特許第6243726号(P6243726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6243726エレベーター群管理システムおよびエレベーター群管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243726
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】エレベーター群管理システムおよびエレベーター群管理方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   B66B1/18 P
   B66B1/18 S
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-262468(P2013-262468)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-117118(P2015-117118A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 貴大
(72)【発明者】
【氏名】前原 知明
(72)【発明者】
【氏名】西田 武央
(72)【発明者】
【氏名】吉川 敏文
(72)【発明者】
【氏名】鳥谷部 訓
(72)【発明者】
【氏名】星野 孝道
(72)【発明者】
【氏名】会田 敬一
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/047201(WO,A1)
【文献】 特開平09−227033(JP,A)
【文献】 特開2009−096582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00−1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエレベーターについて消費電力および待ち時間を評価し、前記評価に基づいて、乗場からの呼びを割り当てるエレベーターを選択するエレベーター群管理システムにおいて、
前記複数のエレベーターが設置されるビルの仕様および前記複数のエレベーターの仕様を記憶するパラメーター設定処理部と、
前記パラメーター設定処理部が記憶する前記ビルの仕様および前記複数のエレベーターの仕様に基づいて、交通需要に応じて、待ち時間を抑制するように運転される場合の消費電力に対する、バランスポイントに近づけるように群管理制御を行う場合の消費電力低減効果を算出する交通計算算出処理部と、
前記交通計算算出処理部が算出した前記消費電力低減効果に基づいて、消費電力の評価における重み係数を前記交通需要に応じて算出する重み係数算出処理部と、
現在の交通需要を判定する交通状況判別処理部と、
前記重み係数算出処理部が算出した前記交通需要に応じた前記重み係数と、前記交通状況判別処理部が判定した前記現在の交通需要とに基づいて、前記現在の交通需要に応じた前記重み係数を設定する重み係数決定処理部と、
を有することを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項2】
請求項1において、前記交通計算算出処理部は、前記パラメーター設定処理部が記憶する前記ビルの仕様および前記複数のエレベーターの仕様に基づいて、前記交通需要を算出し、算出した前記交通需要に応じて前記消費電力低減効果を算出することを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項3】
請求項2において、前記交通計算算出処理部は、エレベーター利用者の階間移動を考慮した交通計算により前記交通需要を算出することを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記交通計算算出処理部は、乗車率に基づいて前記消費電力低減効果を算出することを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記交通計算算出処理部は、さらに、乗場呼びの集中による走行回数の減少による消費電力低減効果を算出し、
前記重み係数算出処理部は、前記前記群管理制御による消費電力低減効果および前記走行回数の減少による消費電力低減効果に基づいて、前記重み係数を算出することを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記交通計算算出処理部は、前記待ち時間を抑制するように運転される場合の消費電力量の理想消費電力量からのずれである消費電力ロス量と、前記バランスポイントに近づけるように前記群管理制御を行う場合の前記消費電力ロス量との差分によって、前記群管理制御による消費電力低減効果を算出することを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、さらに交通状況を学習する学習系を備え、前記交通状況判別処理部は、前記学習系の学習結果に基づいて前記現在の交通需要を算出することを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、前記重み係数算出処理部は、基準階乗車率および基準階帰着率に応じて前記重み係数を算出することを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項において、前記複数のエレベーターの走行に要する消費電力に関する消費電力低減評価値および前記重み係数に基づいて消費電力を評価し、前記消費電力低減評価値が規格化された値を取ることを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項において、
さらに、前記複数のエレベーターが設置されるビルの消費電力が所定値を超える場合に、前記重み係数算出処理部が算出した前記重み係数の最大値を通常よりも大きくするビル使用状況判断処理部を備えることを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項11】
請求項10において、前記ビル使用状況判断処理部は、ビルコントローラから、前記ビルの消費電力が前記所定値を超えることが予測されることを示す消費電力ピーク信号を受信したら、前記重み係数の最大値を通常よりも大きくすることを特徴とするエレベーター群管理システム。
【請求項12】
複数のエレベーターについて消費電力および待ち時間を評価し、前記評価に基づいて、乗場からの呼びを割り当てるエレベーターを選択するエレベーター群管理方法において、
前記複数のエレベーターが設置されるビルの仕様および前記複数のエレベーターの仕様に基づいて、交通需要に応じて、待ち時間を抑制するように運転される場合の消費電力に対する、バランスポイントに近づけるように群管理制御を行う場合の消費電力低減効果を算出し、
算出した前記消費電力低減効果に基づいて、消費電力の評価における重み係数を前記交通需要に応じて算出し、
算出した前記交通需要に応じた前記重み係数と、現在の交通需要とに基づいて、前記現在の交通需要に応じた前記重み係数を設定することを特徴とするエレベーター群管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のエレベーターの内から乗場呼びに応答するエレベーターを割当てるエレベーター群管理システムおよびエレベーター群管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーター群管理システムは、複数のエレベーターを一つのグループとして扱うことで、利用者に対してより効率的な運行サービスを提供する。具体的には、複数のエレベーター(例えば、3台から8台)を一つのグループとして管理し、ある階床に乗場呼び(エレベーター乗場におけるエレベーターの呼出し)が発生した場合に、エレベーター群管理システムは、このグループの中から適切なエレベーターを一つ選択して、そのエレベーターに乗場呼びを割当てる。
【0003】
このようなエレベーター群管理システムに関する従来技術として、特許文献1および特許文献2に記載の技術が知られている。
【0004】
特許文献1の技術においては、新規に発生した乗場呼びに対して、エレベーターかご負荷から評価される消費電力を低減するように、割当てるエレベーターを決定する。例えば、かごの上昇時には、かご負荷と釣合い重りがバランスするエレベーターに呼びを割当てやすくしている。
【0005】
特許文献2の技術においては、走行距離に応じた省エネルギー(以下、省エネと略記する)評価における重み係数の関数形をシミュレーション実験に基づいて設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−227033号公報
【特許文献2】国際公開第2008/001508号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の従来技術においては、乗場呼びに対して一つのエレベーターかごを決定する際の割当ての評価において、交通量の大小によって重み係数が決定される。この重み係数によって待ち時間評価指標など、他の割当て評価との関連付けを行っているが、単純な交通量の大小によっては本来消費電力量を軽減可能な交通量の場合に待ち時間を配慮する運転が実行されたり、待ち時間への配慮が必要である交通量の場合に、消費電力量を軽減する運転が実行されたりする。また、特許文献2に記載の従来技術においては、重み係数の関数形を設定するためにシミュレーション実験を要するため、群管理システムの構築に繁雑な作業を伴い、かつ時間を要する。
【0008】
そこで、本発明は、交通需要に応じて、待ち時間低減と消費電力抑制を的確に重み付けすることができ、かつ構築が容易なエレベーター群管理システムおよびエレベーター群管理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によるエレベーター群管理システムは、複数のエレベーターについて消費電力および待ち時間を評価し、本評価に基づいて、乗場からの呼びを割り当てるエレベーターを選択するものであって、複数のエレベーターが設置されるビルの仕様および複数のエレベーターの仕様を記憶するパラメーター設定処理部と、パラメーター設定処理部が記憶する各仕様に基づいて、交通需要に応じて、待ち時間を抑制するように運転される場合の消費電力に対する、バランスポイントに近づけるように群管理制御を行う場合の消費電力低減効果を算出する交通計算算出処理部と、交通計算算出処理部が算出した消費電力低減効果に基づいて、消費電力の評価における重み係数を交通需要に応じて算出する重み係数算出処理部と、現在の交通需要を判定する交通状況判別処理部と、重み係数算出処理部が算出した交通需要に応じた重み係数と、交通状況判別処理部が判定した現在の交通需要とに基づいて、現在の交通需要に応じた重み係数を設定する重み係数決定処理部とを有する。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明によるエレベーター群管理方法は、複数のエレベーターについて消費電力および待ち時間を評価し、本評価に基づいて、乗場からの呼びを割り当てるエレベーターを選択するものであって、複数のエレベーターが設置されるビルの仕様および前記複数のエレベーターの仕様に基づいて、交通需要に応じて、待ち時間を抑制するように運転される場合の消費電力に対する、バランスポイントに近づけるように群管理制御を行う場合の消費電力低減効果を算出し、算出した消費電力低減効果に基づいて、消費電力の評価における重み係数を交通需要に応じて算出し、算出した、交通需要に応じた重み係数と、現在の交通需要とに基づいて、現在の交通需要に応じた重み係数を設定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、交通需要に応じた消費電力低減効果を算出し、算出された消費電力低減効果に基づいて消費電力の評価における重み係数を交通需要に応じて算出することにより、待ち時間低減と消費電力抑制を的確に重み付けすることができる。さらに、重み係数の関数形設定作業が軽減できるので、群管理システムの構築が容易になる。
【0012】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施例であるエレベーター群管理システムの全体構成図である。
図2】交通計算算出処理部の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
図3】予測停止回数テーブルの一例を示す。
図4】半周時間算出用パラメーターを示す。
図5】階間移動を考慮した交通流モデルを示す。
図6】利用人数をパラメーターとして、半周時間を算出した結果を示す。
図7】利用人数の算出値と設定値を示す。
図8】消費電力量のロスの概要を示す。
図9】乗車率と消費電力ロス量との関係を示す。
図10図7における利用人数の選定範囲を示す。
図11】消費電力低減効果の理論値の一例を示す。
図12】省エネ優先度算出処理部の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
図13】交通需要別の省エネ優先度を示す。
図14】本発明の第2の実施例であるエレベーター群管理システムの全体構成図である。
図15図14のエレベーター群管理システムの基本動作フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、図面を用いて説明する。なお、各実施例は、消費電力量の低減を行うエレベーター群管理システムである。また、各実施例は、乗場呼び入力部によって、一般的な上方または下方方向へのサービス要求を指定可能なエレベーター群管理システムである。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施例であるエレベーター群管理システムの全体構成図である。
【0016】
乗場呼び入力部1は、ビルの利用者がエレベーターかご5に対して目的階へ行くためのサービス要求を行う装置である。例えば、乗場呼び入力部1として、出発階より上方方向および下方方向の二方向へのサービス要求を発する一般的な乗場呼びボタンや、乗場より目的の行先階を直接指定する乗場行先階登録装置等が適用できる。その他に、利用者が携帯する情報端末機によって行先階を指定する手段、乗場に設けられたタッチパネル画面にて、行先フロアや、ビルに入居している企業を直接指定することで、行先階と関連付けを行い登録する手段、カードに登録した情報を読み出して行先階を登録する手段などを適用しても良い。
【0017】
入出力制御システム2は、乗場呼び入力部1から入力されたデータを、群管理制御システム6に送信する。ここで、群管理制御システム6から返信があった場合、正常動作と認識し通常の通信を行う。但し、群管理制御システム6からの返信が無い場合、または通信異常と認識された場合、群管理制御システム6との通信を停止し、入力情報を各号機制御システム3に送信する。これにより、群管理制御システム6が異常となった場合でも、利用者の利便性を損なうことなくエレベーターの運転を行うことができる。
【0018】
号機制御システム3は、エレベーター4を運転するための制御を行う。入出力制御システム2を介して乗場のサービス要求信号が群管理制御システム6に送信され、群管理制御システム6によって割り当て号機が決定されると、サービス要求が作成された階床に対して、該当のエレベーターかご5が走行を始める。このとき、号機制御システム3は、走行指令を発信したり、利用者に対する音声案内等を制御したりする。
【0019】
群管理制御システム6は、主に四つの機能、すなわち、運行管理制御系6a,学習系6b,パラメーター設定処理部6c,入出力管理部6dを備える。これらの機能は、マイクロコンピュータなどの演算処理装置によるものであったり、コンピュータが各機能に応じたプログラムを読み込んで達成されるものであったりする。なお、後述する、図2,12,14に示す各機能についても同様である。
【0020】
運行管理制御系6aは、乗場からのサービス要求に対して、各エレベーター4の運転状況,過去の交通学習情報,将来考慮すべき交通状況などに基づいて、最適なエレベーター4を選択し、ビルの交通状況に合わせて最適な運行管理を行う。
【0021】
学習系6bは、かご位置や乗降人数等のエレベーター情報や行先階情報に基づいて、交通需要の状態を含む交通状況を学習する。このとき、学習系6bは、現時点でどのような運転パラメーターが適しているかを判断するため、オンラインの入力情報から、ビル内の人の流れを示す階床別乗降人数がビル内の代表的な交通状況を示す特徴方式のいずれに属するかを識別する。
【0022】
特徴方式とは、上りと下りの交通情報より、ある個数分の区分けした交通状況を示すものである。通常のオフィスビルの場合、上り下りともに乗降人数が小さい交通状況は「閑散」、上りの状況が大きい交通状況は「アップピーク」、下りの乗降人数が大きい交通状況は「ダウンピーク」と呼ばれる。また、特徴方式はビルの性質によって変わるため、収集した交通状況から新しい特徴形式が抽出されることがある。このため、学習系6bは、新しい特徴形式を抽出した場合、このビル固有の特徴方式として生成・登録し、また、特徴方式の変化の傾向を学習する。
【0023】
なお、学習系6bが使用するかご位置および乗降人数に関する各情報は、それぞれ号機制御システムおよびかごに設置される重量センサ(ロードセル)から得られる。
【0024】
パラメーター設定処理部6cは、エレベーター4が設置されるビルの仕様や、各エレベーター4の仕様を記憶し、これらの仕様を基に運行管理に必要な情報が作成される。ここで、ビルの仕様は、例えば、ビルの階床間の距離を示す階高,各階の在館人数,ビルの階床数などである。また、エレベーターの仕様は、例えば、最大のかご内積載人数,釣合い錘の重さ,ドアの戸開閉速度,ドア幅などである。
【0025】
入出力管理部6dは、群管理制御システム6の入出力インターフェースを制御する。具体的には、乗場からのサービス要求等の入力や、各号機制御システム3への割り当て指令の送信などが、入出力管理部6dによって制御される。
【0026】
本実施例は、現在の交通需要の状態を含む交通状況に応じて待ち時間を短縮する運転方式や、消費電力を抑制する運転方式の切り替えを行う。その切り替えを行うための消費電力評価指標として、エレベーターを選択する際の割り当て評価に重み係数を設け、交通需要に応じて変動させる。この変動値は交通計算方法を応用し、理論的に算出された消費電力低減効果に基づいて重み係数を変動させることで、前記の運転方式の切り替えを実現可能とする。
【0027】
運行管理制御系6a内の交通計算算出処理部6aaは、上記の理論計算を行うために、階間移動の利用者を考慮した交通計算を行う。この交通計算において算出される方向別の利用人数を基に、交通計算算出処理部6aaは、さらに消費電力抑制運転を行った際の消費電力低減効果を算出する。すなわち、本処理により、方向別の交通需要別毎の消費電力低減効果が算出可能となる。
【0028】
省エネ優先度算出処理部6abは、交通計算算出処理部6aaによって算出された消費電力低減効果に基づいて、重み係数(以下、「省エネ優先度」と記す)を算出する。この省エネ優先度の数値が高ければ高いほど、消費電力抑制の重み付けが大きく、消費電力を抑制する運転方式が行なわれる。また、本優先度の数値が低ければ低いほど、待ち時間低減の重み付けが大きくなり、待ち時間を短縮する運転方式が行なわれる。すなわち、理論的に求められた消費電力低減効果に基づいて、消費電力抑制が期待される交通需要では、消費電力を抑制する運転が実行され、消費電力抑制が期待されない交通需要の場合、消費電力抑制運転を行っても得られる消費電力抑制の期待値は少ないため、その場合には待ち時間を短縮するような運行効率向上優先運転が実行される。これにより、待ち時間低減と消費電力抑制を的確に重み付けた群管理制御が可能になる。
【0029】
交通状況判別処理部6acは、学習系6bより得られた過去の学習結果と現在の交通状況を基に、現在の交通状況すなわち交通需要の状態を判定する。例えばロビー階などのある特定階からの出発回数が増加し、各階へのUP方向への走行回数が増加した際にはアップピークモードと判定される。この時、交通状況判別処理部6acは、大別的な交通流モードを判定すると共に、現在の方向別交通需要も算出する。なお、算出される「交通需要」は、例えば、5分間の基準階出発人数、基準階帰着人数などである。
【0030】
省エネ優先度決定処理部6adは、交通状況判別処理部6acによって求められた現在の方向別交通需要と、省エネ優先度算出処理部6abによって求められた交通需要別の省エネ優先度を基に、現在の交通需要に適合した省エネ優先度を決定する。
【0031】
省エネ評価値演算部6aeは、(1)式に基づき、各号機について、省エネ評価値ΦENG(k)を算出する。なお、k(自然数)は、いわば号機の番号を示し、号機数をN(自然数)とする場合、1≦k≦Nである。
【0032】
【数1】
【0033】
省エネ評価値ΦENG(k)は消費電力を抑制するための消費電力低減評価値ΦBAL(k)と、基準値αと、省エネ優先度決定処理部6adによって決定された省エネ優先度Wを基に算出される。
【0034】
消費電力低減評価値ΦBAL(k)は、k号機が呼びに応答する場合にk号機のかごの走行に要する消費電力に関する評価値であり、例えば、回生電力および力行電力と、かご内の乗車率との関係から求めることができる。すなわち、ΦBAL(k)は、呼びに応答した場合に、走行に要する消費電力が少ないエレベーターほど、高く評価されるような評価値である。ΦBAL(k)の値としては、他の評価値に大きな影響を与えることのないように最大値が1、最小値が0となるように規格化した値を利用する。
【0035】
基準値αは省エネ評価値ΦENG(k)の最大値を設定する。例えば、基準値αを15秒とする場合、消費電力低減効果が期待されないエレベーターには最大待ち時間15秒のペナルティを加算し、消費電力低減効果が期待されるエレベーターにはペナルティを0秒とする。つまり、利用者にとっては、エレベーターの到着を15秒待つ恐れが生じることで、利便性が多少低下するが、ビルの消費電力を抑制するための運転が実行される。
【0036】
到着予測時間算出部6afは、パラメーター設定処理部6cが記憶するビル仕様およびエレベーター仕様に基づいて、各エレベーターかご5の現在位置から、各エレベーターかご5の各階への到着予測時間を算出する。例えば、エレベーターの定格速度,ビルの各階床の階高,学習系6bにおける過去の学習結果から各階の停止確率を算出し、エレベーター号機毎の各階停止確率を考慮しつつ、到着予想時間を算出する。
【0037】
待ち時間評価値演算部6agは、各かごに割当てられたサービス要求に対する予想待ち時間に基づいた評価値を演算する。例えば、新規に発生したサービス要求に対して各かごを仮割当てした場合のそれぞれの予想待ち時間をそのまま評価値とする演算方法や、新規に発生したサービス要求に対して各かごを仮割当てした場合に、それぞれのかごに対して既に割当てられている全サービス要求中の予想待ち時間の最大値を評価値とする演算方法が適用できる。
【0038】
総合評価値演算部6ahは、省エネ評価値演算部6aeによって算出された省エネ評価値や、待ち時間評価値演算部6agによって算出された待ち時間評価値などに基づいて、号機ごとに総合評価値を算出する。
【0039】
エレベーター割当て決定処理部6aiは、総合評価値演算部6ahによって算出された総合評価値に基づき、サービス要求に対して最適なエレベーターを決定する。この結果を基に、エレベーター割当て決定処理部6aiは、サービス要求が作成された階床に対してかごを配車するために、入出力管理部6dを介して当該号機制御装置に走行指令を送信する。本走行指令を受信した号機制御システムは、サービス要求が作成された階床にエレベーターかご5を配車する。
【0040】
以上のようなエレベーター群管理制御システムによれば、時々刻々と変化する交通状況に対して最適な運行管理が実行されると共に、運行効率の低下を抑えながら消費電力を抑制することができる。
【0041】
次に、図2〜10を用いて、上述した交通計算算出処理部10について詳述する。なお、図2は、図1における交通計算算出処理部6aaの詳細な構成を示す機能ブロック図である。他の図の内容については、以下、適宜説明する。
【0042】
予想停止回数算出処理部11は、階間移動を考慮した予想停止回数を算出する。例えば、JISで定められている交通計算方法を応用した予想停止回数算出方法に基づき、予想停止回数fを算出する。
【0043】
本実施例において、予想停止回数fは、階床数n,最大乗込み人数r(積載可能人数に対して乗込み率80%を考慮したもの)から(2)式に基づいて算出される。
【0044】
【数2】
【0045】
(2)式によって算出されるfは、出発階から見た予想停止回数である。ここで、階間移動を考慮した場合、利用者が乗車するための停止と、降車するための停止が増加する可能性が出てくる。そのため、出発階から見た予想停止回数は、(2)式におけるrが、出発階から出発した人数rに対して階間移動人数2r分増加したと考えられるため、(2)式から(3)式を得る。
【0046】
【数3】
【0047】
また、出発階から出発した人数rと、最終的な乗込み人数rの関係は(4)式となる。
【0048】
【数4】
【0049】
更に最終的な乗込み人数rに対する階間移動する人数の割合m[%]を考慮すると、予想停止回数fは(5)式で示される。
【0050】
【数5】
【0051】
こうして、全体の乗込み人数に対して、階間移動の割合を考慮した予想停止回数テーブルを算出すると、図3の予想停止回数テーブルが作成される。なお、図3は、一例として、最大積載人数24人のエレベーターについて算出された予測停止回数テーブル20を示す。なお、本テーブルにおける「片道の全乗車人数」,「階間交通率」は、それぞれ上記のr,mに相当する。
【0052】
半周時間算出処理部12は、予想停止回数算出処理部11によって算出された予想停止回数fを基に半周時間を算出する。
【0053】
図4は半周時間RTT算出用パラメーター30を示している。半周時間RTT算出用パラメーター30である、昇降行程L[m],最大加速度a[m/s],加加速時間t[s],定格速度V[m/s],戸開閉時間t[s],扉幅K[mm],扉幅による係数Fが、事前に設定されるエレベーター仕様やビル仕様から設定される。即ち予想停止回数fが算出されることにより、半周時間RTT算出用パラメーター30に基づき、平均走行距離S[s],半周走行時間T[s],戸開閉時間T[s],乗客出入時間T[s],損失時間T[s],半周時間RTT[s]が算出される。なお、S,t,tは、それぞれ、加速距離,平均走行距離Sを走行するのに要する平均走行時間,加速時間である。
【0054】
方向別交通流算出処理部13は、半周時間算出処理部12によって算出された半周時間に基づき、UP方向およびDOWN方向別の半周時間を算出する。まず、UP方向およびDOWN方向の階間移動を考慮した交通流モデルを図5に示す。基準階出発モデル40は基準階より乗込んで各階へ降車する乗客をモデル化したものであり、基準階出発成分比率をRで表す。基準階帰着モデル41は各階から基準階へ帰着する乗客をモデル化したものであり、基準階帰着成分比率をRで表す。UP方向階間移動モデル42は、基準階以外の階間をUP方向へ移動する乗客をモデル化したものである。UP方向階間移動モデル42において、目的階は出発階より高い階床とし、UP方向階間移動成分比率をRI−UPで表す。更に、DOWN方向階間移動モデル43は基準階以外の階間をDOWN方向へ移動する乗客をモデル化したものである。DOWN方向階間移動モデル43において、目的階は出発階より低い階床とし、DOWN方向階間移動成分比率をRI−DOWNで表す。
【0055】
上記の各比率の関係は、(6)式によって表される。
【0056】
【数6】
【0057】
上記各比率を用いて、方向別の交通流成分は(7)〜(10)式によって求められる。
【0058】
【数7】
【0059】
【数8】
【0060】
【数9】
【0061】
【数10】
【0062】
上式に基づいて、方向別の半周時間が算出される。利用人数Pをパラメーターとして、半周時間を算出した結果を図6に示す。図6には、UP方向成分の半周時間50およびDOWN方向成分の半周時間51が示されている。ここで、基準階出発成分比率Rおよび基準階帰着成分比率Rが0の場合、それぞれ出発階からの乗込み人数および基準階へ帰着する人数が0である。すなわち、乗客は階間移動する利用者のみであることを示す。各交通流成分の総和を100と仮定した場合、UP方向の交通流成分は50と算出される。このように、利用人数Pをパラメーターとして各交通流成分の半周時間が算出できる。
【0063】
利用人数算出処理部14は、方向別交通流算出処理部13によって算出された方向別の半周時間を基に予測される利用人数を算出する。利用人数の算出のために、まず、1秒間1台当たりの交通量が算出される。5分間1台当たりの交通量をPSNMIN[人/5分・台]とすると、1秒間1台当たりの交通量はPSNSEC[人/1秒・台]は(11)式によって表される。
【0064】
【数11】
【0065】
PSNSECを用いて、UP方向及びDOWN方向の半周当たりの利用人数PCUおよびPCDが(12)および(13)式により算出される。
【0066】
【数12】
【0067】
【数13】
【0068】
以上のように、方向別にU(UP方向),D(DOWN方向),I(階間)の各成分の比率及び乗車人数に基づいた半周当たりの利用人数を算出することが可能となる。ここで、算出された半周当たりの利用人数PCUおよびPCDは、予め与えられた乗車人数Pをパラメーターとした半周時間での利用人数となるため、図7においては、パラメーターPの値を対応するPCDと併記して示す。
【0069】
図7において、交通計算算出利用人数60は、上述した利用人数PCDの算出値である。また、パラメーター乗車人数61は、上記の(12)式および(13)式に含まれる半周時間導出のために使用した利用人数Pである。
【0070】
利用人数PCUまたはPCDの選定範囲(図7では62)としては、パラメーターとして与えられる利用人数Pと、半周時間より導出された利用人数PCUまたはPCDを比較し、両者の誤差が異常とされない範囲あるいは所定の閾値を越えないPCUまたはPCDの範囲が選定される。例えば、|P−PCU|>>0または|P−PCD|>>0の場合、交通計算によって求められた半周当たりの利用人数PCUまたはPCDは、与えられた乗車人数のパラメーターPに対して誤差が大きく適当な値ではないため、選択範囲外とする(例えば、PCU=0.5なのにP=20という状況はあり得ない)。図7においては、パラメーターとした乗車人数61(P)と交通計算算出利用人数60(PCD)との誤差の絶対値が閾値1以下である場合、許容される誤差範囲であるとして、当該PCDを選択範囲内としている。これにより、図7に示す範囲62が選択される。
【0071】
消費電力低減効果算出処理部15は、上記のように利用人数算出処理部14によって交通量(PSNMIN)に応じて求められた利用人数の選定範囲(図7の範囲62)に基づいて、消費電力低減効果を推定する。
【0072】
図8は、消費電力低減効果算出処理部15における消費電力低減効果の算出手段を説明するための図であり、消費電力量のロスの概要を示す。エレベーターかごがUP方向に走行する場合、エレベーターかご(図1の「5」)が釣合い錘(図1の「8」)より重ければ力行運転となって電力が消費され、エレベーターかごが釣合い錘より軽ければ回生運転となり、エレベーターのモーターが発電機動作して電力を発生する。また、DOWN方向に走行する場合、エレベーターかごが釣合い錘より重ければ回生運転となり、モーターが電力を発生し、エレベーターかごが釣合い錘より軽ければ、力行運転となって電力が消費される。すなわち、乗客の重量を含むエレベーターかごの重量によって消費電力が変動する。このような消費電力の変動の様子を、乗車率に対して示すと、図8の理想消費電力量70(点線)のようになる。
【0073】
ここで、インバーターやモーターの電力変換効率によって、実消費電力量は、理想消費電力量からずれる。図8(a)のバランスポイント73よりも右側および図8(b)のバランスポイント73よりも左側、すなわち力行運転の際に、実消費電力量71(実線)は、理想消費電力量70(点線)よりも大きくなる。また図8(a)のバランスポイント73よりも左側および図8(b)のバランスポイント73よりも右側、すなわち回生運転の際に、実消費電力量71(実発電電力量)は、理想消費電力量70(理想発電電力量)よりも小さくなる。従って、このような消費電力ロス分72を抑制することにより、消費電力低減効果が得られる。消費電力ロスを少なくするためには、乗車率をバランスポイント73に近づけるように群管理制御を行う。
【0074】
図9は、乗車率と消費電力ロス量との関係を示す。消費電力ロス80は乗車率に応じて変動する。このとき、乗車率がバランスポイント81(このときの乗車人数をrgpと記す)に近づくにつれて、消費電力ロス量は少なくなり、乗車率がバランスポイント81から遠ざかるにつれて、消費電力ロス量は大きくなる。ここで、図7に示したような利用人数の選定範囲62において、大小二つの利用人数PCDの値PENGおよびPmean(PENG>Pmean)に対する乗車率を、それぞれ図9中の83および82とする。このとき、エレベーターかごが、乗車率82に対しては、待ち時間抑制を重視してかごを配車する通常運転方式(待ち時間抑制)でサービスし、乗車率83に対しては、消費電力抑制を重視してかごを配車する消費電力低減運転方式でサービスするとする。この場合、図9に示すように、各乗車率82,83に対して消費電力ロス量が定まるので、エレベーターの消費電力低減効果(EFFLOSS)の大きさを、図9に示すような消費電力ロス量の差分84によって示すことができる。このように、消費電力低減効果算出処理部15は、消費電力ロス量の差分84あるいは差分に対応する量を算出することによって、消費電力低減効果を算出する。
【0075】
図10は、利用人数の選定範囲から消費電力低減効果の算出に用いる利用人数を選定する基準を説明するための図である。交通計算算出利用人数(PCD)90(図7の60に相当)と乗車人数(P)91(図7の61に相当)を比較し、利用人数の選定範囲92(図7の62に相当)から、上述したような、通常運転方式における利用人数(Pmean)94と、消費電力低減方式における利用人数(PENG)93が選定される。このとき、
meanとしては、与えられた乗車人数Pと算出した利用人数の誤差が最も少ない算出値が選定される。また、PENGとしては、最もバランスポイントに近い算出値が選定される。
【0076】
図9に示したように、乗車率すなわち利用人数は消費電力ロス量に対応しているので、最もバランスポイント81に近づけて消費電力を抑制できる人数PENGと通常運転方式における利用人数Pmeanの差分を用いて、消費電力低減効果を算出することができる。そこで、本実施例においては、バランスポイントにおける乗車人数をrgpとして、消費電力低減効果の推定値EFFLOSSが(14)式によって算出される。
【0077】
【数14】
【0078】
例えば、rgp=16とすると、図10の場合、PENG(93)=8,Pmean(94)=5となるから、EFFLOSS=(8−5)/16×100=18.8[%]となる。
【0079】
走行回数低減効果算出処理部16は、乗車率を高めるため乗場呼びを一つのかごに集中させることにより、待機エレベーターが発生し、消費電力ロスの生じる走行の機会が減少することで得られる消費電力低減効果を算出する。このような消費電力低減効果は、全体の利用人数に対する一度の走行における乗車人数の向上度合いによって示すことができる。従って、本実施例における走行回数低減効果算出処理部16は、片道の全乗車人数をrとして、(15)式によって、消費電力低減効果EFFRUNを算出する。
【0080】
【数15】
【0081】
消費電力低減効果理論値算出処理部17は、消費電力低減効果算出処理部15および走行回数低減効果算出処理部16が算出した各消費電力低減効果に基づき、交通需要別の消費電力低減効果をそれぞれ算出し、これらの値を平均化することにより消費電力低減効果理論値を算出する。
【0082】
図11は、上記のようにして算出された、エレベーター利用者の基準階出発比率および基準階帰着比率に応じた消費電力低減効果の理論値の一例を示す。なお消費電力低減効果理論値テーブルA0の計算に当たって、ロビー階を除いた階床数nを13階床,昇降行程Lを54.6[m],扉幅Kを1100[mm],最大加速度aを0.8[m/s],定格速度Vを150[m/min](2.5[m/s])と設定している。加速時間t,加加速時間t,戸開閉時間t,扉幅による係数Fおよび加速距離Sは、日本エレベーター協会によって標準とされている値が用いられる。
【0083】
上述したように、消費電力低減効果理論値テーブルA0は、エレベーター仕様やビル仕様に基づいて、エレベーター群管理システム内において理論的に算出されるので、エレベーター仕様やビル仕様に応じて精度よく消費電力低減効果を設定できる。さらに、事前にシミュレーションや計算を行う必要がなくなるので、システムの設計や開発が容易になる。
【0084】
なお、本実施例の消費電力低減効果理論値テーブルは、テーブルを簡略化するために、基準階の出発比率および帰着比率の交通需要に対する消費電力低減効果を示しているが、これに限らず、交通需要別に消費電力低減効果の理論値を示すものであればよい。
【0085】
図12は、図1における省エネ優先度算出処理部6abの詳細な構成を示す機能ブロック図である。省エネ優先度算出処理部6abは、上記の消費電力低減効果理論値を基に省エネ優先度を設定する。
【0086】
省エネ優先度最大値設定処理部21は、省エネ優先度の最大値wを設定するとともに、消費電力低減効果理論値の最大値Emaxを設定する。
【0087】
優先度算出部22は、省エネ優先度最大値設定処理部21によって設定されたwおよびEmaxを用いて、(16)式によって消費電力低減効果理論値Eに応じた省エネ優先度wを算出する。
【0088】
【数16】
【0089】
本実施例においては、wを1.5とし、図11に示される消費電力低減効果理論値の最大値(Emax)21.8に基づいて、0〜1.5の範囲の値をとる交通需要別の省エネ優先度が設定される。また、算出データ補正処理部23は、何らかの原因で、算出した省エネ優先度が0〜1.5の範囲外の値をとる場合、規定の範囲内、本実施例では0〜1.5の範囲内の値になるように省エネ優先度の算出値を補正する。
【0090】
図13は、交通需要別の省エネ優先度を示す。省エネ優先度の概要C0は、消費電力低減効果の度合い明るさの異なるパターンで示したものである。省エネ優先度の概要C0において、パターンが明るくなればなるほど消費電力低減効果が大きくなることを示し、省エネ優先度もそれに伴い大きくなる。すなわち、本実施例においては、パターンが明るくなればなるほど、省エネ優先度は最大値1.5に近づく。また、パターンが暗くなればなるほど、省エネ優先度は0に近づく。
【0091】
図13における省エネ優先度テーブルC1は、上述したような省エネ優先度の概要C0によって、交通需要の基準階出発比率および基準階帰着比率に応じて変化する省エネ優先度を示している。具体的には、消費電力低減効果が高い交通需要であると予測された場合、省エネ優先度が大きくなり、消費電力低減効果が低い交通需要であると予測された場合、省エネ優先度が小さくなる。
【0092】
上述したように、本実施例によれば、交通需要別の消費電力低減効果を理論計算によって算出し、予測される消費電力低減効果に応じて重み係数を変動させることにより、消費電力を低減させる運転と、待ち時間を短縮する運転との切り替えを自動で行うことが可能になる。すなわち、シミュレーションを必要とせずに、群管理システムが、理論的な計算により自動で消費電力低減効果を算出し、算出された低減効果に応じて重み係数を変動できる。また、本実施例によれば、上記各運転の切り替えを自動で行うことで、利用者の利便性を損なうことなく、運行管理によって消費電力を低減できる群管理システムを実現できる。
【0093】
なお、本実施例においては、交通需要を基準階帰着率および基準階出発比率によって表わしたが、これに限らず、単純なUP方向およびDOWN方向別の交通需要で表しても良い。
【実施例2】
【0094】
図14は、本発明の第2の実施例であるエレベーター群管理システムの全体構成図である。本実施例は、図1の実施例と異なり、ビル全体の運用管理を行うビルコントローラ7およびこれと連動するビル使用状況判断処理部7aを備えている。他の構成は、図1の実施例と同様である。
【0095】
図14が示すように、ビル使用状況判断処理部7aは、群管理制御システム6内に設けられ、ビルコントローラ7から受信する消費電力ピーク信号の有無を監視する。例えば、ビルの消費電力量が規定値をオーバーすると予測された際に、ビルコントローラ7は、群管理制御システム6における入出力管理部6dに対して消費電力ピーク信号を送信する。ここで、規定値とは、例えば、電力会社と契約した電力量や、各地域の自治体等が定めた使用消費電力量などを示す。ビル使用状況判断処理部7aは、消費電力ピーク信号を受信したことを確認した際に、消費電力低減運転を優先的に行うため、省エネ優先度の最大値を通常の最大値よりも大きくする。これにより、消費電力抑制の重みづけが大きくなり、消費電力を抑制する運転が優先的に実行される。
【0096】
図15は、図14の実施例において、消費電力ピーク信号を受信した際における、群管理制御システムの基本動作フローを示す。
【0097】
ステップST01では、ビルコントローラ7から消費電力ピーク信号を受信しているか監視を行う。受信した場合はステップST02へ、受信していなければステップST05へ移行する。
【0098】
ステップST02では、現在の交通流モードを判定する。交通流モードが「平常」又は「閑散」である場合はステップST03へ、それ以外であればステップST05へ移行する。
【0099】
ステップST03では、省エネ優先度の最大値を2.5とし、消費電力を低減させる運転を優先する設定とする。設定完了後ステップST04へ移行する。
【0100】
ステップST04では、運転モードを省エネモードとし、その他の運行管理に関わる設定を、消費電力を低減させるような運転に切り替える。設定完了後、基本動作フローを終了とする。
【0101】
ステップST05では、省エネ優先度の最大値を1.5とし、通常の設定と同値とする。設定完了後ステップST06へ移行する。
【0102】
ステップST06では、運転モードを通常運転モードとし、通常通り利用者の待ち時間を低減するようにエレベーターの運行管理を行う。設定完了後、基本動作フローを終了とする。
【0103】
以上のようなビル全体の運用管理を行うビルコントローラ7を付属させることで、ビル全体の消費電力がピークとなった際に、利用者の利便性低下を最小限とし、消費電力を抑制可能な群管理制御システムを提供可能とする。
【0104】
また電力ピーク信号はビルコントローラから入力されるものに限ったものではない。例えば監視盤に付属キースイッチ等により、ビル管理者が省電力運転を手動で設定し、設定信号を受信した際に、群管理制御システム6が省電力運転を行う構成でも良い。
【0105】
なお、本発明は前述した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した各実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、さらに、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。さらにまた、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0106】
例えば、図1に示した運行管理制御系6aあるいは群管理制御システム6の外部において、コンピュータや個別の制御装置により、上述したような方法によって省エネ優先度すなわち重み係数を算出して、運行管理制御系に記憶させておいても良い。
【符号の説明】
【0107】
1…乗場呼び入力部,2…入出力制御システム,3…号機制御システム,
4…エレベーター,5…乗りかご,6…群管理制御システム,
6a…運行管理制御系,6b…学習系,6c…パラメーター設定処理部,
6d…入出力管理部,6aa…交通計算算出処理部,6ab…省エネ優先度算出処理部,
6ac…交通状況判別処理部,6ad…省エネ優先度決定処理部,
6ae…省エネ評価値演算処理部,6af…到着予測時間算出部,
6ag…待ち時間評価演算部,6ah…総合評価値演算部,
6ai…エレベーター割当て決定処理部,
7…ビルコントローラ,7a…ビル使用状況判断処理部,8…釣合い錘,
11…予想停止回数算出処理部,12…半周時間算出処理部,
13…方向別交通流算出処理部,14…利用人数算出処理部,
15…消費電力ロス低減効果算出処理部,16…走行回数低減効果算出処理部,
17…消費電力低減効果理論値算出処理部,20…予測停止回数テーブル,
21…省エネ優先度最大値設定処理部,22…優先度算出部,23…算出データ補正部,
30…半周時間RTT算出用パラメーター,40…基準階出発モデル,
41…基準階帰着モデル,42…UP方向階間移動モデル,
43…DOWN方向階間移動モデル,50…UP方向成分の半周時間,
51…DOWN方向成分の半周時間,60…交通計算算出利用人数,
61…パラメーター乗車人数,62…利用人数の選定範囲,
70…理想電力量,71…実電力量,72…消費電力ロス,73…バランスポイント,
80…消費電力ロス,81…バランスポイント,82…最小利用人数,
83…最大利用人数,84…消費電力ロスの差分,
90…交通計算算出利用人数,91…パラメーター乗車人数,
92…利用人数の選定範囲,93…消費電力低減運転方式における利用人数,
94…通常運転方式における利用人数,
A0…消費電力低減効果理論値テーブル,C0…省エネ優先度の概要,
C1…交通需要別省エネ優先度テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15