(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、第1および第2の電流検出器の検出値の平均値を算出し、前記平均値と前記第1の電流検出器の検出値とが一致するように前記第1のトランジスタのオン時間を制御するとともに、前記平均値と前記第2の電流検出器の検出値とが一致するように前記第4のトランジスタのオン時間を制御する、請求項2に記載の無停電電源装置。
前記制御装置は、前記第1および第2の電流検出器の検出値を比較し、前記第1の電流検出器の検出値が前記第2の電流検出器の検出値よりも小さい場合は前記第1のトランジスタのオン時間を増大させるとともに前記第4のトランジスタのオン時間を減少させ、前記第1の電流検出器の検出値が前記第2の電流検出器の検出値よりも大きい場合は前記第1のトランジスタのオン時間を減少させるとともに前記第4のトランジスタのオン時間を増大させる、請求項2に記載の無停電電源装置。
前記制御装置は、前記第1および第2のコイルに流れる電流の値が一致するように前記第1および第4のトランジスタのうちの少なくともいずれか一方のトランジスタのオン時間を制御して、複数の前記無停電電源装置に流れる横流電流を抑制する、請求項5に記載の無停電電源システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、この発明の一実施の形態による無停電電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
図1において、この無停電電源システムは、N台(Nは2以上の整数である)の無停電電源装置(UPS)U1〜UNと、バッテリ(電力貯蔵装置)3とを備える。
【0010】
無停電電源装置U1〜UNは、商用交流電源1と負荷2の間に並列接続される。無停電電源装置U1〜UNの台数Nは、たとえば、1台の無停電電源装置が故障した場合でも、残りの(N−1)台の無停電電源装置によって負荷2の運転を継続できるように選択されている。バッテリ3は、無停電電源装置U1〜UNに共通に設けられ、直流電力を蓄える。バッテリ3の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。
【0011】
商用交流電源1から三相交流電力が正常に供給されている通常時は、無停電電源装置U1〜UNの各々は、商用交流電源1からの三相交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をバッテリ3に供給するとともに、三相交流電力に変換して負荷2に供給する。負荷2は、無停電電源装置U1〜UNから供給される三相交流電力によって駆動される。負荷2の消費電流は、N台の無停電電源装置U1〜UNによって均等に分担される。
【0012】
商用交流電源1からの三相交流電力の供給が停止された停電時は、無停電電源装置U1〜UNの各々は、バッテリ3の直流電力を三相交流電力に変換して負荷2に供給する。したがって、バッテリ3に直流電力が蓄えられている期間は、負荷2の運転を継続することができる。
【0013】
図2は、無停電電源装置U1の構成を示す回路図である。無停電電源装置U1〜UNは同じ構成である。
図2において、無停電電源装置U1は、交流入力端子TIa,TIb,TIc、交流出力端子TOa,TOb,TOc、およびバッテリ端子TBP,TBNを備える。交流入力端子TIa,TIb,TIcは、商用交流電源1からの商用周波数の三相交流電圧VU,VV,VWをそれぞれ受ける。無停電電源装置U1〜UNの交流入力端子TIaは互いに接続され、それらの交流入力端子TIbは互いに接続され、それらの交流入力端子TIcは互いに接続されている。
【0014】
交流出力端子TOa,TOb,TOcは、負荷2に対して商用周波数の三相交流電圧VR,VS,VTをそれぞれ出力するために設けられている。無停電電源装置U1〜UNの交流出力端子TOaは互いに接続され、それらの交流出力端子TObは互いに接続され、それらの交流出力端子TOcは互いに接続されている。
【0015】
バッテリ端子TBP,TBNは、バッテリ3の正極および負極にそれぞれ接続される。無停電電源装置U1〜UNのバッテリ端子TBPは互いに接続され、それらのバッテリ端子TBNは互いに接続されている。
【0016】
無停電電源装置U1は、さらに、スイッチS1〜S8,入力フィルタ10、電流検出器CD1〜CD6,CD11,CD12、電力変換器21〜23、双方向チョッパ24、および出力フィルタ30を備える。スイッチS1〜S3の一方端子はそれぞれ交流入力端子TIa,TIb,TIcに接続され、それらの他方端子は入力フィルタ10に接続される。スイッチS1〜S3は、通常はオンされ、たとえば無停電電源装置U1のメンテナンス時にオフされる。
【0017】
入力フィルタ10は、リアクトル11〜13およびコンデンサ14〜16を含む。リアクトル11〜13の一方端子はスイッチS1〜S3の他方端子にそれぞれ接続され、リアクトル11〜13の他方端子は電力変換器21〜23の入力端子21a〜23aにそれぞれ接続される。コンデンサ15〜16の一方端子はリアクトル11〜13の一方端子にそれぞれ接続され、コンデンサ15〜16の他方端子はともに中性点NPに接続される。
【0018】
リアクトル11〜13およびコンデンサ14〜16は、低域通過フィルタを構成する。入力フィルタ10は、商用交流電源1からの商用周波数の三相交流電力を電力変換器21〜23に通過させ、電力変換器21〜23で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源1側に通過することを防止する。
【0019】
電流検出器CD1〜CD3は、商用交流電源1から電力変換器21〜23の入力端子21a〜23aに流れる電流の瞬時値をそれぞれ検出し、検出値を示す信号を制御装置(図示せず)に出力する。制御装置(図示せず)は、たとえば、交流電圧VU,VV,VWの位相と電流検出器CD1〜CD3によって検出した電流の位相とが一致するように、すなわち力率が1.0になるように、電力変換器21〜23を制御する。
【0020】
電力変換器21〜23は、商用交流電源1から三相交流電力が供給されている通常時は、商用交流電源1から入力端子21a〜23aに与えられた三相交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を双方向チョッパ24を介してバッテリ3に供給するとともに、その直流電力を三相交流電力に変換して出力端子21b〜23bに出力する。
【0021】
電力変換器21〜23は、商用交流電源1からの三相交流電力の供給が停止された停電時は、バッテリ3から双方向チョッパ24を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換して出力端子21b〜23bに出力する。
【0022】
換言すると、電力変換器21〜23は、通常時は、商用交流電源1から入力端子21a〜23aに与えられる三相交流電圧VU,VV,VWを直流電圧V1〜V3に変換するとともに、それらの直流電圧V1〜V3を三相交流電圧V4a〜V4cに変換して出力端子21b〜23bに出力する。電力変換器21〜23は、停電時は、双方向チョッパ24から与えられる直流電力に基づいて生成される直流電圧V1〜V3を三相交流電圧V4a〜V4cに変換して出力端子21b〜23bに出力する。
【0023】
双方向チョッパ24は、5個の端子T1〜T3を含む。端子T1〜T3は、電力変換器21〜23で生成される直流電圧V1〜V3をそれぞれ受ける。スイッチS7,S8の一方端子はそれぞれ端子T4,T5に接続され、スイッチS7,S8の他方端子はバッテリ端子TBP,TBNにそれぞれ接続される。バッテリ端子TBP,TBNは、バッテリ3の正極および負極にそれぞれ接続される。スイッチS7,S8は、通常はオンされ、たとえば、無停電電源装置U1またはバッテリ3のメンテナンス時にオフされる。
【0024】
双方向チョッパ24は、商用交流電源1から三相交流電力が供給されている通常時は、電力変換器21〜23で生成された直流電力をバッテリ3に蓄え、商用交流電源1からの三相交流電力の供給が停止された停電時は、バッテリ3の直流電力を電力変換器21〜23に与える。
【0025】
換言すると、双方向チョッパ24は、通常時は、電力変換器21〜23で生成された直流電圧VDC(=V1−V2)を降圧してバッテリ3に与え、バッテリ3を充電する。双方向チョッパ24は、停電時は、バッテリ3の端子間電圧VBを昇圧して直流電圧VDCを生成し、その直流電圧VDCを電力変換器21〜23に供給し、バッテリ3を放電させる。
【0026】
電流検出器CD11は、双方向チョッパ24内に設けられ、端子T1またはT3から端子T4に流れる電流I1の瞬時値を検出する。電流検出器CD12は、双方向チョッパ24内に設けられ、端子T5から端子T3またはT2に流れる電流I2の瞬時値を検出する。制御装置(図示せず)は、直流電圧V1〜V3、バッテリ3の端子間電圧、電流検出器CD11,CD12の検出値などに基づいて双方向チョッパ24を制御する。
【0027】
電流検出器CD4〜CD6は、それぞれ電力変換器21〜23の出力電流の瞬時値を検出する。電流検出器CD4〜CD6の検出値は、制御装置(図示せず)に与えられる。制御装置(図示せず)は、他の無停電電源装置U2〜UNと通信し、電流検出器CD4〜CD6の検出値に基づいて、負荷電流が無停電電源装置U1〜UNによって均等に負担されるように電力変換器21〜23を制御する。
【0028】
出力フィルタ30は、リアクトル31〜33およびコンデンサ34〜36を含む。リアクトル31〜33の一方端子は電力変換器21〜23の出力端子21b〜23bにそれぞれ接続される。コンデンサ34〜36の一方端子はそれぞれリアクトル31〜33の他方端子に接続され、コンデンサ34〜36の他方端子はともに中性点NPに接続される。リアクトル31〜33およびコンデンサ34〜36は、低域通過フィルタを構成する。
【0029】
出力フィルタ30は、電力変換器21〜23で生成された商用周波数の三相交流電力を負荷2に通過させ、電力変換器21〜23で発生するスイッチング周波数の信号が負荷2に通過するのを防止する。換言すると、出力フィルタ30は、電力変換器21〜23で生成される交流電圧V4a〜V4cを正弦波状の三相交流電圧VR,VS,VTに変換して負荷2に供給する。
【0030】
スイッチS4〜S6の一方端子はそれぞれリアクトル31〜33の他方端子に接続され、スイッチS4〜S6の他方端子はそれぞれ交流出力端子TOa〜TOcに接続される。スイッチS4〜S6は、通常はオンされ、たとえば、無停電電源装置U1のメンテナンス時にオフされる。
【0031】
図3は、電力変換器21の構成を示す回路ブロック図である。
図3において、電力変換器21は、入力端子21a、コンバータ40、直流正母線L1、直流負母線L2、直流中性点母線L3、コンデンサC1,C2、ヒューズF1〜F3、インバータ41、および出力端子21bを含む。電力変換器21は、制御装置42によって制御される。
【0032】
制御装置42は、入力端子21aに与えられる交流電圧VUの瞬時値、母線L1〜L3の直流電圧V1〜V3の瞬時値、出力端子TOaの電圧VOの瞬時値、電流検出器CD11,CD4の検出値などに基づいて、コンバータ40およびインバータ41を制御するためのPWM(pulse width modulation)信号φ1〜φ8を生成する。
【0033】
コンバータ40は、トランジスタQ1〜Q4およびダイオードD1〜D4を含む。トランジスタQ1〜Q4の各々は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。トランジスタQ1のコレクタは直流正母線L1に接続され、そのエミッタは入力端子21aに接続される。ダイオードD1のアノードは入力端子21aに接続され、そのカソードは直流正母線L1に接続されている。すなわち、ダイオードD1はトランジスタQ1に逆並列に接続されている。
【0034】
トランジスタQ2のコレクタは入力端子21aに接続され、そのエミッタは直流負母線L2に接続される。ダイオードD2のアノードは直流負母線L2に接続され、そのカソードは入力端子21aに接続されている。すなわち、ダイオードD2はトランジスタQ2に逆並列に接続されている。
【0035】
トランジスタQ3,Q4のコレクタは互いに接続され、トランジスタQ3,Q4のエミッタはそれぞれ入力端子21aおよび直流中性点母線L3に接続される。ダイオードD3,D4のカソードはともにトランジスタQ3,Q4のエミッタに接続され、それらのアノードはそれぞれ入力端子21aおよび直流中性点母線L3に接続されている。すなわち、ダイオードD3,D4は、それぞれトランジスタQ3,Q4に逆並列に接続されている。トランジスタQ3,Q4およびダイオードD3,D4は、双方向スイッチを構成する。
【0036】
トランジスタQ1〜Q4のゲートは、制御装置42からのPWM信号φ1〜φ4を受ける。PWM信号φ1〜φ4は、交流電圧VUに同期して生成され、交流電圧VUよりも十分に高い周波数を有する。PWM信号φ1とφ4は互いに相補な信号であり、PWM信号φ2とφ3は互いに相補な信号である。
【0037】
たとえば、交流電圧VUが正電圧である場合は、PWM信号φ1,φ4は交互に「H」レベルにされるとともに、PWM信号φ2,φ3はそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルに固定される。したがって、トランジスタQ1,Q4が交互にオンされるとともに、トランジスタQ2,Q3はそれぞれオフ状態およびオン状態に固定される。
【0038】
交流電圧VUが負電圧である場合は、PWM信号φ2,φ3は交互に「H」レベルにされるとともに、PWM信号φ1,φ4はそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルに固定される。したがって、トランジスタQ2,Q3が交互にオンされるとともに、トランジスタQ1,Q4はそれぞれオフ状態およびオン状態に固定される。
【0039】
PWM信号が1周期内において「H」レベルにされる時間と、PWM信号の1周期の時間との比はデューティ比と呼ばれる。制御装置42は、交流電圧VUに同期してPWM信号φ1〜φ4のデューティ比を制御し、交流電圧VUを直流電圧V1〜V3に変換させる。直流電圧V1〜V3は、それぞれ直流正母線L1、直流負母線L2、および直流中性点母線L3に与えられる。V1>V3>V2であり、V3=(V1+V2)/2である。なお、直流中性点母線L3を接地すれば、直流電圧V1〜V3はそれぞれ正電圧、負電圧、および0Vとなる。
【0040】
制御装置42は、商用交流電源1から交流電圧VUが供給されている通常時は、コンバータ40のトランジスタQ1〜Q4を制御して交流電圧VUを直流電圧V1〜V3に変換させ、商用交流電源1からの交流電圧VUの供給が停止された停電時は、トランジスタQ1〜Q4をオフ状態に固定させてコンバータ40の運転を停止させる。
【0041】
ヒューズF1〜F3の一方端子はそれぞれ母線L1〜L3に接続され、それらの他方端子はそれぞれ双方向チョッパ24の端子T1〜T3に接続される。ヒューズF1〜F3は、母線L1〜L3と端子T1〜T3の間に過電流が流れた場合にブローされ、無停電電源装置U1を保護する。コンデンサC1は、ヒューズF1,F3の他方端子間に接続され、母線L1,L3間の直流電圧を平滑化および安定化させる。コンデンサC2は、ヒューズF3,F2の他方端子間に接続され、母線L3,L2間の直流電圧を平滑化および安定化させる。
【0042】
インバータ41は、トランジスタQ5〜Q8およびダイオードD5〜D8を含む。トランジスタQ5〜Q8の各々は、たとえばIGBTである。トランジスタQ5のコレクタは直流正母線L1に接続され、そのエミッタは出力端子21bに接続される。ダイオードD5のアノードは出力端子21bに接続され、そのカソードは直流正母線L1に接続されている。
【0043】
トランジスタQ6のコレクタは出力端子21bに接続され、そのエミッタは直流負母線L2に接続される。ダイオードD6のアノードは直流負母線L2に接続され、そのカソードは出力端子21bに接続されている。すなわち、ダイオードD5,D6は、それぞれトランジスタQ5,Q6に逆並列に接続されている。
【0044】
トランジスタQ7,Q8のコレクタは互いに接続され、トランジスタQ7,Q8のエミッタはそれぞれ直流中性点母線L3および出力端子21bに接続される。ダイオードD7,D8のカソードはともにトランジスタQ7,Q8のコレクタに接続され、それらのアノードはそれぞれ直流中性点母線L3および出力端子T14に接続されている。すなわち、ダイオードD7,D8は、それぞれトランジスタQ7,Q8に逆並列に接続されている。トランジスタQ7,Q8およびダイオードD7,D8は、双方向スイッチを構成する。
【0045】
次に、このインバータ41の動作について説明する。トランジスタQ5〜Q8のゲートは、制御装置42からのPWM信号φ5〜φ8を受ける。
図4(a)〜(e)はPWM信号φ5〜φ8の作成方法および波形を示す図である。特に、
図4(a)は正弦波指令値信号CM、正側三角波キャリア信号CA1、および負側三角波キャリア信号CA2の波形を示し、
図4(b)〜(e)はそれぞれPWM信号φ5,φ8,φ7,φ6の波形を示している。
【0046】
図4(a)〜(e)において、正弦波指令値信号CMの周波数は、たとえば商用周波数である。正弦波指令値信号CMは、交流電圧VUに同期している。キャリア信号CA1,CA2の周期および位相は同じである。キャリア信号CA1,CA2の周期は、正弦波指令値信号CMの周期よりも十分に小さい。
【0047】
正弦波指令値信号CMのレベルと正側三角波キャリア信号CA1のレベルの高低が比較される。正弦波指令値信号CMのレベルが正側三角波キャリア信号CA1のレベルよりも高い場合は、PWM信号φ5,φ7がそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルにされる。正弦波指令値信号CMのレベルが正側三角波キャリア信号CA1のレベルよりも低い場合は、PWM信号φ5,φ7がそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにされる。
【0048】
したがって、正弦波指令値信号CMのレベルが正である期間では、PWM信号φ5とφ7がキャリア信号CA1に同期して交互に「H」レベルにされ、トランジスタQ5とQ7が交互にオンされる。また、正弦波指令値信号CMのレベルが負である期間では、PWM信号φ5,φ7はそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルに固定され、トランジスタQ5がオフ状態に固定されるとともにトランジスタQ7がオン状態に固定される。
【0049】
正弦波指令値信号CMのレベルと負側三角波キャリア信号CA2のレベルの高低が比較される。正弦波指令値信号CMのレベルが負側三角波キャリア信号CA2のレベルよりも高い場合は、PWM信号φ6,φ8がそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにされる。正弦波指令値信号CMのレベルが負側三角波キャリア信号CA2のレベルよりも低い場合は、PWM信号φ6,φ8がそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルにされる。
【0050】
したがって、正弦波指令値信号CMのレベルが正である期間では、PWM信号φ6,φ8はそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルに固定され、トランジスタQ6がオフ状態に固定されるとともにトランジスタQ8がオン状態に固定される。また、正弦波指令値信号CMのレベルが負である期間では、PWM信号φ6とφ8がキャリア信号CA2に同期して交互に「H」レベルにされ、トランジスタQ6とQ8が交互にオンされる。
【0051】
PWM信号が1周期内において「H」レベルにされる時間と、PWM信号の1周期の時間との比はデューティ比と呼ばれる。PWM信号φ5のデューティ比は、正弦波指令値信号CMのレベルが正である期間では、正弦波指令値信号CMの正のピーク(90度)付近で最大になり、ピークから外れるに従って減少し、0度付近と180度付近で0となる。PWM信号φ5のデューティ比は、正弦波指令値信号CMのレベルが負である期間では0に固定される。PWM信号φ7は、PWM信号φ5の相補信号である。
【0052】
PWM信号φ6のデューティ比は、正弦波指令値信号CMのレベルが正である期間では0に固定される。PWM信号φ6のデューティ比は、正弦波指令値信号CMの負のピーク(270度)付近で最大になり、ピークから外れるに従って減少し、180度付近と360度付近で0となる。PWM信号φ8は、PWM信号φ6の相補信号である。
【0053】
たとえば、交流電圧VUが正電圧である場合は、PWM信号φ5,φ7は交互に「H」レベルにされるとともに、PWM信号φ6,φ8はそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルに固定される。したがって、トランジスタQ5,Q7が交互にオンされるとともに、トランジスタQ6,Q8はそれぞれオフ状態およびオン状態に固定される。
【0054】
交流電圧VUが負電圧である場合は、PWM信号φ6,φ8は交互に「H」レベルにされるとともに、PWM信号φ5,φ7はそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルに固定される。したがって、トランジスタQ6,Q8が交互にオンされるとともに、トランジスタQ5,Q7はそれぞれオフ状態およびオン状態に固定される。制御装置42は、交流電圧VUに同期してPWM信号φ5〜φ8のデューティ比を制御し、直流電圧V1〜V3を3レベルの交流電圧V4aに変換させる。
【0055】
電力変換器22,23の構成は、電力変換器21の構成と同じである。ただし、電力変換器22は、交流電圧VVに同期して制御され、交流電圧VVに同期した交流電圧V4bを出力端子22bに出力する。電力変換器23は、交流電圧VWに同期して制御され、交流電圧VWに同期した交流電圧V4cを出力端子22cに出力する。
【0056】
図5は、双方向チョッパ24の構成を示す回路ブロック図である。
図5において、双方向チョッパ24は、端子T1〜T5、コンデンサC11,C12、トランジスタQ11〜Q14、ダイオードD11〜D14、ノーマルモードリアクトル50、およびヒューズF11,F12を含む。ノーマルモードリアクトル50は、2つのコイル51,52を含む。
【0057】
双方向チョッパ24は、制御装置53によって制御される。制御装置53は、端子T1,T2間(すなわち母線L1,L2間)の直流電圧VDC(=V1−V2)の瞬時値、バッテリ3の端子間電圧VB、電流検出器CD11,CD21の検出値などに基づいて、トランジスタQ11〜Q14を制御するためのPWM信号φ11〜φ14を生成する。
【0058】
端子T1〜T3は、電力変換器21〜23の各々の直流正母線L1、直流負母線L2、および直流中性点母線L3にそれぞれ接続される。端子T4は、スイッチS7およびバッテリ端子TBPを介してバッテリ3の正極に接続される。端子T5は、スイッチS8およびバッテリ端子TBNを介してバッテリ3の負極に接続される。
【0059】
コンデンサC11は、端子T1,T3間に接続され、端子T1,T3間の電圧を平滑化および安定化させる。コンデンサC12は、端子T3,T2間に接続され、端子T3,T2間の電圧を平滑化および安定化させる。コンデンサC11,C12は、電力変換器21〜23のコンデンサC1,C2とそれぞれ同じ電圧に充電される。
【0060】
トランジスタQ11〜Q14の各々は、たとえばIGBTである。トランジスタQ11,Q12は端子T1,T3間に直列接続され、トランジスタQ13,Q14は端子T3,T2間に直列接続される。ダイオードD11〜D14は、それぞれトランジスタQ11〜Q14に逆並列に接続される。
【0061】
コイル51の一方端子はトランジスタQ11,Q12間のノードN1に接続され、その他方端子はヒューズF11を介して端子T4に接続される。コイル52の一方端子はヒューズF12を介して端子T5に接続され、その他方端子はトランジスタQ13,Q14間のノードN2に接続される。ヒューズF11,F12は、過電流が流れた場合にブローされ、バッテリ3、双方向チョッパ24などを保護する。
【0062】
双方向チョッパ24内には、電流検出器CD11,CD12が設けられている。電流検出器CD11は、ノードN1からコイル51の一方端子に流れる直流電流I1の瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御装置53に与える。電流検出器CD12は、コイル52の他方端子からノードN2に流れる直流電流I2の瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御装置53に与える。
【0063】
商用交流電源1から三相交流電力が供給されている通常時は、コンデンサC1,C2から双方向チョッパ24を介してバッテリ3に直流電力が供給され、バッテリ3が充電される。この場合、トランジスタQ12,Q13はオフ状態に固定され、トランジスタQ11,Q14が交互にオンにされる。
【0064】
その際、バッテリ3の端子間電圧VBが所定の目標電圧VBTになるように、PWM信号φ11,φ14のデューティ比が制御される。PWM信号φ11,φ14のデューティ比を大きくするとコンデンサC11,C12からバッテリ3に流れる電流が増大し、PWM信号φ11,φ14のデューティ比を小さくするとコンデンサC11,C12からバッテリ3に流れる電流が減少する。
【0065】
すなわち、第1バッテリ充電モードでは、PWM信号φ12〜φ14が「L」レベルにされてトランジスタQ12〜Q14がオフされるとともに、PWM信号φ11が「H」レベルにされてトランジスタQ11がオンされる。これにより、端子T1からトランジスタQ11、コイル51、ヒューズF11、スイッチS7、バッテリ3、スイッチS8、ヒューズF12、コイル52、およびダイオードD13を介して端子T3に電流が流れ、コンデンサC1,C11が放電されてバッテリ3が充電される。
【0066】
また、第2バッテリ充電モードでは、PWM信号φ12,φ13が「L」レベルにされてトランジスタQ12,Q13がオフするとともに、PWM信号φ11,φ14が「H」レベルにされてトランジスタQ11,Q14がオンする。これにより、端子T1からトランジスタQ11、コイル51、ヒューズF11、スイッチS7、バッテリ3、スイッチS8、ヒューズF12、コイル52、およびトランジスタQ14を介して端子T2に電流が流れ、コンデンサC1,C2,C11,C12が放電されてバッテリ3が充電される。
【0067】
第3バッテリ充電モードでは、PWM信号φ11〜φ13が「L」レベルにされてトランジスタQ11〜Q13がオフするとともに、PWM信号φ14が「H」レベルにされてトランジスタQ14がオンする。これにより、端子T3からダイオードD12、コイル51、ヒューズF11、スイッチS7、バッテリ3、スイッチS8、ヒューズF12、コイル52、およびトランジスタQ14を介して端子T2に電流が流れ、コンデンサC2,C12が放電されてバッテリ3が充電される。
【0068】
第1バッテリ充電モードと第3バッテリ充電モードは、交互に行なわれる。第1バッテリ充電モードと第3バッテリ充電モードの間の期間では、PWM信号φ11〜φ14が「L」レベルにされてトランジスタQ11〜Q14がオフされ、コイル51,52に蓄えられた電磁エネルギーが放出されて、ダイオードD12、コイル51、ヒューズF11、スイッチS7、バッテリ3、スイッチS8、ヒューズF12、コイル52、およびダイオードD13の経路に電流が流れ、バッテリ3が充電される。第2バッテリ充電モードは、第1バッテリ充電モードと第3バッテリ充電モードが重なっているモードである。
【0069】
バッテリ3を充電する場合、制御装置53は、直流電流I1の検出値と直流電流I2の検出値が一致するようにPWM信号φ11,φ14を生成してトランジスタQ11,Q12をオン/オフさせ、無停電電源装置U1〜UNに流れる横流電流を抑制する。これについては、後で詳細に説明する。
【0070】
商用交流電源1からの三相交流電力の供給が停止されている場合、バッテリ3から双方向チョッパ24を介してコンデンサC1,C2,C11,C12に直流電力が供給され、バッテリ3が放電されてコンデンサC1,C2,C11,C12が充電される。この場合、トランジスタQ11,Q14はオフ状態に固定され、トランジスタQ12,Q13が交互にオンにされる。
【0071】
その際、端子T1,T2間の直流電圧VDC(=V1−V2)が所定の目標電圧VDCTになるように、PWM信号φ12,φ13のデューティ比が制御される。PWM信号φ12,φ13のデューティ比を大きくするとバッテリ3からコンデンサC11,C12に流れる電流が増大し、PWM信号φ12,φ13のデューティ比を小さくするとバッテリ3からコンデンサC11,C12に流れる電流が減少する。
【0072】
すなわち、第1バッテリ放電モードでは、PWM信号φ11,φ13,φ14が「L」レベルにされてトランジスタQ11,Q13,Q14がオフされるとともに、PWM信号φ12が「H」レベルにされてトランジスタQ12がオンされる。これにより、バッテリ3の正極からスイッチS7、ヒューズF11、コイル51、トランジスタQ12、コンデンサC2,C12、ダイオードD14、コイル52、ヒューズF12、およびスイッチS8を介してバッテリ3の負極に電流が流れ、バッテリ3が放電されてコンデンサC2,C12が充電される。
【0073】
第2バッテリ放電モードでは、PWM信号φ11〜φ14が「L」レベルにされてトランジスタQ11〜Q14がオフされる。これにより、バッテリ3の正極からスイッチS7、ヒューズF11、コイル51、ダイオードD11、コンデンサC1,C2,C11,C12、ダイオードD14、コイル52、ヒューズF12、およびスイッチS8を介してバッテリ3の負極に電流が流れ、コイル51,52に蓄えられた電磁エネルギーが放出されるとともにバッテリ3が放電されてコンデンサC1,C2,C11,C12が充電される。
【0074】
第3バッテリ放電モードでは、PWM信号φ11,φ12,φ14が「L」レベルにされてトランジスタQ11,Q12,Q14がオフされるとともに、PWM信号φ13が「H」レベルにされてトランジスタQ13がオンされる。これにより、バッテリ3の正電極からスイッチS7、ヒューズF11、コイル51、ダイオードD11、コンデンサC1,C11、トランジスタQ13、コイル52、ヒューズF12、およびスイッチS8を介してバッテリ3の負電極に電流が流れ、バッテリ3が放電されてコンデンサC1,C11が充電される。
【0075】
第1バッテリ放電モードと第3バッテリ放電モードは、交互に行なわれる。第1バッテリ放電モードと第3バッテリ放電モードの間の期間において、端子T1,T2間の電圧V1−V2がバッテリ3の端子間電圧VBよりも低下している場合は、第2バッテリ放電モードが行なわれる。
【0076】
次に、
図1〜
図5で示した無停電電源装置U1の動作について説明する。商用交流電源1から三相交流電力が正常に供給されている通常時は、商用交流電源1からの三相交流電力がスイッチS1〜S3および入力フィルタ10を介して電力変換器21〜23に供給される。三相交流電力は、電力変換器21〜23のコンバータ40によって直流電力に変換される。電力変換器21〜23の各々において、コンバータ40で生成された直流電力は、双方向チョッパ24およびスイッチS7,S8を介してバッテリ3に蓄えられるとともにインバータ41に供給され、インバータ41によって商用周波数の交流電力に変換される。電力変換器21〜23のインバータ41で生成された三相交流電力は、出力フィルタ30およびスイッチS4〜S6を介して負荷2に供給され、負荷2が運転される。
【0077】
商用交流電源1からの交流電力の供給が停止された停電時は、電力変換器21〜23のコンバータ40の運転が停止されるとともに、バッテリ3の直流電力がスイッチS7,S8および双方向チョッパ24を介して電力変換器21〜23のインバータ41に供給され、電力変換器21〜23のインバータ41によって商用周波数の三相交流電力に変換される。電力変換器21〜23のインバータ41で生成された三相交流電力は、出力フィルタ30およびスイッチS4〜S6を介して負荷2に供給され、負荷2の運転が継続される。
【0078】
したがって、停電が発生した場合でも、バッテリ3に直流電力が蓄えられている限りは負荷2の運転が継続される。商用交流電源1からの交流電力の供給が再開された場合は、電力変換器21〜23のコンバータ40の運転が再開される。電力変換器21〜23の各々において、コンバータ40で生成された直流電力が双方向チョッパ24およびスイッチS7,S8を介してバッテリ3に供給されるとともにインバータ41に供給され、元の状態に戻る。他の無停電電源装置U2〜UNの各々の構成および動作は、無停電電源装置U1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0079】
ここで、商用交流電源1から三相交流電力が正常に供給されている通常時において、無停電電源装置U1〜UNが並列運転されている場合に発生する横流電流について説明する。
図1〜
図5で示したように、この無停電電源システムでは、N台の無停電電源装置U1〜UNの交流入力端子(TIa,TIb,またはTIc)は互いに接続され、それらの交流出力端子(TOa,TOb,またはTOc)は互いに接続され、それらのバッテリ端子(TBPまたはTBN)は互いに接続されている。
【0080】
N台の無停電電源装置U1〜UNの交流出力電圧(VR,VS,またはVT)の位相および電圧値が完全に一致している場合は横流電流は流れない。しかし、実際には、N台の無停電電源装置U1〜UNの交流出力電圧(VR,VS,またはVT)の位相および電圧値は完全には一致せず、無停電電源装置U1〜UN間に横流電流が流れてしまう。
【0081】
たとえば、無停電電源装置U1の電力変換器21のトランジスタQ5〜Q8用のPWM信号φ5〜φ8の位相が、無停電電源装置U2の電力変換器21のトランジスタQ5〜Q8用のPWM信号φ5〜φ8の位相よりも進み、無停電電源装置U1の出力交流電圧VRの位相が無停電電源装置U2の出力交流電圧VRの位相よりも進んでいるものとする。
【0082】
この場合、無停電電源装置U1のインバータ41のトランジスタQ5がオンするとともに、無停電電源装置U2のインバータ41のトランジスタQ7,Q8がオンする期間が発生する。
【0083】
この期間では、無停電電源装置U2においては、出力端子TOaから電力変換器21の出力端子21b、トランジスタQ8,Q7、双方向チョッパ24の端子T3、ダイオードD12、コイル51を介してバッテリ端子TBPに至る経路で横流電流が流れる。無停電電源装置U2のバッテリ端子TBPから無停電電源装置U1のバッテリ端子TBPに横流電流が流れる。さらに、無停電電源装置U1においては、バッテリ端子TBPから双方向チョッパ24のコイル51、トランジスタQ11、端子T1、電力変換器21のトランジスタQ5を介して出力端子TOaに至る経路で横流電流が流れる。
【0084】
このとき、単に双方向チョッパ24のトランジスタQ11,Q14を同じ時間ずつ交互にオンしているだけでは、無停電電源装置U2の双方向チョッパ24ではI1が増大してI1>I2となり、無停電電源装置U1の双方向チョッパ24ではI1が減少してI1<I2となる。I1≠I2となると、ノーマルモードリアクトル50のインダクタンスが低下してしまう。さらに、横流電流によって無駄な電力が消費される。
【0085】
そこで、本実施の形態では、無停電電源装置U1,U2の各々においてI1=I2となるように双方向チョッパ24のトランジスタQ11,Q14のオン時間を制御して横流電流を抑制する。すなわち、無停電電源装置U2では、I1>I2であるのでI1=I2になるように、トランジスタQ11のオン時間を短くして電流I1を減少させるとともに、トランジスタQ14のオン時間を長くして電流I2を増大させる。無停電電源装置U1では、I1<I2であるのでI1=I2になるように、トランジスタQ11のオン時間を長くして電流I1を増大させるとともに、トランジスタQ14のオン時間を短くして電流I2を減少させる。このようにI1=I2となるように制御することにより、無停電電源装置U1,U2間で循環する横流電流を抑制することができる。
【0086】
さらに上記の場合では、無停電電源装置U1のインバータ41のトランジスタQ6がオンするとともに、無停電電源装置U2のインバータ41のトランジスタQ7,Q8がオンする期間も発生する。
【0087】
この期間では、無停電電源装置U1においては、出力端子TOaから電力変換器21の出力端子21b、トランジスタQ6、双方向チョッパ24の端子T2、トランジスタQ14およびコイル52を介してバッテリ端子TBNに至る経路で横流電流が流れる。無停電電源装置U1のバッテリ端子TBNから無停電電源装置U2のバッテリ端子TBNに横流電流が流れる。さらに、無停電電源装置U2においては、バッテリ端子TBNから双方向チョッパ24のコイル52、ダイオードD13、端子T3、電力変換器21のトランジスタQ7,Q8および出力端子21bを介して出力端子TOaに至る経路で横流電流が流れる。
【0088】
このとき、単に双方向チョッパ24のトランジスタQ11,Q14を同じ時間ずつ交互にオンしているだけでは、無停電電源装置U1の双方向チョッパ24ではI2が減少してI1>I2となり、無停電電源装置U2の双方向チョッパ24ではI2が増大してI1<I2となる。I1≠I2となると、ノーマルモードリアクトル50のインダクタンスが低下してしまう。さらに、横流電流によって無駄な電力が消費される。
【0089】
そこで、本実施の形態では、無停電電源装置U1,U2の各々においてI1=I2となるように双方向チョッパ24のトランジスタQ11,Q14のオン時間を制御して横流電流を抑制する。すなわち、無停電電源装置U1では、I1>I2であるのでI1=I2になるように、トランジスタQ11のオン時間を短くして電流I1を減少させるとともに、トランジスタQ14のオン時間を長くして電流I2を増大させる。無停電電源装置U2では、I1<I2であるのでI1=I2になるように、トランジスタQ11のオン時間を長くして電流I1を増大させるとともに、トランジスタQ14のオン時間を短くして電流I2を減少させる。このようにI1=I2となるように制御することにより、無停電電源装置U1,U2間で循環する横流電流を抑制することができる。
【0090】
ここでは、無停電電源装置U1,U2間の横流電流について説明したが、無停電電源装置U1〜UN間で循環する横流電流についても同様である。
【0091】
次に、双方向チョッパ24のトランジスタQ11,Q14のオン時間を制御して横流電流を抑制する方法についてより詳細に説明する。
図6は、
図4に示した制御装置53のうちのバッテリ3の充電に関連する部分を示すブロック図である。
図6において、制御装置53は、加算器60、乗算器61、減算器62〜66、制御器(PI)67〜69、三角波発生器70,71、および比較器72,73を含む。
【0092】
加算器60は、電流検出器CD11によって検出された電流I1の検出値と、電流検出器CD12によって検出された電流I2の検出値とを加算する。乗算器61は、加算器60の加算結果に0.5を乗算して電流I1,I2の検出値の平均値IAVを求める。減算器62は、目標充電電流値ITから乗算器61で求められた電流I1,I2の検出値の平均値IAVを減算して電流指令値IC0を求める。目標充電電流値ITは、バッテリ3の目標端子間電圧VBTと実際の端子間電圧VBとの偏差に応じて生成される。制御器67は、電流指令値IC0にたとえばPI制御(比例および積分制御)を施して電圧指令値VC0を生成する。
【0093】
減算器63は、電流検出器CD11によって検出された電流I1の検出値から乗算器61で求められた電流I1,I2の検出値の平均値IAVを減算して電流指令値IC1を求める。制御器68は、電流指令値IC1にたとえばPI制御を施して電圧指令値VC1を生成する。
【0094】
減算器64は、電流検出器CD12によって検出された電流I2の検出値から乗算器61で求められた電流I1,I2の検出値の平均値IAVを減算して電流指令値IC2を求める。制御器69は、電流指令値IC2にたとえばPI制御を施して電圧指令値VC2を生成する。
【0095】
減算器65は、電圧指令値VC0から電圧指令値VC1を減算して電圧指令値VC01を生成する。減算器66は、電圧指令値VC0から電圧指令値VC2を減算して電圧指令値VC02を生成する。
【0096】
三角波発生器70は、商用周波数よりも十分に高い周波数の三角波信号CA11を生成する。三角波発生器71は、三角波信号CA11と同じ周波数の三角波信号CA12を生成する。三角波信号CA11,CA12の位相は互いに180度ずれている。
【0097】
比較器72は、電圧指令値VC01と三角波信号CA11のレベルとの高低を比較し、VC01>CA11である場合はPWM信号φ11を「H」レベルにし、VC01<CA11である場合はPWM信号φ11を「L」レベルにする。
【0098】
比較器73は、電圧指令値VC02と三角波信号CA12のレベルとの高低を比較し、VC02>CA12である場合はPWM信号φ12を「H」レベルにし、VC02<CA12である場合はPWM信号φ12を「L」レベルにする。
【0099】
したがって、横流電流が流れておらずI1=I2である場合は、I1=I2=IAV、VC1=VC2=0、VC0=VC01=VC02となり、PWM信号φ11,φ14のデューティ比は同じ値になる。この場合、トランジスタQ11の1周期当たりのオン時間とトランジスタQ14の1周期当たりのオン時間とは同じ時間となる。
【0100】
横流電流が流れてI1>I2となった場合は、I1>IAV>I2、VC1>VC2、VC01<VC02となり、PWM信号φ11のデューティ比はPWM信号φ14のデューティ比よりも小さくなる。したがって、トランジスタQ11の1周期当たりのオン時間がトランジスタQ14の1周期当たりのオン時間よりも短くなり、I1が減少するとともにI2が増大するようにトランジスタQ11,Q14が制御され、横流電流が抑制される。
【0101】
横流電流が流れてI1<I2となった場合は、I2>IAV>I1、VC2>VC1、VC02<VC01となり、PWM信号φ11のデューティ比はPWM信号φ14のデューティ比よりも大きくなる。したがって、トランジスタQ11の1周期当たりのオン時間がトランジスタQ14の1周期当たりのオン時間よりも長くなり、I1が増大するとともにI2が減少するようにトランジスタQ11,Q14が制御され、横流電流が抑制される。
【0102】
このような制御装置53は、無停電電源装置U1〜UNの各々に設けられる。したがって、この無停電電源システムでは、無停電電源装置U1〜UNに流れる横流電流が抑制される。
【0103】
図7は、
図5および
図6に示した制御装置53の充電モード時の動作を示すフローチャートである。
図7において、制御装置53は、ステップST1において電流検出器CD11,CD12を用いて電流I1,I2を検出する。制御装置53は、ステップST2において目標充電電流値ITと平均値IAV=0.5×(I1+I2)との差の絶対値|IT−IAV|がしきい値Iαよりも大きいか否かを判別し、|IT−IAV|>Iαでない場合(すなわちIT≒IAVである場合)はステップST1に戻り、|IT−IAV|>Iαである場合(すなわちIT≠IAVである場合)はステップST3に進む。Iαは、IT,IAVと比べて十分に小さな値に設定されている。目標充電電流値ITは、上述の通り、バッテリ3の目標端子間電圧VBTと実際の端子間電圧VBとの偏差に応じて生成される。
【0104】
制御装置53は、ステップST3においてIAV<ITであるか否かを判別し、IAV<ITである場合はステップST4に進み、IAV<ITでない場合はステップST5に進む。ステップST4では、制御装置53はPWM信号φ11,φ14のデューティ比D(φ11),D(φ14)を増大させる。これにより、トランジスタQ11,Q14の1周期当たりのオン時間が増大され、平均値IAVが増大して目標値ITに近付く。ステップST5では、制御装置53は、PWM信号φ11,φ14のデューティ比D(φ11),D(φ14)を減少させる。これにより、トランジスタQ11,Q14の1周期当たりのオン時間が減少され、平均値IAVが減少して目標値ITに近付く。
【0105】
次に制御装置53は、ステップST6において電流I1,I2の検出値の差の絶対値|I1−I2|がしきい値Iβよりも大きいか否かを判別し、|I1−I2|>Iβでない場合(すなわちI1≒I2である場合)はステップST1に戻り、|I1−I2|>Iβである場合(すなわちI1≠I2である場合)はステップST7に進む。Iβは、I1,I2と比べて十分に小さな値に設定されている。
【0106】
制御装置53は、ステップST7においてI1<I2であるか否かを判別し、I1<I2である場合はステップST8においてPWM信号φ11のデューティ比D(φ11)を増大させるとともにPWM信号φ14のデューティ比D(φ14)を減少させ、ステップST1に戻る。これにより、トランジスタQ11の1周期当たりのオン時間が増大されるとともにトランジスタQ14の1周期当たりのオン時間が減少し、電流I1が増大するとともに電流I2が減少し、横流電流が抑制される。
【0107】
ステップST7においてI1<I2でないと判別した場合はステップST9においてPWM信号φ11のデューティ比D(φ11)を減少させるとともにPWM信号φ14のデューティ比D(φ14)を増大させ、ステップST1に戻る。これにより、トランジスタQ11の1周期当たりのオン時間が減少するとともにトランジスタQ14の1周期当たりのオン時間が増大し、電流I1が減少するとともに電流I2が増大し、横流電流が抑制される。ステップST1〜ST9を繰り返すことにより、IAV≒IT,I1≒I2とすることができ、バッテリ3を目標電圧VBTに充電させるとともに、横流電流を抑制することができる。
【0108】
なお、ステップST4,ST5においては、PWM信号φ11,φ14のデューティ比D(φ11),D(φ14)を一定値だけ増大または減少させてもよいし、PWM信号φ11,φ14のデューティ比D(φ11),D(φ14)を増大または減少させる値をIAVTとIAVの差に応じて変更しても構わない。
【0109】
同様に、ステップST8,ST9においては、PWM信号φ11,φ14のデューティ比D(φ11),D(φ14)を一定値だけ増大または減少させてもよいし、PWM信号φ11,φ14のデューティ比D(φ11),D(φ14)を増大または減少させる値をI1とI2の差に応じて変更しても構わない。
【0110】
この実施の形態では、双方向チョッパ24のコイル51,52に流れる電流I1,I2を検出し、電流I1,I2の検出値が一致するようにトランジスタQ11,Q14の各々のオン時間を増大または減少させて横流電流を抑制する。したがって、各無停電電源装置毎に可飽和リアクトルを設ける場合に比べ、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0111】
大きな横流電流が流れると無駄な消費電力が増大して無停電電源システムの電力効率が低下する。しかし、本実施の形態では、横流電流を小さく抑制できるので、無停電電源システムの電力効率を高めることができる。
【0112】
さらに、横流電流が流れてI1≠I2となると、双方向チョッパ24のノーマルモードリアクトル50のインダクタンスが減少するので、大きなインダクタンスを有する大型で高価なノーマルモードリアクトル50を設ける必要がある。しかし、本実施の形態では、横流電流を小さく抑制できるので、横流電流によって双方向チョッパ24のノーマルモードリアクトル50のインダクタンスが減少することを防止することができる。このため、小型で低価格のノーマルモードリアクトル50を使用することができる。
【0113】
なお、この実施の形態では、I1≠I2である場合にI1=I2になるように双方向チョッパ24のトランジスタQ11,Q14のうちの一方のトランジスタのオン時間を増大させるとともに他方のトランジスタのオン時間を減少させたが、これに限るものではなく、I1=I2になるようにトランジスタQ11,Q14のうちの一方のトランジスタのオン時間を増大または減少させるとともに他方のトランジスタのオン時間を維持しても構わない。
【0114】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明でなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。