特許第6243702号(P6243702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243702
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20171127BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20171127BHJP
   A45D 40/04 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B65D83/00 G
   A45D34/04 530
   A45D40/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-225428(P2013-225428)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-85952(P2015-85952A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年5月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一男
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−053483(JP,U)
【文献】 実開平02−114687(JP,U)
【文献】 特開昭59−199469(JP,A)
【文献】 実開昭55−131982(JP,U)
【文献】 米国特許第5172834(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
A45D 34/04
A45D 40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体と、
前記内容物を吐出する吐出孔が形成された吐出部材と、
前記容器本体内に容器軸方向に沿って延設され、かつ前記容器軸回りに回転自在に配設された雄ネジ軸と、
前記容器本体内に摺動自在に嵌合され、かつ前記雄ネジ軸に螺着されており、前記雄ネジ軸の回転操作に伴って前記容器本体内を前記容器軸に沿って移動する中皿と、
を備える繰出容器であって、
前記中皿が、前記雄ネジ軸に螺着された雌ネジ部と、前記容器本体の内周面上を摺動する摺動部を有する摺動筒部と、を備え、
前記雌ネジ部におけるネジ山のうちの一部の内径が、他の部分の内径よりも小さく、または、前記雌ネジ部におけるネジ谷のうち一部の内径が、他の部分の内径よりも小さく、
前記雌ネジ部における前記ネジ山または前記ネジ谷のうちの前記一部と前記摺動部とが、弾性変形可能な材料で形成されており、
前記摺動筒部のうち前記摺動部を含む径方向外側の部分が、当該摺動筒部の前記容器軸に沿う全長にわたって、前記摺動筒部のうち前記径方向外側の部分よりも内側にある径方向内側の部分よりも前記弾性変形可能な材料で形成されていることを特徴とする繰出容器。
【請求項2】
前記雌ネジ部における前記ネジ山または前記ネジ谷のうちの前記一部と前記摺動部とが、同一材料で一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記摺動筒部には、前記容器軸に沿って間隔をあけて一対の前記摺動部が設けられており、
前記摺動筒部のうちの前記容器軸に沿う一対の前記摺動部間には、弾性変形可能な材料で形成され、前記容器本体の内周面上を摺動する周リブ部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の繰出容器。
【請求項4】
前記雌ネジ部と前記摺動筒部との上端同士が連結されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内容物が収容されると共に内容物を吐出する吐出孔が形成された容器本体と、容器本体内に容器軸方向に沿って延設され、かつ容器軸回りに回転自在に配設された雄ネジ軸と、容器本体内に摺動自在に嵌合され、雄ネジ軸に螺着されており、雄ネジ軸の回転操作に伴って容器本体内を容器軸方向に移動する中皿と、を備える繰出容器が提案されている(例えば特許文献1参照)。
この繰出容器では、中皿が雄ネジ軸に螺着される雌ネジ部を備え、この雌ネジ部には、雄ネジ軸に当接するフィンが突設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−213859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の繰出容器では、中皿と容器本体及び雄ネジ軸との間のシール性を向上させることに改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、中皿と容器本体及び雄ネジ軸との間のシール性を向上させた繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の繰出容器は、内容物が収容される容器本体と、前記内容物を吐出する吐出孔が形成された吐出部材と、前記容器本体内に容器軸方向に沿って延設され、かつ前記容器軸回りに回転自在に配設された雄ネジ軸と、前記容器本体内に摺動自在に嵌合され、かつ前記雄ネジ軸に螺着されており、前記雄ネジ軸の回転操作に伴って前記容器本体内を前記容器軸に沿って移動する中皿と、を備える繰出容器であって、前記中皿が、前記雄ネジ軸に螺着された雌ネジ部と、前記容器本体の内周面上を摺動する摺動部を有する摺動筒部と、を備え、前記雌ネジ部におけるネジ山のうちの一部の内径が、他の部分の内径よりも小さく、または、前記雌ネジ部におけるネジ谷のうち一部の内径が、他の部分の内径よりも小さく、前記雌ネジ部における前記ネジ山または前記ネジ谷のうちの前記一部と前記摺動部とが、弾性変形可能な材料で形成されており、前記摺動筒部のうち前記摺動部を含む径方向外側の部分が、当該摺動筒部の前記容器軸に沿う全長にわたって、前記摺動筒部のうち前記径方向外側の部分よりも内側にある径方向内側の部分よりも前記弾性変形可能な材料で形成されていることを特徴とする。
【0007】
この場合では、中皿の雌ネジ部におけるネジ山またはネジ谷の一部が雄ネジ軸に密接しているので、容器本体内において、中皿よりも容器軸に沿う吐出孔側に位置する内容物が、雄ネジ軸と中皿の雌ネジ部との間を通って、容器軸に沿う吐出孔から離間する側へ漏出することを防止できる。また、弾性変形可能な材料で形成された上記一部を雄ネジ軸に圧接させることができるので、雄ネジ軸と中皿との間のシール性を確実に確保できる。一方で、ネジ山またはネジ谷の一部に限って雄ネジ軸に密接させているので、容器本体内で中皿を容器軸方向に沿って摺動させるために必要な雄ネジ軸の回転トルクが過度に高くなることを回避できる。
また、弾性変形可能な材料で形成された摺動部を容器本体の内周面に圧接させることができるので、容器本体内において、中皿よりも容器軸方向に沿う吐出孔側に位置する内容物が、容器本体の内周面と中皿の摺動部との間を通って漏出することを防止できる。また、摺動部が容器本体の内周面に圧接されることの反作用力によって、中皿の雌ネジ部が雄ネジ軸に向けて押し付けられるので、中皿の雌ネジ部におけるネジ山またはネジ谷の上記一部と雄ネジ軸との密接性がさらに向上する。
このように、雄ネジ軸及び容器本体と中皿との間のシール性を向上させることができる。
なお、例えば容器本体が真円筒状である場合には、摺動部が容器本体の内周面に圧接されることによって容器本体の内周面に対する摺動部の摩擦抵抗が増大するので、雄ネジ軸の回転に伴って中皿が雄ネジ軸と共に容器本体に対して回転することを防止できる。
【0008】
また、本発明では、前記雌ネジ部における前記ネジ山または前記ネジ谷のうちの前記一部と前記摺動部とが、同一材料で一体に形成されてもよい。
この場合では、ネジ山またはネジ谷のうちの上記一部と摺動部とを同一材料で一体に形成することにより、中皿の雌ネジ部におけるネジ山またはネジ谷の上記一部と摺動部とを容易かつ精度よく形成することができる。
【0009】
また、本発明では、前記摺動筒部には、前記容器軸に沿って間隔をあけて一対の前記摺動部が設けられており、前記摺動筒部のうちの前記容器軸に沿う一対の前記摺動部間には、弾性変形可能な材料で形成され、前記容器本体の内周面上を摺動する周リブ部が形成されてもよい。
この場合では、摺動筒部の外周面が容器軸方向の全長にわたって容器本体の内周面に摺接する場合と比較して、雄ネジ軸及び容器本体と中皿との間のシール性を向上させつつ、雄ネジ軸が容器軸方向に移動しにくくなる(雄ネジ軸が回転しにくくなる)ことを抑制できる。
さらに、本発明では、前記雌ネジ部と前記摺動筒部との上端同士が連結されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる繰出容器によれば、弾性変形可能な材料で形成された上記一部を雄ネジ軸に圧接させると共に弾性変形可能な材料で形成された摺動部を容器本体の内周面に圧接させるので、雄ネジ軸及び容器本体の内面と中皿との間のシール性を確実に確保できる。また、例えば容器本体が真円筒状である場合には、容器本体の内周面に対する摺動部の摩擦抵抗が増大することによって、雄ネジ軸の回転に伴って中皿が雄ネジ軸と共に容器本体に対して回転することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる繰出容器を示す塗布部材を除く上面図である。
図2図1の繰出容器を示す軸方向断面図である。
図3図2の中皿を示す部分拡大図である。
図4図2の吐出筒部を示す部分拡大図である。
図5図4の吐出筒部を示すA−A矢視断面図である。
図6】本発明を適用可能な他の実施形態にかかる繰出容器の中皿を示す部分拡大断面図である。
図7】同じく、本発明を適用可能な他の実施形態にかかる繰出容器の中皿を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明における繰出容器の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0013】
本実施形態における繰出容器1は、例えば図1及び図2に示すように、内容物が収容される有底円筒状の容器本体2と、内容物を吐出する吐出孔3Aが形成された有底円筒状の吐出部材3と、容器本体2の口部に取り付けられ、容器本体2の外部に露呈する円筒状の操作部材4と、容器本体2内に配設され、操作部材4が連結された円柱状の雄ネジ軸5と、容器本体2内に摺動自在に嵌合され、雄ネジ軸5に螺着された円筒状の中皿6と、容器本体2に着脱自在に取り付けられた有頂円筒状のオーバーキャップ7と、を備える。
【0014】
これら容器本体2、吐出部材3、操作部材4、雄ネジ軸5、中皿6及びオーバーキャップ7は、それぞれの中心軸線を共通軸上に位置した状態で配設されている。以下、この共通軸を容器軸Oと称し、図2において容器軸Oに沿うオーバーキャップ7側を上側、その反対側を下側とし、容器軸Oに直交する方向を径方向、容器軸O回りで周回する方向を周方向と称する。
【0015】
容器本体2の上端部は、上方に向かうにしたがって外径が段階的に縮径する段部とされており、下段部11と、外径が下段部11よりも外径が小さい上段部12と、を有する。なお、容器本体2の内径は、上下方向にわたってほぼ一定となっている。下段部11の外周面には、オーバーキャップ7の下端部が外装される。また、上段部12には、径方向外側に向けて突出する係止突出部12Aが全周にわたって設けられている。
さらに、容器本体2の底部には、雄ネジ軸5の下端が挿入される円筒状の挿入筒部13が上方に向けて延設されている。
【0016】
吐出部材3は、吐出孔3Aが形成された楕円板状の吐出本体部21と、吐出本体部21が嵌合された楕円筒状の装着筒部22と、を有する。これら吐出本体部21及び装着筒部22は、それぞれの中心軸線を容器軸O上に位置した状態で配設されている。
吐出本体部21は、平面視で円環板状の装着板部23と、装着板部23の開口縁部から上方に向けて延設された有頂円筒状の吐出筒部24と、を有する。
装着板部23上には、塗布部材25が配設されている。装着板部23の下面には、操作部材4の後述する連結板部34の上面に当接する第1環状当接部23Aと第1環状当接部23Aよりも径方向外側に配設された第2環状当接部23Bとが下方に向けて突設されている。第1環状当接部23Aには、装着板部23と操作部材4の後述する連結板部34との間から吐出筒部24の内部への流路を確保するために、切欠部が適宜形成されている。
【0017】
吐出筒部24の上端部には、図4及び図5に示すように、吐出筒部24の内部から径方向外側に向けて開口する2つの吐出孔3Aが形成されており、これら2つの吐出孔3Aは、容器軸Oを挟んで径方向の両側に形成されている。なお、吐出孔3Aは、少なくとも1つ形成されていればよい。また、吐出筒部24の上端部には、吐出孔3Aを開閉する円筒状の弁部材26が全周にわたって配設されている。弁部材26は、吐出筒部24内の内容物が吐出孔3Aから吐出する際の圧力によって吐出孔3Aを開閉する。なお、弁部材26は、吐出孔3Aを開閉することができれば吐出筒部24の全周にわたって配設される必要はなく、他の構造を用いてもよい。また、弁部材26を設けなくてもよい。
【0018】
装着筒部22は、図1に示すように、楕円筒状をなしている。また、図1及び図2に示すように、装着筒部22の内周面は、上下方向にわたって横断面視で楕円状とされている一方で、装着筒部22の外周面は、装着筒部22の上端部において横断面視で楕円状とされているが、装着筒部22の下端部において横断面視で円形となるように、下方に向かうにしたがって漸次拡径されている。さらに、装着筒部22の下端部の外周面には、図2に示すように、装着筒部22を容器軸O回りに回転可能に取り付けるための複数の第1取付突条部22Aが全周にわたって径方向外側に向けて突設されている。
【0019】
塗布部材25は、例えば1本または複数本のブラシやフェルト、スポンジなどで構成されており、図2に示すように、装着板部23上に装着されている。塗布部材25は、装着板部23から上方に延在しており、装着筒部22内から上方に向けて突出している。なお、塗布部材25は、吐出部材3と一体として形成されてもよく、別体として形成されてもよい。また、塗布部材25を設けなくてもよい。
【0020】
操作部材4は、円筒状の外筒部31と、外筒部31よりも径方向内側に配設された円筒状の内筒部32と、内筒部32よりも径方向内側に配設された円柱状の柱状部33と、外筒部31、内筒部32及び柱状部33を連結する円板状の連結板部34と、を有する。これら外筒部31、内筒部32、柱状部33及び連結板部34は、それぞれの中心軸線を容器軸O上に位置した状態で配設されている。
【0021】
外筒部31は、二重筒とされており、円筒状の第1外筒部35と、第1外筒部35よりも径方向内側に配設された第2外筒部36と、を有する。
第1外筒部35の上端部は、連結板部34よりも上方に突出しており、この上端部の内周面には、第1取付突条部22Aと係合する複数の第2取付突条部35Aが全周にわたって径方向内側に向けて突設されている。なお、第1及び第2取付突条部22A、35Aは、周方向に間欠的に形成されていてもよく、外筒部31が装着筒部22に対して容器軸O回りで回転できれば、他の取付構造を用いてもよい。
また、第1外筒部35の下端部には、係止突出部12Aと係止する係止溝部35Bが全周にわたって形成されている。なお、上述と同様に、外筒部31が容器本体2に対して容器軸O回りで回転できれば、他の係止構造を用いてもよい。
第2外筒部36は、連結板部34から下方に向けて連設されており、第1外筒部35と共に容器本体2の上段部12を径方向で挟み込む。
【0022】
内筒部32は、連結板部34から下方に向けて連設されており、内筒部32の内周面には、雄ネジ軸5に対して空転することを防止するための縦リブ部が上下方向にわたって径方向内側に向けて形成されている。
柱状部33は、連結板部34の中央部から下方に向けて連設されており、内筒部32と共に雄ネジ軸5の後述する上端部41を径方向で挟み込む。
【0023】
連結板部34のうち径方向で内筒部32と第2外筒部36との間には、連結板部34を上下方向で貫通する流通孔34Aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。また、連結板部34の上面のうち第1外筒部35と流通孔34Aとの間には、円環板状のパッキン37を収容する収容溝部34Bが形成されている。パッキン37の上面には、装着板部23の第2環状当接部23Bが当接している。
【0024】
雄ネジ軸5は、容器本体2内に上下方向に沿って延設され、かつ容器軸O回りに回転自在に配設されており、上端部41の外径が他の部分の外径よりも拡径している。この上端部41の中央部には、柱状部33を収容する収容凹部41Aが形成されており、上端部41の外周面には、内筒部32に形成された縦リブ部と噛合する縦リブ部が上下方向にわたって径方向外側に向けて突設されている。これにより、雄ネジ軸5は、操作部材4の容器軸O回りの回転に伴って操作部材4と共に容器軸O回りに回転する。
【0025】
また、雄ネジ軸5外周面のうち上端部41よりも下側の部分には、ほぼ上下方向にわたって雄ネジ部42が形成されている。さらに、雄ネジ軸5の下端部は、図2及び図3に示すように、挿入筒部13内に挿入されている。このように、雄ネジ軸5の上端部41が操作部材4の内筒部32及び柱状部33により径方向で挟み込まれると共に雄ネジ軸5の下端部が容器本体2の挿入筒部13内に挿入されることにより、雄ネジ軸5の容器軸O回りの回転が安定する。
【0026】
中皿6は、本体部6Aと、本体部6Aと一体的に成形され、例えばニトリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エラストマーなど本体部6Aよりも軟質の弾性変形可能な材料で形成された弾性材料部6Bと、を有する。弾性材料部6Bは、本体部6Aの上方に配設されている。また、中皿6は、雄ネジ軸5に螺着される円筒状の雌ネジ筒部51と、雌ネジ筒部51よりも径方向外側に配設された円筒状の摺動筒部52と、雌ネジ筒部51及び摺動筒部52それぞれの上端同士を連結する二重円筒状の連結筒部53と、を有する。これら雌ネジ筒部51、摺動筒部52及び連結筒部53は、それぞれの中心軸線を容器軸O上に位置した状態で配設されている。
【0027】
雌ネジ筒部51の内周面には、雄ネジ軸5の雄ネジ部42と螺合する雌ネジ部54が上下方向にわたって形成されている。ここで、雌ネジ部54のネジ山54Aのうちネジ切始まりの一部54B(例えばネジ切始まりの1mm以上2mm以下)の内径は、ネジ山54Aのうちこの一部54B以外の部分の内径よりも小さくなっている。また、上記一部54Bは、上下方向断面視で上下方向の全長にわたって弾性変形可能な材料で形成されており、この一部54Bの周面が雄ネジ部42と直接当接している。さらに、上記一部54Bは、雄ネジ部42に対して圧接されている。
【0028】
摺動筒部52は、径方向外側の部分が弾性材料部6Bで形成されており、この部分よりも径方向内側の部分が本体部6Aで形成されている。また、摺動筒部52の上下両端部には、摺動筒部52の上下方向の中央部よりも径方向外側に向けて突出する摺動部52Aが形成されており、これら摺動部52Aは、容器本体2の内周面に摺接している。ここで、摺動部52Aは、弾性材料部6Bで形成されており、ネジ山54Aのうち上記一部54Bと一体として同一材料で形成されている。
連結筒部53は、外径が操作部材4の第2外筒部36の内径よりも小さくなっていると共に内径が内筒部32の外径よりも大きくなっており、中皿6が容器本体2内を上方に向けて移動するにしたがって操作部材4の第2外筒部36と内筒部32との間に位置するようになっている(図2の仮想線を参照)。
【0029】
オーバーキャップ7は、図2に示すように、平面視で円板状の頂壁部61と、頂壁部61の外周縁から下方に向けて延設された円筒状の側壁部62と、を有する。側壁部62の下端部は、容器本体2の上段部12の外周面の外周面及び操作部材4の第1外筒部35の外周面に外装されており、塗布部材25を覆っている。
【0030】
次に、以上のような構成の繰出容器1の使用方法について説明する。
まず、オーバーキャップ7を取り外し、操作部材4の外筒部31を露出させる。この状態で外筒部31を容器軸O回りの一方向に回転させると、雄ネジ軸5は、操作部材4の回転に伴って容器軸O回りに回転する。そして、中皿6は、雄ネジ軸5が中皿6に対して相対的に回転することにより、容器本体2内を上方に向けて移動する。
【0031】
ここで、弾性材料部6Bに形成された摺動部52Aは、容器本体2の内周面に対して弾性変形した状態で圧接されている。そのため、中皿6と容器本体2との間の摩擦抵抗が増大し、中皿6は、雄ネジ軸5と共には回転せずに、安定して上方に向けて移動する。また、摺動部52Aが容器本体2の内周面に摺接することにより、中皿6と容器本体2との間のシール性が向上する。
【0032】
また、ネジ山54Aのうち上記一部54Bが摺動部52Aと同様に弾性材料部6Bに形成されており、かつ上記一部54Bの内径がネジ山54Aのうちこの一部54B以外の部分の内径よりも小さくされて上記一部54Bの周面が雄ネジ部42と直接当接している。そのため、上記一部54Bが雄ネジ軸5に密接し、中皿6と雄ネジ軸5との間のシール性が向上する。一方で、ネジ山54Aのうち上記一部54Bに限って雄ネジ部42に圧接させているので、雄ネジ軸5の回転トルクが過度に高くならない。ここで、中皿6の摺動部52Aが容器本体2の内周面に圧接されているので、容器本体2からの反作用によって雌ネジ部54が雄ネジ軸5に向けて径方向内側に向けて押し付けられ、中皿6のネジ山54Aのうち上記一部54Bと雄ネジ軸5の雄ネジ部42との密着性が向上する。これによっても、中皿6と容器本体2との間のシール性が向上する。
【0033】
中皿6の上昇に伴って、容器本体2内に収容されている内容物は、操作部材4の連結板部34に形成された流通孔34Aや装着板部23及び連結板部34の間隙を通って吐出筒部24内に流入する。そして、吐出筒部24内を上昇して吐出孔3Aから塗布部材25内に吐出される。弁部材26は、吐出される内容物の圧力によって吐出孔3Aを開口する。これにより、容器本体2内の内容物を吐出し、塗布部材25内に含浸させる。塗布部材25は、この含浸させた内容物を被塗布部に塗布する。
以上のようにして、繰出容器1を用いて内容物を被塗布部に塗布する。
【0034】
以上のような構成の繰出容器1によれば、雌ネジ部54のネジ山54Aの一部54Bが雄ネジ部42と密接しており、また、摺動部52Aが容器本体2の内周面に圧接されているので、容器本体2内で中皿6よりも上方に位置する内容物が、中皿6よりも下方に向けて漏出することを防止できる。このとき、弾性材料部6Bに形成された上記一部54Bが雄ネジ部42に圧接されるので、雄ネジ軸5と中皿6との間のシール性が確実に確保され、特許文献1に記載されているようなフィンを設ける場合と比較して、シール性を長期にわたって維持できる。さらに、ネジ山54A全体ではなく上記一部54Bのみを弾性材料部6Bに形成しているので、雄ネジ軸5の回転トルクの上昇を抑制できる。
【0035】
また、摺動部52Aが容器本体2の内周面を圧接することに対する反作用力により、雌ネジ部54が雄ネジ部42に向けて押し付けられるので、雌ネジ部54におけるネジ山54Aの上記一部54Bと雄ネジ部42との密着性が向上し、雄ネジ軸5と中皿6との間のシール性が向上する。ここで、摺動部52Aが容器本体2の内周面に圧接されることによって摺動部52Aと容器本体2との間の摩擦抵抗が増大するので、雌ネジ部54と雄ネジ部42との間の摩擦抵抗が増大していても、雄ネジ軸5を容器軸O回りに回転させたときに中皿6が雄ネジ軸5と共に回転することを防止できる。
さらに、ネジ山54Aの上記一部54Bと摺動部52Aとを同一材料で一体に形成することで、上記一部54Bと摺動部52Aとを容易かつ精度よく形成できる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、図6に示すように、中皿100の摺動筒部101は、上下方向の全長にわたって容器本体2の内周面に摺接していてもよく、摺動筒部101の外周縁部全体が摺動部101Aとして機能する。これにより、中皿100と容器本体2の内周面との間の密着性がさらに向上し、例えば内容物の粘度が低い場合などにおいて、内容物が中皿100の摺動筒部101と容器本体2の内周面との間を通って漏出することをより確実に防止できる。
【0037】
また、図7に示すように、中皿110の摺動筒部111は、上下方向で一対の摺動部111A間において径方向外側に向けて突設された周リブ部111Bを有していてもよい。周リブ部111Bは、摺動部111Aと同様に弾性変形可能な材料で形成されている。これにより、図6に示す摺動筒部101と比較して、容器本体2及び雄ネジ軸5と中皿6との間のシール性を向上させつつ、雄ネジ軸5が上下方向に移動しにくくなることを抑制できる。なお、周リブ部111Bは、例えば内容物の粘度などに応じて、上下方向に間隔をあけて複数形成されていてもよく、上下方向の長さを適宜変更してもよい。
【0038】
さらに、雌ネジ部におけるネジ山のうちの一部の内径を他の部分の内径よりも小さくしているが、雌ネジ部におけるネジ谷のうちの一部の内径を他の部分の内径よりも小さくしてもよい。
雌ネジ部におけるネジ山の上記一部は、ネジ切始まりの1mm以上2mm以下の部分に形成されているが、ネジ山の一部分であれば、ネジ切終わりの1mm以上2mm以下の部分に形成されてもよく、ネジ山の中途部分など他の部分に形成されてもよい。また、ネジ山に沿う上記一部の長さは、1mm以上2mm以下に限られない。
雌ネジ部におけるネジ山の上記一部は、上下方向の断面視で上下方向の全長にわたって雄ネジ部に当接しているが、雌ネジ部におけるネジ山のうちの一部の内径を他の部分の内径よりも小さくなっていれば、上下方向の全長にわたって雄ネジ部に当接していなくてもよい。
雌ネジ部におけるネジ山またはネジ谷のうちの一部と摺動部とを同一材料で一体に形成しているが、上記一部と摺動部とを別体として形成してもよく、さらに、別材料で形成してもよい。同様に、周リブ部は、摺動部と別体として形成されてもよく、摺動部とは別の材料で形成されてもよい。
摺動筒部には、一対の摺動部が設けられているが、少なくとも1つの摺動部が設けられていればよく、3以上の摺動部が設けられていてもよい。
操作部材は、雄ネジ軸の上端部に連結されているが、容器本体の外部に露呈すると共に雄ネジ軸を回転操作できれば、雄ネジ軸の下端部など、雄ネジ軸の他の部分に連結されてもよい。また、雄ネジ軸を直接操作できる構成とすることによって操作部材を省略してもよい。
容器本体や吐出部材、操作部材、中皿は、円筒状に限らず、例えば楕円筒状など他の形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明によれば、中皿と容器本体及び雄ネジ軸との間のシール性を向上させた繰出容器に関して、産業上の利用可能性が認められる。
【符号の説明】
【0040】
1 繰出容器、2 容器本体、3 吐出部材、3A 吐出孔、5 雄ネジ軸、6,100,110 中皿、52,101,111 摺動筒部、52A,101A,111A 摺動部、54 雌ネジ部、54A ネジ山、54B 一部、111B 周リブ部、O 容器軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7