(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243535
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】解剖学的構造のモデルベースのセグメンテーション
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20171127BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20171127BHJP
G06T 3/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B5/05 380
G06T3/00 770
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-537440(P2016-537440)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2017-500102(P2017-500102A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2014076169
(87)【国際公開番号】WO2015086368
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年3月15日
(31)【優先権主張番号】13196453.8
(32)【優先日】2013年12月10日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】グロート,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ニキッシュ,ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,フランク ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーゼ,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】バルシュドルフ,ハンス
【審査官】
増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−501201(JP,A)
【文献】
特表2012−531649(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0303328(US,A1)
【文献】
国際公開第2009/095837(WO,A2)
【文献】
国際公開第2014/125715(WO,A1)
【文献】
Daniel R. Einstein, et al.,Fluid-Structure Interactions of the Mitral Value and left Heart:Comprehensive Strategies, past, Present and Future,INTERNATIONAL JOURNAL FOR NUMERICAL METHODS IN BIOMEDICAL ENGINEERING,2010年 3月,vol. 26, No. 3-4,348-380,ISSN:2040-7939
【文献】
Andrew P. Kuprat, et al.,An anisotropic scale-inbariant unstructured mesh generator suitable for volumetric imaging data,JOURNAL OF COMPUTATIONAL PHYSICS,2009年 2月,vol. 228, no. 3,619-640
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 6/00−6/14
G06T 1/00
G06T 3/00
G06T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサシステムによって実行される方法であって、当該方法は、
医用画像内の解剖学的構造をセグメンテーションするための変形可能モデルを生成するステップであって、前記解剖学的構造は、第1の表面層及び第2の表面層を持つ壁を有するステップと、
前記変形可能モデルを前記解剖学的構造に適用して前記解剖学的構造をセグメンテーションするステップと
を有し、
前記変形可能モデルを生成するステップは、
モデルベースのセグメンテーションにおいて前記壁の前記第1の表面層に適用される第1の表面メッシュを提供することと、
前記モデルベースのセグメンテーションにおいて前記壁の前記第2の表面層に適用される第2の表面メッシュを提供することと、
前記モデルベースのセグメンテーションにおいて前記第1の表面層と前記第2の表面層との間に適用される中間層メッシュを生成することであり、当該生成することは、前記中間層メッシュの少なくとも一部のメッシュトポロジーを、双方の表面メッシュのうちの選択された一方の解剖学的に対応する部分のメッシュトポロジーにマッチングし、それにより整合するメッシュトポロジーを確立することを有し、当該生成することは、前記選択された表面メッシュの前記部分を複製して前記中間層メッシュの前記一部を得ることを有する、生成することと、
前記第1の表面メッシュ、前記第2の表面メッシュ、及び前記中間層メッシュを規定するモデルデータを生成することであり、当該モデルデータを生成することは、前記選択された表面メッシュの元ノードと前記中間層メッシュの複製ノードとの間の対応を規定し、それにより複数のノード対を確立することを有する、モデルデータを生成することと
を有し、
前記モデルデータの前記生成は更に、望ましくないメッシュ状態にペナルティを科すエネルギー関数を最小化することを有し、
前記エネルギー関数のエネルギー項は、a)前記表面メッシュと前記中間層メッシュとの間のエッジ長さの逸脱、b)前記複製ノードの前記元ノードの法線からの空間的な逸脱、及びc)中間層メッシュエッジの成長を計算に入れ、
前記セグメンテーションするステップは、前記第1の表面層に前記第1の表面メッシュを適用し、前記第2の表面層に前記第2の表面メッシュを適用し、且つ前記第1の表面層と前記第2の表面層との間に前記中間層メッシュを適用することを有する、
方法。
【請求項2】
前記モデルデータの前記生成は更に、前記ノード対の前記元ノードと前記複製ノードとの間の距離を規定することを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モデルデータの前記生成は更に、
前記ノード対の第1のサブセットに対して第1組の距離を与えることと、
前記第1組の距離を補間することによって、前記ノード対の第2のサブセットに関する第2組の距離を得ることと
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ノード対の前記元ノードと前記複製ノードとの間の前記対応に基づいて、前記中間層メッシュと前記選択された表面メッシュとの間に立体メッシュを生成すること、を更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記壁の前記第1の表面層と前記第2の表面層との間に適用される1よりも多い個数の中間層メッシュを生成すること、を更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記個数は、ユーザからの入力、前記壁の生体構造、及び前記医用画像の空間分解能からなる群のうちの少なくとも1つに基づいて定められる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中間層メッシュは、前記壁の解剖学的な中間層、及び人為的に規定された層からなる群のうちの1つに適用されるために生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の表面メッシュ及び前記第2の表面メッシュのうちの一方を提供することと、
前記第1の表面メッシュ及び前記第2の表面メッシュのうちの残りの一方を生成することであり、当該生成することは、双方の表面メッシュの解剖学的に対応し合う部分について整合するメッシュトポロジーを確立することを有する、生成することと、
を更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プロセッサシステムに請求項1に記載の方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラム。
【請求項10】
変形可能モデルを医用画像内の解剖学的構造に適用するシステムであって、前記解剖学的構造は、第1の表面層及び第2の表面層を持つ壁を有し、当該システムは、
前記変形可能モデルを規定するモデルデータを有したデータストレージと、
前記変形可能モデルを前記医用画像内の前記解剖学的構造に適用するように構成された処理サブシステムと
を有し、
前記モデルデータは、
モデルベースのセグメンテーションにおいて前記壁の前記第1の表面層に適用される第1の表面メッシュと、
前記モデルベースのセグメンテーションにおいて前記壁の前記第2の表面層に適用される第2の表面メッシュと、
前記モデルベースのセグメンテーションにおいて前記第1の表面層と前記第2の表面層との間に適用される中間層メッシュであり、当該中間層メッシュの少なくとも一部が、双方の表面メッシュのうちの選択された一方の解剖学的に対応する部分のメッシュトポロジーと整合するメッシュトポロジーを有し、それにより整合するメッシュトポロジーを確立しており、当該中間層メッシュは、前記選択された表面メッシュの前記部分を複製して当該中間層メッシュの前記一部を得ることによって生成される、中間層メッシュと
を有し、
前記モデルデータは、前記選択された表面メッシュの元ノードと前記中間層メッシュの複製ノードとの間の対応を規定し、それにより複数のノード対を確立することによって生成され、
前記モデルデータは、望ましくないメッシュ状態にペナルティを科すエネルギー関数を最小化することによって生成され、前記エネルギー関数のエネルギー項は、a)前記表面メッシュと前記中間層メッシュとの間のエッジ長さの逸脱、b)前記複製ノードの前記元ノードの法線からの空間的な逸脱、及びc)中間層メッシュエッジの成長を計算に入れ、
前記処理サブシステムは、前記変形可能モデルを前記解剖学的構造に適用して前記解剖学的構造をセグメンテーションするように構成されている、
システム。
【請求項11】
前記処理サブシステムは、
前記医用画像の画像データの関数として規定される外部エネルギー項を有する最適化に基づいて、前記第1の表面メッシュを前記解剖学的構造の前記第1の表面層に適用し、且つ前記第2の表面メッシュを前記解剖学的構造の前記第2の表面層に適用し、且つ
前記最適化における内部エネルギー項の使用、及び前記適用された表面メッシュのうちの一方に対する前記中間層メッシュの相対位置を指し示すデータ、からなる群のうちの1つに基づいて、前記中間層メッシュを前記壁の前記第1の表面層と前記第2の表面層との間に適用する
ことによって、前記変形可能モデルを前記解剖学的構造に適用するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像内で解剖学的構造をセグメンテーションするための変形可能モデルを生成する方法に関する。本発明は更に、その方法によって取得可能なモデルデータに関する。本発明は更に、医用画像内の解剖学的構造に変形可能モデルを適用するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像内の様々な解剖学的構造のロバストな自動セグメンテーションは、臨床ワークフローを改善することを可能にする鍵である。ここでは、セグメンテーション(セグメント化)なる用語は、例えば、解剖学的構造の境界線の輪郭描写による、あるいは境界線によって包囲されるボクセル群のラベル付けによる、医用画像内の解剖学的構造の識別を意味する。このようなセグメンテーションを実行すると、例えば心臓構造の場合の心室重量、駆出率、及び壁厚さなどの、臨床パラメータを抽出することができる。従って、自動セグメンテーションは、スキャンから診断までの時間を有意に短縮することができ、故に、臨床医がいっそう効率的な患者マネジメントを確立することの助けとなり得る。
【0003】
変形可能モデルを用いて医用画像内の解剖学的構造をセグメンテーションすることが知られている。このようなタイプのセグメンテーションは、モデルベースのセグメンテーションとも称される。変形可能モデルは、モデルデータによって規定され得る。特に、モデルデータは、解剖学的構造の幾何学構成を、例えば三角形の多区画(マルチコンパートメント)メッシュの形態で規定し得る。このような変形可能モデルの各部分にアフィン変換を割り当てることによって、患者間及び位相間の形状多様性が効率的にモデル化され得る。アフィン変換は、平行移動、回転、異なる座標軸に沿った拡大縮小、及び剪断をカバーする。また、変形可能モデルの異なる部分間の遷移におけるアフィン変換の補間によって、メッシュ規則性が維持され得る。なお、このようなタイプの変形可能モデルは、平均形状モデルとも称される。
【0004】
医用画像の画像データへの変形可能モデルの適用は、メッシュ適応化とも称され、変形可能モデルを画像データに適応させる助けとなる外部エネルギー項と、変形可能モデルの硬さを維持する内部エネルギー項とに基づき得るエネルギー関数を最適化することを伴い得る。
【0005】
上述のタイプの変形可能モデルは、そのようなモデルを医用画像内の解剖学的構造に適用する方法として、それ自体は既知である。
【0006】
例えば、“Automatic Model-based Segmentation of the Heart in CT Images”なるタイトルの非特許文献1は、3次元(3D)コンピュータ断層撮影(CT)画像からの心臓(4つの心室、心筋、及び大血管)の自動セグメンテーションに関するモデルベースのアプローチを記載している。そこでは、モデル適応化は、収束性及びセグメンテーション精度を向上させるために可能な変形の自由度を高めながら漸進的に行われている。一般化されたハフ変換の3D実装を用いて、先ず、心臓が画像内で位置特定される。大域的な掃除変換を利用してモデルを画像にマッチングすることによって、姿勢のミスアライメントが補正される。そして、モデルの各解剖学的領域にアフィン変換を割り当てることによって、多区画メッシュの複合的な初期化が対処される。最後に、患者の生体構造の境界に正確に整合するように、変形可能適応化(デフォーマブルアダプテーション)が実行される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】O.Ecabert等,“Automatic Model-based Segmentation of the Heart in CT Images”,IEEE Transactions on Medical Imaging,2008年,27(9),pp.1189-1201
【発明の概要】
【0008】
既知の変形可能モデルの1つの問題は、それらのモデルは、そのような解剖学的構造の壁の詳細なセグメンテーションを提供することに十分には適していないことである。ここでは、用語‘壁’は、1つ以上の解剖学的なレイヤを持つ層状構造を意味する。そのような層状構造の例は、心臓壁、腹壁などを含む。
【0009】
解剖学的構造の壁のいっそう詳細なセグメンテーションを提供する変形可能モデルを有することが有利となる。
【0010】
この関心事により十分に対処するため、本発明の第1の態様は、医用画像内の解剖学的構造をセグメンテーションするための変形可能モデルを生成する方法を提供し、上記解剖学的構造は、第1の表面層及び第2の表面層を持つ壁を有し、当該方法は、
モデルベースのセグメンテーションにおいて上記壁の上記第1の表面層に適用される第1の表面メッシュを提供することと、
上記モデルベースのセグメンテーションにおいて上記壁の上記第2の表面層に適用される第2の表面メッシュを提供することと、
上記モデルベースのセグメンテーションにおいて上記第1の表面層と上記第2の表面層との間に適用される中間層メッシュを生成することであり、当該生成することは、上記中間層メッシュの少なくとも一部のメッシュトポロジーを、双方の表面メッシュのうちの選択された一方の解剖学的に対応する部分のメッシュトポロジーにマッチングし、それにより整合するメッシュトポロジーを確立することを有し、当該生成することは、上記選択された表面メッシュの上記部分を複製して上記中間層メッシュの上記一部を得ることを有する、生成することと、
上記第1の表面メッシュ、上記第2の表面メッシュ、及び上記中間層メッシュを規定するモデルデータを生成することと
を有する。
【0011】
本発明の更なる一態様は、変形可能モデルを規定するモデルデータを提供し、上記変形可能モデルは、医用画像内の解剖学的構造をセグメンテーションするために構成され、上記解剖学的構造は、第1の表面層及び第2の表面層を持つ壁を有し、当該モデルデータは、
モデルベースのセグメンテーションにおいて上記壁の上記第1の表面層に適用される第1の表面メッシュと、
上記モデルベースのセグメンテーションにおいて上記壁の上記第2の表面層に適用される第2の表面メッシュと、
上記モデルベースのセグメンテーションにおいて上記第1の表面層と上記第2の表面層との間に適用される中間層メッシュであり、当該中間層メッシュの少なくとも一部が、双方の表面メッシュのうちの選択された一方の解剖学的に対応する部分のメッシュトポロジーと整合するメッシュトポロジーを有し、それにより整合するメッシュトポロジーを確立している中間層メッシュと
を有する。
【0012】
本発明の更なる一態様は、変形可能モデルを医用画像内の解剖学的構造に適用するシステムを提供し、上記解剖学的構造は、第1の表面層及び第2の表面層を持つ壁を有し、当該システムは、
上記変形可能モデルを規定するモデルデータを有したデータストレージと、
上記変形可能モデルを上記医用画像内の上記解剖学的構造に適用するように構成された処理サブシステムと
を有する。
【0013】
以上の手段は、例えば器官やその一部などの解剖学的構造に対する変形可能モデルの生成及び適用を伴う。解剖学的構造は、医用画像の画像データによって表現される。そのような医用画像は、典型的に患者のものであり、以下に限られないが例えばCTや磁気共鳴(MR)撮像などの撮像モダリティを用いて取得され得る。解剖学的構造は、1つ以上の解剖学的レイヤを持つ層状構造をした壁を有する。そのような壁の例は、心臓壁、腹壁、脳内の灰白質/白質壁などである。変形可能モデルは、2つの表面層すなわち第1の表面層及び第2の表面層を有する壁に適用されるように構成される。例えば、心臓壁の場合、表面層は、心臓壁の外側表面層である心外膜と、心臓壁の内側表面層である心内膜である。
【0014】
変形可能モデルは、以下のように生成される。壁のそれぞれの表面層に適用される2つの表面メッシュが提供される。このような表面メッシュは、例えば先述の非特許文献1に記載されているような既知の手法で生成されることができ、あるいはその他の好適な既知技術によって生成され得る。このような表面メッシュを提供することはまた、例えば、以前に生成された変形可能モデルから、トレーニングアルゴリズムから、ユーザ制御によるモデル生成からなど、外部ソースからそれらを取得することを伴い得る。結果として、表面層の各々に対して表面メッシュが得られる。このようなメッシュは典型的に、それぞれの表面メッシュのノード(ポイントとも称される)と、ノード間の相互接続とを有する。メッシュの例は、三角形メッシュ、四角形メッシュ、及びその他のタイプの多角形メッシュを含む。このようなタイプのメッシュはそれ自体、コンピュータグラフィックスの分野から知られており、モデルベースの画像セグメンテーションに使用されるとき、医療分野からも知られている。
【0015】
本発明によれば、少なくとも1つの中間層メッシュが生成される。中間層メッシュは、壁の内側表面層と外側表面層との間で医用画像の画像データに適用されるように構成され、それにより、壁のボリューム内に中間層を構築する。中間層メッシュは、メッシュトポロジーが表面メッシュのうちの一方のそれと少なくとも部分的に整合するようにして生成される。ここでは、用語‘メッシュトポロジー’は、少なくとも、i)ノード数、及びii)それら相互間の相互接続、すなわち、どのノードがどのノードに接続されるかによって提供される構造を意味し得る。この構造は、必ずしもそうである必要はないが、同様の系上のノード群、すなわち、それらの相対位置を表す。表面メッシュ及び中間層メッシュの解剖学的に対応し合う部分の間で、メッシュトポロジーが整合する。そのような解剖学的に対応し合う部分は、典型的に、壁に沿った同じ又は同様の位置によって表される。
【0016】
中間層メッシュを生成すると、第1の表面メッシュと、第2の表面メッシュと、中間層メッシュとを規定するモデルデータが生成される。このようなモデルデータは、変形可能モデルをコンピュータ読み取り可能に規定したものを表現し、例えば半導体メモリや磁気ディスク若しくは光ディスクなどのコンピュータ読み取り可能媒体に格納され得る。モデルデータを生成すると、第1の表面メッシュを壁の第1の表面層に適用し、第2の表面メッシュを第2の表面層に適用し、そして、中間層メッシュを第1の表面層と第2の表面層との間に適用することによって、変形可能モデルが医用画像内の解剖学的構造に適用され得る。
【0017】
本発明は、医療応用分野での心臓セグメンテーションに由来する洞察に基づく。ここで、心臓セグメンテーションモデルは典型的に、心臓表面のみをセグメンテーションするシングルレイヤモデルである。左の心室及び心房に関してのみ、左心室の心内膜及び心外膜の双方をセグメンテーションすることができる所謂ダブルレイヤモデルが利用可能である。例えば、瘢痕情報などの空間的に分布した機能情報の保管のために、立体メッシュが必要な場合、心内膜と心外膜との間の4面体メッシュが含められる。立体メッシュは、例えばtetgen(http://tetgen.berlios.de/)などのメッシュ化ツールによって構築され得るが、例えば4面体の半径−エッジ比などの、特定の限られた品質制約をもたらす。
【0018】
不利なことに、現行の立体メッシュは、心臓壁の実際の構成を反映するものでもなければ、最小深さ精度での瘢痕情報の記憶を可能にするものでもない。ここでは、用語‘深さ精度’は、壁を横切る変形可能モデルの空間分解能を意味する。後者の問題は、現行のメッシュ化方法が、内側心臓表面と外側心臓表面との間の途中に、或る一定の最低限の数の4面体を保証しないという事実に由来する。しかしながら、瘢痕情報は、4面体ごとに二値的(瘢痕又は非瘢痕)に記憶される。故に、最悪ケースの状況では、壁深さの全体が、かねてより50%の貫壁性で瘢痕を指し示す単一の4面体によって表現されてしまう。
【0019】
本発明者は更に、このような問題がその他の解剖学的構造のセグメンテーションでも等しく起こり得ることを認識した。本発明はこれらの問題を、モデルベースのセグメンテーションにおいて第1の表面層と第2の表面層との間に適用される中間層メッシュを有する変形可能モデルを提供することによって解決する。中間層メッシュは、中間層メッシュの少なくとも一部のメッシュトポロジーが表面メッシュのうちの一方の解剖学的に対応する部分のメッシュトポロジーと整合するようにして生成される。これにより、更なるメッシュ化ステップ及び可視化に有用な、変形可能モデルにおける規則性が確立される。すなわち、メッシュのトポロジーにおける規則性が、例えば形状やメッシュ間の距離における不規則性などの、適用後のメッシュのその他の様相における規則性の欠如を、自動的に視覚的に強調する。そのような不規則性は解剖学的異常と頻繁に結び付けられ、それによって、ユーザがより少ない認識負担でそのような異常を検出することが可能になる。有利なことに、変形可能モデルは、壁の構成により良く整合し、それにより、いっそう正確なセグメンテーションを提供する。心臓セグメンテーションの場合、これは、より高い深さ精度で瘢痕情報が保管されること、及び最小深さ精度が保証されることを可能にする。
【0020】
オプションで、中間層メッシュの生成は、上記選択された表面メッシュの上記部分を複製して上記中間層メッシュの上記一部を得ることを有する。選択された表面メッシュの部分を複製することにより、中間層メッシュと選択された表面メッシュとの間に整合するメッシュトポロジーが確立されることが確保される。有利なことに、中間層メッシュの一部が効率的に生成される。
【0021】
オプションで、モデルデータの生成は、上記選択された表面メッシュの元ノードと上記中間層メッシュの複製ノードとの間の対応を規定し、それにより複数のノード対を確立することを有する。選択された表面メッシュの部分を複製することにより、選択された表面メッシュの部分の元ノードの各々に対して中間層メッシュの複製ノードが存在するので、メッシュトポロジーがどのように整合するかが分かる。ここでは、用語‘元’(‘オリジナル’)は、複製のソースすなわちソースノードを意味する。従って、このような対応を規定するデータを容易に生成することができる。
【0022】
オプションで、モデルデータの生成は更に、上記ノード対の上記元ノードと上記複製ノードとの間の距離を規定することを有する。故に、中間層メッシュは当初、選択された表面メッシュから或る特定の距離に位置するように生成される。
【0023】
オプションで、当該方法は更に、
上記ノード対の第1のサブセット(部分集合)に対して第1組の距離を与えることと、
上記第1組の距離を補間することによって、上記ノード対の第2のサブセットに関する第2組の距離を得ることと
を有する。
【0024】
全てのノード対に関して直接的に距離を規定する代わりに、最初に、ノード対のサブセットに対してのみ距離が規定され、そして、残りのノード対に関する距離が補間によって生成される。例えば、それぞれのメッシュ(の一部)を粗くカバーするようにノード対の第1のサブセットを選択することができ、そして、第1のサブセットのノード対の間に混ぜて、ノード対の第2のサブセットを分布させ得る。
【0025】
オプションで、当該方法は更に、上記ノード対の上記元ノードと上記複製ノードとの間の上記対応に基づいて、上記中間層メッシュと上記選択された表面メッシュとの間に立体(ボリューム)メッシュを生成することを有する。それぞれのノード対の対応に基づいて立体メッシュを生成することにより、選択された表面メッシュと中間層メッシュとの間の整合するメッシュトポロジーが考慮に入れられるので、立体メッシュが明確に規定される。例えば、上記対応が立体メッシュのエッジとして使用され得る。結果として、中間層メッシュと選択された表面メッシュとの間の空洞(キャビティ)の少なくとも一部を充たすとともに規則性を示す立体メッシュが得られる。なお、2つ以上の中間層メッシュが生成される場合、この立体メッシュが、1つの空洞に関して生成され、その後に、その他の空洞すなわち中間層メッシュ同士間に適用されるように複製され得る。
【0026】
オプションで、当該方法は更に、上記壁の上記第1の表面層と上記第2の表面層との間に適用される1よりも多い個数の中間層メッシュを生成することを有する。2つ以上の中間層メッシュを生成することにより、2つ以上の解剖学的中間層及び/又は人為的規定層にフィットするように変形可能モデルが生成される。有利なことに、複数の中間層メッシュを生成することにより、変形可能モデルの空間分解能が高められ、それにより、いっそう高い深さ精度が提供される。
【0027】
オプションで、上記個数は、ユーザからの入力、上記壁の生体構造、及び上記医用画像の空間分解能からなる群のうちの少なくとも1つに基づいて定められる。ユーザは、中間層メッシュの個数を直接的に選択し、あるいは個数に間接的に影響を及ぼし得る。個数はまた、例えば双方の表面層間の実際の解剖学的レイヤの数を反映するように、壁の生体構造によって決定されてもよい。個数はまた、医用画像の空間分解能によって決定されてもよく、それにより考慮されることは、より高い空間分解能は、解剖学的中間層のいっそう良好な撮像を提供し、それ故に、より多くの中間層メッシュが壁の画像データにフィッティングされることを可能にするということである。
【0028】
オプションで、上記中間層メッシュは、上記壁の解剖学的な中間層、及び人為的に規定された層からなる群のうちの1つに適用されるために生成される。従って、中間層メッシュは、壁の実際の解剖学的中間層にフィットするように構成されてもよいし、そうではなく、人為的に規定された層を表現してもよい。このような人為的規定層は、そこに実際の解剖学的中間層が存在しないにも拘わらず、あるいは、そのような解剖学的中間層が医用画像内で不十分にしか見えていないために直接的にセグメンテーションされるのに適していないにも拘わらず、壁を横切る変形可能モデルの空間分解能を高めるものであり、これは更なる処理に有利であり得る。
【0029】
オプションで、当該方法は更に、
上記第1の表面メッシュ及び上記第2の表面メッシュのうちの一方を提供することと、
上記第1の表面メッシュ及び上記第2の表面メッシュのうちの残りの一方を生成することであり、当該生成することは、双方の表面メッシュの解剖学的に対応し合う部分について整合するメッシュトポロジーを確立することを有する、生成することと
を有する。
【0030】
従って、一方の表面メッシュが提供され、そして、提供された表面メッシュに基づいて、中間層メッシュと他方の表面メッシュとが生成される。例えば、外側表面メッシュが提供され、そして、外側表面メッシュの一部又は全てを複製することによって、中間層メッシュと内側表面メッシュとが生成され得る。有利なことに、表面メッシュ同士も、整合するメッシュトポロジーを有する。
【0031】
オプションで、当該方法は更に、中間層メッシュと選択された表面メッシュとにおける整合するメッシュトポロジーを、壁の実質的に全ての連続する部分に対して確立することを有する。従って、壁の不連続の位置を除いて、中間層メッシュと選択された表面メッシュとの間でメッシュトポロジーが整合する。そのような不連続は、例えば壁の中を走る血管といった、解剖学的な理由を有することがあり、また、不規則な形状を持つ壁をもたらし得る。従って、整合するメッシュトポロジーをそのような不連続の位置又はその付近で確立することが、不可能であったり、望ましくなかったりすることがある。
【0032】
オプションで、上記システムにおいて、上記処理サブシステムは、
上記医用画像の画像データの関数として規定される外部エネルギー項を有する最適化に基づいて、上記第1の表面メッシュを上記解剖学的構造の上記第1の表面層に適用し、且つ上記第2の表面メッシュを上記解剖学的構造の上記第2の表面層に適用し、且つ
上記最適化における内部エネルギー項の使用、及び上記適用された表面メッシュのうちの一方に対する上記中間層メッシュの相対位置を指し示すデータ、からなる群のうちの1つに基づいて、上記中間層メッシュを上記壁の上記第1の表面層と上記第2の表面層との間に適用する
ことによって、上記変形可能モデルを上記解剖学的構造に適用するように構成される。
【0033】
中間層メッシュを適用するこの手法は、壁の解剖学的中間層が不十分にしか見えなかったり、あるいは実際には全く存在しなかったりし得ることを考慮に入れている。そうであっても、内部エネルギー項を使用することにより、あるいは適用された表面メッシュのうちの一方に対する中間層メッシュのノードの相対的エンコーディングにより、壁の双方の表面層の間に中間層メッシュを適用することができる。
【0034】
要約するに、医用画像内の解剖学的構造をセグメンテーションするための変形可能モデルを生成する方法が提供される。この解剖学的構造は壁を有する。変形可能モデルは、2つの表面メッシュに加えて、壁の第1の表面層と壁の第2の表面層との間に適用される中間層メッシュを有するように生成される。中間層メッシュを生成する際、中間層メッシュの少なくとも一部のメッシュトポロジーが、表面メッシュのうちの一方のメッシュトポロジーにマッチングされ、それにより整合するメッシュトポロジーが確立される。生成される変形可能モデルは、このような壁の構成にいっそう十分に整合し、それによりいっそう正確なセグメンテーションを提供する。
【0035】
当業者によって理解されるように、本発明の上述の実施形態、実装、及び/又は態様のうちの2つ以上が、有用と思われる如何なる手法で組み合わされてもよい。
【0036】
記載された方法の変更及び変形に対応した、システム及び/又はコンピュータプログラムプロダクトの変更及び変形が、本記載を基礎として、当業者によって実行され得る。
【0037】
当業者が理解するように、本発明は、以下に限られないが例えば、標準的なX線撮像、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴撮像(MRI)、超音波(US)、陽電子放出型トモグラフィ(PET)、単一光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)、及び核医学(NM)などの、様々なアクイジションモダリティによって収集される多次元画像データ(例えば、2次元(2D)、3次元(3D)、又は4次元(4D)画像)に適用され得る。
【0038】
本発明が独立項にて規定される。有利な実施形態が従属項にて規定される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明のこれら及びその他の態様が、以下に記載される実施形態を参照して明らかになる。図面は以下の図を含む。
【
図1】医用画像内の解剖学的構造をセグメンテーションするための変形可能モデルを生成するシステムを示しており、このシステムはまた、例として、変形可能モデルを医用画像の画像データに適用するようにも構成されている。
【
図2】医用画像内の解剖学的構造をセグメンテーションするための変形可能モデルを規定するモデルデータを生成する方法を示している。
【
図3】変形可能モデルを規定するモデルデータを有するコンピュータ読み取り可能媒体を示しており、モデルデータは上記方法によって取得可能である。
【
図4】上記方法及び/又はシステムによって生成されるような変形可能モデルの断面を示しており、この変形可能モデルは、第1の表面メッシュと、第2の表面メッシュと、これら双方の表面メッシュ間にある中間層メッシュとを有している。
【
図5】変形可能モデルを生成する手法を例示しており、ノード対のサブセットに対して一組の距離を得るために補間が用いられている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、医用画像内の解剖学的構造をセグメンテーションするための変形可能モデルを生成するシステムと、変形可能モデルを医用画像内の解剖学的構造に適用するシステムとを示している。例として、
図1は、単一のシステム100が双方の機能を提供することを示している。しかしながら、理解されるように、実際には、双方の機能が分離されてもよく、すなわち、相異なるシステムによって実行されてもよい。
【0041】
先ず、変形可能モデルを生成することを参照するに、システム100は処理サブシステム140を有することができ、処理サブシステム140は、
i)モデルベースのセグメンテーションにおいて壁の第1の表面層に適用される第1の表面メッシュを提供し、
ii)モデルベースのセグメンテーションにおいて壁の第2の表面層に適用される第2の表面メッシュを提供し、且つ
iii)モデルベースのセグメンテーションにおいて第1の表面層と第2の表面層との間に適用される中間層メッシュを生成し、この生成は、中間層メッシュの少なくとも一部のメッシュトポロジーを、双方の表面メッシュのうちの選択された一方の解剖学的に対応する部分のメッシュトポロジーにマッチングし、それにより整合するメッシュトポロジーを確立する、
ように構成され得る。
【0042】
図1には示していないが、第1の表面メッシュ及び第2の表面メッシュは、例えば、以前に生成された変形可能モデルから、トレーニングアルゴリズムから、ユーザ制御によるモデル生成からなど、外部ソースから取得され得る。
【0043】
上述のステップを実行して、処理サブシステム140は、第1の表面メッシュと、第2の表面メッシュと、中間層メッシュとを規定するモデルデータ162を生成し得る。
図1は、データストレージ160に格納されたモデルデータ162を示している。データストレージ160は、システム100の内部コンポーネントであるように示されており、例えば、ハードディスクなどのディスクベースのデータストレージや、ROM若しくはRAMメモリなどの半導体ベースのデータストレージなどによって構成され得る。それに代えて、データストレージ160は、例えば、外部データベース、又はストレージインタフェースを介してシステム100によってアクセスされるリムーバブル(脱着可能)記憶媒体などの、外部コンポーネントによって構成されてもよい。データストレージ160にモデルデータ162を格納するため、処理サブシステム140は、メッセージ142の交換を介してデータストレージ160と通信するように示されている。
【0044】
次に、変形可能モデルの適用を参照するに、システム100は、変形可能モデルを医用画像内の解剖学的構造に適用するように構成された処理サブシステム140を有し得る。その目的のため、処理サブシステム140は、例えば先述のメッセージ142の交換を介して、変形可能モデルを規定するモデルデータ162をデータストレージ160から取り出し得る。また、処理サブシステム140は、画像インタフェース120を介して医用画像042を取り出し得る。例えば、医用画像042は、データベース040から取り出され得る。データベース040は、システム100が接続されるか含まれるかし得る病院情報システム(HIS)の画像保管通信システム(PACS)で構成され、あるいはその一部とされ得る。画像データの形態をした医用画像042を取得して、処理サブシステム140は、変形可能モデルを医用画像内の解剖学的構造に適用し得る。従って、解剖学的構造のセグメンテーションが得られ、それが更なる処理に使用され得る。例えば、機能情報が計算されて記憶され得る。
【0045】
なお、システム100の動作、特に、変形可能モデルを生成する機能については、例として左心室を含む
図4及び5を参照して、更に詳細に説明する。
【0046】
図2は、医用画像内の解剖学的構造をセグメンテーションするための変形可能モデルを生成する方法200を示している。方法200は、
図1のシステムの動作に対応することができ、ここでは、変形可能モデルを生成するための上記システムの構成を参照する。しかしながら、理解されるように、方法200はまた、例えば異なるシステム又は装置を用いて、上記システムとは別に実行されてもよい。
【0047】
方法200は、“第1の表面メッシュを提供する”と題する第1のステップにて、モデルベースのセグメンテーションにおいて壁の第1の表面層に適用される第1の表面メッシュを提供すること(210)を有する。方法200は更に、“第2の表面メッシュを提供する”と題する第2のステップにて、モデルベースのセグメンテーションにおいて壁の第2の表面層に適用される第2の表面メッシュを提供すること(220)を有する。方法200は更に、“中間層メッシュを提供する”と題する第3のステップにて、モデルベースのセグメンテーションにおいて第1の表面層と第2の表面層との間に適用される中間層メッシュを生成すること(230)を有し、この生成は、中間層メッシュの少なくとも一部のメッシュトポロジーを、双方の表面メッシュのうちの選択された一方の解剖学的に対応する部分のメッシュトポロジーにマッチングし、それにより整合するメッシュトポロジーを確立することを有する。方法200は更に、“モデルデータを生成する”と題する第4のステップにて、第1の表面メッシュと、第2の表面メッシュと、中間層メッシュとを規定するモデルデータを生成すること(240)を有する。理解されるように、最初の3つのステップは、如何なる好適な順序で実行されてもよく、例えば、連続して、同時に、あるいはこれらの組み合わせで実行され得る。
【0048】
図3は、
図2の方法から取得され得るようなモデルデータ262を有するコンピュータ読み取り可能媒体260を示している。モデルデータ262は、例えば異なる電気的若しくは光学的特性を持つ一連の機械読み取り可能な物理的マーク及び/又は要素として、コンピュータ読み取り可能媒体260上に非一時的な手法で有され得る。
【0049】
変形可能モデルの生成について、以下に更に詳細に説明する。ここでは、人間の心臓の左心室をセグメンテーションするための変形可能モデルが生成される。しかしながら、これは限定ではなく、このようなタイプの変形可能モデルは、その他の種類の解剖学的構造に対しても類似の手法で生成され得る。
【0050】
心臓は、層状構造である心臓壁を有し、心臓壁は、心内膜、心筋、及び心外膜と呼ばれる3つの組織層で構成されている。心内膜又は内側層は、血液が困難なく流れることを可能にする平滑筋の薄い層である。心筋又は中間層は、筋肉層であり、心臓壁のうちの最も厚い層である。心外膜は、心臓の外側層である。左心室の場合、心筋それ自体が、表在(心外膜下)層、中間層、及び深(心内膜下)層という、心筋鎖の長手方向の整列に従った3つの層からなる。重要なことには、これらの層は、貫壁的に心筋鎖の向きにおける変化を表す。表在層は、壁厚さのおよそ25%を占有し、中間層は、心室壁厚さのおよそ53−59%を占有し、基部近くで最も厚く、心尖部に向かって薄くなっていく。深層は、最も薄い層であり、壁厚さの<20%を占める。左心房は、心筋を2つの異なる層とした同様の構造を持つ。
【0051】
様々な種類の心臓介入において医師を支援するために、電気機械シミュレーションが実行され得る。典型的に、正確な電気機械シミュレーションを得るためには、心臓壁の正確なモデル化が必要とされる。
【0052】
図4は、本発明に従って生成されるような3次元(3D)変形可能モデル300の2次元(2D)断面を示している。変形可能モデル300は、左心室の内側表面層すなわち心内膜に適用される内側表面メッシュ320を有している。変形可能モデル300は更に、左心室の外側表面層すなわち心外膜に適用される外側表面メッシュ360を有している。さらに、変形可能モデル300は、モデルベースのセグメンテーションにおいて第1の表面層と第2の表面層との間に適用される中間層メッシュ340を有している。従って、中間層メッシュ340は、心筋の層のうちの1つに適用されるために生成され得る。
図4は更に、それぞれのメッシュのノード322、342、362を示しており、これらのノードは、それぞれのメッシュを形成するようにエッジを介して相互接続されるように示されている。
【0053】
図4には示していないが、本発明に従って生成される変形可能モデル300はまた、複数の中間層メッシュを有していてもよい。例えば、第1の中間層メッシュが、心筋の表在層に適用されるために提供され、第2の中間層メッシュが、心筋の中間層に適用されるために提供され、そして、第3の中間層メッシュが、心筋の深層に適用されるために提供され得る。
【0054】
中間層メッシュ340は、中間層メッシュ340と表面メッシュ320、360の少なくとも一方との解剖学的に対応し合う部分の間に整合(マッチング)するメッシュトポロジーを確立するように生成される。
図4の例において、表面層メッシュ320、360及び中間層メッシュ340は、全てのメッシュ320、340、360が同数のノードを有し、同じ相互接続を有し、且つ同様の相対位置を有するという点で、整合するトポロジーを有するように示されている。特に、これらのメッシュトポロジーは、壁の実質的に全ての連続部分で整合しているとし得る。それに代えて、メッシュトポロジーは、それぞれのメッシュの特定の解剖学的対応部分400でのみ整合してもよい。
【0055】
図5は、変形可能モデル300を生成する具体的な一手法を例示している。ここでは、中間層メッシュ340は、内側表面メッシュ320すなわち心内膜メッシュの少なくとも一部を複製することによって生成されている。特に、心筋(の或る層)に適用される中間層メッシュ340を得るため、関心ある心臓部分の、例えば左心室又は左心房の、表面メッシュの一方320が複製され、新たな中間層メッシュ340に関して、元(オリジナル)の表面メッシュ320まで所望の距離が得られるように、膨らまされ得る。中間層メッシュの境界において、例えば、動脈及び静脈の流入及び流出の弁平面において、表面メッシュ320のメッシュノード322、324及び新たな中間層メッシュ340が、心筋に関する空洞(キャビティ)が得られるように結び付けられ得る。メッシュをともに結び付けることは、それぞれのノード対(各ノード対の第1のノードとしての、選択された表面メッシュ320の元ノード322、324と、各ノード対の第2のノードとしての、新たな中間層メッシュ340の複製ノード342)の間の対応380−384を規定することを伴い得る。例えば、対応は、同じ位置、すなわち、ゼロの距離を指し示し得る。他の例では、双方のノードが、双方のメッシュの単一の(連結)ノードによって置き換えられてもよい。
図5は、ノード対420を、元ノード322及び複製ノード342を包囲する破線の楕円によって例示している。対応380−384は、各ノード対の元ノード322と複製ノード342との間の距離によって構成されることができ、あるいは、該距離を追加で規定し得る。
【0056】
元の表面メッシュ320までの新たな中間層メッシュ340の距離の計算のため、数学分野でそれ自体は既知の、放射基底関数(radial basis function;RBF)を用いた補間が使用され得る。RBF φ(x)は、φ(x,c)=φ(||x−c||)であるように、その値が中心点cからの距離のみに依存する実数値関数である。よく知られたRBFは、ガウス関数φ(r)=exp(−(εr)
2)、多重二乗関数、逆二乗関数、逆多重二乗関数、多重調和スプライン関数、及び薄板スプライン関数である。
【0057】
RBFを用いた補間では、N個のベースノードの組x
b322が規定され得る。これらのベースノード322は、
図5に、塗りつぶされた(黒色の)菱形として示されており、表面メッシュ320と新たな中間層340との間に所望の距離h
b380がそれらに対して与えられるような、表面メッシュ320の選択されたノードとすることができ、例えば、解剖学的な制約から導出され、空間分解能要件から導出され、あるいはユーザによって任意に選択され得る。補間ノードx324は、
図5に、塗りつぶされていない(白色の)菱形324として示されている。これらの補間ノード324では、表面メッシュ320と中間層340との間の距離h(x)は、前もっては分かっておらず、RBF補間によって決定されなければならないとし得る。従って、h(x)は、ベースノードx
b,iから補間ノードxまでの距離を考慮に入れて、N個の重み付けられたRBF(ここでは、ガウス関数)の重ね合わせ:
【0059】
式(1)において、w
iは、各RBF及びi番目のベースノード322と補間ノードx324との間の距離d(x
b,i,x)384の重み係数である。なお、d(x
b,i,x)384は、デカルト座標においてではなく、メッシュトポロジーに沿って計算され得る。この目的のため、例えば、高速マーチングアルゴリズムが使用され得る。
【0060】
N個全てのベースノードx
b,iに対し、式(1)は線形方程式系:
【0061】
【数2】
を形成し、重み係数w
iは未知数である。この方程式系を解くため、非可逆行列を回避するように正則化が使用され得る。
【0062】
重み係数w
iの計算後、各補間ノード324について、式(1)に従って距離h(x)が決定され得る。表面ノードが、複製ノード342を得るために複製され、そして、それらの法線に沿って補間距離h(x)に従って平行移動されて、新たな中間層メッシュ340を形成する。新たな中間層メッシュ340の補間後、複数の異なる後処理ステップが実行され得る:
1) 高さh
bについて負値を回避する、又は最小高さを確保する。
2)
図5に、塗りつぶされていない(白色の)星形として示す、表面メッシュ320及び新たな中間層メッシュ340のメッシュ境界における境界ノード326がともに結び付けられることを確保する。なお、これは、解剖学的な要件というよりも、人為的なものであり得る。境界の近隣において補間値からの最小の逸脱を得るために、RBF補間において高さh
b=0を持つベースノードとして境界ノードを含めることの代わりに、この要件が後処理ステップとして導入され得る。
3) 例えば重なり合い又はメッシュ交差を排除するような、補間によって生じた中間層メッシュ340の形状誤差を消去するための平滑化。
【0063】
ステップ1)及び2)を実行するため、所謂ソフトマックス関数を用いた後処理が使用され得る。例えばsoftmax(hp,h
min)=log(e
hp+e
hmin)といったソフトマックス関数は、通常のマキシマム関数とは対照的に、連続的な遷移を提供する。ステップ1)を実行する別の1つの可能性は、RBF補間に先立って、ベースノードの所与の距離h
bから最小距離を減算しておき、補間後に再び、各補間ノード及び全てのベースノードに最小距離を加算するものである。ステップ3)を実行する1つの可能性は、望ましくないメッシュ状態にペナルティを科すエネルギー関数を最小化することによる、全てのノード位置の微調整とし得る。エネルギー項は、例えば、表面メッシュ320と新たな中間層メッシュ340との間のエッジ長さの逸脱、表面メッシュノード322、324の法線からの中間層ノード342の空間的逸脱、及び中間層エッジの成長を概して考慮に入れ得る。オプションのステップにて、中間層メッシュ340と表面メッシュ320との間及び/又はその他の中間層メッシュ間の空洞が、4面体/立体メッシュを得るようにメッシュ化され得る。好適なメッシュ化ツールは、例えば、tetgen(http://tetgen.berlios.de/)である。全てのメッシュ層の相等しいメッシュトポロジーに起因して、手作業でのメッシュ化も可能である。
【0064】
変形可能モデルを患者データに適応させるため(すなわち、変形可能モデルを患者の医用画像の画像データに適用するため)、以下の2つのアプローチのうちの一方が使用され得る:
1) モデル適応化において、心筋の心内膜境界及び心外膜境界が、外部エネルギー項(これ自体はモデルベースのセグメンテーションから既知である)を介して、画像内の視認可能な心臓境界に対してフィッティングされ得る。中間層(画像内で視認可能でない場合)は、単に内部エネルギーを介して調整され得る。
2) モデル適応化において、心筋の心内膜境界及び/又は心外膜境界のみが画像に対して適応され得る。その後、後処理ステップにて、残りの中間メッシュ層が、適応化された表面メッシュに対する中間層ノードの相対的エンコーディングを用いて構築される。
【0065】
第1のアプローチの一具体例は以下とし得る。生成された変形可能モデルを用いて、モデルベースのセグメンテーションのための階層モデルが構築され得る。ここでは、階層モデルの各階層が、変形可能サブモデル(部分モデル)と、その適応化を操るパラメータファイルとで構成され得る。階層モデルの下位階層においては、画像データ内の視認可能な解剖学的構造に対応するメッシュのみを有する変形可能サブモデルが使用され得る。生成された変形可能モデルは、各メッシュ三角に割り当てられ得るラベル情報(例えば、‘中間層1’、‘中間層2’、‘LA心外膜’、‘LA心内膜’など)を活用することによって、そのようなサブモデルに分離され得る。例えば、‘LA心外膜’及び‘LA心内膜’に対応する表面メッシュが選択され得る。適応化を操るため、心臓セグメンテーションに関する典型的なパラメータ及び値を有するパラメータファイルが使用され、アフィン変換による転換可能な適応化にて内部エネルギー項及び外部エネルギー項が用いられ得る。次の高位の階層において、変形可能サブモデルが、(全体の)生成された変形可能モデルで置き換えられ得る。例えばノードの対応リストを介してなどの、メッシュのリンク付けにより、先に適応化されたメッシュの全てが、画像セグメンテーションから得られる形状を保つことができ、階層モデルのこの階層において変形不可能としてマーク付けされ得る。そして、その他全ての(中間)メッシュ層が、内部エネルギー項のみを用いて補間され得る。すなわち、外部エネルギー項に関する重み係数が、パラメータファイル内でゼロにされ得る。
【0066】
第2のアプローチの一具体例は以下とし得る。変形可能モデルが後処理ステップで使用され得る。ここでは、第1のアプローチの具体例においてのように、画像データ内の視認可能な解剖学的構造に対応するメッシュのみを有する変形可能サブモデルが生成され得る。そして、心臓セグメンテーションに関する通常のパラメータ値を用いたモデルベースのセグメンテーションが実行され得る。後処理ステップにて、その他の(中間)メッシュ層が、これらのメッシュ層の、適応された表面メッシュに対する相対的エンコーディングを用いることによって適用され得る。相対的エンコーディングは、グローバル座標の代わりに、適応された表面メッシュに対するローカル座標を使用し得る。そのエンコーディング機構の詳細な記述は、H.Nickisch等の“From Image to Personalized Cardiac Simulation:Encoding Anatomical Structures into a Model-Based Segmentation Framework”,STACOM,2012年に見出すことができる。
【0067】
なお、概して、中間層メッシュはまた、医用画像の画像データの関数として規定される外部エネルギー項を有する最適化に基づいて適用され得る。これは特に、対応する中間の解剖学的レイヤが画像データ内で明瞭に視認できる場合に当てはまる。
【0068】
なお、
図4において、内側表面メッシュ320と外側表面メッシュ360との間のメッシュトポロジーも、整合するメッシュトポロジーを持っている。これは、最初に表面メッシュのうちの一方、例えば、外側表面メッシュ360を提供し、そして、中間層メッシュ340と同一又は同様の手法で内側表面メッシュ320を生成することによって取得され得る。例えば、外側表面メッシュ360の内側の全てのレイヤが順次に生成され得る。これは、変形可能モデルに更なる規則性を与える。
【0069】
理解されるように、本発明はまた、本発明を実施に移すように適応された、特にはキャリア上又は中のコンピュータプログラムであるコンピュータプログラムにも適用される。プログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、コード中間ソース、及び部分的にコンパイルされた形態などのオブジェクトコードの形態、又は本発明に従った方法の実装での使用に適したその他の形態を取り得る。やはり理解されるように、そのようなプログラムは、数多くの異なる構造設計を有し得る。例えば、本発明に従った方法又はシステムの機能を実装するプログラムコードは、1つ以上のサブルーチンへと細分され得る。これらのサブルーチン間で機能を配分する数多くの異なる手法が、当業者に明らかになる。これらのサブルーチンは、自己完結型プログラムを形成するように、1つの実行可能ファイル内にまとめて格納され得る。そのような実行可能ファイルは、例えばプロセッサ命令及び/又はインタープリタ命令(例えば、Java(登録商標)インタープリタ命令)といった、コンピュータ読み取り可能命令を有し得る。他の例では、これらのサブルーチンのうちの1つ以上又は全てが、少なくとも1つの外部ライブラリファイルに格納されて、静的又は動的(例えば、ランタイムに)の何れかでメインプログラムとリンク付けられ得る。メインプログラムは、サブルーチンのうちの少なくとも1つへの少なくとも1つの呼び出し(コール)を含む。サブルーチンはまた、互いへの関数呼び出しを有し得る。コンピュータプログラムプロダクトに関する一実施形態は、ここに説明された方法のうちの少なくとも1つ方法の各処理段階に対応するコンピュータ実行可能命令を有する。これらの命令は、サブルーチンに細分され、且つ/或いは静的又は動的にリンク付けられ得る1つ以上のファイルに格納され得る。コンピュータプログラムプロダクトに関する他の一実施形態は、ここに説明されたシステム及び/又はプロダクトのうちの少なくとも1つのシステム及び/又はプロダクトの各手段に対応するコンピュータ実行可能命令を有する。これらの命令は、サブルーチンに細分され、且つ/或いは静的又は動的にリンク付けられ得る1つ以上のファイルに格納され得る。
【0070】
コンピュータプログラムのキャリアは、プログラムを担持することが可能な如何なるエンティティ又は装置であってもよい。例えば、キャリアは、例えばCD−ROM若しくは半導体ROMといったROM、又は例えばハードディスクといった磁気記録媒体などの、データストレージを含み得る。また、キャリアは、電気ケーブル若しくは光ケーブルを介して、あるいは電波若しくはその他の手段によって伝達され得る例えば電気信号又は光信号などの伝送可能なキャリアとし得る。プログラムがそのような信号で具現化されるとき、キャリアは、そのようなケーブル又はその他の装置若しくは手段によって構成され得る。他の例では、キャリアは、プログラムが内蔵される集積回路とすることができ、集積回路は、関連する方法を実行するように適応され、あるいは関連する方法の実行に使用される。
【0071】
なお、上述の実施形態は、本発明を限定するものではなく例示するものであり、当業者は、添付の請求項の範囲を逸脱することなく数多くの代替実施形態を設計することができるであろう。請求項において、括弧内に置かれた如何なる参照符号も、請求項を限定するものとして解されるべきでない。動詞“有する”及びその活用形の使用は、請求項に述べられるもの以外の要素又は段階の存在を排除するものではない。要素の前にある冠詞“a”又は“an”は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。本発明は、幾つかの異なる要素を有するハードウェアによって、また、好適にプログラムされたコンピュータによって実装され得る。幾つかの要素を列挙する装置クレームにおいて、それらの手段のうちの幾つかが、1つの同じハードウェア品目によって具現化されてもよい。特定の複数の手段が相互に異なる従属項に記載されているという単なる事実は、それらの手段の組合せが有利に使用され得ないということを指し示すものではない。