(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243625
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】熱収縮性管状ラベルおよび容器
(51)【国際特許分類】
G09F 3/04 20060101AFI20171127BHJP
G09F 3/10 20060101ALI20171127BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20171127BHJP
B65D 23/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
G09F3/04 C
G09F3/10 J
G09F3/02 M
B65D23/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-98332(P2013-98332)
(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-219541(P2014-219541A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【弁理士】
【氏名又は名称】大前 要
(74)【代理人】
【識別番号】100117293
【弁理士】
【氏名又は名称】板東 義文
(72)【発明者】
【氏名】難波 聡
(72)【発明者】
【氏名】谷 知則
【審査官】
古屋野 浩志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−158554(JP,A)
【文献】
特開2009−128752(JP,A)
【文献】
特開2010−241055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/04
B65D 23/00
G09F 3/02
G09F 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の側面に装着される熱収縮性管状ラベルであって、
一方の端部と他方の端部を有する、ポリエステル系樹脂層/接着層/スチレン系樹脂層/接着層/ポリエステル系樹脂層の多層構造からなる熱収縮性基材フィルムを備え、
前記熱収縮性基材フィルムは上下に開放部を有するチューブを形成するように、前記他方の端部の上に前記一方の端部を重ね合わされてシールされており、
前記一方の端部側の基材フィルムには、前記シールによって形成されたシール部の近傍に、前記ラベルの上端から下端まで延びる第1のミシン目が形成されており、
前記シール部及び前記第1のミシン目を間に挟んで両側に、前記ラベルの上端から中央に向かって延びる、その長さが前記ラベルの上端から下端までの寸法の半分以下にされた一対の第2のミシン目が形成されており、
前記第1のミシン目は、1本だけ設けられていることを特徴とする熱収縮性管状ラベル。
【請求項2】
前記シール部及び前記第1のミシン目を間に挟んで両側に、前記ラベルの下端から中央に向かって延びる、その長さが前記ラベルの上端から下端までの寸法の半分以下にされた一対の第3のミシン目が形成されている請求項1に記載の熱収縮性管状ラベル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱収縮性管状ラベルが胴部外周に装着されてなる容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に熱収縮性管状ラベルに関するものであり、より特定的には、ミシン目の易開封性を向上させた熱収縮性管状ラベルに関する。この発明は、また、そのような熱収縮性管状ラベルが胴部外周に装着された容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に従来から使用されている飲料等を充填するペットボトルには、印刷ラベルである熱収縮性管状ラベルが装着されている。このようなペットボトルは用済み後回収されるが、そのためには、熱収縮性管状ラベルを剥離し分離する必要がある。その剥離・分離を容易に行うために、一般にこれらのラベルには、その上端から下端に渡る全長に渡って1本又は2本のミシン目が設けられている。
【0003】
ミシン目を細かいピッチで形成すると、取扱中に誤ってボトルを落下した場合に、印刷ラベルのミシン目の特に中央部分が衝撃で破損するという問題が発生する。一方、ミシン目を粗いピッチで形成すると、今度は易開封性が得られないという問題が生じる。
【0004】
本発明者らは、プラスチック容器の側面に装着される、落下等の事態が起こっても、安心して使用でき、かつ易開封性を実現できる熱収縮性管状ラベルを得ることを目的として、
図4に示すような、シール部1及びその両側に設けられた一対のミシン目2を備え、上方部と下方部にそれぞれ、シール部1及び一対のミシン目2を間に挟んで両側に、長方形の穴で千鳥の足跡のように交互に進むミシン目3を設けてなる熱収縮性管状ラベルを提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−158554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるような、長方形の穴のミシン目を設けた場合においても、衝撃で破損するという問題は解決されるものの、易開封性という面で若干課題が残っていた。
【0007】
このような状況下で、発明者らは熱収縮性基材フィルムの材質の面からさらなる検討を行った結果、ポリエステル系樹脂層/接着層/スチレン系樹脂層/接着層/ポリエステル系樹脂層の多層構造からなるフィルムを用いることが著しく有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明の目的は、落下等の事態が起こっても、安心して使用でき、かつ易開封性を実現できる熱収縮性管状ラベルを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、そのような熱収縮性管状ラベルが胴部外周に装着された容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、容器の側面に装着される熱収縮性管状ラベルであって、一方の端部と他方の端部を有する、ポリエステル系樹脂層/接着層/スチレン系樹脂層/接着層/ポリエステル系樹脂層の多層構造からなる熱収縮性基材フィルムを備える。上記熱収縮性基材フィルムは上下に開放部を有するチューブを形成するように、上記他方の端部の上に上記一方の端部を重ね合わされてシールされている。上記一方の端部側の基材フィルムには、上記シールによって形成されたシール部の近傍に、上記ラベルの上端から下端まで延びる第1のミシン目が形成されている。上記シール部及び上記第1のミシン目を間に挟んで両側に、上記ラベルの上端から中央に向かって延びる、その長さが上記ラベルの上端から下端までの寸法の半分以下にされた一対の第2のミシン目が形成されている。
上記第1のミシン目は、1本だけ設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ラベル上端から中央に向かって延びる一対の第2のミシン目が形成されているので、この第2のミシン目によって切れ目のきっかけが与えられる。ポリエステル系樹脂層/接着層/スチレン系樹脂層/接着層/ポリエステル系樹脂層の多層構造からなるフィルムは、上記第2のミシン目によって切れ目のきっかけが与えられると、その切れ目はシール部に伝播していき、次いでシール部の破壊が生じる。このことにより上記ラベルは、容器から容易に剥がすことができる。
【0012】
上記一対の第2のミシン目の長さは、上記ラベルの上端から下端までの寸法の半分以下にされる必要があるが、より好ましくは、上記ラベルの上端から下端までの寸法の略7分の1である。
【0013】
上記熱収縮性筒状ラベルは、ラベル基材の一方の端部を他方の端部に重ねてセンターシールすることにより、形成される。センターシール溶剤は、1,3ジオキソランまたはテトラヒドロフランが好ましい。
【0014】
ラベル基材には、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、滑剤、静電気防止剤、抗菌剤、安定剤等、各種公知の添加剤や異なる樹脂等を合目的的に添加してもよい。
【0015】
ポリエステル系樹脂としては、好ましくは一般に共重合ポリエステル樹脂と呼ばれる樹脂が挙げられる。共重合ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては公知のものでよく、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸類、4,4’−ジカルボン酸ジフェニール等のジカルボキシビフェニール類、5−t−ブチルイソフタル酸等の置換フタル酸類、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジカルボン酸等の置換ジカルボキシルビフェニル類、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸及びその置換体、1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸及びその置換体等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ピメル酸、ウンデカン酸、ドデカンジカルボン酸、ブラシリン酸、テトラデカンジカルボン酸、タブシン酸、ノナデカンジカルボン酸、ドコリンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその置換体、4,4’−ジカルボキシシクロヘキサン等の脂環族ジカルボン酸及びその置換体等が挙げられる。そしてジオール成分としては公知のものでよく、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール類、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール類、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等のビスフェノール系化合物のエチレンオキサイド付加物、キシリレングリコール等の芳香族系のジオール類、あるいはジエチレングリコール等が挙げられる。
【0016】
ポリスチレン系樹脂とは、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、グラフトタイプ耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−共役ジエンブロックコポリマー、スチレン−共役ジエンブロックエラストマー等、スチレンを構成要素の一つとする樹脂全般をいう。ポリスチレン系樹脂は1種類であってもよいし、2種類以上の混合物としてもよい。
【0017】
接着層を形成する材料としては、一般的な接着性樹脂を用いることができる。接着性樹脂としては、不飽和カルボン酸などで変性した樹脂が好ましく。変性ポリオレフィン系樹脂、変性スチレン系エラストマー、または変性ポリエステル系エラストマーなどが例示できる。
【0018】
ポリエステル系樹脂層/接着層/スチレン系樹脂層/接着層/ポリエステル系樹脂層の多層構造からなる熱収縮性基材フィルムとしては、例えば、グンゼ株式会社製ファンシーラップHGTタイプを例示できる。
【0019】
この発明の好ましい実施態様によれば、上記シール部及び上記第1のミシン目を間に挟んで両側に、上記ラベルの下端から中央に向かって延びる、その長さが上記ラベルの上端から下端までの寸法の半分以下にされた一対の第3のミシン目が形成されている。
【0020】
上記第1〜第3のミシン目は、円形の形状が好ましいが、これに限られるものではない。
【0021】
この発明の他の局面に従う容器は、上述の熱収縮性管状ラベルが胴部外周に装着されてなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、落下時の衝撃によって、第2のミシン目の長さがラベルの上端から下端までの寸法の半分以下にされているので、ボトルの中央部分が膨れても、その力によって中央部でラベルが破壊されることはない。そして、剥離時においては、上記第2のミシン目によって切れ目のきっかけが与えられると、その切れ目はシール部に伝播していき、次いでシール部の破壊が生じ、このことにより上記ラベルは、容器から容易に剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(A)は、実施例1にかかる熱収縮性管状ラベルの斜視図であり、(B)は
図1(A)におけるB−B線に沿う断面図であり、(C)は、本発明に用いたポリエステル系樹脂層/接着層/スチレン系樹脂層/接着層/ポリエステル系樹脂層の多層構造からなる熱収縮性基材フィルムの拡大断面図である。
【
図2】(A)は実施例1にかかる熱収縮性管状ラベルを装着した容器の斜視図であり、(B)は、作用効果を説明する図であり、ラベルを剥がしているときの正面図である。
【
図3】実施例1に係る熱収縮性管状ラベルの製造方法を示す図である。
【
図4】従来の熱収縮性管状ラベルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
落下等の事態が起こっても、安心して使用でき、かつ易開封性を実現できる熱収縮性管状ラベルを得るという目的を、ポリエステル系樹脂層/接着層/スチレン系樹脂層/接着層/ポリエステル系樹脂層の多層構造からなる熱収縮性基材フィルムを選び、シール部の近傍に、ラベルの上端から下端まで延びる第1のミシン目を形成し、さらに上記シール部及び上記第1のミシン目を間に挟んで両側に、上記ラベルの上端から中央に向かって延びる、その長さが上記ラベルの上端から下端までの寸法の半分以下にされた一対の第2のミシン目を形成することによって実現した。以下、本発明の実施例を、添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
図1(A)(B)(C)を参照して、実施例1に係る熱収縮性管状ラベル16は、一方の端部4と他方の端部5を有する、ポリエステル系樹脂層6/接着層7/スチレン系樹脂層8/接着層9/ポリエステル系樹脂層10の多層構造からなる熱収縮性基材フィルム16を備える。熱収縮性基材フィルム16は上下に開放部を有するチューブを形成するように折り曲げられ、他方の端部5の上に一方の端部4を重ね合わされてシールされている。一方の端部4の側の基材フィルムには、上記シールによって形成されたシール部11の近傍に、ラベルの上端から下端まで全長に渡って延びる第1のミシン目12が形成されている。シール部11及び第1のミシン目12を間に挟んで両側に、ラベルの上端から中央に向かって延びる、その長さがラベルの上端から下端までの寸法の半分以下にされた一対の第2のミシン目13が形成されている。さらにシール部11及び第1のミシン目11を間に挟んで両側に、ラベルの下端から中央に向かって延びる、その長さがラベルの上端から下端までの寸法の半分以下にされた一対の第3のミシン目15が形成されている。
【0026】
この熱収縮性管状ラベル16は、
図2(A)に示すように、ペットボトル等の容器14の側面に装着される。これは、熱収縮性管状ラベル16を容器14の胴部に装着し、装着した容器をシュリンクトンネルに通して、熱収縮させることにより行われる。容器への内容物の充填は、容器に熱収縮性ラベルを装着する前に行っても良いし、シュリンクトンネルを通して収縮させた後に行っても良い。
【0027】
本発明によれば、
図2(B)に示すように、第2のミシン目13によって切れ目のきっかけが与えられると、その切れ目はシール部に伝播していき、次いでシール部の破壊が生じ、このことにより、容器14から容易に剥がすことができる。
【0028】
一方、第2のミシン目13の長さはラベルの上端から下端までの寸法の半分以下、実施例では略7分の1にされているので、落下時の衝撃によって、容器14の中央部分が膨れても、その力によって中央部でラベルが破壊されることはない。
【0029】
なお、
図2(A)のように、シール部11及び第1のミシン目12を間に挟んで両側に、下端から中央に向かって延びる、ラベルの上端から下端までの寸法の半分以下にされた一対の第3のミシン目15が形成されていてもよい。このような第3のミシン目15を設けることにより、容器14の下端側からも切れ目のきっかけが与えられることになり、熱収縮性管状ラベル4が容器14からさらに剥がれ易くなる。
【0030】
第1〜第3のミシン目12,13,15は、円形の形状が好ましいが、これに限られるものではない。
【実施例2】
【0031】
熱収縮性筒状ラベルの製造方法について説明する。熱収縮性筒状ラベルは、
図3(A)(B)(C)を参照して、ポリエステル系樹脂層/接着層/スチレン系樹脂層/接着層/ポリエステル系樹脂層の多層構造からなるラベル基材17を準備し、これを中央で折り曲げて、その一方の端部4を他方の端部5の上に重ね合わせてセンターシールすることによって得られる。ラベル基材17には、その一方の端部4の側に第1のミシン目12が長尺方向に全長に渡って形成され、その内側に第2及び第3のミシン目12,13が間隔を置いて形成されている。センターシールは、シール溶剤の液溜18からシール溶剤(THF又はジオキソラン)を他方の端部5の側に塗布し、一対のニップローラ19,19の間に挟みこみ圧縮することによって行った。これにより、シール部11がシール溶剤による溶着で形成される。得られたロール状の熱収縮性筒状ラベルは
図3(C)に示すように個片に断裁され、熱収縮性筒状ラベル16が得られる。
【0032】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、落下等の事態が起こっても、安心して使用でき、かつ易開封性を実現できるように改良された熱収縮性管状ラベルが得られる。
【符号の説明】
【0034】
1,11 シール部
2,3 ミシン目
4 一方の端部
5 他方の端部
6 ポリエステル系樹脂層
7 接着層
8 スチレン系樹脂層
9 接着層
10 ポリエステル系樹脂層
12 第1のミシン目
13 第2のミシン目
14 容器
15 第3のミシン目
16 熱収縮性管状ラベル
17 ラベル基材
18 シール溶剤の液溜
19 ニップローラ