特許第6243558号(P6243558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243558放射線粒子検出器におけるシンチレーションイベント位置決定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243558
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】放射線粒子検出器におけるシンチレーションイベント位置決定
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20171127BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G01T1/161 C
   G01T1/20 J
   G01T1/20 E
   G01T1/20 G
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-575669(P2016-575669)
(86)(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公表番号】特表2017-527782(P2017-527782A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】EP2016054485
(87)【国際公開番号】WO2016146391
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2016年12月27日
(31)【優先権主張番号】15159419.9
(32)【優先日】2015年3月17日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ベルケル,ヤンニク
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,フォルクマー
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0044571(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/180734(WO,A2)
【文献】 国際公開第2012/095981(WO,A2)
【文献】 Chirstoph W Lerche et al,Maximum Liklihood Based Positioning and Energy Correction for Pixelated Solid State PET Detectors,2011 IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference,2011年10月23日,3610-3613
【文献】 Tabacchini V et al,Probabilities of triggering and validation in a digital silicon photomultiplier,Journal of Instrumentation ,Institute of Physics Publishing,2014年 6月18日,vol. 9, No. 6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161 −1/166
A61B 6/00 −6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線粒子検出器においてシンチレーションイベントの位置を決定する方法であって、前記放射線粒子検出器は、シンチレータ素子のロケーションで放射線粒子が吸収されるのに応じて光子のバーストを放射するように構成された複数のシンチレータ素子のロケーションを有し、前記シンチレータ素子のロケーションに光学的に結合された複数のフォトセンサとを有し、前記方法は、
前記フォトセンサの各々について、所定のトリガー閾値を越える光子数を測定する、前記フォトセンサの確率を示すトリガー確率を決定するステップと、
前記フォトセンサで、個々のフォトセンサに入射した光子数を示す光子分布を測定するステップと、
前記フォトセンサの各々の、測定された光子分布とトリガー確率とに基づいて、所定のエネルギー値を有するシンチレーションイベントが前記シンチレータ素子のロケーションで発生する尤度を、前記シンチレータ素子のロケーションの各々について、計算するステップと、
最大尤度を有するシンチレータ素子のロケーションを特定するステップとを含む、
方法。
【請求項2】
前記方法は、さらに、
前記シンチレータ素子のロケーションの各々について、前記シンチレータ素子のロケーションでシンチレーションイベントが発生したときの、前記フォトセンサの各々に入射した基準光子数を示す基準光子分布を決定するステップと、
さらに前記基準光子分布に基づいて前記尤度を計算するステップとを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フォトセンサの各々の前記基準光子分布及び/又は前記トリガー確率は、校正手順中に取得された測定値に基づいて決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フォトセンサの1つのトリガー確率を決定するステップは、前記フォトセンサの平均トリガー確率を決定するステップを含む、請求項1ないし3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フォトセンサの1つトリガー確率を決定するステップは、前記フォトセンサに入射する光子数に対する前記トリガー確率の依存性を決定するステップを含む、請求項1ないし4いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フォトセンサのトリガー確率を決定するステップは、所定のトリガー閾値より低い、前記フォトセンサに入射する光子数の前記フォトセンサの第1のトリガー確率を決定するステップと、前記トリガー閾値以上である、前記フォトセンサに入射する光子数の前記フォトセンサの第2のトリガー確率を決定、特に測定するステップとを含み、
第1と第2のトリガー確率に基づくステップ関数モデルを用いて尤度が計算される、
請求項1ないし5いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記トリガー確率を決定するステップは、前記トリガー確率の温度依存性を決定するステップを含み、前記尤度は測定された温度を考慮したトリガー確率に基づいて計算される、
請求項1ないし6いずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記トリガー確率を決定するステップは、前記トリガー確率のシンチレーションイベントレートへの依存性を決定するステップを含み、前記尤度は測定されたシンチレーションイベントレートへの依存性を考慮したトリガー確率に基づいて計算される、請求項1ないし7いずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記トリガー確率を決定するステップは、前記トリガー確率の、トリガーされた隣接フォトセンサ数への依存性を決定するステップを含み、前記尤度は、トリガーされ測定された隣接フォトセンサ数への依存性に基づいたトリガー確率に基づいて計算される、
請求項1ないし8いずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記シンチレータ素子のロケーションの各々の尤度を計算するステップと、前記最大尤度を有するシンチレータ素子のロケーションを特定するステップとは、エネルギーを変えて、繰り返される、請求項1ないし9いずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1ないし10いずれか一項に記載の方法を実行するコンピュータプログラムであって、プロセッサで実行されると、前記プロセッサに、
前記フォトセンサの各々について、所定のトリガー閾値を越える光子数を測定する、前記フォトセンサの確率を示すトリガー確率を決定するステップと、
前記フォトセンサから、個々のフォトセンサに入射した光子数を示す光子分布を測定するステップと、
前記フォトセンサの各々の、測定された光子分布とトリガー確率とに基づいて、所定のエネルギー値を有するシンチレーションイベントが前記シンチレータ素子のロケーションで発生する尤度を、前記シンチレータ素子のロケーションの各々について、計算するステップと、
最大尤度を有するシンチレータ素子のロケーションを特定するステップとを実行させる
コンピュータプログラム。
【請求項12】
放射線粒子検出器であって、
放射線粒子がシンチレータ素子のロケーションで吸収されるのに応じて光子のバーストを放射するように構成された複数のシンチレータ素子のロケーションと、
前記シンチレータ素子のロケーションに光学的に結合した複数のフォトセンサと、
プロセッサであって、
前記フォトセンサの各々について、所定のトリガー閾値を越える光子数を測定する、前記フォトセンサの確率を示すトリガー確率を決定するステップと、
個々のフォトセンサに入射した光子数を示す光子分布を前記フォトセンサから取得するステップと、
前記フォトセンサの各々の、測定された光子分布とトリガー確率とに基づいて、所定のエネルギー値を有するシンチレーションイベントが前記シンチレータ素子のロケーションで発生する尤度を、前記シンチレータ素子のロケーションの各々について、計算するステップと、
最大尤度を有するシンチレータ素子のロケーションを特定するステップとを実行するように構成されたプロセッサとを含む、
放射線粒子検出器。
【請求項13】
請求項12に記載の少なくとも1つの放射線粒子検出器と、
特定されたシンチレータ素子のロケーションに基づいて画像表示を再構成する再構成部と、
再構成された画像表示の少なくとも一部を表示する表示部とを有する、
核画像化システム。
【請求項14】
さらに、画像領域の周りに配置された複数の放射線粒子検出器を有し、前記再構成部は、陽電子放射断層撮影再構成法を実行するように構成された、
請求項13に記載の核画像化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線粒子検出器の分野に関する。本発明は、核画像化システム、例えば、医療用又は研究用の陽電子放出断層撮影(PET)スキャナや単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)スキャナなどに具体的に応用できる。
【背景技術】
【0002】
PETスキャナでは、画素化されたシンチレータ素子を用いて、入射する放射線粒子を、紫外または可視スペクトルの波長を有する光子のバーストに変換する。シンチレータ素子は一般的にマトリックス状に構成され、各シンチレータ素子は1×1mm2から4×4mm2のオーダーのベース領域を有する。シンチレーションイベントはそのシンチレータ素子に結合したフォトセンサで検出される。最先端のPETスキャナでは、一般的には、光子の衝突に応じて降伏するように構成された単一光子アバランシェダイオード(SPADs)のアレイを有する固体フォトセンサ、例えばシリコン光電子増倍器(SiPMs)が使われる。
【0003】
あるいは、シンチレータ物質の大きなブロックから構成されたモノリシックシンチレータ素子を用いても良い。モノリシックシンチレータは、一般的に、フォトセンサのアレイに結合し、そのフォトセンサのアレイはモノリシックシンチレータ素子中の異なるシンチレータ素子のロケーションにおけるシンチレーションイベントのロケーションを特定するように構成されている。
【0004】
特定できるシンチレータ素子のロケーションの大きさは、画像の空間的解像度を決定する主な要因である。よって、解像度を大きくするため、小さいシンチレータ素子(small scintillator element locations)が望まれる。高解像度固体核画像化システムの探求において、単一フォトセンサのサイズより大きい解像度を得るため、アンガーロジック(Anger logic)が用いられている。シンチレータ及びフォトセンサを、放射されたシンチレーション光を複数のフォトセンサに広げる光ガイドと結合し、アンガーロジックでシンチレータ素子を特定することによって、解像度を向上できる。アンガーロジックは、隣接するフォトセンサからの情報に依存してシンチレータ素子のロケーションを特定するから、シンチレーションイベントがフォトセンサの不感時間中に発生したり、何らかの理由で個々のフォトセンサがアクティブでなくなったりしてフォトセンサの一部からの情報が無くなると、不正確になる。
【0005】
フォトセンサ情報が無くなることに対するロバスト性を改善するために、シンチレーションイベントのロケーションを特定し、そのイベントのエネルギーを推定する最大尤度法が用いられている。最大尤度法は、一般的に、可能性のある各シンチレーションイベントのロケーションの尤度を計算し、それによりそのシンチレーションイベントのエネルギーを推定するステップを含む。通常、最大尤度を返すロケーションが、イベントの発生ロケーションであると仮定される。これらの最大尤度法は、1つのフォトセンサの測定情報が失われた場合には、アンガーロジックと比べて良い性能を示す。しかし、複数のフォトセンサの情報が失われて、シンチレーションイベントのロケーションの特定がうまくできなくなると、既知の最大尤度法はうまくいかない。
【0006】
非特許文献1は、臨床前MR互換PETスキャナの場合におけるガンマ線検出用の検出器を開示している。この検出器は、光共有原理(light sharing principle)を用いる中間光ガイドと共に、LYSO結晶アレイとシリコン光電子増倍器のアレイとを含む。シンチレーションイベントの尤度の最大化に基づくポジショニング方式を開示している。この方法により、アクティブ結晶画素のインデックスが直接与えられ、レジスタされたガンマ線エネルギーの補正が可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Christoph W. Lerche et al著「Maximum likelihood based positioning and energy correction for pixellated solid−state PET detectors」(2011 IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference, Valencia, Spain, 23−29 Octoer 2011, IEEE, Pitscataway, NJ, pp 3610−3613)
【発明の概要】
【0008】
フォトセンサの一部からの測定値が失われた場合であっても、シンチレータ素子のロケーションの識別を改善でき都合がよい。この問題をより良く解決するため、本発明の第1の態様では、放射線粒子検出器においてシンチレーションイベントの位置を決定する方法が提供される。該方法は、前記放射線粒子検出器は、シンチレータ素子のロケーションで放射線粒子が吸収されるのに応じて光子のバーストを放射するように構成された複数のシンチレータ素子のロケーションを有し、前記シンチレータ素子のロケーションに光学的に結合された複数のフォトセンサとを有し、前記方法は、
− 前記フォトセンサの各々について、所定のトリガー閾値を越える光子数を測定する、前記フォトセンサの確率を示すトリガー確率を決定するステップと、
−前記フォトセンサで、個々のフォトセンサに入射する光子数を示す光子分布を測定するステップと、
− 前記フォトセンサの各々の、測定された光子分布とトリガー確率とに基づいて、所定のエネルギー値を有するシンチレーションイベントが前記シンチレータ素子のロケーションで発生する尤度を、前記シンチレータ素子のロケーションの各々について、計算するステップと、
− 最大尤度を有するシンチレータ素子のロケーションを特定するステップとを含む。
【0009】
本発明の他の一態様によると、上記方法を実行するコンピュータプログラム製品が提供される。該コンピュータプログラム製品は、少なくとも次のステップを実行するように構成された命令を含む:
− 前記フォトセンサの各々について、所定のトリガー閾値を越える光子数を測定する、前記フォトセンサの確率を示すトリガー確率を決定するステップと、
− 前記フォトセンサから、個々のフォトセンサに入射する光子数を示す光子分布を取得するステップと、
− 前記フォトセンサの各々の、測定された光子分布とトリガー確率とに基づいて、所定のエネルギー値を有するシンチレーションイベントが前記シンチレータ素子のロケーションで発生する尤度を、前記シンチレータ素子のロケーションの各々について、計算するステップと、
− 最大尤度を有するシンチレータ素子のロケーションを特定するステップ。
【0010】
本発明のさらに他の態様によると、放射線粒子検出器が提供される。該検出器は、
− 放射線粒子がシンチレータ素子のロケーションで吸収されるのに応じて光子のバーストを放射するように構成された複数のシンチレータ素子のロケーションと、
− 前記シンチレータ素子のロケーションに光学的に結合された複数のフォトセンサと、
− プロセッサであって、
− 前記フォトセンサの各々について、所定のトリガー閾値を越える光子数を測定する、前記フォトセンサの確率を示すトリガー確率を決定するステップと、
− 前記フォトセンサから、個々のフォトセンサに入射する光子数を示す光子分布を取得するステップと、
− 前記フォトセンサの各々の、測定された光子分布とトリガー確率とに基づいて、所定のエネルギー値を有するシンチレーションイベントが前記シンチレータ素子のロケーションで発生する尤度を、前記シンチレータ素子のロケーションの各々について、計算するステップと、
− 最大尤度を有するシンチレータ素子のロケーションを特定するステップを実行するように構成されたプロセッサを含む。
【0011】
本開示のさらに他の一態様が関係するのは、核画像化システムであって、
− 少なくとも1つの、上記の放射線粒子検出器と、
− 特定されたシンチレータ素子のロケーションに基づいて画像表示を再構成する再構成部と、
− 再構成された画像表示の少なくとも一部を表示する表示部とを有する。
【0012】
本発明によると、各フォトセンサに対して、トリガー確率が決定される。これは前記フォトセンサが所定閾値を越える量の光、すなわち数の光子を測定する確率を示す。フォトセンサは、シンチレーションイベントにより生じる測定値と暗雑音(dark noise)により生じる測定値とを弁別するためのトリガー閾値を有しても良い。一般的に、フォトセンサは、検出した光子数が所定のトリガー閾値を越えた時に測定データを出力する。フォトセンサにおける光分布が測定される。各シンチレータ素子のロケーションに対して、所定エネルギーを有するシンチレーションイベントが前記シンチレータ素子のロケーションで発生する尤度が、測定された光分布に基づいて計算される。個々のシンチレータ素子のロケーションの尤度を計算する時、各フォトセンサのトリガー確率がさらに考慮される。トリガー確率に基づく尤度を計算することにより、(例えば、非アクティブである、又は不感時間が長いため)トリガーの確率が比較的低いフォトセンサからの測定情報は、尤度を計算するとき、より重要ではないものとして扱われる。比較的高いトリガー確率を示すフォトセンサは、尤度を計算する時に、より高い加重を与えられる。本発明の方法は、フォトセンサの一部からの情報が失われても、シンチレーションイベントのロケーション特定(localization)を改善することが分かった。
【0013】
本発明によると、シンチレータ素子のロケーションはモノリシックシンチレータ中のロケーションであってもよい。あるいは、シンチレータ素子のロケーションは、シンチレータ素子のアレイを含む画素化されたシンチレータ中のシンチレータ素子であってもよい。画素化されたシンチレータのシンチレータ素子は、画素化されたシンチレータの隣接するシンチレータ素子から光学的に分離されていてもよい。
【0014】
本発明は、好ましくは、シンチレータ素子のロケーションの光をフォトセンサに誘導及び/又は分散する光ガイドを有する放射線粒子検出器に適用される。それにもかかわらず、本発明は、光ガイドを有しない放射線粒子検出器にも適用できる。
【0015】
好ましくは、フォトセンサはシリコン光電子増倍器(SiPM)を含む。シリコン光電子増倍器は、共通のシリコン基板上に単一光子アバランシェダイオードのアレイを集積したものである。読み出し電子回路は、SiPMからの測定データを取得するため、SiPMに接続されてもよい。特に、フォトセンサは、共通シリコン基板上で、読み出し回路をSPADsと集積したデジタルSiPMを含んでいてもよい。トリガーするとき、SiPMは、好ましくは、SiPMにより検出された光子量に比例する測定信号を出力する。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態では、前記方法はさらに、
− 前記シンチレータ素子のロケーションの各々について、前記シンチレータ素子のロケーションでシンチレーションイベントが発生したときの、前記フォトセンサの各々に入射した基準光子数を示す基準光子分布を決定するステップと、
− さらに前記基準光分布に基づいて前記尤度を計算するステップとを含む。
【0017】
好ましくは、前記フォトセンサの各々の前記基準光子分布及び/又は前記トリガー確率は、校正手順中に取得された測定値に基づいて決定される。放射線検出器で放射線を検出する前に、校正測定を実行してもよい。有利にも、校正測定は、フォトセンサの不感時間をできるだけ減らすため、低シンチレーションレートで行われる。
【0018】
本発明の好ましい他の一実施形態では、フォトセンサの1つのトリガー確率を決定するステップは、前記フォトセンサの平均トリガー確率を決定、特に測定、するステップを含む。平均トリガー確率を決定し、この平均確率を用いて、各シンチレータ素子のロケーションの尤度を計算することにより、シンチレーションイベントロケーション特定(localization)の性能を、少ない労力で改善できる。各フォトセンサに対して1つの一定の確率値を記憶すればよい。例えば、機能していないフォトセンサのトリガー確率はゼロに設定でき、機能しているフォトセンサのトリガー確率はゼロより大きい一定値に設定できる。
【0019】
本発明の好ましい他の一実施形態では、前記フォトセンサの1つトリガー確率を決定するステップは、前記フォトセンサに入射する光子数に対する前記トリガー確率の依存性を決定するステップを含む。よって、入射光子数の関数であるトリガー確率に基づいて、各シンチレータ素子のロケーションの尤度を計算することが可能であり、それによりロケーション特定性能をさらに改善できる。
【0020】
有利にも、フォトセンサのトリガー確率を決定するステップは、所定のトリガー閾値より低い、フォトセンサに入射する光子数の、前記フォトセンサの第1のトリガー確率を決定、特に測定するステップと、所定のトリガー閾値以上の、フォトセンサに入射する光子数の、前記フォトセンサの第2のトリガー確率を決定、特に測定するステップとを有し、それにより、尤度の計算にトリガー確率の単一ステップ関数モデルを用いることを可能にする。
【0021】
本発明の好ましい他の一実施形態では、前記トリガー確率を決定するステップは、前記トリガー確率の温度依存性を決定、特に測定するステップを含み、前記尤度は測定された温度にも基づいて計算される。このように、尤度を計算するとき、トリガー確率の温度依存性を考慮でき、それによりシンチレーションイベントロケーション特定をさらに改善できる。
【0022】
さらに好ましくは、前記トリガー確率を決定するステップは、前記トリガー確率のシンチレーションイベントレートへの依存性を決定、特に測定するステップを含み、前記尤度は測定されたシンチレーションイベントレートにも基づいて計算される。結果として、尤度を計算する際、トリガー確率のシンチレーションイベントレートへの依存性を考慮して、シンチレーションイベントロケーション特定をさらに改善することができる。シンチレーションイベントレートは平均イベントレートでも実際イベントレートでもよい。
【0023】
本発明の好ましい他の一実施形態では、トリガー確率を決定するステップは、トリガー確率の、トリガーした隣接フォトセンサの数への依存性を決定、特に測定するステップを含み、前記尤度はさらに、トリガーした隣接フォトセンサの数に基づいて計算される。
【0024】
有利にも、前記シンチレータ素子のロケーションの各々の尤度を計算するステップと、前記最大尤度を決定するステップとは、繰り返しごとにエネルギーを変えて、繰り返される、このように、シンチレーションイベントのロケーション及びエネルギーを繰り返し推定できる。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態では、核画像化システムは、画像領域の周りに配置された複数の放射線粒子検出器を有し、前記再構成部は、陽電子放射断層撮影再構成法を実行するように構成される。例えば、放射線検出器は、画像化領域の周りに半径方向に配置されてもよく、画像領域の周りに配置された複数のパネルの形式であってもよく、例えば、画像化領域を取り囲むリングであってもよい。
【0026】
本発明の上記その他の態様を、以下に説明する実施形態を参照して明らかにし、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態による放射線粒子検出器を示す側面図である。
図2】本発明の第2の実施形態による放射線粒子検出器を示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態による核画像化システムを示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態による方法に対応するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、核画像化システム、例えば高解像度PETスキャナで利用される放射線粒子検出器1の第1の実施形態を示す。放射線粒子検出器1は、複数の(シンチレータ素子の)ロケーションに画素化されたシンチレータを有し、シンチレータ素子のロケーションはシンチレータ素子2である。シンチレータ素子2の材料は、511keVガンマ線に対して高い阻止能(stopping power)を提供し、シンチレーションバーストの時間的崩壊が速いものが選択される。幾つかの好適なシンチレータ材料は、LSO(lutetium oxyorthosilicate)、LYSO(lutetium yttrium orthosilicate)、及びLaBr(lanthanum bromide)である。言うまでもなく、他の材料でできたシンチレータ素子2を替わりに使うこともできる。シンチレータ材料の構造は、例えば、結晶、多結晶、又はセラミックであってもよい。シンチレータ素子2はシンチレータレイヤ3中に構成される。シンチレータ素子2の間の光共有を避けるため、例えば、隣接するシンチレーション素子2の間に、反射膜などの反射材料4を配置する。あるいは、シンチレータ素子2を反射コーティングで包み込むこともできる。
【0029】
シンチレーション素子2は、センサレイヤ6に結合される。センサレイヤは固体フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4のアレイにより構成されている。シンチレータレイヤ3とフォトセンサレイヤ6との間に平面光ガイドが設けられ、シンチレーション光が複数のフォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4に広がるようにする。フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4は、シリコン光電子増倍器(SiPMs)であり、それぞれシリコン基板上にモノリシックに配置された単一光子アバランシェダイオードのアレイを有する。この実施形態によるフォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4はいわゆるデジタルシリコン光電子増倍器であり、単一光子アバランシェダイオードと共に読み出し回路を同一シリコン基板上に集積したものである。単一光子アバランシェダイオードは、光子の衝突に応じて降伏するように構成されている。デジタルシリコン光電子増倍器(digital silicon photomultiplier)内では、アレイの各単一光子アバランシェダイオードの状態のデジタル表示が利用できる。最先端のデジタルSiPMsでは、すべてのダイオードの降伏状態のデジタル表示を用いて、降伏したすべての単一光子アバランシェダイオードの和を計算し、計算した値をデジタルタイムスタンプとともに出力する。降伏したすべての単一光子ダイオードの和が所定のトリガー閾値を越えると、フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4の出力にエネルギーとタイムスタンプが出力される。
【0030】
放射線粒子検出器1は、さらにロケーション特定部7を有する。ロケーション特定部(localization unit)7は、シンチレータ素子ごとに、シンチレーションイベントの位置を特定するように構成されたプロセッサを有する。フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4の少なくとも1つによる光子のバーストの検出に応じて、ロケーション特定部7は、光子のバーストを放射したシンチレーション素子2を決定する。第1の実施形態によるロケーション特定部7は、複数のフォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4に接続された別のユニットとして実装されている。あるいは、ロケーション特定部7は、単一光子アバランシェダイオード及び読み出しエレクトロニクスとともに、1つのフォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4の一部として、又は複数のフォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4とロケーション特定部7よりなるモジュールとして、同一基板上に実装できる。
【0031】
図1は、シンチレータ素子2.1と相互作用するガンマ線10を示す。結果として、波長がスペクトルの紫外又は可視部にある光子のバーストが、シンチレータ素子2.1により放射される。光子は反射器4により反射され、光ガイド8を介して、シンチレータ素子2.1を、フォトセンサ5.1に結合されたシンチレータ素子2.1の側に出る。光ガイド8に隣接した側にシンチレータ素子2.1を出る光は、光ガイド8により、複数のフォトセンサ5.2に広がる。よって、光子は第1のフォトセンサ5.1だけでなく第2のフォトセンサ5.2によっても受光される。
【0032】
ロケーション特定部7は、図1図4を参照して後で説明するステップ100、101、102、103、及び1.4を実行するように構成されたプロセッサを含む。校正ステップ100において、各シンチレータ素子のロケーション2に対する基準光子分布を決定する。一例として、上記のシンチレータ素子2.1に対応するシンチレータ素子のロケーションに対して、基準光子分布は、シンチレーションイベントが前記シンチレーション素子2.1のロケーションで発生した時の、各フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4に入射する基準光子数を示す。以下、インデックスiのシンチレータ素子でシンチレーションが発生した時に、インデックスjのフォトセンサで検出される(光子数に対応する)シンチレーション光の平均割合はci,jで示される。
【0033】
校正測定ステップ100は、フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4の不感時間(dead time)をできるだけ減らすため、低シンチレーションイベントレートで実行される。さらにまた、校正に使われるデータは、放射線粒子検出器1のフォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4により完全に検出されるシンチレーションイベントに限定される。言い換えると、フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4により検出される全エネルギーがガンマ線のエネルギー値に近いシンチレーションイベントに、データが限定される。校正ステップ中のシンチレーションイベントのロケーション特定は、情報が失われていないシンチレーションイベントに対してよく機能するアンガーロジック(Anger logic)を用いて行われる。
【0034】
さらに、校正ステップ100において、決定される校正データが用いられ、各フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4に対して、所定のトリガー閾値を越える光子数を測定する前記フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4の確率を示すトリガー確率が決定される。トリガー閾値は、例えば、1、2、2.3、3.3又は8.2光子など一組の有理数から選択された光子数に設定できる。決定されるトリガー確率は、一定でも、次のパラメータのうちの一又は複数の関数であってもよい:前記フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4に入射する光子数、温度、シンチレーションイベントレート、トリガーされた隣接画素数。以下、トリガー確率は
(外1)
と記す。ここで、jはフォトセンサのインデックス、iはシンチレータ素子のインデックス、Eはシンチレーションイベントにより残される(deposit)推定エネルギーである。
【0035】
尤度計算ステップ101において、光子分布は複数のフォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4から取得される。トリガーされた各フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4は、前記フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4に入射する光子数を示す。さらに、各シンチレータ素子2に対して、前記シンチレータ素子2において所定のエネルギー値を有するシンチレーションイベントが発生する尤度を計算する。計算は、測定された光子分布と、校正ステップ100で決定された基準光子分布と、校正ステップ100で決定されたトリガー確率とに基づく。測定される光子分布がq={qj}であるとして、ガンマ粒子がシンチレータ素子iにエネルギーEを残す(deposit)場合の尤度は、
【0036】
【数1】
で表せる。
【0037】
尤度は、好ましくは、尤度関数の対数(いわゆる対数尤度)として計算される。対数尤度を用いることにより、計算負荷が減少するので、データ処理が容易になる。対応する対数尤度は
【0038】
【数2】
として規定される。
【0039】
各シンチレータ素子2の尤度を計算した後、最大化ステップ102において、尤度が最大のシンチレータ素子2が特定される。これは、フォトセンサ5.2、5.2、5.3、5.4により検出された光子バーストの源であると仮定されるシンチレータ素子2である。
【0040】
尤度計算ステップ101と最大化ステップ102とは繰り返し実行できる。このように、最大化ステップ102を完了した後、停止基準ステップ103において、プロセッサは停止基準が満たされたか決定する。停止基準は、例えば、所定の繰り返し数又は最小エネルギー値であり得る。停止基準が満たされた場合、本方法は終了し、例えば、PETスキャナの再構成部11におけるさらなる処理のため、最大化ステップ102で決定されたシンチレータ素子が、推定されたエネルギー値と共に出力される。停止基準が満たされない場合、尤度計算ステップ101で用いるエネルギー値を修正して各シンチレータ素子2の尤度を計算するエネルギー修正ステップ104が実行される。E(n)をn回の繰り返し後の推定エネルギー値であるとすると、エネルギーは
【0041】
【数3】
と設定される。
【0042】
図2は、本発明による放射線粒子検出器1の第2の実施形態を示す。図2に示した放射線粒子検出器1は、フォトセンサレイヤ6に隣接するシンチレータレイヤ3を有する。第2の実施形態のシンチレータレイヤ3は、シンチレータ物質のブロックよりなるモノリシックシンチレータである。第1の実施形態と比較して、画素化されたシンチレータのシンチレータ素子の替わりに、モノリシックシンチレータにおけるシンチレータ素子のロケーションが特定される。発明の方法を目的として、モノリシックシンチレータは、一定のピッチで複数のシンチレータ素子のロケーションを有すると仮定できる。
【0043】
第2の実施形態による放射線粒子検出器は光ガイドを有しない。それにも関わらず、平面光ガイドが任意的にシンチレータレイヤ3とフォトセンサレイヤ6との間に配置され、光がフォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4に広がるようにする。
【0044】
図2は、ガンマ線10の、シンチレータレイヤ3のモノリシックシンチレータ2との相互作用を示す。ガンマ線10はシンチレータ素子のロケーションで阻止され、その結果生じる光子のバーストが隣接するフォトセンサ5.1、5.2、5.3に広がる。
【0045】
第2の実施形態による放射線粒子検出器におけるシンチレーションイベントの位置とエネルギーは、第1の実施形態を参照して説明したように決定してもよい。
【0046】
図3は、複数の放射線粒子検出器1を含むPETスキャナとして校正された核画像化システムを示す図である。放射線粒子検出器1は、軸方向に沿った一以上のリングに配置されている。しかし、放射線粒子検出器1の他の配置を用いてもよい。放射線粒子検出器1は検査領域を取り囲んでいる。検査領域に位置づけられた被験者は、放射線粒子検出器1により検出される特性エネルギーを有するガンマ線その他の放射線粒子を放出する放射性医薬品の投与を受けている。
【0047】
核画像化システムは、さらに、陽電子放射断層撮影再構成法を実行するように構成された再構成部11を有する。再構成部は、複数の放射線粒子検出器1に接続され、シンチレータ素子特定データを受け取る。再構成部11は、放射線粒子検出器1のシンチレータ素子特定データを再構成して、画像表示にする。これはメモリ12に記憶される。ディスプレイ13がメモリ12に接続され、再構成された画像表示の少なくとも一部を表示する。
【0048】
本発明を、図面と上記の説明に詳しく示し説明したが、かかる例示と説明は例であり限定ではなく、本発明は開示した実施形態には限定されない。例えば、核画像化システムがSPECTスキャナである実施形態で、本発明を実施することができる。
【0049】
本発明の他の一実施形態では、ロケーション特定部(localization unit)7は、コンピュータプログラム製品を実行するように構成されたプロセッサとして提供される。該コンピュータプログラム製品は、少なくとも、次のステップを実行するように構成された命令を含む:前記フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4の各々について、所定のトリガー閾値を越える光子数を測定する、前記フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4の確率を示すトリガー確率を決定するステップと、個々のフォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4に入射した光子数を示す光子分布を前記フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4から取得するステップと、前記フォトセンサ5.1、5.2、5.3、5.4の各々の、測定された光子分布とトリガー確率とに基づいて、所定のエネルギー値を有するシンチレーションイベントが前記シンチレータ素子のロケーションで発生する尤度を、前記シンチレータ素子のロケーションの各々について、計算するステップと、最大尤度を有するシンチレータ素子のロケーションを特定するステップとを含む。コンピュータプログラム製品は、光記憶媒体や他のハードウェアとともに、またはその一部として供給される固体媒体などの適切な媒体に記憶及び/または配布することができ、インターネットや有線または無線の電気通信システムなどを介して他の形式で配信することもできる。
【0050】
請求項に記載した発明を実施する際、図面、本開示、及び添付した特許請求の範囲を研究して、開示した実施形態のその他のバリエーションを、当業者は理解して実施することができるであろう。請求項において、「有する(comprising)」という用語は他の要素やステップを排除するものではなく、「1つの(“a” or “an”)」という表現は複数ある場合を排除するものではない。相異なる従属クレームに手段が記載されているからといって、その手段を組み合わせて有利に使用することができないということではない。さらに、明細書において、第1の、第2の、第3のなどの文言は、同様のエレメントを区別するために用いられ、必ずしも生起や時間的順序を記述するものではない。請求項に含まれる参照符号は、その請求項の範囲を限定するものと解してはならない。
図1
図2
図3
図4