特許第6243546号(P6243546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243546先行する期間に基づくオフライングルコースレベル制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243546
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】先行する期間に基づくオフライングルコースレベル制御
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20120101AFI20171127BHJP
   A61B 5/145 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G06Q50/22
   A61B5/14 310
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-548643(P2016-548643)
(86)(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公表番号】特表2017-511911(P2017-511911A)
(43)【公表日】2017年4月27日
(86)【国際出願番号】US2015012861
(87)【国際公開番号】WO2015116524
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2016年9月14日
(31)【優先権主張番号】61/933,996
(32)【優先日】2014年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】301069856
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】ダミアーノ, エドワード アール.
(72)【発明者】
【氏名】エル−カティーブ, フィラス エイチ.
【審査官】 大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−516735(JP,A)
【文献】 特表2014−500051(JP,A)
【文献】 特開2007−312923(JP,A)
【文献】 特表2008−545454(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0031786(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0125241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
A61B 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコースレベル制御システムであって、
対象のグルコースレベルを連続的に測定し、対応するグルコースレベル信号を生成するよう作動するグルコースセンサと、
インスリン用量制御信号に応答して、前記対象にインスリンを注入するよう作動するインスリン送達デバイスと、
オンライン作動及びオフライン作動を有して、前記インスリン用量制御信号を生成して前記対象における正常血糖を達成及び維持するコントローラであって、前記オンライン作動は、(i)制御アルゴリズムの制御パラメータと、前記グルコースセンサを介したグルコースレベルの通常の周期的なサンプリングとに基づくインスリンの補正用量の通常の投与すること、及び(ii)前記制御パラメータを自律的に調整して、前記制御パラメータを前記対象に対して調整すること、を含む前記制御アルゴリズムを使用し、前記オフライン作動は、(iii)グルコースレベルのサンプリングなしで、また前記インスリンの補正用量の自動投与なしで、前記制御アルゴリズムの状態を経時的に展開させること、及び(iv)補正投与作動(複数)であって、それぞれが、前記コントローラに提供された単独のグルコース測定値に応答して、インスリンの補正用量を投与することを含む、補正投与作動を含み、前記補正用量を、前記単独のグルコース測定値と、前記制御パラメータと、前記補正投与作動時に展開された前記制御アルゴリズムの状態とに基づいて前記コントローラにより計算するコントローラと、
を備える、グルコースレベル制御システム。
【請求項2】
前記制御アルゴリズムが通常の周期的なサンプリング区間を使用して、前記オフライン作動中に前記制御アルゴリズムを展開させることが、前記対象に以前に投与されたインスリンの時間効果を更新することを含む、請求項1に記載のグルコースレベル制御システム。
【請求項3】
前記オフライン作動中の各補正用量が、現在の単独のグルコース測定値と直近のオンライン作動期間からのグルコースレベルのサンプルとの間の補間を用いて、直に先行するオフラインサンプリング区間に関して見積もられるグルコースレベルを計算することを含む、請求項2に記載のグルコースレベル制御システム。
【請求項4】
前記補正用量が、オンライン作動中に想定される第二の目標グルコースレベル又は範囲よりも高い第一の目標グルコースレベル又は範囲を想定して、前記オフライン作動中に前記コントローラによって計算される、請求項1に記載のグルコースレベル制御システム。
【請求項5】
前記単独のグルコース測定値が、前記対象により使用されるユーザインターフェースを介して前記コントローラに提供され、各補正投与作動が、(i)前記補正用量が送達されるべきことを前記対象が確認すること、(ii)前記対象に前記補正用量の値を表示すること、(iii)前記コントローラにより計算される前記補正用量の代わりに、前記対象からの修正値を前記補正用量として使用することを許容すること、から選択される一つ以上のユーザインターフェース機能の使用を含む、請求項1に記載のグルコースレベル制御システム。
【請求項6】
前記制御アルゴリズムのオンライン作動が、更に、前記制御アルゴリズムの前記制御パラメータ及び前記通常の周期的なグルコースレベルのサンプリングに基づく逆調節剤の補正用量の通常の投与を含み、前記オフライン作動が、更に、逆調節剤投与作動(複数)であって、それぞれが、前記コントローラに提供された単独のグルコース測定値に応答し、かつ前記単独のグルコース測定値、前記制御パラメータ、及び前記逆調節剤投与作動の時に展開された前記制御アルゴリズムの状態に基づいて前記コントローラにより計算された逆調節剤の用量の投与を含む、逆調節剤投与作動を含む、請求項1に記載のグルコースレベル制御システム。
【請求項7】
前記インスリンの補正用量が、逆調節送達チャネル又はデバイスが入手可能な際に想定される第二の目標グルコースレベル又は範囲よりも高い第一の目標グルコースレベル又は範囲を想定して、逆調節送達チャネル又はデバイスが入手不可能な際の期間中に前記コントローラによって計算される、請求項6に記載のグルコースレベル制御システム。
【請求項8】
前記オンライン作動及びオフライン作動の両方において、前記制御アルゴリズムが、前記対象がマイクロバースト又は臨時追加用量の逆調節剤を放出することを可能にし、前記マイクロバースト又は臨時追加用量の値は、前記コントローラによって計算される、請求項1に記載のグルコースレベル制御システム。
【請求項9】
前記制御アルゴリズムのオンライン作動が、(v)食事用量制御入力に応答した、また、先行する食事用量と、前記グルコースセンサを介したグルコースレベルの前記サンプリングに反映される、前記対象の対応する食事及び食後応答とに基づいて、前記コントローラによって自動的に計算されたインスリンの食事用量の投与すること、及び(vi)食事用量の量を決定するのに使用される制御パラメータを自律的に調整して、前記制御パラメータを前記対象に対して調整すること、を含み、オフライン作動が、食事投与作動(複数)であって、それぞれが、前記食事用量制御入力に応答した、また、前記単独のグルコース測定値と、前記制御パラメータと、前記食事投与作動の時に展開された前記制御アルゴリズムの状態と、に基づいて前記コントローラにより計算されたインスリンの食事用量の投与を含む、食事投与作動を含む、請求項1に記載のグルコースレベル制御システム。
【請求項10】
グルコースセンサ及びインスリン送達デバイスを備えるグルコースレベル制御システムの作動方法であって、前記グルコースセンサが、対象のグルコースレベルを連続的に測定して対応するグルコースレベル信号を生成するよう作動し、前記インスリン送達デバイスが、インスリン用量制御信号に応答して前記対象にインスリンを注入するよう作動し、前記方法が:
(i)制御アルゴリズムの制御パラメータと、前記グルコースセンサを介したグルコースレベルの通常の周期的なサンプリングとに基づくインスリンの補正用量の通常の投与すること、及び(ii)前記制御パラメータを自律的に調整して、前記制御パラメータを前記対象に対して調整すること、を含む前記制御アルゴリズムを使用するオンライン作動を行うことと、
(iii)グルコースレベルのサンプリングなしで、また前記インスリンの補正用量の自動投与なしで、前記制御アルゴリズムの状態を経時的に展開させること、及び(iv)それぞれが、コントローラに提供された単独のグルコース測定値に応答したインスリンの補正用量の投与を含む補正投与作動(複数)であって、前記補正用量が、前記単独のグルコース測定値と、前記制御パラメータと、前記補正投与作動の時に展開された前記制御アルゴリズムの状態と、に基づいて前記コントローラにより計算される補正投与作動と、を含むオフライン作動を行うことと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記制御アルゴリズムが通常の周期的なサンプリング区間を使用して、前記オフライン作動中に前記制御アルゴリズムを展開させることが、前記対象に以前に投与されたインスリンの時間効果を更新することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記オフライン作動中の各補正用量が、現在の単独のグルコース測定値と直近のオンライン作動期間からのグルコースレベルのサンプルとの間の補間を用いて、直に先行するオフラインサンプリング区間に関して見積もられたグルコースレベルを計算することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記補正用量が、オンライン作動中に想定される第二の目標グルコースレベル又は範囲よりも高い第一の目標グルコースレベル又は範囲を想定して、前記オフライン作動中に前記コントローラによって計算される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記単独のグルコース測定値が、前記対象により使用されるユーザインターフェースを介して前記コントローラに提供され、各補正投与作動が、(i)前記補正用量が送達されるべきことを前記対象が確認すること、(ii)前記対象に前記補正用量の値を表示すること、(iii)前記コントローラにより計算される前記補正用量の代わりに、前記対象からの修正値を前記補正用量として使用することを許容すること、から選択される一つ以上のユーザインターフェース機能の使用を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記制御アルゴリズムのオンライン作動が、更に、前記制御アルゴリズムの前記制御パラメータ及び前記通常の周期的なグルコースレベルのサンプリングに基づく逆調節剤の補正用量の通常の投与を含み、前記オフライン作動が、更に、逆調節剤投与作動(複数)であって、それぞれが、前記コントローラに提供された単独のグルコース測定値に応答し、かつ前記単独のグルコース測定値、前記制御パラメータ、及び前記逆調節剤投与作動の時に展開された前記制御アルゴリズムの状態に基づいて前記コントローラにより計算された逆調節剤の補正用量の投与を含む、逆調節剤投与作動を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記インスリンの補正用量が、前記逆調節送達チャネル又はデバイスが入手可能な際に想定される第二の目標グルコースレベル又は範囲よりも高い第1の目標グルコースレベル又は範囲を想定して、逆調節送達チャネル又はデバイスが入手不可能な際の期間中に前記コントローラによって計算される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記オンライン作動及びオフライン作動の両方において、前記制御アルゴリズムが、前記対象がマイクロバースト又は臨時追加用量の逆調節剤を放出することを可能にし、前記マイクロバースト又は臨時追加用量の値は、前記コントローラによって計算される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記制御アルゴリズムの前記オンライン作動が、(v)食事用量制御入力に応答した、また、先行する食事用量と、前記グルコースセンサを介したグルコースレベルの前記サンプリングに反映される、前記対象の対応する食事及び食後応答とに基づいて、前記コントローラによって自動的に計算されたインスリンの食事用量の投与すること、及び(vi)食事用量の量を決定するのに使用される制御パラメータを自律的に調整して、前記制御パラメータを前記対象に対して調整すること、を含み、オフライン作動が、食事投与作動(複数)であって、それぞれが、前記食事用量制御入力に応答した、また、前記単独のグルコース測定値と、前記制御パラメータと、前記食事投与作動の時に発展された前記制御アルゴリズムの状態と、に基づいて前記コントローラにより計算されたインスリンの食事用量の投与を含む、食事投与作動を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
グルコースレベル制御システムであって、
対象のグルコースレベルを連続的に測定し、対応するグルコースレベル信号を生成するよう作動するグルコースセンサと、
インスリン用量制御信号に応答して、前記対象にインスリンを注入するよう作動するインスリン送達デバイスと、
オンライン作動及びオフライン作動を有して、前記インスリン用量制御信号を生成して前記対象における正常血糖を達成及び維持するコントローラであって、前記オンライン作動は、(i)食事用量制御入力に応答した、また、先行する食事用量と、前記グルコースセンサを介したグルコースレベルのサンプリングに反映される、前記対象の対応する食事及び食後応答とに基づいて、前記コントローラによって自動的に計算されたインスリンの食事用量の投与すること、及び(ii)食事用量の量を決定するのに使用される制御パラメータを自律的に調整して、前記制御パラメータを前記対象に対して調整すること、を含む制御アルゴリズムを使用し、前記オフライン作動は、(iii)グルコースレベルのサンプリングなしで、前記制御アルゴリズムの状態を経時的に展開させること、及び(iv)食事投与作動(複数)であって、それぞれが、前記食事用量制御入力に応答した、また、単独のグルコース測定値と、前記制御パラメータと、前記食事投与作動の時に発展された前記制御アルゴリズムの状態と、に基づいて前記コントローラにより計算されたインスリンの食事用量の投与を含む、食事投与作動を含む、前記コントローラと、
を備える、グルコースレベル制御システム。
【請求項20】
前記制御アルゴリズムの前記オンライン作動が、更に、(i)前記制御アルゴリズムの制御パラメータと、前記グルコースセンサを介したグルコースレベルの通常の周期的なサンプリングとに基づくインスリンの補正用量の通常の投与すること、及び(ii)前記制御パラメータを自律的に調整して、前記制御パラメータを前記対象に対して調整すること、を含み、前記オフライン作動が、更に、(iii)グルコースレベルのサンプリングなしで、また前記インスリンの補正用量の自動投与なしで、前記制御アルゴリズムの状態を経時的に展開させること、及び(iv)補正投与作動(複数)であって、それぞれが、前記コントローラに提供された単独のグルコース測定値に応答して、インスリンの補正用量を投与することを含む、補正投与作動を含み、前記補正用量は、前記単独のグルコース測定値と、前記制御パラメータと、前記補正投与作動の時に発展された前記制御アルゴリズムの状態とに基づいて前記コントローラにより計算される、請求項19に記載のグルコースレベル制御システム。
【請求項21】
グルコースセンサ及びインスリン送達デバイスを備えるグルコースレベル制御システムの作動方法であって、前記グルコースセンサが、対象のグルコースレベルを連続的に測定して対応するグルコースレベル信号を生成するよう作動し、前記インスリン送達デバイスが、インスリン用量制御信号に応答して前記対象にインスリンを注入するよう作動し、前記方法が:
(i)食事用量制御入力に応答した、また、先行する食事用量と、前記グルコースセンサを介したグルコースレベルのサンプリングに反映される、前記対象の対応する食事及び食後応答とに基づいて、コントローラによって自動的に計算されたインスリンの食事ボーラス用量の投与すること、及び(ii)食事ボーラス用量の量を決定するのに使用される制御パラメータを自律的に調整して、前記制御パラメータを前記対象に対して調整すること、を含む制御アルゴリズムを使用するオンライン作動を行ことと、
(iii)グルコースレベルのサンプリングなしで、前記制御アルゴリズムの状態を経時的に展開させること、及び(iv)食事投与作動(複数)であって、それぞれが、前記食事用量制御入力に応答した、また、前記単独のグルコース測定値と、前記制御パラメータと、前記食事投与作動の時に展開された前記制御アルゴリズムと、に基づいて前記コントローラにより計算されたインスリンの食事用量の投与を含む、食事投与作動を含むオフライン作動を行うことと、
を含む、方法。
【請求項22】
前記制御アルゴリズムの前記オンライン作動が、更に、(i)前記制御アルゴリズムの制御パラメータと、前記グルコースセンサを介したグルコースレベルの通常の周期的なサンプリングとに基づくインスリンの補正用量の通常の投与すること、及び(ii)前記制御パラメータを自律的に調整して、前記制御パラメータを前記対象に対して調整すること、を含み、前記オフライン作動が、更に、(iii)グルコースレベルのサンプリングなしで、また前記インスリンの補正用量の自動投与なしで、前記制御アルゴリズムの状態を経時的に展開させること、及び(iv)補正投与作動(複数)であって、それぞれが、前記コントローラに提供された単独のグルコース測定値に応答して、インスリンの補正用量を投与することを含む、補正投与作動を含み、前記補正用量は、前記単独のグルコース測定値と、前記制御パラメータと、前記補正投与作動の時に展開された前記制御アルゴリズムの状態とに基づいて前記コントローラにより計算される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府権利の陳述
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与された契約番号DK085633のもとで政府支援により為された。政府は、本発明に所定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病における血糖調節のための標準治療インスリン療法は、一般に、毎日の複数回の皮下注射、又はインスリンポンプを用いた皮下注入のいずれかを含む。一般に、基礎インスリンとボーラスインスリンとの組み合わせは、対象の基礎代謝インスリン要求を満たし、補正ボーラス用量は、高血糖を調節するように投与され、追加の食事ボーラス用量は、食物消費用のインスリンを提供するよう追加される。現在の通常治療では、一般に高血糖状態を処置するように投与されるインスリンの補正ボーラスは、個人のいわゆる「補正因子(一つ又は複数)」の見積に基づいており、この補正因子は、異なるレベルの高血糖を十分に補償する、ユーザにより見積もられるインスリンの量に関連する。補正因子は、個人個人でヒューリスティックに見積もられ、時々修正される(基本的に試行錯誤によって)。これは、インスリンの基礎速度を個人個人でヒューリスティックに見積もって、基礎代謝インスリン要求を提供する方法と同様である。
【0003】
同様に、食物消費の前後に摂られる食事ボーラスインスリン用量も、一般に、食物の量及び内容物(炭水化物及びその他)に基づいて、一日の中の時間、身体活動、健康状態、感情状態等の他の因子の中でも特に、個人のいわゆる「インスリン−対−炭水化物比(一つ又は複数)」のヒューリスティックな見積と併せて、個人個人でヒューリスティックに見積もられる。正しい補正ボーラス用量、インスリン基礎速度及び食事ボーラス用量等は、全て、基本的に試行錯誤の経験によって決定され、個人間で有意に異なり、また個人においても時間の経過と共に有意に異なり得るが、それらは全て、個人がいかに自らの血糖を制御できるかの重要な決定因子である。投与必要量もまた、一日の中の時間、身体活動、健康状態、感情状態等の因子に依存し、一過的変化(例えば、概日ホルモン変動、現在の疾病、身体活動、又は感情状態に起因する)に起因して時間、日、若しくは週の期間、及び/又は、発達的変化(例えば、思春期又は更年期に起こるホルモン変化に起因して)に起因して月若しくは年の期間に亘って、変動する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内を含む任意のいくつかの経路を介して対象内に注入される、インスリン若しくはインスリン様薬剤、及び/又はグルカゴン若しくはグルカゴン様薬剤等の逆調節剤の用量を計算及び送達するための自動化方法を本明細書に開示する。本方法は、個々のユーザに適合され、「補正因子」及び「インスリン−対−炭水化物」因子等の入力を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示する第一の方法は、「サンプリング区間」とも称される通常の区間(例えば、1〜15分のオーダーの間隔)においてセンサによって提供される通常のグルコースレベルに応答して、コントローラがインスリンの補正ボーラスの送達を自動的に制御するよう作動する際のオンライン作動の期間を含む。コントローラのオンライン作動は、センサにより提供されるグルコース測定値が存在する際のサンプリング区間を指し、オフライン作動は、センサにより提供されるグルコース測定値が存在しない際のサンプリング区間を指す。本方法は更に、先行するオンライン作動期間中に制御システムによって自律的に収集された情報を使用して、コントローラが単独のグルコース測定値(例えば、対象によってコントローラに提供される)に自動的に応答するオフライン作動を含む。開示する第二の方法は、先行するオンライン作動期間中に制御システムによって自律的に収集された情報に基づいて、オフライン作動の期間中、食事の告知に応答して食事ボーラス用量を自動的に計算及び投与することを含む。これら2つの方法は、個人に対して調整され、かつオンライン作動の期間中に連続的に収束され及び潜在的に修正される、関連する制御パラメータを自律的に生成することを含む。次いで、この制御パラメータはオフライン作動の期間中にリアルタイムで使用されて、対応する制御パラメータ(例えば、インスリン−対−炭水化物比、又はインスリン補正因子)をユーザが提供する必要なく、グルコースレベルを調節する。これらの方法は、独立して、又は一緒に使用されてもよく、また下記により詳細に記載するように、オフライン作動中の逆調節剤の送達のための類似した制御方法を追加されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
前述の及び他の目的、特徴及び利点は、異なる図の全体において同様の参照文字が同一の部分を指す添付の図面に示される本発明の特定の実施形態に関する以下の説明から明らかとなるであろう。
【0007】
図1図1は、グルコース制御システムのブロック図である。
図2図2は、コントローラのブロック図である。
図3図3は、システムの作動の第一の方法のフローチャートである。
図4図4は、他のシミュレーションとの比較のための、ベースラインとしての作動のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図5図5は、図3の方法に従った作動のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図6図6は、図3の方法に従った作動のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図7図7は、図3の方法に従った作動のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図8図8は、図3の方法に従った作動のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図9図9は、システムの第二の作動方法のフローチャートである。
図10図10は、図9の方法に従った作動のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図11図11は、図3及び図9の方法に従った作動のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図12図12は、逆調節剤の使用を組み込んだ作動のシミュレーションの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の公開特許文書の開示は、参照により本明細書に組み込まれる:
米国特許出願公開第2008/0208113 A1号
PCT国際出願公開第2012/058694 A2号
米国特許出願公開第20130245547 A1号
【0009】
図1は、ヒトであってもよい動物対象(対象)12のグルコースレベルを調節するための自動化制御システム10を示す。対象12は、カテーテル(一つ又は複数)により結合された一つ以上の送達デバイス14、例えば注入ポンプから、対象12の皮下空間へとインスリンを受容する。下記に記載するように、送達デバイス14は、所定の環境下でグルコースレベルを制御するための、例えばグルカゴン等の逆調節剤も送達することができる。インスリン及びグルカゴンの両方を送達するために、送達デバイス14は、インスリン及びグルカゴンのそれぞれ用の二重カートリッジを有する機械的駆動による注入機構であることが好ましい。本記載では、特にグルカゴンに言及しているが、これは単に利便性のためであり、他の逆調節剤を使用してもよいことを理解するべきである。同様に、本明細書で用語「インスリン」は、天然のヒト又は動物インスリン、及び多様な形態のいずれかの合成インスリン(通常「インスリン類似体」と称される)を含む、インスリン様物質の全形態を包含するものと理解するべきである。
【0010】
オンライン又は自律的作動の場合、グルコースセンサ16は、対象12に作動可能に結合されて、対象12のグルコースレベルを連続的にサンプリングする。感知は、概して対象12とグルコースセンサ16との間のいくつかの形態の物理的結合21を含む、多様な方法で達成することができる。コントローラ18は、送達デバイス(一つ又は複数)14の作動を、グルコースセンサ16からのグルコースレベル信号19の関数として制御し、対象12等のユーザにより提供され得る、プログラムされた入力パラメータ(PARAMS)20に従う。自動作動のための一つの入力パラメータは、対象12の体重である。開示した技術の一つの特徴は、対象12が消化した食事、又は任意の他の「フィードフォワード」情報に関する明確な情報を受容せずに、有効な自動化制御を提供する能力であり、これは、一部には、コントローラ18の作動に対する適応的状況により達成される。
【0011】
コントローラ18は、本明細書に記載するような作動機能を提供する制御回路を有する電気デバイスである。一実施形態において、コントローラ18は、一つ以上のコンピュータプログラムを実行するコンピュータ命令処理回路を有するコンピュータ化されたデバイスとして実現されてもよく、前記一つ以上のコンピュータプログラムのそれぞれは、対応するコンピュータ命令のセットを含む。この場合、処理回路は、概して、一つ以上のプロセッサと、該プロセッサ(一つ又は複数)に結合されたメモリ及び入力/出力回路とを含み、メモリはコンピュータプログラム命令及びデータを格納し、入力/出力回路は、グルコースセンサ16及び送達デバイス(一つ又は複数)14等の外部デバイスに対するインターフェース(一つ又は複数)を提供する。
【0012】
制御システム10はまた、オフライン方法で作動することが可能であり、このオフライン方法は、センサ16により報告されるグルコースレベルに基づいてされない、インスリン(及び潜在的にグルカゴン)の送達の提供に使用される。したがって、作動全体はオンライン期間(複数)とオフライン期間(複数)とに分割されてもよく、オンライン期間は、それぞれ、グルコース信号(レベル)19が入手可能な際のサンプリング区間の連続を含み、オフライン期間は、それぞれ、グルコース信号(レベル)19が、完全に又は断続的にのみ、のいずれかで入手不可能な際のサンプリング区間の連続を含む。下記の記載では、これらの期間に関して、用語「オンライン」及び「オフライン」を使用する。また、オフライン作動は、グルコースレベル信号19が使用のために入手可能な場合であっても、ある理由によりユーザ選択であってもよい。
【0013】
ユーザ制御入力(ユーザCNTLs 23)は、いくつかのタイプのローカル又はリモートユーザインターフェースを介して提供されてもよい。一実施形態において、ユーザインターフェースは、例えば、ボーラスの送達を命令するための制御ボタンと、おそらく小さいディスプレーとを含むことにより、従来のインスリンポンプ又は同様のデバイスと類似していてもよい。別の実施形態では、システムは、例えばスマートフォン又は類似したパーソナルコンピューティングデバイス等の、機能がより充実したユーザインターフェースを組み込み得る、リモートデバイスへの有線又は無線インターフェースを有してもよい。オフラインモードでは、グルコースセンサ16は、存在せず、又は機能せず、又は対象12に結合していなくてもよく、その結果、血糖信号19は、自動作動を制御するよう入手可能ではない。
【0014】
本明細書の記載では、「ユーザ」をユーザ制御入力23の供給源として引用する。一つの典型的な使用において、グルコースレベル制御システム10は、継続的なグルコース制御のために対象12によって装着される個人用デバイスである。この場合、ユーザと対象12は、同一人物である。別の使用においては、対象12の介護に関与し、制御入力を提供する別の人物が存在してもよく、その場合、その別の人物は、ユーザの役割を有する。
【0015】
図2は、コントローラ18の構造を示す。コントローラ18は、4つの別個のコントローラ、即ちグルカゴンコントローラ22、基礎インスリンコントローラ24、補正インスリンコントローラ26及びプライミングインスリンコントローラ28を含む。基礎インスリンコントローラ24は、公称速度コントローラ30及び変更コントローラ32を含む。図示するように、グルカゴンコントローラ22は、グルカゴン送達デバイス14−1に提供されるグルカゴン用量制御信号34を生成する。コントローラ24〜28からのそれぞれの出力36〜40は、組み合わされて、インスリン送達デバイス(一つ又は複数)14−2に提供される全体的なインスリン用量制御信号42を形成する。図示するように、基礎インスリンコントローラ24からの出力信号36は、公称速度コントローラ30及び変更コントローラ32のそれぞれの出力の組み合わせにより形成される。インスリン送達デバイス(一つ又は複数)14−2は、異なるタイプ及び/又は量のインスリンを送達するように調整されたデバイスを含んでもよく、インスリン送達デバイス(一つ又は複数)14−2の正確な形態はコントローラ24〜28に既知であり、かつ該コントローラの制御下にある。記載を容易にするために、一つ以上のインスリン送達デバイス14−2の集合は、下記でインスリン送達デバイス14−2として単数にて参照される。
【0016】
図2には、グルコースレベル信号19、パラメータ20及びユーザ入力23、並びに1セットのコントローラ間信号44を含む様々なコントローラの入力/出力信号も示されている。コントローラ間信号44は、情報が発生又は生成される一コントローラから、その情報を別のコントローラへ通信することを可能にし、その情報はその別のコントローラの制御機能に使用される。
【0017】
コントローラ22〜28は、オンライン/自動モード又はオフラインモードのいずれかで作動し得る。自動化モードでは、補正コントローラ26は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0208113 A1号に記載されているような制御スキームを用いて、グルコースレベルを調節する。基礎コントローラ24及びプライミングインスリンコントローラ28は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第2012/058694 A2号に記載されている適応自動制御を実行してもよい。コントローラ22〜28は、一般に、制御パラメータを含む制御方法又はアルゴリズムを使用し、該制御パラメータは、報告されたグルコース値と数学的に組み合わされて出力値を生成し、該出力値は、(直接、又は更なる調整を介して)用量制御信号34、42に変換される。例えば、米国特許出願公開第2008/0208113 A1号に記載されている制御スキームは、多様な制御パラメータを組み込んだ一般化予測制御(GPC)方法を含む。制御アルゴリズムは、概して適応性があり、即ち、制御パラメータを作動中に動的に調整して作動環境の変化及び「学習」態様を反映し、制御パラメータがそれ自体の作動を監視することにより、アルゴリズムは、その作動を個々のユーザに対してより特定的に調整し、アルゴリズムの効果を高め、ユーザに関する更なる明示的な入力情報の必要性を低減又は回避する。入力パラメータ20は、制御アルゴリズムによって使用される制御パラメータの一部を形成し、他の制御パラメータは、アルゴリズムの仕様に従った内部パラメータであり、これら内部制御パラメータの選択されたものは、動的に調整されて、制御アルゴリズムの適応を実現することに留意するべきである。
【0018】
作動の一つの特徴は、コントローラが最近の過去のオンライン作動期間から学習し、オフライン作動中にその学習を使用する能力である。詳細には、オフライン作動において独立して又は一緒に使用可能な2つの方法が以下に記載される。第一の方法は、単独のグルコース測定値を受信した時にインスリンの補正ボーラスの正確な量を自動的に計算し、次いでこの補正ボーラスをユーザ制御入力に応答してシステムにより投与する。第二の方法は、インスリンの食事ボーラスの正確な量を自動的に計算し、これをユーザ制御入力に応答して投与する。両方の方法は、過去のオンライン作動期間中に得られた情報を利用して、正確な値を自動的に計算し、ユーザが計算を行い又は補正因子を提供する必要性を無くす。
【0019】
<I.オフライン作動期間中に自動的に計算される補正ボーラス>
オフライン作動中に補正ボーラス用量をリアルタイムで自動的に計算するための方法は、単独のグルコース測定値がオフライン作動中に制御システム10に提供されたとき、該単独のグルコース測定値に対して個々にオンライン制御アルゴリズムを実施することにより達成される。これらの単独のグルコース測定値は、任意の種類のグルコース測定器からの血糖(BG)測定値、又は、ユーザ制御23を介して制御システム10に提供される、任意の種類の他のグルコースモニターから得られたグルコース測定値であってもよい。補正ボーラス用量の自動計算は、オフライン作動中に提供された単独のグルコース測定値のそれぞれを、あたかもそれらがグルコースレベル信号19から得られたグルコース値のように扱う、上記に引用した米国特許出願公開第2008/0208113 A1号にて連続オンライン制御に関して記載されたものと同じ方法に従う。事実上、各補正ボーラス作動は、オンライン制御の短時間の再開である。単独のグルコース測定値の辺りでオンラインアルゴリズムがリアルタイムで実施された際、グルコースの変化の有効速度及び顕著な全インスリン蓄積のオンラインアルゴリズムの計算において、グルコースデータ間の時間の空白をオンラインアルゴリズムによって取り入れる。特に、オフライン作動中、アルゴリズムは時間の経過をサンプリング区間の連続としてマーキングし続け、該サンプリング区間中、アルゴリズムはグルコースセンサ入力を受信せず、インスリンの通常の補正用量を生成しない。アルゴリズムは、対象12内の経時的な残存インスリンレベルの減少をモデリングし続け、それによってアルゴリズムは、任意の所定の時間に、以前に投与されたインスリンの将来の効果の正確な見積を有する。コントローラ18が、補正用量を生成する指示と共に、単独のグルコース測定値をユーザから受信した際、アルゴリズムは現在のグルコース測定値と、最新のグルコースサンプル値(先行するオンライン制御期間から、又は、単独のグルコース測定値から)との間の補間を実行して、アルゴリズムの算出に必要な、最近のサンプリング区間に関して見積もられたグルコース値を得る。
【0020】
一実施形態において、システムは、自動的に計算された補正ボーラスを送達する前にユーザ確認を要求してもよく、一方、別の実施形態では、確認を要求しなくてもよく、又は確認が要求されるか否かを制御する構成設定が存在してもよい。同様に、システムは投与量をユーザに明らかにしてもよく若しくはしなくてもよく、及び/又は、ユーザによる投与量の修正を可能にしてもよい(これらの働きも、一実施形態では設定可能である)。
【0021】
図3は、補正ボーラス用量を自動的に計算するための方法のハイレベル作動を示す。50において、オンライン作動中、コントローラ18は、(i)制御アルゴリズムの制御パラメータと、グルコースセンサを介したグルコースレベルの規則的に周期的なサンプリングとに基づいてインスリンの補正用量を規則的に投与すること、及び(ii)制御パラメータを自律的に調整して、制御パラメータを対象に対して調整すること、を含む制御アルゴリズムを使用する。前述したように、この作動は、上記に参照した米国特許出願公開第2008/0208113 A1号に従ってもよい。
【0022】
52において、コントローラ18は、(iii)グルコースレベルのサンプリングなしに、またインスリンの補正用量の自動投与なしに、制御アルゴリズムの状態を経時的に展開させること、及び(iv)補正ボーラス作動(複数)であって、それぞれが、単独のグルコース測定値と、制御パラメータと、補正ボーラス作動の時に展開された制御アルゴリズムの状態と、に基づいてコントローラにより計算された補正ボーラスを投与することとを含む、補正ボーラス作動を含むオフライン作動に従事する。この明細書において、用語「補正ボーラス作動」は、利便性のために使用され、この作動は、代替的に、より一般的な用語「補正投与作動」と称されてもよい。
【0023】
ここで、オフライン作動中に補正ボーラス用量を自動的に計算するための方法と、その効果との更なる詳細を、想定される対象又はユーザの特徴に基づく作動のシミュレーションにより生成されたデータを参照して提供する。
【0024】
図4〜7は、制御システム10において任意のパラメータを使用した、コントローラ18がオフラインの場合の提案される自動正規化補正ボーラス投与動作のシミュレーションの結果を示す。提案される手法を示すことに加えて、これらのシミュレーションはまた、この方法が、コントローラ18がオフラインの際の単独の期間中のユーザによる主体的な投与の見積から生じ得るシステムの脆弱性を除去するため、この方法の安定性と、更なる安全性とを示す。実際的な例として、これらの図におけるシミュレーションは、コントローラ、グルコースデータ、及び臨床試験での実験によるデータに類似し得る血糖(BG)データを使用する。
【0025】
図4は、ユーザが、制御システム10により無視される入力としてBG値BG1を提供する時まで、通常のオンライン作動が行われ、次いで制御システム10がオフラインに引き継がれる筋書きを示す。このシミュレーションは、制御システム10がBG1を使用してインスリンの補正ボーラスを自動的に計算する際の応答との比較のための参照オンラインインスリン応答を提供する。このシミュレーションでは、制御システム10は13.25Uの総ボーラスインスリンを投与して、BG1の時間に生じる高血糖可動域を阻止する。これらの図では、70〜120の正常血糖帯が陰影で示されている。
【0026】
図5〜7は、特にこれらの場合、ユーザ入力によるBG1値に応答した、図3の方法を使用した際のインスリン応答を示す。このような自動化されたBGベースの補正ボーラス応答は、ユーザが該ユーザの「補正因子」として見積もるものに基づいて、ユーザが単独のオフライン期間中にインスリン補正ボーラス用量を計算する従来の実践を代替するものである。しかしながら、そのような補正因子は主体的に選択されてもよく、また更には、新たに診断されたユーザに知られなくてもよい。更に、その使用は、ユーザによって不適切に見積もられた場合、特に、値が過大である場合、制御システム10を危うくし又は脆弱な状態にする可能性がある。ユーザの行動は、グルコースレベルの自動感知が存在しない場合(例えば、オフライン作動中)に、補正用量を決定するのに常に必要な活動であるBG値の獲得及び入力のみが必要とされることに留意されたい。
【0027】
図5は、30分間のオフライン期間後、ユーザ入力によるBG1に応答して、インスリンの補正ボーラスが制御システム10によって自動的に計算される一つのシミュレーションを示す。BG1に至る高血糖可動域に亘る総補正インスリンは、7.15Uであり、これは図4の純粋なオンライン応答よりも控えめである。より現実的なシミュレーションは、BGレベルの動向が高くなることによって、BG1の前のオフライン作動の期間を説明するかもしれない。しかしながら、特に既に重篤な高血糖において、BGが必然的についてくるため、BG1が400を超える場合でも、送達されるであろう総補正インスリンは12.65Uのみであると見積もられ、これは図4の純粋なオンライン応答よりも控えめであり、従ってより安全である。制御システム10は、例えば400等の、制御システム10が使用するであろうBG測定値の値に上限を強制し得ることに留意するべきである。ユーザインターフェースは、この限界値を強制し得る。
【0028】
図4及び5はまた、BG2及びBG3に応答した自動グルカゴン補正用量を示す。これはシステムによる追加の安全性を提供し、通常治療では入手不可能な応答である。BG2が正常範囲の上限に近くても、制御システム10がどのように、グルカゴン補正用量によりBG2に応答するかに留意されたい−これは、BG2がBG1からのグルコースの減少傾向を示すためである。この傾向は、更なるグルカゴン補正用量を引き起こす、正常範囲の下限に近いBG3により実証される。
【0029】
図6及び7は、それぞれ60及び90分間のオフライン期間後、ユーザ入力によるBG1に応答して、制御システム10によって自動的に計算されるインスリンの補正ボーラスを示す。後者の場合、本質的に、制御システム10がオフラインの間、高血糖可動域が全体的に生じる場合の応答を示す。BG1に至る高血糖可動域に亘る総ボーラスインスリンは、それぞれ6.15U及び4.1Uであり、これはどちらの場合も、図4の純粋なコントローラベースのインスリン応答よりも控えめである。上記のように、より現実的シミュレーションでは、BG1サンプルの時間においてより高いBG値を示すであろう。しかしながら、BG1が400を超える場合であっても、総補正インスリンはそれぞれ11.15U及び10.05Uのみであると見積もられ、これらはどちらの場合でも、純粋なオンライン応答よりも控えめである。これらの図は、図4及び5における応答と同様の、BG2及びBG3に応答した自動グルカゴン補正用量も示す。
【0030】
図8は、異なるコントローラ及びBGデータを使用したシミュレーションによるデータを提供し、これは下記の次のセクションにおける食事ボーラス方法の説明、及び同様に下記に記載される2つの方法の重ね合わせにも使用される。また、より長い全期間が示されている。詳細には、図8は、オンライン作動中に制御システム10により提供される単独のグルコース測定値(例えば、グルコース測定器からの血糖測定値、又は他のグルコースモニターから得られたグルコース測定値)に基づいて、オフライン作動中に(この例では、2日間に亘る17:30〜16:30)補正ボーラス用量を個々にリアルタイムで自動的に計算する方法を示すサンプルシミュレーションを示す。上の図は、オンライン作動中のグルコース跡(黒丸として)と、食事の時間(黒い三角形で示す)とを示し、オフライン作動中にユーザによって制御システム10に提供された追加のグルコース測定値(灰色の星印で示す)を有する。下の図は、自動的に生成された補正インスリン用量を細長い灰色バーとして示す。矢じりを有する単独の灰色の直線で示される食事ボーラス用量も示す。これらは、下記のセクションに記載される。
【0031】
図8のシミュレーションにおけるオンライン期間中、インスリン用量は、オンラインアルゴリズムにより生成されたボーラス用量及び基礎用量と、(潜在的な)食事ボーラス用量とを含む一方、オフライン作動中、インスリン用量は、アルゴリズム生成による基礎用量と、自動的に計算された補正ボーラス用量とを含む。オフライン作動中の各補正ボーラス用量は、上述したように、単独のグルコース測定値が制御システム10に提供されたとき、該単独のグルコース測定値に対して個々にオンライン制御アルゴリズムを実施することにより自動的に計算される。実際の作動では、オンライン期間及びオフライン期間の両方は、一般に、この例で任意に選択されたスパンとは異なり、またそれぞれはそのスパン内に他方の断続的セグメントを含んでもよい。
【0032】
<II.オフライン制御の期間中に自動的に計算される食事ボーラス用量>
食事ボーラスが、対応する種類の食事若しくは間食、及び/又は一日の時間間隔(朝食、昼食、又は夕食)に関して投与される際、先行するオンライン作動期間(一つ又は複数)中の食事及び食後応答(一つ又は複数)に基づくオンライン制御アルゴリズムによって、オフライン作動中に食事ボーラス用量をリアルタイムで自動的に計算するための方法も記載する。先行するオンライン作動期間(一つ又は複数)からの自動計算は、各種類の食事ボーラス用量の多数の事象(例えば、朝食、昼食、又は夕食の機会を有する多数の日)を含んでもよい。オフライン作動中の食事ボーラス用量の自動計算は、オンライン作動中のその実施に関して、上記で参照した国際特許出願公開第2012/058694 A2号に記載されているものと同じ方法に従ってもよい。即ち、食事ボーラス用量は、オンライン作動に基づいて適合され、この場合では、オフライン作動中、それらが継続的なオンライン作動中であるのと同じ方法で放出される。
【0033】
図9は、オフライン作動中に食事ボーラス用量を自動的に計算するための方法のハイレベル作動を示す。60において、オンライン作動中、コントローラ18は、(i)食事ボーラス制御入力に応答して、また、先行する食事ボーラス用量と、グルコースセンサを介したグルコースレベルのサンプリングに反映される、対象12の対応する食事及び食後応答とに基づいて、コントローラ18によって自動的に計算されたインスリンの食事ボーラス用量を投与し、(ii)食事ボーラス用量の量を決定するのに使用される制御パラメータを自律的に調整して、制御パラメータを対象に対して調整する、制御アルゴリズムを使用する。
【0034】
62において、オフライン作動は、(iii)グルコースレベルのサンプリングなしで、制御アルゴリズムの状態を経時的に展開させること、及び(iv)食事ボーラス作動(複数)であって、それぞれが、食事ボーラス制御入力に応答して、また単独のグルコース測定値と、制御パラメータと、食事ボーラス作動の時に展開された制御アルゴリズムの状態と、に基づいてコントローラにより計算されたインスリンの食事ボーラスを投与することとを含む、食事ボーラス作動を含む。食事ボーラスは、インスリンポンプからの1回の連続排出若しくは放出で投与されてもよく、又は、短期間に亘る多数回の排出(例えば、連続するサンプリング区間に亘って分割)として投与されてもよい。いくつかのポンプは、単一の排出のための限界を強制し、従って、送達されるボーラスがその限界を超えた場合、短期間に亘る多数回の排出(例えば、連続するサンプリング区間に亘って分割)を用いて送達され得る。この記載において、用語「食事ボーラス作動」は、利便性のために使用され、この作動は、代替的に、より一般的な用語「食事投与作動」と称されてもよい。
【0035】
図10は、記載した方法のサンプル図を提供する。これは、図8の補正ボーラス方法の説明にも使用したコントローラ及びBGデータを使用する。この方法における食事ボーラス用量の固有の学習及び調整は、更なるオンライン制御期間によるオンライン調整を継続して受け得ることに留意されたい。システムは、自動的に計算された食事ボーラスの送達前にユーザ確認を要求してもよく又はしなくてもよく、投与量をユーザに明らかにしてもよく又はしなくてもよく、ユーザによる投与量の修正を可能にしてもよく又はしなくてもよい。
【0036】
より詳細には、図10は、先行するオンライン作動中(この例では、2日間に亘る18:00〜17:30の先行する期間から)の食事ボーラス用量と、それらの対応する食事及び食後応答とに基づいて、オフライン作動中に(この例では、2日間に亘る17:30〜16:30)食事ボーラス用量をリアルタイムで自動的に計算する方法を示すサンプルシミュレーションを示す。上の図は、オンライン作動中のグルコース跡(黒丸として)と、食事の時間(黒の三角形で示す)を示す。下の図は、自動的に生成されたインスリン用量を細長い灰色バーとして示し、矢じりを有する単独の灰色の直線で示す食事ボーラス用量(それらがユーザによって引き起こされ又は告知された時の)を有する。オンライン作動中、インスリン用量は、オンラインアルゴリズムにより生成された補正ボーラス用量及び基礎用量と、食事ボーラス用量とを含む一方、オフライン作動中、インスリン用量は、アルゴリズム生成による基礎用量と、自動的に計算された食事ボーラス用量とを含む。オフライン作動中の各食事ボーラス用量は、食事ボーラスが、対応する種類の食事若しくは間食、及び/又は一日の時間間隔(朝食、昼食、又は夕食)に関して投与される際、先行するオンライン作動期間(一つ又は複数)中の食事及び食後応答(一つ又は複数)に基づくオンラインアルゴリズムによって自動的に計算される。先行するオンライン作動期間(一つ又は複数)からの自動計算は、各種類の食事ボーラス用量の多数の事象(例えば、朝食、昼食、又は夕食の多数の機会を有する多数の日)を含んでもよい。この方法における食事ボーラス用量の固有の学習及び調整は、更なるオンライン制御期間によるオンライン調整を継続して受け得る。また、オンライン期間及びオフライン期間の両方は、この例では、それらの任意に選択したスパンから、スパンにおいて変動してもよく、それぞれはそのスパン内に他方の断続的セグメントを含んでもよい。
【0037】
制御アルゴリズムは、オンライン作動中にある際、食事又は食後グルコース可動域に自動的に応答することが可能であるため、ユーザは、オンライン作動中にある際、食事ボーラス用量選択肢を使用しないことを選択し得ることに留意されたい。しかしながら、そのような自動オンライン応答は、食事又は食後期間がオフライン作動中にある際に生じる場合、不在又は無効であろう。従って、良好な血糖制御は、一般に、オフライン作動中の食物消費の時間の辺りでの、食事ボーラス用量選択肢の使用が必要である。食事ボーラス用量は、オンライン作動中に効果的に適合されるため、オフライン作動中に食事ボーラス用量を使用する際に最適な制御を得るためには、ユーザは規則的にではなくても時々、オンライン作動中に食事ボーラス用量選択肢を使用する必要があるということになる。この時々の使用は、各種類及び/又は一日の時間間隔(朝食、昼食、又は夕食)に関して週に1回、数週間のオーダーであってもよいが、それより頻度が高く若しくは低くてもよく、及び/又は、全体で不規則的な時間でもよい。ある時間に亘るそのような時々のオンライン使用により、食事ボーラス用量を繰り返し適合させることが可能となり、このことは、基本的に食事ボーラス用量の大きさ(一つ又は複数)を更新して、ユーザ自身の、食事の相対的な量の決定に基づいた、該ユーザの必要性により適したものとなる。要約すれば、食事ボーラス用量選択肢は、オンライン作動下での効果的な制御に必要であり得又はあり得ないが、オンライン作動中にそれを使用する(少なくとも時々)ことにより、食事ボーラス用量を、オフライン作動中に使用される際に、より効果的なものとするよう適合させることができる。
【0038】
<これらの二方法の重ね合わせ>
図11は、(1)インスリンの補正ボーラス用量を自動的に計算すること、及び(2)オンライン作動中にインスリンの食事ボーラスをリアルタイムで自動的に計算すること、の両方の方法が一緒に使用される例を示す。このシミュレーションは、上述した補正ボーラス及び食事ボーラス方法の説明にも使用したコントローラ及びBGデータを使用する。
【0039】
<他の制御態様>
制御システム10は、独立して、同様の方法で、オンライン作動中に逆調節剤(グルカゴン等)の補正ボーラス用量をリアルタイムで自動的に計算することができる。逆調節剤が制御システム10による使用のために入手可能な場合、単独のグルコース測定値の辺りのオフライン作動の動作は、逆調節剤のリアルタイム投与を含んでもよい。システムは、尚、インスリンの補正ボーラスを独立して放出することができるため、該システムは、補正ボーラスの両方の種類(インスリン及びグルカゴン)、又は他を除く1種類を用いることができる。
【0040】
図12は、システムが両方の種類の補正ボーラス用量(インスリン及びグルカゴン)を自動的に計算する、逆調節剤としてグルカゴンを使用した例を示す。インスリンの補正ボーラス用量は、図8におけるものと同じ時間であるように任意に選択され、グルカゴンの補正ボーラスの動作は、シミュレーションにおいて、正常範囲の下限付近のグルコース測定値が制御システム10に提供された、2日目の00:30の辺りに示されている。システムはまた、各個人の状態と、使用される制御アルゴリズムとに応じて、より高い又は低いグルコース測定値に対して逆調節補正ボーラスの動作を用いて応答することができる。逆調節補正ボーラス用量の自動計算は、上述したように補正及び食事ボーラス作動を短時間の再開として処理する、上記で参照した米国特許出願公開第2008/0208113 A1号の連続オンライン制御に関して記載されているものと同じ方法に従い得る。加えて、システムは、(デフォルトの)予め調整された逆調節補正ボーラス(例えば、緊急の場合)を容易に送達する能力を含んでもよい。これらの方法は全て図12のように重ね合わされる(米国特許出願公開第20130245547 A1号における開示のように、オンライン作動中に自動化基礎インスリン注入を実施すると共に)ため、オンライン作動の期間は、アルゴリズム生成によるインスリン及びグルカゴンの補正ボーラス用量、インスリンの食事ボーラス用量、並びにインスリンの基礎用量を含み、これらは全てコントローラ18によって自動的に計算される。
【0041】
上述した方法の全ては、入院患者(例えば、薬物投与の経路が様々であり得、またデキストロースが逆調節剤の例である、救急救命診療ユニット又は一般病棟)又は外来患者の状況において使用することができ、また、自律的又は半自律的オンライングルコース制御システム10(例えば、センサ併用型注入システム)の状況で使用することができる。本方法はまた、別々に、又は様々な組み合わせで一緒に、オンライン作動において適合されてもよい。オンライン作動において使用された際、これらの方法は、最終的に、インスリン−対−炭水化物比、補正因子(インスリン又はインスリン様薬剤及び逆調節剤の両方に関する)等の制御パラメータ、及びインスリン注入の基礎速度を知り及び設定することをユーザ(又は介添人)に要求するという概念を廃れたものとし得る。
【0042】
本発明の様々な実施形態を特に示し、記載してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の形態及び詳細に様々な変更を為し得ることを理解するであろう。
図1
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