【実施例】
【0087】
実施例1.新規な細胞透過性ペプチドの作製
ボツリヌストキシンの軽鎖の経皮伝達を実現させることができる新規の皮膚透過性及び細胞透過性ペプチドを開発した。まず、ボツリヌストキシンの重鎖と軽鎖の構造と機能を解析し、ボツリヌストキシンA型の神経細胞透過に重鎖が重要な役割をするという点に着目して、これを基に配列を選別した。また、従来の巨大分子の細胞内伝送ドメインMTDの配列と比較解析して、両親媒性で極性アミノ酸の配置で細胞膜アクセシビリティを増加させ、物性と可用性を改善させて、非極性アミノ酸の追加で細胞膜透過に適した疎水性を付与するプロセスを経て、配列番号1のアミノ酸配列からなる新規の細胞透過性ペプチドを設計した。上記のように設計された細胞透過性ペプチドをTD1と命名し、これの特性と構造をProtParamプログラム(http://web.expacy.org/protparam)で解析し、その結果を
図1および
図2に示した。
【0088】
実施例2.フローサイトメトリー測定(Flow Cytometry)を用いた細胞透過性ペプチドTD1のin vitro細胞透過能を確認
上記の実施例1により作製された新規の細胞透過性ペプチドTD1の皮膚細胞及び神経細胞の透過能を確認するためにフローサイトメトリー測定(Flow Cytometry)を用いて実験を実施した。TD1の細胞透過性を比較するために、従来に開発された細胞透過性ペプチドであるkFGF4と、代表的なタンパク質伝送配列PTD(protein translocation domain)であるHIV−Tatを対照MTDで用いて、各ペプチド試料は、FITCで蛍光標識し、ペプチド合成の専門機関(GL Biochem Ltd.(Sanghai、China)を介して合成して備えた。
【0089】
2‐1.皮膚の角質形成細胞(HaCaT cell)での定量的細胞透過能を確認
皮膚の角質形成細胞であるHaCaT cellにおける細胞透過能を確認するために、DMEM complete media(10%FBS、1%penicillin/streptomycin)を用いて、HaCaT cellを培養した。フローサイトメトリー測定のために、12 well plateで置き換え、16〜24時間の追加培養し、各試料は、FBSが添加されていない非血清培地(serum free medium)で1時間(処理濃度5μM、10μM)と3時間(処理濃度2.5μM、5μM、10μM)の間に処理した。反応時間が終了した後、DPBSで2回洗浄して残余分の試料を除去し、0.05%トリプシン−EDTAを処理、光を遮断したまま、10分間反応させた後、完全培地(complete media)を用いて、トリプシン-EDTAを不活性化させた。 その後、準備したチューブに細胞を回収し、リン酸緩衝溶液3mLを加えて、2,000rpmで3分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、それぞれのFACSチューブにリン酸緩衝溶液200μLを入れた後、細胞を十分に再懸濁させ、フローサイトメトリー測定を行った。実験グループには、Cell onlyおよびFITC only、Scramble peptide、HIV−Tat、kFGF4由来のペプチドを用いて、細胞透過能がないと思われるScramble peptideに備えて、HIV−Tat、kFGF4由来のペプチド及びTD1の伝送能を決定した。その結果、
図3a及び
図3bに示すように、TD1が対照群に比べて、角質形成細胞で顕著に優れた細胞透過性を示すことが確認できた。
【0090】
2‐2.神経細胞(SiMa cell)での定量的細胞透過能を確認
神経細胞株であるSiMa cellに対する細胞透過能を確認した。SiMa cellは培養プレートに対する細胞付着能が弱いので、gelatin(sigma、G2500)をコーティングした培養プレートを用いるが、0.1%gelatin溶液を培養プレートにコーティングして、室温で1時間の後、溶液を除去し、乾燥した状態で用いた。Complete mediaは、RPMI1640(10%FBS、1%penicillin/streptomycin)を用いて、80%以上のconfluencyで継代培養した。細胞は、繰り返して継代培養で安定化させた後、100mm培養プレート当たり5X10
5/wellで細胞を接種し、37℃の5%CO
2の条件の培養器(incubator)でovernight培養した後、実験した。
【0091】
各試料(対照物質:cell only、FITC only、比較物質:HIV−Tat&kFGF4由来のペプチド、実験材料:TD1)は、FBSが添加されていない非血清培地で1時間と6時間の間、5μMの濃度で処理した。反応時間が終了した後、DPBSで2回洗浄して残余分の試料を除去し、0.05%トリプシン-EDTAを処理、光を遮断したまま、10分間反応させた後、complete mediaを用いて、トリプシン-EDTAを不活性化させた。その後、準備したチューブに細胞を回収し、リン酸緩衝溶液3mLを加えて、2,000rpmで3分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、それぞれのFACSチューブにリン酸緩衝溶液200μLを入れた後、細胞を十分に再懸濁させ、フローサイトメトリー測定を行った。測定されたFl−1の幾何平均(geometric mean; geo.mean)の値でkFGF4由来のペプチドに備えて、HIV−Tat、kFGF4由来のペプチドおよびTD1の伝送能を決定した。その結果、
図3cに示すように、TD1が対照群に比べて、神経細胞でも、優れた細胞透過性を示すことが確認できた。
【0092】
2‐3.神経細胞(U−87 MG cell)での定量的な細胞透過能の確認
神経細胞(U−87 MG cell)で細胞透過能を確認するために、MEM complete media(10%FBS、1%penicillin/streptomycin)を用いて細胞を培養した。フローサイトメトリー測定のために、12 well plateで細胞を接種して、16〜24時の間に培養して、各試料(対照物質:cell only、FITC only、scramble peptide、比較物質:kFGF4由来のペプチド、実験材料:TD1)は、FBSが添加されていない非血清培地(serum free medium)で各1時間と6時間の間、5μM、10μMの濃度で処理した。反応が終わった後、DPBSで2回洗浄して残余分の試料を除去し、0.05%トリプシン−EDTAを処理、光を遮断したまま、10分間反応させた後、complete mediaを用いて、トリプシン−EDTAを不活性化させた。その後、準備したチューブに細胞を回収し、リン酸緩衝溶液3mLを加えて、2,000rpmで3分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、それぞれのFACSチューブにリン酸緩衝溶液200μLを入れた後、細胞を十分に再懸濁させ、フローサイトメトリー測定を行った。 細胞内に透過されたFITCレベルの測定のために、FL−1の波長を用いて、測定されたFl−1のgeo.mean値で試料の蛍光値を補正するためにscramble peptideの値に基づいて伝送能を決定した。その結果、
図3dに示すように、TD1が従来に知られている細胞透過性ペプチドであるkFGF4由来のペプチドと比べて、神経細胞(U−87 MG cell)で優れた細胞透過性を示すことが確認できた。
【0093】
2‐4.HeLa cellでの定量的な細胞透過能の確認
HeLa cell(Human cervix adenocarcinoma cell)で細胞透過能を確認するために、MEM complete media(10%FBS、1%penicillin/streptomycin)を用いて細胞を培養した。フローサイトメトリー測定のために、12 well plateで置き換え、16〜24時間の追加培養し、各試料は、FBSが添加されていない非血清培地(serum free medium)で各時間と処理濃度に応じて反応させた。反応時間が終了した後、DPBSで2回洗浄して残余分の試料を除去し、0.05%トリプシン−EDTAを処理した後、光を遮断したまま、10分間反応させ、完全培地(complete media)を用いて、トリプシン−EDTAを不活性化させた。その後、準備したチューブに細胞を回収し、リン酸緩衝溶液3mLを加え2,000rpmで3分間遠心分離した。 上澄み液を除去した後、それぞれのFACSチューブにリン酸緩衝溶液200μLを入れた後、細胞を十分に再懸濁させ、フローサイトメトリー測定を行った。実験グループでは、TD1、HIV−Tat及びkFGF4由来のペプチドを用いて、測定されたFl−1のgeo.meanの値で、各時間別、濃度別の伝送能を決定した。その結果、
図3eに示すように、TD1はHeLa cellで12時間以内に濃度依存的に細胞内に流入されることを知ることができた。HIV−TatおよびkFGF4由来のペプチドは、ほとんど5μM以上の濃度で、細胞内に流入されるが、透過量はTD1に比べて、かなり微弱であることを知ることができる。このようにTD1が対照群に比べて、HeLa cellで非常に優れた細胞透過性を示すことが確認できた。
【0094】
実施例3.共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)を用いた細胞透過性ペプチドTD1のin vitro細胞透過能を確認
3‐1.皮膚の角質形成細胞(HaCaT cell)での定性的な細胞透過能の確認
皮膚の角質形成細胞株であるHaCaT細胞で細胞透過能を確認するためにDMEM complete media(10%FBS、1%penicillin /streptomycin)を用いて細胞を培養した。顕微鏡解析のために12mm cover glass(カバーグラス)を火炎滅菌した後、24 well plateのそれぞれのwellに1つずつ入れてHaCaT細胞を接種して、16〜24時間培養した。試料(対照物質:Vehicle、比較物質:HIV−Tat、kFGF4由来のペプチド、実験材料:TD1)は、FBSが添加されていない無血清培地で1時間と3時間の間、3μM、5μMの濃度で処理した。反応が終わった後、培地は、吸入器(suction)を介して完全に削除し、リン酸緩衝溶液を入れ、軽く振って2回を繰り返して洗浄し、各wellに10%ホルマリン溶液を200μLずつ入れ、遮光して10分間、弱く攪拌し、細胞を固定した。 細胞の固定の後、固定液を除去し、10分間2回、リン酸緩衝液で洗浄した。その後、HoechstとDAPI染色溶液を用いて遮光した状態で10分間、室温で対照染色を行い、反応の後、染色溶液は除去し、リン酸緩衝液で2回洗浄した。その後、cover glass(カバーグラス)は回収して、mounting溶液が点滴されたslide glass(スライドグラス)に気泡が入らないように徐々に下ろして、mountingした(覆い被せた)。遮光状態で十分に乾燥させた後、confocal microscope(Zeiss LSM700)を用いて細胞を観察した。その結果、
図4aに示すように、HIV−Tat、kFGF4由来のペプチドとくらべて、TD1の優れた細胞透過性を角質形成細胞で確認することができた。
【0095】
3‐2.神経細胞(SiMa cell)での定性的な細胞透過能の確認
神経細胞株であるSiMa cellに対する細胞透過能を確認するために、complete mediaはRPMI1640(10%FBS、1%penicillin/streptomycin)を用いて、80%以上のconfluencyで細胞を培養した。細胞は、繰り返した継代培養で安定化させた後、顕微鏡解析のために12mm cover glass(カバーグラス)を火炎滅菌した後、24 well plateのそれぞれのwellにcover galss(カバーグラス)1つずつ入れてSiMa cellを接種して、16〜24時間培養した。各試料(HIV−Tat、kFGF4由来のペプチド、TD1)は、FBSが添加されていない非血清培地で6時間、5μMの濃度で処理した。反応が終わった後、培地は、吸入器(suction)を介して完全に削除した後、リン酸緩衝溶液を入れ、軽く振って2回繰り返して洗浄し、各wellに10%ホルマリン溶液を200μLずつ入れ、遮光して10分間弱く攪拌し、細胞を固定した。 細胞の固定の後、固定液を除去し、10分間2回、リン酸緩衝液で洗浄した。その後、遮光した状態で10分間、室温で対照染色を行い、反応の後、染色溶液は除去し、リン酸緩衝液で2回洗浄した。その後cover glass(カバーグラス)は回収して、mounting溶液が点滴されたslide glass(スライドグラス)に気泡が入らないように徐々に下ろして、mountingした(覆い被せた)。遮光状態で十分に乾燥させた後、confocal microscope(Zeiss LSM700)を用いて細胞を観察した。その結果、
図4bに示すようにkFGF4由来のペプチドと比べて、TD1の優れた細胞透過性を神経細胞でも確認できた。
【0096】
3‐3.神経細胞(U-87 MG cell)での定性的な細胞透過能の確認
神経細胞株であるU−87 MG細胞で細胞透過能を確認するためにDMEM complete media(10%FBS、1%penicillin/streptomycin)を用いて、U−87 MG細胞を培養した。蛍光顕微鏡の観察のために、12mm cover glass(カバーグラス)を火炎滅菌した後、24 well plateのそれぞれのwellに1つずつ入れて細胞を接種して、16〜24時間培養した。各試料(kFGF4由来のペプチド、TD1)は、FBSが添加されていない無血清培地で6時間、5μMの濃度で処理した。反応が終わった後、処理した試料を除去し、PBSで2回繰り返して洗浄した後、各wellに10%ホルマリン溶液を200μLずつ入れ、遮光して10分間、細胞を固定した。その後、固定液を除去し、PBSで10分間2回洗浄した後、遮光した状態で、HoechstとDAPI染色溶液を用いて10分間室温で細胞を染色した。染色した後、溶液は除去し、PBSで2回洗浄した後、cover glass(カバーグラス)を回収してmounting solution が点滴されたslide glass(スライドグラス)に気泡が入らないように mountingした(覆い被せた)。これは、遮光状態で十分に乾燥させた後、confocal microscope(Zeiss LSM700)を用いて細胞を観察した。その結果、
図4cに示すように、神経細胞U−87 MG cellでもTD1がkFGF4由来のペプチドと比べて、優れた細胞透過性を示すことを視覚的に確認することができた。
【0097】
3‐4.HeLa cellでの定性的な細胞透過能の確認
HeLa cell(Human cervix adenocarcinoma cell)で細胞透過能を確認するために、MEM complete media(10%FBS、1%penicillin / streptomycin)を用いて細胞を培養した。蛍光顕微鏡の観察のために、12mm cover glass(カバーグラス)を火炎滅菌した後、24 well plateのそれぞれのwellに1つずつ入れて細胞を接種して、16〜24時間培養した。各試料(HIV−Tat、kFGF4由来のペプチド、TD1)は、FBSが添加されていない非血清培地(serum free medium)で5μMの濃度で、6時間と24時間の間に反応させた。反応が終わった後、処理した試料を除去し、PBSで2回繰り返して洗浄した後、各wellに10%ホルマリン溶液を200μLずつ入れ、遮光して10分間、細胞を固定した。その後、固定液を除去し、PBSで10分間2回洗浄した後、遮光した状態で、HoechstとDAPI染色溶液を用いて10分間室温で細胞を染色した。染色した後、溶液は除去し、PBSで2回洗浄した後、cover glass(カバーグラス)を回収してmounting solutionが点滴されたslide glass(スライドグラス)に気泡が入らないようにmountingした(覆い被せた)。これは、遮光状態で十分に乾燥させた後、confocal microscope(Zeiss LSM700)を用いて細胞を観察した。その結果、
図4dに示すように、TD1が対照群に比べて、HeLa cellでも非常に優れた細胞透過性を示すことが確認できた。
【0098】
実施例4.ボツリヌストキシンの軽鎖タンパク質(BoNT/ A Light chain(Lc))とMTD(TD1)とボツリヌストキシンの軽鎖タンパク質(Lc)を結合した組換えタンパク質(TD1−Lc)の発現コンストラクトの作製
ボツリヌストキシンA型の軽鎖タンパク質(Lc)とMTD(TD1)とボツリヌストキシンの軽鎖タンパク質(Lc)を結合した組換えタンパク質の発現コンストラクトを作製した。まず、バイオニア社で合成したコドン最適化(codon optimization)されたボツリヌス神経毒素A型(botulinum neurotoxin type A)の軽鎖(Lc; light chain)の配列を鋳型として、それぞれに対して特異的に考案されたプライマー(primer)ペアと重合酵素連鎖反応(PCR)を行った。この際に、それぞれのプライマーの配列情報は、下記の表1に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
PCR反応は、codon optimized Lcを鋳型100ng、各0.4mMの最終濃度dNTP混合物、1μMの各プライマー、10x EX taq緩衝溶液5μl、EX taq重合酵素(Takara)0.25μlを含む溶液を、最終的な体積50μl反応液にして行った。 PCR反応条件は、まず95℃で5分間熱変性(denaturing)させた後、95℃で30秒、58℃で1分、および72℃で1分の反応を30回繰り返して、最終的に72℃で8分間増幅した。反応が終わった後、1%アガロースゲル(Agarose gel)に電気泳動(electrophoresis)を行って、増幅された生成物を確認し、増幅された遺伝子組換え断片は、アガロースゲルから回収した後、市販ののgel extraction kit(Intron、 Korea)を用いて抽出し、精製した。精製されたそれぞれのPCR産物は、NdeIとXhoI酵素を37℃で2時間処理して、再びアガロースゲルで電気泳動を行い、gel extraction kit(Intron、Korea)で切断(digestion)されたそれぞれの組換え断片を精製した。一方、ヒスチジン−標識(histidine−tag)とT7プロモーターを持つ発現ベクターpET−21b(+)ベクター(Novagen、USA)を制限酵素NdeIとXhoIを用いて、上記と同じ条件で切断して、精製されたそれぞれの組換え断片と切断されたpET−21b(+)ベクターを混合し、T4 DNA連結酵素(ligase; Intron、Korea)を添加した後、16℃で16時間ライゲーション(ligation)を行った。これは、大腸菌DH5α感応細胞に形質転換させて、最終的に組換えタンパク質発現ベクターを得ており、発現ベクターは、上記と同じNdeIとXhoI制限酵素の処理及び1%アガロースゲル電気泳動を通じて、それぞれの組換え断片がpET−21b(+)ベクターに適切に挿入されたことを確認した。得られた組換えタンパク質発現ベクターは、それぞれpET21b(+)−Lc、pET21b(+)−TD1−Lcと命名した。
【0101】
実施例5.ボツリヌストキシンの軽鎖タンパク質(Lc)とMTD(TD1)とボツリヌストキシンの軽鎖タンパク質(Lc)を結合した組換えタンパク質(TD1−Lc)の発現菌株培養及び精製
本発明による組換えタンパク質の発現菌株培養および精製プロセスを下記のように行っており、これに対する概略的な模式図を
図5に示した。
【0102】
5‐1.菌株培養
大腸菌BL21(DE3)RIL−CodonPlusに上記で得た組換え発現ベクターpET21b(+)−Lc、pET21b(+)−TD1−Lcのそれぞれを熱ショック(heat shock)方法で形質転換させた後、50μg/mLのアンピシリン(ampicillin)が含有されたLB培地で培養した。その後、上記の組換えタンパク質遺伝子が導入された大腸菌を25mL LB培地に接種し、37℃でovernight培養した後、この1次培養液を再び9L LB培地に接種し、37℃でOD
600(Optical density at 600nm)が0.4ないし0.8に達するまで培養した。その後、培養液にタンパク質発現の誘導剤である1mMのIPTGを添加して、18℃でovernightに追加培養した後、培養液を4℃で8,000rpm、10分間遠心分離して上澄み液を除去し、菌体を回収した。回収した菌体は、リン酸緩衝液に懸濁し、lysozyme(リゾチーム)を処理した後、ソニーケータ(sonicator)を用いて細胞を破砕し、これを13,000rpmで30分間遠心分離して溶解性分画を得た。
【0103】
5‐2.タンパク質の精製および純度確認(SDS−PAGE)
上記の実施例5-1で得られた溶解性分画を高速タンパク質液体クロマトグラフィー(Fast Protein Liquid Chromatography:FPLC、Bio−rad)を用いて精製を行った。溶解性分画をFPLCに流しながら アフィニティークロマトグラフィー(affinity chromatography)カラムに結合させ、洗浄緩衝液(washing buffer)を流して洗浄した。その後、imidazole濃度を段階的に増加させて精製試料を得て、リン酸緩衝溶液またはPBSで透析膜(dialysis membrane)を用いて、4℃の条件で16〜20時間、撹拌しながら透析した。
【0104】
精製された試料は、純度を検定するために12%SDS−PAGEゲルで電気泳動を行った。ゲルは、クマシブリリアントブルーR(coomassie brilliant blue R)で軽く振盪しながら染色(staining)し、目的タンパク質のバンドが明確になるまで脱色液(destaining buffer)を用いて色落ちした。その結果、
図6に示すように、精製されたタンパク質は、SDS−PAGE上で95%以上の純度であることが確認できた。
【0105】
実施例6.細胞透過性ボツリヌストキシン組換えタンパク質(TD1−Lc)の細胞透過能の評価
6‐1.蛍光標識タンパク質の製作
細胞透過性ボツリヌストキシン組換えタンパク質(TD1−Lc)のin vitro細胞透過能を評価するために、FITCが標識されたタンパク質を製造した。遮光した状態で、50mM Boric酸と0.1ng/mL FITC、そして、それぞれ0.5μg/mLのタンパク質を混合して、10mLのタンパク質懸濁液を作って、4℃で8時間反応させた。反応が終わった後、タンパク質懸濁液を透析チューブに入れ、遮光した状態の4℃で3日間、4時間−4時間−16時間の間隔でDPBSで交換しながら透析を行った。透析が終了した後、FITC標識タンパク質を0.2μm syringe filterを用いてろ過し、得られたタンパク質は、Bradford解析法で定量し、必要濃度に応じて選択的に濃縮した。測定された濃度の中で一番低い濃度のタンパク質に合わせて希釈して蛍光強度(fluorescence intensity、RFU)を測定した。測定されたRFUに基づいて検証に用いたFITC融合タンパク質の蛍光強度を比較した。
【0106】
6‐2.フローサイトメトリー測定(Flow Cytometry)を用いた神経細胞透過能の確認
神経細胞株であるSiMa cellに対する細胞透過性ボツリヌストキシン組換えタンパク質(TD1−Lc)の細胞透過能を評価した。SiMa cellは培養プレートに対する細胞付着能が弱いので、gelatin(sigma、G2500)をコーティングした培養プレートを用いるが、0.1% gelatin溶液を培養プレートにコーティングして、室温で1時間の後、溶液を除去し、乾燥した状態で用いた。Complete mediaは、RPMI1640(10%FBS、1%penicillin/streptomycin)を用いて、80%以上のconfluencyで継代培養した。細胞は、繰り返した継代培養で安定化させた後、100mm培養パレート当たり5X10
5/wellで細胞を接種し、37℃の5%CO
2の条件の培養器(incubator)で16〜20時間培養した後、実験に用いた。
【0107】
各試料(vehicle、FITC only、Lc−FITC、TD1−Lc−FITC)は、FBSが添加されていない非血清培地で6時間1.5μg/ml及び7.5μg/mlの濃度で処理した。反応時間が終了した後、DPBSで2回洗浄して残余分の試料を除去し、0.05%トリプシン-EDTAを処理、光を遮断したまま、10分間反応させた後、complete mediaを用いて、トリプシン−EDTAを不活性化させた。その後、準備したチューブに細胞を回収し、リン酸緩衝溶液3mLを加え、2,000rpmで3分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、それぞれのFACSチューブにリン酸緩衝溶液200μLを入れた後、細胞を十分に再懸濁させてフローサイトメトリー測定を行った。測定されたFl−1のgeo.mean値で蛍光値を補正するために、vehicleの値を基準にボツリヌストキシンA型の軽鎖(LC)及び細胞透過性ボツリヌストキシン組換えタンパク質(TD1−Lc)の伝送能を決定した。その結果、
図7aに示すように、細胞透過性ペプチドが結合されたTD1−Lc組換えタンパク質が細胞透過性ペプチドが結合されていないLcタンパク質と比べて、神経細胞で顕著に優れた細胞透過性を示すことを定量的に確認することができた。これは、タンパク質などの巨大分子の伝送体としてTD1の可能性を細胞レベルで確認した結果である。
【0108】
6‐3.共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)を用いた神経細胞透過能の確認
神経細胞株であるSiMa cellに対する細胞透過性ボツリヌストキシン組換えタンパク質(TD1−Lc)の細胞透過能を確認するために、complete mediaはRPMI1640(10%FBS、1%penicillin/streptomycin)を用いて、80%以上のconfluencyで細胞を培養した。細胞は、繰り返する継代培養で安定化させた後、顕微鏡解析のために12mm cover glass(カバーグラス)を火炎滅菌した後、24 well plateのそれぞれのwellにcover glass(カバーグラス)1つずつ入れてSiMa cellを接種して、16〜24時間培養した。各試料(vehicle、Lc、TD1−Lc)は、FBSが添加されていない無血清培地で3時間5μg/mLの濃度で処理した。反応が終わった後、培地は、吸入器を介して完全に削除した後、リン酸緩衝溶液で2回繰り返して洗浄し、各wellに10%ホルマリン溶液を200μLずつ入れ、遮光して10分間、細胞を固定した。細胞の固定の後、固定液は除去し、リン酸緩衝液で10分間2回洗浄した。その後、遮光した状態で10分間、室温で対照染色を行ったあと、染色溶液を除去し、リン酸緩衝液で2回洗浄した。細胞の観察のためにcover glass(カバーグラス)は回収して、mounting溶液が点滴されたslide glass(スライドグラス)に気泡が入らないように徐々に下ろして、mountingした(覆い被せた)。これは、遮光状態で十分に乾燥させた後、confocal microscope(Zeiss LSM700)を用いて細胞を観察した。その結果、
図7bに示すように、Lcタンパク質と比べて、細胞透過性ペプチドが結合されたTD1−Lc組換えタンパク質が神経細胞で顕著に優れた細胞透過性を示すことを視覚的にも確認することができた。
【0109】
6‐4.共焦点顕微鏡(Confocal microscopy)を用いた角質形成細胞透過能の確認
皮膚の角質形成細胞株であるHaCaT細胞の細胞透過性ボツリヌストキシン組換えタンパク質(TD1−Lc)の細胞透過能を確認するためにDMEM complete media(10%FBS、1%penicillin/streptomycin)を用いて細胞を培養した。顕微鏡解析のために12mm cover glass(カバーグラス)を火炎滅菌した後、24 well plateのそれぞれのwellに1つずつ入れてHaCaT細胞を接種して、16〜24時間培養した。各試料(Vehicle、Lc、TD1−Lc)は、FBSが添加されていない無血清培地で1時間、3時間および6時間の間、5μMの濃度で処理した。反応が終わった後、各wellの培地は除去し、リン酸緩衝溶液で2回繰り返して洗浄した後、各wellに10%ホルマリン溶液を200μLずつ入れ、遮光して10分間、細胞を固定した。細胞の固定の後、固定液は除去し、リン酸緩衝液で10分間2回洗浄した後、遮光した状態で、HoechstとDAPI染色溶液を用いて10分間、室温で対照染色を行った。染色した後、染色溶液は除去し、リン酸緩衝液で2回洗浄した後、細胞観察のためにcover glass(カバーグラス)を回収して、mounting溶液が点滴されたslide glass(スライドグラス)に気泡が入らないように徐々に下ろして、mountingした(覆い被せた)。これは、遮光状態で十分に乾燥させた後、confocal microscope(Zeiss LSM700)を用いて細胞を観察した。その結果、
図7cに示すようにLcタンパク質と比べて、細胞透過性ペプチドが結合されたTD1−Lc組換えタンパク質が角質形成細胞でも顕著に優れた細胞透過性を示すことを視覚的に確認した。
【0110】
実施例7.細胞透過性ペプチドTD1を結合したボツリヌストキシン組換えタンパク質TD1−Lcの皮膚模写人工膜の透過効能の評価
細胞透過性ペプチド(TD1)とボツリヌストキシンの軽鎖タンパク質(Lc)を結合した組換えタンパク質(TD1−Lc)の皮膚障壁の透過効能を評価するために、皮膚模写人工膜(Start−M)に対する自動皮膚透過器(MicroettePlus)を用いて、皮膚透過効能を確認した。皮膚模写人工膜は吸収を阻害する上層のPES(polyether sulfone)と多孔質構造の生成で吸収に差別性を与えることができる下層のpolyolefinで構成されており、保管が容易で前処理プロセスなしにすぐにシステムに適用することができるメリットがある。また、実際の皮膚で測定することが難しい透過量を皮膚と同じような条件で定量することができ、広く用いられている。用意された皮膚模写人工膜での透過効能を評価するために、vertical cellの下部にPBSを入れ、真ん中に緩衝溶液と皮膚模写人工膜が空いているスペースがないように結合させた後、vertical cellの上に試料を入れて準備した。下部の緩衝溶液を時間が経ることに応じて、10%の量を採取した後、同じ量の緩衝溶液を入れて、これを繰り返した。採取した試料は、実験が終わった後、ELISA解析法を用いて、量を測定した。その結果、
図8に示すように、新規の細胞透過性ペプチドMTDが結合されたTD1−Lcがボツリヌストキシンの軽鎖タンパク質Lcに比べて、皮膚模写人工膜で透過能が約20%以上、優れていることが確認できた。時間に応じた皮膚模写膜の透過度は、6時間までは同様に見えるが、12時間の後から24時間までにはTD1−Lcタンパク質の透過能がより優れていることを確認することができる。
【0111】
実施例8.細胞透過性ペプチドTD1を結合したボツリヌストキシン組換えタンパク質TD1−Lcの効能評価(In vitro SNAP25 cleavage assay)
SNAP25タンパク質は、SNARE proteinの一種でボツリヌストキシンA型の軽鎖が切るタンパク質で、一般的にボツリヌストキシンの活性を見るために、試験管でSNAP25 cleavage assay方法を用いる。本実施例でもボツリヌストキシンの軽鎖(BoNT/A Light chain(Lc))の活性を確認するために、cleavage assayを行った。2μgのGST−SNAP25−EGFP融合タンパク質に2μlのcleavage assay buffer(10mM DTT、10mM HEPES、10mM NaCl及び20uM ZnCl
2)を入れて、組換えタンパク質TD1−Lcをそれぞれの濃度10、30、90、270、810ngの濃度で添加した後、37℃で4時間反応させた。陽性対照群には、270ngのボツリヌストキシン混合体(BoNT/A complex)を添加し、3次蒸留水で全体の容量を20μlに合わせて同じ条件で反応させた。上記の反応が終了した混合液は、5X reduced bufferを添加して、100℃で10分間加熱した後、12% SDS−PAGE gelを用いて、80V 20分、120V 1時間の電気泳動を行った。SDS−PAGE gelはstaining buffer(0.25% coomassie brilliant blue、45% methnaol、10% acetic acid)で染色した後、destaining buffer(30% methanol、10% acetic acid))で脱色してタンパク質のパターンを確認した。その結果、
図8に示すように、TD1−Lcの組換えタンパク質でもボツリヌストキシンの活性が維持されていることを確認することができた。上記の結果から、TD1−Lcの組換えタンパク質がボツリヌストキシンと同じ機能をすることを予想することができた。
【0112】
実施例9.細胞透過性ペプチドTD1を結合したボツリヌストキシン組換えタンパク質TD1−Lcのin vitro効能評価
9‐1.ヒト角質形成細胞(HaCaT cell)でのSNAP25 cleavageの確認
角質形成細胞(HaCaT cell)での組換えタンパク質TD1−Lcの皮膚透過および効能を評価するために、SNAP25タンパク質の切断の可否を介して効能を確認することができるSNAP25 cleavage assayをwestern blot方法で行った。角質形成細胞(HaCaT cell)は、24 well plateに1X10
4/wellの細胞数で24時間培養した後、pcDNA3.1−SNAP25 plasmidをtransfectionし、陽性対照群としてpcDNA3.1−Lc plasmidをcotransfectionした。16時間培養を介してSNAP25を過発現させた後、FBSのない培地に交換し、TD1−Lcタンパク質の処理の後には、48時間後に培地を除去し、PBSで洗浄した。その後、各wellにRIPA buffer(intron)200μlずつ入れて細胞を溶解させた後、4℃ 8,000rpmで10分間遠心分離して、上澄み液を得た。得た各試料は、5X reducing sample bufferと混合した後、100℃で10分間加熱して、15%SDS−PAGE gelに80Vで20分、120Vで1時間の電気泳動を行った。電気泳動が終わったgelはPVDF membrane(Millipore、IPVH00010)で90Vで1時間10分間の転写(transfer)させて、転写されたmembraneは5% BSAを入れて2時間blockingした。その後、Primary antibody(Covance、SMI−81)を1:1000に5% BSAで希釈して入れ、4℃で16時間反応させた。反応が終わったmembraneはPBSTを用いて、10分間隔で3回以上洗浄するプロセスを経て、second antibody(Millipore、AP192P)を1:2500に5% BSAで希釈して入れ、再び1時間室温で反応させた。2次反応が終了したmembraneはPBSTで10分間隔で3回以上洗浄し、ECL solutionを処理して、追加の反応をさせてカセットに移した後、暗室でX−ray filmに感光させて確認した。その結果、
図10aに示すように、plasmid状態でLcを内部で発現した場合とタンパク質を外部で処理した場合、すべてのSNAP25の切断を確認することができた。これは、外部からの処理したTD1−Lcのタンパク質が皮膚細胞を透過して内部で発現されたSNAP25を切断したことを意味する。したがって、組換えタンパク質TD1−Lcが優れた皮膚細胞透過性と活性を有していることを確認することができた。
【0113】
9‐2.ヒト神経細胞(SiMa cell)でのSANP25 cleavageの確認
ヒト神経細胞(Human neuroblastoma cell)であるSiMa cellでの組換えタンパク質TD1−Lcの皮膚透過および効能を評価するために、SNAP25タンパク質の切断の可否を介して効能を確認することができるSNAP25 cleavage assayをwestern blot方法で行った。
【0114】
まず、SiMa cellを24 well plateに10% FBS、1%P/Sを含むRPMI培地に入れて5X10
5/wellでseedingする。 37℃の5%CO
2の条件の培養器(incubator)でovernight培養した後、分化培地(10% FBS、RPMI、Glutamax、1X NEAA、1X B27、1X N2、5μM RA、2.5μM PUR)1mlに交換して、24時間培養した後、分化培地(10% FBS、RPMI、Glutamax、1X NEAA、1X B27、1X N2、5μM RA、2.5μM PUR)に25μg/mLの濃度でGT1bを添加して、1mlに交換した。 24時間培養後、分化培地(10% FBS、RPMI、Glutamax、1X NEAA、1X B27、1X N2、5μM RA、2.5μM PUR)1mlに交換して分化を誘導させて用意した。神経細胞(SiMa cell)は、24well plateに5X10
5/wellの細胞数で培養した後、神経細胞の分化方法に応じて分化させて、最後の分化培地に交換して、4時間後に組換えタンパク質TD1−Lcを処理した。タンパク質の処理の48時間後、培地を除去し、PBSで洗浄した後、各well当たりRIPA buffer(intron)200μlずつ入れて細胞を溶解させ、4℃ 8,000rpmで10分間遠心分離して上澄み液を得た。得た各試料は、5X reducing sample bufferと混合して、100℃で10分間加熱して、これを15% SDS−PAGE gelに80V 20分、120V 1時間電気泳動を行った。電気泳動が終わったgelはPVDF membrane(Millipore、IPVH00010)に90Vで1時間10分の間転写(transfer)させて、転写されたmembraneは5% BSAを入れて2時間blockingした。その後、Primary antibody(Covance、SMI−81)を1:1000に5% BSAで希釈して入れ、4℃で16時間反応させた。反応が終わったmembraneはPBSTを用いて、10分間隔で3回以上洗浄するプロセスを経て、second antibody(Millipore、AP192P)を1:2500に5% BSAで希釈して入れ、再び1時間室温で反応させた。2次反応が終わったmembraneはPBSTで10分間隔で3回以上洗浄し、ECL solutionを処理して、追加の反応をさせてカセットに移した後、暗室でX−ray filmに感光させて確認した。その結果、
図10bに示すように、TD1−Lcタンパク質だけでも神経細胞を効果的に透過することを確認することができた。これでTD1−Lcタンパク質が皮膚細胞だけでなく、神経細胞も効果的に透過できることを確認することができた。
【0115】
実施例10.細胞透過性ペプチドTD1を結合したボツリヌストキシン組換えタンパク質TD1−Lcの皮膚細胞毒性の評価
10‐1.ヒト角質形成細胞(HaCaT cell)での細胞毒性の評価
組換えタンパク質TD1−Lcのヒトの皮膚細胞の細胞毒性を評価するために、細胞の生存率を測定するMTT assayを行った。まず、角質形成細胞(HaCaT cell)を24 well plateに1X10
4/wellの細胞数で培養して、組換えタンパク質TD1−Lcを処理する4時間の前にFBSのない培地に交換した。タンパク質は、0.625μg/mLで40μg/mLの濃度まで処理し、48時間反応させた後、5mg/mLのMTT(sigma)を各10μlずつ添加して、さらに4時間反応させた。反応が終わった培養液は捨てて、各試料に100μlのDMSOを添加して、室温で10分間反応させた後、OD
570で吸光度(absorbance)を測定した。上記の実験の対照群では、細胞透過性ペプチドTD1が結合されていないボツリヌストキシンの軽鎖タンパク質(Lc)を一緒に実験した。その結果、
図11aに示すように、組換えタンパク質TD1−Lcが角質形成細胞(HaCaT cell)に対して40μg/mLの高い濃度でも細胞の生存率が維持されることにより、細胞毒性が表さないことを確認することができた。
【0116】
10‐2.ヒト神経細胞(SiMa cell)での細胞毒性の評価
組換えタンパク質TD1−Lcのヒト神経細胞(SiMa cell)に対する細胞毒性を評価するために、細胞生存率を測定するMTT assayを行った。ヒト神経細胞(SiMa cell)を24 well plateに5X10
5/wellの細胞数で培養して、神経細胞分化の方法によって分化を誘導した。最後の分化培地に交換し、4時間の後、組換えタンパク質TD1−Lcを処理した。タンパク質は、0.625μg/mLで40μg/mLの濃度まで処理し、48時間反応させた後、5mg/mLのMTT(sigma)を各10μlずつ添加して、さらに4時間反応させた。反応が終わった培養液は捨てて、各試料に100μlのDMSOを添加して、室温で10分間反応させた後、OD
570で吸光度(absorbance)を測定した。上記の実験の対照群では、細胞透過性ペプチドTD1が結合されていないボツリヌストキシンの軽鎖タンパク質(Lc)を一緒に実験した。その結果、
図11bに示すように、組換えタンパク質TD1−Lcを処理したヒト神経細胞(SiMa cell)の細胞生存率が維持されることにより、高濃度でも組換えタンパク質TD1−Lcによる細胞毒性が表さないことを確認することができた。
【0117】
実施例11.細胞透過性ペプチドTD1を結合したボツリヌストキシン組換えタンパク質TD1−Lcの安定性の評価
ボツリヌストキシンの軽鎖は、精製の後、二つの軽鎖タンパク質がdimerを形成し、形成された軽鎖dimerはself−cleavage activityを有し、保管条件に応じて、self−cleavage activityの活性に差を見せる。そして、組換えタンパク質TD1−Lcの保管期間に応じた安定性を確認するために、各期間別のタンパク質のパターンの変化をSDS−PAGE電気泳動で確認した。組換えタンパク質TD1−Lcは定量して10μgずつ、それぞれのチューブに分注して−80℃の超低温冷凍庫に保管した。保管してから1月、3月、6月が経過した後、その後、各期間の経過に応じて、それぞれの組換えタンパク質TD1−Lcを溶かして12% SDS−PAGE gelに電気泳動を行い、タンパク質の純度およびパターンの変化があるかを確認した。その結果、
図12に示すように、6月が経過しても、タンパク質のパターンの変化がなく、組換えタンパク質が安定に維持されていることを確認することができた。
【0118】
実施例12.細胞透過性ペプチドTD1を結合したボツリヌストキシン組換えタンパク質TD1−Lcの化粧用組成物の製造および皮膚刺激の安全性評価
組換えタンパク質TD1−Lcの臨床試験のために、H&A pharmachem社にリポソーム化を委託して加工した後、化粧品原料と2次加工して、化粧品組成物として作製した。
【0119】
また、ヒトを対象とした、皮膚刺激の安全性評価のために専門の臨床試験代行機関(CRO)であるアイイシコリア(株)(韓国)に試験を依頼して評価した。試験は、健康な男女31人を対象に、試料をIQ chamberに入れて、背中の皮膚に 貼布して、48時間の後、人体の皮膚に対する安全性を皮膚科の専門医が判断して刺激の程度を評価、解析した。 貼布方法は、単回・密閉貼布試験で行って、皮膚刺激の評価に通用される評価基準(CTFA guideline)を応用してFlosch&Kligmanの考案された測定評価法で刺激の程度を評価、解析した。被試験志願者は、皮膚科の医者である試験責任者と研究者の病歴調査、問診及び視診と、必要に応じ促進などを介して被験者の選定および除外基準に適合した健康な成人男女32人を選抜したが、1人が中途脱落し、年齢分布は満20歳から36歳の間に、平均年齢は25.7±5.4歳、性比は男性と女性は、各13人:18人だった。試験を完全に終了した被験者31人を対象に単回貼布試験の後、評価基準に基づいた皮膚刺激度を読み取りし、その結果を
図13に示した。皮膚刺激反応の結果を通じて刺激度を評価する際に、人体の皮膚反応で適用される世界的な共通基準は定められていないが、通常、50人以下の志願者を対象にする試験では、単回貼布試験の読み取りの際に、全志願者の20%を超過する頻度で反応が出現する試料(本試験の場合、31人の20%である7人以上)、もしくは毎回読み取る際に+2以上の刺激反応が全志願者の10%を超えて観察された試料は、有意に刺激を誘発する可能性がある物質とみなすことができる。上記の試験で48時間、31人の被験者の背中の皮膚に貼布した後、皮膚反応を観察した結果、依頼した試料は、無刺激で皮膚に安全に使用することができると判断することができた。
【0120】
実施例13.細胞透過性ペプチドTD1を結合したボツリヌストキシン組換えタンパク質TD1−Lcのシワ改善効能の評価
組換えタンパク質TD1−Lcのシワ改善効能の評価のために専門の臨床試験代行機関(CRO)であるアイイシコリア(株)(韓国)に依頼して、臨床試験を実施した。試験は、30歳から59歳までのほうれい線を持つ韓国人の大人の女性被験者22人を対象に、試料1種を1日2回、4週間の間、被験者自ら自宅で使用するようにした後、皮膚ほうれい線の粗さと皮膚の弾力を測定し、臨床写真撮影と皮膚科専門医のほうれい線の肉眼評価を並行して組換えタンパク質TD1−Lcの皮膚のシワの改善の効能を評価した。ほうれい線の粗さは、PRIMOS Systemを用いて測定し、皮膚の弾力は、Cutometer MPA580を用いて測定した。
【0121】
本人体適用試験は、ヘルシンキ宣言の精神とGCPガイドラインの内容に応じて、被験者の権利、安全、福祉を優先的に保護することができるように行った。研究者は、被験者の安全を確保することができるように、次の事項を充実に履行した。
- 試験中の試験責任者と試験担当者は、被験者の安全に最善を尽くさなければならなく、すべての皮膚の異常症状の発生の際に迅速かつ適切な措置を取り、その反応を最小限に抑えなければならない。
- 試験中、被験者は、試料によって皮膚刺激または異常症状の事例を報告する場合には、すぐに使用された試料を拭き取り、症状が好転しない場合の試験責任者による皮膚科的な評価と適切な治療を受ける。
- 通常の試験プロセスにもかかわらず、皮膚に異常の症状が発生した場合、適切な皮膚科的な評価と治療を受けるようにする。
- その他の異常な皮膚反応が発生した場合、試験責任者と試験担当者は、皮膚科的な評価と一緒に適切な措置を取り、症例および状況について詳細に記録をする。
- 結果の測定は、被験者が実験室を訪問して恒温恒湿室(22±2℃、50±5%)で15分以上待機して、皮膚の安定を取るようにした後、測定および評価を実施した。
【0122】
上記の試験では、試料の使用の前と使用の4週間後にほうれい線の部位をscanningした後、PRIMOS systemを利用して、皮膚の粗さ(Roughness)parameterを解析した。皮膚の粗さを表現するparameterは次の通りである。
- Ra:arithmetic average(平均の粗さ)
- Rmax:Maximum peak to vally roughness(最大の粗さ)
- R3z:Arithmetic mean third height
- Rt:distance between the highest and the lowest point
- Rz:Average maximum height(10 point height)
【0123】
皮膚の弾力は、頬の毛穴部位の弾力(弾性復元力)をCustometerを用いて測定した。400mbの圧力で2秒間吸引し、2秒間還元するプロセスを3回繰り返して、測定結果の再現性を高めるためにpretension timeを0.1秒に設定した。皮膚を吸引、弛緩した時の測定値で得られる各parameters値の意味は以下の通りである。
- R5:Net elasticity of the skin without viscous deformation
- R7:Portion of the elasticity compared to the complete curve
【0124】
ほうれい線の肉眼評価は、試料を使用する前(D+0)と4週間の使用の後(D+28)に皮膚科専門医が各被験者の左または右側のほうれい線状態をphotographic scaleにより肉眼評価した。
【0125】
試料の使用前・後においてほうれい線の粗さ、皮膚の弾力と皮膚科専門医の肉眼評価の統計的な有意性を検証し、結果の解釈方法は、試料の使用前と後、ほうれい線の粗さ、皮膚の弾力parameters、皮膚科専門医のほうれい線の肉眼評価で有意な変化がある場合、ほうれい線や弾力が改善されたものと解釈した。
【0126】
統計解析プログラムは、SPSS 14.0を用いて、機器の測定結果データの正規性をそれぞれShapiro−Wilk testで検証した。被験者22人はすべて、適切な被験者に選ばれ、最終の訪問日まで、すべての被験者が正常に試験を終了し、最終的な22人(平均46.1歳)の有効なデータを獲得した。
【0127】
その結果、
図14aに示すように、試料の使用の4週間後に、ほうれい線の部位の皮膚の粗さを示すRa、Rmax、R3z、Rz、Rt parameterが有意に減少し、ほうれい線が改善されたことと示された。また、
図14bに示すように、試料の使用の4週間後に、皮膚の弾力を示すR5、R7 parameterが有意に増加し、皮膚の弾力が改善されたことと示された。ほうれい線の肉眼評価の結果も、また、
図14cに示すように、試料の使用の4週間後にほうれい線が有意に減少し、
図15に示すように、シワの改善効果を視覚的にも確認できた。
【0128】
これにより、細胞透過性ペプチドTD1を結合したボツリヌストキシン組換えタンパク質TD1−Lcを用いた皮膚改善効能を臨床試験で評価した結果、試料を4週間、連続的に使用する場合、皮膚のほうれい線と皮膚の弾力の改善に役立つことと確認された。これは、局所的に適用された細胞透過性ボツリヌストキシン組換えタンパク質(TD1−Lc)が経皮に効果的に伝達されることにより、皮膚の微細なシワシワや太いシワを減少させる上で意味のある効果を提供していることを示している。
【0129】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須的な特徴を変更しなくて、他の具体的な形態に変形しやすいことができることを理解できるだろう。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解するべきである。