(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、エアゾール容器やポンプ容器等、収容した内容物を加圧して吐出する噴射容器が知られている。これらの噴射容器としては、様々な構造のものが知られているが、容器を、容器の軸と鉛直線とを所定の角度以上に傾けた傾斜状態では、内容物を設計通り噴射できないものがある。
例えば、窒素ガスなどの圧縮ガスを加圧剤として採用し、ディップチューブで内容物を吸い上げるタイプのエアゾール容器では、傾斜状態で操作すると、傾ける角度や内容物の残量によりディップチューブ下端の吸上口が容器内の気相部に露出して加圧剤のみが噴射されてしまう場合がある。またポンプ容器の場合も、ディップチューブで内容物を吸い上げるタイプのものは、傾斜状態で操作すると内容物を吸い上げることができない。
容器の傾斜状態に応じて、ディップチューブの下端が移動する錘付きのディップチューブが知られているが、ディップチューブが容器内で自由に動けると、錘等が他の部位に引っかかったりするおそれがある。また、この場合、容器内での現象であるため、エアゾール容器等は修理することができない。さらに、錘により移動できるように柔らかいディップチューブを使用する必要があり、バルブの輸送時や製造時にディップチューブ同士が絡まりやすく製造に手間がかかり、コストが高くなる。
容器の状態に関係なく内容物を吐出する内袋タイプの二重構造の容器も知られているが、組み立て工程が煩雑になり、専用の機械等が必要となり、コストが高くなる。
【0003】
特許文献1には、正立状態では操作ができず、傾斜状態とすると自動的に操作が可能になるトリガー式の噴射部材が開示されている。特に、正立状態では容器と噴射部の間に配置され、傾斜状態では、その傾斜角度に応じて回動し、容器と噴射部の間から脱離するロック部材を備えた噴射部材が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡易な構造を有し、コストが安いものであって、正立状態では操作ができ、ある角度以上の傾斜状態で操作ができない噴射容器に取り付けられる噴射部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の噴射部材は、噴射容器に取り付けられる本体と、噴射容器の弁に取り付けられる噴射ノズルと、前記噴射ノズルを作動させ、レバーを引くことにより作動する操作部とを備えており、前記本体は、回転軸および作用部が設けられたストッパを有し、
前記操作部が、作動方向側に前記ストッパの作用部の軌跡の一部と実質的に同じ形状の湾曲部が形成された制御部を有し、前記噴射容器の軸と鉛直線とが平行となった正立状態では、前記ストッパの作用部が操作部から離れており、レバーを内側に引く操作により、前記噴射ノズルが作動し、前記噴射容器の軸と鉛直線とが所定の角度を有するように噴射容器を傾けた傾斜状態では、前記ストッパが回転軸周りに回転し、前記ストッパの作用部が前記操作部の作動方向側に配置され、レバーの内側に引く操作が不能となり、前記噴射ノズルが作動しないことを特徴としている。ここでストッパの作用部が操作部の作動方向側に配置されるとは、レバーを内側に引くことができない程度に、ストッパの作用部が操作部の作動方向側(レバーを内側に引くことによって操作部が作動する方向側)の一部と当接または近くにあることを言う。
【0007】
このような噴射部材であって、ストッパの重心が回転軸と作用部とを結ぶ線上にないものが好ましい。この場合、ストッパが2本の脚およびそれらの脚の基部を連結した連結部を備えており、回転軸が連結部に設けられており、作用部が一方の脚の先端に設けられていてもよい。
このような噴射部材であって、本体が前記ストッパの回転角度を制御する係止部を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の噴射部材は、噴射容器に取り付けられる本体と、噴射容器の弁に取り付けられる噴射ノズルと、前記噴射ノズルを作動させ、レバーを引くことにより作動する操作部とを備えており、前記本体は、回転軸および作用部が設けられたストッパを有し、前記噴射容器の軸と鉛直線とが平行となった正立状態では、前記ストッパの作用部が操作部から離れており、レバーを内側に引く操作により、前記噴射ノズルが作動し、前記噴射容器の軸と鉛直線とが所定の角度を有するように噴射容器を傾けた傾斜状態では、前記ストッパが回転軸周りに回転し、前記ストッパの作用部が前記操作部の作動方向側に配置され、レバーの内側に引く操作が不能となり、前記噴射ノズルが作動しないため、本発明の噴射部材を取り付けた噴射容器を操作不能角度に傾けた傾斜状態にして使用しても、操作ができない。そのため、噴射容器が加圧剤を使用したエアゾール容器である場合は加圧剤のみが噴射されて使用できなくなる問題がない。
【0009】
このような噴射部材であって、操作部が作動方向側にストッパの作用部の軌跡の一部と実質的に同じ形状の湾曲部が形成された制御部を有している場合、作用部が湾曲部上に配置されたとき、操作が不能となる。つまり、湾曲部の形状を調整することで、誤使用防止機構が作動し始める不能開始角度(操作不能角度の最小値)を設定することができ、かつ、操作不能角度に範囲を持たせることができる。
このような噴射部材であって、ストッパの重心が回転軸と作用部とを結ぶ線上にない場合、重心の位置に応じてストッパは回転するため、重心位置を決めることにより、操作不能角度の不能開始角度を設定することができる。つまり、回転軸と作用部とを結ぶ線と、回転軸と重心とを結ぶ線との間の角度によって、操作不能角度の不能開始角度が決まる。
この場合、ストッパが2本の脚およびそれらの脚の基部を連結した連結部を備えており、回転軸が連結部に設けられており、作用部が一方の脚の先端に設けられている場合、2本の脚の間に重心が形成されるので、2本の脚の連結角度あるいは2本の脚の重さ等に応じて重心位置を変えることができ、操作不能角度の不能開始角度を設定することができる。
このような噴射部材であって、本体が前記ストッパの回転角度を制御する係止部を備えている場合、容器を把持している等の不安定な状態でもストッパを安定に支持させることができ、ストッパの誤作動がない。
特に、正立状態においてストッパの回転を制御する係止部を設けている場合、ストッパの回転し始める角度(ストッパ作動角度)を調整できるため、ストッパ作動角度までの傾きではストッパを回転させずに確実に操作することができ、また、不能開始角度を正確に設定できる。さらに、傾斜状態においてストッパの回転を制御できる係止部を設けている場合、操作不能角度に範囲を持たせることができる。
また、前述の湾曲部や重心位置との組み合わせにより、ストッパ作動角度と操作不能角度の不能開始角度の差を大きくしたり、ストッパ作動角度と操作不能角度の不能開始角度
の差を小さくしたりできる。ストッパ作動角度と操作不能角度の不能開始角度の差が大きい場合、容器を水平近くまで大きく傾けた時の操作を可能としやすく、トイレの便器内やカーペット、床面等、噴射孔を斜め下方に向けて噴射する製品に好ましく用いられる。ストッパ作動角度と操作不能角度の不能開始角度の差が小さい場合、容器を傾けた斜め下方時の操作を不能としやすく、空間や壁、ガラス等、噴射孔を水平から斜め上方に向けて噴射する製品に好ましく用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1の噴射部材10は、噴射容器Dに取り付けられるものである。詳しくは、噴射容器Dに取り付けられる本体11と、噴射容器DのステムSに取り付けられる噴射ノズル12と、噴射ノズルを作動させるレバー13を備えた操作部14とを有している。また本体11には、噴射容器Dが正立状態のときレバー13の操作を可能とし、噴射容器Dを所定の角度に傾けたときにレバー13の操作を不能とする誤使用防止機構15が設けられている。
なお、
図1では噴射容器Dとして耐圧容器C及びその開口部に取り付けられるエアゾールバルブVからなるエアゾール容器を挙げている。しかし、容器及びその容器の開口部に取り付けられる弁体からなる他の噴射容器、例えば、ポンプ容器であってもよい。
【0012】
本体11は、
図2aに示すように、噴射ノズル12を収容する中空で筒状の外郭部16と、その外郭部の上部を覆う蓋部17とから構成されており、外郭部16に誤使用防止機構15が設けられている。
【0013】
初めに誤使用防止機構15について説明する。誤使用防止機構15は、
図3aに示すように、外郭部16の内面に支持されて回転するストッパ21と、噴射容器が正立状態のときにそのストッパ21の回転を制止する第1支持突起22と、そのストッパ21が所定の角度を回転したとき、そのストッパ21と係合して操作部14の動作を制御する湾曲部23aを有する制御部23とから構成されている。また、この誤使用防止機構15には、傾斜状態において、ストッパ21の回転が過剰とならないようにストッパ21の回転を制止する第2支持突起24が設けられている。
【0014】
ストッパ21は、長脚26と短脚27とからなる平面L字型の形状を呈しており、長脚26と短脚27の交点に回転軸28が設けられている。つまり、ストッパ21は回転軸28を中心に回転し、長脚26の先端26aが操作部14の湾曲部23a上に配置され(操作不能角度の領域Z)、操作部14の作動を制御させるものである(
図3b、c参照)。
図3aに戻って、このストッパ21の重心Gは、回転軸28と長脚26の先端26a(作用部)とを結ぶ線上にない。このように回転軸28と重心Gとを結ぶ線(重心線)と、回転軸28と先端26aとを結ぶ線(作用線)との間に角度Aを設けることにより、誤使用防止機構が作動し始める不能開始角度を小さくすることができる。つまり、回転軸28
と重心Gとを結ぶ重心線が鉛直線と平行になるようにストッパ21は回転し、作用部は角度Aだけ湾曲部23aに近い位置にあるため、噴射部材10を少し傾けるだけで作用部(先端26a)を湾曲部23上に配置させることができる。このように角度Aに応じてその誤使用防止機構の操作不能角度の不能開始角度を予め設定することができる。特に、角度Aを大きくすればするほど、小さな傾きで回転軸と作用部とを結ぶ作用線上に湾曲部23aがくるようにできるため、誤使用防止機構が作動し始める不能開始角度をより小さくすることができる。回転軸28は、後述するように外郭部16の内面に設けられた軸受けによって支持される。しかし、ストッパ21に軸受けを設け、外郭部16の内面に回転軸を設けてもよい。
【0015】
第1支持突起22は、ストッパ21が正立状態のときに短脚27を支持するものである。第1支持突起22は、回転軸を含む鉛直線と隣接するように反回転方向側(
図3aの右側)であって、回転軸より下方に設けられている。ここでは、外郭部16の内面から突出させている。第1支持突起22は、回転軸を通る鉛直線上より回転方向側(
図3aの左側)に重心Gがくるようにストッパ21を保持するものである。これにより、正立状態において、自重により反時計回りに回転しようとするストッパ21を第1支持突起22で支持し、その回転を制止させている。このように重心Gが回転軸を通る鉛直線上に来ないようにすることにより、正立状態においてストッパ21を安定させることができる。さらに、ストッパ21の重心が回転軸を含む鉛直線より回転方向側(
図3aの左側)となるようにストッパ21を保持しているため、ストッパ21が回転し始める傾斜角度(ストッパ作動角度)を任意に設定できる。つまり、回転軸を含む鉛直線と、回転軸と重心とを結ぶ重心線との間の角度Bがストッパ作動角度となる。
【0016】
制御部23は、ストッパ21が所定の範囲回転したとき、ストッパ21の長脚26の先端26aと当接する(あるいは隣り合う)部位であり、操作部14の作動方向側に設けられている(
図3b、c参照)。制御部23は、操作部の下端に、下方を向くように設けられている。制御部23は、操作部14が操作されていない状態で、ストッパ21を所定の範囲回転させたときの長脚26の先端の軌跡と実質的に同じ形状の湾曲部23aを有している。つまり、ストッパ21が所定の範囲回転したとき、長脚26の先端26aが湾曲部23a上に配置される。そのため、レバー13を指で引いて操作部14を作動させようとしても、操作部の作動方向側(この実施形態では実質的に下方向側)に配置された長脚26がそれを阻止し、操作部14を作動できない。この湾曲部23aの長さ(あるいは形状)により、噴射部材10の操作不能角度に範囲を持たせることができる。例えば、湾曲部23aの長さ(縁部の長さ)を長くすることにより、作用部が湾曲部23a上に配置される状態が長くなり、操作不能角度の範囲を大きくすることができる。
【0017】
第2支持突起24は、噴射部材10の傾斜状態において、ストッパ21が所定の角度以上回転しないように、長脚26を支持するものである(
図3c参照)。この第2支持突起24は、回転軸を含む鉛直線と隣接するように反回転方向側(
図3aの右側)であって、回転軸より上方に設けられており、ストッパ21の長脚26が鉛直方向より後方(
図3cの右側)に行かないように第2支持突起24は設けられている。なお、このような第2支持突起24は、作用部が湾曲部23a上にある状態で、ストッパ21が所定の角度以上に回転しないように構成されていれば、その位置は特に限定されない。この第2支持突起24も外郭部16の内面に設けられている。この第2支持突起24は、所定の角度以上でも誤使用防止機構が作動するように、誤使用防止機構の作動角度の限界を無くしており、つまり、操作不能角度に範囲を持たしている。
【0018】
このように誤使用防止機構15は構成されているため、噴射部材10をストッパ作動角度まで傾けることによりストッパ21は回転し始め、そして、操作不能角度の不能開始角度まで傾けることにより長脚26の先端26aが操作部の作動方向側にある制御部23(
湾曲部23a)上に配置されてレバー13による操作が不能となる。さらに、噴射部材10を傾斜させても第2支持突起24によってストッパ21は、長脚26の先端26aが操作部の湾曲部23a上に配置された状態で保持されるため、レバー13による操作は引き続き不能となる。
【0019】
図2aに戻って、本体11の外郭部16は、噴射容器Dの上端を覆い、かつ、噴射容器Dに取り付けられる噴射ノズル12及び操作部14を保護するように噴射容器Dの上部に収容空間を形成するものである。外郭部16の下端には、噴射容器の外周と係合する筒状の取付部18が設けられている。
外郭部16の形状は、上方に向かって湾曲状に前方(
図1の左方向)に突出するノズル口16aを有し、上方に向かって後方(
図1の右方向)に湾曲状に突出している。外郭部16のノズル口16aの上端は、後方の上端より高くなっている。つまり、外郭部16の上端面は、前方から後方に向かって斜め下方に延びている。そして、蓋部17は、外郭部16の上端面に斜めにして取り付けられている。
また、外郭部16の前方(
図1の左方向)には、上端から下方に向かって形成される切欠き16bが形成される。この切欠き16bを蓋部17で覆うことにより、噴射ノズル12を通すノズル挿通口となる。さらに、外郭部16の前方には、レバー13を通すレバー挿通口16cが形成されている。
さらに、外郭部16の突出した後方の内面上部には、後述する操作部14の回転軸32の軸受けが形成されている。
そして、外郭部16の前方の内面下部には、前述の誤使用防止機構15が設けられている。
【0020】
噴射ノズル12は、下方に開口したステムSを受け入れるステム係合部12aと、前方に向いた内容物を吐出するノズル部12bと、それらを繋ぐ筒状のパイプ12cとからなる。ノズル部12bは先端に噴射孔を備えており、噴射孔は正立状態で斜め上方を向いている。パイプ12cは、ステム係合部12aから上方に伸び、前方に屈曲している。また、パイプ12cの下部には、半径方向外側に突出したフランジ部12dが形成されている。
【0021】
操作部14は、
図2a、bに示すように、前後方向に延びる平行に並んだ2枚の支持面31と、その2枚の支持面31の前端を、上部を残して連結するレバー13とからなる。操作部14は、2枚の支持面31で噴射ノズル12のパイプ12cを囲み、レバー13の上の開口14a(
図2a)からパイプ12c及びノズル部12bを通すものである。
支持面31は、前方上端の角が略直角となっており、後方に向かって細くなり、前辺部31a、上辺部31b及び斜辺部31cとからなる略直角三角形を呈している。前辺部31aでレバー13と連結しており、後部に外郭部の軸受けに挿入される回転軸32が設けられている。上辺部31bは蓋部17に沿って延びるように構成されている。下方を向いた斜辺部31cは、その前部に上方に凹むように湾曲した湾曲部23a(誤使用防止機構15)が形成されており、その中央に下方に突出するように湾曲した支持湾曲部29が形成されている。支持湾曲部29は、内部に通した噴射ノズル12のフランジ部12dと係合するように構成されている。制御部23の湾曲部23aの形状は、前述したようにストッパの先端の軌跡と実質的に同じ形状を呈している。ここでは略直角三角形状の支持面31を挙げているが、後部上端に回転軸が設けられ、下方に向いた斜辺部が支持湾曲部及び湾曲部を有していれば、支持面31の形状は特に限定されない。
レバー13は、下方に向かって前方に湾曲している。
このように構成されているため、操作部14は、レバー13を内側に引くことにより、支持面31の回転軸32を中心とし、下方に向かった円運動をする。つまり、この運動の方向が操作部の作動方向となる。
【0022】
次に、
図4を用いて
図1の噴射部材10の操作についての説明を行う。
噴射部材10の正立状態のときは、
図4aに示すように、ストッパ21は、ストッパ21の長脚26の先端26aが操作部14の制御部23と離れた位置で第1支持突起22に支持されているため、操作部14の作動が可能となっている。つまり、本体の外郭部16の前方から突出しているレバー13を内側(矢印方向)に引くことによりステムSを下方に押し下げることができる。
このとき、レバー13が力点、支持面31の回転軸32が支点、噴射ノズルのフランジ部12dと係合する支持湾曲部29が力点としたテコによって、噴射ノズル12のフランジ部12dを介してステムSを押し下げる。なお、支持湾曲部29とフランジ部12dの当接点は、操作部14の作動に応じて移動する。つまり、支持湾曲部29の湾曲形状は、力点として効果を発揮する形状を呈している。
【0023】
図4bに示すように、噴射部材10が操作不能角度の不能開始角度に傾いたとき(この場合、噴射容器の軸が鉛直線に対し90°傾いたとき)、ストッパ21は回転軸28と重心Gとを結ぶ重心線L1が鉛直線と平行となるように回転する。そして、ストッパ21の長脚26の先端26aと回転軸28とを結ぶ作用線上(長脚26の軸線上)に湾曲部23aが位置する。そのため、操作部14の作動が抑制される。つまり、レバー13を内側に引くことにより、その力に対抗するように、ストッパ21の長脚26の先端26aと操作部の作動方向(実質的に下方)側の湾曲部23aとが係合するため、レバー13の内側への動きが抑制される。
さらに、
図4cに示すように、噴射部材10が誤使用防止機構が作動し始める不能開始角度以上で所定の角度以上に傾いた状態では(この場合、噴射容器の軸が鉛直線に対し180°傾いたとき)、ストッパ21は長脚26が上方(
図4cでは下方)を向いた状態で第2支持突起24によって支持される。そのため、この状態でも、長脚26の軸線上に湾曲部23aがあるため、レバー13を内側に引くことにより、長脚26の先端26aと制御部の湾曲部23aとが係合し、操作部14の作動が抑制される。
このように、噴射部材10は、正立状態ではレバー13を内側に引いて作動させることができ、噴射部材10が操作不能角度以上に傾いた傾斜状態ではレバー13を内側に引くことができず作動しない。
そして、誤使用防止機構により噴射を制御する操作不能角度は、制御部の湾曲面23aの形状、作用部と回転軸と重心を結ぶ重心線L1との角度A、及び、第2支持突起24により不能開始角度または操作不能角度の範囲を任意に設定することができ、操作不能角度の不能開始角度は噴射容器の軸が鉛直線に対し30°以上、好ましくは45°以上、特に好ましくは60°以上と設定できる。
【0024】
図5の誤使用防止機構35は、第1支持突起及び第2支持突起を兼ねた支持突起35aを備えている。また、制御部23(支持面31の斜辺部31cの前方)がレバーの下端から湾曲部23aにかけて切り欠かれている(符号23b)。他の構成は、
図1のストッパ21と実質的に同じものであり、ストッパ21と、湾曲部23aを備えている。支持突起35aは、ストッパ21の長脚26と短脚27との間の外郭部16の内面に設けられている。支持突起35aは、
図5aに示すように、正立状態において、その上面で長脚26を支持し、
図5cのように、倒立させた状態において、その下面で短脚27を支持するものである。この実施の形態では、制御部23の切欠き23bが形成されているため、正立状態において、ストッパ21の長脚先端26aとレバー13との間の隙間Sを大きく確保することができ、レバー13を操作しやすい。また、傾斜状態では長脚の先端26aが制御部23の湾曲部23aと当接し始める不能開始角度を設定しやすい。
【0025】
次に、噴射部材10に用いることができるストッパの他の形態について示す。
図6aのストッパ36は、棒状のものであり、上端に回転軸を備え、下端で制御部と係合する。このものは、回転軸と下端(作用部)とを結ぶ直線上に重心があるため、誤使用
防止の範囲が狭くなる。つまり、ストッパ36は回転軸と重心とを結ぶ重心線が鉛直線と平行となるように回転するため、その重心線上に湾曲部23aが来るまで傾けないと、ストッパ36による湾曲部23aとの当接が可能とならない。また、正立状態でストッパ36が水平となる状態で支持するように第1支持突起36aを設けている。このように正立状態において、ストッパ36の作用部を湾曲部23aの近辺で保持させることにより、ストッパ作動角度と操作不能角度の不能開始角度とを実質的に同じにすることができる。第2支持突起24は、
図1のものと実質的に同じ箇所に設けられている。この形態では、ストッパ作動角度が90°となり、それよりわずかに傾けた角度が操作不能角度の不能開始角度となる。
【0026】
図6bのストッパ37は、L字型ストッパであり、太脚37aと、細脚37bとからなり、太脚37aと細脚37bの交点が回転軸となったものである。この形態では、重心は太脚37a方向に寄る。そのため、回転軸と作用部(細脚部の先端)を結ぶ作用線と、回転軸と重心を結ぶ重心線L1との角度Aは
図1のストッパ21よりも大きくなり、操作不能角度の不能開始角度はストッパ21よりも小さくなる。一方、回転軸を含む鉛直線と、回転軸と重心とを結ぶ重心線L1との角度Bはストッパ21よりも小さくなり、ストッパ37が回転し始める角度(ストッパ作動角度)は小さくなる。このように、脚の重さを変えることにより、ストッパ37の重心を変えることができ、操作不能角度の不能開始角度およびストッパ作動角度を適宜設定することができる。また、この実施の形態では、正立状態におけるストッパの長脚先端近辺にまで湾曲部23aを伸ばしており、ストッパが作動し始めるとすぐに長脚の先端が当接するため、操作不能角度の不能開始角度をたとえば30°とでき、操作不能角度を広く設定できる。
【0027】
図6cのストッパ38は、長脚38aと、その長脚38aに対して鈍角に設けられた短脚38bとからなり、長脚38aと短脚38bの交点に回転軸が設けられたものである。このように長脚38aと短脚38bとの間の角度を鈍角とすることにより、角度A及び角度Bを共に大きくすることができる。そのため、重心位置に応じた操作不能角度及びストッパ作動角度の自由度が大きくなる。また、この実施の形態では、湾曲部23aを短くしており、ストッパの長脚先端が回転軸を含む鉛直線上に近い位置にまで移動しないと当接しないため、操作不能角度の不能開始角度をたとえば90°とでき、操作不能角度を狭く設定できる。
【0028】
図6dのストッパ39は、直角三角形状のストッパであり、長辺部39aと、短辺部39bと、斜辺部39cとからなるものであり、長辺部39aと短辺部39bとを結ぶ直角の角部近辺が回転軸となったものである。長辺部39aの先端近辺が湾曲部23aと係合する作用部となる。長辺部39aと短辺部39bの長さを調整することにより、その重心を設定することができ、操作不能角度の不能開始角度及びストッパ作動角度を任意に調整することができる。
図6eのストッパ40は、略直角二等辺三角形状のストッパであり、第1辺部40aと、第2辺部40bと、斜辺部40cとからなるものであり、第1辺部40aと第2辺部40bとを結ぶ直角の角部近辺が回転軸となったものである。また、斜辺部40cと湾曲部23aが実質的に同じ湾曲形状となっている。このような湾曲形状としては円弧が好ましい。これにより、操作不能角度においてレバーを作動させたとき、ストッパ40は想像線のように回転し、斜辺部40cと湾曲部23aとが面当接し、傾斜状態においてストッパ40を安定して保持できる。
【0029】
このようにストッパの外形は、回転軸と、操作部の湾曲部と係止する部位(作用部)を備えていれば特に限定されない。なお、操作部の湾曲部と係止する部位(作用部)と回転軸とを結ぶ直線と、重心と回転軸とを結ぶ直線とが角度を有するように構成することにより、操作不能角度の不能開始角度を調整することができる。