特許第6243709号(P6243709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243709
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】車両用プロペラシャフト
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/22 20060101AFI20171127BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B60K17/22 Z
   F16F7/12
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-239051(P2013-239051)
(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-77956(P2015-77956A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年10月27日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0123955
(32)【優先日】2013年10月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】513291595
【氏名又は名称】株式會社 大承
【氏名又は名称原語表記】DAE SEUNG CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔元準
(72)【発明者】
【氏名】▲いぇ▼炳佑
(72)【発明者】
【氏名】金兌烈
(72)【発明者】
【氏名】姜文模
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−303846(JP,A)
【文献】 特開2005−313766(JP,A)
【文献】 特開2006−117166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/22
F16F 7/12
F16C 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部の外周面に沿ってスプライン結合のための多数の掛かり突起が形成されたシャフトと、
前記シャフトが挿入されて接触する内周面に沿って掛かり突起と噛合わされてスプライン結合をなす多数の掛かり溝が形成されたチューブと、
前記チューブの内周面に設置固定され、一端が前記シャフトの先端部に対応するように形成され、衝突荷重の作用時に破断するように構成されたストッパ部材と、
前記チューブの内部で一端が前記ストッパ部材の他端と接触するように設けられ、シャフトと結合してシャフトと共にストッパ部材の両端を支持することによりシャフトのスライディングを制限し、衝突荷重が作用してストッパ部材の破断時にシャフトと共にチューブ内部でスライディングする固定部材とを含み、
前記固定部材は、ストッパ部材の他側でシャフトと共にストッパ部材の両端を支持するように形成された頭部と、頭部からシャフト側に延長されてシャフトの内側に挟まれて結合されるボディ部で構成されたことを特徴とする車両用プロペラシャフト。
【請求項2】
前記シャフトの掛かり突起とチューブの掛かり溝は、互いに対応するインボリュートギア形状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用プロペラシャフト。
【請求項3】
前記チューブは、棒形状の軸ボディと軸ボディの一端部に連結されて内周面に沿って掛かり突起と噛合わされる多数の掛かり溝が形成されたハブとで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用プロペラシャフト。
【請求項4】
前記軸ボディとハブは、摩擦溶接によって結合され、軸ボディとハブの結合部分には摩擦溶接によってビード部が形成され、
前記ストッパ部材は、一端がシャフトの先端部に接触し、他端がビード部に支持されて固定されたことを特徴とする請求項3に記載の車両用プロペラシャフト。
【請求項5】
前記ストッパ部材はリング形態に形成され、チューブの内周面に設置固定される縁部と内周面に沿って中心に向かって延長形成されたフランジ部で構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用プロペラシャフト。
【請求項6】
前記チューブには、掛かり溝の他側で前記ストッパ部材が挿入されて固定される設置溝が形成され、前記ストッパ部材の縁部が設置溝に挿入され、フランジ部が縁部からシャフトの先端部に対応するように延長されたことを特徴とする請求項5に記載の車両用プロペラシャフト。
【請求項7】
前記ストッパ部材のフランジ部には、縁に沿って多数の破断溝が形成されたことを特徴とする、請求項5に記載の車両用プロペラシャフト。
【請求項8】
前記ストッパ部材の破断溝は、シャフトの外周面とチューブの内周面が接触する線上に対応するように形成されたことを特徴とする請求項7に記載の車両用プロペラシャフト。
【請求項9】
前記ストッパ部材の破断溝は、フランジ部の縁に沿って多数個形成され、上下左右に対称をなすように形成されたことを特徴とする請求項7に記載の車両用プロペラシャフト。
【請求項10】
前記固定部材のボディ部の外周面とシャフトの内周面には、ねじ山又はねじ溝がそれぞれ形成されてねじ締結をなすことを特徴とする請求項に記載の車両用プロペラシャフト。
【請求項11】
端部の外周面に沿ってスプライン結合のための多数の掛かり突起が形成されたシャフトと、
内周面に沿ってシャフトの掛かり突起と噛合わされてスプライン結合をなす多数の掛かり溝が形成されたハブと棒形状に形成されてハブの他端部に連結される軸ボディで構成され、ハブと軸ボディは摩擦溶接によって結合されることによりビード部が形成されたチューブと、
前記ハブの内周面に設置され、一端が前記シャフトの先端部に対応するように形成され、他端が前記チューブのビード部に支持されて固定されることにより衝突荷重の作用時に破断するように構成されたストッパ部材と、
前記チューブの内部で一端が前記ストッパ部材の他端と接触するように設けられ、シャフトと結合してシャフトと共にストッパ部材の両端を支持することによりシャフトのスライディングを制限し、衝突荷重が作用してストッパ部材の破断時にシャフトと共にチューブ内部でスライディングする固定部材とを含む車両用プロペラシャフト。
【請求項12】
端部の外周面に沿ってスプライン結合のための多数の掛かり突起が形成されたシャフトと、
前記シャフトが挿入されて接触する内周面に沿って掛かり突起と噛合わされてスプライン結合をなす多数の掛かり溝が形成されたチューブと、
前記チューブの内周面に設置固定され、一端が前記シャフトの先端部に対応するように形成され、衝突荷重の作用時に破断するように構成されたストッパ部材と、
前記チューブの内部で一端が前記ストッパ部材の他端と接触するように設けられ、シャフトと結合してシャフトと共にストッパ部材の両端を支持することによりシャフトのスライディングを制限し、衝突荷重が作用してストッパ部材の破断時にシャフトと共にチューブ内部でスライディングする固定部材とを含み、
前記チューブは、棒形状の軸ボディと軸ボディの一端部に連結されて内周面に沿って掛かり突起と噛合わされる多数の掛かり溝が形成されたハブとで構成され、
前記軸ボディとハブは、摩擦溶接によって結合され、軸ボディとハブの結合部分には摩擦溶接によってビード部が形成され、
前記ストッパ部材は、一端がシャフトの先端部に接触し、他端がビード部に支持されて固定されたことを特徴とする車両用プロペラシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用プロペラシャフトに係り、より詳しくは、衝突事故の発生時、低い崩壊荷重で軸方向の長さ変化を充分に吸収することができるようにし、これによって衝突エネルギーを充分に吸収して乗客の傷害値を最大限軽減させることができる車両用プロペラシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、後輪駆動車両に設置されるプロペラシャフト10は、図1に示されたように、エンジン1と変速機2からなるパワートレーンの駆動力をリアアクスル3まで円滑に伝達する動力伝達装置であって、円滑なトルク伝達のために充分なねじれ強度を確保していなければならず、軸方向に長さが長いので充分な曲げ剛性を確保していなければならない。
【0003】
また、上記のような基本的な特性以外に、最近は衝突に対する安全規制が重要な性能因子として浮上しているところ、すなわち衝突事故の発生時に軸方向の長さ変化を充分に吸収して乗客の傷害値を軽減させる技術か開発されている。
【0004】
しかし、従来のプロペラシャフト10は、衝突事故の発生時、高い崩壊荷重により軸方向の長さ変化が充分ではなく、このため衝撃を充分に吸収することができずに乗客の傷害値を加重させる短所がある。
【0005】
すなわち、従来のプロペラシャフト10は、図2に示されたように、変速機2との結合のためのフロントカップリング11、フロントカップリング11と結合したフロントヨーク12、フロントヨーク12と結合したフロントチューブ13、ユニバーサル・ジョイント14を媒介として連結されたリアチューブ15、リアチューブ15と結合したリアヨーク16、リアアクスル3との結合のためのリアカップリング17を含んだ構成になっている。
【0006】
ここで、フロントチューブ13は、スウェージング(swaging)工法によって加工された直径変化部13aを備えた構成で、直径変化部13aを基準としてフロントヨーク12の方へ延長された小径部13b及びユニバーサル・ジョイント14の方へ延長された大経部13cに区分される。
【0007】
径部13bは、大経部13cより直径が小さく形成された部位で、小径部13bと大経部13cとを直径変化部13aが連結する構造である。
【0008】
したがって、衝突事故時に発生した衝突エネルギーがパワートレーンを介してプロペラシャフト10へ伝達されると、図3のように直径変化部13aが変形して小径部13bが大経部13cの中に挿入される変形が発生し、上記のような小径部13bの移動によってプロペラシャフト10は衝突エネルギーを吸収するようになるのである。
【0009】
しかし、従来のプロペラシャフト10は、小径部13bと大経部13cの直径差が大きくないので小径部13bの後方移動量が少なく、このため高い崩壊荷重で軸方向の長さ変化が不充分で衝突エネルギーを充分に吸収することができず、特に車両の大きい減加速度によって乗客が受ける傷害値が大きくなる短所があった。
【0010】
したがって、小径部13bと大経部13cの直径差を大きくするために、小径部13bの直径を小さくするか又は大経部13cの直径を大きくする方案があるが、上記のように直径に変化を与えれば、基本的な強度に変化が生じたり、重量及び周辺部品とのパッケージによる新しい短所が発生するようになる。
【0011】
また、小径部13bの後方移動量を大きくするために材料の物性を変更して崩壊荷重を下げる方案もあるが、このような方案もプロペラシャフト10の基本的な強度を低下させる原因になるので望ましくない。
【0012】
上記の背景技術として説明された事項は、本発明の背景についての理解のためだけのもので、この技術分野で通常の知識を有する者に既に知られた従来技術に該当することを認めるものとして受け入れられてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報10−2009−0045732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような問題点を解決するために提案されたもので、車両の衝突発生時に軸方向の長さが充分に変化することにより、衝突によって発生した衝撃エネルギーを充分に吸収して車体に伝達される衝撃を減らし、これによって乗客が受ける傷害値を最大限低減させることができる車両用プロペラシャフトを提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明による車両用プロペラシャフトは、端部の外周面に沿ってスプライン結合のための多数の掛かり突起が形成されたシャフトと、前記シャフトが挿入されて接触する内周面に沿って掛かり突起と噛合わされてスプライン結合をなす多数の掛かり溝が形成されたチューブと、前記チューブの内周面に設置固定され、一端が前記シャフトの先端部に対応するように形成され、衝突荷重の作用時に破断するように構成されたストッパ部材と、前記チューブの内部で一端が前記ストッパ部材の他端と接触するように設けられ、シャフトと結合してシャフトと共にストッパ部材の両端を支持することによりシャフトのスライディングを制限し、衝突荷重が作用してストッパ部材の破断時にシャフトと共にチューブ内部でスライディングする固定部材とを含含み、前記固定部材は、ストッパ部材の他側でシャフトと共にストッパ部材の両端を支持するように形成された頭部と、頭部からシャフト側に延長されてシャフトの内側に挟まれて結合されるボディ部で構成されたことを特徴とする
【0016】
上述のような車両用プロペラシャフトにおいて、前記シャフトの掛かり突起とチューブの掛かり溝は、互いに対応するインボリュートギア形状に形成されていることが好ましい
【0017】
また、前記チューブは、棒形状の軸ボディと軸ボディの一端部に連結されて内周面に沿って掛かり突起と噛合わされる多数の掛かり溝が形成されたハブとで構成されていることが好ましい
【0018】
また、前記軸ボディとハブは、摩擦溶接によって結合され、軸ボディとハブの結合部分には摩擦溶接によってビード部が形成され、前記ストッパ部材は、一端がシャフトの先端部に接触し、他端がビード部に支持されて固定されていることが好ましい
【0019】
また、前記ストッパ部材はリング形態に形成され、チューブの内周面に設置固定される縁部と内周面に沿って中心に向かって延長形成されたフランジ部で構成されていことが好ましい
【0020】
また、前記チューブには、掛かり溝の他側に前記ストッパ部材が挿入されて固定される設置溝が形成され、前記ストッパ部材の縁部が設置溝に挿入され、フランジ部が縁部からシャフトの先端部に対応するように延長されていることが好ましい
【0021】
また、前記ストッパ部材のフランジ部には、縁に沿って多数の破断溝が形成されていることが好ましい
【0022】
また、前記ストッパ部材の破断溝は、シャフトの外周面とチューブの内周面が接触する線上に対応するように形成されていることが好ましい
【0023】
また、前記ストッパ部材の破断溝は、フランジ部の縁に沿って多数個形成され、上下左右に対称をなすように形成されていることが好ましい
【0024】
また、前記固定部材のボディ部の外周面とシャフトの内周面には、ねじ山又はねじ溝がそれぞれ形成されてねじ締結をなすことが好ましい
【0025】
一方、本発明による別の車両用プロペラシャフトは、端部の外周面に沿ってスプライン結合のための多数の掛かり突起が形成されたシャフトと、内周面に沿ってシャフトの掛かり突起と噛合わされてスプライン結合をなす多数の掛かり溝が形成されたハブと棒形状に形成されてハブの他端部に連結される軸ボディで構成され、ハブと軸ボディは摩擦溶接によって結合されることによりビード部が形成されたチューブと、前記ハブの内周面に設置され、一端が前記シャフトの先端部に対応するように形成され、他端が前記チューブのビード部に支持されて固定されることにより衝突荷重の作用時に破断するように構成されたストッパ部材と、前記チューブの内部で一端が前記ストッパ部材の他端と接触するように設けられ、シャフトと結合してシャフトと共にストッパ部材の両端を支持することによりシャフトのスライディングを制限し、衝突荷重が作用してストッパ部材の破断時にシャフトと共にチューブ内部でスライディングする固定部材とを含むことを特徴とする
【0026】
また、本発明によるさらに別の車両用プロペラシャフトは、端部の外周面に沿ってスプライン結合のための多数の掛かり突起が形成されたシャフトと、前記シャフトが挿入されて接触する内周面に沿って掛かり突起と噛合わされてスプライン結合をなす多数の掛かり溝が形成されたチューブと、前記チューブの内周面に設置固定され、一端が前記シャフトの先端部に対応するように形成され、衝突荷重の作用時に破断するように構成されたストッパ部材と、前記チューブの内部で一端が前記ストッパ部材の他端と接触するように設けられ、シャフトと結合してシャフトと共にストッパ部材の両端を支持することによりシャフトのスライディングを制限し、衝突荷重が作用してストッパ部材の破断時にシャフトと共にチューブ内部でスライディングする固定部材とを含み、前記チューブは、棒形状の軸ボディと軸ボディの一端部に連結されて内周面に沿って掛かり突起と噛合わされる多数の掛かり溝が形成されたハブとで構成され、前記軸ボディとハブは、摩擦溶接によって結合され、軸ボディとハブの結合部分には摩擦溶接によってビード部が形成され、前記ストッパ部材は、一端がシャフトの先端部に接触し、他端がビード部に支持されて固定されたことを特徴とする
【発明の効果】
【0027】
上述したような構造からなる車両用プロペラシャフトは、車両の衝突発生時に軸方向の長さが充分に変化することにより、衝突によって発生した衝撃エネルギーを充分に吸収して車体に伝達される衝撃を減らし、これによって乗客が受ける傷害値を最大限低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】パワートレーンとリアアクスルを連結するようにプロペラシャフトが設置された図面である。
図2】従来のプロペラシャフトを説明するための図面である。
図3図2に示された従来のプロペラシャフトの衝突事故時に変形したフロントチューブの直径変化部についての断面図である。
図4】本発明による車両用プロペラシャフトを示した図面である。
図5図4に示された車両用プロペラシャフトの分解図である。
図6図4に示された車両用プロペラシャフトの構成図である。
図7図4に示された車両用プロペラシャフトの断面図である。
図8】本発明の車両用プロペラシャフトの剪断強度に伴うストッパ部材に形成される破断溝を示した図面である。
図9】本発明の車両用プロペラシャフトの作動状態を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態による車両用プロペラシャフトについて詳察する。
【0030】
実施形態による車両用プロペラシャフトは、図4ないし図9に示されたように、変速機2(図1参照)との結合のためのフロントカップリング11、フロントカップリング11と結合したフロントヨーク12、フロントヨーク12に一端が溶接結合されたシャフト100、シャフト100とスプライン結合Bをなすチューブ200、ユニバーサル・ジョイント14を媒介として連結されたリアチューブ15、リアチューブ15と結合したリアヨーク16、リアアクスル3(図1参照)との結合のためのリアカップリング17を含んだ構成である。
【0031】
より具体的に説明すれば、本実施形態の車両用プロペラシャフトは、端部の外周面に沿ってスプライン結合Bのための多数の掛かり突起120が形成されたシャフト100と、シャフト100が挿入されて接触する内周面に沿って掛かり突起120と噛合わされてスプライン結合Bをなす多数の掛かり溝220が形成されたチューブ200と、チューブ200の内周面に設置固定され、一端がシャフト100の先端部に対応するように形成され、衝突荷重の作用時に破断するように構成されたストッパ部材300と、チューブ200の内部で一端がストッパ部材300の他端と接触するように設けられ、シャフト100と結合してシャフト100と共にストッパ部材300の両端を支持することによりシャフト100のスライディングを制限し、衝突荷重が作用してストッパ部材300の破断時にシャフト100と共にチューブ200内部でスライディングする固定部材400とを含む。
【0032】
実施形態では、シャフト100の外周面に多数個の掛かり突起120が形成され、チューブ200の内周面に多数個の掛かり溝220が形成され、掛かり突起120と掛かり溝220が互いに噛合わされてシャフト100とチューブ200がスプライン結合Bをなすように形成される。すなわち、シャフト100とチューブ200は、掛かり突起120と掛かり溝220が噛合わされてスプライン結合Bをなすことにより、エンジン1で発生した回転力が伝達されるに伴ってシャフト100とチューブ200が同時に回転するのである。これにより、シャフト100とチューブ200は、それぞれ分割されていてもスプライン結合Bによって同時に回転することによりエンジン1で発生する回転力を損失なしに伝達することができるのである。
【0033】
ここで、シャフト100の掛かり突起120とチューブ200の掛かり溝220は、互いに対応するインボリュートギア形状に形成されることができる。
【0034】
実施形態のシャフト100及びチューブ200は、掛かり突起120と掛かり溝220を介して互いに噛合わされて回転力を円滑に伝達しなければならないところ、インボリュートギア形状にすることが望ましい。一般的に、インボリュートギアは歯の強度が大きくて互換性がよく誤差があっても噛合いに影響が少ないため回転力を伝達するのに有利な構造であり、シャフトとチューブの構造をインボリュートギア形状で形成することにより円滑な回転力伝達及びねじれ強度を確保してシャフト100とチューブ200の回転力伝達に有利な条件を満足させることができる。
【0035】
ャフト100及びチューブ200にそれぞれ形成された掛かり突起120と掛かり溝220は、インボリュートギア形状で形成することが最も望ましいが、角形及び歯型等多様な形状で適用が可能である。
【0036】
一方、チューブ200は、棒形状の軸ボディ200aと軸ボディ200aの一端部に連結されて内周面に沿って掛かり突起120と噛合わされる多数の掛かり溝220が形成されたハブ200bとで構成されることができる。
【0037】
ここで、軸ボディ200aとハブ200bは摩擦溶接によって結合され、軸ボディ200aとハブ200bの結合部分には摩擦溶接によってビード部200cが形成され、前記ストッパ部材300は一端がシャフト100の先端部に接触し、他端がビード部200cに支持されて固定されることができる。
【0038】
実施形態で、ハブ200bの構成なしにチューブ200の軸ボディ200aに掛かり突起120と噛合わされる掛かり溝220を形成してシャフト100と相互結合されるようにすることができるが、チューブ200の材質及び構造的特性上、内周面に掛かり突起120に対応する掛かり溝220を成形するにおいて、製造工法が制限的で費用も増加し精巧な成形に困難が発生し得る。
【0039】
ここで、軸ボディ200aとハブ200bは、摩擦溶接によって結合されるようにする。本実施形態の軸ボディ200aとハブ200bは、円形の棒形態で構成されるところ、摩擦溶接を利用することが効率的であり、少ない動力消耗と能率的な工程がなされることができる。
【0040】
特に、軸ボディ200aとハブ200bは、摩擦溶接を行うことによって結合部分にビード部200cが形成されるが、このようなビード部200cを利用してストッパ部材300を固定することによりストッパ部材300の移動を制限するようにする。
【0041】
実施形態のストッパ部材300は、チューブ200のハブ200bに固定されて平常時はシャフト100の軸方向の移動を制限し、衝突荷重の作用時に破断してシャフト100の移動を許容しなければならないところ、ストッパ部材300はチューブ200に堅固に固定されなければならない。通常は、ストッパ部材300をハブ200bに固定させるために別途の部品を必要とするか、ストッパ部材300とハブ200bとを溶接する追加的な工程を必要とすることがあり得る。しかし、本実施形態では摩擦溶接によって形成されたビード部200cを利用してストッパ部材300の移動を制限するように構成することにより、別途の部品が不要で原価及び重量を節減することができ、シャフト100、チューブ200、ストッパ部材300及び固定部材400を別途の工程なしに組み立て可能になることにより、作業工程を単純化して組み立て性を向上させることができる。
【0042】
したがって、チューブ200は、内周面に掛かり突起120に対応する掛かり溝220が形成されたハブ200bを別途に構成し、軸ボディ200aと摩擦溶接によって完全に固定されるよう連結することにより、費用節減及び製造工程を単純化することができる。
【0043】
上記のような構成のシャフト100とチューブ200は、相互同時回転するように構成されてエンジン1の回転力を伝達すると同時に、車両の衝突発生時、車体に伝達される衝撃を低減することができるように軸方向にスライディングするように構成される。ただし、シャフト100とチューブ200は、一般的な走行時に、スライディングを制限して動力伝達の損失及び摩擦発生を防止しなければならないところ、チューブ200の内周面に設置固定されたストッパ部材300と、チューブ200内部に設けられシャフト100と結合してストッパ部材300に引っ掛って支持されることによりシャフト100のスライディングを制限する固定部材400が設けられる。
【0044】
ここで、ストッパ部材300は、一般的な走行状態ではシャフト100の軸方向のスライディングを制限するが、車両の衝突発生時、衝突荷重によるシャフト100の移動によって破断することによりシャフト100の軸方向へのスライディングを許容するように構成される。
【0045】
まず、ストッパ部材300について説明すれば、ストッパ部材300はリング形態に形成され、チューブ200の内周面に設置固定される縁部320と内周面に沿って中心に向かって延長形成されたフランジ部340で構成されることができる。ここで、前記チューブ200には、掛かり溝220の他側に前記ストッパ部材300が挿入されて固定される設置溝240が形成され、前記ストッパ部材300の縁部320が設置溝240に挿入され、フランジ部340が縁部320からシャフト100の先端部に対応するように延長されるように形成されるのである。
【0046】
このように本実施形態のストッパ部材300はリング形態に形成され、縁部320がチューブ200の設置溝240に設置固定され、シャフト100の先端部に対応するように中央に向かってフランジ部340が延長形成されてシャフト100がチューブ200側にスライディングすることを制限する。このような状態で車両の衝突が発生すれば、衝突荷重によってシャフト100がチューブ側に移動し、衝突荷重によるシャフト100の移動力がフランジ部340の強度より大きくなればフランジ部340が破断してシャフト100のスライディングが許容されるのである。
【0047】
このように、シャフト100の軸方向のスライディングが可能になることによって、シャフト100が衝突荷重によりチューブ200の内側に移動することにより、衝突によって発生する衝撃エネルギーを充分に吸収することができるのである。
【0048】
一方、ストッパ部材300のフランジ部340には、縁に沿って多数の破断溝342が形成されることができる。このような破断溝342は、車両の衝突発生時、ストッパ部材300のフランジ部340がシャフト100の衝突荷重によって円滑に破断することができるように備えられる。
【0049】
ここで、破断溝342は、シャフト100の外周面とチューブ200の内周面が接触する線上Aに対応するように形成されることができる。
【0050】
また、ストッパ部材300の破断溝342は、フランジ部340の縁に沿って多数個形成され、上下左右に対称をなすように形成されることができる。
【0051】
実施形態のストッパ部材300は、車両衝突荷重が一定量以上作用した際に破断するように構成されなければならない。本実施形態のシャフト100とチューブ200は、相互結合した状態で同時回転し、車両衝突時に軸方向にスライディングすることにより衝撃が充分に吸収されるようにしなければならないところ、ストッパ部材300が一般的な走行状態ではシャフト100のスライディングを阻止し、衝突発生時に破断してシャフト100のスライディングを許容するように構成されなければならない。
【0052】
もし、ストッパ部材300の強度が弱すぎる場合、小さな衝撃量でもフランジ部340が容易に破断することがあり得るし、強度が強すぎる場合、衝突発生時にもフランジ部340が破断せずにシャフト100のスライディングが阻止されるおそれがある。したがって、本実施形態のストッパ部材300は、衝突発生時に一定の衝突量によって適切に破断してシャフト100のスライディングを許容するように構成されなければならないところ、ストッパ部材300の剪断強度を調節するように破断溝342を構成するのである。
【0053】
ここで、ストッパ部材300の破断溝342は、シャフト100の外周面とチューブ200の内周面が接触する線上Aに対応するように形成されるのが望ましい。本実施形態のシャフト100は、衝突荷重の発生時、チューブ200の内周面に沿ってスライディングするように構成されるが、ストッパ部材300の破断溝342をシャフト100の外周面とチューブ200の内周面が接触する線上Aに対応するように形成することにより、衝突荷重に伴うシャフト100の移動力によってストッパ部材300の円滑な破断を誘導することができる。
【0054】
また、ストッパ部材300の破断溝342は、フランジ部340の縁に沿って多数個形成され、上下左右に対称をなすように形成されることができる。
【0055】
このように破断溝342はフランジ部340で対称をなすようにすることにより、ストッパ部材300が同一荷重でシャフト100を支持するように構成することができ、車両の衝突発生時にストッパ部材300がある一方向に片寄った破断がなされないようにしてストッパ部材300の正しい破断を誘導することができる。
【0056】
上記のようなストッパ部材300に形成される破断溝342は、図8で示すように、車両の仕様及び設計に応じて、衝突発生時のシャフト100の移動に対するストッパ部材300の破断強度を破断溝342の大きさ、個数等を調節して適切にチューニングすることができる。
【0057】
一方、固定部材400は、ストッパ部材300の他側でシャフト100と共にストッパ部材300の両端を支持するように形成された頭部420と、頭部420からシャフト100側に延長されてシャフト100の内側に挟まれて結合されるボディ部440で構成されることができる。
【0058】
ここで、固定部材400のボディ部440の外周面とシャフト100の内周面には、ねじ山442又はねじ溝102がそれぞれ形成されてねじ締結Cをなすようにすることができる。
【0059】
実施形態のシャフト100は、平常時には軸方向へのスライディングが阻止されるように構成されなければならない。先のストッパ部材300の説明時の際に、シャフト100はストッパ部材300によってチューブ200側方向の移動が制限される。それと共に、シャフト100はチューブ200の反対方向(一側方向)の移動も制限されなければならないところ、固定部材400が設けられるのである。
【0060】
このような固定部材400は、頭部420がストッパ部材300の他端に接触するように形成されてシャフト100が一側方向に移動することが制限され、頭部420からシャフト100側に延長されるボディ部440がシャフト100の内側に挟まれて結合されることによりシャフト100の一側方向の動きを制限するのである。
【0061】
これで、ストッパ部材300はシャフト100と固定部材400との間に設けられ、シャフト100と固定部材400は互いに結合されることによって平常時にはストッパ部材300によって軸方向の動きが制限され、衝突発生時にシャフト100の移動力によってストッパ部材300が破断してシャフト100がスライディングするのである。
【0062】
ここで、固定部材400のボディ部440の外周面とシャフト100の内周面には、ねじ山442又はねじ溝102がそれぞれ形成されてねじ締結Cをなすようにすることができる。
【0063】
このように固定部材400とシャフト100をねじ締結Cされるようにすることにより、固定部材400又はシャフト100を近接に引き寄せて締結するところ、これによってシャフト100とチューブ200の回転方向の隙を最大限減らすことができる長所がある。
【0064】
また、変速機2の遊動による瞬間的な衝撃荷重がシャフト100とチューブ200の結合部の方に伝達されても、固定部材400とシャフト100のねじ締結Cによる強い締結力によってシャフト100とチューブ200の分離を予防できるようになることにより、信頼性の高い安全装置を提供することができる長所もある。
【0065】
また、衝撃吸収構造に問題が発生しても、シャフト100と固定部材400のねじ締結Cによる強い締結力によってシャフト100とチューブ200が持続的な結合状態を維持できるようになるところ、これによって一時的な非常走行が可能な長所もある。
【0066】
上述したような車両用プロペラシャフトは、端部の外周面に沿ってスプライン結合Bのための多数の掛かり突起120が形成されたシャフト100と、内周面に沿ってシャフト100の掛かり突起120と噛合わされてスプライン結合Bをなす多数の掛かり溝220が形成されたハブ200bと棒形状に形成されてハブ200bの他端部に連結される軸ボディ200aで構成され、ハブ200bと軸ボディ200aは摩擦溶接によって結合されることによりビード部200cが形成されたチューブ200と、ハブ200bの内周面に設置され、一端が前記シャフト100の先端部に対応するように形成され、他端がチューブ200のビード部200cに支持されて固定されることにより衝突荷重の作用時に破断するように構成されたストッパ部材300と、チューブ200の内部で一端がストッパ部材300の他端と接触するように設けられ、シャフト100と結合してシャフト100と共にストッパ部材300の両端を支持することによりシャフト100のスライディングを制限し、衝突荷重が作用してストッパ部材300の破断時にシャフト100と共にチューブ200内部でスライディングする固定部材400とを含むことができる。
【0067】
このような構成によって費用節減及び製造工程を単純化して軸ボディ200aとハブ200bを結合すると共に、摩擦結合によって形成されたビード部200cを利用してストッパ部材300の設置及び移動を制限するように構成することができる。
【0068】
特に、平常時にはストッパ部材300がシャフト100の移動を制限し、車両衝突発生時にシャフト100がストッパ部材300を破断後にチューブ200の内側にスライディングして軸方向の長さが充分に変化することにより、衝突によって発生した衝撃エネルギーを充分に吸収して車体に伝達される衝撃を減らし、これによって乗客が受ける傷害値を最大限低減させることができる。
【0069】
上で説明した本実施形態のプロペラシャフトの作動状態について詳察すれば、図9は、本実施形態のプロペラシャフトの衝突の前/後の圧縮量を示した図面であり、衝突前にはシャフト100とチューブ200が結合された状態でストッパ部材300及び固定部材400によって軸方向への移動が制限され、衝突発生時にはシャフト100のスライディングを制限するストッパ部材300が破断されてシャフト100がチューブ200の内部に挿入されるのである。このように、本発明のプロペラシャフトは、車両衝突時にシャフト100がチューブ200の内部に挿入されて軸方向の長さを充分に変形させることにより、衝突発生による衝撃をシャフト100が移動して自体で充分に吸収するようにすることができる。このようなプロペラシャフトは、チューブ200内部に挿入されるシャフト100の長さを調節すれば、プロペラシャフトの軸方向の変形量を調節することができるので多様な車種にも容易に適用が可能な長所がある。
【0070】
すなわち、シャフト100とチューブ200がスプライン結合Bによって同時に回転するようにすることにより、エンジン1で発生する回転力を損失なしに伝達することができ、車両の衝突発生時、シャフト100の移動を制限するストッパ部材300が破断することによってシャフト100がチューブ200の内側から軸方向に移動して、衝撃を吸収するのに有利な条件が満足されるのである。
【0071】
本発明は、特定の実施形態に関して図示して説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想を逸脱しない限度内で、本発明が多様に改良及び変化することができるということは、当業界で通常の知識を有する者において自明である。
【符号の説明】
【0072】
100 シャフト
120 掛かり突起
200 チューブ
200a 軸ボディ
200b ハブ
200c ビード部
220 掛かり溝
240 設置溝
300 ストッパ部材
320 縁部
340 フランジ部
342 破断溝
400 固定部材
420 頭部
440 ボディ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9