(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の技術では、ドライバが車輪のトルク配分値を確認するためにディスプレイを視認する必要がある。しかしながら、例えばステアリングを素早く、大きく操作したことで車輪のトルク配分値が変化した場合、回転したステアリングによってディスプレイが遮られるため、ドライバがディスプレイを視認することが困難となる。
【0006】
また、車輪のトルク配分値が比較的大きい状況では車両の挙動が大きくなるため、ドライバは前方を注視して運転する必要がある。このとき、ドライバが車輪のトルク配分値を確認するためディスプレイを見ると、前方確認が疎かになってしまうおそれがある。したがって、従来技術では、ディスプレイにトルク配分を表示させていても、有効にドライバに提示できていなかった。
【0007】
そこで、トルク配分値をディスプレイに表示する代わりに、トルク配分値が把握できるように各車輪に対応した車内空間の位置に音を定位し、ドライバに対し、聴覚的にトルク配分値を把握させることが考えられる。しかし、常時、トルク配分値に応じた音が発生するとなるとドライバが煩わしさを覚えるおそれがある。また、音楽、カーナビゲーションの音声、および走行に関わる他の報知音等とトルク配分値の報知音とが混同し、ドライバが音楽等を良好に聞くことができなくなるという問題が生じ得る。
【0008】
そこで、本発明は、トルク配分値を適切にドライバに報知することができる自動車のトルク配分音響提示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の自動車のトルク配分音響提示装置は、車両における複数の車輪のトルク配分を制御するトルク制御部と、複数の車輪の車軸にかかるトルク配分値を導出するトルク導出部と、トルク導出部により導出された各車輪の車軸にかかるトルク配分値の大きさに応じ、トルク配分値が相対的に大きい車輪に対応した車内空間の位置の音量が大きくなるように複数のスピーカから任意の音を出力させる音制御部と、予め定められた所定の条件
である、降雨と判定された場合、車両に設けられたワイパの作動が検出された場合、車両に設けられた方向指示器の作動が検出された場合、車両の走行モードが運動性能重視の走行モードであると検出された場合、車両が走行しているカーブの曲率またはカーブの進入速度のいずれか一方または双方を検出し、トルク制御が必要と判定された場合、車両が走行している走行路の傾斜角度を検出し、走行路が上り坂であると判定された場合、の群から選択される1または複数の条件を満たすか否かを判定し、
所定の条件を満たす場合、音制御部に任意の音を出力させ、所定の条件を満たさない場合、音制御部に
任意の音の出力を制限させる条件判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トルク配分値を適切にドライバに報知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態の電気自動車(自動車)100の構成を示す図である。
図1に示すように、電気自動車100は、右前輪110a、左前輪110b、右後輪110cおよび左後輪110dが、それぞれギヤボックス120a、120b、120c、120d内のギヤを介して駆動モータ130a、130b、130c、130dに接続される。駆動モータ130a、130b、130c、130dは、インバータ140a、140b、140c、140dをそれぞれ介してバッテリ150に接続され、バッテリ150から供給される電力により回転し、発電されることで得られる電力をバッテリ150に送出する。電気自動車100は、駆動モータ130a、130b、130c、130dをそれぞれ駆動(回転)することで、右前輪110a、左前輪110b、右後輪110cおよび左後輪110dを独立して回動することができる。
【0015】
バッテリ150は、バッテリコントローラ160に接続され、バッテリコントローラ160により制御される。バッテリコントローラ160は、バッテリ150に加え駆動制御装置170にも接続され、バッテリ150の充放電電流量、温度等を監視するとともに、充放電電流量に基づいてバッテリ150の残容量を算出する。そして、これらバッテリ150に関するデータを必要に応じて駆動制御装置170に出力する。
【0016】
また、電気自動車100は音を出力可能なスピーカ180a、180b、180c、180dを備えている。スピーカ180a、180b、180c、180dはそれぞれ、電気自動車100の車内空間において、各車輪110a、110b、110c、110dに対応する位置近傍に設けられている。なお、スピーカ180a、180b、180c、180dは、車両において音楽再生等の用途で既に搭載されているものを利用することができる。
【0017】
駆動制御装置170は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、電気自動車100全体を制御する。具体的には、駆動制御装置170は、車輪回転数センサ190a、190b、190c、190d、アクセルペダルセンサ200、ハンドルセンサ210、シフトセンサ220、加速度センサ230、ヨーレートセンサ240、雨滴感知センサ250それぞれに接続され、各センサ(190a、190b、190c、190d、200、210、220、230、240、250)で検出された値を示す信号が入力される。また、駆動制御装置170は、インバータ140a、140b、140c、140dと接続されている。そして、後述するように、各センサ(190a、190b、190c、190d、200、210、220、230、240、250)から入力される信号に基づき、インバータ140a、140b、140c、140dを介して駆動モータ130a、130b、130c、130dの駆動を制御する。
【0018】
車輪回転数センサ190a、190b、190c、190dは、例えばレゾルバでなり、右前輪110a、左前輪110b、右後輪110cおよび左後輪110dの回転数をそれぞれ検出し、回転数を示す信号を駆動制御装置170に出力する。アクセルペダルセンサ200は、アクセルペダルの踏み込み量を検出し、踏み込み量を示す信号を駆動制御装置170に出力する。ハンドルセンサ210は、ハンドルの回転角度を検出し、回転角度を示す信号を駆動制御装置170に出力する。シフトセンサ220は、シフトレバーにより入れられたシフト位置(ニュートラル、ドライブ、バック等)を検出し、シフト位置を示す信号を駆動制御装置170に出力する。加速度センサ230は、電気自動車100の加速度を検出し、加速度を示す信号を駆動制御装置170に出力する。ヨーレートセンサ240は、電気自動車100のヨーレートを検出し、ヨーレートを示す信号を駆動制御装置170に出力する。
【0019】
駆動制御装置170は、車輪回転数センサ190a、190b、190c、190d、アクセルペダルセンサ200、ハンドルセンサ210からの信号を所定間隔毎にそれぞれ取得する。そして、シフトセンサ220が、シフトレバーがドライブのシフト位置にされたことを検出し、そのシフト位置を示す信号を駆動制御装置170に出力すると、駆動制御装置170は駆動モータ130a、130b、130c、130dの駆動制御を実行する。
【0020】
また、駆動制御装置170は、雨滴感知センサ250から信号を取得する。雨滴感知センサ250は不図示のフロントガラスに設けられ、フロントガラスの雨滴量を検知し、雨滴量を示す信号を駆動制御装置170へ出力する。駆動制御装置170は、所定の値以上の雨滴量であると判定すると不図示のワイパを作動させる。
【0021】
駆動制御装置170は、各車輪110a、110b、110c、110dの車軸に掛かるトルク配分値(「各車輪110a、110b、110c、110dのトルク配分値」とも称する)の音による報知を行う。このとき、駆動制御装置170は、トルク制御部260、トルク導出部262、音制御部264、条件判定部266、車外状況認識部268を含んで構成され、トルク配分音響提示装置として機能する。
【0022】
トルク制御部260は、アクセルペダルセンサ200から送信されるアクセルペダルの踏み込み量、および、車輪回転数センサ190a、190b、190c、190dに基づいて算出される車速から、予め駆動制御装置170のROMに格納されたトルクマップに基づいて、走行に必要とされる必要トルクを算出する。そして、トルク制御部260は、加速度センサ230、ヨーレートセンサ240からの信号等に基づいて、各車輪110a、110b、110c、110dの車軸にかかるトルクの合計が、算出した必要トルクとなるようにトルク配分する。こうして、各車輪110a、110b、110c、110dにかかるトルク配分の割合の値(トルク配分値)を変更するトルク制御を行う。
【0023】
なお、各車輪110a、110b、110c、110dのトルク配分値は、各車輪110a、110b、110c、110dの停止時が0%である。また、各車輪110a、110b、110c、110dが前進する向きに作用する場合にプラスの値、各車輪110a、110b、110c、110dが後退する向きに作用する場合にマイナスの値となる。
【0024】
トルク制御部260が行うトルク制御では、各々の車輪のトルク配分値が変化することで、車両の走行特性に変化が生じることとなる。例えば、カーブを旋回する場合、右側の車輪(右前輪110a、右後輪110c)と左側の車輪(左前輪110b、左後輪110d)との間のトルク配分値を変更しヨーモーメントが発生する。こうして、ステアリングを切ることで発生するコーナリングフォースに加え、ヨーモーメントの発生により、電気自動車100の回頭性が向上する。具体的には、電気自動車100の旋回に必要な必要トルクを100%とする。そして、トルク制御部260は、右に旋回する場合には、左側の車輪のトルク配分値(左前輪110bと左後輪110dとのトルク配分値の合計値)を、右側の車輪のトルク配分値(右前輪110aと右後輪110cとのトルク配分値の合計値)より高く配分する(例えば、右前輪110a:左前輪110b:右後輪110c:左後輪110d=10%:40%:10%:40%)。同様に、左に旋回する場合には、右側の車輪のトルク配分値を左側の車輪のトルク配分値より高く配分する(例えば、右前輪110a:左前輪110b:右後輪110c:左後輪110d=40%:10%:40%:10%)。
【0025】
また、上り坂を走行する場合、後輪(右後輪110c、左後輪110d)にかかる荷重が増加する。このため、前輪(右前輪110a、左前輪110b)と、後輪との間のトルク配分値を変更することでスムーズな発進が可能となる。具体的には、上り坂の走行に必要な必要トルクを100%とする。そして、トルク制御部260は、後輪のトルク配分値の合計から、前輪のトルク配分値の合計を減算した差分が、平坦路を走行している場合に比べて、大きくなるように配分する(例えば、右前輪110a:左前輪110b:右後輪110c:左後輪110d=20%:20%:30%:30%)。
【0026】
トルク導出部262は、各車輪110a、110b、110c、110dの車軸にかかるトルク配分値を導出し、トルク配分値を音制御部264に出力する。ただし、トルク制御部260によるトルク制御におけるフィードバックに、各車輪110a、110b、110c、110dのトルク配分値を計測する構成が含まれる場合、その計測する構成をトルク導出部262として利用することができる。また、音制御部264に出力するトルク配分値として、トルク制御におけるトルク配分値の目標値を利用してもよく、トルク配分値の目標値を取得する構成をトルク導出部262として利用することができる。
【0027】
音制御部264は、トルク導出部262によりトルク配分値を示す信号が入力され、トルク配分値に応じた音量で疑似モータ作動音やロードノイズ音等、任意の報知音を出力する。このとき、音制御部264は、各車輪110a、110b、110c、110dに対応した車内空間の位置に定位するようにスピーカ180a、180b、180c、180dから報知音を出力させる。ここで、各車輪110a、110b、110c、110dに対応した車内空間の位置とは、少なくともドライバが報知音を聞いて、トルク配分値が変更された各車輪110a、110b、110c、110dの位置を特定できる車内空間の位置である。
【0028】
なお、各車輪110a、110b、110c、110dそれぞれの車軸にかかるトルク配分値(−100%から100%)の絶対値が所定の値(本実施形態では30)未満であるとき、音制御部264は報知音を出力しない。そして、トルク配分値の絶対値が30から100であるとき、音制御部264が報知する報知音の音量は、例えば4段階のレベルに分けられ出力される。具体的には、各車輪110a、110b、110c、110dのトルク配分値の絶対値が30以上50未満のときの音量はレベル1、50以上70未満のときの音量はレベル2、70以上90未満のときの音量はレベル3、90以上のときの音量はレベル4に分ける。トルク配分値の絶対値が上がるに連れて報知音の音量のレベルが高くなり、音が大きくなる。
【0029】
したがって、例えば、右前輪110aのトルク配分値が65%である場合、報知音は右前方に定位するようにスピーカ180aからレベル2の音量で出力される。その結果、ドライバは出力される報知音の位置と音量から、どの車輪のトルク配分値がどの程度変化しているかを把握することができる。
【0030】
しかしながら、常時、トルク配分値に応じた報知音が発生すると、ドライバが煩わしさを覚えるおそれがある。また、音楽、カーナビゲーションの音声、および他の報知音等と混同し、ドライバが音楽等を良好に聞くことができない場合がある。そこで、本実施形態の駆動制御装置170は、トルク配分値が大きく変化する可能性があり、ドライバに電気自動車100の車輪110a、110b、110c、110dにおけるトルク配分値を報知する必要がある状況においてのみ報知音を出力する。また、それ以外の状況下では、報知音の出力を制限する。
【0031】
具体的には、駆動制御装置170は条件判定部266を備え、条件判定部266によりトルク配分値を報知する条件(所定の条件)を満たすと判定されると、トルク導出部262によりトルク配分値が導出される。そして、トルク配分値の絶対値が所定の値(本実施形態では30)以上である場合に、音制御部264により、トルク配分値の絶対値に応じた音量で、トルク配分値の絶対値が相対的に大きい車輪110a、110b、110c、110dに対応した車内空間の位置に定位するようにスピーカ180a、180b、180c、180dから報知音が出力される。また、トルク配分値を報知する条件を満たさないと判定されると、トルク導出部262によってトルク配分値が導出されず、報知音は出力されない。同様に、相対的にトルク配分値の絶対値が大きい車輪110a、110b、110c、110dにおけるトルク配分値の絶対値が30未満である場合、トルク配分値を報知する条件を満たしていたとしても報知音は出力されない。
【0032】
トルク配分値を報知する条件としては、降雨の場合と、旋回する場合と、上り坂の場合と、運動性能重視の走行モードである場合がある。
【0033】
降雨の場合、走行路が雨により濡れることで路面の摩擦係数μが小さくなり、電気自動車100がスリップする可能性が高くなるため、各車輪110a、110b、110c、110dのトルク配分値が比較的大きく変化する可能性がある。この場合、ドライバに電気自動車100の各車輪110a、110b、110c、110dにおけるトルク配分値を報知する必要が生じる。したがって、ドライバによるワイパの作動が検出された場合、および、車外状況認識部268により、雨滴感知センサ250が所定の量以上の雨滴を検知したと判定された場合のうちいずれか一方または双方が満たされたとき、条件判定部266は降雨である判定し、トルク導出部262はトルク配分値を導出する。そして、トルク配分値の絶対値が30以上である場合、音制御部264は、トルク配分値の絶対値の大きさに応じて報知音を出力する。
【0034】
旋回する場合、右側の車輪(右前輪110a、右後輪110c)と左側の車輪(左前輪110b、左後輪110d)とのトルク配分値を変えることで電気自動車100にヨーモーメントを発生させ、電気自動車100の回頭性を向上させる。このため、旋回する場合にはトルク配分値が比較的大きく変化することとなり、ドライバに電気自動車100の車輪110a、110b、110c、110dにおけるトルク配分値を報知する必要が生じる。したがって、駆動制御装置170がドライバによるウインカ等の方向指示器の作動を検出した場合に、条件判定部266は電気自動車100が旋回すると判定する。また、車外状況認識部268が走行路におけるカーブの曲率またはカーブの進入速度のいずれか一方または双方を検出し、トルク制御部260がトルク制御が必要と判定した場合、条件判定部266は電気自動車100が旋回すると判定する。したがって、上記の二つの条件のうちいずれか一方または双方が満たされたとき、条件判定部266は電気自動車100が旋回すると判定し、トルク導出部262はトルク配分値を導出する。そして、トルク配分値の絶対値が30以上である場合、音制御部264はトルク配分値の絶対値の大きさに応じて報知音を出力する。
【0035】
上り坂の場合、後輪(右後輪110c、左後輪110d)にかかる荷重が増加するため、前輪(右前輪110a、左前輪110b)と後輪(右後輪110c、左後輪110d)とでトルク配分値が比較的大きく変化することとなる。このため、上り坂の場合には、ドライバに電気自動車100の車輪110a、110b、110c、110dにおけるトルク配分値を報知する必要が生じる。したがって、車外状況認識部268が走行路の傾斜角度を検出し、条件判定部266が走行路は所定の角度以上である上り坂であると判定すると、トルク導出部262はトルク配分値を導出する。そして、トルク配分値の絶対値が30以上である場合、音制御部264はトルク配分値の絶対値の大きさに応じて報知音を出力する。
【0036】
運動性能重視の走行モードの場合、電気自動車100は、例えば雪道や山道の上り坂を走行している可能性が高く、車輪110a、110b、110c、110dのトルク配分値が比較的大きく変化する可能性がある。このため、ドライバに電気自動車100の車輪110a、110b、110c、110dにおけるトルク配分値を報知する必要が生じる。したがって、運動性能重視の走行モードである場合、条件判定部266が運動性能重視の走行モードであると判定し、トルク導出部262がトルク配分値を導出する。そして、トルク配分値の絶対値が30以上である場合、音制御部264はトルク配分値の絶対値の大きさに応じて報知音を出力する。
【0037】
以上まとめると、条件判定部266は、降雨の場合と、旋回する場合と、上り坂の場合と、運動性能重視の走行モードである場合の群から選択される1または複数の条件が満たされたと判定すると、トルク導出部262はトルク配分値を導出する。そして、トルク配分値の絶対値が所定の値(本実施形態では30)以上である場合、音制御部264は、トルク配分値の絶対値が相対的に大きい車輪110a、110b、110c、110dの位置に対応した車内空間の位置に定位するように、トルク配分値の絶対値の大きさに応じた音量の報知音をスピーカ180a、180b、180c、180dから出力する。また、条件判定部266が当該条件が満たされないと判定すると、トルク導出部262はトルク配分値を導出しないため、報知音は出力されない。同様に、トルク配分値の絶対値が相対的に大きい車輪110a、110b、110c、110dにおけるトルク配分値の絶対値が、30以下である場合、トルク配分値を報知する条件を満たしていたとしても報知音は出力されない。
【0038】
したがって、トルク配分値に応じた報知音を出力させる状況を制限することで、ドライバが煩わしさを覚えるおそれを低減することができる。また、音楽、カーナビゲーションの音声、および他の報知音等とトルク配分値の報知音とを混同する可能性を低減することが可能となり、ドライバは良好に音楽等を聞くことができる。
【0039】
図2は、トルク配分値に応じた報知音を出力させる処理の流れを示すフローチャートである。
図2に示すように、条件判定部266により、トルク配分値を報知する条件(降雨の場合、旋回する場合、上り坂の場合、運動性能重視の走行モードである場合)を満たすか否かを判定する(S200)。条件を満たさない場合(S200におけるNO)、ステップS200からの処理を繰り返す。
【0040】
上記ステップS200においてトルク配分値を報知する条件が満たされると判定されると(S200におけるYES)、トルク導出部262は各車輪110a、110b、110c、110dの車軸にかかるトルク配分値を導出し(S202)、音制御部264は、導出されたトルク配分値の絶対値が所定の値(本実施形態では30)以上であるかを判定する(S204)。トルク配分値の絶対値が30未満であると判定されると(S204におけるNO)、ステップS200からの処理を繰り返す。
【0041】
上記ステップS204においてトルク配分値の絶対値が所定の値以上であると判定されると(S204におけるYES)、トルク配分値の絶対値を大きさに応じて5段階に分類する(S206)。そして、トルク配分値の絶対値が相対的に大きい車輪110a、110b、110c、110dの位置に対応した車内空間の位置に定位するように、分類された段階に応じた音量の報知音をスピーカ180a、180b、180c、180dから出力し(S208)、ステップS200からの処理を繰り返す。
【0042】
上述したように、本実施形態の駆動制御装置170では、トルク配分値を報知する条件(所定の条件)を満たす場合に報知音が出力され、所定の条件を満たさない場合は報知音が出力されない。したがって、ドライバが煩わしさを覚えることなく報知音を認識することができ、また他の音楽や音声とトルク配分値の報知音とを混同する可能性を低減することが可能となり、適切にトルク配分値をドライバに報知することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0044】
例えば、上述の実施形態では、駆動モータ130a、130b、130c、130dにより駆動する電気自動車100を用いて説明したが、本発明は電気自動車100に限らずエンジンにより駆動する四輪駆動車に適用することができる。
【0045】
また、上述の実施形態における電気自動車100において、スピーカ180a、180b、180c、180dを各車輪110a、110b、110c、110dに対応する位置近傍に設ける構成とした。しかしながら、前後左右の位置に定位して音を出力できれば、スピーカの数と配置はこれに限られない。
【0046】
また、上述の実施形態では、トルク配分値を報知する報知音として疑似モータ作動音やロードノイズ音を例として挙げたが、音楽や音声等を使用してもよい。
【0047】
また、トルク配分値の報知音を出力する際、音楽、カーナビゲーションの音声、および走行に関わる他の報知音等の出力を下げてもよい。
【0048】
また、上述の実施形態では、トルク配分値が相対的に大きい車輪110a、110b、110c、110dに対応した車内空間の位置に定位するようにスピーカ180a、180b、180c、180dから報知音が出力されるとした。しかしながら、トルク配分値を報知する車輪110a、110b、110c、110dの数は1でも複数でもよい。