特許第6243644号(P6243644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243644フリークーリングシステム及びこれを用いたフリークーリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243644
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】フリークーリングシステム及びこれを用いたフリークーリング方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20171127BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20171127BHJP
   F24F 11/02 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F24F5/00 101Z
   F25B1/00 399Y
   F24F11/02 102L
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-151599(P2013-151599)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-21685(P2015-21685A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222956
【氏名又は名称】東洋熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】山田 一樹
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−210124(JP,A)
【文献】 特開平04−313629(JP,A)
【文献】 特開2012−237468(JP,A)
【文献】 特開2006−105452(JP,A)
【文献】 特開2010−127559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 11/02
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷側となる熱交換器に供給される冷水が循環する循環経路と、
該循環路の一部を形成し、前記熱交換器から還ってきた還り冷水が流入する還り管路と、
前記循環路の一部を形成し、前記熱交換器に供給される往き冷水が流入する往き管路と、
前記還り管路及び前記往き管路とを連通し、前記還り冷水を冷却して前記往き冷水とするための複数の冷却管路と、
該冷却管路を形成する冷却塔流路及び他の前記冷却管路を形成する冷凍機流路と、
前記冷却塔流路が通過する冷却塔熱交換器と、
該冷却塔熱交換器を通過し、前記冷却塔流路内の前記還り冷水を熱交換により冷却するための冷却水が循環する冷却水管路と、
該冷却水管路の一部を形成し、外気により前記冷却水を冷却するための冷却塔と、
前記冷却塔熱交換器の下流側で前記冷却塔流路が分岐して形成された前記往き管路に通じる直送路及び前記還り管路に通じる戻り路と、
前記冷凍機流路に設置されて前記冷凍機流路内の前記還り冷水を冷却するための冷凍機と
を備え、
前記直送路又は前記戻り路に配設されて前記直送路又は前記戻り路内の流量を計測するための流量計と、
前記直送路及び前記戻り路への流量を調整して分配する切替バルブと、
前記流量計の測定結果を受け取り、且つ前記切替バルブを開度調整するコントローラと
前記コントローラ内に格納され、外気の温度及び前記還り冷水の温度から前記冷却塔の最大冷却能力による前記還り冷水の最大冷却温度を算出し、この算出結果に応じて前記直送路及び前記戻り路への分配比率を決定するための分配マップをさらに備えたことを特徴とするフリークーリングシステム。
【請求項2】
前記分配マップは、前記最大冷却温度が低いほど前記直送路に流通させる割合が高くなる線が描かれたグラフであることを特徴とする請求項に記載のフリークーリングシステム。
【請求項3】
外気の温度を測定し、
前記還り冷水の温度を測定し、
前記外気の温度及び前記還り冷水の温度に基づいて前記冷却塔の最大冷却能力による前記還り冷水の最大冷却温度を算出し、
該算出結果を前記分配マップに当てはめて前記直送路及び前記戻り路への分配比率を決定し、
前記コントローラにより前記切替バルブを自動的に切り替えて前記分配比率に沿うように開度調整することを特徴とする請求項に記載のフリークーリングシステムを用いたフリークーリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリークーリングシステム及びこれを用いたフリークーリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却塔を用いたフリークーリングシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に代表されるようなフリークーリングシステムは、冷却塔と冷凍機を用いて負荷側の熱交換器に送る冷水を効率よく製造するものである。すなわち、冷却塔と冷凍機を使い分けて冷水を効率よく冷却するものである。冷却塔に送る冷水と冷凍機に送る冷水はバルブ等により切り替えられて送られていた。
【0003】
しかしながら冷却塔は外気を用いて冷却するものであるため、外気は常に変動するものであり、上記のような切り替えは現実的ではない。冷却塔での冷却から冷凍機への冷却に切り替えるには熟練が必要であり、作業者の能力に左右されてしまうため冷水の温度管理が一定とできない場合がある。また、バルブ等の切り替えには時間がかかるため、急激な外気の温度変化があったときはすぐに冷凍機に切り替えることができず、やはり冷水の温度管理を一定とできない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−145245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、外気温度の変化に応じて作業者の熟練を要さずに自動的に冷却塔と冷凍機の運転割合を決定し、負荷側の熱交換器に送る冷水の温度を一定とすることができるフリークーリングシステム及びこれを用いたフリークーリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、負荷側となる熱交換器に供給される冷水が循環する循環経路と、該循環流路の一部を形成し、前記熱交換器から還ってきた還り冷水が流入する還り管路と、前記循環流路の一部を形成し、前記熱交換器に供給される往き冷水が流入する往き管路と、前記還り管路及び前記往き管路とを連通し、前記還り冷水を冷却して前記往き冷水とするための複数の冷却管路と、該冷却管路を形成する冷却塔流路及び他の前記冷却管路を形成する冷凍機流路と、前記冷却塔流路が通過する冷却塔熱交換器と、該冷却塔熱交換器を通過し、前記冷却塔流路内の前記還り冷水を熱交換により冷却するための冷却水が循環する冷却水管路と、該冷却水管路の一部を形成し、外気により前記冷却水を冷却するための冷却塔と、前記冷却塔熱交換器の下流側で前記冷却塔流路が分岐して形成された前記往き管路に通じる直送路及び前記還り管路に通じる戻り路と、前記冷凍機流路に設置されて前記冷凍機流路内の前記還り冷水を冷却するための冷凍機とを備え、前記直送路又は前記戻り路に配設されて前記直送路又は前記戻り路内の流量を計測するための流量計と、前記直送路及び前記戻り路への流量を調整して分配する切替バルブと、前記流量計の測定結果を受け取り、且つ前記切替バルブを開度調整するコントローラとをさらに備えたフリークーリングシステムを提供する。
【0007】
好ましくは、フリークーリングシステムは、前記コントローラ内に格納され、外気の温度及び前記還り冷水の温度から前記冷却塔の最大冷却能力による前記還り冷水の最大冷却温度を算出し、この算出結果に応じて前記直送路及び前記戻り路への分配比率を決定するための分配マップを備えている。
【0008】
好ましくは、前記分配マップは、前記最大冷却温度が低いほど前記直送路に流通させる割合が高くなる線が描かれたグラフである。
【0009】
また本発明では、外気の温度を測定し、前記還り冷水の温度を測定し、前記外気の温度及び前記還り冷水の温度に基づいて前記冷却塔の最大冷却能力による前記還り冷水の最大冷却温度を算出し、該算出結果を前記分配マップに当てはめて前記直送路及び前記戻り路への分配比率を決定し、前記コントローラにより前記切替バルブを自動的に切り替えて前記分配比率に沿うように開度調整することを特徴とするフリークーリング方法も提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コントローラが分配マップを用いて外気の温度及び還り冷水の温度から冷却塔の最大冷却能力による還り冷水の最大冷却温度を算出し、この算出結果に応じて直送路及び戻り路への分配比率を決定し、切替バルブの開度調整をして分配比率に応じて直送路と戻り路の流量を調整するので、直送路を通して冷却塔による冷却のみで往き管路に冷水を送る動作を自動化することができる。さらに、直送路と戻り路の両方を用いて冷却塔及び冷凍機を用いて冷却する冷水の割合も自動化させることができる。
【0011】
また、分配マップを備えさせ、この分配マップを最大冷却温度が低いほど直送路に流通させる割合が高くなる線が描かれたグラフとすることで、線の傾きを変更することで冷却塔での冷却温度に応じて直送路に送る冷水の割合を変更させることができるので、厳密な温度管理が求められている場所では直送路に送る割合を減らすことができ、急激な外気の温度変化に対しても余裕を持って冷水を分配することができ、切替バルブの切替に時間がかかっても一定の温度管理を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るフリークーリングシステムの概略図である。
図2】分配マップの一例としてのグラフを示す概略図である。
図3】本発明に係るフリークーリング方法のフローチャートである。
図4】バランス点を求めるためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本発明に係るフリークーリングシステム1は、冷水が循環する循環経路2を備えている。この循環経路2は、負荷側となる熱交換器(図1の例では空調機3)を通り、空調機3で昇温した冷水を冷却する冷却管路4とを備えている。すなわち、冷水は空調機3にて熱交換されて昇温し、冷却管路4にて冷却されて空調機3に再び供給される。循環経路2はさらに還り管路5と往き管路6とを備えている。還り管路5は空調機3から還ってきた還り冷水が流入する管路であり、往き管路6は空調機3に供給される往き冷水が冷却管路4から流入する管路である。上述した冷却管路4は複数備わっているので、還り管路5から複数の冷却管路4が分岐して形成されている。そして、それぞれの冷却管路4は往き管路6に接続されている。換言すれば、複数の冷却管路4はそれぞれ還り管路5と往き管路6とを連通し、還り管路5内の還り冷水を冷却して往き冷水とし、往き管路6に供給する。
【0014】
なお、冷却管路4とは別に還り管路5と往き管路6とは調整流路7により連通している。この調整流路7は冷水の空調機3での流量変化に対応するため、往き管路6から還り管路5に冷水を微量戻すことができる。調整流路7に冷水を全く流入させない(ゼロ流量)とすることも可能である。したがって、調整流路7では往き管路6から還り管路5の方向である一方向にのみ冷水の流れが許容されている。
【0015】
ここで、上述した複数の冷却管路4は冷却塔流路8及び冷凍機流路9で形成されている。冷却塔流路8は、複数の冷却管路4の中では還り管路5における空調機3からの還り冷水の流入箇所に最も近い側から分岐して延びている。すなわち、複数の冷却管路4の中では還り管路5における最も上流側から分岐して延びている。空調機3からの還り冷水は冷却塔流路8に設けられたポンプ28により冷却塔流路8に引き込まれる。冷却塔流路8に流入した還り冷水は、冷却塔流路8に設けられた温度計29及び流量計30によりその温度及び流量が計測される。そして冷却塔流路8は冷却塔熱交換器10内を通過している。
【0016】
冷却塔熱交換器10にはさらに冷却水管路11が通過している。したがって、冷却塔熱交換器10にて、冷却塔流路8内の還り冷水は冷却水管路11内の冷却水と熱交換されて冷却される。冷却水管路11は還り冷水を冷却するための冷却水が循環し、その一部は冷却塔12にて形成されている。還り冷水と熱交換されて昇温した冷却水は、冷却塔内に散水され、冷却塔内に充填された充填物質を伝わって拡散して流下する。このとき、冷却水はファン13により吸引された外気と直接接触することにより冷却される。すなわち、この冷却水の冷却は、ファン13を回転することによって冷却水を外気と接触させ、冷却水の一部を蒸発することによりそのときの蒸発潜熱により冷却するものである。そして再び冷却された冷却水は冷却塔熱交換器10内に流入して還り冷水と熱交換される。この冷却水の循環は冷却水管路11に設けられたポンプ14を駆動させることにより行われる。また、冷却水管路11の冷却塔12の下流側且つ冷却塔熱交換器10の上流側には、冷却水の温度を計測するための温度計15が配設されている。また、冷却塔熱交換器10での熱交換後の冷水の温度は温度計31により計測される。
【0017】
冷却塔熱交換器10よりも下流側の冷却塔流路8には、直送路16と戻り路17が分岐して形成されている。直送路16は往き管路6に通じている。戻り路17は還り管路5に通じている。直送路16と戻り路17との分岐点には三方弁からなる切替バルブ18が配設されている。なお、二方弁を二つ用いて切替バルブを形成してもよい。また、ポンプを用いて直送路16と戻り路17との分配を行ってもよい。
【0018】
還り管路5の冷却塔流路8が分岐する箇所よりも下流側からは上述した冷凍機流路9が分岐して延びている。図1の例では複数の冷凍機流路9が備わっている。この冷凍機流路9には、それぞれ冷凍機19が設置されている。冷凍機19は、冷凍機流路9内の還り冷水を冷却するためのものである。したがって、上述した戻り路17を通った冷水は、還り管路5に戻って再び冷凍機流路9に備わるポンプ20により冷凍機流路9内に流入する。なお、冷却塔流路8を通らずに空調機3から直接還り管路5を通って冷凍機流路9内に流入する還り冷水も存在する。冷凍機19にて冷却された冷水は、往き管路6内に流入する。ここで、直送路16を通ってきた冷水とともに往き管路6内の冷水は空調機3に送られるべき所定温度に調整された往き冷水となる。その温度は空調機3に通じる管路に配された温度計21にて管理され、同じく空調機3に通じる管路に配されたポンプ22により空調機3に供給される。そして、往き冷水は空調機3を通って昇温して還り冷水となり、空調機3から還り管路5に通じる管路に配された温度計23及び流量計24によりその温度及び流量を計測され、還り管路5に流入する。そして再び上述したように冷却塔12や冷凍機19を用いて還り冷水は冷却される。
【0019】
ここで、直送路16には直送路16内の冷水の流量を計測するための流量計25が配設されている。この流量計25を設けることで、冷却塔流路8から分岐する直送路16及び戻り路17の分配比率を認識することができる。分配比率を認識できればよいので、流量計25は戻り路17に設けてもよい。上述した切替バルブ18は、直送路16と戻り路17とに流入する冷水が所定の分配比率となるようにその開度が調整される。この開度調整は、コントローラ26にて行われる。コントローラ26は流量計25と接続されている。
【0020】
コントローラ26によって切替バルブ18の開度調整が行われ、直送路16及び戻り路17への分配比率が決定されて冷水がそれぞれ分配される。コントローラ26は、冷却塔12の近傍に設置された温度計27及び図示しない湿度計による外気湿球温度の計測結果を受け取る。したがって、コントローラ26と温度計27とは情報伝達可能に接続されている。またコントローラ26は、温度計29とも情報伝達可能に接続されていて、空調機3からの還り冷水の温度の計測結果も受け取る。そしてコントローラ26は、受け取った外気湿球温度及び還り冷水の温度をもとに、冷却塔12が有する最大冷却能力を発揮したときの還り冷水の最大冷却温度を算出する。
【0021】
冷却塔12の冷却能力は理論値で求めることができるため、現在の外気湿球温度及び還り冷水の温度、及び冷水の熱交換器10の出口側温度(温度計31で計測)と冷却水の熱交換器10の入口側温度(温度計15で計測)との差(アプローチ温度)がわかれば、冷却塔12を用いて最大どの程度冷却することができるかを求めることができる。アプローチ温度は、熱交換器の理論計算でも求めることができるが、流量に対するアプローチの関係から算出することも可能である。この算出結果に応じてコントローラは冷水の直送路16及び戻り路17の分配比率を決定する。この決定は、分配マップをもとに決定される。
【0022】
この分配マップは例えば図2に示すような実線のグラフとして形成されている。図2のグラフでは、縦軸に直送路に流入される冷水の分配比率、横軸に冷水の最大冷却温度となっている。そしてグラフは、最大冷却温度が低いほど直送路16に流通させる割合が高くなるように描かれている。具体的には、温度X<Yとすると、最大冷却温度がX℃のとき分配比率100%、Y℃のとき0%とし、これを結ぶ右下がりの直線で描かれている。すなわち、コントローラ26は外気湿球温度及び還り冷水の温度の計測結果を受け取り、そのときの冷却塔12での最大冷却能力を発揮したときの還り冷水の最大冷却温度を算出し、この算出結果を分配マップに当てはめ、直送路16への分配比率を決定する。
【0023】
例えば最大冷却温度がX℃と算出されたら分配比率を100%とし、切替バルブ18の開度調整を行って冷却塔熱交換器10を通過した冷水は全て往き管路6に供給される。したがって、コントローラ26と切替バルブ18も接続されている。コントローラ26はさらに流量計25とも情報伝達可能に接続されていて、直送路16を流れる冷水の流量をもとに切替バルブ18の開度が正確に行われているかを確認することができる。
【0024】
このグラフの傾きは、フリークーリングシステム1を適用する場所に応じて変更可能である。例えば、温度管理が厳密な環境では、グラフの傾きを小さくする。外気湿球温度が急激に上昇して最大冷却温度も上昇し、冷凍機19を用いた運転を増加させる必要に迫られたときでも、傾きが小さければ直送路16への分配比率を落としてもまだ直送路16を利用した冷水の冷却が可能である範囲が大きいので、冷凍機19の運転開始が間に合わなくて往き冷水の温度が設定温度より高くなってしまうことを防止できる。このように、外気湿球温度の急激な変化にも十分に対応することができる。また、温度管理が特に厳密でない環境では、グラフの傾きを大きくする(図2の点線で示すグラフ)。
【0025】
このように傾きが大きければ、急激な外気湿球温度の変化があったときに直送路16への分配比率がすぐに0%となって冷凍機19を運転しなければならなくなるが、多少往き冷水の温度が設定通りでなくてもよい環境であれば特に影響はない。それよりも傾きを大きくすれば外気湿球温度が少し低下しただけですぐに直送路16への分配比率を100%とする運転が可能となるので、全体的なエネルギーとして効率的に運転することができる。すなわち、温度管理が厳密か否かで、分配マップの傾きを変更させ、温度を重視したりかエネルギー効率を重視したりすることができる。
【0026】
このように、コントローラ26が分配マップを用いて外気の温度(外気湿球温度)及び還り冷水の温度から冷却塔12の最大冷却能力による還り冷水の最大冷却温度を算出し、この算出結果に応じて直送路16及び戻り路17への分配比率を決定し、切替バルブ18の開度調整をして分配比率に応じて直送路16と戻り路17の流量を調整するので、直送路16を通して冷却塔12による冷却のみで往き管路6に冷水を送る動作を自動化することができる。すなわち分配マップを用いて冷水の直送路16及び戻り路17の分配を自動化することができる。さらに、直送路16と戻り路17の両方を用いて冷却塔12及び冷凍機19を用いて冷却する冷水の割合も自動化させることができる。
【0027】
また、分配マップを最大冷却温度が低いほど直送路16に流通させる割合が高くなる線が描かれたグラフとすることで、線の傾きを変更することで冷却塔12での冷却温度に応じて直送路16に送る冷水の割合を変更させることができるので、厳密な温度管理が求められている場所では直送路に送る割合を減らすことができ、急激な外気の温度変化に対しても余裕を持って冷水を分配することができ、切替バルブ18の切替に時間がかかっても一定の温度管理を実現できる。
【0028】
上述したフリークーリングシステム1を用いてコントローラ26は以下のようなフリークーリング方法を行う。図3に示すように、まずは温度計27を用いて外気の温度を測定する(ステップS1)。そして、空調機3からの還り冷水の温度を温度計23を用いて測定する(ステップS2)。そして、外気の温度及び還り冷水の温度に基づいて冷却塔12の最大冷却能力による還り冷水の最大冷却温度を算出する(ステップS3)。そして、算出結果を分配マップに当てはめて直送路16及び戻り路17への分配比率を決定する(ステップS4)。そして、切替バルブ18を自動的に切り替えて分配比率に沿うように開度調整する(ステップS5)。
【0029】
コントローラ26はさらに、図4に示すようなバランスマップを備えている。このバランスマップもグラフであり、縦軸に消費電力量、横軸に冷却塔及び冷凍機の生産熱量を示している。なお、冷却塔と冷凍機の生産熱量の増加は互いに逆向きになるように描いている(冷却塔は紙面に向かって右に行くほど生産熱量が増加、冷凍機は紙面に向かって左に行くほど生産熱量が増加)。
【0030】
フリークーリングシステム1を用いて生産すべき熱量(生産熱量)は、例えば、二次側である空調機3での負荷熱量である。すなわち、空調機3からの還り冷水を所定温度の往き冷水に形成するための熱量であり、これは予め求めることができる。この生産熱量を生成する際に、冷却塔12と冷凍機19とを用いたときの消費電力量を考慮したものがグラフでの実線A及びBである。徐々に冷却塔の消費電力量を増加させることで、冷却塔での生産熱量も向上し、その分冷凍機の消費電力量は減少していく。これらのグラフA及びBの消費電力量の和をグラフ化したものが実線Cである。
【0031】
冷却塔12を用いたときと冷凍機19を用いたときとでは消費電力量カーブが異なっている。例えば、二次側である空調機3での負荷熱量が図4のグラフで示す線分Dだけあった場合、この線分Dの始端は冷却塔生産熱量の横軸のゼロの位置に合わせられる。そして線分Dの終端が冷凍機生産熱量のゼロとして描かれる。
【0032】
線分Dで表された負荷熱量に対応する熱量を生産するために、例えば、冷却塔を全く用いない、すなわち冷却塔の生産熱量を示す横軸がゼロであれば、生産熱量を全て冷凍機でまかなうことになるため、冷却塔の消費電力量はゼロとなり、冷凍機のみの消費電力量が求まる(図4のE点)。この消費電力量Eが負荷熱量に対応する熱量を生産するための消費電力量となる。一方、冷却塔を最大能力で用いた場合、冷却塔が必要とする消費電力量はF点である。この最大能力では負荷熱量に対応する熱量を生産できていないので、残りの熱量は冷凍機にて補う。補ったときの消費電力量はG点である。したがって、このときの消費電力量はF+Gで表されたHとなる。
【0033】
そうすると、最も低い消費電力量での生産熱量をこのバランスマップから求めることができる。図4の例では、J点で示された消費電力量が最も低く、したがってエネルギー的に効率がいいことがわかる。したがってコントローラ26は、予めバランスマップを参照し、この熱量をどのように冷却塔と冷凍機に割り振れば最も消費電力量が低くエネルギー的に効率がよいかをこのバランスマップで求めることができる。実線A及びBは冷却塔12及び冷凍機19の性能から計算により求めて描くことができる。フリークーリングシステム1では、最もエネルギー的に効率がいいのは冷却塔での冷却能力をゼロ〜最大の範囲内で決定される。
【符号の説明】
【0034】
1:フリークーリングシステム、2:循環経路、3:空調機、4:冷却管路、5:還り管路、6:往き管路、7:調整流路、8:冷却塔流路、9:冷凍機流路、10:冷却塔熱交換器、11:冷却水管路、12:冷却塔、13:ファン、14:ポンプ、15:温度計、16:直送路、17:戻り路、18:切替バルブ、19:冷凍機、20:ポンプ、21:温度計、22:ポンプ、23:温度計、24:流量計、25:流量計、26:コントローラ、27:温度計、28:ポンプ、29:温度計、30:流量計、31:温度計
図1
図2
図3
図4