【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年9月30日大和ハウス工業株式会社のホームページにて「当社初「太陽熱・地中熱利用給湯システム」を導入した次世代環境配慮型介護施設「D’sSMARTSILVER(ディーズスマートシルバー)の実証実験」を開始」を公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分岐循環回路は、前記第2循環回路のうちの、前記地中熱採熱器と前記地中熱ヒートポンプとの間の採熱回路から分岐し、前記地中熱採熱器を通過する、請求項1に記載の蓄熱システム。
前記熱回収タンク内を循環する回路を、前記第1循環回路と前記第2循環回路とのうちのいずれか一方に、選択的に切り替えるための第2の切替弁をさらに備える、請求項1〜6のいずれかに記載の蓄熱システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽熱および地中熱をそれぞれ独立した熱源として併用するシステムでは、地中熱ヒートポンプの運転をするうちに採熱箇所の周辺は低温になるため、徐々に効率が低下する。そのため、特許文献3では、通所介護施設など昼間に給湯を多く利用する施設において、地中熱ヒートポンプにおける採熱回路の熱媒体が、利用後の湯水の排湯と熱交換するように構成することによって、地中熱の温度低下が防止されている。
【0007】
しかしながら、特許文献3のシステムでは、地中熱を採熱するための採熱器(採熱管)は、貯湯タンクへの蓄熱のためだけに利用されている。そのため、地中熱採熱器をさらに有効に活用することで、太陽熱および地中熱を効率的に利用するシステムが望まれていた。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、再生可能エネルギーである太陽熱および地中熱を効率的に利用することのできる蓄熱システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従う蓄熱システムは、太陽熱および地中熱を併用する蓄熱システムであって、第1循環回路と、第2循環回路と、分岐循環回路と、熱交換ユニットとを備える。第1循環回路では、太陽熱集熱器によって集熱された太陽熱を熱源とする第1の熱媒体が循環することによって、熱回収タンクに蓄熱される。第2循環回路では、地中熱採熱器によって採熱された地中熱を熱源とする第2の熱媒体が、地中熱ヒートポンプにより昇温されて循環することによって、熱回収タンクに蓄熱される。分岐循環回路は、第2循環回路から分岐し、第2の熱媒体が循環する。熱交換ユニットは、第1循環回路を循環する第1の熱媒体と、分岐循環回路を循環する第2の熱媒体とを熱交換させる。
【0010】
好ましくは、分岐循環回路は、第2循環回路のうちの、地中熱採熱器と地中熱ヒートポンプとの間の採熱回路から分岐し、地中熱採熱器を通過する。
【0011】
熱交換ユニットは、第1循環回路における、太陽熱集熱器への還り経路に設けられることが望ましい。
【0012】
好ましくは、第2の熱媒体が循環する回路を、第2循環回路と分岐循環回路とのうちのいずれか一方に、選択的に切り替えるための第1の切替弁をさらに備える。
【0013】
また、分岐循環回路内に第2の熱媒体を循環させるための循環ポンプと、第1の切替弁および循環ポンプの動作を制御する制御手段とをさらに備えることが望ましい。制御手段は、第1循環回路内に第1の熱媒体を循環させた状態で、第1の熱媒体と分岐循環回路内の第2の熱媒体とを熱交換させる熱交換運転を行う。
【0014】
好ましくは、太陽熱集熱器への入口側における第1の熱媒体の温度を検知するための第1の温度センサをさらに備え、制御手段は、第1の温度センサの温度が異常高温値となった場合に、熱交換運転を実行することにより、第2の熱媒体の熱で第1の熱媒体を冷却する。
【0015】
また、熱回収タンク内の被加熱媒体の温度を検知するための第2の温度センサをさらに備え、制御手段は、第2の温度センサの温度が設定温度以上となった場合に、熱交換運転を実行することにより、第1の熱媒体の熱を地中に蓄熱してもよい。
【0016】
熱回収タンク内を循環する回路を、第1循環回路と第2循環回路とのうちのいずれか一方に、選択的に切り替えるための第2の切替弁をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、再生可能エネルギーである太陽熱および地中熱を効率的に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
本実施の形態における蓄熱システムは、たとえば介護施設など多数の人に利用される施設や住宅等の建物に搭載され、蓄熱された被加熱媒体が、給湯や屋内の空調等に利用される。以下に、蓄熱システムが、たとえば、被加熱媒体を水(湯)とする貯湯システムである例について説明する。
【0021】
<貯湯システムの構成例について>
(回路構成について)
はじめに、本発明の実施の形態に係る貯湯システムの回路構成について説明する。
図1を参照して、本実施の形態に係る貯湯システムは、太陽熱集熱器により集熱される太陽熱と、地中熱採熱器により採熱される地中熱とを、それぞれ独立した熱源として併用可能である。したがって、貯湯システムは、太陽熱集熱器としてのソーラーパネル1a,1b,1cと、地中熱採熱器としてのボアホール2と、熱回収タンクとしての貯湯タンク4a,4b,4cと、貯湯タンク4a〜4c内を通る第1循環回路10および第2循環回路20とを備えている。なお、ソーラーパネル1a〜1c、ボアホール2、および貯湯タンク4a〜4cの個数は、特に限定されるものではなく、必要な蓄熱量等に応じて定められればよい。
【0022】
本実施の形態において、第1循環回路10は、ソーラーパネル1a〜1cによって集熱された太陽熱を熱源とする熱媒体が循環する。蓄熱時における第1の循環回路10内の熱媒体の流動方向が
図2に示されている。
【0023】
第2循環回路20は、ボアホール2によって採熱された地中熱を熱源とする熱媒体が循環する。蓄熱時における第2の循環回路20内の熱媒体の流動方向が
図3に示されている。第2循環回路20の途中位置には、地中熱ヒートポンプ7が設けられている。地中熱ヒートポンプ7で昇温された熱媒体が貯湯タンク4a〜4c内を流動することによって、貯湯タンク4a〜4c内の水が温められる。
【0024】
本実施の形態では、第1循環回路10および第2循環回路20は、貯湯タンク4a〜4cを共有するように並列配置されていれる。そのため、貯湯システムには、切替弁51が設けられている。切替弁51は、貯湯タンク4a〜4c内を循環する回路を、第1循環回路10と第2循環回路20とのうちのいずれか一方に、選択的に切り替える。具体的には、切替弁51は、たとえば三方弁により構成され、第1循環回路10と第2循環回路20との接続部に設けられる。切替弁51は、ソーラーパネル1a〜1c側およびボアホール2側のうちの一方のみが「開」状態となるように制御される。
【0025】
なお、本実施の形態では、第1循環回路10および第2循環回路20の双方に共有される回路を、蓄熱回路40という。蓄熱回路40は、各貯湯タンク4a〜4c内を通過する迂回路40a,40b,40cを含む。貯湯タンク4a〜4cおよび蓄熱回路40の詳細については後述する。
【0026】
また、第1循環回路10および第2循環回路20のいずれにおいても、熱媒体が熱源から蓄熱回路40(貯湯タンク4a〜4c側)へ向かう経路を「往き経路」、逆に、熱源側へ戻る経路を「還り経路」という。また、太陽熱を集熱する熱媒体と、地中熱を採熱する熱媒体とを区別する場合には、前者を「第1の熱媒体」、後者を「第2の熱媒体」ともいう。
【0027】
第1循環回路10には、第1の熱媒体を循環させるための循環ポンプ11が設けられている。循環ポンプ11は、蓄熱回路40からソーラーパネル1a〜1cへ向かう還り経路内に設けられている。
【0028】
第2循環回路20は、地中熱ヒートポンプ7よりもボアホール2側の採熱回路20aと、地中熱ヒートポンプ7よりも蓄熱回路40側の負荷側回路20bとを含む。地中熱ヒートポンプ7は、公知のように、圧縮機、膨張弁、蒸発器(熱交換器)、凝縮器(熱交換器)、および四方弁を含む。採熱回路20aにおいて地中熱により温められた第2の熱媒体は、蒸発器と熱交換することによって冷却され、ボアホール2に戻る。負荷側回路20bを循環する第2の熱媒体は、凝縮器と熱交換することによって高温化され、蓄熱回路40へ向かう。
【0029】
第2循環回路20の採熱回路20aおよび負荷側回路20bには、それぞれ循環ポンプ31,21が設けられている。採熱回路20aの循環ポンプ31は、ボアホール2から地中熱ヒートポンプ7へ向かう往き経路内に設けられている。負荷側回路20bの循環ポンプ21は、たとえば、蓄熱回路40から地中熱ヒートポンプ7へ向かう還り経路内に設けられている。
【0030】
本実施の形態に係る貯湯システムは、分岐循環回路30と、熱交換ユニット3とをさらに備えている。分岐循環回路30は、第2循環回路20から分岐し、第2の熱媒体が循環する。熱交換ユニット3は、分岐循環回路30と第1循環回路10との接続部に設けられている。これにより、第1循環回路10を循環する第1の熱媒体と、分岐循環回路30を循環する第2の熱媒体とを熱交換することができる。分岐循環回路30における第2の熱媒体の流動方向が
図4に示されている。
【0031】
分岐循環回路30は、第2循環回路20のうちの採熱回路20aから分岐することが望ましい。この場合、分岐循環回路30は、ボアホール2を通過するように構成されている。採熱回路20aには、第2の熱媒体の流動方向を、地中熱ヒートポンプ7側および熱交換ユニット3のうちの一方に選択的に切り替えるための切替弁52が設けられている。切替弁52は、たとえば三方弁により構成され、地中熱ヒートポンプ7側および熱交換ユニット3側のうちの一方のみが「開」状態となるように制御される。
【0032】
切替弁52は、循環ポンプ31よりも下流側に設けられている。これにより、貯湯タンク4a〜4cへの蓄熱のために採熱回路20aに第2の熱媒体を循環させる場合と、第1の熱媒体との熱交換のために分岐循環回路30に第2の熱媒体を循環させる場合とで、循環ポンプ31を共有することができる。なお、循環ポンプ31を共有することなく、それぞれの回路20a,30上に個別に循環ポンプを設けてもよい。
【0033】
ここで、貯湯タンク4a〜4cおよび蓄熱回路40の構成例について説明する。貯湯タンク4a,4b,4cには、それぞれ、加熱コイル部(熱交換器)46a,46b,46cが内蔵されている。熱媒体は、加熱コイル部46a〜46cを流動する。これにより、熱媒体と貯湯タンク4a〜4c内の水とが熱交換され、貯湯タンク4a〜4c内の水が昇温される。つまり、貯湯タンク4a〜4cに、太陽熱および地中熱が回収され、蓄熱される。
【0034】
貯湯タンク4a〜4cの入口部には、それぞれ、流路切替用の切替弁(以下「タンク弁」という)53a,53b,53cが設けられている。タンク弁53a,53b,53cが開閉されることによって、蓄熱回路40内における循環経路が切り替えられる。タンク弁53a〜53cは、たとえば、三方弁により構成されており、迂回路40a〜40cの往き経路上にそれぞれ配置される。熱媒体が、貯湯タンク4a〜4cの加熱コイル部46a〜46cを通過する場合のタンク弁53a〜53cの状態を「開」状態という。熱媒体が、貯湯タンク4a〜4cの加熱コイル部46a〜46cを通過することなく、迂回路40a〜40cの還り経路へ流動する場合のタンク弁53a〜53cの状態を「閉」状態という。
【0035】
本実施の形態では、隣り合う貯湯タンク4a〜4c同士は、連通接続路41により接続されている。低温側の貯湯タンク4cは、給水路43と接続されている。高温側の貯湯タンク4aと給湯栓(蛇口)45との間の給湯路42は、たとえば湯水混合栓54を介して、給水路43と接続されている。なお、湯水混合栓54と給湯栓45との間には、バックアップ用の給湯器44が設けられてもよい。
【0036】
(制御構成について)
本実施の形態に係る貯湯システムの制御構成について説明する。
図5を参照して、上述した地中熱ヒートポンプ7、循環ポンプ11,21,31、切替弁51,52、およびタンク弁53a〜53cは、蓄熱制御装置8によってその動作が制御されている。蓄熱制御装置8は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置によって実現される制御部81と、不揮発性の記憶部82と、日時を計測するクロック83とを含む。記憶部82には、本システムを動作させるためのプログラムや各種データが予め格納されている。
【0037】
図1および
図5に示されるように、本システムは、複数の温度センサ61〜64と、日射量センサ65とをさらに備えている。温度センサ61は、第1循環回路10の往き経路上に設けられ、集熱後の第1の熱媒体の温度(以下「ソーラー出口温度」という)を検知する。温度センサ61は、たとえば、ソーラーパネル1a〜1cの出口側(出口付近)に設けられる。温度センサ64は、第1循環回路10の還り経路上に設けられ、蓄熱回路40を循環した後(典型的には、貯湯タンク4a〜4cへの放熱後)の第1の熱媒体の温度(以下「ソーラー入口温度」という)を検知する。温度センサ64は、たとえば、ソーラーパネル1a〜1cの入口側に設けられる。
【0038】
温度センサ62は、蓄熱回路40の最も上流側、すなわち貯湯タンク4aの入口付近に設けられ、貯湯タンク4a〜4cへの放熱前における熱媒体の温度(以下「タンク入口温度」という)を検知する。温度センサ63a〜63cは、貯湯タンク4a〜4c内の水(湯)の温度(以下「貯湯温度」という)をそれぞれ検知する。日射量センサ65は、たとえばソーラーパネル1a〜1c付近など、本システムが搭載された建物近辺の日射量を検知する。
【0039】
なお、各センサ61〜65が出力するアナログ信号は、たとえばA/D(Analog to Digital)変換器(図示せず)などによってデジタル信号に変換され、変換後の信号が制御部81に入力されるものとする。
【0040】
制御部81は、クロック83から得られる時刻や日射量センサ65から得られる日射量に基づいて、ソーラー運転および地中熱HP(ヒートポンプ)運転のいずれかを選択的に実行する。基本的に、ソーラー運転は、日中(たとえば7時から17時)に行われ、地中熱HP運転は夜間に行われる。ただし、日中であっても、曇天時または日射量不足の際には、ソーラー運転から地中熱HP運転に切り替える。
【0041】
ソーラー運転を実行する場合、制御部81は、第1循環回路10を作動させる。具体的には、切替弁51のソーラーパネル1a〜1c側を開状態にし、かつ、循環ポンプ11を駆動させる。本実施の形態では、ソーラー運転中であっても、タンク弁53a〜53cの開閉を制御することで、貯湯タンク4a〜4cへの蓄熱(放熱)を行うことなく、第1の熱媒体を循環させることもできる。
【0042】
地中熱HP運転を実行する場合、制御部81は、第2循環回路20を作動させる。具体的には、切替弁52のボアホール2側を開状態にし、かつ、循環ポンプ21,31を駆動させる。
【0043】
制御部81は、ソーラー運転中(たとえば日中の晴天時)に、熱交換運転をさらに行う。熱交換運転を行う場合、制御部81は、分岐循環回路30を作動させる。具体的には、切替弁52の熱交換ユニット3側を開状態にし、かつ、循環ポンプ31を駆動する。これにより、熱交換ユニット3において第1の熱媒体と第2の熱媒体との熱交換が行われる。制御部81は、夏季の晴天時の昼間など太陽熱の集熱量が多過ぎる場合であって給湯利用が少ない場合、あるいはこれらのいずれかの場合に、熱交換運転を行う。これにより、太陽熱の余剰熱を地中へ放熱(蓄熱)することができる。
【0044】
本実施の形態において、熱交換運転に関して制御部81が行う処理を「熱交換処理」という。制御部81は、熱交換処理に関し、2つのモードを有している。1つは、ソーラー冷却モードであり、もう1つは、地中蓄熱モードである。
【0045】
ソーラー冷却モードでは、太陽熱の集熱量が多過ぎる場合など、ソーラーパネル1a〜1c(第1循環回路10)がオーバーヒートして、第1の熱媒体が異常高温値となった場合に、熱交換運転を実行する。これにより、第1の熱媒体が地中熱(第2の熱媒体)によって冷却される。また、第1の熱媒体の熱は、地中へ排熱(蓄熱)される。地中蓄熱モードでは、貯湯タンク4a〜4c内の貯湯温度が設定温度を超えている場合など、第1の熱媒体の温度と貯湯温度との温度差がなくなってきた場合に、熱交換運転を実行する。これにより、第1の熱媒体が温度差のある地中熱と熱交換される。また、太陽熱の余剰熱が地中へ蓄熱(放熱)される。
【0046】
なお、これらのモードを作動させる時間帯を分けることとしてもよい。また、これらのモードのうち、いずれを実行するかは、たとえば、蓄熱制御装置8の図示しない操作部からの指示に応じて決定されてもよい。
【0047】
<動作について>
(日中の運転判断処理)
図6は、本実施の形態に係る貯湯システムの日中の運転判断処理を示すフローチャートである。当該処理は、クロック83から得られる時刻がたとえば7時となったときに開始される。なお、
図6に示される処理は、蓄熱制御装置8の制御部81が、記憶部82に格納されたプログラムを読み出して実行することによって実現される。後に説明する
図7〜
図9に示される処理も同様である。
【0048】
図6を参照して、制御部81は、日射量センサ65からの信号に基づいて、日射量が設定値よりも多いか否かを判断する(ステップS1)。この設定値は、季節に応じて変更されてもよい。日射量が設定値よりも多いと判断した場合(ステップS1にてYES)、第1循環回路10を作動させ、ソーラー運転を実行する(ステップS2)。その後、ステップS1に戻る。本実施の形態において、ソーラー運転中に、
図7に示すようなタンク弁開閉処理、および、
図8,
図9に示すような熱交換処理が並行して行われる。
【0049】
これに対し、日射量が設定値以下と判断した場合には(ステップS1にてNO)、ステップS3へ進む。ステップS3では、温度センサ61により検知されるソーラー出口温度が、温度センサ63a〜63cにより検知される貯湯温度以上であるか否かが判断される。ソーラー出口温度が貯湯温度以上であれば(ステップS3にてYES)、上記ステップS2へ進み、ソーラー運転を実行する。なお、ソーラー出口温度が、温度センサ63a〜63cが検知する貯湯温度のうちいずれか1つでも超えていれば、ソーラー運転を実行することとしてよい。
【0050】
一方、ソーラー出口温度が貯湯温度よりも低ければ(ステップS3にてNO)、第2循環回路20を作動させ、地中熱HP運転を実行する(ステップS4)。その後、ステップS1に戻る。
【0051】
上述のように、ソーラー運転中に、日射量およびソーラー出口温度の双方がそれぞれの条件を満たさなくなった場合には、日中であっても地中熱HP運転に切り替えられる。したがって、本実施の形態では、日射量が見込めない場合でも、バックアップ用の給湯器44を使うことなく、自然エネルギーである地中熱を利用して蓄熱することができる。また、地中熱ヒートポンプ7を夜間だけでなく日中にも使用することで、地中熱を有効に活用することができる。
【0052】
また、一旦、地中熱HP運転が行われても、日射量およびソーラー出口温度のいずれか一方が条件を満たすようになった場合には、ソーラー運転に切り替えられる。したがって、日中の天候変化に対応することができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、曇天または雨天(つまり「晴れ」以外)を判断するために、日射量およびソーラー出口温度の双方が検知されたが、いずれか一方のみが検知されてもよい。
【0054】
(タンク弁開閉処理)
図7は、本実施の形態におけるタンク弁開閉処理を示すフローチャートである。
図7を参照して、ソーラー運転中に、制御部81は、温度センサ62により検知されるタンク入口温度が、温度センサ63a〜63cが検知する貯湯温度を超えているか否かを判断する(ステップS11)。制御部81は、貯湯温度がタンク入口温度未満のタンク弁を開状態とし(ステップS12)、貯湯温度がタンク入口温度以上のタンク弁を閉状態とする(ステップS13)。ステップS11の温度判断は、所定の時間間隔で行われてもよい。
【0055】
(ソーラー冷却モードでの熱交換処理)
図8は、本実施の形態におけるソーラー冷却モードでの熱交換処理を示すフローチャートである。
図8を参照して、制御部81は、温度センサ64により検知されるソーラー入口温度が、異常高温であるか否かを判断する(ステップS21)。異常高温としての温度は予め定められており、ここでは、たとえば80℃以上であるものとする。ソーラー入口温度が異常高温であると判断された場合(ステップS21にてYES)、分岐循環回路30を作動することによって、熱交換運転(ソーラー冷却運転)を行う(ステップS22)。具体的には、制御部81は、循環ポンプ31の駆動を開始するとともに、切替弁52の熱交換ユニット3側を開状態とする。このとき、切替弁52の地中熱ヒートポンプ7側は閉状態とされる。
【0056】
当該熱交換処理は、ソーラー運転中に行われるため、
図4に示されるように、熱交換ユニット3において、第1循環回路10を循環する第1の熱媒体と、分岐循環回路30を循環する第2の熱媒体との間で、熱交換される。これにより、第1の熱媒体の高温の熱は、地中に排熱され、地中熱(第2の熱媒体)によって冷却される。より具体的には、80℃以上の第1の熱媒体は、熱交換により50℃程度まで冷却される。また、15〜16℃程度の第2の熱媒体は、熱交換により40°程度に加温され、ボアホール2において地中に排熱される。なお、
図4では、第1の熱媒体が貯湯タンク4a〜4c内を通過しない状態を示しているが、第1の熱媒体が貯湯タンク4a〜4c内を通過する状態(蓄熱時)に、ソーラー冷却運転が行われてもよい。
【0057】
ソーラー冷却運転は、ソーラー入口温度が安全温度(たとえば50℃)となるまで継続される(ステップS23にてNO)。ソーラー入口温度が安全温度まで降下したと判断した場合(ステップS23にてYES)、制御部81は、分岐循環回路30をオフする(ステップS24)。つまり、循環ポンプ31の駆動を停止するとともに、切替弁52の熱交換ユニット3側を閉状態とする。このとき、切替弁52の地中熱ヒートポンプ7側は開状態とされる。
【0058】
ソーラー冷却モードでの熱交換処理によれば、第1の熱媒体を地中熱によって冷却することができる。したがって、第1循環回路10を含む太陽熱システム系統における温度上昇を抑制し、保護することができる。
【0059】
また、地中熱HP運転以外にも地中熱を有効に利用することができる。したがって、第1循環回路10を冷却するためだけに、たとえば水道水による冷却装置を別途設ける必要がなくなる。その結果、水道量の削減にもつながる。
【0060】
また、第1の熱媒体の高温の熱を、地中に排熱することで、地中熱HP運転時における地中熱ヒートポンプ7の効率を向上させることもできる。
【0061】
(地中蓄熱モードでの熱交換処理)
図9は、本実施の形態におけるソーラー冷却モードでの熱交換処理を示すフローチャートである。
図9を参照して、制御部81は、温度センサ63a〜63cにより検知される貯湯温度が、設定温度(目標温度)以上であるか否かを判断する(ステップS31)。貯湯温度が設定温度以上であると判断した場合(ステップS31にてYES)、分岐循環回路30を作動することによって、熱交換運転(ボアホール2への蓄熱運転)を行う(ステップS32)。ここで制御部81が行う処理は、
図8のステップS22で行われる処理と同様である。
【0062】
分岐循環回路30が作動されると、
図4に示されるように、熱交換ユニット3において、第1循環回路10を循環する第1の熱媒体と、分岐循環回路30を循環する第2の熱媒体との間で、熱交換される。これにより、第1の熱媒体の余剰熱が、地中に蓄熱され、第1の熱媒体の温度は降温される。
【0063】
ボアホール2への蓄熱運転は、たとえば、ソーラー出口温度が地中温度以下となるまで継続される(ステップS33にてNO)。地中温度を検知するための温度センサ(図示せず)は、たとえば、ボアホール2と循環ポンプ31との間に設けられる。ソーラー出口温度が地中温度未満となったと判断した場合(ステップS33にてYES)、制御部81は、分岐循環回路30をオフする(ステップS34)。ここで制御部81が行う処理は、
図8のステップS24で行われる処理と同様である。
【0064】
地中蓄熱モードでの熱交換処理によれば、第1の熱媒体が温度差のある地中熱と熱交換されるため、ソーラーパネル1a〜1cの集熱効率を向上させることができる。また、太陽熱の余剰熱が地中に蓄熱されるため、地中熱HP運転時における地中熱ヒートポンプ7の効率を向上させることができる。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ソーラー運転時に、太陽熱の余剰熱を地中へ放熱するとともに、地中熱によって第1の熱媒体を降温させることができる。そのため、本実施の形態では、貯湯タンク4a〜4cへの蓄熱のためだけでなく、第1循環回路10の冷却、および、ソーラーパネル1a〜1cの集熱効率の向上のためにも、ボアホール2を活用することができる。また、ソーラーパネル1a〜1cは、地中熱ヒートポンプ7の採熱効率の向上のためにも活用することができる。したがって、本実施の形態によれば、太陽熱および地中熱を効率的に活用することができる。
【0066】
また、地中熱ヒートポンプ7の採熱効率が向上するため、地中熱ヒートポンプ7を、給湯だけでなく、冷暖房等他の機能に利用することも可能となる。また、地中熱ヒートポンプ7の採熱効率が大幅に向上すれば、ソーラーパネル1a〜1cを、夏季ピークではなく冬季ピークに合わせて設計することができる。したがって、冬季の集熱量不足を低減することができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、分岐循環回路30は、第2循環回路20の採熱回路20aのうちのボアホール2と地中熱ヒートポンプ7との間から分岐することとした。しかしながら、分岐循環回路30は、第2循環回路20から分岐し、地中熱ヒートポンプ7により昇温される前の低温の第2の熱媒体を熱交換ユニット3に循環させることができれば、他の部分から分岐していてもよい。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。