(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガラスや石英などの絶縁基板上に多結晶珪素膜を形成し、それを用いて集積回路を実現
する場合、大規模集積回路で培われた製造技術をそのまま転用することは不可能であった
。それは、多結晶珪素膜の結晶性の問題のみでなく、従来種々の方法によって作製される
絶縁膜及びそれを用いた半導体素子は、所望された特性及び信頼性を十分発揮できないの
が現状であった。
【0008】
緻密でアルカリイオンなどを通さない窒化珪素膜は減圧CVD法で形成することが可能
であるが、膜形成温度を750℃以上とする必要があった。プラズマCVD法は低温で膜
形成が可能であるが、膜がプラズマ中の荷電粒子により損傷を受け、欠陥やピンホールが
出来やすいということが問題であった。また、500℃以下の膜形成温度は、水素が膜中
に含まれそれが膜の安定性を低下させていた。これに対し、高周波スパッタリング法は、
窒化珪素などの絶縁物ターゲットの使用も可能であり、膜中に水素の混入のない窒化珪素
膜を形成することが可能である。しかし、一般に大きな圧縮応力を持つことが知られ、膜
の剥離がしばしば問題とないていた。
【0009】
また、絶縁膜を堆積して形成するTFTのゲート絶縁膜は、界面準位密度が必然的に増
加してしまい良好な界面を形成することができなかった。また、界面の清浄性から見ても
絶縁基板上に形成される多結晶珪素膜は汚染されやすいことが問題であった。特に、化学
汚染はその汚染原因や汚染経路を明確に特定することが困難であり、クリーンルームのフ
ィルター材が発生原因と考えられるボロン汚染や、壁材やシーリング材からの燐や有機物
汚染などは、日常的な基板管理のみでは防ぐことは難しく、ガラス基板のサイズが大型化
する程に困難さが増している。
【0010】
上述の如きCu配線は、配線が絶縁膜に埋め込まれたダマシン構造で形成されるが、適
切なバリア膜を用いないと、周囲の絶縁膜中や積層界面に容易に拡散するという問題点を
有している。これを防ぐためには、Cuを拡散させず、かつ下地との密着性の良いバリア
膜を形成する必要がある。
【0011】
本発明は、上記問題点を鑑みなされたものであり、ゲート絶縁膜や保護膜として好適に
適用可能な緻密で高品質の絶縁膜を、ガラス基板に歪み点以下の温度で形成する技術、並
びにそれを用いて高性能で高信頼性を実現する半導体装置に適用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、本発明は、珪素をターゲットとし、高周波マグネトロン
スパッタリング法で、窒素又は窒素と希ガスをスパッタガスとして、300℃以下の基板
加熱温度で窒化珪素膜を形成するものである。当該窒化珪素膜はTFTのゲート絶縁膜と
して適用することができる。また、本発明は、当該窒化珪素膜と、化学処理、加熱処理、
光照射により結晶性半導体膜表面に形成される酸化膜とを積層させてゲート絶縁膜として
適用するものである。
【0013】
本発明において、珪素をターゲットとして用い、高周波マグネトロンスパッタリング法
で形成される窒化珪素膜は次に示す特性の少なくとも一つを満たす。即ち、フッ化水素ア
ンモニウム(NH
4HF
2)を7.13%とフッ化アンモニウム(NH
4F)を15.4%含む
混合水溶液(20℃)におけるエッチング速度が10nm/min以下(好ましくは3.5nm/m
in以下)、水素濃度が1×10
21/cm
3以下(好ましくは5×10
20/cm
3以下)、酸素濃度
が5×10
18〜5×10
21/cm
3(好ましくは1×10
19〜1×10
21/cm
3)であることの
いずれか一つ、好ましくは複数の要件を同時に満たすものである。また、内部応力の絶対
値は2×10
10dyn/cm
2以下、好ましくは5×10
9dyn/cm
2以下、さらに好ましくは5×
10
8dyn/cm
2以下とする。
【0014】
本発明は、水素を1×10
21/cm
3以下の濃度で含み、酸素を5×10
18〜5×10
21/c
m
3の濃度で含み、また、フッ化水素アンモニウム(NH
4HF
2)を7.13%とフッ化アン
モニウム(NH
4F)を15.4%含む混合水溶液に対するエッチング速度が10nm/min以
下の特性を有する窒化珪素膜を提供する。このような水素及び酸素含有量及びエッチング
特性を有する窒化珪素膜は、半導体装置にあって、ゲート絶縁膜や容量部の誘電体保護膜
など電気絶縁性が要求される部位のみでなく、ガスやイオン性不純物の拡散を阻止する保
護膜として適用することができる。
【0015】
本発明の半導体装置は、水素を1×10
21/cm
3以下の濃度で含み、酸素を5×10
18〜
5×10
21/cm
3の濃度で含み、また、フッ化水素アンモニウム(NH
4HF
2)を7.13%
とフッ化アンモニウム(NH
4F)を15.4%含む混合水溶液に対するエッチング速度が
10nm/min以下の特性を有する窒化珪素膜を少なくとも一層含むゲート絶縁膜が形成され
ていることを特徴とする。さらに、当該窒化珪素膜が、チャネル長0.35〜2.5μm
の電界効果型トランジスタのゲート絶縁膜として少なくとも一層形成されていることを特
徴とする。
【0016】
前記したゲート絶縁膜又は電界効果型トランジスタのゲート絶縁膜は、表面における突
起部の曲率半径が1μm以下である結晶性半導体膜上に形成されていることを特徴とする
。上記ゲート絶縁膜、又は電界効果型トランジスタのゲート絶縁膜は、表面における突起
部の曲率半径が1μm以下である結晶性半導体膜上に形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明は、前記組成及びエッチング特性を有する窒化珪素膜が、ゲート絶縁膜、容量部
の誘電体膜として、半導体素子の保護膜として、又は有機樹脂で成る層間絶縁膜上に形成
された構成のいずれか一つ又は複数の組み合わせを含んでいる。
【0018】
このような水素及び酸素含有量、エッチング特性を有することにより、ゲート絶縁膜へ
の適用においては、ゲートリーク電流が低減し、電界効果移動度、サブスレショルド係数
、コンダクタンス(gm)などが良好となり、連続動作におけるトランジスタ特性の経時
変化が低減し、製造歩留まりや特性ばらつきを向上させることができる。また、このよう
な効果は、結晶性半導体膜と窒化珪素膜との間に、酸化珪素膜を介在させることによって
、より有効に発現させることができる。
【0019】
本発明の半導体装置の作製方法は、絶縁基板上に形成された結晶性半導体膜に酸化処理
と、酸化膜除去処理を行う第1段階と、高周波電力を印加してArとN
2若しくはN
2のみ
のグロー放電下において、珪素のターゲットをスパッタリングして窒化珪素膜を形成する
第2段階と、直流電力を印加して導電性膜を形成する第3段階の各段階を含み、前記第1
乃至第3段階は、大気に晒すことなく不活性雰囲気又は減圧下で連続して行うことを特徴
としている。上記第2段階におけるN
2に対するArの割合は、0.01〜0.5とする
ことが好ましい。
【0020】
本発明の半導体装置の作製方法は、絶縁基板上に形成された結晶性半導体膜に、酸化処
理と、酸化膜除去処理を行う第1段階と、高周波電力を印加してO
2のグロー放電下にお
いて、酸化性雰囲気中での加熱処理により酸化珪素膜を形成する第2段階と、高周波電力
を印加してArとN
2若しくはN
2のみのグロー放電下において、珪素のターゲットをスパ
ッタリングして窒化珪素膜を形成する第3段階と、直流電力を印加して導電性膜を形成す
る第4段階の各段階を含み、前記第1乃至第4段階は、大気に晒すことなく不活性雰囲気
又は減圧下で連続して行うことを特徴としている。第2段階における酸化性雰囲気はO
2
に、NF
3、HF、ClF
3から選ばれた一種又は複数種を0.01〜0.1%添加するこ
とが好ましい。第3段階におけるN
2に対するArの割合は、0.01〜0.5とするこ
とが好ましい。
【0021】
上記本発明の半導体装置の作製方法は、歪み点700℃以下のガラス基板に適用するこ
ともできる。
【0022】
上記本発明の半導体装置の作製方法により、室温から300℃以下の温度、好ましくは
200℃以下の温度において、水素を1×10
21/cm
3以下の濃度で含み、酸素を5×10
18〜5×10
21/cm
3の濃度で含み、かつ、フッ化水素アンモニウム(NH
4HF
2)を7.1
3%とフッ化アンモニウム(NH
4F)を15.4%含む混合水溶液に対するエッチング速
度が10nm/min以下の特性を有する窒化珪素膜を得ることができる。
【0023】
上記本発明の半導体装置の作製方法において、高周波マグネトロンスパッタリング法に
おいて適用する電力周波数は、1MHz以上120MHz以下、好ましくは10MHz以上60MHz
以下とすることができる。
【0024】
尚、本発明における半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般
を指し、電気光学装置、半導体回路および電子装置は全て半導体装置の範疇に含まれるも
のとする。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、歪み点700℃以下のガラス基板上であっても、水素を1×10
21/cm
3
以下の濃度で含み、酸素を5×10
18〜5×10
21/cm
3の濃度で含み、フッ化水素アンモ
ニウム(NH
4HF
2)を7.13%とフッ化アンモニウム(NH
4F)を15.4%含む混合
水溶液に対するエッチング速度が10nm/min以下の特性を有し、Liの如き可動イオンに
対してブロッキング性の高い緻密な窒化珪素膜を得ることができる。
【0026】
この窒化珪素膜はゲート絶縁膜や、保護膜、特にCu配線のバリア膜として、半導体装
置の各部位に用いることで、高性能で高信頼性を実現する半導体装置を提供することがで
きる。
【0027】
このような水素及び酸素含有量、エッチング特性を有することにより、ゲート絶縁膜へ
の適用においては、ゲートリーク電流が低減し、電界効果移動度、サブスレショルド係数
、コンダクタンス(gm)などが良好となり、連続動作におけるトランジスタ特性の経時
変化が低減し、製造歩留まりや特性ばらつきを向上させることができる。また、このよう
な効果は、結晶性半導体膜と窒化珪素膜との間に、酸化珪素膜を介在させることによりよ
り有効に発現させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、半導体装置の主要構成要素である電界効果型トランジスタ、典型的には電界
効果型薄膜トランジスタ(以下、TFTと略記する)のゲート絶縁膜及び保護膜に対し、
また液晶やELを利用した表示装置における層間絶縁膜や保護膜、ガラスなどの絶縁基板
上に形成される集積回路における層間絶縁膜や保護膜、及び当該集積回路を構成するTF
Tのゲート絶縁膜などに、酸素濃度1×10
19/cm
3以下の単結晶又は多結晶珪素をターゲ
ットとして、窒素又は窒素と希ガスをスパッタガスとして用い、基板加熱温度を室温から
300℃以下の範囲内として、高周波マグネトロンスパッタリング法により作製される窒
化珪素を素材として用いる。
【0030】
図7は本発明を実施するに当たり、好適なマルチタスク型マグネトロンスパッタリング
/酸化膜形成装置の態様を説明する図である。
図7で示す装置の構成は、基板の搬送手段
102を備えた第1共通室101に対し、仕切弁119を介してスパッタリングにより被
膜の形成が可能な複数の膜形成室を備えている。窒化珪素膜を形成するに当たっては、一
つの反応室があれば良いが、大気に触れさせず界面を汚染することなく性状の異なる複数
の被膜を連続して形成するには
図7に示す装置の構成は好適である。
【0031】
窒化珪素膜など被膜を形成する基板はロード/アンロード室111に装填され、第2共
通室109に備えられた搬送手段110により搬送される。前処理室112は、基板を回
転させるスピナーが備えられ、薬液供給手段118からの各種薬液の塗布により基板の被
堆積表面の洗浄、酸化、酸化膜除去などの処理が可能である。ロード/アンロード室11
1、第2共通室109、前処理室112はガス供給手段130により不活性ガスが充填さ
れて常圧で使用するものであり、中間室108は内部を減圧にする第1共通室101並び
にそれに連結する複数の膜形成室との間で基板を相互に受け渡しするための部屋として備
えられている。
図7では詳細に示さないが、中間室108はロード/アンロード室111
に装填される基板の全数を一時的保持するカセットホルダーなどが備えられていても良い
。
【0032】
加熱処理室103には加熱手段120が備えられ、基板に吸着している大気成分を含む
各種不純物を離脱させ清浄化させ、若しくはスパッタリングにより形成された被膜を加熱
処理して緻密化又は結晶化するなどの処理を行う。
【0033】
加熱処理室103の構成として、瞬間熱アニール(RTA)を行う加熱手段120が備
えられていても良い。
図20は加熱処理室103の詳細を説明する図である。加熱処理室
103には石英で形成された反応室1129があり、その外側に光源1110が設けられ
ている。反応室1129内には、石英で形成された基板ホルダー1112があり、被処理
基板はこの基板ホルダー1112上に設置される。このとき、温度分布を均一なものとす
るために被処理基板はピン上に乗せられる。また、光源1110により加熱される温度を
モニターする手段として、ここでは熱電対を用いた温度検出システム1128を採用して
いる。
【0034】
光源1110は電源1111により点灯と消灯の動作をする。コンピュータ1118は
この電源と流量制御手段1115の動作を制御している。反応室1129に導入された冷
媒はサーキュレータ1116により循環させて動作させても良い。その循環経路には精製
器1117を設けて冷媒であるHeの純度を保つことも重要である。
【0035】
また、減圧下での熱処理を可能とするために排気手段としてターボ分子ポンプ1119
とドライポンプ1120を設けている。減圧下での熱処理においても、ランプ光が半導体
膜に吸収される波長帯を用いることにより、半導体膜を加熱することが可能である。減圧
下での熱処理は酸素濃度が低減されることにより、半導体膜の表面の酸化が抑制され、そ
の結果、結晶化の促進やゲッタリング効率の向上に寄与することができる。被処理基板は
ゲートを介して接続された搬送室から行われ、搬送手段によって基板ステージ1112に
被処理基板がセットされる。
【0036】
図21は光源により加熱される被処理基板と、処理室に流す気体の流量の制御方法につ
いて示す図である。最初、室温に置かれた被処理基板は光源により急速に加熱される。昇
温期間は100〜200℃/秒という昇温速度で設定温度(例えば1100℃)まで加熱
する。例えば、150℃/秒の昇温速度で加熱すれば、1100℃まで7秒弱で加熱でき
る。その後、ある一定時間設定温度に保持し、光源の点灯を遮断する。保持時間は0.5
〜5秒とする。従って、光源の連続点灯時間は0.1秒以上であり、20秒を超えること
はない。処理雰囲気中に気体を流し続けることにより降温速度は50〜150℃/秒とす
ることができる。
例えば、100℃/秒の速度で冷却すると、1100℃から300℃まで8秒で冷却する
ことができる。
【0037】
このように光源による加熱と、気体の循環による冷却のサイクルを複数回繰り返し行う
ことを特徴としている。これをPPTA(Plural Pulse Thermal Annealing)法と呼ぶ。P
PTA法により、実際の加熱時間を短くし、かつ、半導体膜に選択的に吸収される光を光
源から照射することにより、基板自体はそれ程加熱することなく、半導体膜のみを選択的
に加熱することが可能となる。
図21で示すようなパルス光は半導体膜を加熱し、その熱
が基板側に伝搬する前に加熱を止め、かつ、冷媒で周囲から冷やすことにより、基板の温
度はさほど上昇しない。従って、従来のRTA装置で問題とされていた基板の変形を防ぐ
ことができる。
【0038】
光源の1回当たりの発光時間は0.1〜60秒、好ましくは0.1〜20秒であり、当
該光源からの光を複数回照射する。または、半導体膜の最高温度の保持時間が0.5〜5
秒であるように光源からの光をパルス状に照射する。さらに、光源の点滅に伴って、冷媒
の供給量を増減させることで、半導体膜の熱処理効果を高めると共に、熱による基板のダ
メージを防いでいる。また、処理室内を減圧にする排気手段を設け、熱処理雰囲気におけ
る酸素濃度を低減させる。このとにより、熱処理により半導体膜の表面が酸化したり、汚
染されたりすることを防ぐことができる。
【0039】
図7において、膜形成室104〜107には異なる材料のターゲットが装着され、それ
により複数の被膜を減圧下で連続して積層形成することができる。各膜形成室にはスパッ
タガスを供給するガス供給手段115、排気手段114及び圧力制御手段113が備えら
れている。膜形成室104、105は絶縁物質のターゲットを備え、スパッタリングをす
るために高周波電源116が連接している。
高周波電源が供給する電力の周波数は1MHz以上120MHz以下、好ましくは10MHz以上
60MHz以下の周波数を適用する。このような周波数の適用範囲は、それが高くなるに従
いシース電位が下がり、物理的な膜形成機構によるスパッタリング法にあっても、化学的
な反応による膜形成が優位となり緻密な被膜を形成することが期待できる。また、膜形成
室106、107は金属のターゲットを備え直流電源117が接続されている。
【0040】
図8は一例として膜形成室105の詳細を説明する図である。膜形成室105は本発明
に係る窒化珪素膜を形成する場所である。ターゲット120は珪素であり、バッキングプ
レートを介して冷媒により冷却されている。永久磁石124はターゲット面と平行な方向
に円運動又は直線運動することにより対向する基板表面に膜厚の均一性の良い被膜の形成
を可能とする。シャッター123は膜形成開始前後に開閉し、放電初期においてプラズマ
が不安定な状態で被膜が形成されるのを防いでいる。基板保持手段122はホルダーが上
下して基板を載置並びに背面板121に固定する。背面板121内には加熱手段128と
してシーズヒーターが埋め込まれ、また、加熱された希ガスを基板裏側から導入して均熱
性を高めている。ガス導入手段115からは希ガスの他に窒素ガスが導入され、膜形成室
105内の圧力は、コンダクタンスバルブ126により制御される仕組みである。整流板
125は膜形成室105内でのスパッタガスの流れを整流する目的で設けられている。タ
ーゲットには高周波電源に接続され、高周波電力を印加することによりスパッタリングが
成される。
【0041】
図8の構成による高周波マグネトロンスパッタリングにより、珪素をターゲットとして
緻密な窒化珪素膜を形成することができる。主要な膜形成条件としては、ターゲット材と
して珪素を用い、N
2のみ又はN
2とArの混合ガスをスパッタガスとして用いている。印
加する高周波電力の周波数は、典型的には13.56MHzであるが、それより高い27〜
120MHzの周波数を適用しても良い。周波数の増加に従って膜形成の機構はより化学的
反応が優先的となり、緻密で下地へのダメージが少ない膜形成が期待できる。スパッタガ
スとして用いられるArは、基板を加熱するためのガスとして、
図8で示したように基板
の裏側から導入され、最終的にN
2と混合されてスパッタリングに寄与する。
【0042】
以下に示す表1は膜形成条件の代表例を示す。勿論、ここで示す成膜条件は一例であり
、上記主要な膜形成条件を満たす範囲において適宜設定することができる。
【0044】
また、比較例として、従来のプラズマCVD法により形成される窒化珪素膜の膜形成条
件を表2に示す。
【0046】
次に、表1の成膜条件で形成された窒化珪素膜と、表2の条件で形成された窒化珪素膜
の代表的な特性値について比較した結果を表3に示す。尚、試料において「RFSP−S
iN(No.1)」と「RFSP−SiN(No.2)」との違いはスパッタリング装置
による違いであり、本発明における窒化珪素膜としての機能を損なうものでははい。また
、内部応力は、圧縮応力と引っ張り応力とで数値の正負が変わるが、ここではその絶対値
のみを取り扱う。
【0048】
表3に示すように、上述の高周波マグネトロンスパッタリング法で作製された「RFS
P−SiN(No.1)」と「RFSP−SiN(No.2)」の試料のプラズマCVD
法で作製された比較例の試料に対する特徴的な違いは、フッ化水素アンモニウム(NH
4H
F
2)を7.13%とフッ化アンモニウム(NH
4F)を15.4%含む混合水溶液の20℃
(LAL500 SAバッファードフッ酸;橋本化成株式会社製)におけるエッチング速
度が非常に遅く、水素の含有量が極めて少ない点にある。また、内部応力は、プラズマC
VD法で形成された窒化珪素膜よりも絶対値で比較して小さい値となっている。
【0049】
当該窒化珪素膜における水素、酸素、炭素の不純物濃度は二次イオン質量分析(SIM
S)により調べたものであり、その深さ方向分析の結果を
図3に示す。
試料は単結晶珪素基板上に表1に従う条件で形成された窒化珪素膜であり、水素濃度が1
×10
21/cm
3以下であることが判明している。窒化珪素膜における水素結合の有無はフー
リエ変換赤外分光分析(FT−IR)によっても調べ、その結果をプラズマCVD法で作
製された窒化珪素膜の特性との比較で
図5に示す。FT−IRの分析によってもSi−H
結合、N−H結合による吸収ピークは観測されていない。
【0050】
また、分光光度計で測定した透過率を
図4に示し、比較参照のため同図には表2で示す
条件によりプラズマCVD法で作製した窒化珪素膜の特性についても示している。両者に
は顕著な違いは見られず、どちらも透明度の良い膜であることが分かる。
【0051】
上記、特性値は代表的な結果を示すものであり、種々の実験結果から本発明に係る高周
波マグネトロンスパッタリング法で作製された窒化珪素膜の主要な特性値は以下の通りで
ある。
【0052】
本発明に係る窒化珪素膜は種々検討した結果、次に示す特性の少なくとも一つを満たす
ものである。即ち、フッ化水素アンモニウム(NH
4HF
2)を7.13%とフッ化アンモニ
ウム(NH
4F)を15.4%含む混合水溶液(20℃)におけるエッチング速度が10nm/
min以下(好ましくは3.5nm/min以下)、水素濃度が1×10
21/cm
3以下(好ましくは
5×10
20/cm
3以下)、酸素濃度が5×10
18〜5×10
21/cm
3(好ましくは1×10
19
〜1×10
21/cm
3)であることのいずれか一つ、好ましくは複数の要件を同時に満たすも
のである。また、内部応力の絶対値は2×10
10dyn/cm
2以下、好ましくは5×10
9dyn/
cm
2以下、さらに好ましくは5×10
8dyn/cm
2以下とする。内部応力を小さくすれば他の
被膜と積層させた場合において、界面における欠陥準位の発生を抑えることができ、また
剥離などの問題が生じることはない。
【0053】
さらに、上記特性を有する本発明の窒化珪素膜は、NaやLiに代表される周期律表1
族及び2族の元素に対するブロッキング効果が極めて高く、これらの可動イオンの拡散を
抑制することができる。この事実を端的に示すデータを
図1、
図2、
図6に示す。
図6は
表2の条件でプラズマCVD法により膜形成した窒化珪素膜を誘電体としたMOS構造の
バイアス−熱ストレス(B−Tストレス)試験の結果前後におけるC−V特性の変化を示
すグラフである。試料の構造は単結晶珪素基板(n型、1〜10Ωcm)に100nmの窒化
珪素膜を表2の条件で形成し、その上にAlにLiを添加(0.2〜1.5重量%)した
金属を電極(直径1mm)としたものである。この試料の構造においてAl電極にLiを添
加することにより、Li拡散の有無を調べることができる。B−Tストレス試験の条件は
、1.7MVの電圧を印加して150℃にて1時間保持する条件下にて行った。
図6によれ
ば、BTストレス試験によりC−V特性が大きくシフトし、窒化珪素膜上に形成したAl
にLiを添加した電極からLiが拡散している影響が顕著に確認することができる。
【0054】
図1と
図2は、表1の条件で作製した窒化珪素膜を誘電体膜としたMOS構造の試料に
おけるB−Tストレス試験前後におけるC−V特性を示している。
図1の試料は窒化珪素
膜上の電極をAl−Si(珪素を添加したAl)で形成したものであり、
図2はAl−L
iで電極を形成した試料である。但し、試料は単結晶珪素基板(p型、1〜10Ωcm)の
表面に50nmの酸化膜を形成してあり、これは窒化珪素膜と珪素基板との界面準位の影響
を低減する目的で形成したものである。従って、窒化珪素膜のLiに対するブロッキング
性に何ら影響を与えるものではない。
【0055】
図1と
図2の特性を比較すると、両グラフともにB−Tストレス試験前後におけるC−
V特性の変化に殆ど差がなく、Liの拡散による影響が表れていないこと、即ち、表1の
膜形成条件で作製した窒化珪素膜が効果的にブロッキング膜として機能することが確認で
きる。このように、本発明に係る窒化珪素膜は300℃以下の温度で形成されているにも
かかわらず、非常に緻密でありNaやLiといった可動イオンに対するブロッキング効果
が高いことを確認することができる。
【0056】
以上におけるB−Tストレス試験などで確認される、非常に緻密な窒化珪素膜は従来の
スパッタリング現象による物理的な膜形成機構とは異なり、ターゲット表面及び被膜堆積
表面において窒素又は窒素と希ガスイオンと珪素とが相互に反応して膜形成に関与してい
ると考えられる。
【0057】
その膜形成機構の一考察例を
図9の模式図により説明する。ターゲット901に高周波
電力の印加によりグロー放電プラズマ900が形成されると、窒素又は窒素と希ガスとは
様々なイオン種、励起種、発光種が形成される。その中で化学的に極めて活性な性質を持
つ活性窒素が生成される。活性窒素はきわめて反応性が強く比較的低温でも容易に窒化物
を形成することが知られている。つまり、ターゲット表面に拡散した活性窒素は、珪素と
反応して窒化物を形成する。窒化珪素は安定であるが、ターゲット表面に希ガスイオン又
は窒素イオンがシース電界で加速されて入射すると、スパッタリングされ気相中に放出さ
れる。グロー放電プラズマ900中を拡散する珪素の窒化物は、その過程で活性窒素や他
の窒素の励起種と反応し、一部は基板表面に達する。そこで珪素の窒化物は表面反応して
窒化珪素が形成される。表面反応においてもプラズマ電位と接地電位との電位差により加
速されて入射するイオン種の援助が作用していると考えられる。このような膜形成機構に
より、窒化珪素膜中に珪素のクラスターが含まれず、それが膜の緻密さを向上させている
ことが推測される。
【0058】
このような膜形成機構は、供給する窒素よりも希ガスの割合を高めてしまうと、希ガス
イオンによるスパッタリングが支配的となり実現することはできない。
理想的には、窒素ガスのみとすれば良いが、膜形成速度が著しく低下するので、窒素と希
ガスとの混合比が最大で1対1となる範囲内で選択することが好ましい。
【0059】
上記窒化珪素膜及び製造装置を用いた半導体装置の態様について、以下に図面を用いて
詳細に説明する。
【0060】
(実施の形態1)
本実施の形態において適用することのできる基板には、バリウムホウケイ酸ガラス、ア
ルミノホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラスなどを素材とするガラス基板が適し
ている。代表的には、コーニング社製の1737ガラス基板(歪み点667℃)、旭硝子
社製のAN100(歪み点670℃)などが適用可能であるが、勿論他の同様な基板であ
れば特段の限定はない。いずれにしても、本発明においては歪み点700℃以下のガラス
基板が適用可能である。本実施例では、歪み点700℃以下のガラス基板上に高周波マグ
ネトロンスパッタリング法により作製された窒化珪素膜を用いてマイクロプロセッサ(Mic
ro Processor Unit:MPU)を形成する一形態について説明する。
【0061】
尚、本発明において、歪み点が700℃以上である基板を除外するものではない。勿論
、耐熱温度が1000℃以上である合成石英基板を適用しても良い。本発明に係る窒化珪
素膜は700℃以下の温度で緻密でブロキング性の高い膜が形成でき、その特徴において
特段合成石英基板を選択する必要はない。
【0062】
上記基板を選択して
図10(A)に示すように、ガラス基板200上に酸化珪素膜、窒
化珪素膜または酸化窒化珪素膜(SiO
xN
y)等の絶縁膜から成る第1無機絶縁体層20
1を形成する。代表的な一例は2層構造を有し、SiH
4、NH
3、及びN
2Oを反応ガス
としてプラズマCVDにより膜形成される第1酸化窒化珪素膜202を50nm、SiH
4
、及びN
2Oを反応ガスとしてプラズマCVDにより膜形成される第2酸化窒化珪素膜2
03を100nmの厚さに積層形成する構造である。ここで、第1酸化窒化珪素膜202を
高周波マグネトロンスパッタリング法で形成する窒化珪素膜と置き換えても良い。当該窒
化珪素膜はNaなどガラス基板に微量に含まれるアルカリ金属元素が拡散するのを防ぐこ
とができる。
【0063】
TFTの活性層とする結晶性半導体膜は、第1無機絶縁体層201上に形成した非晶質
珪素膜204を結晶化して得る。また、非晶質珪素膜に換えて、非晶質シリコンゲルマニ
ウム(Si
1-xGe
x;x=0.001〜0.05)膜を適用しても良い。最初に形成する
非晶質珪素膜の厚さは出来上がりの結晶性珪素膜の厚さが20nm乃至60nmとなる範囲で
選択される。この膜厚さの上限はTFTのチャネル形成領域において完全空乏型として動
作させるための上限値であり、この膜厚の下限値はプロセス上の制約であり、結晶性珪素
膜のエッチング工程において選択加工する場合に必要な最小値として決めている。
【0064】
結晶化の工程において、その方法は特に限定はない。例えば結晶化法の一例として、ニ
ッケルなどの半導体の結晶化に対し触媒作用のある金属元素を添加して結晶化させても良
い。この場合、ニッケルを含有する層205を非晶質珪素膜204上に保持させた後、脱
水素化(500℃、1時間)、続けて550℃、4時間の加熱処理により結晶化させる。
【0065】
図10(B)は結晶性珪素膜206が形成された状態を示している。この状態で50〜
95%の割合で結晶化した結晶性珪素膜が得られるが、
図10(C)で示すように、更に
結晶性を向上させるためパルス発振のエキシマレーザー又は、YAGレーザー、YVO
4
レーザー、YLFレーザーなど固体レーザーの第2高調波を照射するレーザーアニール処
理を加える。レーザーアニール処理では当該レーザー光を光学系にて短手方向の幅400
μmの線状レーザー光として、90〜98%のオーバーラップ率を持って照射する。この
パルスレーザー光の照射により、
図10(C)に示すように表面に最大値として、膜厚と
同程度の高さの凸部が多数形成される。
【0066】
この結晶性珪素膜の上にゲート絶縁膜を形成してトップゲート型のTFTを形成すると
、ゲートリーク電流が増加する。また、ゲート電極にバイアス電圧を印加するストレス試
験によっても特性が劣化する。これは、凸部に電界が集中するためであると考えられる。
よって、結晶性珪素膜の表面の凹凸形状の最大値を10nm以下好ましくは5nm以下にする
ことが望ましい。
【0067】
表面の凹凸を低減するには、オゾン水含有水溶液による酸化処理と、フッ酸含有水溶液
による酸化膜除去処理を1回、好ましくは複数回繰り返すことで実現することができる。
本実施の形態では、チャネル長0.35〜2.5μmのTFTを作製するために、ゲート
絶縁膜の実質的な厚さを30〜80nmとするために、結晶性珪素膜の表面の平滑性に関し
、凹凸形状の最大値を10nm以下好ましくは5nm以下にする(
図10(D))。
【0068】
その後、得られた結晶性珪素膜をフォトマスクを用いて写真蝕刻法により所望の形状に
エッチング処理し、TFTにおいてチャネル形成領域、ソース及びドレイン領域、低濃度
不純物領域などを含む活性層を形成する半導体膜216〜218を形成する(
図12(A
))。
【0069】
図10(D)の状態で形成された結晶性珪素膜をエッチングするには、ドライエッチン
グ法を用いてCF
4とO
2の混合ガスをエッチングガスとして用い、ゲート絶縁膜の被覆性
を良くするために、半導体膜216〜218の端部に30〜60度のテーパー角が付くよ
うに加工する。その詳細は
図17に示されている。下地との選択比との関係で、酸化窒化
珪素膜も僅かにエッチングされるが、そのザグリの深さは半導体膜の厚さdの1/3以下
となるようにする。ザグリが深い場合、ゲート絶縁膜が被覆せず、その上層に形成するゲ
ート配線が断線する不良が発生する。また、半導体膜216〜218に対し、しきい値(
Vth)を制御するためにp型を付与する不純物元素を添加してもよい。半導体に対して
p型を付与する不純物元素には、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga
)など周期律第13族元素が対象となる。
【0070】
次いで、
図12(B)で示すように、半導体膜216〜218上にゲート絶縁膜を形成
する酸化珪素膜219、窒化珪素膜220を高周波マグネトロンスパッタリング法で形成
し、ゲート電極を形成する第1導電膜221、第2導電膜222の4層を大気に触れさせ
ることなく減圧下にて連続的に形成する。
【0071】
図7で説明したマルチタスク型マグネトロンスパッタリング装置はこの工程に適した構
成となっている。このゲート絶縁膜〜ゲート電極を形成するまでの工程は概略以下の通り
である。
【0072】
まず、ロード/アンロード室111から搬送される基板は
図12(A)の状態となって
いる。前述の表面の平滑化処理は、スピナーを備えた前処理室112で行うことが可能で
ありオゾン水含有水溶液による酸化処理と、フッ酸含有水溶液による酸化膜除去処理を行
い、半導体膜の表面を凸部を中心にエッチングする。
また、この処理により半導体膜の最表面がエッチングされて水素で終端された清浄で不活
性な表面が形成されるという特徴もある。
【0073】
その後、基板は中間室108を経て真空排気された第1共通室101に搬送される。加
熱処理室103には加熱手段120が備えられ、基板に吸着している水分を離脱させ清浄
化させる。膜形成室104では高周波マグネトロンスパッタリング法により合成石英をタ
ーゲットとして酸化珪素膜を10〜60nmの厚さで形成する。主な膜形成条件は、スパッ
タガスO
2、スパッタリング時の圧力0.4Pa、放電電力11.0mW/cm
2、13.56MHz
、基板加熱温度200℃とする。この条件により半導体膜と界面準位密度が低く、緻密な
酸化珪素膜219を形成することができる。次いで、基板を膜形成室105に移して高周
波マグネトロンスパッタリング法にて窒化珪素膜を10〜30nmの厚さで形成する。この
膜形成条件は表1と同じである。酸化珪素の比誘電率3.8に対し窒化珪素の比誘電率は
約7.5であるので、酸化珪素膜で形成するゲート絶縁膜に窒化珪素膜を含ませることで
、実質的にはゲート絶縁膜の薄膜化を図るのと同等の効果を得ることができる。
【0074】
即ち、結晶性珪素膜の表面の平滑性に関し、凹凸形状の最大値を10nm以下好ましくは
5nm以下とし、ゲート絶縁膜において酸化珪素膜と窒化珪素膜の2層構造とすることで、
当該ゲート絶縁膜の全厚さを30〜80nmとしてもゲートリーク電流を低減させ、2.5
〜10V、代表的には3.0〜5.5VでTFTを駆動させることができる。
【0075】
また、ゲート絶縁膜とゲート電極界面の汚染物もTFTの特性ばらつきの原因となるの
で、ゲート絶縁膜を形成した後、続けて膜厚10〜50nmの窒化タンタル(TaN)から
成る第1導電膜221と、膜厚100〜400nmのタングステン(W)から成る第2導電
膜222とを積層形成する。ゲート電極を形成するための導電性材料としてはTa、W、
Ti、Mo、Al、Cuから選ばれた元素、または当該元素を主成分とする合金材料もし
くは化合物材料で形成する。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素膜に
代表される半導体膜を用いてもよい。また、第1導電膜をタンタル(Ta)膜で形成し、
第2導電膜をW膜とする組み合わせ、第1導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し、
第2導電膜をAl膜とする組み合わせ、第1導電膜を窒化タンタル(TaN)膜で形成し
、第2導電膜をCu膜とする組み合わせとしてもよい。
【0076】
次に、
図12(C)に示すように、写真蝕刻法によりゲート電極パターンが形成される
レジストマスク223を形成する。その後、ドライエッチング法により第1エッチング処
理を行う。エッチングには例えばICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラ
ズマ)エッチング法が適用される。エッチング用ガスに限定はないが、WやTaNのエッ
チングにはCF
4とCl
2とO
2とを用いると良い。第1エッチング処理では、基板側には
所定のバイアス電圧を印加して、形成される第1形状のゲート電極パターン224の側面
に15〜50度の傾斜角を持たせる。エッチング条件にもよるが、第1エッチング処理に
よりゲート絶縁膜として形成された窒化珪素膜220は、第1形状のゲート電極パターン
224の下部において残存し、酸化珪素膜219が露出する。この後、第2エッチング条
件に変え、エッチング用ガスにSF
6とCl
2とO
2とを用い、基板側に印加するバイアス
電圧を所定の値として、W膜の異方性エッチングを行う。こうして、ゲート電極224、
225を形成する。その後、レジストマスク223は除去する。
【0077】
ゲート電極は第1導電膜221と第2導電膜222との積層構造体であり、第1導電膜
が庇のように突出した構造を有している。その後、
図12(A)で示すようにドーピング
処理を行い、各半導体膜に不純物領域を形成する。ドーピング条件は適宜設定すれば良い
。半導体膜216に形成される第1n型不純物領域227は低濃度ドレインを形成し、第
2n型不純物領域228はソース又はドレイン領域を形成する。半導体膜217に形成さ
れる第1p型不純物領域230は低濃度ドレインを形成し、第2p型不純物領域231は
ソース又はドレイン領域を形成する。それぞれの半導体膜におけるチャネル形成領域22
6、229は低濃度ドレイン領域の間に位置する。半導体膜218は容量部を形成するた
めの部材であり第2n型不純物領域と同じ濃度で不純物が添加される。
【0078】
そして、
図16(A)に示すように水素を含有する酸化窒化珪素膜274をプラズマC
VD法により50nmの厚さで形成し、350〜550℃の加熱処理により半導体膜の水素
化を行う。この加熱処理には
図20及び
図21で示すRTA熱処理装置を用いる。また、
水素化と共に上述の不純物領域の活性化処理を同時に行うこともできる。
【0079】
層間絶縁膜275はアクリル又はポリイミドなどを主成分とする感光性の有機樹脂材料
で所定のパターンに形成する。その後、保護膜276を高周波マグネトロンスパッタリン
グ法により窒化珪素膜で形成する。膜厚は20〜500nmとすれば、酸素や空気中の水分
をはじめ各種イオン性の不純物の侵入を阻止するブロッキング作用を得ることができる。
そして、ドライエッチングによりコンタクトホール277を形成する(
図16(B))。
【0080】
その後、
図16(C)で示すように、Al、Ti、Mo、Wなどを用いて配線278a
〜278d、279を形成する。配線構造の一例は、膜厚50〜250nmのTi膜と、膜
厚300〜500nmの合金膜(AlとTiとの合金膜)との積層膜を用いる。
【0081】
こうして、nチャネル型TFT303、pチャネル型TFT304、容量部305を形
成することができる。各TFTにおいてはゲート絶縁膜に少なくとも1層の窒化珪素膜が
含まれている。また、容量部305において、誘電体膜として少なくとも一層の窒化珪素
膜(276)が含まれている。当該窒化珪素膜は、フッ化水素アンモニウム(NH
4HF
2)
を7.13%とフッ化アンモニウム(NH
4F)を15.4%含む混合水溶液に対するエッ
チング速度が10nm/min以下であるなどの本発明の特徴を有している。
【0082】
(実施の形態2)
実施の形態1において、
図10(B)で示す結晶性珪素膜が得られた後に、
図11で示
すように、連続発振型の固体レーザーとして、YAGレーザー、YVO
4レーザー、YL
Fレーザーを用いることができる。YAGレーザー、YVO
4レーザー、YLFレーザー
の第2高調波を照射する。例えば、YVO
4レーザーの第2高調波(532nm)を線状に
集光して、1〜100cm/secの速度で走査させ結晶性の向上を図る。この工程で連続発振
レーザーを用いることで、表面が平滑な結晶性珪素膜を得ることができ、表面の凹凸形状
の最大値を10nm以下好ましくは5nm以下にすることができる。
【0083】
(実施の形態3)
本実施の形態は、ゲート電極の構造が異なり、より微細化に適した半導体装置の構成に
ついて図面を参照して説明する。勿論、この半導体装置の各部位においても本発明に係る
窒化珪素膜が適用される。
【0084】
図13(A)において、半導体膜216〜218は実施の形態1と同様にして形成する
。ゲート絶縁膜240は、10〜80nmの厚さで高周波マグネトロンスパッタリング法で
作製される窒化珪素膜が適用されるが、半導体膜との界面にはスパッタリング又は酸素プ
ラズマ処理により形成される1〜5nmの厚さの酸化珪素膜を介在させておく。このことに
より、窒化珪素と半導体膜とが直接接触して界面準位密度が増加するのを防ぎ、また、膜
形成時のダメージを低減することができる。
【0085】
ゲート電極243、244及び容量電極245は、実施の形態1と同様に膜厚10〜5
0nmの窒化タンタル(TaN)から成る第1導電膜241と、膜厚100〜400nmのタ
ングステン(W)から成る第2導電膜242とで形成する。
【0086】
その後、
図13(B)に示すように、ドーピング処理により第1n型不純物領域246
、248、第1p型不純物領域247を形成する。これらの不純物領域は、第2導電膜2
42をマスクとして第1導電膜241と重畳するように形成している。
【0087】
図13(C)では、ゲート電極の側壁スペーサ249〜251を酸化珪素膜で形成して
いる。全面にプラズマCVD法で酸化珪素膜を形成し、異方性ドライエッチングでこの膜
を全面にわたって均一にエッチングして側壁スペーサを形成する。ゲート電極をマスクと
して第2n型不純物領域252、254、第2p型不純物領域253を形成する。
【0088】
そして、
図14(A)に示すように水素を含有する酸化窒化珪素膜256をプラズマC
VD法により50nmの厚さで形成する。さらに、高周波マグネトロンスパッタリング法に
より作製される窒化珪素膜257を形成する。その後、410℃の加熱処理により水素化
を行うが、窒化珪素膜257により当該水素が気相中に放散されるのを防ぎ水素化の効果
を高めることができる。また、窒化珪素膜257に置き換えて酸化窒化アルミニウム(A
lNxOy:X=2.5〜47.5原子%)を適用しても良い。酸化窒化アルミニウムは窒
化珪素膜と同様な効果に加え、熱伝導性が高いことから、TFTの発熱を放散させる効果
が得られる。即ち、素子を微細化して集積度を向上させることによる発熱の影響を低減す
ることができる。
【0089】
層間絶縁膜258はプラズマCVD法で作製される酸化珪素膜、常圧CVD法で作製さ
れるリンガラス(PSG)、あるいはボロンガラス(BSG)、もしくはリンボロンガラ
ス(PBSG)で形成可能であるが、最も好ましくはポリイミド、アクリルなど感光性有
機樹脂材料により被膜の形成と同時にコンタクト部の開口を形成する。
【0090】
そして、配線259をAl、Ti、Mo、Wなどを用いて形成する。この配線259と
層間絶縁膜258を被覆する形で高周波マグネトロンスパッタリング法により窒化珪素膜
260を20〜100nmの厚さに形成する。これは、この上層にCu配線を形成するに際
し、Cuの拡散を防ぐバリア膜とするものである。
【0091】
そして、酸化珪素膜又は有機樹脂材料を用いて0.5〜5μmの厚さで第2層間絶縁膜
261を形成する。第2層間絶縁膜261に配線を形成するための開溝を形成し、その後
全面にスパッタ法で窒化タンタル膜から成るバリア層262を100〜200nmの厚さで
形成する。窒化タンタル膜はCuの拡散を防ぐバリア層として用いる。さらにスパッタ法
でCu膜を成膜してシード層を形成し、硫酸銅を用いたメッキ法によりCu層263を1
〜10μmの厚さで形成する。メッキ法以外でも、Cu層をスパッタ法で形成し、450
℃の熱処理でリフローさせて平坦化を実現することもできる(
図14(C))。
【0092】
Cu層263をエッチング加工してCu配線264を形成する。Cu配線は酸化しやす
く熱的に不安定であるので、このCu配線264を被覆する保護膜を高周波マグネトロン
スパッタリング法による窒化珪素膜265で20〜200nmの厚さで形成する。当該窒化
珪素膜は緻密であり、Cuの酸化や周辺部位への拡散を防ぐことができる。また、窒化珪
素膜260と窒化珪素膜265とでCu配線264を挟み込むことによりCuによりTF
Tが汚染されるのを防ぐことができる。さらに必要があれば第3層間絶縁膜266を形成
し、
図14(C)と同様な作業をすれば多層配線を形成し、マイクロプロセッサやメモリ
ーなどの半導体装置を形成することができる。
【0093】
(実施の形態4)
本実施の形態では、ダマシンによりCu配線を形成する一形態について
図15を用いて
説明する。勿論、この半導体装置の各部位においても本発明に係る窒化珪素膜が適用され
る。
【0094】
まず、実施の形態3と同様にして
図14(B)の状態を形成する。即ち、配線259の
上層に窒化珪素膜260を形成する。その後、酸化シリコン膜、又は有機樹脂膜を用いて
1〜5μmの厚さで第2層間絶縁膜267を形成する。第2層間絶縁膜267上に窒化珪
素膜268を形成した後、配線を形成するための開溝269を形成する(
図15(A))
。
【0095】
さらに第3層間絶縁膜270を形成し、概略開口269の位置に合わせ、それより開口
幅の広い開口272を形成する。その後全面にスパッタ法で窒化タンタル膜271を10
0〜200nmの厚さで形成する。窒化タンタル膜はCuの拡散を防ぐ層となる(
図15(
B))。
【0096】
さらにスパッタ法でCu膜を成膜し、シード層を形成した後、硫酸銅を用いたメッキ法
によりCu層を1〜10μmの厚さで形成する。メッキ法以外でもCu層をスパッタ法で
形成し、450℃の熱処理でリフローさせて平坦化を実現することもできる。
【0097】
次に、CMP(Chemical-Mechanical Polishing:化学的・機械的ポリッシング)法を
用いてCuメッキ層の表面から研磨を始め、第3層間絶縁膜270が露出するまで研磨を
行い、
図15(C)に示すように表面を平坦化する。こうしてCu配線273が形成され
る。CMPのスラリーは砥粒と酸化剤と添加剤から成り、砥粒にはアルミナかシリカを用
いる。酸化剤には硝酸鉄、過酸化水素、過ヨウ素酸カリウム等を用いる。こうしてバリア
層271、Cu層273から成る配線が形成される。この上層に窒化珪素膜274を形成
して保護膜としても良い。
窒化珪素膜260、窒化珪素膜268、窒化珪素膜274とでCu配線263を挟み込む
ことによりCuによりTFTが汚染されるのを防ぐことができる。
【0098】
(実施の形態5)
本実施の形態は、ガラス基板と比較してより平坦性の高い合成石英基板を用いて、より
微細化に適した半導体装置の構成について
図22と
図23を参照して説明する。勿論、こ
の半導体装置の各部位においても本発明に係る窒化珪素膜が適用される。
【0099】
石英基板200上に結晶性珪素膜を形成する。結晶性珪素膜は600〜900℃の加熱
処理により非晶質珪素膜を結晶化して形成されたもの、又は非晶質珪素膜にNiなど珪素
の結晶化の触媒となる元素を添加して500〜700℃で結晶化させたものを適用するこ
とができる。後者の場合には、結晶性珪素膜が得られた後に、ハロゲンを含む酸化性雰囲
気中で850〜1050℃、好ましくは950℃にて1〜12時間の加熱処理を行って、
触媒となる元素をゲッタリングにより除去しておくと良い。
【0100】
その後、
図22(A)において示すように、当該結晶性珪素膜より、島状に分割した半
導体膜216〜218を形成する。さらに、
図7及び
図20で説明したPPTA法を用い
て、半導体膜216〜218の表面に熱酸化処理により1〜5nmの酸化珪素膜280を形
成する。また、酸素に、NF
3、HF、ClF
3から選ばれた一種又は複数種を0.01〜
0.1%添加して酸化処理を行い、Fを酸化珪素膜中に含ませても良い。
【0101】
図22(B)で示すように、ゲート絶縁膜240は、10〜80nmの厚さで高周波マグ
ネトロンスパッタリング法で作製される窒化珪素膜が適用されるが、半導体膜との界面に
は熱酸化処理により形成される1〜5nmの厚さの酸化珪素膜280を介在させておく。酸
化珪素膜により、窒化珪素と半導体膜とが直接接触して界面準位密度が増加するのを防ぎ
、また、膜形成時のダメージを低減することが可能であり、界面準位密度を低減すること
ができる。
【0102】
また、同様な効果を得る手段として、酸化性の水溶液、代表的にはオゾン水で形成され
る酸化珪素膜(ケミカルオキサイド)を残存させておいても良い。
【0103】
ゲート電極243、244及び容量電極245は、実施の形態1と同様に膜厚10〜5
0nmの窒化タンタル(TaN)から成る第1導電膜241と、膜厚100〜400nmのタ
ングステン(W)から成る第2導電膜242とで形成する。
【0104】
その後、
図22(C)に示すように、ドーピング処理により第1n型不純物領域246
、248、第1p型不純物領域247を形成する。これらの不純物領域は、第2導電膜2
42をマスクとして第1導電膜241と重畳するように形成している。
【0105】
図22(D)では、ゲート電極の側壁スペーサ249〜251を酸化珪素膜で形成して
いる。全面にプラズマCVD法で酸化珪素膜を形成し、異方性ドライエッチングでこの膜
を全面にわたって均一にエッチングして側壁スペーサを形成する。ゲート電極をマスクと
して第2n型不純物領域252、254、第2p型不純物領域253を形成する。
【0106】
そして、
図23(A)に示すように水素を含有する酸化窒化珪素膜256をプラズマC
VD法により50nmの厚さで形成する。さらに、高周波マグネトロンスパッタリング法に
より作製される窒化珪素膜257を形成する。その後、410℃の加熱処理により水素化
を行うが、窒化珪素膜257により当該水素が気相中に放散されるのを防ぎ水素化の効果
を高めることができる。また、窒化珪素膜257に置き換えて酸化窒化アルミニウム(A
lNxOy:X=2.5〜47.5原子%)を適用しても良い。酸化窒化アルミニウムは窒
化珪素膜と同様な効果に加え、熱伝導性が高いことから、TFTの発熱を放散させる効果
が得られる。即ち、素子を微細化して集積度を向上させることによる発熱の影響を低減す
ることができる。
【0107】
層間絶縁膜258はプラズマCVD法で作製される酸化珪素膜、常圧CVD法で作製さ
れるリンガラス(PSG)、あるいはボロンガラス(BSG)、もしくはリンボロンガラ
ス(PBSG)で形成可能であるが、最も好ましくはポリイミド、アクリルなど感光性有
機樹脂材料により被膜の形成と同時にコンタクト部の開口を形成する。
【0108】
そして、配線259をAl、Ti、Mo、Wなどを用いて形成する。この配線259と
層間絶縁膜258を被覆する形で高周波マグネトロンスパッタリング法により窒化珪素膜
260を20〜100nmの厚さに形成する。これは、この上層にCu配線を形成するに際
し、Cuの拡散を防ぐバリア膜とするものである(
図23(B))。
【0109】
そして、酸化珪素膜又は有機樹脂材料を用いて0.5〜5μmの厚さで第2層間絶縁膜
261を形成する。第2層間絶縁膜261に配線を形成するための開溝を形成し、その後
全面にスパッタ法で窒化タンタル膜から成るバリア層262を100〜200nmの厚さで
形成する。窒化タンタル膜はCuの拡散を防ぐバリア層として用いる。さらにスパッタ法
でCu膜を成膜してシード層を形成し、硫酸銅を用いたメッキ法によりCu層263を1
〜10μmの厚さで形成する。メッキ法以外でも、Cu層をスパッタ法で形成し、450
℃の熱処理でリフローさせて平坦化を実現することもできる(
図23(C))。
【0110】
Cu層263をエッチング加工してCu配線264を形成する。Cu配線は酸化しやす
く熱的に不安定であるので、このCu配線264を被覆する保護膜を高周波マグネトロン
スパッタリング法による窒化珪素膜265で20〜200nmの厚さで形成する。当該窒化
珪素膜は緻密であり、Cuの酸化や周辺部位への拡散を防ぐことができる。また、窒化珪
素膜260と窒化珪素膜265とでCu配線264を挟み込むことによりCuによりTF
Tが汚染されるのを防ぐことができる。さらに必要があれば第3層間絶縁膜266を形成
し、
図23(C)と同様な作業をすれば多層配線を形成し、マイクロプロセッサやメモリ
ーなどの半導体装置を形成することができる(
図23(D))。配線層は必要に応じて多
層化するることができる。
【0111】
(実施の形態6)
実施の形態5に、実施の形態4で示す配線形成工程を組み合わせて半導体装置を完成さ
せても良い。即ち、ダマシン技術によりCu配線を形成することができる。この場合にお
いても、本発明に係る窒化珪素膜が適用される。
【0112】
(実施の形態7)
実施の形態1〜6により作製される代表的な半導体装置としてマイクロコンピュータの
一実施形態を
図18と
図19を用いて説明する。
図18に示すように、0.3〜1.1mm
の厚さのガラス又は石英などの基板上に各種の機能回路部を集積してマイクロコンピュー
タを実現することができる。各種の機能回路部は実施の形態1〜6により作製されるTF
Tや容量部を主体として形成することが可能である。
【0113】
図18で示すマイクロコンピュータ2100の要素としては、CPU2101、ROM
2102、割り込みコントローラ2103、キャッシュメモリー2104、RAM210
5、DMAC2106、クロック発生回路2107、シリアルインターフェース2108
、電源発生回路2109、ADC/DAC2110、タイマカウンタ2111、WDT2
112、I/Oポート2102などである。
【0114】
ガラス基板上に形成されたマイクロコンピュータ2100は、セラミックやFRP(繊
維強化プラスチック)のベース2201にフェースダウンボンディングで固着される。マ
イクロコンピュータ2100のガラス基板の裏面には、熱伝導性の良い酸化窒化アルミニ
ウム2203が被覆されて熱放散効果を高めている。
さらにこれに接してアルミニウムで形成される放熱フィン2204が設けられ、マイクロ
コンピュータ2100の動作に伴う発熱対策としている。全体は封止樹脂2205で覆わ
れ、外部回路との接続はピン2202により行う。
【0115】
本実施の形態ではマイクロコンピュータの形態を一例として示したが、各種機能回路の
構成や組み合わせを換えれば、メディアプロセッサ、グラフィクス用LSI、暗号LSI
、メモリー、グラフィクス用LSI、携帯電話用LSIなど様々な機能の半導体装置を完
成させることができる。