(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243557
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】改良した海水吸引システム
(51)【国際特許分類】
F16L 1/15 20060101AFI20171127BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
F16L1/15
B63B35/44 N
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-572785(P2016-572785)
(86)(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公表番号】特表2017-530305(P2017-530305A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】EP2015077479
(87)【国際公開番号】WO2016083361
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】1420915.9
(32)【優先日】2014年11月25日
(33)【優先権主張国】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516370316
【氏名又は名称】エムステック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EMSTEC GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト ブリンク
(72)【発明者】
【氏名】イアン クレイグ
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/010500(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/017937(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/118228(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/093140(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/15
B63B 35/44
E21B 17/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・2つの導管の間で流体連通を可能にする内部流体通路を形成するよう互いに連結される第1導管(12)及び第2導管(14)であって、前記第1導管を少なくとも2層の第1材料から形成し、前記第2導管を前記第1材料とは異なる単一層の第2材料から形成する、該第1導管(12)及び第2導管(14)と、
・前記第1導管の自由端に連結された吸引ヘッド(28)と、
・前記第1導管の前記吸引ヘッドを収容し、保持し得る少なくとも1個のケーソン(24)と、を備える、海水吸引システム(10)であって、
該ケーソンは、
・懸架装置(44)を備え、該懸架装置(44)は、組付け中に前記第1及び第2の導管を選択的に固定するよう構成した懸架装置(44)であって、前記第1及び第2の導管にロック可能に係合し得るばね動作機構、及び前記第1及び第2の導管の外径間における相違を補償するよう構成した導管アダプタ(48,50)を有するものとする、
海水吸引システム。
【請求項2】
請求項1記載の海水吸引システムにおいて、前記第2導管の前記内部流体通路は前記第1導管の前記内部流体通路の内径とほぼ同一の内径を有し、また前記第2導管は前記第1導管の外径よりも小さい外径を有する、海水吸引システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の海水吸引システムにおいて、前記第1材料はゴムとし、また前記第2材料は、プラスチック材料、又は炭素系スチール、又は補強グラスファイバとする、海水吸引システム。
【請求項4】
請求項3記載の海水吸引システムにおいて、前記第2材料は、高密度ポリエチレン(HDPE)とする、海水吸引システム。
【請求項5】
請求項4記載の海水吸引システムにおいて、前記第2導管は、少なくとも一部が放物線断面輪郭(202)となる外面を持つ少なくとも1つのフランジ部材(200)を有する、海水吸引システム。
【請求項6】
請求項5記載の海水吸引システムにおいて、前記少なくとも1つのフランジ部材は、さらに、前記フランジ部材の端部部分から所定距離にある位置で前記外面周りの周縁に配置した少なくとも1個の荷重リング(204)を有する、海水吸引システム。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項記載の海水吸引システムにおいて、さらに、前記第2導管に形成したストレーナ(18)であって、また前記第2導管に形成して流体が前記第2導管内に流入できるようにした複数個の流体開孔(18a)を含む、該ストレーナ(18)を備える、海水吸引システム。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一項記載の海水吸引システムにおいて、前記システムは、複数個の順次の第2導管に連結する複数個の順次の第1導管を備える、海水吸引システム。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか一項記載の海水吸引システムにおいて、前記ケーソンは、浮体式生産貯蔵積出(FPSO)船の船殻内に配置する、海水吸引システム。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか一項記載の海水吸引システムにおいて、前記懸架装置は、現場にあるとき前記ケーソンの頂端部に取外し可能に連結できるものとする、海水吸引システム。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれか一項記載の海水吸引システムにおいて、前記システムは、さらに、前記第1及び第2の導管における前記内部流体通路内に配置して、前記第2導管の自由端に所定流体を供給し得る少なくとも1個の第1補助流体ライン(146)を備える、海水吸引システム。
【請求項12】
請求項11記載の海水吸引システムにおいて、前記システムは、さらに、前記第1補助流体ラインに並列的に配置し、また前記第1及び第2の導管における前記内部流体通路内に配置して、前記第2導管の自由端に所定流体を供給し得る少なくとも1個の第2補助流体ライン(148)を備える、海水吸引システム。
【請求項13】
請求項7〜12のうちいずれか一項に従属するときの請求項12記載の海水吸引システムにおいて、前記第1及び第2の補助流体ラインは、前記第2導管と前記ストレーナとの間に動作可能に接続した分散部材に流体的に接続して、使用中に前記所定流体が前記内部流体通路内に流入できるようにする、海水吸引システム。
【請求項14】
請求項1〜13のうちいずれか一項記載の海水吸引システムを組み付ける方法において、
・少なくとも1つの第1導管及び少なくとも1つの第2導管を準備する導管準備ステップであって、前記第1導管は少なくとも2層の第1材料から形成し、また前記第2導管は前記第1材料とは異なる単一層の第2材料から形成し、前記第1及び第2の導管は、前記2つの導管の間で流体連通を可能にするよう相互連結可能なものとする、該導管準備ステップと、
・前記2つの導管を相互連結するステップと、
・前記第1導管の自由端に吸引ヘッドを連結するステップと、
・前記吸引ヘッドを収容し、かつ保持し得るケーソンを準備するステップと、並びに
・前記ケーソン内で前記吸引ヘッド、前記第1及び第2の導管を取り付けるステップと
を有する、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記第2導管は、前記第2導管に形成したストレーナであって、また前記第2導管に形成して流体が前記第2導管内に流入できるようにした複数個の流体開孔を含む、該ストレーナを有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水吸引システムに関し、とくに、限定はしないが、浮体式生産貯蔵積出(FPSO:floating production storage and offloading)船に使用するのに適した海水吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
FPSO船で使用される従来の海水吸引システムは、一般的に複数個のホース及びケーソンを備える。各ホースは、一般的に、相互接続して連続したホースを形成する複数個の可撓性ホースセクションを有する。連続ホースは、FPSO船におけるケーソンと組み合わせて海水をFPSO内に送入する。ホースの自由端には、ホース内に引き込む海水を濾し取る吸引ストレーナを装着する。吸引ストレーナには次亜塩素酸塩分散リングを装着し、この次亜塩素酸塩分散リングを使用してホースで海水を引き込むとき吸引ストレーナの周りに次亜塩素酸塩を分散し、これによりFPSOの吸引システム及び関連の配管における海洋生物増殖を防止する。このような構成の例は、本願人による特許文献1(国際公開第2008/017937号)に見ることができる。
【0003】
このような従来の吸引システムにおけるホースセクションそれぞれは、一般的には可撓性のゴム製ライナー(内張り)から始まって多数の材料層から製造し、ゴム製ライナー内には、ライナーの長さに沿って間隔をとって複数のスチール又はワイヤ製の補強リングを埋設する。補強ライナー周りには多数の適当なテキスタイル製プライ層を巻き付け、またテキスタイル製プライ層上に耐海水性/耐候性のゴム外側層を配置する。各ホースセクションの両側の端部にスチール製のニップル及びフランジを設け、ホースセクションを互いに取り付け合うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/017937号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の吸引システムに使用される可撓性のホースセクションの例は、公称ボア又は内径20インチ(508mm)及び長さ11500mmを有する。これら寸法を有し、また上述のようにして製造されるホースセクションは、主に必要とされる材料層及び補強リングに起因して約1900kgの重量となる。各ホースセクションの重量は、海上でシステム据付け中に船デッキ上での取扱いを困難にする。さらに、これら重いホースセクションを多数備えるシステムの重量、並びに抵抗因子及び他の流体力学的因子が、水上船上に大きな船載荷重を与える。
【0006】
さらに、海洋生物増殖が従来の可撓ゴム製ホースセクション内に発生する恐れがあり、このことは、海洋生物に対抗するため次亜塩素酸塩分配ラインを設ける必要がある。次亜塩素酸塩ラインを設けることは、システム据付けの複雑さ、コスト及び時間を増大させる。
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点のうち1つ又は複数を排除又は軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様によれば、2つの導管の間で流体連通を可能にする内部流体通路を形成するよう互いに連結される第1導管及び第2導管を備える海水吸引システムを提供し、この海水吸引システムにおいて、前記第1導管を少なくとも2層の第1材料から形成し、また前記第2導管を前記第1材料とは異なる単一層の第2材料から形成する。
【0009】
前記第2導管の前記内部流体通路は前記第1導管の前記内部流体通路の内径とほぼ同一の内径を有し、また前記第2導管は前記第1導管の外径よりも小さい外径を有するものとする。第1及び第2の導管の内径及び外径はほぼ一定のものとすることができる。前記第1材料はゴムとすることができる。
【0010】
前記第2材料はプラスチック材料とすることができる。前記第2材料は高密度ポリエチレン(HDPE)とすることができる。前記第2導管は、少なくとも一部が放物線断面輪郭となる外面を持つ少なくとも1つのフランジ部材を有することができる。前記少なくとも1つのフランジ部材は、さらに、前記フランジ部材の端部部分から所定距離にある位置で前記外面周りの周縁に配置した少なくとも1個の荷重リングを有することができる。
【0011】
本発明システムは、さらに、前記第2導管に形成したストレーナを備えることができる。前記ストレーナは、前記第2導管に形成して流体が前記第2導管内に流入できるようにした複数個の流体開孔を含むことができる。代案として、前記ストレーナは、前記第2導管の自由端に連結することができる。
【0012】
前記ストレーナは、少なくとも、第1流体入口、第1流体通路及び第1流体出口を持つ第1ストレーナ部材と、並びに第2流体入口、第2流体通路及び第2流体出口を持つ第2ストレーナ部材と、を有し、前記第1ストレーナ部材及び前記第2ストレーナ部材は、流体的に別個のものとし、前記第1ストレーナ部材は前記第2ストレーナ部材に接続するよう構成して、前記第1及び第2の流体入口が前記第2導管の長手方向軸線に沿って隣接するよう配置し、また前記第1及び第2の流体出口が前記第2導管に流体的に接続可能な複合出口インタフェースを形成する少なくとも2段式のストレーナ構成を形成できるものとする。
【0013】
付加的に、前記ストレーナは、さらに、第3流体入口、第3流体通路及び第3流体出口を持ち、前記第1及び第2のストレーナ部材とは流体的に別個のものとした、少なくとも第3のストレーナ部材を有し、前記第3ストレーナ部材は、前記第2ストレーナ部材に接続するよう構成して、前記第1、第2及び第3の流体入口が前記第2導管の長手方向軸線に沿って隣接するよう配置し、また前記第1、第2及び第3の流体出口が前記第2導管に流体的に接続可能な複合出口インタフェースを形成する3段式のストレーナ構成を形成できるようにする。
【0014】
有利には、前記第1ストレーナ部材は、前記第2ストレーナ部材と整合するよう係合し、前記長手方向軸線に沿って積層体を形成する構成とすることができ、また、前記第2ストレーナ部材は、前記第3ストレーナ部材と整合するよう係合し、前記長手方向軸線に沿って積層体を形成する構成とすることができる。好適には、前記ストレーナは前記第2材料から形成することができる。
【0015】
本発明システムは、さらに、前記第2導管における自由端から懸架したウエイト部材を備えることができる。有利には、前記ウエイト部材は、前記第2導管に流体的に接続可能であり、かつ現場にあるとき非浮揚性を示す材料で形成した少なくとも第3導管とすることができる。好適には、前記非浮揚性を示す材料は金属とする。
【0016】
本発明システムは、複数個の順次の第2導管に連結する複数個の順次の第1導管を備えることができる。換言すれば、多数の第1導管は、順次互いに直列に接続し、次に、やはり互いに直列に接続した多数の第2導管に接続することができる。
【0017】
本発明システムは、さらに、前記第1導管の自由端に連結する吸引ヘッドを備えることができる。
【0018】
本発明システムにおいて、さらに、前記第1導管の吸引ヘッドを収容しかつ保持し得る少なくとも1個のケーソンを備えることができる。前記ケーソンは、浮体式生産貯蔵積出(FPSO)船の船殻内に配置することができる。
【0019】
有利には、前記ケーソンは、前記第1及び第2の導管を組付け中に選択的に固定し得る懸架装置を有することができる。好適には、前記懸架装置は、現場にあるとき前記ケーソンの頂端部に取外し可能に連結できるものとし得る。有利には、前記懸架装置は、前記第1及び第2の導管にロック可能に係合し得るばね動作機構を有することができる。有利には、前記懸架装置は、さらに、前記第1及び第2の導管の外径間における相違を補償するよう構成した導管アダプタを有することができる。
【0020】
前記第2材料は、炭素系スチール、又は補強グラスファイバとすることができる。本発明システムは、さらに、前記第1及び第2の導管における前記内部流体通路内に配置して、前記第2導管の自由端に所定流体を供給し得る少なくとも1個の第1補助流体ラインを備えることができる。有利には、本発明システムは、さらに、前記第1補助流体ラインに並列的に配置し、また前記第1及び第2の導管における前記内部流体通路内に配置して、前記第2導管の自由端に所定流体を供給し得る少なくとも1個の第2補助流体ラインを備えることができる。好適には、前記第1及び第2の補助流体ラインは、前記第2導管と前記ストレーナとの間に動作可能に接続した分散部材に流体的に接続して、使用中に前記所定流体が前記内部流体通路内に流入できるようにし得る。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、海水吸引システムを組み付ける方法を提供し、この方法は、少なくとも1つの第1導管及び少なくとも1つの第2導管を準備する導管準備ステップであって、前記第1導管は少なくとも2層の第1材料から形成し、また前記第2導管は前記第1材料とは異なる単一層の第2材料から形成し、前記第1及び第2の導管は、前記2つの導管の間で流体連通を可能にするよう相互連結可能なものとする、該導管準備ステップと、前記2つの導管を相互連結するステップと、並びに前記第1導管の自由端に吸引ヘッドを連結するステップとを有する。
【0022】
本発明方法は、さらに、前記第2導管の自由端にストレーナを連結するステップを有することができる。
【0023】
本発明方法は、さらに、ウエイト部材を前記ストレーナ又は前記第2導管の自由端に連結するステップを有することができる。
【0024】
本発明方法は、さらに、前記吸引ヘッドを収容しかつ保持し得るケーソンを準備するステップと、前記ケーソン内で前記吸引ヘッド、並びに前記第1及び第2導管を取り付けるステップとを有することができる。
【0025】
本発明方法は、さらに、前記第1及び第2の導管における前記内部流体通路内に少なくとも1個の補助流体ラインを取り付けるステップであって、前記補助流体ラインが流体を前記第2導管の自由端に供給できるようにするステップを有することができる。
【0026】
本発明の実施形態を以下に単なる例として添付図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】多数の導管を備える海水吸引システムを示す。
【
図2】浮体式生産貯蔵積出(FPSO:floating production storage and offloading)船に配置する海水吸引システムにおける多数の付加的コンポーネントの概略図である。
【
図3】
図2に示すコンポーネントの詳細の断面図である。
【
図4】
図2に示すコンポーネントの他の詳細の断面図である。
【
図5】3段式のストレーナであって、各ストレーナ段が、個別流体入口、流体通路及び流体出口を有し、すべてのストレーナ出口を組み合わせて第2導管に流体的に接続可能な単一出口インタフェースにする、該3段式ストレーナの概略的断面図である。
【
図6】(a)第1段、(b)第2段及び(c)第3段に分解したときの3個のストレーナ部材の概略図である。
【
図7】例えばFPSOプラットフォーム上におけるケーソン頂部に据え付けて、組付け中に第1導管を取り付ける懸架装置の斜視図である。
【
図8】
図7の懸架装置における一方のばね負荷係合部材を開放した状態を示す斜視図である。
【
図9】放物線状断面輪郭の外面を有する専用フランジ、及び周縁負荷リングを有し、従って、改善した強度及び疲労特性をもたらす第2導管(HDPE)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
好適実施形態の詳細な説明
図1は、第1導管12及びこの第1導管12に直列に連結する1対の第2導管14を有する海水吸引システム10を示す。第1及び第2の導管12,14それぞれは、ほぼ円筒形の導管本体を有して、導管本体のいずれかの端部に配置した連結手段とともに内部流路を形成する。この図示の実施例において、連結手段は、複数の連結開孔(図示せず)を有するフランジ16である。導管12,14は、隣接する導管12,14からの対応するフランジ16を衝合させ、対応する連結開孔を整列させることによって、互いに連結する。次に、適当な機械的固着手段、例えばスタッドボルト(図示せず)を整列した開孔それぞれに挿通し、スタッドボルトの端部にナットを締め込んで隣接する導管12,14を互いに連結する。導管12,14の連結は、吸引システム10を使用する船上で行うのが一般的である。第1導管12は、例えばゴムのような第1材料による少なくとも2層から形成する。第1導管はゴム製のライナー又は内側層を有する既知のタイプとし、このライナー又は内側層の長さに沿って間隔をおいて複数個のスチール又はワイヤによる補強リングを埋設する。補強したライナー周りには多数の適当なテキスタイル製プライ層を巻き付け、またテキスタイル製プライ層上に耐海水性/耐候性のゴム外側層を配置する。
【0029】
第2導管14は、それぞれ第1材料とは異なる第2の材料による単一ピース又は単一層から形成する。第2導管14は単一材料層のみ有して補強リングを持たないため、各第2導管14は第1導管12より少ない重量であり、第1及び第2の導管12,14それぞれはほぼ同一の寸法を有するだけである。さらに、第1及び第2の導管12,14それぞれはほぼ同一の内径を有する。しかし、第2導管14は単一材料層だけであるため、外径は第1導管12よりも小さい。したがって、第2導管14は第1導管12よりも薄い。第1及び第2の導管12,14の内径及び外径は、好適には、各導管の長さに沿って一定とする。
図示の好適な実施形態において、第2導管を形成する第2材料は高密度ポリエチレン(HDPE)とする。
【0030】
第1導管の連結手段は、好適には、スチールから形成し、また腐食防止のため第1材料による保護コーティングによって被包化する。第2導管14の連結手段は、好適には、第2材料から形成し、またスチール製の裏当てリングを設け、この裏当てリングを腐食防止コーティングで処理しておく。2つの第2導管14のうち下側の(
図1で見て)導管には、システム10に使用するストレーナ18を設ける。ストレーナ18はシステム10に引き込む海水を濾し取る。ストレーナ18は下側第2導管14における複数個の流体開孔18aから形成することができ、これら流体開孔18aにより、海水を第2導管14の内部に通過させることができる。この実施例において、流体開孔18aそれぞれは直径30mmとする。
図5及び6は、第2導管14の端部セクションに流体的に接続可能なストレーナ118の他の実施形態を示す。ストレーナ118は、3個の流体的に別個のストレーナ部材、すなわち、第1ストレーナ部材120、第2ストレーナ部材122、第3ストレーナ部材124から構成し、これらストレーナ部材は3段式のストレーナ118として組み合わせることができる。ストレーナ部材120,122,124それぞれは、流体的に個別の入口セクション126,128,130、流体通路132,134,136、及び出口138,140,142を有する。ストレーナ部材120,122,124は、第2ストレーナ部材122を第3ストレーナ部材124上に整合させて積み重ね、また第1ストレーナ部材120を第2ストレーナ部材122上に整合させて積み重ねることができるように形成する。組み付けたとき、3つの出口138,140,142が第2導管14に流体的に接続可能な複合インタフェース144を形成する。使用中、流体は、3つすべての入口セクション126,128,130を経て、流体通路132,134,136を個別に通過するよう流動し、複合した出口138,140,142から流出し、導管14の内部流体通路内に流入する。
【0031】
システム10は、さらに、安定化バラストを追加するため、下側の第2導管14の自由端にウエイト部材20を備える。このウエイト部材は、第2導管14又はストレーナ18,118に連結する第3導管(図示せず)とすることができる。ウエイト部材は、非浮揚性材料、好適には金属から形成し、またより好適にはスチールから形成する。
【0032】
以下に
図2〜4につき説明すると、FPSO船の船殻22における概略断面を
図2に示し、若干のコンポーネントのより詳細な図を
図3及び4に示す。
図2は船殻22内に配置した多数のケーソン24を示す。各ケーソン24は、第1及び第2の導管12,14を吸引システムに接続するとき、吸引システム10の付加的コンポーネントを形成することができる。第1及び第2の導管12,14をケーソン24に連結し易くするため、システムは、さらに、ケーソンインタフェース又はライザー着座部26、及びライザーヘッド又は吸引ヘッド28を備えることができる。
図3及び4に明示するように、各ケーソンインタフェース26は、船のキール(竜骨)30の内側に据え付け、円錐形の雌型着座部32を設け、この雌型着座部32により吸引ヘッド28の円錐形の雄型着座部34が整合し、吸引ヘッド28を心出しし、また第1及び第2の導管12,14が下方に移動するのを防止する。ケーソンインタフェース26は、さらに、内部周縁支持リング33を有し、この内部周縁支持リング33に吸引ヘッド28の外部上方周縁支持リング35が整合し、インタフェース26に対して吸引ヘッド28が相対移動するのを阻止する。吸引ヘッド28は、さらに、第1導管12の上側連結フランジ16を吸引ヘッド28に連結するのに使用する連結フランジ36を有する。
図2及び4は、さらに、右側(
図2で見たとき)のケーソン24に展開した、海水を船に吸引するための吸引ポンプ40を示す。ケーソン24内に間隔をおいて配置した多数の心決め具42によりポンプ40を中心に配置した状態に維持することを確実にする。
【0033】
図2及び3につき説明すると、懸架ツール44及び展開/回収ツール46を中間(
図2で見たとき)のケーソン24に示す。これらツール44,46を使用して、吸引システム10の種々のコンポーネントの組付け及び分解を行う。懸架ツール44は、ケーソン24の頂部に取り付け、また部品組付けした吸引システムを他のコンポーネントを装着したままケーソン24内に固定及び懸架する手段を提供する。
【0034】
図7及び8は、懸架装置又は懸架ツール44の使用時及びケーソン頂部に取り付けたとき(
図7)、及び開放した離脱状態における(
図8)別個の実体としてのより詳細な図を示す。懸架装置又は懸架ツール44は、マウント52に動作可能に連結した2個のばね負荷係合部材48,50(導管アダプタ)を有する。マウント52はケーソン頂部に取り付けるよう構成する。懸架装置又は懸架ツール44のばね機構は、組付け中に第1又は第2の導管12,14を固定するため、ユーザーが手作業で操作する、すなわち、導管列を懸吊しつつ、他の導管セクションを接続するよう構成する。使用にあたり、ユーザーは、単にばね負荷係合部材48,50を導管12,14に係合又は離脱させる移動を行うだけでよい。とくに、係合中、係合部材48,50の接触面は導管の外面に接触し、カム状作用、並びに摩擦抵抗を与え、単に導管に作用する重力によってのみ導管を所定位置に固定する。懸架装置又は懸架ツール44は、従来の油圧懸架ツールよりも重量が軽量かつコンパクトであり、したがって、空間が限定される領域での据付けを可能にする。
【0035】
これに加えて、
図7は、さらに、例えば、次亜塩素酸塩流体を供給するための、第2導管14の内部流体通路内に設置する2個の補助流体ライン146,148を有する、第2導管14のセクションも示す。2個の補助流体ライン146,148は、例えば、ストレーナ18,118の頂部に導入し、この頂部でこれら補助流体ライン146,148を別個の分散リング(図示せず)に接続し、より濃縮した/高い分量の次亜塩素酸塩が第1及び第2の導管12,14の内部通路に流動できるようにする。これに加えて、2個の個別補助流体ライン146,148を設けることは、増加した流体量を供給する、及び冗長性を持たせる。
【0036】
展開/回収ツール46は、組み付けたシステム10をケーソン24に対して展開及び回収する。展開/回収ツール46は、適正な位置に配置した後、システムを釈放するよう遠隔操作する。
【0037】
海水吸引システム10の組付けは、従来方法で、すなわち、各導管12,14をケーソン24の頂部に懸吊するとともに、導管12,14の順次のホースセクション10を対応するフランジ16で取り付ける。好適には、第2導管(HDPE)は、従来型フランジに比べて、とくに導管14の組付け中に予想される力を受けるときの、改良した強度及び疲労特性を付与するよう構成した特別に設計したフランジ200によって連結することができる。
図9に示すように、放物線状のフランジ断面輪郭202をフランジ部材200の取付け端部に設け、材料内部における応力分布を最適化し、またひいては「構造的ホットスポット」を最小化し、したがって、強度及び耐用寿命を最大化する。
【0038】
これに加えて、第2導管14(例えば、HDPE)を連結するとき、垂直位置に下側セクションを懸吊するとともに、上側セクションを下側セクション上に降下させて連結する必要がある。下側セクションは、組付け中に加わる荷重を支持できなければならず、また同時にセクション14を連結できなければならない。したがって、フランジ200は、組付け中に発生する荷重を許容する十分な強度を持つとともに、セクション14を連結できるよう構成した荷重リング204を有することができる。荷重リング204はフランジ200に一体の周縁リングとし、専用宙吊りツール(図示せず)がホース列を支持できるとともに、及び何らの障害物なしにフランジ200を互いにボルト連結することができるようにする。
【0039】
吸引システム10は、従来のようにして、すなわち、システム10をケーソン24の頂部に持ち上げ、また上述の組付けステップを逆にすることによって、分解する。
【0040】
本発明の海水吸引システムは、従来の提案よりも多数の利点がある。ゴム又は同様な可撓性の第1材料の層から従来のようにして形成した第1導管、及び第2材料の単一層から形成した1つ又は複数の第2導管のシステムを備えることによって、システムは、従来の吸引システムよりも減少した重量を有する。しかし、上述したタイプの少なくとも1つの第1導管を保持することにより、重量削減にも係わらず、システムは強度及び荷重支持能力を確実に保持する。システムにおける若干のコンポーネントの重量を減少することにより、コンポーネントの据付け及び回収中における取扱いをより容易にし、これら作業を実施する時間及びコストを低減する。第2導管を単一層に形成することにより、重量を削減し、かつシステムを海上で展開する間にこれに関連する船に対する流体力学的荷重も減少する。このことは、船の喫水を減少し、また船の安定性を向上する。
【0041】
第2導管をHDPEから形成する場合、本発明によれば、第2導管内で海洋生物が成長できないという付加的利点が得られる。システムにおける海洋生物成長は、システムの総重量、船の荷重、及びシステムによって生ずる抗力を増加するおそれがある。これらの問題は、システム内で次亜塩素酸塩処理の使用に頼ることなく排除する。このことは、システムの組付け/分解をスピードアップし、また海中の生態系にとっても環境的利点がある。HDPEは、さらに、表面仕上げを極めて滑らかにし、これにより第2導管内の内部ボアをより滑らかにすることができる。より滑らかなボアは、システム内の流動特性を改善するとともに、同時にシステムにわたる圧力低下を減少する。
【0042】
システムの図示した実施形態は、1個の第1導管及び1対の第2導管を備える。しかし、システムにおける第1導管及び第2導管の個数は、図示の構成に限定することなく、必要に応じて変動し得る。システムに対する最小要件は、1個の第1導管及び1個の第2導管である。システムにおける第2導管は、実施上の考慮点によってのみ限定する必要がある。しかし、好適には、システムに最大で3個の第1導管を使用し、システムに関連する利点を損なうのを回避する。第1及び第2導管それぞれ複数個使用する場合、第1導管及び第2導管を互いに交互にする代わりに、順次のグループに配列すると好適である。
【0043】
システムの好適な実施形態は、一方の第2導管における一方の端部に形成したストレーナを示すが、ストレーナは、代案として、第1材料から形成した個別コンポーネントとし、下側の第2導管14の自由端に連結することができる。
【0044】
本発明は、HDPEから形成した第2導管を使用するのが好適ではあるものの、これに限定するものではない。他の適当な第2材料の例としては、炭素系スチール及び補強グラスファイバである。これら代案としての材料のいずれかの単一ピース又は単一層を使用して第2導管を形成することができ、同時に重量、流体力学的力及び抗力の削減の点でも利点を有する。第2導管をこれら代案材料のいずれかで形成する場合、補助流体ラインをシステム内に設け、システムの自由端に次亜塩素酸塩を供給する。
【0045】
当業者には、上述の実施形態は単に実施例としてのみ記載し、限定的意味はないものであり、また種々の代替的実施例及び変更例も、特許請求の範囲で定義した本発明の範囲逸脱することなく可能であること、明らかであろう。
【符号の説明】
【0046】
10 海水吸引システム
12 第1導管
14 第2導管
16 フランジ
18 ストレーナ
18a 流体開孔
20 ウエイト部材
22 船殻
24 ケーソン
26 ケーソンインタフェース又はライザー着座部
28 ライザーヘッド又は吸引ヘッド
30 キール(竜骨)
32 雌型着座部
33 内部周縁支持リング
34 雄型着座部
35 外部上方周縁支持リング
36 連結フランジ
40 吸引ポンプ
42 心決め具
44 懸架ツール
46 展開/回収ツール
48 ばね負荷係合部材(導管アダプタ)
50 ばね負荷係合部材(導管アダプタ)
52 マウント
118 ストレーナ
120 第1ストレーナ部材
122 第2ストレーナ部材
124 第3ストレーナ部材
126 入口セクション
128 入口セクション
130 入口セクション
132 流体通路
134 流体通路
136 流体通路
138 出口
140 出口
142 出口
144 複合インタフェース
146 補助流体ライン
148 補助流体ライン
200 フランジ
202 フランジ断面輪郭
204 荷重リング