(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243703
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】風向計
(51)【国際特許分類】
G01P 13/02 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
G01P13/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-226067(P2013-226067)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-87259(P2015-87259A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110206
【氏名又は名称】株式会社TOK
(73)【特許権者】
【識別番号】510175735
【氏名又は名称】株式会社フィールドプロ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】宇塚 和夫
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−215241(JP,A)
【文献】
実開平1−89367(JP,U)
【文献】
米国特許第4488431(US,A)
【文献】
実開昭48−71890(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P13/00−13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体の前方が風向を向く風向計であって、
前記胴体の一部は、前記胴体の前後方向に沿った軸を中心として回転可能とされると共に重心が前記軸に対して偏心する左右バランス調整部とされ、
前記胴体の前後方向に沿って移動可能な錘を有する前後バランス調整部をさらに備え、
前記左右バランス調整部と前記前後バランス調整部とは、前記胴体の前方が風向を向くために回転する回転軸を互いに前後方向に挟んだ位置に配置される
ことを特徴とする風向計。
【請求項2】
前記胴体の先端部に風速を検知するためのプロペラが設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の風向計。
【請求項3】
前記左右バランス調整部は、前記胴体の前記先端部を含む部位とされる
ことを特徴とする請求項2に記載の風向計。
【請求項4】
胴体の前方が風向を向く風向計であって、
前記胴体の一部は、前記胴体の前後方向に沿った軸を中心として回転可能とされると共に重心が前記軸に対して偏心する左右バランス調整部とされ、
前記胴体の先端部に風速を検知するためのプロペラが設けられ、
前記左右バランス調整部は、前記胴体の前記先端部を含む部位とされる
ことを特徴とする風向計。
【請求項5】
前記胴体の前後方向に沿って移動可能な錘を有する前後バランス調整部をさらに備える
ことを特徴とする請求項4に記載の風向計。
【請求項6】
前記左右バランス調整部は、枠体と、前記枠体の内周面上に設けられ前記軸から離れた位置に重心が位置する錘とを有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の風向計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に左右方向の重心の調整が可能な風向計に関する。
【背景技術】
【0002】
風が吹く方向を示す風向計が広く実用化されており、中でも風向計にプロペラが付加され風速計と一体となった風向風速計が様々な分野において実用化されている。一般的な風向風速計は略円筒状の胴体の後方に垂直尾翼が取り付けられる構造をしており、この垂直尾翼の働きにより胴体の前方が風向を向く構成とされ、胴体の前方の向く方向を検知することで風向が検知される。また、風向風速計の胴体の前方にはプロペラが設けられ、このプロペラの回転数を検知することで風速が検知される。
【0003】
このような風向風速計は、一般的に、胴体が水平面に沿って回転可能なように、鉛直に建てられる支柱等に取り付けられて使用される。このとき風向風速計における水平面に沿って回転する回転部分の重心が、回転中心となる軸上からずれると、風向風速計が受ける風の力以外にモーメントによって風向風速計を回転させる力を発生させてしまう。また、風向風速計の回転部分と回転部分を軸支する固定ベースとの間の一部の摩擦が大きくなり、一部のベアリング等に負荷がかかる。このような状態の風向風速計は、胴体が回転しづらく、風向の検知精度が低くなる傾向がある。従って、風向風速計の重心を調整することは重要である。このことは、風速計が一体とされていない風向計についても同様である。
【0004】
下記特許文献1には、重心位置の調整をすることができる風向風速計が記載されている。この風向風速計は、胴体の外表面の上下部に重りが付けられた重心調整レバーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−215241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には重心調節レバーの具体的構成は記載されていないが、胴体を前後方向に水平にするための重心調整レバーであることから、前後方向の重心位置を調節する機構が備えられていると考えられる。しかし、重心は前後左右方向で調整されることが好ましい。この場合、例えば、特許文献1の風向風速計に左右方向の重心位置を調整する錘を付加することが考えられるが、このような錘の付加は、前後方向のバランスを崩してしまう可能性があるため困難である。
【0007】
そこで、本発明は、容易に左右方向の重心の調整を行うことができる風向計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、胴体の前方が風向を向く風向計であって、前記胴体の一部は、前記胴体の前後方向に沿った軸を中心として回転可能とされると共に重心が前記軸に対して偏心する左右バランス調整部とされることを特徴とするものである。
【0009】
この風向計によれば、胴体の一部である左右バランス調整部を胴体の前後方向に沿った軸を中心に回転させることで、左右バランス調整部の重心が当該軸の周りを回転する。従って、左右バランス調整部を回転させることで、胴体の左右方向の重心を変化させることができる。このように胴体の左右方向の重心を変化させることで、風向計の水平面に沿って回転する回転部分の左右方向の重心の調整を行うことができる。また、この左右バランス調整部は、胴体の一部であるため、外部から容易に左右バランス調整部を回転させることができる。従って、本発明の風向計は、容易に左右方向の重心の調整を行うことができる。
【0010】
また、前記左右バランス調整部は、前記軸に垂直な断面における外形が前記軸を中心とした円形であることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、左右バランス調整部を軸中心に回転させても、風向計の外形は変化しない。このため、左右方向の重心を調整する前後において、風向計周りの風の流れが変化することを防止することができる。
【0012】
またこの場合、前記左右バランス調整部は、枠体と、前記枠体の内周面上に設けられ前記軸から離れた位置に重心が位置する錘とを有する構成とされても良い。
【0013】
また、上記風向計は、前記胴体の前後方向に沿って移動可能な錘を有する前後バランス調整部をさらに備えることが好ましい。前後バランス調整部を有することで、左右方向の重心以外に前後方向の重心を独立して調整することができる。なお、この場合、前後バランス調整部の調整部位が露出していれば、風向計の外部から直接前後方向の重心を調整することができる。
【0014】
そして、前記左右バランス調整部と前記前後バランス調整部とは、前記胴体が風向を向くために回転する回転軸を互いに前後方向に挟んだ位置に配置されることが好ましい。左右バランス調整部と前後バランス調整部とが前後方向にそれぞれ配置されることで、これらの調整部による重量が回転軸を基準として前後に分散される。従って、これらの調整部が重い場合であっても、前後方向に重量バランスを取りやすい風向計を実現することができる。
【0015】
また、上記の風向計において、前記胴体の先端部に風速を検知するためのプロペラが設けられることが好ましく、この場合、風向計を風向風速計とすることができる。
【0016】
さらにこの場合、前記左右バランス調整部は、前記胴体の前記先端部を含む部位とされることが好ましい。プロペラが設けられる場合、胴体内部にプロペラを軸支する機構やプロペラの回転を計測するための機構が設けられる。この場合、一般的に胴体の先端部を含む部位が取り外し可能な構成とされ、この先端部を含む部位が取り外された状態で、当該機構が胴体内に設置されたり、プロペラを軸支するシャフトが当該機構に取り付けられたりする。従って、左右バランス調整部がこの先端部を含む部位とされれば、プロペラを軸支するための機構を胴体内に設けるため等に取り外し可能とされる胴体の部位と、左右バランス調整部とを兼ねることが可能となる。従って、胴体が多くの部位に細分化されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、容易に左右方向の重心の調整を行うことができる風向計が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る風向計を示す斜視図である。
【
図3】胴体の後端部付近の中心軸に沿った垂直方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る風向計の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では風向計と風速計とが一体とされた風向風速計を例に説明する。
【0020】
まず、本実施形態の風向風速計の概略について説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る風向計を示す斜視図である。
図1に示すように、風向風速計1は、胴体10と、プロペラ40と、上側・下側尾翼21,22と、固定ベース50とを主な構成として備える。なお、
図1では、理解の容易のため、プロペラ40が取り外された状態の図が示されている。
【0022】
胴体10は、胴体本体部11と、胴体本体部11に接続される胴体先端部12及び胴体支持部13とを有する。胴体本体部11と胴体先端部12とから成る部分は、風向風速計1の前後方向に伸びる流線形の形状をしている。その外形は、前後方向に垂直な断面において、前後方向に伸びる中心軸AXcを中心とする円形とされる。また、当該外形は、前方の先端から後方に向かうにつれて徐々に直径が大きくなり、直径の最大点から更に後方に向かうにつれて徐々に直径が小さくなる。この直径の最大点は前方寄りとされ、胴体本体部11と胴体先端部12とから成る部分の外形は全体的に外側に膨らむ曲面から成る形状をしている。このような形状とされることで、気流が胴体10の周りを流れる場合に生じるカルマン渦が抑制され、不要な空気抵抗が小さくされる。
【0023】
また、胴体本体部11は、前方が開口され中が空洞とされる構造とされ、直径が十分に小さくなる後方の一部で空洞が封止されている。また、胴体本体部11の後端部には、後述する止めねじ31が螺入される破線で示すねじ穴11Hが形成されている。
【0024】
胴体先端部12は、胴体10の先端部を含む部位であり、中心軸AXcを中心に胴体本体部11に対して回転可能な状態で、胴体本体部11に係合されている。そして、胴体先端部12は、胴体先端部12の前方に設けられる固定ナット14が図示せぬ固定部材に固定されることで、胴体本体部11に対して回転する動きが規制される。また、胴体先端部12の胴体本体部11側は開口しており、胴体先端部12が胴体本体部11に係合している状態で、胴体本体部11内の空洞と胴体先端部12内の空洞とにより、所定の大きさの空間が形成されている。
【0025】
胴体支持部13は、胴体本体部11と胴体先端部12とから成る部分の前後方向の中心付近において、中心軸AXcに対して垂直に下向に延在し、胴体本体部11と一体とされている。胴体支持部13は、円筒状の形状をしている。
【0026】
また、胴体10の前方側の先端(胴体先端部12の先端)において、胴体10の内側から外側にわたってシャフト15が延在している。具体的には、シャフト15は、胴体先端部12の前方に設けられる固定ナット14のねじ穴内から胴体10外に延在している。また、シャフト15は中心軸AXcを中心に回転する構成とされる。シャフト15の先端にはねじ穴が形成されており、シャフト15とプロペラ40とが嵌合した状態で、シャフト15のねじ穴にねじ41が挿入されて締められることで、プロペラ40がシャフト15に固定される。従って、プロペラ40が回転することで、シャフト15はプロペラ40と共に回転する。なお、特に図示しないが胴体10内の空間には、シャフト15を軸支する部材や、シャフト15の回転により駆動される部材等が配置されている。
【0027】
一方、胴体本体部11の後方側には、胴体10の上側に延在する上側尾翼21及び胴体10の下側に延在する下側尾翼22が設けられている。つまり、上側尾翼21及び下側尾翼22は垂直尾翼とされる。本実施形態の上側尾翼21と下側尾翼22とは、互いに中心軸AXcを基準として略対称な形状をしている。また、側面方向から見た上側尾翼21及び下側尾翼22は、それぞれ後方に向かうにつれて尾翼の高さが大きくなるが、後方に向かうにつれて当該高さの増え方が鈍くなる曲線状の形状をしている。また、上側尾翼21及び下側尾翼22の後方部分は、中心軸AXcから最も離れた位置から丸みを帯びながら中心軸AXcに向かう曲線状の形状とされ、中心軸AXcに垂直な直線状の形状とはされていない。このような外形が曲線状の形状である上側尾翼21と下側尾翼22は、外形が直線の尾翼と比べて霜が付着しづらい。
【0028】
固定ベース50は、風向風速計1を支柱等に固定するための部材である。固定ベース50は、胴体支持部13と軸支されており、胴体10は固定ベース50に対して回転軸AXrを中心に回転可能とされる。以後、固定ベース50に対して胴体10と共に回転する部分を回転部分と称する。この回転部分には、胴体10の他に、上側尾翼21、下側尾翼22、プロペラ40、胴体10内の部材等が含まれる。また、固定ベース50の胴体支持部13が軸支される側と反対側は、固定ベース50自身を支柱等に固定するための図示せぬ固定部材が設けられている。
【0029】
ところで胴体支持部13から固定ベース50に加わる重量は、胴体支持部13と固定ベース50との境界面に均等に加わることが好ましい。このように重量が加わることにより、胴体支持部13と固定ベース50との境界面の一部に過度な荷重が加わることを防止することができ、風向風速計1の胴体10が風により回転軸AXrを中心に回転する際の摩擦を小さくすることができる。このことはベアリングが用いられる場合であっても同様の傾向がある。胴体支持部13と固定ベース50との境界面に均等に加わるためには、風向風速計1の回転部分の重心が回転軸AXr上に位置すれば良い。回転部分の重心が回転軸AXr上に位置するためには、風向風速計1を前後方向から見る場合(中心軸AXc沿いに見る場合)に、回転部分の左右方向の重心が回転軸AXr上に位置し、風向風速計1を横方向から見る場合に回転部分の前後方向の重心が回転軸AXr上に位置すれば良い。これにより、モーメントによる風向風速計1の不要な回転を抑制することができる。なお、本実施形態では、回転軸AXrは、中心軸AXcと直交する。このため、回転部分の左右方向の重心は、回転軸AXrに沿って風向風速計1を見る場合に中心軸AXc上に位置しても同じことである。
【0030】
次に風向風速計1における回転部分の前後方向、左右方向の重心の調整について説明する。
【0031】
図2は、胴体先端部12を中心軸AXcに沿って後方側から見た図である。本実施形態において、胴体先端部12は、回転部分の左右方向の重心を調整する左右バランス調整部とされる。胴体先端部12は、枠体としてのカウル12aと、カウル12a上に設けられる錘12bとを有する。カウル12aは、中心軸AXcに垂直な断面における外形が、中心軸AXcを中心とする円形とされる。カウル12aの最も後方側(胴体本体部11側)には、端面12a
1が中心線AXcと垂直に形成されている。また、
図1に示すように先端部12は、後方から前方に向かうにつれて直径が小さくなるため、端面12a
1に接するカウル12aの内壁面12a
2の直径も前方に向かうにつれて小さくなる。また、カウル12aを内壁面12a
2の先端側には、中心軸AXcに対して垂直な面12a
3が内壁面12a
2に接して形成されている。そして、面12a
3の中心に開口12Hが形成されており、
図1に示すシャフト15は、開口12Hから胴体外に延在している。また、錘12bは、中心軸AXcに対して偏在してカウル12aの内壁面12a
2上に設けられており、このため胴体先端部12の重心Cは、中心軸AXcに対して偏心している。なお、この錘12bは、カウル12aの一部を肉厚とすることで設けても良い。この場合、カウル12aと錘12bとが一体で形成できるため、後から錘12bをカウル12aの内周面上に配置する必要がない。
【0032】
この左右バランス調整部による回転部分の左右方向の重心の調整は次のように行われる。固定ナット14により胴体先端部12のカウル12aが胴体本体部11に強く圧着され、胴体先端部12が中心軸AXcを中心に回転することができない場合には、固定ナット14を緩める。そして、胴体先端部12が回転可能な状態で、胴体先端部12を中心軸AXcを中心に回転させる。この回転により胴体先端部12の重心Cは中心軸AXc周りを回転し、風向風速計1における回転部分の左右方向の重心が移動する。そして、風向風速計1を前後方向から見る場合(中心軸AXc沿いに見る場合)に、回転部分の左右方向の重心が回転軸AXr上に位置する位置で胴体先端部12を止める。風向風速計1の左右方向の重心をこのような位置とするには、まず、固定ベース50を水平に支持する。従って、回転軸AXrも水平となるため、胴体10等を含む回転部分は、鉛直面に沿って回転することができる。そして、胴体10の中心軸AXcが鉛直方向を向き、胴体10の前方が上側となるように回転部分の向きを調整する。この状態で左右方向のバランスがとれていないと胴体10等を含む回転部分は左右いずれかに傾いてしまう。例えば、回転部分の左右方向の重心が中心軸AXcよりも右側に位置する場合には、右側に傾く。その場合には、左右バランス調整部の胴体先端部12を回転させる。具体的には胴体先端部12の重心Cは中心軸AXcに対して偏心しているので、重心Cが左側になるように胴体先端部12を回転させ、水平位置にある回転軸AXrに対し中心軸AXcが垂直状態になるようにすればよい。その後、固定ナット14で胴体先端部12の回転位置を固定する。
【0033】
図3は、胴体10の後端部付近の中心軸AXcに沿った方向の断面図である。なお、
図3において上側尾翼21、下側尾翼22は省略されている。上述のように胴体本体部11の後端部には、ねじ穴11Hが形成されている。ねじ穴11Hは、胴体本体部11にねじ穴11Hが直接形成されても良く、ねじ穴11Hが形成された円筒状のねじ受けが胴体本体部11の後端部に圧入されて形成されても良い。ねじ受けが用いられる構造は、胴体本体部11が樹脂から形成される場合に、ねじ受けを金属で形成すれば、ねじ穴11H内のねじ山の強度を確保できるため好ましい。このねじ穴11Hには、止めねじ31が螺入される。止めねじ31はすり割りつき止めねじであっても六角穴付き止めねじであっても良いが、すり割りつき止めねじであると止めねじ31全体がねじ穴11H内に位置する場合にマイナスドライバーがねじ穴11H内に入らない場合があるので、六角穴付き止めねじが好ましい。この止めねじ31は錘として作用し、止めねじ31の位置を前後に移動させることにより、風向風速計1の前後方向の重心が移動する。従って、本実施形態において、止めねじ31は前後バランス調整部とされる。
【0034】
この前後バランス調整部による回転部分の前後方向の重心の調整は次のように行われる。まず、固定ベース50を水平に支持する。従って、回転軸AXrも水平となるため、胴体10等を含む回転部分は、鉛直面に沿って回転することができる。そして、胴体10の中心軸AXcが水平方向を向くように回転部分の向きを調整する。この状態で回転部分の前後方向の重心が回転軸AXr上に無い場合、胴体10の前方または後方が下方に下がる。例えば、回転部分の前後方向の重心が回転軸AXrよりも前方に位置する場合には、胴体10の前方が下側に下がる。その場合には、前後バランス調整部である止めねじ31を後方に移動させる。逆に回転部分の前後方向の重心が回転軸AXrよりも後方に位置する場合には、胴体10の後方が下側に下がる。その場合には、前後バランス調整部である止めねじ31を前方に移動させる。こうして胴体10が水平を維持できるまで止めねじ31の位置を調整する。このように左右バランス調整部と前後バランス調整部とが独立しているため、本実施形態の風向風速計1は、左右方向の重心以外に前後方向の重心を独立して調整することができる。
【0035】
こうして、回転部分の左右方向の重心及び前後方向の重心が回転軸AXr上に位置する状態とされた後、風向風速計1は、胴体10が水平面に沿って回転可能なように鉛直な支柱等に固定されて使用される。使用時においては、上側尾翼21、下側尾翼22の作用等により、回転部分が回転して、胴体10の前方が風向を向く。このとき、固定ベース50に設けられる不図示のセンサにより胴体10の向きが検知されて、風向が検知される。また、プロペラ40がシャフト15と共に回転することで、胴体10内に配置されるセンサにより、シャフト15の回転数が検知されて、風速が検知される。
【0036】
本実施形態の風向風速計1によれば、胴体10の一部である左右バランス調整部を胴体10の前後方向に沿った軸を中心に回転させることにより、胴体10の左右方向の重心を変化させ、回転部分の左右方向の重心の調整を行うことができる。従って、外部から容易に左右方向の重心の調整を行うことができる。なお、固定ナット14の外側にスパナ等の工具を差し込める隙間が設けられれば、組立てられた風向計1を分解することなく左右方向の重心の調整を行い、再び固定ナット14を締結することが可能となる。
【0037】
また、左右バランス調整部のカウル12aは、断面の形状が中心軸AXcを中心とした円形であるため、左右バランス調整部を軸中心に回転させても、風向風速計1の外形は変化しない。このため、左右方向の重心を調整する前後において、風向風速計1周りの風の流れが変化することを防止することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、左右バランス調整部と前後バランス調整部とは、回転軸AXrを互いに前後方向に挟んだ位置に配置されるため、錘12bや止めねじ31の重量が回転軸AXrを基準として前後に分散される。従って、これらの錘12bや止めねじ31が重い場合であっても、前後方向に重量バランスを取りやすくすることができる。
【0039】
また風向風速計1において、左右バランス調整部は、胴体10の先端部を含む部位とされるため、プロペラ40を軸支するシャフト15等の機構を胴体10内に設置するために取り外し可能とされる胴体の部位と、左右バランス調整部とを兼ねることができる。
【0040】
以上、本発明の風向計について上記実施形態の風向風速計1を例に説明したが、本発明は上記実施形態の風向風速計1に限定されない。
【0041】
例えば、本発明は、風速計は必須の要件では無い。つまり、上記実施形態の風向風速計1からプロペラ40やシャフト15等の風速を検知するためだけに用いられる部材を全て省略して、単に風向を検知する風向計としても良い。ただし、本発明の風向計にプロペラ等の風速計に必要な部材が設けられていれば、上記実施形態のように風向風速計となるので好ましい。
【0042】
また、上記実施形態では、左右バランス調整部の中心軸AXcに垂直な面における外形、すなわちカウル12aの中心軸AXcに垂直な面における外形が、中心軸AXcを中心とした円形とされたが、本発明はこれに限らない。例えば、カウル12aの外表面にカウル12aを中心軸AXc周りに回し易いように突起等が設けられていても良い。
【0043】
また、本発明において、前後バランス調整部は必須では無い。ただし、前後バランス調整部を有する方が、前後方向の重心を調整できるため好ましい。また前後バランス調整部が設けられる場合であっても、前後バランス調整部は回転軸AXrを基準として、左右バランス調整部と前後方向の同じ側に設けられても良い。
【0044】
また左右バランス調整部は胴体10の先端部を含む位置に設けられなくても良く、例えば、胴体10の後方側に設けられても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明によれば、容易に左右方向の重心の調整を行うことができる風向計が提供され、風向計を含む風向風速計等の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・風向風速計
10・・・胴体
11・・・胴体本体部
12・・・胴体先端部
12a・・・カウル(枠体)
12b・・・錘
13・・・胴体支持部
14・・・固定ナット
15・・・シャフト
21・・・上側尾翼
22・・・下側尾翼
31・・・止めねじ
40・・・プロペラ
50・・・固定ベース
AXc・・・回転軸
AXr・・・中心軸