特許第6243596号(P6243596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243596
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 15/06 20060101AFI20171127BHJP
   B61F 1/10 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B61D15/06
   B61F1/10
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-243390(P2012-243390)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-91430(P2014-91430A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平嶋 利行
(72)【発明者】
【氏名】本間 志郎
(72)【発明者】
【氏名】永原 斉
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−001178(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/136514(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/098177(WO,A1)
【文献】 特開2008−126856(JP,A)
【文献】 特開2011−235731(JP,A)
【文献】 実開平02−127586(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0019703(US,A1)
【文献】 特表2012−502833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 15/06
B61F 1/10
B61G 11/16
F16F 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠と、前記台枠に設けられたエネルギー吸収体と、を備え、
前記台枠は、前記台枠の車両長手方向の端部にて車幅方向に延びる第1端梁と、前記第1端梁よりも車両長手方向の内方にて車幅方向に延びる第2端梁と、前記第1端梁と前記第2端梁とを接続するスライディング中梁と、台車が取り付けられる枕梁と、を有し、
前記スライディング中梁は、前記第1端梁側に接続される第1梁部材と、前記第2端梁側に接続される第2梁部材と、前記第1梁部材を前記第2梁部材に結合する結合部材と、を有し、前記結合部材は、所定荷重を超える衝撃荷重が作用したときに破断して、前記第1梁部材を前記第2梁部材に対してスライド可能にし、
前記エネルギー吸収体は、前記第1端梁から第2端梁に伝達する衝撃荷重によるエネルギーを吸収するように前記台枠に設けられ、
記エネルギー吸収体は、前記第1端梁と前記第2端梁との間の領域に配置され、前記第1梁部材と前記第2梁部材と前記結合部材との全体が、前記第1端梁と前記第2端梁との間の領域に配置されている、鉄道車両。
【請求項2】
車体の車両長手方向の端部に設けられる妻構体を更に備え、
前記台枠は、車幅方向両側にて車両長手方向に延びる一対の側梁を更に有し、
前記第1端梁は、前記一対の側梁の長手方向の端部から車両長手方向の外方に離れて配置され、かつ、前記妻構体の下端部が接続され、
前記第2端梁は、前記一対の側梁の長手方向の端部同士を車幅方向に連結している、請求項1に記載の鉄道車両。
【請求項3】
隣接する鉄道車両同士を連結するための連結器を更に備え、
前記連結器は、前記第2端梁に取り付けられている、請求項2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記スライディング中梁の前記第1端梁側の端部における側壁の少なくとも一方の面は、前記妻構体の妻柱の車両長手方向に延びる面と略同一平面上にある、請求項2又は3に記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記台枠は、前記枕梁に対して前記第2端梁をスライド不能に接続する非スライディング中梁を更に有し、
前記スライディング中梁の前記第2端梁側の端部における側壁の少なくとも一方の面は、前記非スライディング中梁の前記第2端梁側における側壁の面と略同一平面上にある、請求項1乃至4のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記非スライディング中梁は、車幅方向において一対設けられており、
前記一対の非スライディング中梁の車幅方向の間隔が前記第2端梁から前記枕梁に向けて拡がるように、前記非スライディング中梁が平面視で車両長手方向に対して斜めに配置されている、請求項5に記載の鉄道車両。
【請求項7】
前記エネルギー吸収体は、前記第1端梁側に接続される第1パイプと、前記第2端梁側に接続される第2パイプと、を有し、前記第1パイプ及び前記第2パイプのうち何れか一方のパイプの拡径した端部に何れか他方のパイプの端部が嵌合しており、
前記スライディング中梁は、車幅方向に一対設けられており、前記エネルギー吸収体は、前記一対のスライディング中梁の間に配置されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項8】
前記第1パイプ及び前記第2パイプのうち前記何れか一方のパイプは、本体部と段差部とを有し、
前記本体部は、前記段差部によって前記第1パイプ及び前記第2パイプのうち前記何れか一方のパイプの前記端部と接続されており、
前記エネルギー吸収体は、前記段差部と、前記第1パイプ及び前記第2パイプのうち何れか他方のパイプの端部との間に隙間を有する、請求項7に記載の鉄道車両。
【請求項9】
台枠と、前記台枠に設けられたエネルギー吸収体と、車体の車両長手方向の端部に設けられる妻構体と、を備え、
前記台枠は、前記台枠の車両長手方向の端部にて車幅方向に延びる第1端梁と、前記第1端梁よりも車両長手方向の内方にて車幅方向に延びる第2端梁と、前記第1端梁と前記第2端梁とを接続するスライディング中梁と、台車が取り付けられる枕梁と、を有し、
前記スライディング中梁は、前記第1端梁側に接続される第1梁部材と、前記第2端梁側に接続される第2梁部材と、前記第1梁部材を前記第2梁部材に結合する結合部材と、を有し、前記結合部材は、所定荷重を超える衝撃荷重が作用したときに破断して、前記第1梁部材を前記第2梁部材に対してスライド可能にし、
前記エネルギー吸収体は、前記第1端梁から第2端梁に伝達する衝撃荷重によるエネルギーを吸収するように前記台枠に設けられ、
記エネルギー吸収体は、前記第1端梁と前記第2端梁との間の領域に配置され、前記第1梁部材と前記第2梁部材と前記結合部材との全体が、前記第1端梁と前記第2端梁との間の領域に配置されており、
前記第1端梁は、前記妻構体の下端部が接続されている、鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃から客室を保護することができる車体を備えた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、妻構体に大きな外力が加わったときに客室を保護することができる車体構造を備えた鉄道車両が提案されている。その車体構造では、車体台枠の端部にクラッシャブルゾーンを介して端梁が設けられ、その端梁に妻構体が接合されている。クラッシャブルゾーンには、端梁の中央部から台車が取り付けられる枕梁に向けて突出したスライド中梁が設けられており、そのスライド中梁は、枕梁側に設けられたガイド中梁に案内された状態でヒューズ部材によりガイド中梁に接合されている。そして、枕梁(及びガイド中梁)の端面には、衝撃吸収部材の一端部が取り付けられており、その衝撃吸収部材の他端部がスライド中梁(及び端梁)に向けられている。このような車体構造によれば、妻構体に所定荷重を超える荷重が作用したとき、ヒューズ部材が破断してスライド中梁がガイド中梁に案内され、妻構体が車体後方に向けて移動するとともに、その荷重が衝撃吸収部材により吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−235731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車体構造では、台枠の側梁の先端部に接続された車幅方向に延びる梁が車幅方向中央部で分断されており、スライド中梁がその分断部分を通って車体長手方向内方の領域に大きく進入し、更に枕梁とスライド中梁との間には衝撃吸収部材が配置されている。そうすると、衝撃吸収時において、スライド中梁が台枠の客室に対応する領域で動作し、枕梁に設けた衝撃吸収部材が破壊されるため、変形が客室に及び易くなる。
【0005】
そこで本発明は、車体の客室を保護する性能を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鉄道車両の車体は、台枠と、前記台枠に設けられたエネルギー吸収体と、を備え、前記台枠は、前記台枠の車体長手方向の端部にて車幅方向に延びる第1端梁と、前記第1端梁よりも車体長手方向の内方にて車幅方向に延びる第2端梁と、前記第1端梁と前記第2端梁とを接続するスライディング中梁と、を有し、前記スライディング中梁は、前記第1端梁側に接続される第1梁部材と、前記第2端梁側に接続される第2梁部材と、前記第1梁部材を前記第2梁部材に結合する結合部材と、を有し、前記結合部材は、所定荷重を超える衝撃荷重が作用したときに破断して、前記第1梁部材を前記第2梁部材に対してスライド可能にし、前記エネルギー吸収体は、前記第1端梁から第2端梁に伝達する衝撃荷重によるエネルギーを吸収するように前記台枠に設けられ、前記スライディング中梁及び前記エネルギー吸収体は、前記第1端梁と前記第2端梁との間の領域に配置されている。
【0007】
前記構成によれば、第1端梁と第2端梁とを接続するスライディング中梁が、第1端梁側に接続される第1梁部材と、第2端梁側に接続される第2梁部材とを有し、スライディング中梁及びエネルギー吸収体は、第1端梁と第2端梁との間の領域に配置されている。そうすると、衝撃吸収時には、第1梁部材が第2梁部材に対してスライドしてエネルギー吸収体が破壊されても、スライディング中梁及びエネルギー吸収体は、第1端梁と第2端梁の領域に収まっているため、変形が客室に及びにくくなる。特に、第1端梁と第2端梁間の領域には出入台やトイレ、各種機器が設置されるため、衝撃による客室への影響を少なくすることができる。したがって、車体の客室を保護する性能を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、車体の客室を保護する性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る鉄道車両を示す側面図である。
図2図1の鉄道車両の車体を示す正面図である。
図3図1の鉄道車両の車体の台枠及びエネルギー吸収体を示す平面図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
図5図3のV−V線断面図である。
図6図4のVI−VI線断面図である。
図7図3に示すエネルギー吸収体の断面図である。
図8】第2実施形態に係る鉄道車両の図3相当の図面である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両1を示す側面図である。図2は、図1の鉄道車両1の車体2を示す正面図である。図1に示すように、第1実施形態の鉄道車両1は、乗客が搭乗する客室を有する車体2と、車輪3aが設けられて枕バネ4を介して車体2を支持する台車3と、を備えている。車体2は、車体底部となる台枠6と、窓開口部7a及びドア開口部7bを有して台枠6の車幅方向の側部に下端部が接続された側構体7と、台枠6の車両長手方向の端部に下端部が接続された妻構体8と、側構体7及び妻構体8の上端部に接続された屋根構体9と、を備えている。ドア開口部7bは、側構体7において台車3よりも車両長手方向外方に位置している。車体10の内部空間には、ドア開口部7bよりも車両長手方向内方において乗客用の座席10が配置されている。また、台枠6の車両長手方向の端部には、隣接する車両同士を連結するための連結器5が設けられており、連結器5は、妻構体8よりも車両長手方向外方に向けて突出している。図2に示すように、妻構体8は、車幅方向両端部において鉛直方向に延びる一対の隅柱11と、隅柱11よりも車幅方向内方において第1端梁22から屋根構体9に向けて延びる一対の妻柱12と、隅柱11と妻柱12とを車幅方向に接続する補強梁13と、を備えている。
【0012】
図3は、図1の鉄道車両1の車体2の台枠6及びエネルギー吸収体31を示す平面図である。図4は、図3のIV−IV線断面図である。図5は、図3のV−V線断面図である。図6は、図4のVI−VI線断面図である。図7は、図3に示すエネルギー吸収体31の断面図である。以下では、図3を主に参照しながら適宜図4〜7を参照して説明する。図3に示すように、台枠6は、車幅方向に対称に形成されている。台枠6は、その車幅方向両側にて車両長手方向に延びる一対の側梁21と、台枠6の車両長手方向の端部にて車幅方向に延びる第1端梁22と、第1端梁22よりも車両長手方向の内方にて車幅方向に延びる第2端梁23と、第1端梁22と第2端梁23とを接続する左右一対のスライディング中梁24と、を有している。
【0013】
第1端梁22は、一対の側梁21の長手方向の端部から車両長手方向の外方に離れて配置されている。第1端梁22は、隅柱11を固定するための一対の第1切欠部22aと、妻柱12を固定するための一対の第2切欠部22bとを有している。第1切欠部22aは、第1端梁22の車幅方向両端部に形成され、車両長手方向の外方及び車幅方向の外方に向けて開口している。第2切欠部22bは、第1切欠部22aよりも車幅方向内方に形成され、車両長手方向の外方に向けて開口している。そして、第1切欠部22a及び第2切欠部22bに、隅柱11及び妻柱12の下端部がそれぞれ嵌合されて溶接等により接続されている。
【0014】
第2端梁23は、一対の側梁21の長手方向の端部同士を車幅方向に連結しており、片側の側梁21から他側の側梁21まで連続して直線状に延びている。第2端梁23は、台車(図1参照)の車両長手方向外側の車輪3aよりも車両長手方向の外方に配置されている。第1端梁22の車両長手方向外方の端面から第2端梁23の車両長手方向外方の端面までの距離L1は、第2端梁23の車両長手方向外方の端面から枕梁25の車両長手方向外方の端面までの距離L2よりも短い。そして、車体2(図1参照)の内部空間のうち第1端梁22と第2端梁23との間の領域の直上の空間には、乗客用の座席が配置されておらず、座席10(図1参照)は第2端梁23よりも車両長手方向内方の空間にのみ配置されている。
【0015】
スライディング中梁24は、第1端梁22に溶接等で固定され、車両長手方向の長さがLaである第1梁部材27と、第2端梁23に溶接等で固定され、車両長手方向の長さがLbである第2梁部材28と、第1梁部材27を第2梁部材28に結合する結合部材29と、を有している。第1梁部材27及び第2梁部材28は、四角筒形状である(図6参照)。第1梁部材27及び第2梁部材28の互いに対向する端部27a,28aは、互いに嵌合されている。その嵌合部分において、第1梁部材27及び第2梁部材28に複数の孔27c,28c(図6参照)が形成されており、それらの互いに連通する孔27c,28cに結合部材29(例えば、リベット、ボルト、ネジ等)が挿通され、第1梁部材27が第2梁部材28に締結されている。結合部材29は、第1端梁22に車両長手方向に内方に向けて所定荷重を超える衝撃荷重が作用したときに、その衝撃荷重により破断する強度に設定されている。
【0016】
第1梁部材27の車両長手方向外方の端部27bは、第1端梁22に溶接等で固定されている。第1梁部材27の第1端梁22に固定された端部27bにおける側壁の少なくとも一方の面は、妻柱12の車両長手方向に延びる面と略同一平面上にある。即ち、スライディング中梁24は、妻柱12に作用する前方(図3の右方)からの衝撃荷重を直接的に受けるようになっている。第2梁部材28の車両長手方向内方の端部28bは、第2端梁23に溶接等で固定されている。第2梁部材28の端部28bの車幅方向内側の側壁28dは、第2端梁23に向かうにつれて第2梁部材28の幅が拡がるように車幅方向内側に向けて斜めに傾斜している。第2梁部材28の端部28bの車幅方向外側の側壁28eは、車両長手方向に沿って直線状に形成されている。
【0017】
一対のスライディング中梁24の間で且つ第1端梁22と第2端梁23との間には、第1端梁22から第2端梁23に伝達する衝撃荷重によるエネルギーを吸収するための複数のエネルギー吸収体31が平行に配置されている。エネルギー吸収体31は、本例では3つ設けられており、それらの間には所定の隙間が形成されている。エネルギー吸収体31は、その車両長手方向外方の端部32aが第1端梁22に溶接等で固定された第1パイプ32と、その車両長手方向内方の端部33aが第2端梁23に溶接等で固定された第2パイプ33と、を備えている。第1パイプ32及び第2パイプ33は、その軸線方向が車両長手方向に一致した円筒管であり、その長手方向の長さはそれぞれLcである。
【0018】
第1パイプ32は、一定の径を有する本体部32dと、第2パイプ33に対向する端部であって本体部32dよりも径が大きく一定の径を有する大径部32bと、本体部32dを大径部32bに連続させる段差部32cと、を有している。即ち、大径部32bが第1パイプ32の拡径した端部である。第2パイプ33は、第1パイプ32の本体部32dと同じ径を有しており、第2パイプ33の第1パイプ32と対向する端部33bが第1パイプ32の大径部32bに嵌合されている(図7参照)。第2パイプ33の端部33bと第1パイプ32の段差部32cとの間には隙間G1が形成されている。この隙間G1の車両長手方向の距離L3は、結合部材29のうち第1梁部材27及び第2梁部材28の孔27c,28cに挿入された部分の外径(車両長手方向の大きさ)よりも大きく設定されている。
【0019】
台枠6は、枕バネ4を介して台車3が取り付けられる枕梁25と、枕梁25に対して第2端梁23をスライド不能に接続する左右一対の非スライディング中梁26と、を有している。一対の非スライディング中梁26は、平面視で車両長手方向に対して斜めに配置され、その車幅方向の間隔が第2端梁23から枕梁25に向けて拡がるようになっている。枕梁25は、その車幅方向両端部に設けられて枕バネ4の上に取り付けられる取付部25aと、それら取付部25aを繋ぐように車幅方向に延びる連結部25bとを有している。取付部25aは、連結部25bよりも車幅方向の幅が大きく形成されている。取付部25aのうち非スライディング中梁26の端部26aが固定される側面25cは、車幅方向に対して傾斜しており、その側面25cの法線方向が非スライディング中梁26の延在方向に一致している。
【0020】
スライディング中梁24の第2端梁23側の端部24bにおける側壁の少なくとも一方の面は、非スライディング中梁26の第2端梁23側における側壁の面と略同一平面上にある。本例では、スライディング中梁24の端部28bの両側壁は、車幅方向位置において、非スライディング中梁26の端部26bの両側壁と一致している。非スライディング中梁26の端部26bの車幅方向外側の側壁26cは、第2端梁23に向かうにつれて非スライディング中梁26の幅が拡がるように非スライディング中梁26の延在方向に対して斜めに傾斜している。本例では、非スライディング中梁26の端部26bの車幅方向外側の側壁26cは、車両長手方向に沿う方向に延びている。非スライディング中梁26の端部26bの車幅方向内側の側壁26dは、非スライディング中梁26の延在方向に沿って直線状に形成されている。
【0021】
図4及び5に示すように、非スライディング中梁26の車両長手方向外方の端部26bは、その下壁部26eが非スライディング中梁26の上下寸法を拡大するように下方に湾曲している。そして、非スライディング中梁26の端部26bには、第2端梁23の下側において、連結器5を取り付けるための取付部35aが形成された取付板35が固定されている。即ち、連結器5は、第1端梁22ではなく第2端梁23に接続されている。取付板35は、正面視においてスライディング中梁24の下方位置まで達するように横長となっている。取付板35の前面及びスライディング中梁24の下面には、三角形状のガセット板36が溶接等で固定されている。
【0022】
図3に示すように、台枠6には、配線及び配管の少なくとも一方である線状体40が車幅方向中央位置において車両長手方向に沿って設けられている。線状体40は、枕梁25に設けられたガイド通路25eを通っている。そして、線状体40は、平面視において台車3(図1参照)の車両長手方向外方の車輪3aを越えて第2端梁23の近傍まで台枠6に沿って車両長手方向に向けて設けられ、さらに、その車両長手方向外方では、適宜下方や側方に方向を変えながら車端部に配置されたターミナルボックス等に向けて配設される。
【0023】
次に、本実施形態の鉄道車両1における衝撃吸収動作について説明する。鉄道車両1に前方(図3の右方)から他の鉄道車両(以下、単に「相手方車両」という)が衝突する場合、先ず、連結器5(図1参照)に相手方車両が衝突する。そのとき、連結器5は、第2端梁23に取り付けられているため、第1端梁22、スライディング中梁24及びエネルギー吸収体31に直接的に衝撃を伝達することなく、連結器5が破壊されることとなる。次いで、その相手方車両は、妻柱12や第1端梁22に衝突して、その衝撃が結合部材29に伝達され、所定以上の衝撃荷重により結合部材29が破断する。ここで、結合部材29は、自身が破断する際、加わった衝撃荷重を僅かながら吸収する。
【0024】
第2パイプ33の端部33bと第1パイプ32の段差部32cとの間には、所定の隙間G1が形成されているので、エネルギー吸収体31が結合部材29の破断に対する抵抗になることが防がれる。即ち、エネルギー吸収体31は、結合部材29が破断するまで第1端梁22を第2端梁23に向かって移動させるための不感帯(遊び)を有している。そして、結合部材29が破断することで、第1梁部材27が第2梁部材28に対してスライド可能となる。これにより、スライディング中梁24が車両長手方向に収縮し、第1端梁22が姿勢を保ったまま第2端梁23に近づくように移動する。
【0025】
このとき、エネルギー吸収体31は、第1端梁22と第2端梁23との間で押し潰されるように変形し、衝撃荷重によるエネルギーが吸収されることとなる。具体的には、第1パイプ32及び第2パイプ33が軸線方向に潰れるだけでなく、第2パイプ33の端部33b(図7参照)が第1パイプ32の本体部32dを径方向に押し拡げるようにも作用することで、エネルギーが効果的に吸収されることになる。そして、スライディング中梁24がスライド収縮してエネルギー吸収体31が押し潰された後でも、スライディング中梁24及びエネルギー吸収体31は、第1端梁22と第2端梁23との間の領域に配置されたままとなる。
【0026】
以上に説明した構成によれば、スライディング中梁24及びエネルギー吸収体31が、第1端梁22と第2端梁23との間の領域に配置されており、衝撃吸収時において、第1梁部材27が第2梁部材28に対してスライドしてエネルギー吸収体31が破壊されても、スライディング中梁24及びエネルギー吸収体31は、台枠6の第2端梁23よりも車両長手方向内方の領域にないため、変形が客室に及びにくくなる。ゆえに、車体2の客室を保護する性能を向上させることが可能となる。さらに、スライディング中梁24及びエネルギー吸収体31が台枠6の第2端梁23よりも車両長手方向内方の領域を占有せずに済むので、台枠6における配線等(線状体40)の設置作業性が良好になるとともに、客室空間が損なわれることもない。したがって、車体2における配線等の作業性及びスペース効率を改善しつつ、車体2の客室を保護する性能を向上させることが可能となる。
【0027】
また、連結器5が第2端梁23に取り付けられているため、連結器5に伝わる衝撃荷重がスライディング中梁24及びエネルギー吸収体31に直接的に伝達されることが防止される。よって、前方からの衝撃荷重は連結器5で受けた後に第1端梁22で受けることになり、多段階に衝撃吸収を行うことができる。また、連結器5を他の車両の連結器に正常に連結させるときの荷重も第1端梁22に直接的に伝達されることがないため、結合部材29に繰り返し応力が作用して疲労することも防止することができる。
【0028】
また、スライディング中梁24は、車幅方向位置において妻柱12と重なっているため、妻柱12が前方から受けた衝撃を円滑にスライディング中梁24に伝えることができる。さらに、非スライディング中梁26の第2端梁23側の端部26bは、車幅方向位置においてスライディング中梁24の第2端梁23側の端部28bと重なっているため、スライディング中梁24が受けた衝撃を円滑に非スライディング中梁26に伝えることができる。
【0029】
また、非スライディング中梁26は、平面視で車両長手方向に対して斜めに配置されており、非スライディング中梁26の車両長手方向内方の端部26aは、枕梁25のうち側梁21に接続された幅広の取付部25aに固定されているため、非スライディング中梁26に伝達された衝撃を枕梁25等で安定して受け止めることができる。
【0030】
また、図3に示すように、本実施の形態では、第1梁部材27の長さLaと、第2梁部材28の長さLbと、エネルギー吸収体31の長さLcとは、いずれも等しい長さとしている。これにより、衝撃吸収要素として必要なストロークを確保しつつ、第1端梁22と第2端梁23との間の限られたスペースを最大限に活用することができる。
【0031】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る鉄道車両の図3相当の図面である。図9は、図8のIX-IX線断面図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図8及び9に示すように、第2実施形態の鉄道車両では、平面視で台形状のエネルギー吸収体131が用いられている。エネルギー吸収体131は、一対のスライディング中梁24の間で且つ第1端梁22と第2端梁23との間に配置され、第1端梁22から第2端梁23に伝達する衝撃荷重によるエネルギーを吸収する。エネルギー吸収体131は、四角筒状であり、平面視で台形形状を呈し、車両長手方向内方に向かって徐々に幅が狭まっている。第2梁部材28の端部28bの車幅方向内側の側壁は、第2端梁23に向かうにつれて第2梁部材28の幅が拡がるように車幅方向内側に向けて斜めに傾斜しているので、平面視台形状のエネルギー吸収体131の幅広の一端部131aを第1端梁22側に配置することで、スペース効率良くエネルギー吸収体131をレイアウトすることができる。
【0032】
エネルギー吸収体131の車両長手方向外方の幅広の一端部131aは、第1端梁22に溶接等で固定されている。エネルギー吸収体131の車両長手方向内方の幅狭の他端部131bは、第2端梁23から車両長手方向外方に突出した上下一対の案内板123の間に摺動自在に挟まれている。そして、エネルギー吸収体131の他端部131bは、第2端梁23との間に所定の隙間G2をあけている。この隙間G2の車両長手方向の距離L4は、結合部材29のうち第1梁部材27及び第2梁部材28の孔27c,28cに挿入された部分の外径(車両長手方向の大きさ)よりも大きく設定されている。この隙間G2の存在により、エネルギー吸収体131が結合部材29の破断に対する抵抗になることが防がれる。即ち、エネルギー吸収体131は、結合部材29が破断するまで第1端梁22を第2端梁23に向かって移動させるための不感帯(遊び)を有している。
【0033】
そして、結合部材29が破断して第1梁部材27が第2梁部材28に対してスライドすることで、エネルギー吸収体131の他端部131bが第2端梁23に突き当たり、第1端梁22と第2端梁23との間でエネルギー吸収体131が挟まれて潰れることでエネルギーが吸収される。この際、上下一対の案内板123が設けているので、エネルギー吸収体131の他端部131bが第2端梁23から上下にずれてしまうことが防止され、安定してエネルギー吸収動作が行われることになる。なお、エネルギー吸収体131を構成する板には、反力特性等を考慮し、必要に応じて穴をあけてもよく、また、四角筒内に仕切壁を設けてもよい。
【0034】
なお、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。例えば、スライディング中梁24の結合部材29は、リベット等の締結部材の代わりに溶接材を用いてもよい。即ち、第1梁部材27と第2梁部材28とを局所的に溶接して、所定荷重を超える衝撃荷重が作用したときに溶接個所が破断するようにしてもよい。また、スライディング中梁24及びエネルギー吸収体31は、第1端梁22及び第2端梁23に対して直接固定されているが、その間に別部材を介在させてもよい。また、エネルギー吸収体31と同様にエネルギー吸収要素として作用する部材を第2梁部材28に内蔵させてもよい。
【0035】
さらに、上記の実施形態において、鉄道車両1は列車編成において中間車両に適用した場合について説明したが、先頭車両に適用してもよい。また、非スライディング中梁26は、平面視で車両長手方向に対して斜めに配置したが、第2端梁23及び枕梁25と直交する方向に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明に係る鉄道車両は、好適に衝撃から客室を保護することができる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できる鉄道車両に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0037】
1 鉄道車両
2 車体
3 台車
5 連結器
6 台枠
8 妻構体
12 妻柱
21 側梁
22 第1端梁
23 第2端梁
24 スライディング中梁
25 枕梁
26 非スライディング中梁
27 第1梁部材
28 第2梁部材
29 結合部材
31 エネルギー吸収体
32 第1パイプ
33 第2パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9