特許第6243505号(P6243505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイスの特許一覧

特許6243505衝撃検出回路およびその動作のための方法
<>
  • 特許6243505-衝撃検出回路およびその動作のための方法 図000002
  • 特許6243505-衝撃検出回路およびその動作のための方法 図000003
  • 特許6243505-衝撃検出回路およびその動作のための方法 図000004
  • 特許6243505-衝撃検出回路およびその動作のための方法 図000005
  • 特許6243505-衝撃検出回路およびその動作のための方法 図000006
  • 特許6243505-衝撃検出回路およびその動作のための方法 図000007
  • 特許6243505-衝撃検出回路およびその動作のための方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243505
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】衝撃検出回路およびその動作のための方法
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/14 20060101AFI20171127BHJP
   H02P 8/02 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G04C3/14 X
   H02P8/02
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-224816(P2016-224816)
(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-96950(P2017-96950A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】15195209.0
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・クロプフェンスタイン
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ベルトウド
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ジャンネ
(72)【発明者】
【氏名】イヴ・ゴダ
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ・ボネ
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−016376(JP,A)
【文献】 特開2012−002533(JP,A)
【文献】 実開昭58−077487(JP,U)
【文献】 特開2011−117974(JP,A)
【文献】 特開昭56−110073(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/110602(WO,A1)
【文献】 特開昭54−155079(JP,A)
【文献】 特開昭58−066887(JP,A)
【文献】 特開2011−203191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 3/14
H02P 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置を駆動するモータ(4)のために、物理量を表す信号を生成することが可能な演算ユニット(5)を備えた電子装置(1)であって、前記モータは、磁気回路(4b)内のロータ(4a)と、1つの正端子と1つの負端子である2つの端子(Mot1,Mot2)と、を有し、前記2つの端子を介して前記演算ユニットは前記モータを制御し、当該電子装置は、2つの衝撃検出回路(7)をさらに備え、各々の前記衝撃検出回路は、前記モータに作用した外部衝撃を検出するために、前記演算ユニットと前記モータの端子との間に接続されており、
前記モータは、基準角度位置に設定された第1の安定平衡位置と、前記第1の安定平衡位置から180°に設定された第2の安定平衡位置と、を有し、回転方向のそれぞれについて、前記モータのロータを前の角度位置に戻すことがもはや不可能となる最大角度位置を有し、
前記演算ユニットは、アルゴリズムを用いて、衝撃の後に、前記衝撃検出回路で検出された誘起電圧を分析することにより前記ロータの回転方向を検出し、前記誘起電圧の極性とは逆極性のブロッキングパルスを伝送させることが可能であり、
前記ブロッキングパルスは、58.5msの最大持続時間を有し、衝撃誘起による前記ロータの回転を前記最大角度位置に達する前に停止させて、所定の角度位置に戻すことを可能とする、ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記ブロッキングパルスは、25%から100%まで変化するチョッピングレートを有することを特徴とする、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記ブロッキングパルスは、少なくとも第1(Ph1)と第2(Ph2)の異なる時間相を有し、各時間相は異なるチョッピングレートを示すことが可能である、ことを特徴とする、請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記第2の相は、前記第1の相よりも長い持続時間を有することを特徴とする、請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記第2の相は、前記第1の相よりも2倍長い持続期間を有することを特徴とする、請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記衝撃検出回路(7)は、検出感度の調整を可能とするように構成された選択部(71)を有することを特徴とする、請求項1に記載の電子装置。
【請求項7】
前記選択部は、50から600ミリボルトまでの範囲の感度を可能とすることを特徴とする、請求項6に記載の電子装置。
【請求項8】
前記モータ(4)は、電流が流れるときに前記磁気回路においてコイルによって発生する主磁束の軸に対して、前記コイルに電流が流れないときの前記ロータの前記安定平衡位置が30から90度の角度に設定されるように、構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電子装置。
【請求項9】
前記ブロッキングパルスは、前記モータ(4)に対して、その前記端子のどちらか一方を介して伝送されることを特徴とする、請求項1に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置を駆動するモータのために、物理量を表す信号を生成することが可能な演算ユニットを備えた電子装置に関するものであり、モータは、1つの正端子と1つの負端子である2つの端子を有し、これを介して演算ユニットはモータを制御し、電子装置は、さらに、モータに作用した外部衝撃を検出するために、演算ユニットとモータ端子との間に接続された少なくとも1つの衝撃検出回路を備える。
【背景技術】
【0002】
電気機械式時計ムーブメントがその内部に配置されたケースを備える時計が知られている。そのようなムーブメントは、水晶振動子系によって刻時される。時、秒などの時刻指標を表示するために、回転駆動されるモータに指針が取り付けられている。使用されるモータは、ステッピングモータとも呼ばれるLavet型モータである。このようなモータでは、磁気回路の空隙において、円筒形の磁気ロータによって径方向磁界を発生させ、磁気回路に巻回されたコイルの端子は、一般的には集積回路である制御回路に接続されており、制御回路により電流パルスを供給して、各パルスによってロータを1ステップ進める。コイルは、極細ワイヤによって形成されており、磁気回路の一部を内部に収容する中空の絶縁チューブ上に巻回されている。
【0003】
時計の内部に配置されるこのようなモータは、時計が落とされたことまたはユーザの激しい動きに起因し得る衝撃を受ける。この場合、そのような衝撃は、モータの動作を一時的に中断させるおそれがある。そのような中断は、ロータの慣性による制御されない動きからなり、少なくとも1ステップを飛ばす原因となる。
【0004】
その結果、指針によって提供される時刻表示は、もはや正確ではなくなる可能性がある。
【0005】
これを克服するために、衝撃検出システムがある。これを実現するために、電子装置で、衝撃発生時にモータによって誘起される電圧を測定することを担う。実際に、ロータの変位(回転)の影響によって誘起電圧が発生する。この誘起電圧を、検出回路によって検出し、誘起電圧を所定の閾値と比較する。電圧が閾値よりも高い場合には、検出回路は、衝撃が発生したと推定して、その情報を制御ユニットに伝送する。
【0006】
衝撃に応じて、制御ユニットは、衝撃によって生じるロータの回転をいずれも阻止するために用いられるブロッキングパルスを、モータに伝送する。
【0007】
ブロッキングパルスは、指針の位置に誤差が生じないように、ロータが明確に規定された位置でブロックされることを可能とするものでなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、より高速かつより正確に衝撃の検出を可能とする、モータ用の衝撃検出装置を設けることを提案することにより、従来技術の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明は、表示装置を駆動するモータのために、物理量を表す信号を生成することが可能な演算ユニットを備えた電子装置に関し、モータは、磁気回路内のロータと、1つの正端子と1つの負端子である2つの端子と、を有し、これらの端子を介して演算ユニットはモータを制御し、電子装置は、2つの衝撃検出回路をさらに備え、各々の検出回路は、モータに作用した外部衝撃を検出するために、演算ユニットとモータ端子との間に接続されており、
モータは、基準角度位置に設定された第1の安定平衡位置と、第1の安定角度位置から180°に設定された第2の安定平衡位置と、を有し、回転方向のそれぞれについて、モータロータを前の角度位置に戻すことがもはや不可能となる最大角度位置を有し、
演算ユニットは、アルゴリズムを用いて、衝撃の後に、検出回路で検出された誘起電圧を分析することによりロータの回転方向を検出し、誘起電圧の極性とは逆極性のブロッキングパルスを伝送させることが可能である、電子装置において、
ブロッキングパルスは、58.5msの最大持続時間を有し、衝撃誘起によるロータの回転を最大角度位置に達する前に停止させて、所定の角度位置に戻すことを可能とする、ことを特徴とする。
【0010】
第1の有利な実施形態では、ブロッキングパルスは、25%から100%まで変化するチョッピングレートまたはチョッピングレベルを有する。
【0011】
第2の有利な実施形態では、ブロッキングパルスは、少なくとも第1と第2の異なる時間相または時相を有し、各相は異なるチョッピングレートを示すことが可能である。
【0012】
第3の有利な実施形態では、第2の相は、第1の相よりも長い持続時間を有する。
【0013】
第4の有利な実施形態では、第2の相は、第1の相よりも2倍長い持続期間を有する。
【0014】
第5の有利な実施形態では、衝撃検出回路は、検出感度の調整を可能とするように構成された選択部を有する。
【0015】
他の有利な実施形態では、選択部は、50から600ミリボルトまでの範囲の感度を可能とする。
【0016】
他の有利な実施形態では、モータは、そのロータの安定平衡位置がコイル発生磁束の主磁束軸に対して90°の角度に位置決めされて、最大角度位置は、回転方向のそれぞれについて、基準位置に対して270°であるように、構成されている。
【0017】
他の有利な実施形態では、モータは、そのロータの安定平衡位置が安定コイル発生磁束の主磁束軸に対して少なくとも30°の角度に位置決めされて、最大角度位置は、回転方向のそれぞれについて、基準位置に対して少なくとも120°であるように、構成されている。
【0018】
他の有利な実施形態では、ブロッキングパルスは、モータに対して、その接続端子のどちらか一方を介して伝送される。
【0019】
本発明の目的、利点、および特徴は、単なる非限定的な例として提示されるとともに添付の図面で示される本発明の少なくとも1つの実施形態についての以下の詳細な説明において、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る電子装置の概略図を示している。
図2図2は、本発明に係る衝撃検出回路の詳細図を示している。
図3図3は、本発明に係る衝撃検出回路の詳細図を示している。
図4図4は、本発明に係るモータを概略的に示している。
図5図5は、本発明に係るモータを概略的に示している。
図6図6は、本発明に係るモータを概略的に示している。
図7図7は、本発明に係る電子装置についてのフロー図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、より高速かつより正確に衝撃の検出を可能とする、モータ用の衝撃検出装置を提供するという趣旨によるものである。
【0022】
図1は、電子式ムーブメントの概略図を示している。このムーブメントまたは電子装置1は、水晶振動子系3によって刻時される制御モジュール2を備える。時、秒などの時刻指標を表示するために、回転駆動されるモータ4に指針が取り付けられている。使用されるモータは、ステッピングモータとも呼ばれるLavet型モータであって、2つの接続端子Mot1およびMot2を有している。このようなモータでは、磁気回路4bの空隙において、円筒形の磁気ロータ4aによって径方向磁界を発生させ、磁気回路に巻回されたコイルの端子は、一般的には集積回路である制御モジュールに接続されており、制御モジュールによって端子に電流パルスを順次供給して、各パルスによりロータを1ステップ進める。コイルは、極細ワイヤによって形成されており、磁気回路の一部を内部に収容する中空の絶縁チューブ上に巻回されている。また、このモータは、図4に示すように、2つの安定平衡位置4cを有する。制御モジュール2は、一般的には演算ユニット5を有する。本アセンブリは、セル電池またはバッテリなどの電源ユニット8によって通電される。電源ユニットは、電源電圧Vddを供給する。さらに接地端子Vssを備える。
【0023】
このようなモータは、2つの安定平衡位置、すなわち、電力供給の停止時にロータが自然に動いて至る2つの位置を有する。
【0024】
図3に示す制御モジュール2は、さらに、少なくとも1つの衝撃検出回路7を含む検出ユニット6を有する。衝撃検出回路7は、衝撃が発生したかどうか判断するために用いられる。こうして衝撃が検出された場合には、これに対処して制御モジュール2が動作し、ロータが回転し始めるのを阻止するためのブロッキングパルスを伝送することができる。衝撃検出回路は、モータ端子の少なくとも一方の出力に配置される。以下の説明では、モータの負端子Mot2に接続された衝撃検出回路7を例にとる。各モータ端子Mot1、Mot2で、電圧Vmotを測定する。各端子Mot1、Mot2に、モータバッファが配置されており、これらのモータバッファは、フリップフロップB1、B2、および直列に接続された2つの異なるタイプのトランジスタを有し、図3に示すように、トランジスタのゲートは、フリップフロップに接続されている。これらのバッファは、モータのコイルに、それを回転させる正電流または負電流のいずれかを流すために用いられる。
【0025】
図2では、衝撃検出回路7は、モータ4の端子Mot2に直接接続された選択部71を有し得るということに留意すべきである。この選択部71は、比較部72に接続された出力を有する。比較部72は、衝撃が検出されたか否かを示す信号を供給するために、演算ユニット5に接続されている。
【0026】
選択部は、多位置スイッチの形態のセレクタ71aに関連付けられた一連の直列接続された抵抗器Riを有する。セレクタ71aは、出力と、抵抗器Riにそれぞれ関連付けられた複数の選択点piと、を有する。セレクタ71aは、さらに、このセレクタの出力を選択点piの1つに接続するためのフリップフロップ71bを有する。こうして、フリップフロップ71bは、誘起電圧の高低を検出することで、衝撃の強弱を検出するように、衝撃検出器の感度を変更することを可能とする。本発明によれば、直列抵抗列Riは、50から600ミリボルトの範囲の感度を有するものと考えられる。セレクタ71aの出力は、比較部72に接続される電圧V1である。比較部72は、比較器72bを有し、その正入力は、セレクタ71aの出力に接続されており、その負入力は、50mVの基準電圧Vrefである。比較器72bは、出力Sh_out2を供給する。抵抗列Riは、衝撃検出器をアクティブにすることが可能なトランジスタTによって制御される。本発明によれば、有利には、衝撃が発生した場合にロータ4aを制御する制御アルゴリズムに関連付けるために、図3に示すように、Lavet型モータの各端子Mot1、Mot2に衝撃検出回路7が設けられる。
【0027】
第1のステップで、制御モジュール2は、衝撃の回転方向を検出するようにプログラムされている。これを実現するために、両方の衝撃検出回路7を用いる。それぞれの衝撃検出回路7がモータ端子に接続されていることで、衝撃が発生した場合に、ロータが回転して、衝撃検出回路7に誘起電圧を発生させる。これらの衝撃検出回路7は、衝撃が発生したことを示す情報を制御モジュール2に伝送する。情報が届く順序によって、ロータの回転を検出することは容易である。いずれか一方の検出器により正の誘起電圧のみが検出されるので、ロータの回転方向を推定することが可能である。
【0028】
実際に、制御モジュール2は、衝撃検出回路7によって伝送される情報を、自身で解釈することを可能とするプログラムを備えている。これを実現するために、そのプログラムは、衝撃検出回路7の作動によって衝撃の回転方向を特定する。
【0029】
衝撃の発生時には、ロータ4aが回転して誘起電圧が生じ、その誘起電圧が正の場合には、ロータ4aは時計回りに回転しており、誘起電圧が負の場合には、ロータ4aは反時計回りに回転している。当然のことながら、図4に示すように、ロータが、最初に、その安定平衡位置4cの1つにあるときに、衝撃検出が発生する。
【0030】
衝撃の回転方向の検出の後に続いて、その衝撃の影響を解消するために、衝撃補償手順を適用することが可能である。実際に、本発明は、有利には、衝撃の影響を可能な限り解消または抑制するための補償手順を提案する。
【0031】
この補償手順は、制御ユニット2によって、モータにブロッキング信号を印加することにある。このブロッキング信号は、衝撃が発生した場合のロータ4aの回転を打ち消す信号である。
【0032】
ブロッキング信号は、ロータに作用するように、モータ4の接続端子の少なくとも一方に伝送されるパルスである。このパルスは、ロータ4aに対して衝撃の作用とは逆の作用を可能とするものと定義される。従って、ロータが、これを時計回りに回転させる衝撃を受けた場合には、ブロッキング信号は、その信号がロータを反時計回りに駆動するように構成されているパルスであり、また、その逆も同様である。
【0033】
本発明によれば、有利には、ブロッキング信号すなわちブロッキングパルスは、ロータを望ましい位置に動かすように構成される。実際に、ロータ4aが衝撃によって動かされる場合、これは、モータに接続された装置が動かされることを意味し、その装置は、指針を駆動する輪列からなる。結果的に、指針の位置に変化が生じることで、時刻情報表示に誤差が生じる。
【0034】
従って、ブロッキングパルスは、衝撃に続くロータの回転を阻止するだけではなく、衝撃が終了してブロッキングパルスが停止したときにロータがその最初の安定位置に戻ることも確保するように構成される。
【0035】
衝撃の発生時にロータ4aを望ましい位置に戻すこの目的は、副次的な目的の達成を伴う。実際に、この種のモータでは、ロータ4aの復帰不能点と呼ばれる既知の角度位置があり、これをロータが越えると、その初期位置に戻すことがもはや不可能となる角度位置と定義される。
【0036】
実際に、ロータが回転すると、これにより、速度ひいては慣性モーメントが高まる。従って、ある特定の角度位置に達すると、ロータ4aを望ましい位置に戻すことは物理的に不可能となる。この最大角度位置は、モータの構成に依存する。実際に、モータはそれぞれ、少なくとも2つのガイドスロット4dまたは位置決めノッチを有する。これらのガイドスロット4dは、ある角度位置に配置されて、ロータの安定平衡位置を規定している。最大角度位置は、コイルによって発生する主磁束の方向に対するこれらのガイドスロット4dの位置に依存する。従って、図5に示すように、2つのガイドスロットが90度の位置に配置されている場合には、最大角度位置は、270度すなわちガイドスロットの一方の角度位置である。図6に示すように、ガイドスロットが45度の位置に配置されている場合には、最大角度位置は135度である。
【0037】
本発明によれば、衝撃が発生した場合に、ブロッキングパルスは、ロータが最大角度位置を越えることなく望ましい位置に戻ることを可能とするように構成されている。これに関して、ブロッキングパルスは、複数の相を有するパルスである。この複数の相によって、ブロッキングパルスの特性に変更を加えることが可能となる。
【0038】
本例では、ブロッキングパルスは2相を有し、第1の相Ph1は、保持トルクの強さが最大である強い相とすることができ、第2の相Ph2では、それほど保持トルクは強くはない。
【0039】
パルスによって発生させる保持トルクの強さを変化させるために、チョッピングレートは、すなわちパルスのデューティサイクルを変化させるように構成される。パルスは、チョッピングレートに応じて、強さが増減することで、ロータに及ぼす効果の重大さが増減する。本発明によれば、チョッピングレートは、25%から100%まで変化するように構成される。これにより、高チョッピングレートの第1のブロッキングパルス相と、低チョッピングレートの第2の相と、を有することが有利であり得る。
【0040】
また、持続時間の異なる相を提供することが可能である。例えば、第1の相Ph1は、短時間であるが高チョッピングレートであり、第2の相Ph2は、持続時間がより長いがチョッピングレートはより低い。
【0041】
好ましい例では、第2の相は、第1の相の持続時間の2倍に等しい持続時間を有する。このとき、第1の相は、19.5ミリ秒の最大持続時間を有する。その場合、ブロッキングパルスの全持続時間は、図7に示すように、最大で58.5ミリ秒である。
【0042】
こうして、その極性がロータ4aの回転の極性とは逆であるブロッキングパルスを伝送することによって、ロータの回転を停止させ、それを望ましい位置に戻すことが可能となる。
【0043】
この望ましい位置に一度なれば、ロータは、パルスが停止したときに、自然にその最初の安定平衡位置に向かって動く。
【0044】
しかしながら、有利には、安定平衡位置に向かうこの動きを検出する変形例が提供される。これを実現するために、衝撃検出回路は、最大感度を有するように調整される。これを実現するために、フリップフロップ71bは、直列抵抗列Riに作用して、この場合は50mVである最低感度を選択するように、切り替えられる。
【0045】
この低感度によって、安定平衡位置に動くときのロータの非常に小さな動きの後の誘起電圧を測定することが可能となる。このとき、誘起電圧の正または負の符号に応じて、どちらの安定平衡位置にロータが動いたのかを判断することが可能となる。従って、演算ユニット5は、この情報を、時刻情報のために考慮することができる。
【0046】
本明細書に記載の発明の種々の実施形態に対して、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に自明な種々の変更および/または改良を実施できることは明らかであろう。
【符号の説明】
【0047】
1 電子装置(ムーブメント)
2 制御モジュール
3 水晶振動子系
4 モータ
4a ロータ
4b 磁気回路
4c 安定平衡位置
4d ガイドスロット
5 演算ユニット
6 検出ユニット
7 衝撃検出回路
71 選択部
71a セレクタ
71b フリップフロップ
72 比較部
72b 比較器
8 電源ユニット
B1 フリップフロップ
B2 フリップフロップ
Mot1 モータの接続端子(正端子)
Mot2 モータの接続端子(負端子)
pi 選択点
Ph1 ブロッキングパルスの第1の相
Ph2 ブロッキングパルスの第2の相
R1 抵抗器
R2 抵抗器
R3 抵抗器
R4 抵抗器
Sh_out1 比較器の出力
Sh_out2 比較器の出力
T トランジスタ
V1 セレクタの出力
Vdd 電源電圧
Vmot モータ端子の電圧
Vref 基準電圧
Vss 接地端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7