特許第6243550号(P6243550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243550量子ビット読み出し用の相互量子論理比較器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243550
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】量子ビット読み出し用の相互量子論理比較器
(51)【国際特許分類】
   G06F 7/48 20060101AFI20171127BHJP
   H03K 19/195 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 39/22 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G06F7/48 Z
   H03K19/195ZAA
   H01L39/22 K
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-556785(P2016-556785)
(86)(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公表番号】特表2017-516182(P2017-516182A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】US2015018956
(87)【国際公開番号】WO2015178999
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】14/202,724
(32)【優先日】2014年3月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503178185
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NORTHROP GRUMMAN SYSTEMS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ドナルド エル.
(72)【発明者】
【氏名】ネイアマン、オフェル
【審査官】 征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−329797(JP,A)
【文献】 特開2007−005959(JP,A)
【文献】 特開平05−190922(JP,A)
【文献】 特表2014−504057(JP,A)
【文献】 特表2010−541309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 7/48
H01L 39/22
H03K 19/195
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互量子論理(RQL)読み出しシステムであって、
読み出しパルスが供給される入力段と、
出力パルスを伝搬するように構成された出力段と、
第1のジョセフソン接合が、前記読み出しパルスに応答してトリガして第1の量子状態において出力段で前記出力パルスを供給し、且つ第2のジョセフソン接合が、前記読み出しパルスに応答してトリガして第2の量子状態において前記出力段で出力パルスを供給しないように、バイアス電流が、量子ビットの第1の量子状態における前記第1のジョセフソン接合と、前記量子ビットの第2の量子状態における前記第2のジョセフソン接合との間で切り替わるように、前記量子ビットに結合される前記第1のジョセフソン接合及び前記第2のジョセフソン接合を含む相互量子論理比較器と、を備えるシステム。
【請求項2】
相互量子論理クロック信号を生成するように構成された相互量子論理クロックを更に備え、
前記読み出しパルスが、前記相互量子論理クロック信号の第1のサイクルにおいて供給され、負パルスが、前記相互量子論理クロック信号の第2のサイクルにおいて供給される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記相互量子論理クロックが、前記読み出しパルスを伝搬するために少なくとも1つの入力ジョセフソン接合のトリガリングを容易にするために前記相互量子論理クロック信号を前記入力段に供給するように、前記量子ビットの第1の量子状態において前記読み出しパルスに応じて、前記出力パルスを伝搬するために少なくとも1つの出力ジョセフソン接合のトリガリングを容易にするために前記相互量子論理クロック信号を前記出力段に供給するように、且つ前記量子ビットの第1及び第2の量子状態のそれぞれの1つに基づいて、前記第1及び第2のジョセフソン接合の1つにおけるトリガリングを容易にするために、前記相互量子論理クロック信号を前記相互量子論理比較器に供給するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記相互量子論理クロック信号が、対称的な方法で前記入力段、前記出力段及び前記相互量子論理比較器に供給され、前記量子ビットが、少なくとも1つの誘導結合を介して前記相互量子論理クロック信号から実質的に分離される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記量子ビットが、第1の量子状態において第1の方向に、且つ第2の量子状態において第2の方向に、前記第1及び第2のジョセフソン接合のそれぞれを通って流れる前記バイアス電流を生成するために、前記相互量子論理比較器に誘導的に結合され、前記バイアス電流が、前記読み出しパルスに対して前記第1及び第2のジョセフソン接合のそれぞれに関連する相対閾値を変更するために供給される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の方向において前記第1のジョセフソン接合を通る前記バイアス電流が、前記第1のジョセフソン接合をトリガして前記出力パルスを生成するように前記読み出しパルスに追加され、
前記第1の方向において前記第2のジョセフソン接合を通る前記バイアス電流が、前記第2のジョセフソン接合がトリガするのを防ぐために、前記読み出しパルスから減じられ、
前記第2の方向において前記第1のジョセフソン接合を通る前記バイアス電流が、前記第1のジョセフソン接合のトリガリングを防ぐために、前記読み出しパルスから減じられ、
前記第2の方向において前記第2のジョセフソン接合を通る前記バイアス電流が、前記第2のジョセフソン接合をトリガするために前記読み出しパルスに追加される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記相互量子論理比較器が、第3のジョセフソン接合及び第4のジョセフソン接合を更に備え、
前記第1及び第2のジョセフソン接合が、前記出力段に結合され、前記第3及び第4のジョセフソン接合が、前記相互量子論理比較器の平衡をほぼ保つために前記入力段に結合され、前記量子ビットが、前記第1の量子状態において第1の方向に、且つ前記第2の量子状態において第2の方向に、前記第1、第2、第3及び第4のジョセフソン接合を通る前記バイアス電流を生成するために、前記入力段及び前記出力段に誘導的に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1及び第2のジョセフソン接合並びに前記第3及び第4のジョセフソン接合に対して対称的に供給される相互量子論理クロック信号を生成するように構成された相互量子論理クロックを更に備え、
前記読み出しパルスが、前記相互量子論理クロック信号の第1のサイクルとほぼ同期される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
分路抵抗器が、位相量子ビットに対して対称的に配置されるように、前記相互量子論理比較器が、相互量子論理クロック信号及び前記相互量子論理比較器を対称的に相互接続する前記分路抵抗器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記量子ビットが位相量子ビットである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
位相量子ビットの量子状態を読み出すための方法であって、
前記位相量子ビットの第1の量子状態において第1の方向に、且つ前記位相量子ビットの第2の量子状態において第2の方向に、第1のジョセフソン接合及び第2のジョセフソン接合を通るバイアス電流を供給すること、
相互量子論理クロック信号の第1のサイクルにおいて読み出しパルスを印加することであって、前記読み出しパルスが、入力段において前記第1及び第2のジョセフソン接合に伝搬される、前記読み出しパルスを印加すること、
前記位相量子ビットが、前記第1の方向に供給されている前記バイアス電流と前記読み出しパルスとに基づいてトリガしている前記第1のジョセフソン接合に応じ、出力段において出力パルスを受信することに基づいた第1の量子状態にあるか、又は前記第2の方向に供給されている前記バイアス電流と前記読み出しパルスとに基づいてトリガしている前記第2のジョセフソン接合に応じ、前記出力段において出力パルスを受信しないことに基づいた第2の量子状態にあるかどうかを判定すること、を備える方法。
【請求項12】
前記読み出しパルスを伝搬するように少なくとも1つの入力ジョセフソン接合のトリガリングを容易にするために、前記相互量子論理クロック信号を前記入力段に供給すること、
量子ビットの第1の量子状態における前記読み出しパルスに応じて前記出力パルスを伝搬するように少なくとも1つの出力ジョセフソン接合のトリガリングを容易にするために、前記相互量子論理クロック信号を前記出力段に供給すること、
前記量子ビットの第1及び第2の量子状態のそれぞれの1つに基づいて、前記第1及び第2のジョセフソン接合の1つにおけるトリガリングを容易にするために、前記相互量子論理クロック信号を相互量子論理比較器に供給すること、を更に備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バイアス電流を供給することが、
前記第1及び第2のジョセフソン接合への前記位相量子ビットの誘導結合に基づいて前記バイアス電流を供給することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記バイアス電流を供給することが、
前記第1の方向に前記バイアス電流を供給して前記第2のジョセフソン接合に対して前記第1のジョセフソン接合の閾値を低下させること、
前記第2の方向に前記バイアス電流を供給して前記第1のジョセフソン接合に対して前記第2のジョセフソン接合の閾値を低下させること、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記バイアス電流を供給することが、
前記第1のジョセフソン接合をトリガして前記出力段において前記出力パルスを生成するために、前記第1のジョセフソン接合を通る前記第1の方向で前記バイアス電流を前記読み出しパルスに追加すること、
前記第1のジョセフソン接合のトリガリングをほぼ防ぐために、前記第1のジョセフソン接合を通る前記第2の方向で前記バイアス電流を前記読み出しパルスから減じること、を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して量子及び古典的デジタル超伝導回路に関し、特に量子ビット読み出し用の相互量子論理(RQL)比較器に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導デジタル技術は、前例の無いほど高速、低電力消費及び低動作温度から利益を得るコンピューティング及び/又は通信資源を提供した。超伝導回路の実装形態における典型的な目標は、非常に電力効率がよく、且つ温度による損失を最小化する方法におけるデータの非常に高速な動作である(例えば、数十ギガヘルツ)。超伝導技術は、量子情報を格納するために量子ビットを実現することができる。量子ビットの一例は、位相量子ビットであり、ジョセフソン接合を分路するインダクタから形成されるようなLC共振器として構成することができる。制御回路は、位相量子ビットに書き込むために用いることができ、読み出し回路は、位相量子ビットから量子状態を読み出すために用いることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一態様は、相互量子論理(RQL)読み出しシステムを含む。システムは、読み出しパルスが供給される入力段と、出力パルスを伝搬するように構成された出力段とを含む。システムはまた、量子ビットに結合される第1のジョセフソン接合及び第2のジョセフソン接合を含むRQL比較器を含む。バイアス電流が、量子ビットの第1の量子状態における第1のジョセフソン接合と、量子ビットの第2の量子状態における第2のジョセフソン接合との間で切り替わる。第1のジョセフソン接合は、読み出しパルスに応答してトリガして第1の量子状態において出力段で出力パルスを供給し、第2のジョセフソン接合は、読み出しパルスに応答してトリガして第2の量子状態において出力段で出力パルスを供給しない。
【0004】
本発明の別の態様は、位相量子ビットの量子状態を読み出すための方法を含む。方法は、位相量子ビットの第1の量子状態において第1の方向に、且つ位相量子ビットの第2の量子状態において第2の方向に、第1のジョセフソン接合及び第2のジョセフソン接合を通してバイアス電流を供給することを含む。方法はまた、RQLクロック信号の第1のサイクルにおいて読み出しパルスを印加することを含み、読み出しパルスは、入力段において、第1及び第2のジョセフソン接合に伝搬される。方法は、位相量子ビットが、第1の方向に供給されているバイアス電流と読み出しパルスとに基づいてトリガしている第1のジョセフソン接合に応じ、出力段において出力パルスを受信することに基づいた第1の量子状態にあるか、又は第2の方向に供給されているバイアス電流と読み出しパルスとに基づいてトリガしている第2のジョセフソン接合に応じ、出力段において出力パルスを受信しないことに基づいた第2の量子状態にあるかどうかを判定することを更に含む。
【0005】
本発明の別の態様は、RQL読み出しシステムを含む。システムは、RQLクロック信号を生成するように構成されたRQLクロックと、読み出しパルスが少なくとも1つの入力ジョセフソン接合を介して伝搬される際に沿う入力段とを含む。読み出しパルスは、RQLクロック信号の第1のサイクルにおいて供給することができる。システムはまた、RQLクロック信号の第1のサイクル中に、少なくとも1つの出力ジョセフソン接合を介して出力パルスを伝搬するように構成された出力段を含む。システムは、位相量子ビットに誘導的に結合される第1のジョセフソン接合及び第2のジョセフソン接合を含むRQL比較器を更に含む。第1及び第2のジョセフソン接合のそれぞれに関連する相対閾値は、読み出しパルスに応じて第1の量子状態において出力段で出力パルスを供給するために、且つ読み出しパルスに応じて第2の量子状態において出力段で出力パルスを供給しないために、位相量子ビットの第2の量子状態に対して位相量子ビットの第1の量子状態において変化する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】RQL読み出しシステムの例を示す。
図2】RQL読み出し回路の例を示す。
図3】タイミング図の例を示す。
図4】位相量子ビットの量子状態を読み出すための方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、概して量子及び古典的デジタル超伝導回路(quantum and classical digital superconducting circuit)に関し、特に量子ビット読み出し用の相互量子論理(reciprocal quantum logic : RQL)比較器に関する。RQL読み出しシステムは、読み出しパルスが供給される入力段を含むことができる。入力段は、読み出しパルスが伝播できる少なくとも1つの入力ジョセフソン接合(input Josephson junction)を含むことができる。読み出しパルスは、位相量子ビット(phase qubit)の量子状態を判定するために、外部RQL回路などから供給することができる。RQL読み出しシステムはまた、読み出しパルスに応じて、位相量子ビットの第1の量子状態で出力パルスを伝播するように構成された出力段を含むことができる。位相量子ビットが第2の量子状態である場合に、出力パルスは、読み出しパルスに応じて出力段において供給されない。RQL読み出しシステムはまた、位相量子ビットに結合される第1のジョセフソン接合及び第2のジョセフソン接合を含むRQL比較器を含む。位相量子ビットの量子状態は、第1及び第2のジョセフソン接合のそれぞれに関連する相対閾値を設定することができる。例として、位相量子ビットは、位相量子ビットの量子状態に依存して、ジョセフソン接合を通して第1の方向又は第2の方向のいずれかにバイアス電流フローを供給するために、RQL比較器に誘導的に結合され得る。従って、第1及び第2のジョセフソン接合の1つは、読み出しパルスに応答して、それぞれ第1及び第2のジョセフソン接合を通るバイアス電流の電流フローの方向に基づいたバイアス電流が読み出しパルスに追加されるか又は読み出しパルスから減じられることに基づいてトリガして出力段において出力パルスを供給するか又は供給しない。
【0008】
RQL読み出しシステムはまた、入力段、出力段及びRQL比較器のそれぞれにRQLクロック信号を供給するRQLクロックを含む。位相量子ビットが、RQL比較器に誘導的に結合され得るので、位相量子ビットは、RQLクロック及び関連する分路抵抗器(shunt resistor)から効果的に分離することができる。その結果、位相量子ビットは、位相量子ビットのコヒーレンス時間の劣化をほぼ防ぐために、電位ノイズ源から分離される。RQLクロック信号は、読み出しパルスがRQLクロック信号の第1のサイクル(例えば正のサイクル)において供給され得るように、ジョセフソン接合のトリガリング(triggering)を容易にする(facilitate)ために入力段、出力段及びRQL比較器においてジョセフソン接合の閾値に影響することができる。RQLクロック信号の第2のサイクル(例えば負のサイクル)中に、負のパルスは、それぞれのジョセフソン接合をリセットするために供給され、従って、位相量子ビットの量子状態の後続の読み出しを可能にすることができる。
【0009】
図1は、RQL読み出しシステム10の例を示す。RQL読み出しシステム10は、超伝導量子ビット12から量子状態を読み出すために、様々な量子及び古典的コンピューティング環境において実現することができる。例として、RQL読み出しシステム10の少なくとも一部は、超伝導環境において集積回路(IC)上に実現することができる。図1の例において、量子ビット12は、位相量子ビットとして構成される。例えば、位相量子ビット12は、超伝導ループ(例えばインダクタ)に埋め込まれるジョセフソン接合として配置することができる。従って、位相量子ビット12の「1」及び「ゼロ」量子状態は、(例えば約3μA未満の電流差を有する)位相量子ビット12のインダクタにおける一磁束量子の存在又は欠如によって異なり得る。
【0010】
RQL読み出しシステム10はまた、入力段14、出力段16及びRQL比較器18を含む。入力段14は、読み出し動作中など、位相量子ビット12の量子状態を読み出すために供給される読み出しパルスRD_PLSを伝搬するように構成される。例として、入力段14が、読み出しパルスRD_PLSを伝搬するために連続してトリガできる少なくとも1つの入力ジョセフソン接合を含むことができるように、読み出しパルスRD_PLSは、外部回路から生成される。同様に、出力段16は、位相量子ビット12の第1の量子状態における読み出しパルスRD_PLSに応じて生成される出力パルスOUTを伝搬するように構成される。例えば、出力段16は、位相量子ビット12が第1の量子状態であることを示す出力パルスOUTを伝搬するために連続してトリガできる少なくとも1つの出力ジョセフソン接合を含むことができる。反対に、位相量子ビット12が第2の量子状態である場合に、出力パルスOUTは、生成されない。従って、出力パルスOUTは、位相量子ビット12が第2の量子状態である場合に、読み出しパルスRD_PLSに応じては出力段16において伝搬されない。
【0011】
RQL比較器18は、読み出しパルスRD_PLSに応じて位相量子ビット12の量子状態を判定するように、且つ位相量子ビット12が第1の量子状態である場合に出力パルスOUTを生成するように構成される。従って、位相量子ビット12の量子状態は、他の量子又は古典的回路に示すことができる。例えば、出力パルスOUTは、量子誤差補正、又は様々な他の量子若しくは古典的処理用途のために実現することができる。図1の例において、位相量子ビット12は、バイアス電流Iが、RQL比較器18を通って流れることができるように、RQL比較器18に対称的に結合されるように示されている。バイアス電流Iのフロー方向は、位相量子ビット12の量子状態に基づくことができる。例えば、位相量子ビット12は、バイアス電流IがRQL比較器18を通って流れるために磁気的に誘導されるように、RQL比較器18に誘導的に結合され得る。本明細書で説明されるように、「誘導結合」は、1つのインダクタを通る電流フローが、それぞれのインダクタの共通コアを通る磁界に基づいて、もう一方のインダクタを通る電流フローを誘導するようなそれぞれのインダクタ間の磁気結合を指す。
【0012】
図1の例において、RQL比較器18は、位相量子ビット12に対して対称的に配置できるジョセフソン接合20を含む。例として、RQL比較器18は、バイアス電流Iの一部が通って流れ、それぞれ出力段16に結合される第1のジョセフソン接合20及び第2のジョセフソン接合20を含むことができる。従って、電流ループにおけるバイアス電流Iの方向は、読み出しパルスRD_PLSに応じて、第1及び第2のジョセフソン接合20の1つを選択的にトリガするために、第1及び第2のジョセフソン接合20のそれぞれにおける閾値に不均等に影響を及ぼすことができる。その結果、位相量子ビット12の第1の量子状態において、第1のジョセフソン接合はトリガして出力パルスOUTを供給することができる。例として、第1のジョセフソン接合20を通って流れるバイアス電流Iは、第1のジョセフソン接合20の閾値を超えるように読み出しパルスRD_PLSに追加され、従って、第1のジョセフソン接合20をトリガして出力パルスOUTを生成することができる。反対に、位相量子ビット12の第2の量子状態において、第2のジョセフソン接合はトリガして出力パルスOUTが出力段16において伝搬するのを防ぐことができる。例として、第1のジョセフソン接合20を通って流れるバイアス電流Iは、第1のジョセフソン接合20をトリガしないために第1のジョセフソン接合20の閾値に達しないように、しかし代わりに第2のジョセフソン接合20をトリガし、結果として出力パルスOUTの非生成に帰着するように、読み出しパルスRD_PLSから減じることができる。
【0013】
RQL読み出しシステム10はまた、RQLクロック信号CLKを生成するように構成されるRQLクロック22を含む。例として、RQLクロック信号CLKは、非常に高い周波数(例えば数十ギガヘルツ)を有するような4相(例えば直交)クロック信号とすることができる。図1の例において、RQLクロック信号CLKは、入力段14、出力段16及びRQL比較器18に供給されるように示されている。読み出しパルスRD_PLSは、RQLクロック信号CLKと組み合わされた場合に、それぞれのジョセフソン接合のトリガリングを容易にするために、入力段における入力ジョセフソン接合、出力段における出力ジョセフソン接合、及びRQL比較器18におけるジョセフソン接合20の少なくとも一部の閾値を超えることができる。例えば、読み出しパルスは、RQLクロック信号CLKの第1のサイクル(例えば正のサイクル)において供給することができ、RQLクロック信号CLKの第2のサイクル(例えば負のサイクル)中に、負パルスが、それぞれのジョセフソン接合をリセットするために供給され得る。例として、RQLクロック信号CLKは、ジョセフソン接合20がRQLクロック信号CLKに対して対称的に配置されるように、コモンモード接続でRQL比較器18に供給することができる。従って、入力段14におけるRQLクロック信号CLKの平衡接続(balanced connection)に基づいて、出力段16、RQL比較器18、RQLクロック信号CLK、及び関連する分路抵抗器は、バイアス電流Iを不平衡にしない。加えて、RQL比較器18への位相量子ビット12の誘導結合のために、RQLクロック信号CLKは、位相量子ビット12から効果的に分離される。
【0014】
従って、RQL読み出しシステム10は、実質的に緩和されたデコヒーレンス(decoherence)を備えた非常に迅速な方法で、位相量子ビット12の量子状態を読み出すための方法を提供する。RQL読み出しシステム10が、RQLベースの量子論理を実現するので、RQL読み出しシステム10は、実質的に最小の損失及び発熱(例えば、局所的な発熱を引き起こさずに約20mKの温度で動作する)で、非常に高速なデータ速度(例えば、1ナノ秒未満で量子状態を読み出す)で位相量子ビット12の量子状態の読み出しを提供するように構成することができる。加えて、ジョセフソン接合20の配置及びバイアス電流Iのそれぞれの相互作用を考慮したRQL比較器18の均衡のとれた製造に基づいて、RQL読み出しシステム10は、例えばほぼ3μA未満の電流振幅変化を識別でき、従って非常に高い感度を達成することができる。更に、RQLクロック信号CLKからの位相量子ビット12の分離に基づき、且つRQLクロック信号CLKの平衡配置(balanced arrangement)に基づいて、RQL読み出しシステム10は、位相量子ビット12の量子状態のデコヒーレンスを実質的に軽減することができる。
【0015】
RQL読み出しシステム10が、RQL読み出しシステム10のコンポーネントを相互接続する、且つ/又はそれらのコンポーネントに含まれる1つ又は複数の回路装置を含むように、RQL読み出しシステム10が、単純化して示されていることを理解されたい。例えば、本明細書で説明されているように、用語「結合される」は、電流及び/又は電流パルスが、1つ又は複数のインダクタ又は他の装置を通して、結合されたコンポーネント間に流れることができるように、関連する量子回路における1つ又は複数の回路装置(例えばインダクタ)を通した電気的結合を指すことができる。従って、RQL読み出しシステム10における装置間の結合は、インダクタ及び/又は他の回路装置を通した結合を含むことができる。
【0016】
図2は、RQL読み出し回路50の例を示す。RQL読み出し回路50は、図1の例におけるRQL読み出しシステム10に対応することができる。従って、RQL読み出し回路50は、位相量子ビット52から量子状態を読み出すために、様々な量子及び古典的コンピューティング環境において実現することができる。例として、RQL読み出し回路50の少なくとも一部は、超伝導環境(例えば極低温)においてIC上に実現することができる。
【0017】
RQL読み出し回路50はまた、入力段54、出力段56及びRQL比較器58を含む。入力段54は、読み出し動作中など、位相量子ビット52の量子状態を読み出すために供給される読み出しパルスRD_PLSを伝搬するように構成される。例として、入力段54が、連続してトリガして読み出しパルスRD_PLSを伝搬する少なくとも1つの入力ジョセフソン接合を含むことができるように、読み出しパルスRD_PLSは、外部回路から生成される。入力段54は、読み出しパルスRD_PLSが供給される際に通るインダクタセットを含む。図2の例において、入力段54は、第1のインダクタL、第2のインダクタL、第3のインダクタL及び第4のインダクタLを含む。入力段54はまた、第1及び第2のインダクタL及びL、並びに低電圧レール(例えばグランド)に結合される第1のジョセフソン接合Jを含み、且つ第3及び第4のインダクタL及びL並びに低電圧レールに結合される第2のジョセフソン接合Jを含む。
【0018】
第1及び第2のジョセフソン接合J及びJは、第2、第3及び第4のインダクタL、L及びLを介し、入力段54に沿って読み出しパルスRD_PLSを伝搬するために連続してトリガするように構成される。図2の例において、RQL読み出し回路50は、誘導結合61(例えば変圧器)及びインダクタLC1を介して、第2及び第3のインダクタL及びL間で入力段54に供給されるRQLクロック信号CLKを生成するように構成されるRQLクロック60を含む。従って、RQLクロック信号CLKは、第1及び第2のジョセフソン接合J及びJのトリガリングを容易にする。例として、読み出しパルスRD_PLSは、第1及び第2のジョセフソン接合J及びJが、読み出しパルスRD_PLSに応じてトリガする十分な電流を有することができるように、RQLクロック信号CLKの正のサイクルとほぼ同時に供給され得る。図2の例において、RQLクロック信号CLKは、インダクタLC2及び抵抗器Rを介してグランドに分路される。入力段54の配置において、抵抗器Rはまた、第1及び第2のジョセフソン接合J及びJ用の共通の分路抵抗器として設けられる。その結果、インダクタLは、位相量子ビット52の量子ビットコヒーレンス時間における抵抗器ノイズの影響を更に軽減するなどのために、位相量子ビット52に対する抵抗器Rの追加の誘導分離を提供することができる。
【0019】
RQL比較器58は、読み出しパルスRD_PLSに応じて位相量子ビット52の量子状態を判定するように、且つ位相量子ビット52が第1の量子状態である場合に、出力パルスOUTを生成するように構成される。図2の例において、位相量子ビット52のインダクタLPQ1は、インダクタLPQ2を通して、且つ(例えば電流Iに作用するインダクタンスを実質的に軽減するために)誘導性コモンモードチョークとして配置される変圧器62を通して、位相量子ビット52の量子状態に基づいて電流Iを誘導するためにインダクタLPQ2に誘導的に結合されるように示されている。図2の例において、電流Iは、反対方向に流れる電流IQ1及びIQ2として示されている。しかしながら、電流IQ1及びIQ2が、位相量子ビット52の量子状態に依存して、反対方向に流れる電流Iに対応することを理解されたい。例えば、電流IQ1は、第1の量子状態を有する位相量子ビット52に基づいて、第1の方向に流れる電流Iに対応することができ、電流IQ2は、第2の量子状態を有する位相量子ビット52に基づいて、第2の方向に流れる電流Iに対応することができる。従って、電流IQ1及びIQ2は、位相量子ビット52の量子状態に基づいた大きさ及び方向において、ほぼ等しい。
【0020】
位相量子ビット52は、インダクタLPQ2、変圧器62、入力段54に結合されるインダクタLI1、及び出力段56に結合されるインダクタLO1を介して、RQL比較器58に誘導的に結合される。RQL比較器58は、ノード64においてインダクタLI1にそれぞれ結合されるジョセフソン接合J及びJ、並びにノード66においてインダクタLO1にそれぞれ結合されるジョセフソン接合J及びJを含む。ジョセフソン接合J及びJは、インダクタLRQ1及びLRQ2を介して結合され、ジョセフソン接合J及びJは、グランドに結合される。加えて、RQLクロック信号CLKは、誘導結合68(例えば変圧器)並びにインダクタLC3及びLC4のペアを介して、インダクタLRQ1及びLRQ2間にコモンモード方法で供給され、分路抵抗器Rは、インダクタLC3及びLC4をグランドに相互接続する。従って、位相量子ビット52は、RQL比較器58に対称的に結合され、RQL比較器58は、そのRQL比較器58における回路コンポーネントに関して対称である。前述と同様に、RQLクロック信号CLKは、ジョセフソン接合においてジョセフソン接合のトリガリングを容易にする。例として、読み出しパルスRD_PLSは、ジョセフソン接合Jが、ジョセフソン接合J及びJに読み出しパルスRD_PLSを伝搬でき、且つジョセフソン接合J及びJの1つが、読み出しパルスRD_PLSに応じてトリガする十分な電流を有することができるように、RQLクロック信号CLKの正のサイクルとほぼ同時に供給され得る。図2の例において、分路抵抗器が所与の回路の各ジョセフソン接合と並列に設けられる典型的な超伝導回路用途に対立するものとして、抵抗器Rは、ジョセフソン接合J、J、J及びJに対する共通分路抵抗器として、位相量子ビット52に対して対称的に配置される。従って、抵抗器Rの対称的な共通分路配置は、位相量子ビット52のコヒーレンス時間を劣化させる可能性があるノイズの存在を実質的に軽減する。
【0021】
前述のように、バイアス電流Iのフロー方向は、位相量子ビット52の量子状態に基づくことができ、電流IQ1としてインダクタLO1を通ってノード66に流れ込むか、又は電流IQ2としてインダクタLO1を通ってノード66から外へ流れる。図2の例において、電流IQ1は、ノード66において分岐するように示されており、電流IQ1の第1の部分(電流IJ51として示されている)は、ジョセフソン接合Jを通ってインダクタLRQ2に流れ、電流IQ1の第2の部分(電流IJ61として示されている)は、ジョセフソン接合Jを通ってグランドに流れる。同様に、電流IQ2は、ノード66において合流するように示され、電流IQ2の第1の部分(電流IJ52として示されている)は、ジョセフソン接合Jを通ってノード66に流れ、電流IQ2の第2の部分(電流IJ62として示されている)は、グランドからジョセフソン接合Jを通ってノード66に流れる。従って、電流IJ51及びIJ61は、電流IQ1、つまり位相量子ビット52の第1の量子状態に対応し、電流IJ52及びIJ62は、電流IQ2、つまり位相量子ビット52の第2の量子状態に対応する。従って、電流IJ51及びIJ61、並びに電流IJ52及びIJ62は、読み出しパルスRD_PLSに対してジョセフソン接合J及びJの相対閾値を変化させる。
【0022】
読み出し動作中に、読み出しパルスRD_PLSは、ジョセフソン接合Jをトリガするために、入力段54を通り(例えばジョセフソン接合J及びJを介してインダクタL、L、L及びLを通り)、且つインダクタLI1を通って伝搬する。従って、読み出しパルスRD_PLSは、インダクタLRQ1及びLRQ2を通ってジョセフソン接合J及びJに伝搬される。従って、バイアス電流Iは、位相量子ビット52の量子状態に基づいて、ジョセフソン接合J及びJに関して、読み出しパルスRD_PLSに追加されるか又は読み出しパルスRD_PLSから減じられる。
【0023】
例えば、位相量子ビット52の第1の量子状態において、電流IQ1は、ノード66に流れ込み、これにより、電流IJ51は、ノード66からジョセフソン接合Jを通って流れ、電流IJ61は、ノード66からジョセフソン接合Jを通って流れる。電流IJ51が、ジョセフソン接合JからインダクタLRQ1及びLRQ2を通って伝搬される読み出しパルスRD_PLSに対して反対に流れるので、電流IJ51は、読み出しパルスRD_PLSが減じられる(例えばジョセフソン接合Jの閾値を増加させる)。従って、ジョセフソン接合Jは、位相量子ビット52の第1の量子状態においてトリガしない。しかしながら、電流IJ61が、ジョセフソン接合JからインダクタLRQ1及びLRQ2を通って伝搬される読み出しパルスRD_PLSと同じ方向に流れるので、電流IJ61は、読み出しパルスRD_PLSに追加される(例えばジョセフソン接合Jの閾値を低下させる)。従って、ジョセフソン接合Jは、位相量子ビット52の第1の量子状態においてトリガする。
【0024】
別の例として、位相量子ビット52の第2の量子状態において、電流IQ2は、ノード66から流れ、従って電流IJ52は、ジョセフソン接合Jを通ってノード66に流れ込み、電流IJ62は、ジョセフソン接合Jを通ってノード66に流れ込む。電流IJ52が、ジョセフソン接合JからインダクタLRQ1及びLRQ2を通って伝搬される読み出しパルスRD_PLSと同じ方向に流れるので、電流IJ52は、読み出しパルスRD_PLSに追加される(例えばジョセフソン接合Jの閾値を低下させる)。従って、ジョセフソン接合Jは、位相量子ビット52の第2の量子状態においてトリガする。しかしながら、電流IJ62が、ジョセフソン接合JからインダクタLRQ1及びLRQ2を通って伝搬される読み出しパルスRD_PLSと反対方向に流れるので、電流IJ62は、読み出しパルスRD_PLSから減じられる(例えばジョセフソン接合Jの閾値を増加させる)。従って、ジョセフソン接合Jは、位相量子ビット52の第2の量子状態においてトリガしない。
【0025】
出力段56は、ジョセフソン接合Jのトリガリングに応じて、つまり位相量子ビット52の第1の量子状態において生成される出力パルスOUTを伝搬するように構成される。出力段56は、入力段54に対してほぼ同様に(例えば対称的に)配置されるように、図2の例に示されている。図2の例において、出力段56は、出力パルスOUTが、ジョセフソン接合JからインダクタLO1を通って伝搬する際に通るインダクタセットを含む。図2の例において、出力段56は、第1のインダクタL、第2のインダクタL、第3のインダクタL及び第4のインダクタLを含む。出力段56はまた、第3及び第4のインダクタL及びL並びにグランドに結合される第1のジョセフソン接合Jを含み、且つ第1及び第2のインダクタL及びL並びにグランドに結合される第2のジョセフソン接合Jを含む。第1及び第2のジョセフソン接合J及びJは、第2、第3及び第4のインダクタL、L及びLを介し出力段56に沿って出力パルスOUTを伝搬するために連続してトリガするように構成される。図2の例において、RQLクロック信号CLKは、誘導結合70(例えば変圧器)及びインダクタLC5を介して、第2及び第3のインダクタL及びL間で出力段56に供給され、インダクタLC6及び抵抗器Rを介してグランドに分路される。出力段56の配置において、抵抗器Rはまた、第1及び第2のジョセフソン接合J及びJ用の共通分路抵抗器として設けられる。その結果、インダクタLは、位相量子ビット52の量子ビットコヒーレンス時間に対する抵抗器ノイズの影響を更に軽減するためなど、位相量子ビット52に対する抵抗器Rの追加の誘導分離を提供することができる。
【0026】
従って、RQLクロック信号CLKは、第1及び第2のジョセフソン接合J及びJのトリガリングを容易にする。従って、位相量子ビット52の第1の量子状態における読み出しパルスRD_PLSに応答したジョセフソン接合Jのトリガリングに応じて、出力パルスOUTは、位相量子ビット52の第1の量子状態を示すために、出力段56において供給される。反対に、位相量子ビット52の第2の量子状態における読み出しパルスRD_PLSに応答したジョセフソン接合Jの代わりのジョセフソン接合Jのトリガリングに応じて、出力パルスOUTは、位相量子ビット52の第2の量子状態を示すために、出力段56において供給されない。
【0027】
RQL読み出し回路50が、図2の例に制限されないことを理解されたい。例として、入力段54及び出力段56は、図2の例に示されているようには制限されず、1つ若しくは複数の追加のジョセフソン接合及び/又は1つ若しくは複数の追加のインダクタなど、追加の回路コンポーネントを含むことができる。加えて、本明細書で説明される読み出し動作は、位相量子ビット52の読み出しに制限されず、電流フロー方向に基づく論理又は量子状態を有する様々な他の量子ビット又は回路装置が、RQL読み出し回路50において実現され得る。従って、RQL読み出し回路50は、様々な方法で構成することができる。
【0028】
図3は、タイミング図100の例を示す。タイミング図100は、RQL読み出し回路50のタイミングに対応することができる。従って、図3の例の以下の説明において、図2の例に対して参照がなされる。タイミング図100は、電流Iが、位相量子ビット52の第1の量子状態において電流IQ1として供給されることを電流IQ1の正の大きさが示し、且つ電流Iが、位相量子ビット52の第2の量子状態において電流IQ2として供給されることを電流IQ1の負の大きさが示すように、電流IQ1を示す。タイミング図100はまた、読み出しパルスRD_PLS、電流IJ51、電流IJ61及び出力パルスOUTを示す。電流IJ51は、電流Iが、第2の量子状態において電流IQ2として供給される場合に、負の大きさを有するように示され、且つ電流Iが、第1の量子状態において電流IQ1として供給される場合に、電流IJ52に対応する正の大きさを有するように示される。同様に、電流IJ61は、電流Iが、第2の量子状態において電流IQ1として供給される場合に、負の大きさを有するように同様に示され、且つ電流Iが、第1の量子状態において電流IQ2として供給される場合に、電流IJ62に対応する正の大きさを有するように示される。
【0029】
時間Tにおいて、電流IQ1は、位相量子ビット52が第2の量子状態であるように、負である。読み出しパルスRD_PLSは、RQLクロック信号CLKの正のサイクルと同時などに、入力段54において供給される。電流IJ51は、時間Tにおいて負であり、従って、ジョセフソン接合Jに関して読み出しパルスRD_PLSに追加される。電流IJ61もまた負であり、ジョセフソン接合Jに関して読み出しパルスRD_PLSから減じられる。従って、ジョセフソン接合Jはトリガし、ジョセフソン接合Jは、トリガしない。その結果、出力パルスOUTは、生成されず、出力段56に沿って伝搬されない。これにより、出力段56は、位相量子ビット52が、第2の量子状態であることを示す。時間Tにおいて、読み出しパルスRD_PLSは、RQL読み出し回路50のジョセフソン接合をリセットするために、RQLクロック信号CLKの負のサイクルとほぼ同時などに、負パルスとして供給される。時間Tにおいて、読み出しパルスRD_PLSは、再び供給され、前述と同様に、位相量子ビット52の表示が第2の量子状態であることに帰着する。時間Tにおいて、読み出しパルスRD_PLSは、RQL読み出し回路50のジョセフソン接合をリセットするために、負パルスとして再び供給される。
【0030】
時間Tにおいて、電流IQ1は、位相量子ビット52が第1の量子状態であるように、正である。読み出しパルスRD_PLSは、入力段54で供給され、電流IJ51は、正であり、従ってジョセフソン接合Jに関して読み出しパルスRD_PLSから減じられる。電流IJ61は、同様に正であり、従って、ジョセフソン接合Jに関して読み出しパルスRD_PLSに追加される。これにより、ジョセフソン接合Jはトリガせず、ジョセフソン接合Jは、トリガする。その結果、出力パルスOUTは、生成され、出力段56に沿って伝搬される。このため、出力段56は、位相量子ビット52が第1の量子状態であることを示す。時間Tにおいて、読み出しパルスRD_PLSは、RQL読み出し回路50のジョセフソン接合をリセットするために、負パルスとして供給される。時間Tにおいて、読み出しパルスRD_PLSは、再び供給され、前述と同様に、位相量子ビット52の表示が再び第1の量子状態であることに帰着する。時間Tにおいて、読み出しパルスRD_PLSは、RQL読み出し回路50のジョセフソン接合をリセットするために、負パルスとして再び供給される。
【0031】
上記で説明した前述の構造及び機能的特徴を考慮すれば、本発明の様々な態様による方法論は、図4に関連してよりよく理解されよう。説明の単純化のために図4の方法論は、連続的に実行するように示され説明されているが、本発明が、示された順序によって限定されないことを理解し認識されたい。何故なら、幾つかの態様が、本発明に従って、本明細書で示され説明されているものと異なる順序で且つ/又は異なる態様と同時に行われ得るからである。更に、全ての示された特徴が、本発明の態様に従って方法論を実行するために要求され得るわけではない。
【0032】
図4は、位相量子ビット(例えば位相量子ビット12)の量子状態を読み出すための方法150の例を示す。152において、バイアス電流(例えばバイアス電流I)が、位相量子ビットの第1の量子状態において第1の方向(例えばバイアス電流IQ1)に、且つ位相量子ビットの第2の量子状態において第2の方向(例えばバイアス電流IQ2)に、第1のジョセフソン接合(例えばジョセフソン接合J)及び第2のジョセフソン接合(例えばジョセフソン接合J)を通して供給される。154において、読み出しパルス(例えば読み出しパルスRD_PLS)が、RQLクロック信号(例えばRQLクロック信号CLK)の第1のサイクルで印加され、読み出しパルスは、入力段(例えば入力段14)において、第1及び第2のジョセフソン接合に伝搬される。156において、位相量子ビットは、第1の方向に供給されているバイアス電流と読み出しパルスとに基づいてトリガしている第1のジョセフソン接合に応じ、出力段(例えば出力段16)において出力パルス(例えば出力パルスOUT)を受信することに基づいた第1の量子状態にあるか、又は第2の方向に供給されているバイアス電流と読み出しパルスとに基づいてトリガしている第2のジョセフソン接合に応じ、出力段において出力パルスを受信しないことに基づいた第2の量子状態にあるかを判定される。
【0033】
上記で説明したものは、本発明の例である。もちろん、本発明を説明する目的で全ての考えられるコンポーネント又は方法論の組み合わせを説明することは不可能であるが、しかし当業者は、本発明の多くの更なる組み合わせ及び置き換えが可能であることを理解されよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を含む、本出願の範囲内に入る全てのかかる変更、修正及び変形を包含するように意図されている。
以下に、上記各実施形態から把握できる技術思想を記載する。
(付記1)
相互量子論理(RQL)読み出しシステムであって、
相互量子論理クロック信号を生成するように構成された相互量子論理クロックと、
少なくとも1つの入力ジョセフソン接合を介して読み出しパルスが伝搬される際に沿う入力段であって、前記読み出しパルスが、前記相互量子論理クロック信号の第1のサイクルで供給される入力段と、
前記相互量子論理クロック信号の第1のサイクル中に、少なくとも1つの出力ジョセフソン接合を介して出力パルスを伝搬するように構成された出力段と、
位相量子ビットに誘導的に結合される第1のジョセフソン接合及び第2のジョセフソン接合と、相互量子論理比較器及び前記位相量子ビットに対して対称的に配置される分路抵抗器とを含む相互量子論理比較器であって、前記第1及び第2のジョセフソン接合のそれぞれに関連する相対閾値が、前記読み出しパルスに応じ第1の量子状態において前記出力段で前記出力パルスを供給するように、且つ前記読み出しパルスに応じ第2の量子状態において前記出力段で前記出力パルスを供給しないように、前記位相量子ビットの第2の量子状態に対して前記位相量子ビットの第1の量子状態において変化する前記相互量子論理比較器と、備えるシステム。
(付記2)
前記位相量子ビットが、第1の量子状態において第1の方向に、且つ第2の量子状態において第2の方向に、前記第1及び第2のジョセフソン接合を流れるバイアス電流を生成し、前記バイアス電流が、前記第1及び第2のジョセフソン接合のそれぞれに関連する相対閾値を変更するように供給される、付記1に記載のシステム。
(付記3)
前記第1の方向において前記第1のジョセフソン接合を通る前記バイアス電流が、前記第1のジョセフソン接合をトリガして前記出力パルスを生成するために、前記読み出しパルスに追加され、
前記第1の方向において前記第2のジョセフソン接合を通る前記バイアス電流が、前記第2のジョセフソン接合がトリガするのを防ぐために、前記読み出しパルスから減じられ、
前記第2の方向において前記第1のジョセフソン接合を通る前記バイアス電流が、前記第1のジョセフソン接合のトリガリングを防ぐために、前記読み出しパルスから減じられ、
前記第2の方向において前記第2のジョセフソン接合を通る前記バイアス電流が、前記第2のジョセフソン接合をトリガするために、前記読み出しパルスに追加される、付記2に記載のシステム。
(付記4)
前記相互量子論理比較器が、第3のジョセフソン接合及び第4のジョセフソン接合を更に備え、
前記第1及び第2のジョセフソン接合が、前記出力段に結合され、前記第3及び前記第4のジョセフソン接合が、前記入力段に結合される、付記1に記載のシステム。
(付記5)
前記相互量子論理クロック信号が、前記位相量子ビットに対して対称的に供給され、前記読み出しパルスが、前記相互量子論理クロック信号の前記第1のサイクルとほぼ同期される、付記1に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4