特許第6243552号(P6243552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243552
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   H02J9/06 120
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-561152(P2016-561152)
(86)(22)【出願日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2014081313
(87)【国際公開番号】WO2016084179
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 勝
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅博
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−135708(JP,A)
【文献】 特開2010−124557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−5/00
9/00−11/00
H02M7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無停電電源装置であって、
商用交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータとを備え、
前記商用交流電源から交流電力が供給される通常時は前記コンバータで生成された直流電力が前記インバータに供給されるとともに電力蓄積装置に蓄えられ、前記商用交流電源からの交流電力の供給が停止された停電時は前記電力蓄積装置の直流電力が前記インバータに供給され、
前記負荷は入力許容電圧範囲内の交流電圧を受けて一定の交流電力を消費し、
前記無停電電源装置の定格容量に対する負荷容量の割合が予め定められた値である場合に前記無停電電源装置の効率は最大になり、
さらに、前記定格容量に対する前記負荷容量の割合が前記予め定められた値と異なる場合は、前記効率が上昇するように前記入力許容電圧範囲内で前記インバータの出力電圧を制御する制御装置を備える、無停電電源装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記定格容量に対する前記負荷容量の割合が前記予め定められた値よりも小さい場合は、前記効率が上昇するように前記負荷の入力許容電圧範囲内で前記インバータの出力電圧を低下させて負荷電流を増大させる、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記インバータの出力電圧を低下させるとともに前記コンバータの出力電圧を低下させる、請求項2に記載の無停電電源装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記定格容量に対する前記負荷容量の割合が前記予め定められた値よりも大きい場合は、前記効率が上昇するように前記入力許容電圧範囲内で前記インバータの出力電圧を上昇させて負荷電流を減少させる、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項5】
前記定格容量に対する前記負荷容量の割合が前記予め定められた値と異なる場合は前記効率が上昇するように前記入力許容電圧範囲内で前記インバータの出力電圧を制御する出力電圧制御モードと、前記インバータの出力電圧を定格電圧に維持する定格電圧出力モードとを有し、
前記制御装置は、前記出力電圧制御モードと前記定格電圧出力モードのうちの選択された方のモードを実行する、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記インバータの出力電圧を制御した場合に負荷電流が変動する場合は、前記インバータの出力電圧を定格電圧に設定する、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記商用交流電源からの交流電圧の変動に応じて前記コンバータの出力電圧を変動させる、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項8】
さらに、前記通常時は前記コンバータで生成された直流電力を前記電力蓄積装置に供給し、前記停電時は前記電力蓄積装置の直流電力を前記インバータに供給する双方向チョッパを備える、請求項1に記載の無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は無停電電源装置に関し、特に、商用交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータとを備えた無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2010−124557号公報(特許文献1)には、コンバータ、インバータ、および直流昇降圧器を備えた無停電電源装置が開示されている。コンバータは、商用交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換する。インバータは、直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する。直流昇降圧器は、商用交流電源から交流電力が供給される通常時はコンバータで生成された直流電力を蓄電池に供給し、商用交流電源からの交流電力の供給が停止された停電時は蓄電池の直流電力をインバータに供給する。したがって、停電が発生した場合でも、蓄電池に直流電力が蓄えられている期間は負荷の運転を継続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−124557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような無停電電源装置は、一定の定格電圧を出力し、その定格容量に対する負荷容量の割合が所定値(たとえば60%)である場合に効率が最大になるように構成されている。したがって、従来の無停電電源装置では、負荷容量によっては効率が最大値よりも低くなるという問題があった。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、効率の高い無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る無停電電源装置は、商用交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータと、直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータとを備えたものである。商用交流電源から交流電力が供給される通常時はコンバータで生成された直流電力がインバータに供給されるとともに電力蓄積装置に蓄えられ、商用交流電源からの交流電力の供給が停止された停電時は電力蓄積装置の直流電力がインバータに供給される。負荷は入力許容電圧範囲内の交流電圧を受けて一定の交流電力を消費する。無停電電源装置の定格容量に対する負荷容量の割合が予め定められた値である場合に無停電電源装置の効率は最大になる。この無停電電源装置は、さらに、定格容量に対する負荷容量の割合が予め定められた値と異なる場合は、効率が上昇するように入力許容電圧範囲内でインバータの出力電圧を制御する制御装置を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る無停電電源装置では、効率が上昇するように負荷の入力許容電圧範囲内でインバータの出力電圧を制御する。したがって、インバータの出力電圧を一定の定格電圧に固定していた従来よりも効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1による無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図2図1に示した無停電電源装置の定格容量に対する負荷容量の割合と無停電電源装置の効率との関係を示す図である。
図3図1に示した制御装置の出力電圧制御モード時の動作を示すフローチャートである。
図4】実施の形態1の変更例を示すフローチャートである。
図5】この発明の実施の形態2による無停電電源装置の要部を示す回路図である。
図6図5に示したスイッチング素子の構成を例示する回路図である。
図7図6に示したIGBTで発生する損失を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による無停電電源装置1の構成を示す回路ブロック図である。この無停電電源装置1は、商用交流電源21からの三相交流電力を直流電力に一旦変換し、その直流電力を三相交流電力に変換して負荷24に供給するものであるが、図面および説明の簡単化のため、図1では一相分の回路のみが示されている
図1において、この無停電電源装置1は、交流入力端子T1、バイパス入力端子T2、バッテリ端子T3、および交流出力端子T4を備える。交流入力端子T1は、商用交流電源21から商用周波数の交流電力を受ける。バイパス入力端子T2は、バイパス交流電源22から商用周波数の交流電力を受ける。バイパス交流電源22は、商用交流電源であってもよいし、発電機であってもよい。
【0010】
バッテリ端子T3は、バッテリ(電力蓄積装置)23に接続される。バッテリ23は、直流電力を蓄える。バッテリ23の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。交流出力端子T4は、負荷24に接続される。負荷24は、交流電力によって駆動される。
【0011】
この無停電電源装置1は、さらに、電磁接触器2,8,13,16、保護用ヒューズ3,6、交流リアクトル4,11、コンバータ5、双方向チョッパ7、平滑用電解コンデンサ9、インバータ10、コンデンサ12、電流検出器14、半導体スイッチ15、操作部17、および制御装置18を備える。
【0012】
電磁接触器2、保護用ヒューズ3、および交流リアクトル4は、交流入力端子T1とコンバータ5の入力ノードとの間に直列接続される。電磁接触器2は、無停電電源装置1の使用時はオンされ、たとえば無停電電源装置1のメンテナンス時にオフされる。電磁接触器2と保護用ヒューズ3の間のノードN1に現れる交流入力電圧VIの瞬時値は、制御装置18によって検出される。交流入力電圧VIの検出値に基づいて、停電の発生の有無などが判別される。
【0013】
保護用ヒューズ3は、過電流が流れた場合にブローされ、無停電電源装置1などを保護する。交流リアクトル4は、低域通過フィルタを構成し、商用交流電源21からコンバータ5に商用周波数の交流電力を通過させ、コンバータ5で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源21に通過することを防止する。
【0014】
コンバータ5は、順変換器であって制御装置18によって制御され、商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時は、交流電力を直流電力に変換して電源ノードN2に出力する。商用交流電源21からの交流電力の供給が停止された停電時は、コンバータ5の運転は停止される。コンバータ5の出力電圧は、所望の値に制御可能になっている。平滑用電解コンデンサ9は、電源ノードN2に接続され、電源ノードN2の電圧を平滑化させる。電源ノードN2に現れる直流電圧VDCの瞬時値は、制御装置18によって検出される。
【0015】
保護用ヒューズ6は、電源ノードN2と双方向チョッパ7の高電圧側ノードとの間に接続され、過電流が流れた場合にブローされ、無停電電源装置1、バッテリ23などを保護する。双方向チョッパ7の低電圧側ノードは電磁接触器8を介してバッテリ端子T3に接続される。電磁接触器8は、無停電電源装置1の使用時はオンされ、たとえば無停電電源装置1およびバッテリ23のメンテナンス時にオフされる。バッテリ端子T3に現れるバッテリ23の端子間電圧VBの瞬時値は、制御装置18によって検出される。
【0016】
双方向チョッパ7は、直流昇降圧回路であって制御装置18によって制御され、商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時は、コンバータ5によって生成された直流電力をバッテリ23に蓄え、商用交流電源21からの交流電力の供給が停止された停電時は、バッテリ23の直流電力を電源ノードN2を介してインバータ10に供給する。
【0017】
双方向チョッパ7は、直流電力をバッテリ23に蓄える場合は、電源ノードN2の直流電圧VDCを所定値の直流電圧に降圧してバッテリ23に与える。また、双方向チョッパ7は、バッテリ23の直流電力をインバータ10に供給する場合は、バッテリ23の端子間電圧VBを所定値の直流電圧に昇圧して電源ノードN2に出力する。電源ノードN2は、インバータ10の入力ノードに接続されている。
【0018】
インバータ10は、逆変換器であって制御装置18によって制御され、コンバータ5または双方向チョッパ7から電源ノードN2を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して出力ノード10aに出力する。すなわちインバータ10は、通常時はコンバータ5から電源ノードN2を介して供給される直流電力を交流電力に変換し、停電時はバッテリ23から双方向チョッパ7を介して供給される直流電力を交流電力に変換する。インバータ10の出力電圧は所望の値に制御可能になっている。
【0019】
インバータ10の出力ノード10aは交流リアクトル11を介して電磁接触器13の一方端子に接続され、電磁接触器13の他方端子(ノードN3)は交流出力端子T4に接続される。コンデンサ12は、電磁接触器13の一方端子に接続される。交流リアクトル11およびコンデンサ12は、低域通過フィルタを構成し、インバータ10で生成された商用周波数の交流電力を交流出力端子T4に通過させ、インバータ10で発生するスイッチング周波数の信号が交流出力端子T4に通過することを防止する。
【0020】
電磁接触器13は、制御装置18によって制御され、インバータ10によって生成された交流電力を負荷24に供給するインバータ給電モード時にはオンされ、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給するバイパス給電モード時にはオフされる。
【0021】
ノードN3に現れる交流出力電圧VOの瞬時値は、制御装置18によって検出される。電流検出器14は、ノードN3と交流出力端子T4の間に流れる負荷電流IOを検出し、その検出値を示す信号を制御装置18に与える。
【0022】
半導体スイッチ15は、サイリスタを含み、バイパス入力端子T2とノードN3の間に接続される。電磁接触器16は、半導体スイッチ15に並列接続される。半導体スイッチ15は、制御装置18によって制御され、通常はオフし、インバータ10が故障した場合に瞬時にオンし、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給する。半導体スイッチ15は、オンしてから所定時間経過後にオフする。
【0023】
電磁接触器16は、インバータ10によって生成された交流電力を負荷24に供給するインバータ給電モード時にはオフされ、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給するバイパス給電モード時にはオンされる。また電磁接触器16は、インバータ10が故障した場合にオンし、バイパス交流電源22からの交流電力を負荷24に供給する。つまり、インバータ10が故障した場合は、半導体スイッチ15が瞬時に所定時間だけオンするとともに電磁接触器16がオンする。これは、半導体スイッチ15が過熱されて破損するのを防止するためである。
【0024】
操作部17は、無停電電源装置1の使用者によって操作される複数のボタン、種々の情報を表示する画像表示部などを含む。使用者が操作部17を操作することにより、無停電電源装置1の電源をオン/オフしたり、バイパス給電モード、インバータ給電モード、後述の定格電圧出力モード、後述の出力電圧制御モードなどのうちのいずれかのモードを選択したり、種々のパラメータを制御装置18に記憶させることが可能となっている。
【0025】
制御装置18は、操作部17からの信号に基づいて動作し、交流入力電圧VI、直流電圧VDC、バッテリ電圧VB、交流出力電圧VO、および負荷電流IOの瞬時値を検出し、それらの検出値に基づいて無停電電源装置1全体を制御する。すなわち、制御装置18は、交流入力電圧VIの検出値に基づいて停電が発生したか否かを検出し、交流入力電圧VIの位相に同期してコンバータ5およびインバータ10を制御する。
【0026】
さらに制御装置18は、直流電圧VDCが所望の目標直流電圧VDCTになるようにコンバータ5を制御し、バッテリ電圧VBが所望の目標バッテリ電圧VBTになるように双方向チョッパ7を制御する。さらに制御装置18は、操作部17を用いて定格電圧出力モードが選択された場合は、出力電圧VOが一定の定格電圧になるようにインバータ10を制御する。
【0027】
さらに制御装置18は、操作部17を用いて出力電圧制御モードが選択された場合は、無停電電源装置1の効率が良くなるように出力電圧VOを制御する。図2は、無停電電源装置1の定格容量PRに対する負荷容量PLの割合PL/PR(%)と無停電電源装置1の効率η(%)との関係を示す図である。効率ηは、商用交流電源21から供給される交流電力PIに対する負荷24に供給される交流電力POの割合PO/PI(%)である。
【0028】
図2に示すように、定格容量PRに対する負荷容量PLの割合PL/PR(%)が所定値α(図では約65%)の場合に無停電電源装置1の効率ηは最大値ηmaxとなり、PL/PRが所定値αよりも大きくなるに従って効率ηは徐々に低下し、PL/PRが所定値αよりも小さくなるに従って効率ηは徐々に低下する。
【0029】
効率ηがピーク値ηmaxを持つのは、負荷電流IOが大きくなると交流リアクトル4,11などの抵抗成分における消費電力が大きくなる一方、負荷電流IOが小さくなると負荷電流IOに対する制御装置18の消費電流の割合が大きくなるからである。したがって、図2の横軸を無停電電源装置1の定格電流IRに対する負荷電流IOの割合IO/IR(%)で置き換えることができる。さらに定格電流IRは一定であるので、図2の横軸を負荷電流IOの値で置き換えることができ、αを負荷電流IOの所定値IOαで置き換えることができる。
【0030】
したがって、負荷24の消費電力が一定に維持される場合、PL/PRが所定値αよりも小さいときは負荷24の入力許容電圧範囲内で出力電圧VOを低下させて負荷電流IOをIOα以下の範囲内で増大させることにより、効率ηを高めることができる。
【0031】
また、負荷24の消費電力が一定に維持される場合、PL/PRが所定値αよりも大きいときは負荷24の入力許容電圧範囲内で出力電圧VOを上昇させて負荷電流IOをIOα以上の範囲内で減少させることにより、効率ηを高めることができる。そこで本実施の形態1では、出力電圧制御モードが選択された場合は、負荷24の入力許容電圧範囲内で出力電圧VOを制御して効率ηを高める。
【0032】
図3は、出力電圧制御モード時における制御装置18の動作を示すフローチャートである。無停電電源装置1の使用者が操作部17を操作することにより定格電圧出力モードから出力電圧制御モードに切り換えたものとする。これに応じて制御装置18は、ステップS1において出力電圧VOと負荷電流IOを検出し、ステップS2においてVO,IOの検出値に基づいて負荷容量PLを演算し、ステップS3においてPL/PRを演算する。
【0033】
制御装置18は、ステップS4においてPL/PRが所定値αよりも小さいか否かを判別し、PL/PR<αである場合はステップS5に進み、PL/PR>αである場合はステップS6に進む。
【0034】
制御装置18は、ステップS5において、負荷24の入力許容電圧範囲内で出力電圧VOを低下させて負荷電流IOをIOα以下の範囲内で増大させる。また制御装置18は、ステップS6において、負荷24の入力許容電圧範囲内で出力電圧VOを上昇させて負荷電流IOをIOα以上の範囲内で減少させる。制御装置18は、ステップS7で出力電圧VOを固定し、負荷24の運転を継続する。
【0035】
なお、定格容量PR、所定値α、IOα、負荷24の入力許容電圧範囲は、予め制御装置18に記憶されているものとする。
【0036】
たとえば、PL/PRと効率ηの関係が図2で示される場合、PL/PRが45%であるときに出力電圧VOを10%下げて負荷電流IOを10%上げると、PL/PRを55%に高めることができ、効率ηを高めることができる。
【0037】
次に、この無停電電源装置1の動作について説明する。商用交流電源21から交流電力が供給されている通常時では、電磁接触器2,8,13がオンされ、半導体スイッチ15および電磁接触器16がオフされている。商用交流電源21から供給される交流電力は、コンバータ5によって直流電力に変換される。コンバータ5によって生成された直流電力は、双方向チョッパ7によってバッテリ23に蓄えられるとともに、インバータ10によって交流電力に変換されて負荷24に供給される。
【0038】
操作部17を用いて出力電圧出力モードが選択された場合は、無停電電源装置1の出力電圧VOは一定の定格電圧に維持される。操作部17を用いて出力電圧制御モードが選択された場合は、無停電電源装置1の効率ηが高くなるように、出力電圧VOが制御される。すなわち、PL/PRが所定値αよりも小さいときは負荷24の入力許容電圧範囲内で出力電圧VOが低減され、PL/PRが所定値αよりも大きいときは負荷24の入力許容電圧範囲内で出力電圧VOが増大されて、無停電電源装置1の効率ηが高められる。
【0039】
商用交流電源21からの交流電力の供給が停止された停電時は、コンバータ5の運転が停止され、バッテリ23の直流電力が双方向チョッパ7によってインバータ10に供給される。インバータ10は、バッテリ23から双方向チョッパ7を介して供給される直流電力を交流電力に変換して負荷24に供給する。したがって、停電が発生した場合でも、バッテリ23に直流電力が蓄えられている期間は、負荷24の運転を継続することができる。
【0040】
通常時においてインバータ10が故障した場合は、半導体スイッチ15が瞬時にオンし、バイパス交流電源22から半導体スイッチ15を介して負荷24に交流電力が供給される。次いで電磁接触器16がオンするとともに電磁接触器13がオフし、半導体スイッチ15がオフする。これにより、バイパス交流電源22から電磁接触器16を介して負荷24に交流電力が供給される。
【0041】
以上のように、この実施の形態1では、無停電電源装置1の効率ηが上昇するように負荷24の入力許容電圧範囲内で無停電電源装置1の出力電圧VOを制御する。したがって、出力電圧VOが一定の定格電圧に固定されていた従来よりも効率ηを高くすることができる。
【0042】
なお、この実施の形態1では、電源ノードN2の直流電圧VDCを所定の目標直流電圧VDCTに設定したが、交流入力電圧VIの振幅値が変動する場合は、交流出力電圧VOの生成に支障が無い範囲内で、交流入力電圧VIの振幅値の変動に合わせて直流電圧VDCを変動させてもよい。すなわち、交流入力電圧VIの振幅値が増大した場合は直流電圧VDCを上昇させ、交流入力電圧VIの振幅値が減少した場合は直流電圧VDCを低下させても構わない。
【0043】
図4は、実施の形態1の変更例を示すフローチャートであって、図3と対比される図である。図4を参照して、この変更例が実施の形態1と異なる点は、ステップS7A,S7Bが追加されている点である。制御装置18は、ステップS1〜S6を実行した後、ステップS7Aにおいて負荷電流IOが一定値に安定しているか否かを判別する。制御装置18は、負荷電流IOが一定値に安定していると判別した場合は、ステップS7において出力電圧VOを固定して負荷24の運転を継続する。制御装置18は、負荷電流IOが一定値に安定していないと判別した場合は、ステップS7Bにおいて出力電圧VOを定格電圧VORに戻して負荷24の運転を継続する。
【0044】
この変更例では、実施の形態1と同じ効果が得られる他、出力電圧VOを増減させた場合に負荷電流IOが不安定になったときは、出力電圧VOを定格電圧VORに戻して負荷電流IOを安定させることができる。
【0045】
[実施の形態2]
実施の形態1では、出力電圧制御モード時に、無停電電源装置1の定格容量PRに対する負荷容量PLの割合PL/PR(%)が所定値αと異なる場合、出力電圧VOを制御して効率ηを上昇させた。この実施の形態2では、さらに、出力電圧VOを低下させる場合に直流電圧VDCも低下させることにより、効率ηをさらに上昇させる。以下、直流電圧VDCを低下させて効率ηを改善できる理由について説明する。
【0046】
図5は、コンバータ5およびインバータ10の構成を示す回路図である。図5において、コンバータ5は入力ノード5a〜5cおよびスイッチング素子31〜36を含み、インバータ10はスイッチング素子41〜46および出力ノード10a〜10cを含む。
【0047】
コンバータ5の入力ノード5a〜5cは、商用交流電源21からの三相交流電圧をそれぞれ受ける。スイッチング素子31〜33の一方電極は直流正母線L1に接続され、それらの他方電極はそれぞれ入力ノード5a〜5cに接続される。スイッチング素子34〜36の一方電極はそれぞれ入力ノード5a〜5cに接続され、それらの他方電極は直流負母線L2に接続される。平滑用電解コンデンサ9は、直流正母線L1と直流負母線L2の間に接続され、母線L1,L2間の直流電圧VDCを平滑化させる。
【0048】
インバータ10のスイッチング素子41〜43の一方電極は直流正母線L1に接続され、それらの他方電極はそれぞれ出力ノード10a〜10cに接続される。スイッチング素子44〜46の一方電極はそれぞれ出力ノード10a〜10cに接続され、それらの他方電極は直流負母線L2に接続される。なお、スイッチング素子31〜36,41〜46の各々にはダイオードが逆並列に接続されているが、図面および説明の簡単化のためダイオードの図示は省略されている。
【0049】
スイッチング素子31〜36,41〜46の各々は、制御装置18によって制御され、商用交流電源21からの三相交流電圧VIに同期して所定のタイミングでオン/オフされる。スイッチング素子31〜33は三相交流電圧VIに同期してオン/オフされ、スイッチング素子31〜33がオン/オフされたときにそれぞれスイッチング素子34〜36がオフ/オンされる。スイッチング素子41〜43は三相交流電圧VIに同期してオン/オフされ、スイッチング素子41〜43がオン/オフされたときにそれぞれスイッチング素子44〜46がオフ/オンされる。
【0050】
商用交流電源21からの三相交流電圧とスイッチング素子31〜36をオン/オフさせるタイミングとの位相差を調整することにより、直流電圧VDCを所望の電圧に調整することが可能となっている。また、スイッチング素子41〜46の各々をオンさせる時間を調整することにより出力電圧VOを所望の電圧に調整することが可能となっている。出力交流電圧VOの振幅電圧は直流電圧VDC以下となるので、出力交流電圧VOの振幅電圧を低下させる場合は直流電圧VDCも低下させることが可能である。
【0051】
そこで制御装置18は、効率ηを上げるために出力電圧VOを低下させる場合は、その出力電圧VOに応じて直流電圧VDCも低下させる。すなわち、制御装置18は、スイッチング素子31〜36をオン/オフさせるタイミングを調整して直流電圧VDCを低下させるとともに、スイッチング素子41〜46の各々をオンさせる時間を調整して出力電圧VOを低下させる。直流電圧VDCを低下させることにより、スイッチング素子31〜36,41〜46で発生する損失を低減することができる。
【0052】
すなわち、スイッチング素子31〜36,41〜46の各々は、図6(a)(b)に示すように、IGBT50(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、NPNバイポーラトランジスタ52などで構成される。IGBT50やトランジスタ52にはダイオード51が逆並列に接続される。
【0053】
図7(a)(b)は、IGBT50のオン/オフ動作を示すタイムチャートである。図7(a)はIGBT50のコレクタ−エミッタ間電圧Vおよびエミッタ電流Iを示し、図7(b)はIGBT50で発生する損失を示している。
【0054】
図7(a)(b)に示すように、IGBT50をオフさせている期間にはIGBT50の抵抗値は十分に高くなり、電流Iは0AになるのでIGBT50で損失は発生しない。しかし、IGBT50をオンさせている期間には、IGBT50に大きな電流Iが流れるとともにIGBT50の抵抗値は0Ωにならないので、IGBT50で導通損失が発生する。
【0055】
また、IGBT50をオフ状態からオン状態に切り替えたり、オフ状態からオン状態に切り替えるとき、電圧Vおよび電流Iが変化するのにある程度の時間が掛かるので、スイッチング損失V×Iが発生する。直流電圧VDCを低下させてIGBT50のコレクタ−エミッタ間電圧Vを低下させれば、スイッチング損失V×Iを小さくすることができる。コンバータ5およびインバータ10では、IGBT50をオン/オフさせる頻度が高いので、スイッチング損失を低減させる効果は大きい。
【0056】
以上のように、この実施の形態2では、実施の形態1と同じ効果が得られる他、出力電圧VOを低下させる場合は出力電圧VOに応じて直流電圧VDCを低下させるので、コンバータ5およびインバータ10における損失を低減させることができ、効率ηをさらに高めることができる。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明でなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 無停電電源装置、T1 交流入力端子、T2 バイパス入力端子、T3 バッテリ端子、T4 交流出力端子、2,8,13,16 電磁接触器、3,6 保護用ヒューズ、4,11 交流リアクトル、5 コンバータ、7 双方向チョッパ、9 平滑用電解コンデンサ、10 インバータ、12 コンデンサ、14 電流検出器、15 半導体スイッチ、17 操作部、18 制御装置、21 商用交流電源、22 バイパス交流電源、23 バッテリ、24 負荷、31〜36,41〜46 スイッチング素子、50 IGBT、51 ダイオード、52 NPNバイポーラトランジスタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7