【実施例】
【0063】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0064】
以下の実施例に用いた一次抗体は、下記のとおりである。
【表1】
【0065】
[実施例1]
1)実験動物
SD(Sprague-Dawley)ラット及び高感度緑色蛍光タンパク発現トランスジェニック(SD−Tg(CAG−EGFP))ラット(8週齢雄性;日本エスエルシー株式会社)を実験に用いた。前記トランスジェニックラットは、CAGプロモーターの発現によってEGFPを発現する(Ito T, Suzuki A, Imai E, Okabe M, Hori M (2001) Bone marrow is a reservoir of repopulating mesangial cells during glomerular remodeling. J Am Soc Nephrol 12:2625-35.)。
2)酵素処理工程
前記ラットを用いて、嗅粘膜は、Aoki, et al., (2010). J Neurosurg Spine 12, 122-130.に記載された方法で切断された。簡単に説明すれば、前記嗅粘膜は、黄色がかっており、隔膜の尾側に位置する。鋭利な切断により、組織は、嗅球及び篩板等の他の組織によるコンタミを避けるために、丁寧に隔膜の各側から取り除かれる。前記嗅粘膜は、機械的に分離され、その後、DMEM/F12混合培地中(以下「DF」と称する;インビトロジェン社)でコラゲナーゼ(商品名:コラゲナーゼタイプI、酵素活性:250U/mg(活性単位:pH7.5、37℃で、5時間にコラーゲンよりL−ロイシン1μmolを生じる酵素量を1unit (U)とする。)、コード番号:035-17604、和光純薬工業株式会社)、ディスパーゼ(商品名:ディスパーゼII、粉末酵素:300,000PU/g(活性単位:0.6%カゼイン水溶液5ml(pH7.5、0.05mol/Lトリス塩酸緩衝液)に酵素液1mL(50PU/mL、0.05mol/Lトリス塩酸緩衝液)を添加し、30℃で10分間反応後、トリクロロ酢酸試液5mLを加えて反応を停止させる。さらに30℃で30分間静置し、濾過後、275nmの吸光度を測定する。この条件下で1分間に1μgのチロシンに相当するアミノ酸を遊離する酵素量を1PUとする。前記トリクロロ酢酸試液は、無水酢酸ナトリウム18g、トリクロロ酢酸18g及び酢酸18gを600mLの水に溶解し、1mol/L水酸化ナトリウム溶液でpH4.0に調整後、水で1000mLとしたものを使用する。)、製品番号:GD81070、エーディア株式会社)、DNaseI(商品名:ウシ膵臓由来デオキシリボヌクレアーゼI、酵素活性:≧2000 Kunitz units/mg タンパク質(活性単位:1 Kunitz unitは、基質としてDNA(I型又はIII型)を用いたときに、pH5.0、25℃で、1ml、1分間当たり、260nmの吸光度が0.001となる酵素量を意味する。本酵素活性測定は、4.2mM Mg
2+を含む83mM酢酸緩衝液中において、3mlの反応としてpH5.0、25℃行われた。)、製品番号:D5025-150KU、シグマ−アルドリッチ社)、ヒアルロニダーゼ(商品名:ウシ睾丸由来ヒアルロニダーゼ、酵素活性:400〜1,000 units/mg 固体(活性単位:1ユニットは、2.0mL反応混液(pH5.7、37°C)で600nmの吸光度を0.330/分の速度での変化を生じさせる単位を意味する(45分間のアッセイ)。)、製品番号:H3506-500MG、シグマ−アルドリッチ社)及びアルブミン(商品名:ウシ血清由来アルブミン(Albumin, from Bovine Serum, Cohn Fraction V, pH7.0)、コード番号:017-17841、和光純薬工業株式会社)を、下記表2の配合割合で含む酵素混合物で、37℃60分間処理された。
【0066】
【表2】
(表中、ヒアルロニダーゼは、ヒアルロニダーゼのDMEM/F12への溶解液(濃度1.5mg/ml)を200μl投与したことを意味する。)
【0067】
3)培養工程
酵素処理された細胞(1×10
6細胞/ml)は、ポリ−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)−コートディッシュに固定された。前記コートディシュは、DF培地に、B27サプリメント(インビトロジェン社)、20ng/ml塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF;シグマ−アルドリッチ社)、20ng/ml上皮成長因子(EGF;シグマ−アルドリッチ社)、5μg/mlヘパリン(シグマ−アルドリッチ社)、及び抗生物質−抗真菌剤(インビトロジェン社)を加えた。培養は、pH7.4、37℃及び5%CO
2で、無血清下で行った。培地交換は、2〜3日ごとに行い、8日間培養した。細胞の凝集は培養開始から3,4日後に見られ、8日間後にサイズが増大し、凝集を形成した細胞塊が得られた。前記培養によって、オルファクトリースフィア細胞を得ることができた。細胞塊は、光学顕微鏡観察によって、球状形態及び少なくとも50μmの直径(平面形状が円形でない場合は最大径)を有するものを、スフィアと判断した。
【0068】
[実施例2]
1)脊髄損傷モデル動物の調製
基本的な外科的手術及び術後処置は、Aoki, et al., (2010). J Neurosurg Spine 12, 122-130.; Ohnishi et al., 2012, Neuroreport. 2012 Feb 15;23(3):157-61.に記載の方法に従って、実施例1の8週齢雄SDラットを用いて、脊髄損傷モデルラットを作製した。具体的には、実施例1と同様のラットについて、セボフルランとO
2を用いた麻酔吸入下において、椎弓切除が胸中脊椎骨の7/8で行われた。硬膜の背部表面をさらし、脊髄損傷(SCI)ラットは、SCI(spinal cord injury)機器 (100kdyn;脊椎損傷作製装置、商品名:Infinite Horizon Impactor; 室町機械株式会社製)を用いて、作製された。全てのラットは、毎日、ゲンタマイシン(8mg/kg)を皮下投与された。本実施例に用いた脊髄損傷モデルラットは、中程度の胸部脊髄挫傷を有する成体雄性ラットである。
【0069】
2)オルファクトリースフィア細胞の注入
実施例1で得られたEGFP発現オルファクトリースフィア細胞にトリプシン処理して得られたオルファクトリースフィア細胞をDF培地で希釈して細胞懸濁液を得た。損傷から9日後、定位的注入器(ナリシゲ株式会社)とともに、マイクロガラスピペットに接続されたハミルトン(Hamilton)社製のシリンジを用いて、前記脊髄損傷モデルラットに、マイクロピペットの先端を損傷脊髄の損傷の中心点に挿入して、該細胞懸濁液(0.5×10
5細胞/μl)を1μl/分で2μl注入した。全てのラットは、細胞注入後7日間、シクロスポリン免疫抑制剤(10mg/kg)及びゲンタマイシン(8mg/kg)を皮下投与された。細胞の注入後、7日間、ラットには損傷の作製から毎日、VPA(150mg/kg)(n=5)又は生理食塩水(n=5)の腹腔内注射を行った(以下、それぞれを「VPA投与群ラット」、「VPA非投与群ラット」という。)。各グループのラットは、細胞の注入から2週間後または4週間後に組織学的検査に供するために、安楽死させた。細胞の注入後、ラットの組織は、100mlPBSと、固定剤(4%パラホルムアルデヒド)を用いて、経心臓的灌流固定された。
【0070】
3)損傷した脊髄への再生効果の免疫染色による観察
前記ラットの脊髄を、凍結組織切片作製用包埋剤であるティシュー・テックO.C.T(Optimal Cutting Temperature)コンパウンド(サクラファインテックジャパン株式会社)に埋め込み、試料を作製した。低温保持装置(商品名:CM1510S;ライカ マイクロシステムズ株式会社)を用いて、前記試料(脊髄を包埋したO.C.Tコンパウンドのブロック)から10μm切片を矢状に切除し、免疫染色用の切片を作製し、免疫染色を行った。
【0071】
前記切片は、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定され、公知の標準プロトコール(例えば、Ueno T et al. Imuunity 2002;16:205-218、高津聖志 編:「抗体実験マニュアル」 羊土社、2011等)に従って免疫染色された。具体的には、前記切片は、1時間室温でブロッキング溶液を用いて培養され、4℃にて一次抗体で一晩培養され、次いで洗浄され、さらに4℃にて二次抗体で一晩培養された。
一次抗体は、抗MAP2(microtubule-associated protein 2、1:200 ウサギポリクローナル; アブカム社(Abcam);抗Olig2(1:300 ヒツジポリクローナル; アブカム社); 抗ICAM−1 (1:200 マウスモノクローナル抗体; アブカム社);抗コンドロイチン硫酸プロテオグリカン 4 (NG2, 1:200 ウサギポリクローナル; ミリポア社(Millipore); 抗APC (CC-1, 1:20 マウスモノクローナル; アブカム社);及び抗EAAT1 (GLAST; glutamate-aspartate transporter; 1:300 ウサギポリクローナル抗体;アブカム社) ; 抗GFP (1:500 ヤギポリクローナル抗体;アブカム社) ; 抗ニューロフィラメント−L(neurofilament-L(NF)、1:100 ウサギモノクローナル抗体; セルシグナリングテクノロジー社(cell signaling Technology)) ; 抗p75 NGFR (1:50 ウサギ モノクローナル抗体; アブカム社) ;抗ミエリン塩基性タンパク(Myelin Basic Protein(MBP)、(1:100 ウサギ ポリクローナル抗体; アブカム社) ;抗ミエリンタンパクゼロ(Myelin Protein Zero(P0)、1:100 ウサギ ポリクローナル抗体; アブカム社) ; 抗GFAP(glial fibrillary acidic protein、1:300 マウスモノクローナル, セルシグナリングテクノロジー社; 及び1:2 ウサギポリクローナル、ダコ社(Dako)); 及び抗受容体相互作用タンパク(RIP(receptor-interacting protein)、1:100 ウサギモノクローナル抗体、セルシグナリングテクノロジー社)であった。
次の日、切片をさらに、DyLight 488−標識ヤギ抗マウス抗体(ヤギ由来の二次抗体)(1:500; KPL社(Kirkegaard and Perry Laboratories, Inc.))、Alexa Fluor(登録商標) 650 ロバ(donkey)抗マウス抗体(1:200; アブカム社)、DyLight 549−標識ヤギ抗ウサギ 抗体(1:200; KPL)、DyLight594−標識ロバ(donkey)抗ウサギ抗体(1:200; アブカム社)、DyLight488−標識ロバ(donkey)抗ヤギ抗体(1:200; アブカム社)、DyLight 594-標識ヤギ 抗ニワトリ抗体(1:200; アブカム社) 及び Cy5−標識ロバ(donkey)抗ヒツジ抗体(1:200; ジャクソンイムノリサーチ社(Jackson ImmunoResearch))で、4℃で一晩培養した。
次いで、これらは、DAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole dihydrochloride、ベクターラボラトリーズ社(Vector Laboratories))で対比染色された。蛍光像は、共焦点レーザー顕微鏡(FV-1000D; オリンパス社)を用いて撮影され、細胞の表現型の決定と細胞数のカウントに使用された。
【0072】
免疫染色の結果を
図3及び
図4に示す。
図3は、脊髄損傷部位周辺の注入されたOS細胞及びホストの組織への組み込まれる様子を示す。データは、少なくとも5検体から得られた。
図3左はVPA非投与群の結果を表わし、
図3右はVPA投与群を表わす。
図3はニューロン細胞体のマーカーであるMAP2(赤色)と緑色蛍光タンパクの共染色の結果を示す。
図3に示されるように、MAP2を共発現したオルファクトリースフィア細胞の割合は、VPA投与群及びVPA非投与群について、それぞれ0.6±1.1%及び4.9±0.6%(平均±SD)であった。これはin vivoで、OS細胞がVPAによってニューロンへ分化誘導されたことを示す。切片の縦方向の顕微鏡写真(
図4)はホストの実質(parenchyma)に取り込まれたOS細胞(EGFP−陽性細胞)を示す。
【0073】
図4について、以下に説明する。
図4から、EGFP−陽性細胞はニューロフィラメントタンパクに近接していた(A)。移植されたオルファクトリースフィア細胞は、ホストの白質に取り込まれ、頭側から尾側へ、軸索に沿って伸長突起を伸長した。EGFP−陽性細胞はp75、NG2、GFAP又はMAP2が共陽性とならなかった(B−D、F)。EGFP−陽性細胞はOlig2を発現したが、NG2を発現しなかった(F−H)。EGFP−陽性細胞は細胞質(アストロサイトマーカー)及び核Olig2(オリゴデンドロサイトマーカー) (G、H、K−M)並びにRIP(P−R)を発現した。
図4中、矢印(ピンク)はOlig2の核局在化を示す。EGFP及び核Olig2 二重陽性細胞は、ミエリン化オリゴデンドロサイトの形態を表す形態(ミエリン皮膜を有するように見える多数の複雑な突起)を示した(I、N、S)。EGFP−陽性細胞は、MBP(赤色)と共陽性であった(E、J)。GFP陽性突起は、ミエリン塩基性タンパク(MBP)を発現した。MBPを有するGFP陽性細胞の近接結合から、注入された細胞がミエリン鞘を形成したと考えられる。これらは、OS細胞が宿主脊髄内でオリゴデンドロサイトに分化したことが明らかになった。また軸索に髄鞘形成されていることを示すものである。従って、本発明の薬剤が、軸索を再ミエリン化でき、神経細胞の神経繊維(軸索)を取り囲むミエリン鞘の損失又は損傷によって特徴付けされる疾患又は状態に全般的に有効であり、脱随疾患の治療剤としても有用であることも明らかとなった。オリゴデンドロサイト前駆細胞はシュワン細胞マーカーとしてin vivoにおいて末梢ミエリン関連 (P
0)
タンパク及びP
0リングを発現する(Zawadzka M, et al. (2010) Cell Stem Cell 6:578-90.)。OS細胞はP
0 タンパクに対してわずかに陽性を示したが、シュワン細胞のミエリン化に特徴的P
0リングは認めなかった(O、T)。スケールバーは50μmを表す。
【0074】
[実施例3]
1)分化培養
実施例1の8日間の培養後、OS細胞をポリオルニチンコートされた4ウェルチャンバースライド(Becton Dickinson)又はディッシュ(Asahi Glass Co., Ltd.)に置いた。細胞はN2 (Life Technologies), B27, 20 ng/ml BFGF, 20ng/ml EGF及び抗生物質−抗真菌溶剤のサプリメント含有DF培地で5日間培養された。分離培養のため、スフィアはトリプシン・EDTA (EDTA, Life Technologies)で処理され、ポリオルニチンコートされた4ウェルチャンバースライドに約5×10
3細胞/ウェルで置かれ、上述のサプリメント含有DF培地で5日間培養された。
【0075】
2)蛍光セルソーター分析(FACS)
上記培養細胞を用いて蛍光セルソーター分析を、FACS Canto II(商品名、BD Biosciences)にて行った。抗体は下記のとおりである:フィコエリトリン(phycoerythrin;PE)-標識マウス抗ラットCD54 (intercellular adhesion molecule 1;ICAM-1) (BD Biosciences)、アロフィコシアニン(Allophycocyanin;APC)-標識マウス抗ラットGLAST抗体(Miltenyi Biotec)、PE−標識アイソタイプコントロールマウスIgG1(BD Biosciences)、APC−標識アイソタイプコントロールマウス IgG2a (Miltenyi Biotec)、抗NG2−フルオレセイン(Fluorescein) (マウスモノクローナル抗体; R&D Systems, Inc.)、抗マウスIgG1 アイソタイプコントロールフルオレセイン (マウス モノクローナル抗体; R&D Systems, Inc.)、抗A2B5−Biotin (Miltenyi Biotec)、抗-マウス IgM−Biotin (Miltenyi Biotec)及び抗Biotin−FITC (Miltenyi Biotec)。OS細胞は37℃において、トリプシン−EDTA及び無酵素細胞解離バッファ(enzyme-free Cell Dissociation Buffer、Life Technologies社)でそれぞれ5分、10分処理し解離させた。OS細胞(1×10
5)はICAM−1、NG2、GLAST及びA2B5に対する抗体で4℃60分反応させ、洗浄した。さらに、細胞は抗Biotin FITC抗体で4℃30分間培養された。細胞は洗浄され、再懸濁された後、2×10
4細胞のソーティングの直前に40μmフィルターを通した。データはFLOWJO ソフトウェアv6.2.1 (Tree Star, Ashland OR)を用いて分析した。結果を
図5に示す。
【0076】
3)免疫染色
上記1)で培養したOS細胞は4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定され、1時間室温でブロッキング溶液を用いて培養され、4℃にて一次抗体で一晩培養され、次いで洗浄され、さらに4℃にて二次抗体で一晩培養された。前記一次抗体は下記のとおりである:抗MAP2(microtubule-associated protein 2, 1:200 ウサギポリクローナル抗体、アブカム社)、抗β3−tubulin (Tuj1, 1:200 マウスモノクローナル抗体、細胞signaling Technology)、抗グリア細胞繊維性酸性タンパク質(glial fibrillary acidic protein (GFAP), 1:300 マウスモノクローナル抗体、セルシグナリングテクノロジー社又は 1:2 ウサギポリクローナル抗体、ダコ社)、抗O4 (1:200 マウス モノクローナル抗体; Neuromics,)、抗ネスチン((nestin)、1:200 マウスモノクローナル抗体、アブカム社)、抗オリゴデンドロサイト転写因子2(Oligodendrocyte transcription factor 2;Olig2, 1:300 ヒツジポリクローナル抗体; アブカム社)、抗p75 NGF 受容体(1:50 ウサギモノクローナル抗体、アブカム社)、抗PDGFRα (1:200 ウサギ ポリクローナル抗体、アブカム社)、抗受容体相互作用タンパク(receptor-interacting protein (RIP)、1:100 ウサギモノクローナル抗体、セルシグナリングテクノロジー社)。BrdU に対するモノクローナル抗体 BMG6H8(1:10 マウス 5−ブロモ−2−デオキシ−ウリジン標識及び検出キットII, Cat. No. 1 299 964; ロッシュ社(Roche))はベーリンガーマンハイム(Boehringer-Mannheim)から入手した。
二次抗体はDyLight 488−標識ヤギ抗マウス (1:200; KPL), DyLight 549−標識ヤギ 抗ウサギ (1:200; KPL)及び Cy5−標識ロバ(donkey)抗ヒツジ(1:200; ジャクソンイムノリサーチ社)を用いた。
次いで、前記スライドはDAPIで対比染色された。蛍光像は、共焦点レーザー顕微鏡(FV-1000D; オリンパス社)を用いて撮影され、細胞の表現型の決定と細胞数のカウントに使用された。BrdU−, Olig2−, MAP2−及び GFAP−陽性細胞の割合(割合=(陽性細胞/全体の細胞数)×100)は、3つの独立した実験の3つの画像の平均±標準偏差(SD)として示す(
図6)。
【0077】
4)逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
市販品のキット(QIAGEN社)を用いて分化培養から得られたスフィアからRNAを抽出した。Total RNA (1μg)はワンステップ逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)キット (QIAGEN)を用いて逆転写された。プライマー及び期待される単位複製配列(amplicon)塩基対(bp)のサイズは以下のとおりである:
Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (Gapdh),
forward:CCTCTGGAAAGCTGTGGCGT(配列番号1)
reverse:TTGGAGGCCATGTAGGCCAT(配列番号2), 430 bp;
Nestin (Nes),
forward:CAGGCTTCTCTTGGCTTTCTGG(配列番号3)
reverse:TGGTGAGGGTTGAGGTTTGT(配列番号4), 431 bp;
tubulin, beta 3 class III (Tubb3),
forward:TGCGTGTGTACAGGTGAATGC(配列番号5)
reverse:AGGCTGCATAGTCATTTCCAAG(配列番号6), 240 bp;
glial fibrillary acidic protein (Gfap),
forward:ACCTCGGCACCCTGAGGCAG(配列番号7)
reverse:CCAGCGACTCAACCTTCCTC(配列番号8), 141 bp;
S100 protein, beta polypeptide, neural (S100β)),
forward:GGATGTCTGAGCTGGAGAAG(配列番号9)
reverse:ACTCCTGGAAGTCACACTCC(配列番号10), 222 bp;
2',3'-cyclic nucleotide 3' phosphodiesterase (Cnp),
forward:CCGGAGACATAGTGCCCGCA(配列番号11)
reverse:AAAGCTGGTCCAGCCGTTCC(配列番号12), 450 bp.
【0078】
逆転写は50℃30分行った。PCRは94℃で30秒、56℃で40秒、72℃で50秒のサイクルで行った。Gapdh、S100β及びCnpのPCRサイクル数は30であり、Nes、Tubb3及びGfapのPCRサイクル数は40であった。結果を
図5Gに示す。
図5G中、T(-)は テンプレートがないものを示し、T(+)はテンプレートが存在するものを示す。
図5Gに示されるように、RT−PCRでは、分化培養において、OS細胞はGfap、グリア(glial)由来S100β、オリゴデンドロサイトマーカー遺伝子2’,3’−サイクリック−ヌクレオチド 3’−ホスホジエステラーゼ(2',3'-cyclic-nucleotide 3'-phosphodiesterase;Cnp) (Kim SU et al., (1984) Brain Res 300:195-199.; Watanabe M et al., (2006) J Neurosci Res 84:525-533.)及びNg2を発現したが、Tuj1及びNesの発現はわずかであった。S100βはアストロサイト、シュワン細胞、オリゴデンドロサイト前駆細胞及びオリゴデンドロサイト(Cahoy JD et al., (2008) J Neurosci 28:264-278)によって発現される。
【0079】
免疫蛍光染色の結果から、OS細胞はICAM−1、NG2(オリゴデンドロサイト前駆細胞マーカー)、Olig2(オリゴデンドロサイト前駆細胞マーカー)、PDGFRα(オリゴデンドロサイト前駆細胞マーカー)及びネスチン(nestin)に陽性であった(
図5A)。OS細胞は、スフィアの内側及び外側において、BrdU染色を示した(
図5A)。OS細胞はオリゴデンドロサイト前駆体マーカー及び神経幹細胞マーカーを発現する。FACS分析から、OS細胞はGLAST及びNG2が弱陽性であった(
図5B)。
【0080】
FACS分析では、前記GLAST−陽性及び弱陽性であったフラクションは、観察された当該細胞の72.02%であり(
図5Cのsubset 1 + subset 2)、前記NG2−陽性及び弱陽性であったフラクションは、72.37%であった(
図5Dのsubset 1 + subset 2)。前記 GLAST−陽性及びNG2−陽性フラクションは、それぞれ3.12% (subset 1)及び1.37% (subset 1)であった(
図5C、D)。細胞の多くは、GLAST及びNG2に弱陽性であった。PE、APC及びFITC−蛍光発光のヒストグラムから、OS細胞はICAM−1陽性であり、GLAST及びNG2に陽性及び弱陽性であることがわかった。OPCは、しばしばA2B5によって同定される (Raff MC et al., (1983) Nature 303:390-396; Espinosa de los Monteros A, et al., (1993) Proc Natl Acad Sci U S A. 90(1):50-4; Baracskay KL et al., (2007) Glia 55:1001-10)。 組み合わせFACS分析から、OS細胞の23.5%はGLAST及びA2B5に対して二重陽性であった。一方、ネガティブコントロールのOS細胞の7.48%は GLAST及びA2B5に対して二重陽性であった(
図5E)。A2B5−陽性フラクションは28.44%であった。一方、ネガティブコントロールのOS細胞の8.01%はA2B5−陽性であった。前記GLAST−陽性A2B5陰性フラクションは4.86%であり、ネガティブコントロールは1.64%であった。組み合わせFACS分析から、OS細胞は、A2B5+GLAST+集団及びA2B5+GLAST−集団を含むことが明らかとなった。これらの結果から、OS細胞はOPCとアストロサイトマーカーを発現する亜集団を含むということが示された。
自律的分化培養由来のOS細胞は、免疫組織染色とRT−PCRよりRIP (分化したオリゴデンドロサイトのマーカー) (Friedman B et al., (1989) Glia 2:380-390.) とCNPase (分化したオリゴデンドロサイトのマーカー)に陽性であったが、GFAP及びTuj1には弱陽性であった(
図5F)。
【0081】
ヒト及びネズミのOS細胞は、ネスチン、O4、Tuj1及びGFAP (Murdoch B et al., (2008) J Neurosci 28:4271-4282; Tome M et al., (2009) Stem cells 27:2196-2208)を発現するが、我々の知る限りでは、分化したOS細胞の定量分析は行われていない。OS細胞は、細胞質Olig2(アストロサイトのマーカー)、核Olig2(オリゴデンドロサイトのマーカー)又はその両方に陽性であったが、核Olig2発現は、細胞の67.4 ± 9.8%の核で検出され、4.4 ± 1.9%はGFAP−陽性(アストロサイトマーカー)であり、9.5 ± 3.1%はMAP2−陽性(ニューロンマーカー)であった(
図6)。
OS細胞は核Olig2、O4(オリゴデンドロサイトマーカー)及びRIPに陽性であったが、GFAP、MAP2、Tuj1及びp75には微陽性であった(
図6)。p75陽性細胞はほとんど認めなかった(
図6)。核Olig2−陽性細胞の多くはO4を共発現し、RIPに陽性であった(
図6)。RIP−陽性細胞は、成熟オリゴデンドロサイトに特徴的な分岐した形態を示した(
図6)。これらは、OS細胞がin vitroでオリゴデンドロサイトに分化したことを表す。
細胞増殖は、DNA合成時に組み込まれるチミジンのアナログであるBrdUを用いて評価した。OS細胞は、スフィアの内側及び外側において、BrdUを用いて染色された(
図5A)。BrdUはOS細胞の6.7 ± 2.9% (平均±SD)に取り込まれていた(
図6)。前記割合は3つの独立した実験の平均±SDを表す。スケールバーは20μmを表す。
【0082】
[試験例1]
実施例2の1)と同様にして調製した脊髄損傷モデルラットに1週間毎日シクロスポリン免疫抑制剤(10mg/kg)及びゲンタマイシン(8mg/kg)を皮下投与した。
また、実施例1で得られたEGFP発現オルファクトリースフィア細胞にトリプシン処理して得られたオルファクトリースフィア細胞をDF培地で希釈して細胞懸濁液を得た。
損傷から9日後、定位的注入器(ナリシゲ株式会社)とともに、マイクロガラスピペットに接続されたハミルトン(Hamilton)社製のシリンジを用いて、前記脊髄損傷モデルラットに、マイクロピペットの先端を損傷の中心点に挿入して、該細胞懸濁液(2.5×10
4細胞/μl)を1μl/分で2μl注入した。
全てのラットは、細胞注入後7日間、シクロスポリン免疫抑制剤(10mg/kg)及びゲンタマイシン(8mg/kg)を皮下投与された。
上記のようにして得られたOS細胞投与群ラット、実施例2の脊髄損傷モデルラット(非投与群)及び実施例2の脊髄損傷モデルラットにDF培地のみを注入したラット(ビヒクル投与群)について、BBBスコア(試験例1参照)で運動機能を評価した。BBBスコア(Basso-Beattie-Bresnahan Locomotor法;実験動物の後肢の運動機能を評価するシステム;Journal of Neurotrauma、12、1-21頁、1995年;オープンフィールドでの動物の動きを複数の観察者が目視で観察し、その機能を0[完全麻痺]〜21[正常]の21段階で測定、記録し評価する)で運動機能を評価した。本試験では、2名の観察者が、細胞注入前、細胞注入から1週間後及び細胞注入から2週間後の各段階で、運動機能を評価した。データは、1要因分散分析(ANOVA)に供した。F値が有意である場合、Tukey's post-hoc検定を行った。すべての場合において、有意な値は、P<0.05又はP<0.01に設定された。データは、特に示されない限り、平均±標準偏差で示す。
【0083】
非投与群のBBBスコアは、細胞注入前の0.6±0.5から、1.6±1.1、5.3±0.5、6.3±0.5及び7.3±0.5(それぞれ細胞注入から1、2、3、4週間後)であった(n=3)。
ビヒクル投与群のBBBスコアは、細胞注入前の0.3±0.5から、3.3±1.5、5.3±1.5、7.3±0.5及び8.3±0.5(それぞれ細胞注入から1、2、3、4週間後)であった(n=4)。
OS細胞投与群のBBBスコアは、細胞注入前の0から、2.6±0.5、7.6±0.5、10.0±1.0及び11.0±1.0(それぞれ細胞注入から1、2、3、4週間後)に改善された(n=5)。結果を
図7に示す。
非投与群及びビヒクル投与群では、有意差がなかったが、OS細胞投与群ラットは運動機能において有意に差が見られた。
【0084】
以上のことから、in vivoにおいて、本発明のOS細胞が再髄鞘形成の能力を有し、軸索を再ミエリン化できることが確認された。よって、本発明の薬剤は、神経細胞の神経繊維(軸索)を取り囲むミエリン鞘の損失又は損傷によって特徴付けされる疾患又は状態に全般的に有効であり、脱随疾患の治療剤としても運動機能改善剤としても有用であることも明らかとなった。
【0085】
[試験例2]
実施例1の8週齢雄SDラットと同じラットを用いて、セボフルランとO
2を用いた麻酔吸入下に、両側伏在神経を暴露し、両足の伏在神経を切断した。神経切片は、近位及び遠位断端間に、10mmギャップを形成するように、切除された。
右伏在神経では、OS細胞を含まず、かつコラーゲンゲル(商品名:セルマトリックス(Cellmatrix)Type I−A;ブタ腱由来、酸可溶性;濃度3.0mg/ml, pH3.0;新田ゼラチン株式会社)を含むシリコンチューブ(内径:2mm、外径:3mm、長さ:10mm)を用いて、近位及び遠位神経断端を含むように包んだ。
左伏在神経では、OS細胞(実施例1で得られたEGFP発現OS細胞をトリプシン処理したもの;3×10
4 cells/μl)と前記コラーゲンゲルを含有するシリコンチューブ(内径:2mm、外径:3mm、長さ:10mm)を用いて、近位及び遠位神経断端を含むように包んだ。前記コラーゲンゲル(商品名:セルマトリックス(Cellmatrix)Type I−A)で培養された細胞はin vivoに近い三次元形態で増殖する。
【0086】
ラット組織はOS細胞投与から2週間後に検査した。前記伏在神経は4%PFAで一晩固定され、30%スクロース中で抗凍結保護し、ティシュー・テックO.C.Tコンパウンド(サクラファインテックジャパン株式会社)に埋め込み、凍結させて試料を作製した。低温保持装置を用いて、前記試料から軸方向に切除し、切片(10μm厚さ)を作製した。OS細胞投与から2週間後に両者のチューブ内を観察すると、明らかにOS細胞を含んだコラーゲンゲル中において、末梢神経軸索の再生が促進していた。結果を
図8A,Fに示す。スケールバーは、A、Fでは2mmを表す。
図8Aに示されるように、コラーゲンゲルのみでは、髄鞘は形成されていなかったが、
図8Fに示されるように、OS細胞を含むコラーゲンゲル中では髄鞘が形成されていた。OS細胞の存在下での再生した神経に比べ、OS細胞の不存在下で再生した神経は脆弱であった。軸索再生によってギャップがなくなった(神経線維の再結合が認められた)割合は、OS細胞を含むチューブでは100%であり(n=9)、OS細胞を含まないチューブでは55%であった(n=9)。両方のサンプルについて、再生軸索の中間部位での軸索断面積を画像分析ソフト(Image J, version 1.44)を用いて測定した。再生軸索の中間部位での軸索断面積は、OS細胞を含むチューブでは113.2±38.9mm
2であり(n=8)、OS細胞を含まないチューブでは25.9±1.7mm
2であった(n=4)。OS細胞を末梢神経に接触させることで、末梢神経軸索の再生を促進できた。損傷した末梢神経への臨床的な利用のために、自家シュワン細胞を獲得、維持することが難しい場合であっても、OS細胞がシュワン細胞に分化できるため、本発明を用いることで、そのような臨床的な利用も可能となる。
【0087】
伏在神経部位は、抗−GFP (1:500 ヤギポリクローナル; アブカム社), 抗−peripherin (1:100 ニワトリポリクローナル; アブカム社), 抗EGR2 (krox20, 1:50 ウサギポリクローナル; アブカム社), 抗Sox10 (1:200 ウサギポリクローナル; アブカム社)、抗ミエリンタンパクゼロ(Myelin Protein Zero(P0)、1:100 ウサギ ポリクローナル抗体; アブカム社) ;及び抗S100β (1:200ウサギポリクローナル; アブカム社)を一次抗体として染色された。
二次抗体は、DyLight 488−標識ロバ抗ヤギ IgG H&L (1:100; アブカム社), DyLight 594−標識ヤギ抗ニワトリ IgY H&L (1:100; アブカム社)及び DyLight 594−標識ロバ抗ウサギ IgG H&L (1:100; アブカム社)であった。蛍光像は、共焦点レーザー顕微鏡(FV-1000D; オリンパス社)を用いて撮影された。
【0088】
免疫染色の結果を、
図8に示す。
図8について、以下に説明する。B〜Eは、OS細胞非投与群(コントロール)を表わし、G〜QはOS細胞投与群を表わす。B及びGはDAPI染色の結果を示す。C及びHは緑色蛍光タンパクの染色の結果を示し、D及びIはペリフェリン(Peripherin)免疫染色の結果を示す。E及びJはKrox20免疫染色の結果を示す。Kはシュワン細胞のマーカーであるS100β(赤色)と緑色蛍光タンパクの共染色の結果を示す。Kでは、DAPIが青を示し、S100βとEGFPが共に陽性となるものが黄色を示す。Lは末梢神経軸索のマーカーであるペリフェリン(Yuan A, et al., (2012). J Neurosci 32:8501-8508.)(赤色)と緑色蛍光タンパクの共染色の結果を示す。LはEGFP陽性細胞が末梢神経軸索に分化しないことを示す。Mはシュワン細胞のマーカーであるKrox20(Topilko P, et al., (1994). Nature 27:796-799.; Ghislain J, et al., (2002) Development 129:155-166.)(赤色)と緑色蛍光タンパクの共染色の結果を示す。NはDAPIとシュワン細胞のマーカーであるSox10(Bremer M, et al., (2011). Glia 59:1022-1032.)(赤色)と緑色蛍光タンパクの共染色の結果を示す。Oは、DAPIと緑色蛍光タンパクの共染色の結果を示す。Pは、DAPIとシュワン細胞のマーカーであるP
0との共染色の結果を示す。Qは、DAPIと緑色蛍光タンパクとP
0の共染色の結果を示す。スケールバーは、B〜E及びG〜Jでは50μmを表し、K〜Qでは20μmを表す。OS細胞の存在下での再生した神経に比べ、OS細胞の不存在下で再生した神経の断面のDAPI−EGFP陽性領域は、より小さかった(B、C、G、H)。ペリフェリンは全ての再生した神経で観察された(D、I)。一方、Krox20は、OS細胞で処理した神経において発現した(E、J)。EGFP陽性細胞はKrox20、Sox10及びS100βに陽性であったが(K、M、N)、ペリフェリンには陽性ではなかった(L)。EGFP陽性細胞は、P
0タンパクと共局在化し、P
0リングを形成した(O、P、Q)。A〜Qから、OS細胞が宿主末梢神経軸索でシュワン細胞に分化したことが明らかになった。
【0089】
以上のことから、本発明を用いて、末梢神経軸索の再生を促進できることが確認された。よって、本発明の薬剤は、末梢神経軸索の再生増強剤としても有用であることも明らかとなった。
【0090】
細胞質Olig2はアストロサイト前駆体のマーカーである。脳損傷において、細胞質又は核Olig2局在化とアストロサイトへの分化が関連することが知られている(Magnus T et al., (2007) J Neurosci Res 85:2126-2137; Tatsumi K et al., (2008) J Neurosci Res 86:3494-3502; Zhao JW et al., (2009) Eur J Neurosci 29:1853-1869)。OPCは、アストロサイトさらには、オリゴデンドロサイトの亜集団を生成する(Zhu X et al., (2008) Development 135:145-157)。 Komitova et al.の研究(Komitova M et al., (2011) Glia 59:800-9.)が示唆するのは、大脳新皮質において、OPCは反応性アストロサイトのメジャーソースではないということである。OPCは、NG2、PDGFRα及びA2B5の発現によって同定され得る。A2B5−陽性OPCは、in vitroにて、無血清培地においてオリゴデンドロサイトを生成し、血清含有培地においてタイプIIアストロサイトを生成するため(Raff MC et al., (1983) Nature 303:390-396)、「O2A細胞」と称される。
上記の本実験では、OS細胞はNG2、PDGFRα、A2B5及びGLASTを発現した。GLASTはアストロサイトのマーカーである。ほとんどすべてのOS細胞はin vitroでは核Olig2、O4及びRIPに陽性であった。投与されたGFP−陽性OS細胞のいくつかは細胞質Olig2、GFAP及びTuj1を発現した。再ミエリン化の開始時に、OPC及びオリゴデンドロサイトの両方のマーカーは同定され得るが、NG2及びGFAPではない(Fancy SP et al., (2004) Mol Cell Neurosci 27:247-54)。実験では、投与された EGFP− 及び核 Olig2−二重陽性細胞は分化したオリゴデンドロサイトの形態的な特徴を示した。投与されたOS細胞はRIP及びMBPに陽性であったが、NG2及びGFAPには陽性ではなかった。これらの知見が示すのは、OS細胞は、in vitro及びin vivoにおいて、オリゴデンドロサイトに分化したが、アストロサイトには分化しなかったということである。
【0091】
以上のように、本発明によれば、中枢神経系及び末梢神経系のいずれに対しても、優れた治療効果が確認された。