用空気,すなわちスワル流の前方方向104と同じ向きに形成される仮想接線との間の角度範囲内に第2開口68によるガス燃料の噴出方向が設定されている。
【0019】
図5に示すように、前記パイロット開口66,第1開口67及び第2開口68は、ガスノズル65の軸方向において同位置に形成されるとともに、ガスノズル65の中心軸線102を中心とした放射方向を指向しており、それら66,67,68は同径である。また、図2に示すように、前記パイロット開口66,第1開口67,第2開口68及び第3開口69は、スワラ51の前端開口面511の前方に位置している。
【0020】
図5図7に示すように、ガスノズル65の先端部には、その先端面652に開口するメイン火炎用ガス第3開口(以下、第3開口という)69が貫設されている。第3開口69は中心軸線102を中心とした外向き半径線側において中心角θ4がプラス45度〜マイナス45度の範囲内に位置している。この実施形態においては、θ4は0度である。従って、第3開口69は、正面視において前記仮想配設円101の半径方向の外向きを指向していて、すなわち、第3開口69により、前記ガスノズル65の先端部からガスノズル65の仮想配設円101の半径方向の外向き方向にガスが噴出される。
【0021】
そして、ガスノズル65から噴出される全ガス燃料の全量のうちの略40パーセントが第3開口69から、それぞれ略20パーセントがパイロット開口66,第1,第2開口67,68から噴出されるように、各開口66〜69の内径が設定されている。
【0022】
図2に示すように、側面視において、パイロット開口66,第1開口67及び第2開口68は、再循環領域の下流の方向を向いて、内方を指向し、それぞれ中心軸線100と平行な軸線105に対して傾斜している。これらの開口66,67,68の軸線105に対する傾斜角度はパイロット開口66が最も大きく、第1開口67,第2開口68の順に小さくなっている。第3開口69は、再循環領域の下流の方向を向いて、外方を指向し、中心軸線100と平行な軸線105に対して傾斜している。
【0023】
図15に示すように、以上のように構成された混焼用バーナ装置30は、ボイラ80のケーシングに組み込まれて稼働される。
次に、本実施形態の混焼用バーナ装置の作用を説明する。
【0024】
図示しないブロワの稼働により、空気が風箱31の後端の空気受入口311から風箱31内に導入される。その空気はレジスタ32を介して、スワラ51内を通り、スワラ51の前端開口面511から火炎保持領域33内に軸線100を中心にして、スワル旋回流として流れるとともに、外側から中心軸線100側に流れ込む再循環流となる。このとき、アトマイザ36から中心軸線100方向に沿って火炎保持領域33内に液体燃料が噴霧されるとともに、着火用バーナノズル42と、ガスノズル65のパイロット開口66及び第1〜第3開口67〜69とからガス燃料が噴出される。これと同時に、着火用バーナノズル42においてイグナイタにより液体燃料に対する着火が行なわれる。そして、その火炎がアトマイザ36及びガスノズル65からの燃料に伝播される。
【0025】
このとき、火炎保持領域33の中心部でスワラ51により旋回をともなう再循環流にのった火炎が形成され、この火炎によりアトマイザ36及びガスノズル65から噴出する燃料を安定して継続的に燃焼させることができる。すなわち、レジスタ32からスワラ51を通過する空気にはスワラ51の旋回羽根の作用により一方向への旋回がかかり、再循環領域が形成される。このため、空気とアトマイザ36及びガスノズル65から噴出される燃料との混合が促進されて、安定した火炎が形成される。なお、火炎保持領域33内において、アトマイザ36及びガスノズル65からの燃料による火炎が安定化した後、着火用バーナノズル42からの液体燃料の供給は停止される。このように、アトマイザ36やガスノズル65からの燃料による火炎が安定した後、着火用バーナの運転は停止される。しかし、火炎不安定時には着火用バーナを運転することも可能であるし、常時運転することも可能である。特に発熱量の小さい燃料を使用する場合には、着火用バーナを常時運転することもある。また、着火用バーナは、本実施形態においては液体燃料を使用しているが、ガス燃料を使用することも可能である。
【0026】
なお、火炎保持領域33の中心軸線100上にアトマイザ36が、その周囲にガスノズル65が設けられているため、本実施形態の混焼用バーナ装置30を油とガスとを同時に燃焼できる油・ガス混焼用としても使用できるだけではなく、油専焼用及びガス専焼用としても使用できる。この場合、スワラ51により形成された負圧域である再循環領域に、油火炎あるいはガス火炎が十分に保炎されて、安定した火炎が形成される。従って、油とガス燃料とにより、専焼運転及び混焼運転において高ターンダウン比運転が可能で、しかもコンパクトで安定した火炎を形成することができる。
【0027】
そして、本実施形態では、以下の作用及び効果を得ることができる。
(1)前記ガスノズル65には、スワラ51によって形成された再循環領域に向けてガス燃料が噴射されるパイロット開口66が設けられ、このパイロット開口66から噴射されるガス燃料によりパイロット火炎が形成される。また、ガスノズル65には、前記パイロット火炎をもとにメイン火炎を形成するためのガス燃料が噴射される第1〜第3開口67〜69が設けられている。従って、従来構成とは異なり、パイロット火炎のためのガス燃料を供給するパイロットガスノズルとメインガスノズルとを別に設けることが不要となり、部品点数の削減による構成の簡素化と、スワラ51の小径化による装置の小型化が可能となる。
【0028】
(2)前記パイロット開口66からのガス燃料の噴出方向を、前記ガスノズル65の仮想配設円101の半径方向の中心向きにマイナス45度〜プラス45度の範囲内に位置するように設定した。この構成によれば、スワラ51で形成される再循環領域に、パイロット開口66から適量のガスを供給することにより、コンパクトで安定したパイロット用ガス火炎を形成することができる。従って、前述のように混焼用バーナ装置全体の小型化に寄与できるとともに、低振動の混焼用バーナ装置を得ることができる。
【0029】
(3)特に、前記パイロット開口66からのガス燃料の噴出方向を、前記仮想配設円101の半径方向の中心向きになるように設定した。この構成によれば、スワラ51で形成される再循環領域に、前記パイロット開口66からさらに適量のガスを供給することができて、安定したパイロット用ガス火炎を形成することができる。特に、ガス専焼運転においては、この効果は大きい。そして、パイロット開口66が、スワラ51の火炎保持領域33側の開口面511より下流の位置に向けてガスを噴出するようにした。このようにすれば、スワラ51の下流部に形成される負圧領域に対し、ガス噴出開口部から噴出したガス燃料が適度に混合して、安定したガス火炎が形成される。また、前記パイロットガス開口66は、そのガス噴出方向が軸方向下流向きに対し、中心軸側へ傾斜している。このようにすれば、ガス噴流が循環領域の外周部から内側へ巻き込まれるために、循環流を破壊することなく好適にガス燃料が循環領域に混入し、安定した火炎が形成される。
【0030】
(4)図2に示す側面視において、前記パイロット開口66を前方に、かつ内方に傾斜した方向に指向させて、前記スワラ51の燃焼用空気出口の開口面511の前方の位置から再循環流の下流の位置に向けてガスが噴出されるようにした。このため、スワラ51の下流部に形成される再循環領域あるいはその付近に対し、パイロット開口66から噴出したガス燃料が適度に供給されて、安定したガス火炎が形成される。
【0031】
(5)前記のように、側面視において、スワラ51の開口面511の前方の位置において前記パイロット開口66の指向角度を前方に、かつ内方に傾斜させて、再循環領域の下流の位置に向けてガスが噴出するように開口した。このため、パイロット開口66からのガス噴流が再循環領域の外周部から内側へ巻き込んで、好適にガス燃料が再循環領域に混入する。このため、再循環流が破壊されることはなく、コンパクトで安定した火炎が形成される。これに対し、側面視において、パイロット開口からのガス噴出方向を中心軸線100に対し略垂直内向きにした場合には、再循環領域をガス噴流が貫通して、この循環流の一部が分断破壊される。このような場合には、火炎安定が阻害され、火炎の不安定化を招きやすくなる。本実施形態では、このような問題の発生を抑止できる。
【0032】
(6)ガスノズル65の先端部が前記開口面511から火炎保持領域33側に突出している。このため、図2から明らかなように、ガス燃料を再循環領域にその外周側から内部に巻き込みやすくするための有効な位置にパイロット開口66及び第1〜第3開口67,68,69を容易に配置することができる。従って、コンパクトで安定した火炎の形成に寄与できる。
【0033】
(7)パイロット開口66がガスノズル65の外周面651に開口されているため、火炎安定化のために、パイロット開口66を中心軸線100方向の下流向きに傾斜状態で指向させることが容易であって、コンパクトで安定した火炎の形成に有効かつ簡単に寄与できるようになる。
【0034】
(8)前記第1開口67により、ガスノズル65の仮想配設円101の半径方向内向きに形成される半径線と、仮想配設円101の接線方向であって、スワラ51による燃焼用空気の旋回方向と同じ向きに形成される仮想接線との間の角度範囲内にガス燃料の噴出方向が設定されている。この構成によれば、スワラ51で形成される再循環領域に、前記第1開口67から適量のガスを供給することができるとともに、パイロット用ガス火炎の周囲に適量のガスを供給できて、長く延びたりすることなく、コンパクトにまとまった安定したパイロット用ガス火炎を形成することができる。
【0035】
(9)第2開口68が、仮想配設円101の半径方向外向きに形成される仮想半径線と、仮想配設円101の接線方向であってスワラ51による燃焼用空気の旋回方向と同じ向きに形成される仮想接線との間の角度範囲内を指向している。従って、第1開口67からのガス噴出域を包囲するように第2開口68からガスが再循環領域に向けて供給される。このため、前記と同様に、コンパクトに安定してまとまったメイン火炎を形成することができる。
【0036】
(10)第3開口69が、前記ガスノズル65の先端部において、ガスノズル65の仮想配設円101の半径方向外向きで、かつ側面視において再循環領域の方向に開口されている。従って、スワラ51の外側の空気の流れにガスが供給され、再循環領域の外側を包囲する火炎が形成される。このため、火炎保持領域33の全体を有効に利用してまとまった火炎を形成できる。従って、コンパクトな火炎を高い効率のもとで形成できて、高効率運転可能な混焼用バーナ装置を大型化を招くことなく実現できる。
【0037】
(11)ガスノズル65は、スワラ51の外形よりも中心側に食い込んで位置する。従って、パイロット用ガスがスワラ前面に形成される再循環領域内へ混合しやすくなる。また、混焼用バーナ装置の外形が小さくなり、小型化が可能となる。
【0038】
(ガスノズル65の変更例)
ところで、前記ガスノズル65は、各種の変更が可能なので、以下にその数例を列挙する。
【0039】
図8(a)〜(c),図9(a)〜(c),図11(a)〜(i)の例は、パイロット開口66,第1開口67,第2開口68,第3開口69の配置間隔をガスノズル65の円周方向において変位させたものである。ここで、パイロット開口66が、図7の中心角θ1内に配置されるようにするとともに、第1及び第2開口67,68がスワル流の前方を指向するように、第3開口69が再循環流の前方を指向するように、ガスノズル65がスワラ51の外周に配置される。
【0040】
図10(a)〜(d)及び図14(a)〜(j)の例は、ガスノズル65の先端面652を球状にしたものである。このようにすれば、ガスノズル65の先端を起点としたカルマン渦等の渦を小さくしたり、発生の頻度を少なくしたりできる。従って、燃焼効率の向上が可能となる。
【0041】
図11(a)〜(i)の例は、ガスノズル65の先端面を平面にしたものである。このようにすれば、ガスノズル65の外形の加工が容易になる。
図12(a)〜(i)の例は、パイロット開口66及び第1,第2開口67,68をガスノズル65の先端面に形成したものである。なお、パイロット開口66及び第1,第2開口67,68のうちの1または2をガスノズル65の先端面に形成してもよい。
【0042】
図2の2点鎖線,図10(a)〜(d)図13(a)〜(j)及び図14(a)〜(j)の例は、パイロット開口66及び第1,第2開口67,68の少なくとも一つをスワラ51の開口面511上あるいは開口面511の上流側に位置するように、ガスノズル65の基端側の位置に形成したものである。このように構成しても、ガス燃料が再循環領域の外周側に流れて、同領域の内部に巻き込まれる。なお、この場合、開口面511の上流側に位置するパイロット開口66及び第1,第2開口67,68が凹部56の内周面側に位置するようにすれば、ガスノズル65からのガス燃料が再循環領域に好適に巻き込まれる。
【0043】
(他の変更例)
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような変更態様で具体化してもよい。
【0044】
・前記実施形態において、ガスノズル65は円筒形に形成されてその断面形状が、円形に形成されている。これに限らず、ガスノズル65が断面五角形,六角形,八角形等の多角形に形成されるように、角筒型にしてもよい。
【0045】
・前記実施形態では、スワラ51の外周に凹部56が形成されて、ガスノズル65がスワラ51の外径位置より径方向の中心側に配置されている。ガスノズル65のスワラ51の径方向の位置は、前記実施形態よりさらに中心に近づくように変位されてもよく、図4に2点鎖線で示すように、前記外径位置から中心側に近づいた位置でスワラ51の羽根53を貫通してもよい。あるいは、凹部56の円弧を浅くして、前記実施形態よりスワラ51の外径側に変位したり、スワラ51の外径位置から外側に配置したりしてもよい。
【0046】
・アトマイザ36は、蒸気噴霧タイプのものが使用されているが、空気噴霧型アトマイザ等の二流体噴射アトマイザでもよい。また、霧化媒体を使用しない圧力噴霧型のアトマイザが用いられてもよい。
【0047】
・アトマイザ36に代えて、スワラ51の中心部に燃料ノズルとしてのガスノズルを設けてもよい。この場合、このガスノズルから噴出されるガスと、各ガスノズル65から噴出されるガスとを同種類のガスにしても、異種類のガスにしてもよい。同種類のガスにした場合は、バーナ装置がガスの専焼用バーナ装置になり、異種類のガスにした場合は、異ガスの混焼用バーナ装置になる。
【0048】
・ガスノズル65の本数は5本に限らない。2〜4本,6本以上のいずれかの本数も可能である。この場合、各ガスノズル65は等間隔に配列されることが好ましい。
・パイロット火炎用ガス開口を前記中心角θ1内に位置するように複数設けてもよい。
【0049】
・メイン火炎用ガス開口の数を1,2または4以上のいずれかに変更してもよい。
・前記実施形態では、混焼用バーナ装置30がボイラ80用として具体化されているが、これに限らず、工業用炉や熱風発生装置用等、他の用途に利用可能である。
【0050】
前記実施形態では、ガスノズル65の先端部をスワラ51の開口面511から火炎保持領域33側に突出させたが、突出させなくてもよい。このように構成しても、ガスノズル65がスワラ51の外周に位置しているため、ガス燃料を再循環領域の外周部から内部に巻き込みやすい位置にパイロット開口66及び第1〜第3開口67,68,69を配置できる。
【0051】
・前記実施形態においては、前記パイロット開口66,第1及び第2開口67,68を同径にしたが、これらの開口66,67,68及び第3開口69の径は、各種の条件,例えばスワラ51の内部を通る空気量とスワラ51の外部を通る空気量との比率,スワル流の旋回強さ等の条件に応じて適宜に設定される。従って、各開口66,67,68,69から噴出されるガス燃料の量の比率も各種条件に応じて適宜に設定される。
【符号の説明】
【0052】
30…混焼用バーナ装置、32…レジスタ、33…火炎保持領域、36…アトマイザ、51…スワラ、511…開口面、56…凹部、65…ガスノズル、66…パイロット火炎用ガス開口、67…メイン火炎用ガス第1開口、68…メイン火炎用ガス第2開口、69…メイン火炎用ガス第3開口、100…中心軸線、101…仮想配設円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15