特許第6243664号(P6243664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243664
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】端子付きフラットケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/24 20060101AFI20171127BHJP
   H01R 12/59 20110101ALI20171127BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20171127BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20171127BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20171127BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01R4/24
   H01R12/59
   H02G1/14
   H01B7/00 306
   H01B7/08
   H01B13/00 525G
   H01B13/00 521
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-180884(P2013-180884)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-50029(P2015-50029A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】花▲崎▼ 恒
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−352888(JP,A)
【文献】 特開2006−156148(JP,A)
【文献】 特開2001−256846(JP,A)
【文献】 特開2003−203741(JP,A)
【文献】 特開2005−050718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/24
H01R 12/59
H01R 12/77
H01R 43/01
H01R 43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラット導体がフラット絶縁被覆で覆われているフラットケーブルと、
端子本体部と、この端子本体部から突出している接続本体部と、この接続本体部から突出している複数のクリンプ片とを備えている端子と、
を有し、前記各クリンプ片が前記フラットケーブルをこの厚さ方向で貫通し折り曲げられていることで、前記端子が前記フラットケーブルに設けられ、前記各クリンプ片が前記フラット導体に導通し、前記各クリンプ片が前記フラットケーブルをこの厚さ方向で貫通する前に、前記各クリンプ片が貫通する前記フラットケーブル部位に、前記フラット導体が非露出で前記フラット導体が前記フラット絶縁被覆の部位で覆われている態様の凹部が設けられていることを特徴とする端子付きフラットケーブルの製造方法
【請求項2】
請求項1に記載の端子付きフラットケーブルの製造方法において、
前記各クリンプ片を前記フラットケーブルの厚さ方向で貫通させ折り曲げることが、一工程で連続してなされることを特徴とする端子付きフラットケーブルの製造方法
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の端子付きフラットケーブルの製造方法において、
前記凹部は、フラットケーブル集約体を成形して前記フラットケーブルを得るときの打痕で形成されたものであり、前記凹部のところの前記フラット導体の部位が、前記打痕の影響で変形していることを特徴とする端子付きフラットケーブルの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付きフラットケーブルの製造方法に係り、特に、端子のクリンプ片によって端子をフラットケーブルに設置しているものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図12で示すように、フラット導体301がフラット絶縁被覆303で覆われているフラットケーブル305に、端子(フラットケーブル接続金具)307のクリンプ片309を貫通させて折り曲げることで、端子307をフラットケーブル305に設置している端子付きフラットケーブルが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、図12では、フラットケーブル305に端子307を設置する途中の状態を示している。
【0004】
ここで、フラットケーブル305への端子307の設置について詳しく説明する。フラットケーブル305への端子307の設置は、上型311と第1の下型313と第2の下型315とを用いてなされる。
【0005】
まず、上型311が第1の下型313の真上で第1の下型313から離れている状態において、第1の下型313にフラットケーブル305を載置しフラットケーブル305に端子307を載置する。
【0006】
続いて、上型311を下降して端子307のクリンプ片309をフラットケーブル305に貫通させた後(図12参照)、上型311を上昇する。
【0007】
続いて、第1の下型313と第2の下型315とを移動して、上型311の真下に第2の下型315を位置させ、上型311を下降してフラットケーブル305を貫通している端子307のクリンプ片309を折り曲げ、端子307をフラットケーブル305に設置する。
【0008】
端子307のフラットケーブル305への設置をこのように2段階(2つの工程)で行っている理由は、クリンプ片309をフラットケーブル305に貫通すべく突き刺したときに、クリンプ片309に挫屈等の不具合が発生することを防止し、端子307のフラットケーブル305への設置を安定した状態で行うためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4176972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来のように、端子307のフラットケーブル305への設置を2つの工程で行っていることで、金型等の加工治具の構成が煩雑になり、また、端子307のフラットケーブル305への設置に要する時間が長くなり(たとえば、1工程で行う場合に比べて約2倍になり)、端子付きフラットケーブルの製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡素な構成の加工治具を用い短いタクトタイムでしかも安定した状態で端子のフラットケーブルへの設置を行うことができる端子付きフラットケーブルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、フラット導体がフラット絶縁被覆で覆われているフラットケーブルと、端子本体部と、この端子本体部から突出している接続本体部と、この接続本体部から突出している複数のクリンプ片とを備えている端子とを有し、前記各クリンプ片が前記フラットケーブルをこの厚さ方向で貫通し折り曲げられていることで、前記端子が前記フラットケーブルに設けられ、前記各クリンプ片が前記フラット導体に導通し、前記各クリンプ片が前記フラットケーブルをこの厚さ方向で貫通する前に、前記各クリンプ片が貫通する前記フラットケーブル部位に、前記フラット導体が非露出で前記フラット導体が前記フラット絶縁被覆の部位で覆われている態様の凹部が設けられている端子付きフラットケーブルの製造方法である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の端子付きフラットケーブルの製造方法において、前記各クリンプ片を前記フラットケーブルの厚さ方向で貫通させ折り曲げることが、一工程で連続してなされる端子付きフラットケーブルの製造方法である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の端子付きフラットケーブルの製造方法において、前記凹部は、フラットケーブル集約体を成形して前記フラットケーブルを得るときの打痕で形成されたものであり、前記凹部のところの前記フラット導体の部位が、前記打痕の影響で変形している端子付きフラットケーブルの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡素な構成の加工治具を用い短いタクトタイムでしかも安定した状態で端子のフラットケーブルへの設置を行うことができる端子付きフラットケーブルを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る端子付きフラットケーブルの斜視図である。
図2】(a)は図1におけるIIA矢視図であり、(b)は図2(a)におけるIIB矢視図である。
図3】本発明の実施形態に係る端子付きフラットケーブルの端子を示す図であり、(a)が端子の正面図あり、(b)は図3(a)におけるIIIB矢視図であり、(c)は図3(a)におけるIIIC矢視図であり、(d)は図3(a)におけるIIID矢視図である。
図4】端子を設置する前のフラットケーブルを示す図である。
図5】フラットケーブルに端子を設置する前の状態を示す図である。
図6】(a)はフラットケーブル集約体を示す図であり、(b)はフラットケーブル集約体から生成された複数のフラットケーブルを示す図である。
図7】フラットケーブルに形成されている凹部(打痕)の拡大図である。
図8】フラットケーブル集約体から、金型を用いて、本発明の実施形態に係る端子付きフラットケーブルのフラットケーブルを製造する場合を示す図である。
図9】端子設置装置を用いたフラットケーブルへの端子の設置を示す図である。
図10図2におけるX1−X1断面、X2−X2断面を示す図である。
図11】フラットケーブルに端子を設置する途中の状態におけるクリンプ片まわりの拡大図である。
図12】従来のフラットケーブルへの端子の設置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る端子付きフラットケーブル1は、図1図2で示すように、フラットケーブル3と端子(フラットケーブル接続金具)5とを備えて構成されている。
【0018】
フラットケーブル3では、フラット導体7がフラット絶縁被覆9で覆われている。フラット導体7は、たとえば、銅等の金属の導電性材料で構成されており、フラットケーブル3の長手方向に対して直交する平面による断面の形状が矩形状になっている。
【0019】
フラット絶縁被覆9は、たとえば絶縁性の合成樹脂等の材料で構成されており、フラットケーブル3の長手方向に対して直交する平面による断面の形状が「ロ」字状(矩形な環状)になっており、フラット導体7の外周の全周に接触してフラット導体7を覆っている。
【0020】
フラットケーブル3の長手方向に対して直交する方向を幅方向とし、フラットケーブル3の長手方向と幅方向とに直交する方向を厚さ方向とすると、フラット導体7の断面形状は、所定の幅と厚さとを備えた矩形状になっている。
【0021】
フラット絶縁被覆9の断面の外形形状も矩形状になっており、フラット絶縁被覆9の幅方向とフラット導体7の幅方向とはお互いに一致しており、フラット絶縁被覆9の厚さ方向とフラット導体7の厚さ方向とはお互いに一致しており、さらに、幅方向でフラット絶縁被覆9の中心の位置とフラット導体7の中心の位置とがお互いに一致しており、厚さ方向でフラット絶縁被覆9の中心の位置とフラット導体7の中心の位置とがお互いに一致している。
【0022】
端子5は、フラット導体7よりも硬い金属等の導電性の板状の素材を所定形状に形成した後、この所定形状に形成された素材に適宜折り曲げ加工を施すことで形成されている。そして、端子5は、端子本体部(箱状本体部)15と接続本体部17と複数のクリンプ片19とを備えて構成されている。
【0023】
接続本体部17は、矩形な平板状部を備えた「コ」字状に形成されており(図3(d)等参照)、端子本体部15から所定の方向に突出している。接続本体部17の平板状部は、接続本体部17の幅方向で中央部に位置している部位である。各クリンプ片19は、接続本体部17から所定の方向に突出している。
【0024】
そして、端子5が、フラットケーブル3の長手方向の一端部(一端近傍の部位)で、フラットケーブル3に一体的に設置されており、各クリンプ片19がフラット導体7に導通している。さらに説明すると、各クリンプ片19が、フラットケーブル3の長手方向の一端部で、フラットケーブル3をこの厚さ方向で貫通し折り曲げられていることで、フラットケーブル3に接続されて設置されている。
【0025】
箱状本体部15は、たとえば、4つ(1つの板状部の中央部にスリットが入っているので5つと考えることもできる。)の細長い矩形な板状部によって矩形な筒状に形成されている。接続本体部17は、細長い矩形な板状に形成されており、箱状本体部15を構成している4つの細長い矩形な板状部のうちの1つの板状部21を、筒状の箱状本体部15の軸の延伸方向(細長い矩形な板状部21の長手方向)で、一方の側に突出させた形態になっている。
【0026】
折り曲げがなされる前のクリンプ片19は、平板状に形成されており、この厚さ方向が接続本体部17の幅方向になるようにして、接続本体部17の幅方向の端部から、箱状本体部15と同じ側に起立(突出)している。
【0027】
これにより、折り曲げがされる前のクリンプ片19の厚さ方向と接続本体17の平板状部の厚さ方向とはお互いがほぼ直交している。クリンプ片19の接続本体部17からの突出高さ(接続本体部17の厚さ方向での寸法)は、接続本体部17の平板状部の幅寸法と同程度になっている。また、クリンプ片19の幅方向は、接続本体部17の突出方向(長手方向)と一致している。
【0028】
複数のクリンプ片19はお互いが同形状に形成されている。複数のクリンプ片19のうちの第1群のクリンプ片19Aは、接続本体部17の幅方向の一方の端から起立しており、接続本体部17の突出方向で所定の間隔をあけてならんでいる。この所定の間隔の値は、クリンプ片9の幅寸法よりも僅かに大きくなっている。
【0029】
複数のクリンプ片19のうちの第2群のクリンプ片(第1群のクリンプ片19A以外のクリンプ片)19Bは、接続本体部17の幅方向の他方の端から起立しており、接続本体部17の突出方向で所定の間隔をあけてならんでいる。この所定の間隔の値は、第1群のクリンプ片19Aのものと同じになっている。
【0030】
また、接続本体部17の突出方向では、第1群のクリンプ片19Aと第2群のクリンプ片19Bとの位置がずれており、第1群のクリンプ19Aと第2群のクリンプ19Bとが交互にならんでいる。すなわち、接続本体部17の幅方向から見ると、図3(a)で示すように、第1群のクリンプ片19Aの間に第2群のクリンプ片19Bが存在している。
【0031】
各クリンプ片19がフラットケーブル3をこの厚さ方向で貫通し折り曲げられることで端子5がフラットケーブル3に設置された状態(端子付きフラットケーブル1)では、フラットケーブル3の厚さ方向と接続本体部17の平板状部の厚さ方向とクリンプ片9の厚さ方向とがお互いにほぼ一致しており、フラットケーブル3の幅方向と接続本体部17の幅方向とがお互いに一致しており、第1群のクリンプ片19Aは、接続本体部17の幅方向の一端から他端側に延びており、第2群のクリンプ片19Bは、接続本体部17の幅方向の他端から一端側に延びている。
【0032】
また、端子付きフラットケーブル1では、接続本体部17と各クリンプ片19とでフラットケーブル3が挟み込まれており、接続本体部17とフラットケーブル3と各クリンプ片19とがこの順に概ね重なっており、フラットケーブル3や接続本体部17の幅方向では、フラットケーブル3の中心の位置と接続本体部17の中心の位置とがお互いに一致している。
【0033】
なお、端子付きフラットケーブル1を接続本体部17の突出方向から見ると、図2(b)で示すように、各クリンプ片19は円弧状になっている。また、図2(b)では、接続本体部17の平板状部とフラットケーブル3とは若干離れているがお互いが接していてもよい。フラットケーブル3と各クリンプ片19の中間部(円弧の中間部)とは、お互いが離れている。
【0034】
また、端子付きフラットケーブル1では、接続本体部17の長手方向とフラットケーブル3の長手方向とがお互いに一致しており、フラットケーブル3の長手方向の一端は、箱状本体部15から僅かに離れているかもしくは接触しており、フラットケーブル3の一端部と接続本体部17とがお互いに重なっており、各クリンプ片19は、この重なっている箇所で偏ることなく、ほぼ均一に分散して設けられている。
【0035】
なお、端子付きフラットケーブル1では、フラット絶縁被覆9の幅方向で、クリンプ片19の基端(接続本体部17側の端)が、フラット絶縁被覆9の中心から離れている。すなわち、フラット絶縁被覆9の幅方向で、クリンプ片19の基端が、いずれかの端側に偏って存在している。
【0036】
端子5がフラットケーブル3に設置された状態(端子付きフラットケーブル1)では、各クリンプ19片の幅方向とフラットケーブル3の長手方向とがお互いに一致している。
【0037】
また、端子付きフラットケーブル1のフラットケーブル3には、凹部(打痕)11(図7等参照)が予め設けられている。すなわち、端子付きフラットケーブル1では、各クリンプ片19がフラットケーブル3の長手方向の一端部(一端近傍の部位)でフラットケーブル3をこの厚さ方向で貫通する前に、各クリンプ片19が貫通するフラットケーブル3の部位に凹部(打痕)11が設けられているものである。
【0038】
凹部11は、クリンプ片19をガイドすることでクリンプ片19がフラットケーブル3の目標とする所定の箇所に突き刺さってフラットケーブル3を貫通しやすいようにするためのものである。
【0039】
凹部11は、フラット絶縁被覆9に形成されている。ただし、図7で示すように、凹部11が形成されているフラットケーブル3の部位で、フラット導体7が凹部11の影響を受けて若干変形している。端子5をフラットケーブル3に設置するときには、まず、クリンプ片19を、フラットケーブル3に突き刺してフラットケーブル3を貫通させるのであるが、クリンプ片19を、フラットケーブル3に突き刺すとき、凹部11のところにクリンプ片19の尖った先端が当接し、クリンプ片19が凹部11でガイドされ、クリンプ片19のふらつきが防止されるようになっている。
【0040】
また、端子付きフラットケーブル1は、各クリンプ片19をフラットケーブル3の厚さ方向で貫通させ折り曲げることが、一工程で連続してなされたことで生成されている。
【0041】
たとえば、図9で示すように、1つの金型(1つの上型23と1つの下型25)を1回動作させることで、各クリンプ片19をフラットケーブル3の厚さ方向で貫通させ折り曲げることがなされるようになっている。
【0042】
具体的には、端子設置装置27(特許第3738959号公報参照)を用いて、各クリンプ片19をフラットケーブル3の厚さ方向で貫通させ折り曲げることが一工程でなされるようになっている。
【0043】
さらに説明すると、端子設置装置27には、上型23と下型25とが設置されている。上型23は下型25に対して上下方向で移動自在になっている。上型23には、フラットケーブル押え部材29が設けられている。フラットケーブル押え部材29は、この基端側部位が上型23に設けられている凹部31内に入り込んで上型23に係合しており、上型23に対して上下方向で移動自在になっている。
【0044】
また、フラットケーブル押え部材29の先端側部位が下型25側に突出しているとともに、バネ33等の付勢部材で、フラットケーブル押え部材29が下方に付勢されている。また、下型25には、クリンプ片19を折り曲げるための凹部35が設けられている。
【0045】
そして、図9(a)で示すように、上型23を下型25から離しておいて、お互いが離れている下型25と上型23との間に、フラットケーブル3と端子5とを設置し、フラットケーブル押え部材29と下型25とでフラットケーブル3を挟み込んでおく。
【0046】
次に、上型23を下降させることで、図9(b)で示すように、バネ33が圧縮され、端子5が上型23で下方に押され、クリンプ片19がフラットケーブル3を貫通しこの貫通に続いて折り曲げがなされるようになっている。
【0047】
フラットケーブル3の凹部11は、フラットケーブル集約体13を成形してフラットケーブル3を得るときに形成されたものである。
【0048】
詳しく説明すると、フラットケーブル3は、図6で示すように、フラットケーブル集約体13を分割することで生成されている。フラットケーブル集約体13は、お互いが所定の距離だけ離れて平行に延伸している複数(複数本)のフラット導体7が1体の分割前絶縁被覆37で覆われたことで平板状に形成されている。
【0049】
そして、フラットケーブル3は、フラットケーブル集約体13の各フラット導体7の間で分割前絶縁被覆37の一部39をフラット導体7の延伸方向に沿って除去して分割するともに、凹部11を形成することで生成されている。なお、フラット導体7は図6の紙面に直交する方向に延びている。
【0050】
さらに説明すると、図8で示すように、金型(上型43と下型45)が設置されるフラットケーブル分割製造装置(図示せず)を用いて、各フラット導体7の間で分割前絶縁被覆37の一部39を除去しフラットケーブル集約体13を分割するとともに、上型43に設けられている突起41を用いて、フラットケーブル3に凹部11を形成するのである。なお、各フラット導体7は、図8においても、図8の紙面に直交する方向に延びている。
【0051】
フラットケーブル分割製造装置に設置された上型43と下型45とは、それぞれが、図8の上下方向および横方向で移動位置決め自在になっている。また、フラット絶縁被覆9は、半透明もしくは透明になっている。
【0052】
フラットケーブル分割製造装置には、フラットケーブル集約体13を撮影するカメラ(図示せず)と、このカメラが撮影した画像によって上型43と下型45とに対するフラット導体7の位置を認識する画像処理装置(図示せず)とが設けられている。
【0053】
そして、フラットケーブル分割製造装置の制御装置(図示せず)の制御の下、図8(a)で示すように、フラット導体7に対する上型43と下型45との位置決めをした後、図8(b)で示すように、上型43を下降して、分割前絶縁被覆37の一部39を除去して、凹部11が形成されている1つのフラットケーブル3を得るようになっている。
【0054】
さらに、図8(c)で示すように、上型43を上昇して、フラット導体7に対する上型43と下型45との位置決めを再びした後、上型43を下降して、分割前絶縁被覆37の一部39を除去して、次の1つのフラットケーブル3を得る。同様にしていくつかのフラットケーブル3を得るようになっている。
【0055】
次に、端子付きフラットケーブル1の製造工程を説明する。
【0056】
まず、図8で示すように、フラットケーブル分割製造装置(図示せず)を用いて、フラットケーブル集約体13から凹部11が形成されているフラットケーブル3を生成する。
【0057】
続いて、図9で示すように、フラットケーブル3に端子5を設置する。このとき、単に上型23を1回下降するだけで、クリンプ片19をフラットケーブル3に貫通させるとほぼ同時にクリンプ片19を折り曲げる。
【0058】
図10に、フラットケーブル3に端子5を設置した状態を示す。図10に(1)で示しているものは、図2におけるX1−X1断面のものであり、図10に(2)で示しているものは、図2におけるX2−X2断面のものである。なお、図10で示しているものは、端子5をフラットケーブル3に設置し終えた状態のものではなく、端子5をフラットケーブル3に設置し終える直前の状態のものである。
【0059】
フラットケーブル3に凹部(打痕)11が設けられているもののほうが、フラットケーブル3とクリンプ片19との係合状態が良好であることがわかる。
【0060】
端子付きフラットケーブル1によれば、各クリンプ片19が貫通するフラットケーブル3の部位に凹部11が設けられているので、各クリンプ片19がフラットケーブル3を貫通するときに、各クリンプ片19が凹部11でガイドされ、クリンプ片19の挫屈が回避され、安定した状態で端子5のフラットケーブル3への設置を行うことができる。
【0061】
また、端子付きフラットケーブル1によれば、各クリンプ片19が貫通するフラットケーブル3の部位に凹部11が予め設けられており、各クリンプ片19をフラットケーブル3の厚さ方向で貫通させ折り曲げることが、1つの金型(1つの上型23と1つの下型25)を1回動作させる一工程で連続してなされるので、簡素な構成の加工治具(金型)を用い短いタクトタイムでしかも安定した状態で端子5のフラットケーブル3への設置を行うことができる。
【0062】
また、端子付きフラットケーブル1によれば、フラットケーブル集約体13を成形してフラットケーブル3を得るときに凹部11が形成されるので、凹部11の形成工程を別途設ける必要が無く、端子付きフラットケーブル1の製造工程を簡素化することができる。
【0063】
また、端子付きフラットケーブル1によれば、フラットケーブル3に凹部11が形成されていても、フラット導体7が露出していないので、クリンプ片19がフラットケーブル3に突き刺さるとき、クリンプ片19表面のメッキ(たとえばスズメッキ)の酸化物が擦れて除去され、クリンプ片19に新生面が生成される。そして、この新生面がフラット導体7に接触するので、クリンプ片19とフラット導体7との導通状態を良好なものにすることがきる。さらに、クリンプ片19がフラットケーブル3に突き刺さることで、クリンプ片19がフラットケーブル3から反発力を受けるので(付勢力を受けるので)、クリンプ片19とフラット導体7とが押圧力をもって密着し、お互いの導通状態を良好なものにすることがきる。
【0064】
なお、フラットケーブル3に凹部11の代わりに貫通孔を設けてもよい。この貫通孔のサイズはクリンプ片19のサイズよりも小さいことが望ましい。これにより、フラットケーブル3に凹部11を設けたときと同様な効果を得ることができる。
【0065】
また、特許第3738959号公報のたとえば図11で示すように、端子5の各クリンプ片19が、接続本体部17の幅方向の両端から突出しているとともに、接続本体部17の突出方向で、一群の各クリンプ片19Aのそれぞれと、他の一群の各クリンプ片19Bのそれぞれとの位置がお互いに一致していてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 端子付きフラットケーブル
3 フラットケーブル
5 端子
7 フラット導体
9 フラット絶縁被覆
11 凹部
13 フラットケーブル集約体
15 端子本体部
19 クリンプ片
図1
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図12