(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、電子制御燃料噴射システムを用いた自動車が一般化しているが、この場合エンジンルーム内の内部には様々なセンサや制御機器が配置されている。その中の一つに湿度検出装置がある。湿度検出装置は近年、燃料制御用途への利用実績がでてきているが、従来は主に車室内の空調管理などに用いられてきた。車室内への用途には苛酷な環境を想定した耐久性などへの要求はなく、エンジン制御用として、例えば前記の吸入空気流量測定装置やその他のセンサなどと一体化して使用する場合には、吸入空気流量測定装置と等価な耐環境性能が要求される。
【0003】
特に湿度検出装置が嫌う環境は検出素子部の結露などに端を発する湿度検出部の水滴付着などがあり、空気中の水分が飽和点(相対湿度100%)に達すると結露が発生する。結露が発生する温度を露点と呼ぶが、湿度センサが結露すると、湿度の変化に対する検出応答性に著しい遅れが生じ、湿度の計測精度自体にも悪影響を及ぼす。さらには、湿度検出装置が機能を失ってしまうおそれがある。湿度検出部が結露した場合には、最大湿度あるいは最小湿度を示す信号値を出力し、検出素子部が乾燥するまでは湿度検出装置としての機能を一時的に失う。結果、湿度検出装置が機能を失っている期間中エンジン制御システムに対して悪影響を及ぼす。特に車両吸気管内等の雰囲気が急激に変化する環境下で、高分子静電容量式の湿度センサを用いると、この問題は顕著であり、これらに対する明確な技術的課題が必須となる。
【0004】
このような結露対策がなされた湿度検出装置の例として特許文献1がある。特許文献1には、露点温度を求め、センサ温度が露点に対し一定の温度差を持つような温度に湿度検出部を加熱する加熱手段を備えることにより湿度検出部の結露を防止していることが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0012】
本発明の第一実施例について、
図1から
図5を用いて説明する。
【0013】
図1および
図2に示すように、吸気管或いは専用ボディ(図示せず)に取り付けられる湿度検出装置は、ハウジング3とカバー2とハウジング3に搭載される電子回路基板23を有する。マイクロプロセッサ26、湿度センサ24、発熱抵抗体
25は回路基板23に搭載される。
【0014】
ハウジング3は、エンジン制御装置のハーネスと嵌合するためのコネクタ1と、吸気管或いは専用ボディに固定されるハウジング支持部4と、吸気管或いは専用ボディとハウジング支持部4が金属ねじなどで固定される際の補強用として金属ブッシュ5を有する。
【0015】
ハウジング3は吸気管内を流れる空気の一部を取り込む副通路を構成する副通路構成溝を有しており、カバー2との協働により副通路を構成する。副通路は、吸気管を流れる空気の一部を取り込む第一副通路21と、第一副通路から第二副通路22への流入通路20Aと第二副通路22から第一副通路21への流入通路20Bを有している。湿度センサ24並びに発熱抵抗体25は第二副通路22内に配置され、湿度センサ24により吸気管を流れる空気の湿度を検出する。第一副通路21をバイパスするように設けられた、言い換えると第一副通路21から分岐するように設けられた第二副通路22に湿度センサ24を配置し、汚損物が第二副通路内に侵入しにくい構成としているため、湿度センサへ汚損物が飛来することを抑制することができる。
【0016】
次に、湿度センサ24の結露対策について、
図3から
図5を用いて説明する。
図3は、湿度センサ24を加熱する発熱抵抗体
25の加熱温度制御装置30のブロック図である。
【0017】
図3に示すように、加熱温度制御装置30は、湿度センサ24、マイクロプロセッサ26、発熱抵抗体25を有する。湿度センサ24は湿度検出機能の他に温度検出機能を有しており、湿度センサ24で検出した温度情報並びに湿度情報は、湿度センサ制御用の信号線31Bを用いてマイクロプロセッサ26に伝えられる。マイクロプロセッサ26は、湿度センサ24からの検出信号を処理する湿度センサ信号処理回路43、湿度センサ24からの検出信号から目標温度TTを検索する目標温度検索手段40、目標温度検索手段40により検索された目標温度TTに基づいて発熱抵抗体25の加熱温度を制御する発熱体制御手段
42を有する。発熱抵抗体制御手段は、検索された目標温度TTとなるように発熱抵抗体の加熱温度を制御する。ここで、発熱抵抗体の加熱温度は、図示しない電源供給手段からの供給電圧を図示しないスイッチ回路のON/OFF制御することにより制御される。電源供給手段とスイッチ回路をマイクロプロセッサ26と別体として構成してもよ
く、また一体に構成してもよい。マイクロプロセッサ26は、この温度情報と湿度情報を元に発熱抵抗体制御用の信号線31Aを用いて発熱抵抗体を制御する。
【0018】
図4に示すように、温度ts、湿度Hsに対応する目標温度TTがマップデータとしてマイクロプロセッサ26の目標温度格納手段41に格納されている。言い換えると、湿度検出装置は目標温度TTをマップデータとして保存しているメモリを有している。計測状態、言い換えると検索条件である湿度センサ24で検出された温度tsと湿度Hsは、湿度センサ制御用の信号線31Bを用いてマイクロプロセッサ26に伝えられ、この検索条件に対応する目標温度を目標温度検索手段40がマップデータから検索する。ここで、目標温度TTは予め計算された値である。
【0020】
e:露点温度における飽和水蒸気圧[Pa]、es:飽和水蒸気圧[Pa]、ln:自
然対数(自然指数eを底とする対数logex)、T:絶対温度[k]=(t℃+273
.15)とすると、相対湿度の計算式は式1で示される。
U[RH%] = e/es ×100 ・・・(式1)
【0021】
水の飽和水蒸気圧(ew)を求める計算式は式2で示される。
ln(ew) [Pa]= −6096.9385×T
-1+21.2409642
−2.711193×10
-2×T
+1.673952×10
-5×T
2
+2.433502×ln(T)・・・(式2)
【0022】
飽和水蒸気圧から露点温度を算出する計算式は次の通りである。
y = ln(e/611.213) ・・・(式3)
y≧0のとき
TDP[℃] = 13.715×y
+8.4262×10−1×y
2
+1.9048×10
-2×y
3 +7.815
8×10
-3×y
4・・・(式4)
y<0のとき
TDP[℃] = 13.7204×y+7.36631×10
-1×y
2
+3.32136×10
-2×y
3
+7.78591×10
-4×y
4 ・・・(式5)
【0023】
発熱抵抗体加熱目標温度値TTを求めるまでの流れを以下に示す。
【0024】
露点温度T
DP[℃]を求めるまでの計算の流れの一例として、湿度センサで計測された計測温度をts[℃]、計測湿度をHs[rh%]とする。
【0025】
計測温度tsより飽和水蒸気圧esを求める。
式2より、
es = EXP^(−6096.9385×(ts+273.15)
-1
+21.2409642
−2.711193×10
-2×(ts+273.15)
+1.673952×10
-5×(ts+273.15)
2
+2.433502×ln(ts+273.15)) ・・・(式6)
計測湿度 Hs = U であるので、式1、式6より
e = U/100 × es
=Hs/100×EXP^(−6096.9385×(ts+273.15)
-1+21.2409642
−2.711193×10
-2×(ts+273.15)
+1.673952×10
-5×(ts+273.15)
2 +2
.433502×ln(ts+273.15))・・・(式7)
式3より、
y = ln(e/611.213)
= ln(Hs/100×EXP^(−6096.9385×(ts+273.15)
-1 +21.2409642−2.711193×10
-2×(ts+273
.15)
+1.673952×10
-5×(ts+273.15)
2 +2.433
502×ln(ts+273.15))/611.23)・・・(
式8)
式8で求められたyの値によって
y≧0の時には式4
y<0の時には式5に代入して露点温度T
DP[℃]を算出する。
【0026】
目標温度TT[℃]を求めるまでの計算は、まず露点温度までの余裕温度 TT
DP[℃
]を予め設定しておき、
ts − T
DP ≧ TT
DP 発熱抵抗体制御なし
ts − T
DP < TT
DP 発熱抵抗体制御あり
と判定し、
図4で示した湿度センサ24で計測した温度tsと湿度Hsの計測値から発熱抵抗体加熱目標温度値は、
TT = TT
DP + T
DPと計算の上、導き出される。
【0027】
本発明の第一実施例では、マイクロプロセッサ26は、各温度並びに各湿度において上記の計算式で求められた発熱抵抗体加熱目標温度値TTをマップデータとして目標温度格納手段41にあらかじめ格納しており、目標温度検索手段40により格納された目標温度値の中から計測状態における目標温度を検索する構成としている。
【0028】
従来は、結露対策のためにこの計算処理をマイクロプロセッサに毎回行わせていたため
、マイクロプロセッサの処理負荷が大きくなる課題があったが、本実施例では、露点温度の演算をマイクロプロセッサ26で処理しておらず、あらかじめ格納された発熱抵抗体加熱目標温度TTを計測状態で検索する構成としているため、マイクロプロセッサ26での演算処理負荷を低減させることが可能となる。
【0029】
さらに、本発明の第一実施例では、湿度センサ24に内蔵された温度センサ27により
、目標温度を検索するための被測定雰囲気の温度を測定している。言い換えると温度検出部を有する湿度センサ24により、目標温度を検索するための被測定雰囲気の温度を測定している構成としている。本発明の第一実施例によると、被測定雰囲気の湿度を測定している湿度センサ24により被測定雰囲気の温度も検出しているため、結露状態を回避したい湿度センサ24近傍の被測定雰囲気の温度を精度よく、かつ応答性がよく測定することができる。
【0030】
特に、自動車の内燃機関の吸入空気の湿度を検出する湿度測定装置の場合、吸入空気の状態が刻一刻と変化する状況下で、湿度検出と並行して結露を防止する制御を行う必要がある。本発明の第一実施例によれば湿度センサ24近傍の測定雰囲気の状態を精度よく、かつ応答性よく測定することができるため、このような場合においても湿度検出と並行して結露を防止する制御を行うことができる。
【0031】
また、従来のように露点温度をその都度求めるためには、湿度検出部を加熱する前の正確な空気温度を計測する必要があるため、湿度検出部に設けられた温度センサとは別に湿度検出部の加熱影響が少ない箇所に専用の空気温度センサを設ける必要がある。すなわち
、空気温度センサをセンサハウジング内に配置しなければならず、センサハウジングが大型化して吸気管内の圧力損失増加、回路スペースの制限などが発生し、ひいては性能低下やコストアップが生じるおそれがある。本実施例によれば、湿度センサの温度を用いて発熱抵抗体を制御することにより追加の温度センサ無しに、従来の同一環境で使用される湿度センサよりも結露に起因する計測精度の悪化を、低コストで達成できる。
【0032】
本発明の第二実施例について、
図6を用いて説明する。なお、第一実施例と同様の構成については説明を省略する。
【0033】
本発明の第二実施例では、計測温度tsと露点温度T
DPの差が余裕温度TT
DP以上、言
い換えると計測温度tsが目標温度TT以上である場合に発熱抵抗体制御を行わない構成としている。具体的には、計測状態が低温高湿状態(ts
1、Hs
1)のときは、目標温度
TT
1≧計測温度ts
1となり、計測温度ts
1が計測状態に対応する加熱目標温度値TT
1
になるまで発熱抵抗体に通電される。この加熱制御により温度上昇かつ湿度が下がると、
計測状態が発熱抵抗体加熱境界線50を越え、例えば計測状態(ts
2、Hs
2)となり、
目標温度TT
2≦計測温度ts
2となる。この場合、非通電として発熱抵抗体制御を行わな
いようにする。ここで、発熱抵抗加熱境界線50を越えた目標温度TTは、加熱対象の耐熱温度以下に設定される。
【0034】
露点温度よりも湿度検出部を高い温度に加熱すれば結露は防ぐことはできる。しかし、単純に抵抗体に電流を流しておくだけでは高温環境ではさらに湿度検出部を加熱してしまうため、加熱対象の耐熱温度以上への加熱やオーバーヒート、高温による極端な低湿状態となり計測精度が悪化してしまう課題がある。本発明の第二実施例によれば、加熱対象の耐熱温度未満となるよう発熱抵抗体の加熱温度制御をしているため、オーバーヒートや極端な低湿状態を回避することが可能となり、計測精度の悪化を抑制することができる。
【0035】
本発明の第三実施例について
図7を用いて説明する。なお、第一実施例と同様の構成については説明を省略する。
【0036】
本発明の第三実施例では、結露するリスクの高い低温高湿度領域では、余裕温度TT
DPを大きな値とし、加熱量を増加することで結露するリスクを低減している。一方で、結露するリスクの低い領域では余裕温度TT
DPを小さな値とし、消費電力を低減している。
【0037】
本発明の第四実施例について
図7を用いて説明する。なお、第一実施例と同様の構成については説明を省略する。
【0038】
上記に加え加熱する目標温度を混合比と目標とする相対湿度から求めた値とすることで
、あらかじめ到達する温度・相対湿度が予測でき湿度センサ固有に存在する精度や応答性の良い温・湿度領域へ推移させることが可能になり、従来方法の結果と全く同様の結果が低コストで得られる。