特許第6243610号(P6243610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243610駐車ブレーキによって加えられるクランプ力を提供する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243610
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】駐車ブレーキによって加えられるクランプ力を提供する方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20171127BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B60T7/12 A
   B60T13/74 G
【請求項の数】13
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-34416(P2013-34416)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2013-173525(P2013-173525A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2016年2月18日
(31)【優先権主張番号】10 2012 202 960.5
(32)【優先日】2012年2月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ベールレ−ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ブラッテルト
(72)【発明者】
【氏名】フーベルトゥス・ヴィエンケン
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/019821(WO,A1)
【文献】 特開2009−280083(JP,A)
【文献】 特表2005−507823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60T 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車ブレーキ(1)によって生成されるクランプ力(Fkl)を提供する方法であって、
路面勾配を測定し、該路面勾配が閾値を超過した場合に、所定期間の経過後に前記クランプ力を新たに生成して再締付けプロセスを実施する方法において、
前記路面勾配の閾値を前記駐車ブレーキ(1)の状態変数またはパラメータに関連付けて決定し、前記測定した路面勾配を少なくとも3つの勾配範囲に区別し、前記区別した勾配範囲に応じて異なる前記再締付けプロセスを実施する
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
電気ブレーキモータ(3)を備える電気機械式ブレーキ装置によって前記クランプ力(Fkl)を少なくとも部分的に生成する
方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記再締付けプロセスにおいて前記電気ブレーキモータ(3)を新たに作動させる
方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記路面勾配が閾値を超過していない場合には、前記再締付けプロセスを実施しない
方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の方法であって、
少なくとも3つの勾配範囲を区別し、上側および中間の勾配範囲で前記再締付けプロセスを実施する
方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の方法であって、
固定された所定期間の終了後に前記再締付けプロセスを実施する
方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の方法であって、
前記再締付けプロセスの実施前の期間を、前記駐車ブレーキ(1)の状態変数またはパラメータに関係付ける
方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の方法であって、
前記駐車ブレーキ(1)に、追加クランプ力を生成するための追加ブレーキ装置を設ける
方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記追加ブレーキ装置を液圧車両ブレーキとする
方法。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の方法であって、
前記再締付けプロセスの実施前の期間を、液圧車両ブレーキの液圧に関係付ける
方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の方法であって、
車両の移動が確認された場合にのみ前記再締付けプロセスを実施する
方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の方法を実施するための閉ループ制御器または開ループ制御器。
【請求項13】
請求項12に記載の閉ループ制御器または開ループ制御器を備える車両の駐車ブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両で駐車ブレーキによって加えられるクランプ力を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を停止状態で固定するためのクランプ力を生成するためにブレーキピストンを、ブレーキパッドを介してブレーキディスクに対して押し付ける電気ブレーキモータを備える電気機械式駐車ブレーキが既知である。このような駐車ブレーキがドイツ国特許第10361042号明細書に記載されている。
【0003】
ブレーキディスクは、一般に液圧車両ブレーキによっても負荷が加えられる。ブレーキ使用頻度が高い場合には、ブレーキディスクは高温に達し、熱により膨張する。この状態で駐車ブレーキが操作されると、ブレーキディスクの冷却時にクランプ力が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ国特許第10361042号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎をなす課題は、簡単な措置によって、ブレーキディスクの温度が高い場合にも車両のための駐車ブレーキの正常な機能を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、出願時の請求項1に記載の特徴によって解決される。従属請求項は好適な実施形態を示す。
【0007】
本発明による方法は、目標クランプ力を生成するためのブレーキ装置を備える駐車ブレーキに関連する。ブレーキ装置は、例えば、電気機械式に構成されており、電気機械的な方式で目標クランプ力を生成するための電気ブレーキモータを含んでいてもよい。クランプ力は、ブレーキモータのロータの回転運動により生成され、回転運動は、アクチュエータの作動に変換され、アクチュエータの作動により、ブレーキパッドの支持体であるブレーキピストンがブレーキディスクに向けて軸線方向に押圧される。
【0008】
ブレーキディスク温度の検出とは無関係に全てのブレーキディスク温度で十分に高いクランプ力を提供するために、車両を固定するクランプ力を提供するための本発明による締付けプロセスは、車両を停止した路面勾配に応じて実施される。路面勾配が、割り当てられた閾値を超過した場合には、所定期間の経過後に、好ましくは、電気ブレーキモータの操作によって、または場合によってはその他のブレーキ装置、例えば液圧車両ブレーキなどの追加ブレーキ装置の操作によって、クランプ力を新たに生成するために再締め付けプロセスが実施される。
【0009】
この方式は様々な利点を有する。好ましい実施形態によれば、路面勾配閾値を超過した場合にのみ再締付けプロセスが実施され、路面勾配が、割り当てられた閾値を下回っている場合には、再締付けプロセスの回数を著しく減じることができ、これにより、駐車ブレーキの構成部品に加えられる負荷が著しく低減される。同時に、ブレーキ作動温度を測定する必要はなく、または、ブレーキ作動温度を温度モデルから推定する必要はなく、したがって、必要とされるセンサ装置にかかる手間が低減される。手間が低減されたのにもかかわらず、不注意による車両の転動に対する安全性は十分に高い。
【0010】
3つ以上の勾配範囲、例えば3つの異なる勾配範囲を区別し、それぞれの勾配範囲で駐車ブレーキを操作するために異なる措置がとられることは好適である。路面勾配が、下側の第1閾値(例えば、5%の勾配であってもよい)を下回っている場合には、高い作動温度が生じていても再締付けプロセスを省略することができる。この場合、勾配は極わずかであり、ブレーキディスクの冷却に起因してクランプ力が低下した場合にも車両が移動し始める恐れはない。
【0011】
これに対して、路面勾配が、下側の第1閾値と上側の第2閾値との間に位置する場合、目標クランプ力を生成するための締付けプロセス終了後に車両が移動したか否かを付加的に監視することができる。締付けプロセス終了後に監視が行われる期間は、固定されているか、または、駐車ブレーキの1つ以上の状態変数もしくはパラメータに関係する。通常のブレーキ作動時に作用する液圧車両ブレーキも、同様に駐車ブレーキによって負荷が加えられるブレーキディスクに作用する場合には、この状態変数は、電気ブレーキモータの電気機械式に生成されたブレーキ力に加えて追加的な液圧クランプ力を生成する車両ブレーキの液圧であってもよい。液圧ブレーキ力は、停止状態および駐車ブレーキの操作の時点で運転手がブレーキペダルを操作するか、または、その他の形式で液圧により増大されたブレーキ圧が生成されることにより生じる。液圧の増大に応じて、電気ブレーキモータを介した最初の締付けプロセスの終了後に車両が移動したか否かの監視を行う期間は、より短くてもよい。例えば、ブレーキディスクの冷却および電気機械的に生成されたクランプ力の低下により車両が移動した場合、電気ブレーキモータは新たに操作され、これにより、駐車ブレーキが再び締め付けられる。
【0012】
代替的な実施形態によれば、一般に状態変数またはパラメータに関係した期間の経過後に電気ブレーキモータの操作による再締付けプロセスを実施することが好適である場合もある。
【0013】
路面勾配が上側の第2勾配閾値を超過した場合には、同様に目標クランプ力に到達するための最初の締付けプロセスの終了後に、所定の期間にわたって車両の移動が監視され、車両の移動が確認された場合には、電気ブレーキモータの新たな操作により再締付けが行われる。最初の締付けプロセスの終了に続く期間は、この場合、好適には状態変数またはパラメータに関係せず、固定された時間として規定されている。
【0014】
上側の勾配閾値を超過した場合にも、代替的な実施形態によれば、いずれの場合にも、すなわち、監視された時間内に車両の移動が確認されなかった場合にも、期間経過後に再締付けを行うことが好適である。
【0015】
本発明による方法によれば、温度情報が不要であるとう利点に加えて、本方法は、車両に連結された連結重量との関係が生じないという別の利点を有する。クランプ力を加えた後に監視される期間の閾値および/または路面勾配閾値は、基本的にはトレーラーの運転とは無関係である。
【0016】
しかしながら、代替的な実施形態によれば、トレーラー検出情報を使用することが好ましく、車両にトレーラーが連結されている場合には、期間および/または路面勾配の閾値を変更することが好ましい。
【0017】
駐車ブレーキの締付け後に監視または待機される期間の長さは、駐車ブレーキの1つ以上の状態変数またはパラメータの関数として決定することが好ましい。このことは、全体的な期間、すなわち、それぞれの所定の傾斜角範囲に割り当てられた期間についてもいえる。さらに駐車ブレーキの1つ以上の状態変数またはパラメータに関係付けて道路勾配のための閾値を決定することが好ましい場合もある。
【0018】
これに対して代替的に、道路勾配のための閾値は、固定値に設定される。
【0019】
本発明による方法は、駐車ブレーキの構成部材であってもよい車両の閉ループ制御器または開ループ制御器で実施される。
【0020】
さらなる利点および好ましい実施形態が、特許請求の範囲、図面に基づいた説明および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】車両を固定するクランプ力を生成するための電気ブレーキモータを備える車両のための電気機械式駐車ブレーキの断面図である。
図2】駐車ブレーキによって生成されるクランプ力を提供する方法ステップを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、車両の電気機械式の駐車ブレーキ1を示し、この駐車ブレーキによって、車両を静止状態で固定するクランプ力が生成可能である。駐車ブレーキ1は、ブレーキディスク10を覆うグリッパ9を有するブレーキキャリパ2を備える。電気モータとして構成されたブレーキモータ3が、駐車ブレーキ1のアクチュエータとして機能し、ブレーキモータ3は、スピンドル4を回転駆動し、スピンドル4では、スピンドル構成部材5が軸線方向に支承されている。スピンドル構成部材5は、スピンドル4が回転した場合に軸線方向に変位される。スピンドル構成部材5は、ブレーキピストン6の内部を移動し、ブレーキピストン6は、ブレーキパッド7の支持体である。ブレーキパッド7は、ブレーキピストン6によってブレーキディスク10に対して押圧される。ブレーキディスク10の向かい側には、グリッパ9で定置に保持された別のブレーキパッド8が配置されている。
【0023】
スピンドル構成部材5は、スピンドル4が回転運動した場合には、軸線方向前方へ、ブレーキディスクの方向へ移動し、スピンドル4が逆方向に回転運動した場合には、軸線方向後方へ、ストッパ11に到達するまでブレーキピストン6の内部を移動する。所望の目標クランプ力を生成するために、スピンドル構成部材5は、駐車ブレーキ1の内部で軸線方向に摺動可能に支承されたブレーキピストン6がブレーキパッド7を介してブレーキディスク10の向かい合った端面に対して押圧されるように、ブレーキピストン6の内側端面に作用する。
【0024】
図2には、駐車ブレーキによって加えられるクランプ力を提供するためのフロー図が示されている。この方法では、車両を停止した路面の勾配に関係して所定期間後に再締付けが行われる。
【0025】
まず、方法ステップ20で方法が開始され、車両の停止後に電気ブレーキモータの操作によって電気機械的クランプ力が生成される。目標クランプ力に到達すると、まず方法ステップ21に進められ、センサによって検出された情報に基づいて、車両を停止した路面の勾配が決定される。
【0026】
さらなる経過で、実際の道路勾配の度合に応じて異なるステップに分岐する。本実施例では、3つの道路勾配範囲が区別され、第1道路勾配範囲は、0°と下側の第1閾値(例えば、5°)との間であり、第2勾配範囲は、下側の第1閾値と上側の第2閾値(例えば、10°)との間であり、第3勾配範囲は、上側の第2閾値を超えた範囲である。3つの道路勾配範囲には、さらなる経過で3つの方法ブロック22,23および24が割り当てられている。
【0027】
方法ステップ21に従った判断において、実際の道路勾配が第1勾配範囲に位置することが確認された場合には、方法ステップ22に進められ、所定の短い期間、例えば10秒だけ、駐車ブレーキの機能を制御する閉ループ制御器もしくは開ループ制御器が制御され、作動状態のままで保持されるが、この期間にはさらなる処置はとられない。車両の突然の移動が監視されることも、さらに新たな締付けプロセスが実施されることもない。代替的な実施形態では、この期間に車両の移動を監視し、必要に応じて新たな締付けプロセスを実施してもよい。この期間の経過後には最後の方法ステップ25に進められ、方法はこのステップの実施により終了する。
【0028】
ステップ21の判断において、実際の道路勾配が真ん中の範囲に位置することがわかった場合には、方法ステップ23に進められ、目標クランプ力に到達するための最初の締付けプロセス後に、車両が誤って動き出したか否かがより長い期間にわたって監視される。この期間は、例えば、10分〜35分の範囲であり、通常のブレーキ作動時には、運転手によって操作されるか、または、車両を制動するための制御器を介して操作される標準的な液圧車両ブレーキの液圧に関係している。液圧は、ブレーキパッドの支持体であるとともにブレーキディスクに向けて押圧されるブレーキピストンに同様に作用する。最初の締付けの時点で生じた液圧は、液圧によるクランプ力をもたらし、このクランプ力は、電気ブレーキモータを介して生成される電気機械的なブレーキ力に加えられる。液圧が高い場合には、最初の締付けプロセス後に監視される期間を低減することができ、これに対して液圧が低い場合には、監視期間が延長される。
【0029】
これに対して、車両が誤って移動されたことが監視期間に確認された場合には、電気ブレーキモータの操作によって、追加的な電気機械的クランプ力を提供するために再締付けプロセスが実施される。この期間の経過後には、方法ステップ25に進められ、方法はこのプロセスの実施により終了する。
【0030】
方法ステップ21において、路面勾配が上側の第2閾値を超過していることが確認された場合には、方法ステップ24に進められ、所定期間にわたる目標クランプ力に到達するための最初の締付けプロセス後に、好適には液圧による予圧に左右されない、固定値として規定された所定期間だけ待機され、この期間の経過後に電気ブレーキモータが操作されることにより、自動的に再び締め付けられる。前記期間は、例えば5分であり、この期間の経過後には、常に再び締め付けられる。
【0031】
再締付け後に、例えばさらに10分の期間にわたって、車両が移動されたか否かが監視され、必要に応じでもう一度、電気ブレーキモータの操作によって再び締め付けられる。場合によっては、目標クランプ力に到達するための最初の締付けプロセスに直接的に続く最初の期間にも車両の移動が監視され、車両の転動を防止するために再締付けプロセスが実施される。
【0032】
方法ステップ24に続いて方法ステップ25にも進められ、方法はこのステップの実施により終了する。
【符号の説明】
【0033】
1…駐車ブレーキ
2…ブレーキキャリパ
3…ブレーキモータ
4…スピンドル
5…スピンドル構成部材
6…ブレーキピストン
7,8…ブレーキパッド
9…グリッパ
10…ブレーキディスク
11…ストッパ
図1
図2