(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243635
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】モーター
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20171127BHJP
H02K 5/24 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
H02K1/18 E
H02K5/24 A
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-122561(P2013-122561)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-3885(P2014-3885A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2016年5月31日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0064172
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513276101
【氏名又は名称】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジェヒュン
(72)【発明者】
【氏名】オム,ジェジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュンキュ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジャヨン
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−261528(JP,A)
【文献】
特開2007−189812(JP,A)
【文献】
特開2000−217302(JP,A)
【文献】
特開2002−084698(JP,A)
【文献】
特開平01−138936(JP,A)
【文献】
特開2011−205775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの内側に設けられるステータと、
前記ステータの内側に設けられ、回転軸と結合するローターと、
前記ステータと前記ハウジングとの間に設けられる振動防止ユニットと、を含み、
前記ステータは、複数個の歯を有するステータコアと、前記ステータコアに巻線されるコイルと、前記ステータコアの上側及び下側に設けられるインシュレーターと、を含み、
前記ハウジングは上部ハウジング及び前記上部ハウジングと離隔された下部ハウジングを含み、
前記振動防止ユニットは、前記インシュレーターの前記上部ハウジングと向き合う面から前記上部ハウジングに向かって上側に延設された一対の第1加圧リブと、前記インシュレーターと向き合う前記下部ハウジングの底面から前記インシュレーターに向かってリング状に突出形成された第2加圧リブと、を含み、
前記ステータコアの上面を基準に前記第1加圧リブの高さは前記コイルの高さより高く、
前記第2加圧リブは前記歯を包み込む前記インシュレーターの下面と向き合う位置に配置され、
前記インシュレーターの上面は、第1加圧リブを介して前記上部ハウジングの内周面と接触し、前記インシュレーターの下面は、第2加圧リブを介して前記下部ハウジングと接触し、前記ステータの動きを規制して振動を防止することを特徴とするモーター。
【請求項2】
前記第1加圧リブは前記インシュレーターと一体に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のモーター。
【請求項3】
前記第1加圧リブの上面は前記上部ハウジングの内周面と面接触することを特徴とする請求項1または2に記載のモーター。
【請求項4】
前記第2加圧リブは前記下部ハウジングと一体に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のモーター。
【請求項5】
前記第2加圧リブの上面は前記インシュレーターの下面と面接触することを特徴とする請求項4に記載のモーター。
【請求項6】
前記インシュレーターは前記ステータコアの歯の端を包み込む接触部を含み、
前記接触部は隣接する接触部と接触することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載のモーター。
【請求項7】
前記ステータコアは金属材質のブロックで形成されることを特徴とする、請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載のモーター。
【請求項8】
前記ステータコアは薄いプレート材質のコア部材が複数枚積層されて構成されたことを特徴とする、請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載のモーター。
【請求項9】
前記インシュレーターは樹脂材質で形成されたことを特徴とする、請求項1乃至8のうちいずれか一つに記載のモーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータとローターとを有するモーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の操向の安定性を確保するための装置として、別途の動力で補助する操向装置が用いられる。従来には、このような補助操向装置として油圧を用いた装置を使用したが、最近は、電力の損失が少なく、正確性に優れた電動式操向装置(Electronic Power Steering System)が用いられている。
【0003】
前記のような電動式操向装置(EPS)は、車速センサー、トルクアングルセンサー、トルクセンサーなどで感知された運行条件に応じて、電子制御装置(ECU、Electronic Control Unit)でモーターを駆動して旋回安定性を保障し、迅速な復元力を提供することで、運転者が安全な走行ができるようにする。このようなEPSシステムは、運転者が操向のためにハンドルを操作するトルクをモーターが補助することによって、より少ない力で操向操作ができるようにするが、前記モーターとしては、BLDCモーターが用いられる。BLDCモーターは、ハウジングとカバー部材との結合で、モーターの外観を形成し、前記ハウジングの内周面にはステータが設けられ、前記ステータの中央には、前記ステータとの電磁気的相互作用によって回転可能に設置されるローターが設けられる。前記ローターは、回転軸によって回転可能に支持されるが、前記回転軸の上部には、車両の操向軸が連結されて、前記のように操向を補助する動力を提供する。
【0004】
一方、前記カバー部材の内側には、磁気素子で形成される感知センサーが実装された印刷回路基板が設けられるが、前記感知センサーは、前記ローターと回転連動可能に設けられたセンシングマグネットの磁力を感知して、前記ローターの現在位置を把握できるようにする。一般に、前記センシングマグネットは、前記ローターの上側に設けられたプレートの上側面に接着剤を用いて固定される。前記センシングマグネットがプレートに着磁されると、プレートを磁界の方向に合わせて回転軸に結合することにより、ローターの位置を検出することができる。
【0005】
ところが、ローターの回転時に発生する電磁気力によってステータコアの振れや共振が発生する場合がある。共振によるステータコアの振れは、モーターの作動騒音の増加、誤作動や性能の低下などの問題を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態により、ステータのコアの振動を低減できるように構造が改善されたモーターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の実施形態に係るモーターは、ハウジングと、前記ハウジングに設けられ、複数個の歯を有するステータコア、インシュレーター及びコイルで構成されるステータと、前記ステータの中央に回転軸によって回転可能に設けられるローターと、前記ステータの前記ローターに向き合う面を除く全ての面を包み込む絶縁性部材と、を含み、前記絶縁性部材の内部には、前記インシュレーターとコイルが配置されることを特徴とする。
【0008】
前記絶縁性部材は、ゴム、シリコン、エポキシモールディングのいずれか一つで形成できる。
【0009】
また、前記絶縁性部材が外部にコーティングまたはモールディングされたステータは、上部面と下部面が平らなリング状に設けられてもよい。
【0010】
本発明の第2の実施形態に係るモーターは、ハウジングと、前記ハウジングに設けられ、複数個の歯を有するステータコア、インシュレーター及びコイルで構成されるステータと、前記ステータの中央に回転軸によって回転可能に設けられるローターと、前記ステータとハウジングとの間に設けられて、前記ステータの動きを規制して振動を防止する防振ユニットと、を含む。
【0011】
前記ハウジングは、上部及び下部ハウジングで構成され、前記振動防止ユニットは、前記インシュレーターと上部ハウジングとの間に介在され、前記インシュレーターを加圧する第1加圧リブと、前記インシュレーターと下部ハウジングとの間に介在され、前記インシュレーターを加圧する第2加圧リブと、を含むことができる。
【0012】
このとき、前記第1及び第2加圧リブは、それぞれの相手物と面接触してもよい。
【0013】
前記第1加圧リブは、前記インシュレーターの前記上部ハウジングに向き合う面に一体に延設され、前記第2加圧リブは、前記下部ハウジングの前記インシュレーターに向き合う面に突設され、前記インシュレーターの底面を支持することができる。
【0014】
本発明の第3の実施形態に係るモーターは、ハウジングと、前記ハウジングに設けられ、複数個の互いに所定距離離隔した歯を有するステータコア、インシュレーター及びコイルで構成されるステータと、前記ステータの中央に回転軸によって回転可能に設けられるローターと、前記インシュレーターの歯を包み込む部分の先端が相互に連結されて形成された接触部と、を含み、前記接触部で前記ステータのコアの振動を吸収することが好ましい。
【0015】
このとき、前記ステータの前記ローターに向き合う面を除く全ての面を包み込む絶縁性部材を含んでもよいが、その構成は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0016】
または、前記ステータとハウジングとの間に設けられ、前記ステータの動きを規制して振動を防止する防振ユニットを含んでもよいが、その構成は、前述した第2の実施形態と同様である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の様々な実施形態によると、モーターの作動中にステータコアから発生する共振を防ぐことができ、モーターの作動騒音を減らすことができ、ステータコアの共振によるモーターの誤作動や性能の低下などの問題発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好ましい第1の実施形態に係るモーターの断面図である。
【
図3】本発明の好ましい第2の実施形態に係るモーターの断面図である。
【
図4】本発明の好ましい第3の実施形態に係るステータのコアとインシュレーターの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係るモーターについて図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るモーターの断面図、
図2は、
図1のステータコアの斜視図、
図3は、本発明の第2の実施形態に係るモーターの断面図、そして、
図4は、本発明の第3の実施形態に係るステータのコアとインシュレーターの平面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明によるEPSモーターは、ハウジング10、ステータ20、及びローター30を含む。
【0022】
ハウジング10は、上部ハウジング11と下部ハウジング12とで構成されており、これらの結合で形成される内部空間部には、複数のコイルが巻線されるステータ20が設けられる。
【0023】
ステータ20は、ステータコア21、インシュレーター22、及びコイル23で構成することができる。
【0024】
ステータコア21は、金属材質のブロックで設けられてもよく、薄いプレート材質のコア部材が複数枚積層されて構成されてもよい。前記ステータコア21には、前記ローター30に向き合う面に向かって複数個の歯が突設されており、この歯にコイル23が巻線される。
【0025】
インシュレーター22は、前記ステータコア21の上側及び下側に結合されており、前記歯に巻線されるコイル23が、前記ステータコア21と通電しないように絶縁する役割を果たす。インシュレーター22は、樹脂材質で形成されてもよい。
【0026】
ローター30は、前記ステータ20の中央に回転軸31により回転可能に設けられる。前記ローター30は、ローターコアにマグネットが結合されて構成されてもよく、場合によっては、ローターコアとマグネットとが一体に構成されてもよい。前記回転軸31の両端は、ベアリング32によって回転可能に支持されることが好ましい。前記ローター30の上側には、ローター30の位置情報取得のためのセンシングマグネットがプレートに結合されて設けられてもよく、これと類似のローター位置検出手段が設けられてもよい。
【0027】
本発明の特徴は、ハウジング10の内部空間部に設けられるステータ20の共振を防止するための構成にあり、これは、次のような実施形態に分けられる。
【0028】
本発明の第1の実施形態によれば、ステータ20は、
図1及び
図2に示すように、インシュレーター22の介在下、コイル23が巻線された外側をエポキシモールディングのような絶縁性部材100でコーティングして、ステータ20の外部が前記絶縁性部材100で包み込まれるように構成し、
図1のように、前記ハウジング10内部のステータ20の設置空間を、前記絶縁性部材100で包み込まれたステータ20が満ちるように構成してもよい。
【0029】
このような構成によれば、ステータ20に絶縁性部材100がコーティングされてステータ20の固有振動数が変化するため、共振による振動を減らすことができ、ステータ20を包み込んでいる絶縁性部材100が上部及び下部ハウジング11、12の内側面と面接触することによって、ローター30とステータ20の電磁気力によって発生できる振動が前記絶縁性部材100と上部及び下部ハウジング11、12によって吸収できる。したがって、モーターの作動中に発生できるステータ20の振動を抑制し、モーターの静粛性と作動信頼性を向上させることができる。
【0030】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るモーターの断面図を示す図である。図示しているように、前記の第1の実施形態と大部分の構成は同様であるが、前記インシュレーター22と下部ハウジング12の形態を一部変更して、振動防止ユニット200を構成したことに特徴がある。
【0031】
つまり、前記インシュレーター22の前記上部ハウジング11に向き合う面は、前記上部ハウジング11の内周面と面接触できる長さだけ延設される第1加圧リブ210が形成され、前記第1加圧リブ210が前記上部ハウジング11の内周面との全て面接触できるように構成することができる。これと共に、前記下部ハウジング12の前記インシュレーター22に向き合う底面には、前記インシュレーター22を加圧する環状の第2加圧リブ220が突設できる。前記第2加圧リブ220は、
図3に示すように、前記歯を包み込んでいるインシュレーター22の底面と対応する位置に形成されてもよいが、これに限定するものではなく、前記インシュレーター22を底面で支持できる位置であれば、どのような所にも形成可能である。
【0032】
このような構成によれば、前記インシュレーター22の上部面は、第1加圧リブ210で前記上部ハウジング11と面接触し、インシュレーター22の下部面は第2加圧リブ220で前記下部ハウジング12と面接触して、前記ステータコア21の固有振動数が変化するため、共振による振動を減らすことができる。また、上部及び下部ハウジング11、12の内側面とインシュレーター22とが面接触することによって、ローター30とステータ20の電磁気力によって発生できる振動が前記絶縁性部材100と上部及び下部ハウジング11、12によって吸収できる。したがって、モーターの作動中に発生できるステータ20の振動を抑制し、モーターの静粛性と作動信頼性を向上させることができる。
【0033】
図4は、本発明の第4の実施形態に係るインシュレーター22が設けられたステータコア21を示す平面図である。
【0034】
図示しているように、インシュレーター22は、ステータコア21に形成された歯を包み込むように構成され、歯にコイル23が巻線されるとき、ステータコア21とショートしないようにする。しかし、一般に、歯とローター30が互いに向き合う面は、ステータコア21の歯が露出されており、それぞれの歯は所定間隔離隔されるが、本発明の第4の実施形態の場合には、これら歯が離隔した状態はそのまま維持しながら、前記歯を包み込んでいるインシュレーター22の歯部分が互いに接触された接触部300を形成することができる。
【0035】
このような構成によれば、それぞれの歯を包み込むインシュレーター22が接触部300で互に連結されるため、結果的に、ステータコア21から発生する振動を前記インシュレーター22の接触部300が吸収する役割を果たすことができ、モーターの作動中に発生できる振動を低減することができる。
【0036】
以上で、本発明は、実施形態及び添付図面に基づいて詳細に説明された。しかしながら、以上の実施形態及び図面により本発明の範囲が限定されることはなく、本発明の範囲は、別途提出の特許請求の範囲に記載された内容によってのみ制限される。
【符号の説明】
【0037】
10 ハウジング
11 上部ハウジング
12 下部ハウジング
20 ステータ
21 ステータコア
22 インシュレーター
23 コイル
30 ローター
31 回転軸
32 ベアリング