(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243582
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】トウバンドの製造方法及びトウバンド製造装置
(51)【国際特許分類】
D06B 15/00 20060101AFI20171127BHJP
D06H 3/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
D06B15/00
D06H3/00
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-532236(P2017-532236)
(86)(22)【出願日】2015年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2015003880
(87)【国際公開番号】WO2017021995
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2017年10月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 尚久
(72)【発明者】
【氏名】府藤 篤
【審査官】
斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−191038(JP,A)
【文献】
特表2008−504457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00 − 23/30
D06C 3/00 − 29/00
D06G 1/00 − 5/00
D06H 1/00 − 7/24
D06J 1/00 − 1/12
F26B 1/00 − 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を添着された複数本のフィラメントが捲縮されてなる複数種類のトウバンドを、蛇行させて搬送しながら単一の乾燥装置で乾燥することにより、前記複数種類のトウバンドの各トウバンドに含まれる水の一部を除去する除去工程と、
前記乾燥装置を通過した前記各トウバンドに含まれる水の残留量をそれぞれ検出する検出工程と、
前記乾燥装置を通過した前記各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれ目標値となるように、前記検出工程の検出結果に基づいて、前記各トウバンドの蛇行の振動幅を調整する調整工程と、を有する、トウバンドの製造方法。
【請求項2】
前記各トウバンドを搬送する前記乾燥装置の搬送装置よりも搬送方向上流側に設けられ、水平面内で搬送方向の両側に揺動する揺動部を有する揺動装置の前記揺動部に前記各トウバンドを接触させることにより、前記各トウバンドを蛇行させた状態で前記搬送装置に搬送させる、請求項1に記載のトウバンドの製造方法。
【請求項3】
水平面内で搬送方向と直交する方向に間隔をおいて設けられた複数の前記揺動装置を用いて、前記各トウバンドを並列させて蛇行させた状態で前記搬送装置に搬送させる、請求項2に記載のトウバンドの製造方法。
【請求項4】
前記揺動装置の搬送方向下流側において、水平面内で前記各トウバンドの搬送方向の両側に設けられて前記各トウバンドをガイドする一対のガイド部材の間の間隙を調整することにより、前記各トウバンドの前記蛇行の振動幅を調整する、請求項2または3に記載のトウバンドの製造方法。
【請求項5】
前記検出工程は、前記各トウバンドに対応して設けられた複数の検出装置の検出結果に基づいて行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトウバンドの製造方法。
【請求項6】
前記各トウバンドは、互いにフィラメントデニールまたはトータルデニールが異なる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のトウバンドの製造方法。
【請求項7】
水を添加された複数本のフィラメントが捲縮されてなる複数種類のトウバンドを、蛇行させて搬送しながら乾燥することにより、前記複数種類のトウバンドの各トウバンドに含まれる水の一部を除去する単一の乾燥装置と、
前記乾燥装置を通過した前記各トウバンドに含まれる水の残留量をそれぞれ検出する検出装置と、を備え、
前記乾燥装置を通過した前記各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれ目標値となるように、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記各トウバンドの蛇行の振動幅を調整可能に構成されている、トウバンド製造装置。
【請求項8】
前記検出装置の検出結果を表示する表示部を更に備える、請求項7に記載のトウバンド製造装置。
【請求項9】
前記乾燥装置は、前記各トウバンドを搬送する搬送装置を有し、
前記搬送装置よりも搬送方向上流側に設けられ、水平面内で搬送方向の両側に揺動する揺動部を有する揺動装置を更に備え、
前記揺動部に前記各トウバンドが接触されることにより、前記各トウバンドが蛇行した状態で前記搬送装置に搬送される、請求項7または8に記載のトウバンド製造装置。
【請求項10】
複数の前記揺動装置が、水平面内で搬送方向と直交する方向に間隔をおいて設けられ、前記各トウバンドが並列して蛇行した状態で前記搬送装置に搬送される、請求項9に記載のトウバンド製造装置。
【請求項11】
前記揺動装置の搬送方向下流側において、水平面内で前記各トウバンドの搬送方向の両側に前記各トウバンドをガイドする一対のガイド部材が設けられ、
前記一対のガイド部材の間の間隙を調整することにより、前記各トウバンドの前記蛇行の振動幅が調整される、請求項9または10に記載のトウバンド製造装置。
【請求項12】
複数の前記検出装置が、前記各トウバンドに対応して設けられている、請求項7〜11のいずれか1項に記載のトウバンド製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の乾燥装置を用いて複数種類のトウバンドを乾燥させるトウバンドの製造方法及びトウバンド製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シガレットフィルターは、例えば、セルロースアセテート繊維等の複数本のフィラメントを用いたトウバンドにより製造される。トウバンド製造装置では、特許文献1に開示されるように、例えば、紡糸筒で紡糸した複数本のフィラメントがゴデットローラで合一されてヤーンが形成され、複数本のヤーンが更に合一されてヤーン束が形成される。ヤーン束は、水を添着して可塑化し易くされた後、捲縮装置に搬送される。捲縮装置では、例えば、一対のニップローラの間にヤーン束が挿通され、一対のニップローラの搬送方向下流側に設けられたスタッフィングボックスに押し込まれることで、ヤーン束が捲縮される。このようにして得られたトウバンドは、乾燥装置で乾燥されてベール状に折り畳まれ、梱包容器に梱包される。
【0003】
フィルターロッド製造装置(「プラグ巻上機」とも称する。)では、特許文献2に開示されるように、例えば、梱包容器から繰り出されたトウバンドが開繊されて可塑剤を添着され、ロッド状に成形される。その後、トウバンドの外周に巻紙が巻回されてフィルターロッド(「プラグ」とも称する。)が製造される。このフィルターロッドを所定長さに切断することにより、シガレットフィルターが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−504457号公報
【特許文献2】特開2003−38157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、FD(フィラメントデニール)またはTD(トータルデニール)のいずれかが異なる複数種類のトウバンドをトウバンド製造装置で並行して製造する場合、単一の乾燥装置で複数種類のトウバンドを並行して乾燥させる場合がある。複数種類のトウバンドは、フィルターロッド製造装置において複数本のフィラメント同士のもつれを防ぎながら適切に開繊されるようにするため、それぞれに応じた適量の水を含むことが望ましい。
【0006】
そこで本発明は、複数種類のトウバンドを並行して製造する場合において、単一の乾燥装置を用いながら、各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれに応じて適量になるように、各トウバンドを並行して乾燥可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るトウバンドの製造方法は、水を添着された複数本のフィラメントが捲縮されてなる複数種類のトウバンドを、蛇行させて搬送しながら単一の乾燥装置で乾燥することにより、前記複数種類のトウバンドの各トウバンドに含まれる水の一部を除去する除去工程と、前記乾燥装置を通過した前記各トウバンドに含まれる水の残留量をそれぞれ検出する検出工程と、前記乾燥装置を通過した前記各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれ目標値となるように、前記検出工程の検出結果に基づいて、前記各トウバンドの蛇行の振動幅を調整する調整工程と、を有する。
【0008】
上記方法によれば、乾燥装置を通過した各トウバンドに含まれる水の残留量をそれぞれ検出し、この検出結果に基づいて、乾燥装置を通過した各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれ目標値となるように、各トウバンドの蛇行の振動幅を調整する。従って、例えば、FDまたはTDのいずれかが異なる複数種類のトウバンドを、単一の乾燥装置を用いて並行して乾燥させる場合であっても、各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれに応じて適量になるように、各トウバンドを適切に乾燥させることができる。
【0009】
また、前記各トウバンドを搬送する前記乾燥装置の搬送装置よりも搬送方向上流側に設けられ、水平面内で搬送方向の両側に揺動する揺動部を有する揺動装置の前記揺動部に前記各トウバンドを接触させることにより、前記各トウバンドを蛇行させた状態で前記搬送装置に搬送させてもよい。
【0010】
上記方法によれば、水平面内で搬送方向の両側に揺動する揺動部を有する揺動装置の前記揺動部に各トウバンドを接触させ、各トウバンドを蛇行させた状態で搬送装置に搬送させることにより、乾燥装置において、搬送方向上流側から各トウバンドを効率よく乾燥させることができる。
【0011】
また、水平面内で搬送方向と直交する方向に間隔をおいて設けられた複数の前記揺動装置を用いて、前記各トウバンドを並列させて蛇行させた状態で前記搬送装置に搬送させてもよい。
【0012】
上記方法によれば、水平面内で搬送方向と直交する方向に間隔をおいて設けられた複数の前記揺動装置を用いることにより、各トウバンドが互いに干渉するのを防止しながら、各トウバンドを並列させて蛇行させた状態で搬送装置に搬送させ、乾燥装置において、各トウバンドを並行して効率よく乾燥させることができる。
【0013】
また、前記揺動装置の搬送方向下流側において、水平面内で前記各トウバンドの搬送方向の両側に設けられて前記各トウバンドをガイドする一対のガイド部材の間の間隙を調整することにより、前記各トウバンドの前記蛇行の振動幅を調整してもよい。
【0014】
上記方法によれば、一対のガイド部材の間の間隙を調整することにより、各トウバンドの蛇行の振動幅を容易に調整できる。
【0015】
また、前記検出工程は、前記各トウバンドに対応して設けられた複数の検出装置の検出結果に基づいて行ってもよい。
【0016】
上記方法によれば、前記検出工程を、前記各トウバンドに対応して設けられた複数の検出装置の検出結果に基づいて行うことにより、各トウバンドに含まれる水の残留量を個別にかつ精度よく検出できる。
【0017】
また、前記各トウバンドは、互いにフィラメントデニールまたはトータルデニールが異なっていてもよい。このような複数種類のトウバンドを製造する場合でも、各トウバンドを単一の乾燥装置を用いて適切に乾燥させることができる。
【0018】
本発明の一態様に係るトウバンド製造装置は、水を添加された複数本のフィラメントが捲縮されてなる複数種類のトウバンドを、蛇行させて搬送しながら乾燥することにより、前記複数種類のトウバンドの各トウバンドに含まれる水の一部を除去する単一の乾燥装置と、前記乾燥装置を通過した前記各トウバンドに含まれる水の残留量をそれぞれ検出する検出装置と、を備え、前記乾燥装置を通過した前記各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれ目標値となるように、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記各トウバンドの蛇行の振動幅を調整可能に構成されている。
【0019】
上記構成によれば、乾燥装置を通過した各トウバンドに含まれる水の残留量を検出装置でそれぞれ検出し、この検出装置の検出結果に基づいて、乾燥装置を通過した各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれ目標値となるように、各トウバンドの蛇行の振動幅を調整する。従って、例えば、FDまたはTDのいずれかが異なる複数種類のトウバンドを、単一の乾燥装置を用いて並行して乾燥させる場合であっても、各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれに応じて適量になるように、各トウバンドを適切に乾燥させることができる。
【0020】
また、前記検出装置の検出結果を表示する表示部を更に備えていてもよい。この構成によれば、オペレータが表示部を確認することで、検出装置の検出結果を容易かつ迅速に知ることができる。
【0021】
また、前記乾燥装置は、前記各トウバンドを搬送する搬送装置を有し、前記搬送装置よりも搬送方向上流側に設けられ、水平面内で搬送方向の両側に揺動する揺動部を有する揺動装置を更に備え、前記揺動部に前記各トウバンドが接触されることにより、前記各トウバンドが蛇行した状態で前記搬送装置に搬送されてもよい。
【0022】
上記構成によれば、水平面内で搬送方向の両側に揺動する揺動部に各トウバンドを接触させ、各トウバンドを蛇行させた状態で搬送装置に搬送させることにより、乾燥装置において、搬送方向上流側から各トウバンドを効率よく乾燥させることができる。
【0023】
また、複数の前記揺動装置が、水平面内で搬送方向と直交する方向に間隔をおいて設けられ、前記各トウバンドが並列して蛇行した状態で前記搬送装置に搬送されてもよい。
【0024】
上記構成によれば、水平面内で搬送方向と直交する方向に間隔をおいて設けられた複数の揺動装置を用いることにより、各トウバンドを並列させて蛇行させた状態で搬送装置に搬送させ、乾燥装置において、各トウバンドを並行して効率よく乾燥させることができる。
【0025】
また、前記揺動装置の搬送方向下流側において、水平面内で前記各トウバンドの搬送方向の両側に前記各トウバンドをガイドする一対のガイド部材が設けられ、前記一対のガイド部材の間の間隙を調整することにより、前記各トウバンドの前記蛇行の振動幅が調整されてもよい。
【0026】
上記構成によれば、一対のガイド部材の間の間隙を調整することにより、各トウバンドの蛇行の振動幅を容易に調整できる。
【0027】
また、複数の前記検出装置が、前記各トウバンドに対応して設けられていてもよい。この構成によれば、各トウバンドに対応して設けられた複数の検出装置により、各トウバンドに含まれる水の残留量を個別にかつ精度よく検出できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数種類のトウバンドを並行して製造する場合において、単一の乾燥装置を用いながら、各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれに応じて適量になるように、各トウバンドを並行して乾燥できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】揺動装置と搬送装置とを鉛直方向に見下ろした図である。
【
図3】トウバンド製造装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態について、各図を参照して説明する。以下の説明において、左右方向とは、トウバンド103の搬送方向と水平面内で直交する方向を指す。
【0031】
[トウバンド製造装置]
図1は、トウバンド製造装置1の全体図である。
図1に示すように、トウバンド製造装置1は、ミキサー2、濾過装置3、紡糸装置4、オイリング装置5、ゴデットローラ6、ガイドピン7、8、水添着装置9、捲縮装置10、揺動装置11、ガイド装置12、乾燥装置13、梱包装置14、及び、制御装置15を備えている。また、トウバンド製造装置1は、水添着装置9の搬送方向上流側に設けられた第1検出装置D1と、乾燥装置13の搬送方向下流側に設けられた第2検出装置D2とを更に備えている。トウバンド製造装置1は、少なくとも水添着装置9から梱包装置14に至る複数のトウバンド103の搬送経路Lを有し、FD及びTDの異なる複数種類のトウバンドを、各搬送経路Lに搬送しながら並行して製造できるように構成されている。
【0032】
ミキサー2は、混合容器16と攪拌機17とを有し、フィラメント100の材料(本実施形態ではセルロースアセテート繊維の材料)を含む紡糸原液を調整する。濾過装置3は、ミキサー2から供給される紡糸原液を濾過して不純物を除去する。
【0033】
紡糸装置4は、紡糸筒18、紡糸口金19、及び、不図示の紡糸ポンプを有し、複数本のフィラメント100を紡糸する。紡糸筒18は、間隔をおいて複数並設されている。
図1では、単一の紡糸筒18の構成のみを例示している。紡糸口金19は、各紡糸筒18の上部に設けられている。紡糸装置4では、一例として乾式紡糸法に基づき、紡糸ポンプを駆動することにより、濾過装置3を通過した紡糸原液が各紡糸口金19に送り込まれ、各紡糸口金19に形成された複数の紡糸孔から紡糸筒18の内部で下方に吐出されて複数本のフィラメント100が紡糸される。複数本のフィラメント100が、各紡糸筒18から搬送方向下流側に搬送されながら合一されることにより、ヤーン101が形成される。トウバンド製造装置1では、複数の紡糸筒18でFD及びTDの異なる複数本のフィラメント100が並行して紡糸され、かつ合一されることにより、複数種類のヤーン101が形成される。
【0034】
オイリング装置5は、各紡糸筒18の下方に配置され、ヤーン101にオイルエマルジョンを付着させる。オイルエマルジョンには、一例として水及び繊維油剤が含まれる。ゴデットローラ6は、各オイリング装置5の下方に配置されて回転駆動されることにより、ヤーン101を周面に接触させて搬送方向下流側に搬送する。
【0035】
ガイドピン7、8は、各ゴデットローラ6の搬送方向下流側において、ヤーン101と接触することにより、ヤーン101を搬送方向下流側に案内する。複数本のヤーン101が、搬送方向下流側に向けて搬送されながら合一されることにより、ヤーン束102が形成される。ヤーン束102は、水添着装置9に搬送される。水添着装置9は、各搬送経路Lに設けられ、ヤーン束102に水を添着し、ヤーン束102を可塑化して捲縮し易くする。なお、水添着装置9では、水に加えて、アルコール等の水溶性有機溶媒をヤーン束102に添着してもよい。
【0036】
捲縮装置10は、各搬送経路Lに設けられ、水添着装置9を通過したヤーン束102を個別に捲縮する。捲縮装置10はスタッフィングボックス式であり、一対のニップローラ(フィードローラ、クリンプローラまたは押し込みローラとも称する。)20、21及びスタッフィングボックス22を有する。一対のニップローラ20、21は、平行に軸支されるように配置されて回転駆動されることにより、ヤーン束102を一対のニップローラ20、21間のニップ部Nに挿通させる。スタッフィングボックス22は、第1板材23、第2板材24及び第3板材25を有し、一対のニップローラ20、21の搬送方向下流側に配置される。第1板材23及び第2板材24は、互いの板面が対向配置される。第3板材25は、第1板材23及び第2板材24の間において、第1板材23から第2板材24に向けて延びるように配置される。第3板材25の搬送方向下流側の端部は、第2板材24の板面を押圧する方向に付勢されている。第1板材23、第2板材24及び第3板材25は、一例として平板状であるが、このうち少なくともいずれかが曲板状でもよい。
【0037】
水添着装置9により水が添着されたヤーン束102は、一対のニップローラ20、21の間に挿通される際に、ニップ部Nにおいて微細な1次捲縮が掛けられ、その後、ニップ部Nから解放されてスタッフィングボックス22内に押し込まれる。
図1に示すように、第3板材25の搬送方向下流側の端部が第2板材24の板面に押圧されることにより、スタッフィングボックス22の内部空間は、搬送方向下流側に向けて狭くなっている。ヤーン束102は、スタッフィングボックス22内で上下方向に蛇行して座屈しながら一時的に滞留した後、第2板材24と第3板材25との間を通過して搬送方向下流側に搬出される。これにより、高次捲縮が掛けられたトウバンド103が形成される。
【0038】
揺動装置11は、各搬送経路Lに設けられ、捲縮装置10を通過したトウバンド103を左右方向に蛇行させて搬送させる。揺動装置11は、ベース部30、軸部31、及び、揺動部32を有する。ベース部30には、揺動装置用モータM1及びカム機構30aが内蔵され、揺動装置用モータM1の回転駆動力が、カム機構30aを介して軸部31に伝達される。軸部31は、ベース部30の上方に垂直方向に延びている。カム機構30aは、揺動機構の一例であり、軸部31はカム機構30aの働きにより、その軸周りに所定角度で往復回転する。なお、揺動機構はカム機構30aに限定されず、例えば、クランク機構でもよい。揺動部32は、搬送方向に延びる長尺状であり、長手方向と直交する断面が下方に窪んだ凹状の流通路32aを有する。流通路32aは、搬送方向下流側に向かって下り勾配となるように傾斜して延び、トウバンド103が流通される。なお、流通路32aは、搬送方向に水平に延びていてもよい。揺動部32の搬送方向上流側の端部は、軸部31の上端部に固定されている。
【0039】
図2は、揺動装置11と搬送装置40とを鉛直方向に見下ろした図である。トウバンド製造装置1の稼働時には、揺動部32は、揺動装置用モータM1及びカム機構30a(
図1参照)により、軸部31の軸心を揺動中心Qとして、軸部31の軸周りに、水平面内で搬送方向の両側に所定角度の振り幅で揺動する。これにより、揺動部32と接触しながら流通路32aを通過したトウバンド103が、右方向及び左方向に交互に振られて蛇行される。
図2では、揺動部32が最大の振り幅で揺動した際の揺動部32の幅方向中央を通る直線Pの各位置を示している。トウバンド製造装置1では、各揺動装置11が各搬送経路Lに対応するように、左右方向に間隔をおいて設けられている。これにより、複数種類のトウバンド103が並列されて蛇行した状態で搬送される。
【0040】
ガイド装置12は、揺動装置11の搬送方向下流側において、各搬送経路Lを搬送されるトウバンド103を搬送方向にガイドしながら、トウバンド103の左右方向における蛇行の振動幅を調整する。ガイド装置12は、ステージ部35と、複数対のガイド部材36、37とを有する。ステージ部35は板体であり、上面が水平になるように配置されている。各対のガイド部材36、37は、搬送方向に延びるトウバンド103の各搬送路を左右方向に挟むように、間隙をおいてステージ部35の上面に固定されている。
図2では、一例として、隣接する搬送路R1、R2を左右方向にそれぞれ挟むように、ステージ部35の上面に固定された二対のガイド部材36、37と、二対のガイド部材36、37の間の間隙で蛇行されながら搬送路R1、R2を搬送される2種類のトウバンド103(トウバンド103A、103B)とを示している。
【0041】
ガイド部材36、37は、板材を用いて形成され、固定部36a、37aと、ガイド部36b、37bとを有する。固定部36a、37aは、ステージ部35の上面に沿って左右方向にスライド移動可能に、ステージ部35の上面に固定される。固定部36a、37aには、左右方向に延びかつ厚み方向に貫通する複数の長孔36a1、37a1が形成されている。ガイド部36b、37bは、固定部36a、37aの互いに対向する左右方向一端部から垂直方向に延び、水平面内でトウバンド103の搬送方向を挟む両側に一対設けられる。これによりガイド部36b、37bは、トウバンド103と接触しながら、トウバンド103を搬送方向にガイドする。オペレータが、長孔36a1、37a1にボルトBを挿通させ、ステージ部35に設けられたねじ孔35aにボルトBを締め込むことにより、ガイド部材36、37がステージ部35に固定される。ここで
図2に示す例では、ボルトBを緩めた状態で、左右方向で同一方向に各対のガイド部材36、37をスライドさせることにより、搬送路R1、R2の左右方向における位置を調整できる。これにより、トウバンド103を乾燥装置13に搬送する際のトウバンド103A、103Bの左右方向における位置を調整できる。またボルトBを緩めた状態で、左右方向で異なる方向に各対のガイド部材36、37をスライドさせることにより、ガイド部36b、37bの間の間隙を調整できる。これにより、乾燥装置13に搬送する際のトウバンド103A、103Bの蛇行の振動幅W1、W2を調整できる。
【0042】
なお一例として、揺動部32の流通路32aの搬送方向下流側の端部が、水平面内で搬送路R1、R2の左右方向における外側まで揺動するように、ステージ部35に対するガイド部材36、37の固定位置を調整してもよい。これにより、流通路32aを通過したトウバンド103A、103Bをガイド部36b、37bに効率よく接触させて、トウバンド103A、103Bを安定した振動幅W1、W2で蛇行させながら搬送できる。
【0043】
ガイド部材36、37の間隙を調整する方法は、上記以外の方法でもよい。例えば、ガイド装置12にボールねじ機構を設け、ガイド部材36、37の少なくとも一方を前記ボールねじ機構により左右方向にスライド移動させることで、ガイド部材36、37の間隙を調整してもよい。また、ガイド装置12は省略してもよい。この場合、揺動装置11における揺動部32の振り幅を個別に調整することで、各トウバンド103の蛇行の振動幅を個別に調整できる。揺動部32の振り幅を大きくすれば、トウバンド103の蛇行の振動幅を増大でき、揺動部32の振り幅を小さくすれば、トウバンド103の蛇行の振動幅を減少できる。
【0044】
乾燥装置13は、ガイド装置12を通過した各トウバンド103を乾燥することにより、各トウバンド103に含まれる水及び揮発成分の各一部を除去する。トウバンド製造装置1では、単一の乾燥装置13を用いて、複数種類のトウバンド103を並行して乾燥させる。
図1に示すように、乾燥装置13は、複数種類のトウバンド103を並行して搬送するための搬送装置40を有する。搬送装置40は、従動ローラ41、駆動ローラ42、無端ベルト43、及び、搬送装置用モータM2を有する。従動ローラ41及び駆動ローラ42は、平行に軸支されるように配置されている。無端ベルト43は、搬送方向に回動されるように、従動ローラ41及び駆動ローラ42に巻回されている。搬送装置用モータM2は、駆動ローラ42に回転駆動力を伝達するように設けられている。搬送装置用モータM2を駆動させると、ガイド装置12を通過した複数種類のトウバンド103が、各対のガイド部材36、37によりそれぞれ所定の振動幅で蛇行された状態で左右方向に並列され、無端ベルト43の上面に載置されて搬送される(
図2参照)。乾燥装置13の内部において、複数種類のトウバンド103に気体(ここでは加熱空気)を当てることにより、各トウバンド103に含まれる水及び揮発成分の各一部が除去される。
【0045】
ここで、フィルターロッド製造装置において複数本のフィラメント同士のもつれを防ぎながらトウバンド103を適切に開繊する等の目的により、乾燥装置13を通過した複数種類のトウバンド103は、それぞれに応じた適量の水を含有していることが望ましい。これに対してトウバンド製造装置1は、ガイド装置12において各トウバンド103の蛇行の振動幅をそれぞれ調整することにより、乾燥装置13を通過した各トウバンド103に含まれる水の残留量をそれぞれ調整可能に構成されている。
【0046】
図2に示すように、一例として、ガイド装置12において二対のガイド部材36、37の間の間隙をそれぞれ調整すれば、無端ベルト43上を搬送されるトウバンド103A、103Bの蛇行の振動幅W1、W2を調整できる。これにより、乾燥装置13におけるトウバンド103A、103Bの乾燥時間を変更でき、トウバンド103A、103Bに含まれる水の残留量を調整できる。トウバンド103A、103Bの蛇行の振動幅を増大させるほど、乾燥装置13におけるトウバンド103A、103Bの乾燥時間が長くなり、トウバンド103A、103Bに含まれる水の残留量を減少できる。また、トウバンド103A、103Bの蛇行の振動幅を減少させるほど、乾燥装置13におけるトウバンド103A、103Bの乾燥時間が短くなり、トウバンド103A、103Bに含まれる水の残留量を増大できる。このような調整は、トウバンド103A、103Bの少なくとも一方に行うことができる。
【0047】
図1に示すように、梱包装置14は、トウバンド103を梱包する。梱包装置14は、一対のローラ44、45を有し、乾燥装置13を通過したトウバンド103をローラ44、45の間に挿通させ、ベール状に折り畳んで圧縮することにより、トウバンド103を梱包容器26に梱包する。
【0048】
第1検出装置D1及び第2検出装置D2は、トウバンド製造装置1における搬送経路の所定位置に配置され、所定位置のヤーン束102またはトウバンド103に含まれる水分量を検出する。具体的に、第1検出装置D1は、各ヤーン束102の各搬送経路Lに対応する位置にそれぞれ配置され、ヤーン束102に含まれる水分量を検出する。また、第2検出装置D2は、乾燥装置13を通過した複数種類のトウバンド103のそれぞれに対応する位置に配置され、各トウバンド103に含まれる水の残留量を検出する(
図2参照)。第1検出装置D1及び第2検出装置D2は、一例として赤外線センサであるが、その他のセンサでもよいし、近赤外線分光光度計でもよい。
【0049】
制御装置15は、トウバンド製造装置1の各部の動作を制御し、また、第1検出装置D1及び第2検出装置D2の各検出結果を表示部50に表示する。
図3は、トウバンド製造装置1の機能ブロック図である。
図3に示すように、制御装置15は、表示部50、CPU51、ROM52、及び、RAM53を有する。表示部50は、一例として液晶ディスプレイであり、制御装置15の筐体のオペレータが視認可能な位置に設けられる。ROM52には、トウバンド製造装置1の制御プログラムが格納されている。RAM53には、オペレータが設定した各種設定情報が格納されている。CPU51は、制御プログラム及び各種設定情報に基づき、オイリング装置5、ゴデットローラ6、一対のニップローラ20、21、揺動装置用モータM1、及び、搬送装置用モータM2の各々の駆動を制御する。またCPU51は、制御プログラムに基づき、第1検出装置D1及び第2検出装置D2の検出結果を表示部50に表示する。従って、表示部50に表示された検出結果を確認することで、オペレータは、第1検出装置D1に対応する位置のヤーン束102に含まれる水分量と、第2検出装置D2に対応する位置のトウバンド103に含まれる水の残留量とを知ることができる。なお、制御装置15は、パーソナルコンピュータ(PC)でもよい。
【0050】
トウバンド製造装置1の稼働時には、水添着装置9で水を添着された各ヤーン束102が捲縮装置10で捲縮され、複数種類のトウバンド103が形成される。複数種類のトウバンド103は、各搬送経路Lを蛇行して搬送されながら単一の乾燥装置13で乾燥される。これにより、各トウバンド103に含まれる水の一部を除去する除去工程が行われる。乾燥装置13を通過した各トウバンド103に含まれる水の残留量が、各第2検出装置D2により検出され、CPU51が、この各検出結果を表示部50に表示させる。これにより、各トウバンド103の水の残留量の検出工程が行われる。いずれかのトウバンド103に含まれる水の残留量が、その目標値とずれていることをオペレータが確認した場合、オペレータは、ガイド装置12において、このトウバンド103の搬送路を規定する一対のガイド部材36、37のステージ部35に対する位置を調整し、トウバンド103の蛇行の振動幅を調整する。これにより、乾燥装置13を通過した複数種類のトウバンド103のうちのいずれかのトウバンド103に含まれる水の残留量が目標値となるように、当該トウバンド103の蛇行の振動幅を調整する調整工程が行われる。
【0051】
このようにトウバンド製造装置1では、乾燥装置13を通過した各トウバンド103に含まれる水の残留量が、各第2検出装置D2で個別にかつ精度よく検出され、この各検出結果が表示部50に表示される。従ってオペレータは、表示部50に表示された各検出結果に基づいて、乾燥装置13を通過した各トウバンド103に含まれる水の残留量を個別にかつ迅速にチェックできる。また、乾燥装置13を通過したいずれかのトウバンド103に含まれる水の残留量が目標値とずれている場合、オペレータは、ガイド装置12において、当該トウバンド103の蛇行の振動幅を調整することで、乾燥装置13を通過した当該トウバンド103に含まれる水の残留量が目標値となるように、容易に調整できる。
【0052】
ここで、例えばFDまたはTDのいずれかが異なる複数種類のトウバンド103を乾燥させる場合、各トウバンド103に含まれる水の残留量の目標値が互いに異なるため、単一の乾燥装置で並行して複数種類のトウバンド103を適切に乾燥することは一般に困難である。これに対してトウバンド製造装置1では、ガイド装置12において、各トウバンド103の蛇行の振動幅を個別に調整できる。よって、複数種類のトウバンド103を単一の乾燥装置13を用いて並行して乾燥させる場合でも、各トウバンド103に含まれる水の残留量がそれぞれに応じて適量になるように、各トウバンド103を適切に乾燥させることができる。
【0053】
また、トウバンド製造装置1では、複数の揺動装置11の揺動部32に各トウバンド103を接触させ、各トウバンド103を蛇行させた状態で搬送装置40に搬送させる。このため乾燥装置13において、各トウバンド103を搬送方向上流側から効率よく乾燥させることができる。
【0054】
また、左右方向に間隔をおいて設けられた複数の揺動装置11を用いて、各トウバンド103を並列させて蛇行させた状態で搬送装置40に搬送させる。このため、各トウバンド103が互いに干渉するのを防止しながら、各トウバンド103を並行して効率よく乾燥させることができる。
【0055】
また、トウバンド製造装置1では、各トウバンド103を乾燥させるために単一の乾燥装置13を用いる。このため、各トウバンド103の生産コストの低減が図れるとともに、トウバンド製造装置1をコンパクトに構成することができる。
【0056】
なお、トウバンド製造装置1は、複数の乾燥装置13を備えてもよい。この場合、各乾燥装置13で複数種類のトウバンド103を並行して乾燥させることができる。また、トウバンド製造装置1で製造するトウバンドの用途は、シガレットフィルターの製造用途に限定されず、例えば、紙オムツや生理用品等の吸収体(吸収部材とも称する。)の製造用途でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明の一態様によれば、複数種類のトウバンドを並行して製造する場合において、単一の乾燥装置を用いながら、各トウバンドに含まれる水の残留量がそれぞれに応じて適量になるように、各トウバンドを並行して乾燥できる優れた効果を有する。従って、この効果の意義を発揮できるトウバンドの製造方法及びトウバンド製造装置として広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0058】
D1 第1検出装置
D2 第2検出装置
1 トウバンド製造装置
11 揺動装置
13 乾燥装置
32 揺動部
36、37 ガイド部材
40 搬送装置
50 表示部
100 フィラメント
103、103A、103B トウバンド