【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、式(1)の金属錯体を用いて達成される。
CyAMX(L)
n (1)
式中、
Cyは、シクロペンタジエニルタイプの配位子であり、
Mは、第4族の金属であり;
Aは、式2:
【化1】
[式中、アミジン含有配位子は、イミン窒素原子を介して金属Mに共役結合的に結合されており、Sub1は、それを介してSub1がイミン炭素原子に結合している、第14族原子を含む置換基であり、Sub2は、それを介してSub2がイミン炭素原子に結合している第15族のヘテロ原子を含む置換基である]
で表される、アミジン含有配位子残基であり;
Xは、共役ジエン配位子、D、およびボラン、Bから誘導される、アリルボレート配位子であり、
Lは、中性のルイス塩基配位子であり、ここで前記金属配位子の数「n」は、1から、18電子則を満足させる量までの範囲である。
【0008】
ある種のルイス塩基配位子含有金属錯体が、Cowley et al.,Organometallics,20,177(2001)により公知であるが、それらは単に、分光学的方法およびX線結晶学によって、両性イオン的錯体に対する供与体配位子の配位を研究するためだけに作られた。
【0009】
M
好ましい実施態様においては、第4族の金属Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)、最も好ましくはチタンである。
【0010】
Cy
好ましいシクロペンタジエニルタイプの配位子は、モノもしくはポリ置換されており、ここでその置換基は、ハロゲン、置換もしくは非置換のヒドロカルビル、置換もしくは非置換のヒドロカルビルオキシ、置換もしくは非置換のシリル、および置換もしくは非置換のゲルミル(germyl)残基、並びにアミドおよびホスフィド基からなる群より選択される。可能な置換基は、ハロゲン、アミド、ホスフィド、アルコキシ、またはアリールオキシ残基である。本明細書で使用するとき、「置換されたシクロペンタジエニルタイプの配位子」という用語は、それが慣用されている意味合いを広くカバーしており、すなわち、π型の結合を介して金属に結合され、通常は金属に対してη
5−配位を取っている、5員の炭素環を有する置換された配位子を意味している。
【0011】
したがって、「シクロペンタジエニルタイプ」という用語には、シクロペンタジエニル、インデニル、およびフルオレニルが含まれる。「モノ置換またはポリ置換された」という用語は、シクロペンタジエニル型構造の1個または複数の芳香族水素原子が、1個または複数の他の残基で置換されているという事実を指している。置換基の数は、シクロペンタジエニル配位子では1〜5の間、インデニル配位子では1〜7、フルオレニル配位子では1〜9の間である。
【0012】
シクロペンタジエニル配位子のための置換基の例をリストアップすれば、以下の基が含まれる。ハロゲンとしては、F、Cl、およびBrが挙げられる。
【0013】
置換もしくは非置換のヒドロカルビル基のために好ましいものとしては、以下のものが挙げられる:C
1〜C
20の直鎖状および分岐状のアルキル基、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシル、C
1〜C
20のヒドロカルビル置換されるか非置換の環状脂肪族および多環式脂肪族基、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルシクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、イソプロピルドデシル、アダマンチル、ノルボルニル、トリシクロ[5.2.1.0]デシル;C
1〜C
20のヒドロカルビル置換されるか非置換のアリール基、たとえば、フェニル、メチルフェニル、トリメチルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ナフチル、ブチルフェニル、ブチルジメチルフェニル;C1〜20の置換されたヒドロカルビル基、たとえば、ベンジル、N,N−ジメチルアミノベンジル、N,N−ジメチルアミノメチル、メトキシメチル、ジフェニルホスフィノメチル、フルオロフェニル、トリフルオロメチルフェニル、フルオロメチル、およびシアノエチル。
【0014】
好ましい置換もしくは非置換のシリルおよび置換もしくは非置換のゲルミル残基としては、以下のものが挙げられる:Si−(R
6)
3(ここで、それぞれのR
6は、水素、C
1〜8アルキルまたはアルコキシ基、C
6〜10アリールまたはアリールオキシからなる群より選択される)、特にトリス(トリフルオロメチル)シリルまたはトリス(ペルフルオロフェニル)シリル、ならびに式−Ge−(R
7)
3のゲルミル基(ここで、それぞれのR
7は、水素、C
1〜8アルキルまたはアルコキシ基、C
6〜10アリールまたはアリールオキシ基からなる群より選択される)、たとえば、トリス(トリフルオロメチル)ゲルミル、またはトリス(ペルフルオロフェニル)ゲルミル。
【0015】
好ましい置換もしくは非置換のヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、フェノキシ、メチルチオ、エチルチオ、およびフェニルチオが挙げられる。
【0016】
好ましいアミドおよびホスフィド基としては、非置換であるか、または2個までのC
1〜8アルキル基によって置換されたアミド、および非置換であるか、または2個までのC
1〜8アルキル基で置換されたホスフィド基が挙げられる。
【0017】
好ましい実施態様においては、そのシクロペンタジエニル配位子は、メチル基によって5置換されており、その結果、Cyは、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル、C
5Me
5であり、一般的にはCp
*と呼ばれている。また、好ましい配位子Cyは、その他の非置換もしくは置換されたシクロペンタジエニル基、置換もしくは非置換のインデニル基、置換もしくは非置換のフルオレニル基、置換もしくは非置換のテトラヒドロインデニル基、置換もしくは非置換のテトラヒドロフルオレニル基、置換もしくは非置換のオクタヒドロフルオレニル基、置換もしくは非置換のベンゾインデニル基、置換もしくは非置換のヘテロシクロペンタジエニル基、置換もしくは非置換のヘテロインデニル基、置換もしくは非置換のヘテロフルオレニル基、またはそれらの異性体である。
【0018】
A
本発明の好ましい実施態様は、式(2)のアミジン含有配位子Aを含む、式(1)の金属錯体に関し、式(2)中、Sub1はアリール残基である。そのような好ましいアミジネート含有配位子の典型的な例は、Sub1が、フェニルまたは置換されたフェニル残基、好ましくはナフチル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジクロロフェニル、または2,6−ジフルオロフェニルである、式2で表される。
【0019】
本発明のさらなる実施態様は、Sub1がアルキル残基である式(1)の金属錯体に関する。そのような好ましいSub1の典型的な例は、1〜20個の炭素原子を有し、非置換であるかまたはハロゲン、アミド、シリルもしくはアリール基で置換された、直鎖状、分岐状、または環状のアルキル残基である。そのようなSub1の例は、メチル、ヘキシル、シクロヘキシル、イソプロピル、tert−ブチル、ベンジル、トリフルオロメチル、2,6−ジメチルベンジル、2,6−ジフルオロベンジル、および2,6−ジフルオロフェニルである。
【0020】
本発明のまた別な好ましい実施態様は、Sub2が一般式−NR
4R
5であって、ここでR
4およびR
5が、個々に、脂肪族ヒドロカルビル、ハロゲン化脂肪族ヒドロカルビル、芳香族ヒドロカルビル、およびハロゲン化芳香族ヒドロカルボニル残基の群から選択されている、式(1)の金属錯体に関する。R
4は、場合によっては、R
5またはSub1と共にヘテロサイクリック構造を形成している。Sub2の例は、ジメチルアミド、ジイソプロピルアミド、ビスシクロヘキシルアミド、およびN−ジメチルフェニルN−エチルアミドである。式(1)で表されるアミジネート含有配位子の最も好ましい例は、式(2a)のアミジンをベースとするものである。
【化2】

例としては、以下のものが挙げられる:N,N−ジメチルアセトイミドアミド、N,N−ジイソプロピルアセトイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシルアセトイミドアミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチルアセトイミドアミド、N,N−ジメチルイソブチルイミドアミド、N,N−ジイソプロピルイソブチルイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシルイソブチルイミドアミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチルイソブチルイミドアミド、N,N−ジメチルシクロヘキサンカルボキシイミドアミド、N,N−ジイソプロピルシクロヘキサンカルボキシイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシルシクロヘキサンカルボキシイミドアミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチルシクロヘキサンカルボキシイミドアミド、N,N−ジメチルピバルイミドアミド、N,N−ジイソプロピルピバルイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシルピバルイミドアミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチルピバルイミドアミド、2,2,2−トリフルオロ−N,N−ジメチルアセトイミドアミド、2,2,2−トリフルオロ−N,N−ジイソプロピルアセトイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2,2,2−トリフルオロアセトイミドアミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチル−2,2,2−トリフルオロアセトイミドアミド、2−(フェニル)−N,N−ジメチルアセトイミドアミド、2−(フェニル)−N,N−ジイソプロピルアセトイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−(フェニル)アセトイミドアミド、2−(フェニル)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチルアセトイミドアミド、2−(2,6−ジメチルフェニル)−N,N−ジメチルアセトイミドアミド、2−(2,6−ジメチルフェニル)−N,N−ジイソプロピルアセトイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−(2,6−ジメチルフェニル)アセトイミドアミド、N,2−ビス(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチルアセトイミドアミド、2−(2,6−ジフルオロフェニル)−N,N−ジメチルアセトイミドアミド、2−(2,6−ジフルオロフェニル)−N,N−ジイソプロピルアセトイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−(2,6−ジフルオロフェニル)アセトイミドアミド、2−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチルアセトイミドアミド、N,N−ジメチルベンズイミドアミド、N,N−ジイソプロピルベンズイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシルベンズイミドアミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチルベンズイミドアミド、N,N−ジメチル−1−ナフトイミドアミド、N,N−ジイソプロピル−1−ナフトイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシル−1−ナフトイミドアミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチル−1−ナフトイミドアミド、N,N,2,6−テトラメチルベンズイミドアミド、N,N−ジイソプロピル−2,6−ジメチルベンズイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2,6−ジメチルベンズイミドアミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチル−2,6−ジメチルベンズイミドアミド、2,6−ジフルオロ−N,N−ジメチルベンズイミドアミド、2,6−ジフルオロ−N,N−ジイソプロピルベンズイミドアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2,6−ジフルオロベンズイミドアミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチル−2,6−ジフルオロベンズイミドアミド、2,6−ジクロロ−N,N−ジメチルベンズイミドアミド、2,6−ジクロロ−N,N−ジイソプロピルベンズイミドアミド、2,6−ジクロロ−N,N−ジシクロヘキシルベンズイミドアミド、2,6−ジクロロ−N−(2,6−ジメチルフェニル)−N−エチルベンズイミドアミド。好ましい例は、2,6−ジフルオロ−N,N−ジイソプロピルベンズイミドアミド、およびN,N−ジイソプロピルベンズイミドアミドである。
【0021】
L
Lがエーテル、チオエーテル、アミン、三級ホスファン、イミン、ニトリル、イソニトリル、または二配位(バイデンテート)または複数配位(オリゴデンテート)供与体である式(1)の金属錯体が好ましい。
【0022】
2個以上の配位子Lが存在しているのなら、それらは異なった意味合いを有していてもよい。
【0023】
式(1)の金属錯体中の中性の配位子の数「n」は1から、当業者に公知のように、18電子則を満足させる量までである。好ましくは1〜2である。好ましい実施態様においては、中性配位子の数Lは、1である。
【0024】
好適なエーテルは、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ベラトロール、2−エポキシプロパン、ジオキサン、トリオキサン、フラン、2,5−ジメチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、およびクラウンエーテルである。好適なチオエーテルは、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、チオフェン、およびテトラヒドロチオフェンである。好適なアミンは、たとえば以下のものである:メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、アリルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、トルイジン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピロール、ピペリジン、ピリジン、ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2,6−ジ(t−ブチル)ピリジン、キノリン、およびイソキノリン、好ましくは三級アミンたとえば、トリアルキルアミン、ピリジン、ビピリジン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、および(−)−スパルテイン。好適な三級ホスファンは、トリフェニルホスフィンおよびトリアルキルホスファンである。好適なイミンは、ケチミン、グアニジン、イミノイミダゾリジン、ホスフィンイミン、およびアミジンである。好適な二座配位子は、ジイミン、アルキルもしくはアリールジホスファン、ジメトキシエタンである。好適な多座配位子は、以下のものである:トリイミン(たとえばトリス(ピラゾリル)アルカン)、第13〜17族のヘテロ原子を含む環状多座配位子、たとえば、場合によっては第13〜17族のヘテロ原子を有するクラウンエーテル、場合によっては第13〜17族のヘテロ原子を有するアゾクラウンエーテル、場合によっては第13〜17族のヘテロ原子を有するホスファクラウンエーテル、第15〜16族のヘテロ原子と場合によっては第13〜17族のヘテロ原子との組合せを有するクラウンエーテル、ならびに第14〜17族のヘテロ原子を含むクラウンエーテル、またはそれらの組合せ。
【0025】
好適なニトリルは、式、R
1C≡Nのものであって、ここでR
1は、脂肪族ヒドロカルビル、ハロゲン化脂肪族ヒドロカルビル、芳香族ヒドロカルビル、およびハロゲン化芳香族ヒドロカルボニル残基の群から、個々に選択される。好ましいニトリルは、アセトニトリル、アクリロニトリル、シクロヘキサンジニトリル、ベンゾニトリル、ペンタフルオルベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジブロモベンゾニトリル、4−フルオロ−2−トリフルオロメチル、ベンゾニトリル、3−ピリジンカルボニトリルである。好適なイソニトリルは、式、R
2N≡Cのものであって、ここでR
1は、脂肪族ヒドロカルビル、ハロゲン化脂肪族ヒドロカルビル、芳香族ヒドロカルビル、およびハロゲン化芳香族ヒドロカルボニル残基の群から、個々に選択される。好ましいイソニトリルは、tert−ブチルイソシアニド(
tBuNC)、エチルイソシアノアセテート、p−トルエンスルホニルメチルイソシアニド、およびシクロヘキシルイソシアニド、好ましくはtert−ブチルイソニトリル(
tBuNC)である。
【0026】
好ましい中性のルイス塩基配位子Lとは、t−ブチルイソニトリル(
tBuNC)を意味している。
【0027】
X
好ましい配位子Xは、アリルボレート配位子である。
【0028】
好ましくは、Xは、共役ジエン配位子、Dを含む有機金属前駆体と、ボラン、Bとの反応から誘導される。共役ジエン配位子Dは、s−trans配置(π−結合されている)、またはs−cis配置(π−結合されているかσ−結合されているかの、いずれか)のいずれかで、金属に連結されることができる。X配位子を形成するための前駆体として使用される金属錯体の中では、ジエン配位子の基Dがπ−結合されているのが好ましい。そのような結合タイプは、Yasuda,et al.,Organometallics,1,388(1982)、Yasuda,et al.,Acc.Chem.Res.,18,120(1985)、およびErker,et al.,Adv.Organomet.Chem.,24,1(1985)、さらにはそれらに引用されている文献の技術に従って、X線結晶学によるか、またはNMRスペクトル特性によって、容易に決定できる。「π:−錯体」は、配位子による、電子密度の供与および逆の受容(逆供与)の両方を意味し、これは配位子のπ−軌道を使用して達成される。錯体が、シクロペンタジエニル基を含まない配位子Dを含んでいるのが好ましく、さらにアニオン性基、芳香族π−結合した基も含まないことが好ましい。Xが、C
4〜C
40ジエンである共役ジエン配位子から誘導されているのが好ましく、ここで、その共役ジエンは、ヒドロカルビル、シリル、およびハロゲン化カルビルからなる群より独立して選択される1個または複数の基で場合によっては置換されたC
4〜C
40ジエンである。好適な共役ジエンDの例としては、以下のものが挙げられる:ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン;2,3−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ペンタジエン;1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン;2,4−ヘキサジエン;2,4,5,7−テトラメチル−3,5−オクタジエン;2,2,7,7−テトラメチル−3,5−オクタジエン;1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン;1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン;2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、および1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン。好ましいのは、メチルまたはフェニルで一置換または二置換されている1,3−ブタジエン、特に、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、2,3−ジフェニル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、および1,4−ジメチル−1,3−ブタジエンである。
【0029】
ボラン、Bは、一般式BQ
1Q
2Q
3で表されるホウ素化合物(B1)のいずれかであってよい。
【0030】
一般式BQ
1Q
2Q
3で表されるホウ素化合物(B1)において、Bは、三価の原子価状態にあるホウ素原子であり、Q
1〜Q
3は、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基、または二置換アミノ基であり、それらは同一であっても、異なっていてもよい。Q
1〜Q
3は、好ましくは、ハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、1〜20個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素基、1〜20個の炭素原子を有する置換されたシリル基、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基、または2〜20個の炭素原子を有するアミノ基であり、より好ましくは、Q
1〜Q
3が、ハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、または1〜20個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素基である。さらに好ましくは、Q
1〜Q
3が、少なくとも1個のフッ素原子を含む1〜20個の炭素原子を有するフッ素化炭化水素基であり、特に好ましくは、Q
1〜Q
3が、少なくとも1個のフッ素原子を含む6〜20個の炭素原子を有するフッ素化アリール基である。化合物(B1)の具体例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボランなどが挙げられ、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(B(C
6F
5)
3)が最も好ましい。
【0031】
好ましい式(1)の金属錯体は、以下のものである:
Mが、Tiを意味し、
Cyが、ペンタメチルシクロペンタジエニルを意味し、
Aが、式(2)のアミジン基を意味し、ここで、
Sub1が、非置換もしくは置換フェニルを意味するが、ここで置換基は、ハロゲン、特にClまたはF、およびC
1〜C
4−アルキル、特にメチルが好ましく、
Sub2が、−NR
4R
5を意味するが、ここでR
4およびR
5は、先に挙げた意味合いを有しており、
Xが、非置換もしくは置換1,3−ブタジエン、特に1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、2,3−ジフェニル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、もしくは1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、及び式BQ
1Q
2Q
3のボレート(ここでQ
1〜Q
3は、先に挙げた意味合いを有する)、好ましくはトリス(ペンタフルオロ−フェニル)ボラン(B(C
6F
5)
3)、から誘導されるアリルボレートを意味し、
Lが、tert−ブチルイソニトリルを意味し、nが1を意味している。
【0032】
式(1)の一つの好ましい金属錯体は、次式のものである。
【化3】
【0033】
プロセス
本発明はさらに、本発明による金属錯体を製造するためのプロセスにも関し、そこでは、式(3):
CyAMX (3)
の金属錯体を、ルイス塩基Lと反応させるが、ここで基Cy、A、M、X、およびLは、先に挙げた意味合いを有する。
【0034】
式(3)の金属錯体が、式(4):
CyAMD (4)
[式中、Cy、A、およびMは、請求項8におけるのと同じ意味合いを有し、Dは、共役ジエン、好ましくは先に挙げたものを意味する。]
の金属錯体とボランの反応によって得られるのが好ましい。
【0035】
式(4)の錯体とボラン(ここでボランは、好ましくは先に挙げたBの意味合いを有している)との反応は、好適な溶媒中、常圧、好ましくは0.9bar〜1.1bar、および−80〜80℃の範囲の温度で実施される。より好ましくは、0〜30℃の範囲である。式(4)対ボランのモル比は、好ましくは0.8〜1.5の範囲、最も好ましくは、その比率が0.95〜1.050である。その反応は、水分の不在下で実施するのが好ましい。両性イオン性錯体(3)は、通常直ちに得られる。その反応を、乾燥した不活性ガス、たとえば窒素の雰囲気下で実施するのが好ましい。好適な溶媒としては、脂肪族および芳香族の炭化水素溶媒が挙げられる。錯体(3)は、当業者周知の方法を用いて、減圧下で揮発成分を除去するか、または結晶化させ、次いで濾過によって母液を除去することによって単離することができる。
【0036】
式(4)の金属錯体の中のジエン配位子Dは、式(1a)において示されるように、π−結合した形態またはσ−結合した形態で表すことができる。
【化4】
【0037】
式(1a)において、基R
1〜R
4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、基Dの定義に相当しているのが好ましい。
【0038】
金属錯体(1)は、錯体3を、ルイス塩基、L、特にtert−ブチルイソニトリルと、水分の非存在下で好適な溶媒中で反応させることによって、好適に調製することができる。好適な溶媒としては、脂肪族および芳香族の炭化水素溶媒が挙げられる。その反応を、乾燥した不活性ガス、たとえば窒素の雰囲気下で実施するのが好ましい。錯体(3)対ルイス塩基、Lのモル比は、好ましくは0.8〜1.5の範囲であり、その比率が0.95〜1.05であれば好ましい。
【0039】
錯体(1)は、当業者に周知の方法を用いて、減圧下で揮発分を除去することにより、または結晶化させ、次いで濾過によって母液を除去することにより、単離することができる。
【0040】
本発明はさらに、以下のものを含む触媒系も提供する:
a)本発明による式(1)の金属錯体
および
b)捕捉剤(スカベンジャー)。
【0041】
化合物a)の好ましい金属錯体については先に述べた。捕捉剤は、本発明のプロセス中に存在している、触媒に対して有毒な不純物と反応する化合物である。
【0042】
本発明の好ましい実施態様においては、その触媒系の捕捉剤b)は、第1〜13族の金属またはメタロイドのヒドロカルビルであるか、またはそれと第15族または第16族の原子を含む立体的に込み合った少なくとも1種の化合物との反応生成物である。
【0043】
立体的に込み合った(立体障害のある)化合物の第15族または第16族の原子が、プロトンを有しているのが好ましい。それらの立体障害のある化合物の例としては、以下のものが挙げられる:tert−ブタノール、イソプロパノール、トリフェニルカルビノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルアニリン、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルアニリン、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルアニリン、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、ジイソプロピルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジフェニルアミンなど。捕捉剤のいくつかの非限定的な例としては、ブチルリチウム(その異性体も含む)、ジヒドロカルビルマグネシウム、およびヒドロカルビル亜鉛、ならびにそれらと、立体障害のある化合物または酸、たとえばHF、HCl、HBr、HIとの反応生成物が挙げられる。さらに、以下において定義されるオルガノアルミニウム化合物(E)、特にイソブチルアルミノキサン(IBAO)などのヒドロカルビルアルミノキサンも、捕捉剤b)として使用することができる。
【0044】
本発明の触媒系には、使用した捕捉剤とは別の、活性化剤がさらに含まれていてもよい。
【0045】
シングルサイト触媒のための活性剤は、当業界ではかなり良く知られている。それらの活性剤は、多くの場合、第13族の原子、たとえばホウ素またはアルミニウムを含んでいる。それらの活性剤の例は、Chem.Rev.,2000,100,1391(E.Y−X.Chen and T.J.Marks)に記述されている。好ましい活性化剤は、ボラン(C1)、ボレート(C2、C3)、またはオルガノアルミニウム化合物(E)たとえば、メチルアルミノキサン(MAO)などのアルキルアルミノキサンである。活性化のための共触媒は、好ましくは、以下の(C1)〜(C3)のいずれかのホウ素化合物および/またはオルガノアルミニウム化合物(E)である。オルガノアルミニウム化合物(E)は、捕捉剤および/または共触媒として用いることもできる。
(C1)一般式BQ
1Q
2Q
3で表されるホウ素化合物
(C2)一般式G(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表されるホウ素化合物
(C3)一般式(J−H)(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表されるホウ素化合物。
(ここで、Bは、三価の原子価状態にあるホウ素原子であり、Q
1〜Q
3は、既に先に述べたのと同じ意味合いを有し、Q
4は、基Q
1〜Q
3の一つと同じ意味合いを有し、Q
1〜Q
4は、同一であっても、異なっていてもよい。Gは、無機もしくは有機のカチオンであり、Jは中性のルイス塩基であり、(J−H)は、ブレンステッド酸である。
【0046】
一般式BQ
1Q
2Q
3で表されるホウ素化合物(C1)において、Bは、三価の原子価状態にあるホウ素原子であり、Q
1〜Q
3は、前述の意味合いを有し、同一であっても、異なっていてもよい。
【0047】
化合物(C1)の具体例としては、以下のものが挙げられる:トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニル−ビス(ペンタフルオロフェニル)ボランなど。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが最も好ましい。
【0048】
一般式G(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表されるホウ素化合物(C2)において、G
+は、無機もしくは有機のカチオンであり、Bは、三価の原子価状態にあるホウ素原子であり、Q
1〜Q
4は、先に(C1)においてQ
1〜Q
3について定義されたものである。
【0049】
一般式G(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表される化合物中の無機カチオンGの具体例としては、フェロセニウムカチオン、アルキル置換されたフェロセニウムカチオン、銀カチオンなどが挙げられ、それらの有機カチオンGの具体例としては、トリフェニルメチルカチオンなどが挙げられる。Gは、好ましくはカルベニウムカチオンであり、特に好ましくはトリフェニルメチルカチオンである。
【0050】
(BQ
1Q
2Q
3Q
4)の例としては、以下のものが挙げられる:テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなど。
【0051】
それらの具体的組合せである、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなども挙げられ、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが最も好ましい。
【0052】
一般式(J−H)
+(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表されるホウ素化合物(C3)において、Jは中性のルイス塩基であり、(J−H)はブレンステッド酸であり、Bは三価の原子価状態にあるホウ素原子であり、Q
1〜Q
4は、先にルイス酸(C1)においてQ
1〜Q
4について定義されたものである。
【0053】
一般式(J−H)(BQ
1Q
2Q
3Q
4)で表される化合物中のブレンステッド酸(J−H)
+の具体例としては、トリアルキル置換されたアンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどが挙げられ、(BQ
1Q
2Q
3Q
4)としては、上述したものと同じ化合物が挙げられる。それらの具体的な組合せとしては、以下のものが挙げられる:トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロ−フェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル−フェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロ−フェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタ−フルオロフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが、最も好ましい。
【0054】
金属錯体:活性化助触媒C1〜C3のモル比は、好ましくは(1:10)から(1:0)までの範囲、より好ましくは(1:5)から(1:0)までの範囲、最も好ましくは(1:1)から(1:0)までである。
【0055】
オルガノアルミニウム化合物(E)は、炭素−アルミニウム結合を有するアルミニウム化合物であって、以下の(E1)〜(E3)から選択される1種または複数のアルミニウム化合物が好ましい。
(E1)一般式T
1aAlZ
3−aで表されるオルガノアルミニウム化合物
(E2)一般式{−Al(T
2)−O−}
bで表される構造を有する環状アルミノキサン
(E3)一般式T
3{−Al(T
3)−O−}
cAlT
32で表される構造を有する直鎖状アルミノキサン
(ここで、T
1、T
2、およびT
3のそれぞれは、炭化水素基であり、すべてのT
1、すべてのT
2、およびすべてのT
3がそれぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。Zは、水素原子またはハロゲン原子を表し、すべてのZが、同一であっても、異なっていてもよい。「a」は、0<a≦3を満足する数を表し、「b」は2以上の整数であり、「c」は、1以上の整数である。)
【0056】
E1、E2、またはE3の中の炭化水素基は、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基、より好ましくはアルキル基である。
【0057】
一般式T
1aAlZ
3−aで表されるオルガノアルミニウム化合物(E1)の具体例としては、以下のものが挙げられる:トリアルキルアルミニウム、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムなど;塩化ジアルキルアルミニウム、たとえば、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジプロピルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、塩化ジヘキシルアルミニウムなど;二塩化アルキルアルミニウム、たとえば、二塩化メチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二塩化プロピルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、二塩化ヘキシルアルミニウムなど;水素化ジアルキルアルミニウム、たとえば、水素化ジメチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジプロピルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウムなど。
【0058】
トリアルキルアルミニウムが好ましく、トリエチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムがより好ましい。
【0059】
一般式{−Al(T
2)−O−}
bで表される構造を有する環状アルミノキサンE2および一般式T
3{−Al(T
3)−O−}
cAlT
32で表される構造を有する直鎖状アルミノキサンE3の具体例としては、アルキル基、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基などが含まれる。bは、2以上の整数であり、cは1以上の整数である。T
2およびT
3がメチル基またはイソブチル基を表し、bが2〜40であり、cが1〜40であるのが好ましい。最も好ましくは、T
2およびT
3がイソブチル基を表し、bが2〜40であり、cが1〜40である。
【0060】
上述したアルミノキサンはさまざまな方法で作られる。その方法には特に制限はなく、公知の方法に従ってアルミノキサンを製造することができる。たとえば、トリアルキルアルミニウム(たとえばトリメチルアルミニウムなど)を適切な有機溶媒(ベンゼン、脂肪族炭化水素など)の中に溶解させることによって調製した溶液を、水と接触させることによって、アルミノキサンが生成する。さらには、トリアルキルアルミニウム(たとえば、トリメチルアルミニウムなど)を、結晶水を有する金属塩(たとえば、硫酸銅水和物など)と接触させてアルミノキサンを生成させるという方法も実証されている。
【0061】
用いられた金属錯体(1):捕捉剤b)のモル比は、好ましくは(0.1:1000)から(0.1:10)までの範囲、より好ましくは(0.1:1000)から(0.1:300)までの範囲、最も好ましくは(0.14:600)から(0.14:400)までである。
【0062】
触媒系は、本発明の金属錯体をそのままで含んでいてもよいし、あるいは担持物質の上に担持された形態であってもよい。
【0063】
担持物質とは、その中で本発明のプロセスが実施される不活性な炭化水素溶媒には不溶性である無機もしくは有機の化合物として定義される。好適な無機担体としては、シリカ、ハロゲン化マグネシウム、たとえば、MgF
2、MgCl
2、MgBr
2、MgI
2、ゼオライト、およびアルミナが挙げられる。好適な有機担体としては、ポリマーが挙げられる。ポリマー担体のいくつかの非限定的な例は、ポリオレフィン、たとえば、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびポリエチレン、重縮合物、たとえばポリアミドおよびポリエステル、ならびにそれらの組合せである。
【0064】
本発明はさらに、担持物質の上の式(1)の金属錯体、および場合によっては捕捉剤および/または活性化剤を含む担持触媒にも関する。好ましい担持物質は、先に述べた。
【0065】
重合
本発明はさらに、少なくとも1種のオレフィン性モノマーを重合させることによって、ポリマーを重合させるためのプロセスも提供するが、それには前記モノマーを式(1)の金属錯体と接触させることが含まれる。
【0066】
重合のための好ましいプロセスは、一般的に、少なくとも1種のオレフィン性モノマーを、式(1)の金属錯体または本発明による触媒系と、気相中、スラリー中、または、不活性な溶媒、好ましくは炭化水素溶媒中の溶液中で接触させることによって実施される。好適な溶媒は、気相中、スラリー中、または、不活性な溶媒、好ましくは炭化水素溶媒中の溶液中にある。好適な溶媒は、C
5〜12炭化水素、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、それらの異性体および混合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタメチルヘプタン、および水素化ナフサである。本発明のプロセスは、作られる生成物に応じて、10〜250℃の温度で実施することができる。
【0067】
オレフィン性モノマーとは、少なくとも1個の重合可能な二重結合を含む分子であると理解されたい。
【0068】
好適なオレフィン性モノマーは、C
2〜20オレフィンである。好ましいモノマーとしては、以下のもの挙げられる:エチレン、ならびに非置換であるか、または2個までのC
1〜6アルキル基によって置換されたC
3〜12アルファオレフィン、非置換であるか、またはC
1〜4アルキル基からなる群より選択される2個までの置換基で置換されたC
8〜12ビニル芳香族モノマー、ならびに非置換であるか、またはC
1〜4アルキル基によって置換された、C
4〜12直鎖状または環状ヒドロカルビル基。そのようなα−オレフィンの説明のための非限定的な例として、以下のものが挙げられる:プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、および12−エチル−1−テトラデセン。これらのα−オレフィンを組み合わせて使用することも可能である。
【0069】
モノマーは、少なくとも2個の二重結合を有するポリエンであってもよい。それらの二重結合は、鎖、環構造、またはそれらの組合せの中で、共役であっても、非共役であってもよく、またそれらは、環内(エンドサイクリック)であっても、および/または環外(エキソサイクリック)であってもよく、さらに異なった量およびタイプの置換基を有していてもよい。このことは、そのポリエンが、少なくとも1個の、脂肪族、脂環族、もしくは芳香族の基、またはそれらの組合せを含んでいてよいということを意味している。
【0070】
好適なポリエンとしては、脂肪族ポリエンおよび脂環族ポリエンが挙げられる。より具体的には、脂肪族ポリエンとしては、たとえば以下のものが挙げられる:1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、1,8−ノナジエン、5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8−デカジエン、1,9−デカジエン、1,5,9−デカトリエン、6−メチル−1,6−ウンデカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエン、および1,13−テトラデカジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン。
【0071】
脂環族ポリエンは、少なくとも1個の環状のフラグメントからなっていてよい。これら脂環族ポリエンの例としては、以下のものが挙げられる:ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、2,5−ノルボルナジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロペンタン、1,5−ジビニルシクロオクタン、1−アリル−4−ビニルシクロ−ヘキサン、1,4−ジアリルシクロヘキサン、1−アリル−5−ビニルシクロオクタン、1,5−ジアリルシクロオクタン、1−アリル−4−イソプロペニルシクロヘキサン、1−イソプロペニル−4−ビニルシクロヘキサン、および1−イソプロペニル−3−ビニルシクロペンタン、および1,4−シクロヘキサジエン。好ましいポリエンは、少なくとも1個の環内二重結合と、場合によっては少なくとも1個の環外二重結合とを有するポリエン、たとえば、5−メチレン−2−ノルボルネン、および5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、および2,5−ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、およびビニルシクロヘキセンである。
【0072】
芳香族ポリエンの例は、ジビニルベンゼン(その異性体も含む)、トリビニルベンゼン(その異性体も含む)、およびビニルイソプロペニルベンゼン(その異性体も含む)である。
【0073】
上述のモノマーはいずれも、第13〜17族のヘテロ原子、またはそれらの組合せを含む少なくとも1個の基で、さらに置換されていてもよい。
【0074】
ホモポリマー、2種以上の上述のオレフィン性モノマーに基づくコポリマー、ならびにそれらのブレンド物は、本発明プロセスを用いて調製することができる。
【0075】
好ましい実施態様においては、エチレン、少なくとも1種のC
3〜12アルファオレフィン、好ましくはプロピレン、ならびに少なくとも1種の非共役ジエン、好ましくは5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、およびビニルシクロヘキセンからなる群、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよび5−ビニルノルボルネンからなる群からのジエンに基づくコポリマーが、本発明の金属錯体を用いて作られる。
【0076】
本発明はさらに、本発明の金属錯体または本発明の触媒系を用いて得ることが可能なポリマーにも関する。以下において、以下の実施例および比較実験に基づいて本発明を説明するが、それらに限定される訳ではない。