(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加速度センサを用いて計測された人の移動運動中の各時刻における2方向の加速度成分について、前記2方向の加速度成分の組合せごとにおける計測頻度を表す2次元マップであって、前記2方向の加速度成分を2軸とする座標系において、原点に近い領域にて第1のビンのサイズを有しており、前記原点から遠い領域にて前記第1のビンのサイズより大きい第2のビンのサイズを有している2次元ヒストグラムに基づく2次元マップを表示するよう表示部を制御する表示制御手段を備えた移動運動状態表示装置。
前記2次元ヒストグラムは、前記座標系において、前記2方向の加速度成分の組合せに対応するデータ点のプロット位置のばらつきが大きい領域ほどビンのサイズが大きくなるヒストグラムである、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の移動運動状態表示装置。
前記2次元マップは、前記座標系において、前記2方向の加速度成分の組合せに対応する座標の画素を、該組合せの計測頻度に応じた色で表す画像であり、所定の間隔を有する複数の計数頻度の各々について同じ該計測頻度を表す画素同士を結んだ線を、該計測頻度に割り当てられた色で表す画像である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の移動運動状態表示装置。
前記2次元マップは、前記座標系において、前記2方向の加速度成分の組合せに対応する座標の画素を、該組合せの計測頻度に応じた色で表す画像であり、該2次元マップが表す各画素を、該画素に対応した前記組合せの計測頻度に割り当てられた色で表す画像である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の移動運動状態表示装置。
前記2次元マップは、前記座標系において、前記2方向の加速度成分の組合せに対応する座標の画素を、該組合せの計測頻度に応じた明度で表す画像であり、所定の間隔を有する複数の計数頻度の各々について同じ該計測頻度を表す画素同士を結んだ線を、該計測頻度に割り当てられた明度で表す画像である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の移動運動状態表示装置。
前記2次元マップは、前記座標系において、前記2方向の加速度成分の組合せに対応する座標の画素を、該組合せの計測頻度に応じた明度で表す画像であり、該2次元マップが表す各画素を、該画素に対応した前記組合せの計測頻度に割り当てられた色で表す画像である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の移動運動状態表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述のリハビリテーションにおいては、理学療法士などの指導員が患者の歩行運動を目視で確認し主観で判断するため、評価がばらつくことがある。また、既存の歩行評価技術においても、評価結果を客観的に示す方法は未だ確立されていない。特に、患者の歩行中における体重バランスの左右方向及び前後方向の動きを知ることは、患者の歩行評価に効果的であると考えられるが、そのような歩行運動の解析結果を効率的に確認できるものは、現時点において存在していない。
【0006】
このような事情により、人の歩行などの移動運動の評価に有用な移動運動の解析結果を効率的に確認できる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の発明は、
加速度センサを用いて計測された人の移動運動中の各時刻における2方向の加速度成分について、前記2方向の加速度成分の組合せごとにおける計測頻度を表す2次元マップ(map)であって、前記2方向の加速度成分を2軸とする座標系において、原点に近い領域にて第1のビン(bin)のサイズ(size)を有しており、前記原点から遠い領域にて前記第1のビンのサイズより大きい第2のビンのサイズを有している2次元ヒストグラム(histogram)に基づく2次元マップを表示するよう表示部を制御する表示制御手段を備えた移動運動状態表示装置を提供する。
【0008】
第2の観点の発明は、
前記2次元ヒストグラムが、前記座標系において、前記原点から遠い領域ほどビンのサイズが大きくなるヒストグラムである、上記第1の観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0009】
第3の観点の発明は、
前記2次元マップが、前記2次元ヒストグラムを表す画像にスムージング(smoothing)処理が施された画像である、上記第1の観点または第2の観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0010】
第4の観点の発明は、
前記スムージング処理が、平滑化処理を含む、上記第3の観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0011】
第5の観点の発明は、
前記2次元ヒストグラムが、前記座標系において、前記2方向の加速度成分の組合せに対応するデータ(data)点のプロット(plot)位置のばらつきが大きい領域ほどビンのサイズが大きくなるヒストグラムである、上記第1の観点から第4の観点のいずれか一つの観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0012】
第6の観点の発明は、
前記2次元マップが、前記座標系において、前記2方向の加速度成分の組合せに対応する座標の画素を、該組合せの計測頻度に応じた色で表す画像であり、所定の間隔を有する複数の計数頻度の各々について同じ該計測頻度を表す画素同士を結んだ線を、該計測頻度に割り当てられた色で表す画像である、上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0013】
第7の観点の発明は、
前記2次元マップが、前記座標系において、前記2方向の加速度成分の組合せに対応する座標の画素を、該組合せの計測頻度に応じた色で表す画像であり、該2次元マップが表す各画素を、該画素に対応した前記組合せの計測頻度に割り当てられた色で表す画像である、上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0014】
第8の観点の発明は、
前記2次元マップが、前記座標系において、前記2方向の加速度成分の組合せに対応する座標の画素を、該組合せの計測頻度に応じた明度で表す画像であり、所定の間隔を有する複数の計数頻度の各々について同じ該計測頻度を表す画素同士を結んだ線を、該計測頻度に割り当てられた明度で表す画像である、上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0015】
第9の観点の発明は、
前記2次元マップが、前記座標系において、前記2方向の加速度成分の組合せに対応する座標の画素を、該組合せの計測頻度に応じた明度で表す画像であり、該2次元マップが表す各画素を、該画素に対応した前記組合せの計測頻度に割り当てられた色で表す画像である、上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0016】
第10の観点の発明は、
前記2方向が、前記人の左右方向、前後方向及び上下方向のうちの2方向である、上記第1の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0017】
第11の観点の発明は、
前記2方向が、前記人の左右方向及び前後方向である、上記第10の観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0018】
第12の観点の発明は、
前記移動運動は、歩行運動である、上記第1の観点から第11の観点のいずれか一つの観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0019】
第13の観点の発明は、
前記移動運動が、走行運動である、上記第1の観点から第11の観点のいずれか一つの観点の移動運動状態表示装置を提供する。
【0020】
第14の観点の発明は、
加速度センサを用いて人の移動運動中の各時刻における2方向の加速度成分を計測するステップ(step)と、
計測された前記各時刻における2方向の加速度成分について、前記2方向の加速度成分の組合せごとにおける計測頻度を表す2次元マップであって、前記2方向の加速度成分を2軸とする座標系において、原点に近い第1の領域でのビンのサイズを第1のサイズとし、前記原点から遠い第2の領域でのビンのサイズを前記第1のサイズより大きい第2のサイズとする2次元ヒストグラムに基づく2次元マップを表示するよう表示部を制御するステップと、を備えた移動運動状態表示方法を提供する。
【0021】
第15の観点の発明は、
人に取り付けられる加速度センサと、
前記加速度センサを用いて計測された前記人の移動運動中の各時刻における2方向の加速度成分について、前記2方向の加速度成分の組合せごとにおける計測頻度を表す2次元マップであって、前記2方向の加速度成分を2軸とする座標系において、原点に近い領域にて第1のビンのサイズを有しており、前記原点から遠い領域にて前記第1のビンのサイズより大きい第2のビンのサイズを有している2次元ヒストグラムに基づく2次元マップを表示するよう表示部を制御する表示制御手段と、を備えた移動運動状態表示システム(system)を提供する。
【0022】
第16の観点の発明は、
コンピュータ(computer)を、上記第1の観点から第13の観点のいずれか一つの観点の移動運動状態表示装置として機能させるためのプログラム(program)を提供する。
【発明の効果】
【0023】
上記観点の発明によれば、人の移動運動中の各時刻における互いに直交する2方向の加速度成分の2次元ヒストグラムに基づく2次元マップを生成する際に、当該2次元ヒストグラムを、これら2方向の加速度成分を2軸とする2次元座標系において、原点に近い第1の領域でのビンのサイズを第1のサイズとし、前記原点から遠い第2の領域でのビンのサイズを前記第1のサイズより大きい第2のサイズとしたものとするので、データ点が分散して目立ちにくい前記原点から離れた領域にあるビンについて、その面積及び頻度を大きくして強調させることができ、人の移動運動中における加速度を画像化して表示する際に、人の移動運動中における前記2方向の加速度成分の移動範囲及び集中領域を表示や視線の切換えなしに容易に把握できるよう表示することができる。当該移動範囲及び集中領域を把握することは、その人の移動運動における特徴的な動きを知る上で重要であり、移動運動の評価に有用である。よって、上記観点の発明によれば、操作者は、人の歩行などの移動運動の評価に有用な移動運動の解析結果を効率的に確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明の実施形態について説明する。なお、これにより発明は限定されない。
【0026】
図1は、歩行状態表示システム(system)1の構成を概略的に示す図である。なお、歩行状態表示システム1は、発明における移動運動状態表示システムの一例である。
【0027】
歩行状態表示システム1は、
図1に示すように、加速度センサモジュール(sensor module)2と、歩行状態表示装置3とを有している。加速度センサモジュール2は、患者10の背面の腰部中央等に、粘着パッド(pad)やバンド(band)等により装着される。歩行状態表示装置3は、操作者11が携帯したり操作したりして使用される。なお、歩行状態表示装置3は、発明における移動運動状態表示装置の一例である。
【0028】
図2は、加速度センサモジュール2及び歩行状態表示装置3のハードウェア(hardware)の構成を示す図である。
【0029】
図2に示すように、加速度センサモジュール2は、プロセッサ(processor)21と、加速度センサ22と、メモリ(memory)23と、通信I/F(interface)24と、バッテリ(battery)25とを有している。歩行状態表示装置3は、例えば、スマートフォン(smart phone)、タブレット型コンピュータ(tablet computer)、ノートパソコン(note PC)などのコンピュータ端末であり、プロセッサ31と、ディスプレイ32と、操作部33と、メモリ34と、通信I/F35と、バッテリ36とを有している。なお、プロセッサ21及びプロセッサ31は、それぞれ、単一のプロセッサに限定されず、複数のプロセッサである場合も考えられる。
【0030】
図3は、加速度センサモジュール2及び歩行状態表示装置3の機能的な構成を示す機能ブロック(block)図である。
【0031】
加速度センサモジュール2は、
図3に示すように、加速度センサ部201と、サンプリング(sampling)部202と、送信部203とを有している。なお、サンプリング部202及び送信部203は、プロセッサ21がメモリ23に記憶されている所定のプログラム(program)を読み出して実行することにより実現される。
【0032】
加速度センサ部201は、センサ本体を基準とした3次元直交座標系におけるx,y,zの各軸方向の加速度成分について、その加速度成分に応じたアナログ(analog)信号をほぼリアルタイム(real time)に出力する。
【0033】
サンプリング部202は、そのアナログ信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてデジタル(digital)の加速度データに変換する。サンプリング周波数は、例えば128Hzである。サンプリング部202は、例えば、1g(重力加速度)=9.8m/s
2=加速度データ値128となるスケール(scale)で、加速度データを出力する。なお、ここでは、加速度成分の正負は、右側寄り、前側寄り、上側寄りをそれぞれ正とする。
【0034】
送信部203は、サンプリングされた各時刻における加速度成分を表す加速度データをほぼリアルタイムにて無線で送信する。
【0035】
なお、本例では、加速度センサモジュール2は、センサ本体のx軸方向、y軸方向及びz軸方向が、それぞれ、患者10のRL(Right-Left)方向、AP(Anterior-Posterior)方向及びSI(Superior-Inferior)方向と一致するように取り付けられる。RL方向、AP方向及びSI方向は、それぞれサジタル(sagittal)方向、コロナル(coronal)方向及びアキシャル(axial)方向とも言う。また、本例では、加速度センサモジュール2の姿勢(傾き)は、患者10の歩行中において変化しないものと仮定する。
【0036】
歩行状態表示装置3は、
図3に示すように、操作部301と、ディスプレイ(display)部302と、患者情報受付部303と、受信部304と、歩行加速度算出部305と、2次元マップ生成部306と、表示制御部310と、記憶部312とを有している。なお、患者情報受付部303、受信部304、歩行加速度算出部305、2次元マップ生成部306、及び表示制御部310は、プロセッサ31がメモリ34に記憶されている所定のプログラムを実行することにより実現される。また、2次元マップ生成部306及び表示制御部310は、発明における表示制御手段の一例である。
【0037】
操作部301は、操作者11の操作を受け付ける。操作部301は、例えば、タッチパネル(touch panel)、タッチパッド(touch pad)、キーボード(keyboard)、マウス(mouse)などにより構成されている。なお、操作者11は、例えば、理学療法士などの指導員である。
【0038】
ディスプレイ部302は、画像を表示する。ディスプレイ部302は、例えば、液晶パネル、有機ELパネルなどにより構成されている。
【0039】
患者情報受付部303は、患者情報の入力を受け付け、入力された患者情報を記憶部312に記憶させる。
【0040】
受信部304は、加速度センサモジュール2の送信部203から送信された加速度データを無線で受信する。なお、送信部203と受信部304との無線通信には、例えば、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))等の規格を用いることができる。
【0041】
歩行加速度算出部305は、取得された加速度データに基づいて、患者10の歩行中における左右方向、前後方向及び上下方向の加速度成分a
x,a
y,a
zをそれぞれ算出する。なお、本例では、これらの加速度成分a
x,a
y,a
zは、重力加速度gの成分を除去して、患者10の純粋な歩行運動により生じた加速度成分として算出することを想定する。ただし、より簡便に、重力加速度gの成分を含む形で算出してもよい。また、左右方向、前後方向及び上下方向は、それぞれ、水平左右方向、水平進行方向及び鉛直方向を想定する。ただし、より簡便に、加速度センサモジュール2のセンサ本体を基準としたx軸方向、y軸方向及びz軸方向としてもよい。
【0042】
2次元マップ生成部306は、患者10の歩行中の各時刻においてサンプリングされた、患者10の左右方向及び前後方向の加速度成分a
x,a
yの分布を表す2次元マップMを生成する。2次元マップMは、例えば、これら2方向の加速度成分a
x,a
yを2軸とする2次元座標系Kにおいて、患者10の歩行中の各時刻におけるこれら2方向の加速度成分a
x,a
yに対応するデータ点をプロット(plot)することにより生成される。2次元マップMは、例えば、患者10の歩行中における水平面方向での体重バランスについて、移動範囲の広さや偏り、左右対称性、移動パターン等を評価するのに参照される。
【0043】
表示制御部310は、ディスプレイ部302に、2次元座標系Kと、2次元マップMとを表示させる。これにより、患者10の歩行中における水平面方向での体重バランスの移動範囲と集中領域とを容易に把握することができるようになる。
【0044】
記憶部312は、入力された患者情報、取得された加速度データ、算出された各加速度成分、生成された2次元マップなどのデータを記憶する。なお、これらのデータは、必要に応じて、歩行状態表示装置3に接続されたデータベース41に転送されたり、外付けのDVD−ROM、メモリカード(memory card)などの媒体や、インターネット(internet)を介して接続された外部の媒体などを含む記憶媒体42に保存されたりする。
【0045】
これより、歩行状態表示システム1における処理の流れについて説明する。
【0046】
図4は、歩行状態表示システム1における処理の流れを示すフロー(flow)図である。
【0047】
ステップ(step)S1では、操作者11が操作部301を操作して、患者10の患者情報を歩行状態表示装置3に入力する。患者情報受付部303は、その患者情報の入力を受け付け、記憶部312に記憶させる。患者情報には、例えば、患者のID番号、氏名、年齢、性別、生年月日などが含まれる。なお、後述する患者10の加速度データや、当該加速度データを基に得られたグラフ(graph)、解析結果などは、この患者情報と対応付けて記憶部312に記憶される。
【0048】
ステップS2では、患者10の歩行中の各時刻t
iにおける加速度データを取得する。ここでは、まず、操作者11が、患者10の腰部に加速度センサモジュール2を取り付ける。そして、患者10に、標準的な歩行速度でしばらく歩行してもらう。歩行は、通常、距離にして5m〜20m程度、時間にして20秒〜3分程度、歩数にして10歩〜40歩程度である。加速度センサモジュール2のサンプリング部202は、加速度センサ部201の出力に基づいて、患者10の歩行中におけるx軸方向、y軸方向、z軸方向それぞれの加速度成分A
x,A
y,A
zをサンプリングして計測する。加速度センサモジュール2の送信部203は、計測された加速度成分を表す加速度データをほぼリアルタイムで送信する。歩行状態表示装置3は、送信部203から送信された加速度データを、受信部304を用いて受信して取得する。取得された加速度データは、記憶部312に送信され記憶される。
【0049】
ステップS3では、歩行加速度算出部305が、取得された加速度データを記憶部312から読み出し、当該加速度データに基づいて、患者10の歩行中の各時刻における左右方向、前後方向及び上下方向の加速度成分a
x,a
y,a
zを算出する。なお、ここでは、加速度データが表す加速度から重力加速度gの成分を除去する処理を含む所定のアルゴリズム(algorithm)を用いて、各加速度成分を算出する。算出された各加速度成分は、記憶部312に送信され記憶される。
【0050】
図5は、患者10の歩行中の各時刻における左右方向、前後方向及び上下方向の加速度成分a
x,a
y,a
zの一例を示す図である。
図5において、横軸は時間、縦軸は加速度成分の大きさ(相対値)をそれぞれ表している。
【0051】
ステップS4では、操作者11が、操作部301を操作して、加速度成分の測定結果及び解析結果を表示するための複数の機能の中から、実行させたい所望の機能を選択する。本例では、操作者11は、患者10の左右方向及び前後方向の加速度成分の組合せごとにおける計測頻度の分布を表す2次元マップを表示する機能を選択するものとする。このような2次元マップ表示によれば、患者10の歩行中における水平面方向での加速度成分がどのように分布しているかを確認することができる。つまり、患者10の体重バランスすなわち静止状態からの移動の向きと強さについて、集中領域やその集中度合い、移動範囲の広さや偏り、左右対称性、移動パターン(pattern)等を評価することができる。
【0052】
ステップS5では、2次元マップ生成部306が、ステップS4での操作者11による選択操作に応答して、2次元マップMを生成する。2次元マップMは、ステップS3にて得られた各時刻における左右方向及び前後方向の加速度成分a
x,a
yについて、左右方向及び前後方向の加速度成分の組合せごとにおける計測頻度の分布を表すマップである。
【0053】
本例では、次のフローにしたがって2次元マップを生成する。
【0054】
図6は、2次元マップ生成処理のフロー図である。
【0055】
ステップS51では、取得された患者10の各時刻t
iにおける左右方向及び前後方向の加速度成分a
x(i),a
y(i)を、記憶部312から読み出す。
【0056】
ステップS52では、取得された各時刻t
iでの左右方向及び前後方向の加速度成分a
x(i),a
y(i)について、これら2方向の加速度成分の組合せごとにおける計測頻度を求める。
【0057】
ステップS53では、これら2方向の加速度成分a
x,a
yを2軸とした2次元座標系Kを用意する。
【0058】
ステップS54では、2次元座標系Kにおいて、ビンのサイズを振り分ける。
【0059】
本例では、2次元座標系Kにおける原点Oに近い領域よりも、原点Oから遠い領域の方がより大きくなるよう振り分けることにする。ここで、原点Oは、左右方向及び前後方向の加速度成分が共に0となる点である。ビンのサイズの振り分け方としては、例えば、原点Oから遠いほど、各ビンのサイズが徐々に大きくなるように振り分ける。なお、別の振り分け方として、データ点のプロット位置のばらつき(分散)が大きい領域において、ビンのサイズを大きくするように振り分けることもできる。2次元座標系Kにおける原点Oから遠い領域に位置するデータ点は、プロット位置のばらつきが多く、対応する計測頻度も小さくて目立たないことが多い。しかし、このように原点Oから遠い領域やデータ点のばらつきの大きい領域におけるビンのサイズをより大きくすることで、その存在を強調させることができる。その結果、患者10の水平面方向における体重バランスの移動範囲をより容易に把握することが可能となる。
【0060】
図7は、本例のビンサイズ振分け方法によって定義される各ビンのサンプル(sample)を示す図である。
図7中、破線は2次元ヒストグラムを表す画像空間における画素の境界を表しており、実線はビンの境界を表している。ここでは、2次元ヒストグラムを表す画像空間において、1画素の幅は、加速度データ値が1である幅に対応させる。そして、
図7に示すように、原点Oを1×1画素で構成されるビンとし、原点Oからa
x方向に離れるほど、ビンのa
x方向の画素数を1ずつ増大させ、原点Oからa
y方向に離れるほど、ビンのa
y方向の画素数を1ずつ増大させる。なお、
図7は、便宜上、ビンの数を実際の数より少なくして描いている。
【0061】
ステップS55では、上記のようにビンのサイズが振り分けられた2次元座標系Kにおいて、上記組合せに対応した座標のビン内の各画素に、当該組合せの計測頻度を画素値として設定する。これにより、原点Oから遠い領域の方がビンのサイズが大きくなる2次元ヒストグラム画像Hが得られる。
【0062】
なお、2次元ヒストグラムを生成する際には、各ビンの値(度数)として、そのビンに含まれる加速度成分の組合せの計測頻度をそのまま用いてもよいが、計測頻度の平方根を用いてもよい。これにより、体重バランスの集中領域において同じビンのデータの計数頻度が突出して大きくなり、観察や加工がしづらいヒストグラムになることを防ぐことができる。
【0063】
図8に、ステップS55で生成された、ビンのサイズが原点Oからの距離に応じて異なる2次元ヒストグラム画像H1のサンプルを示す。
図8に示す2次元ヒストグラム画像H1は、度数が同レベルであるビン同士を結合させ、結合されたビンの外縁をそのビンの度数に応じた色で表したものである。また、
図9に、比較参照用として、ビンのサイズが1画素分で一定である2次元ヒストグラム画像H0のサンプルを示す。
【0064】
ステップS56では、観察がしやすくなるように、2次元ヒストグラム画像H1にスムージング(smoothing)処理を施して、粗い凹凸部分を滑らかに整形する。スムージング処理には、例えば、3×3画素や5×5画素などのマスク(mask)を用いた平滑化フィルタ(filter)処理等を用いることができる。また、スムージング処理は、1回だけでなく、複数回に渡り繰返し行ってもよい。
【0065】
ステップS57では、スムージング処理済みの2次元ヒストグラム画像H2を、所定の表現形式による画像に変換することにより、2次元マップMを生成する。記憶部312は、この2次元マップMを記憶する。本例では、当該表現形式として、カラー(color)等高線表現形式を用いる。
【0066】
図10に、スムージング処理済みの2次元ヒストグラム画像H2をカラー等高線表現形式に変換した2次元マップMのサンプルを示す。
【0067】
カラー等高線表現形式とは、一定間隔を有する複数の計測頻度(画素値)について同じ計測頻度(画素値)を有する画素同士を線(以下、等高線という)で結ぶ表現形式であり、それら等高線を、対応する計測頻度(画素値)に応じた色で表す。例えば、2次元マップにおける計測頻度(画素値)の範囲である0から最大頻度(最大画素値)までのフルレンジ(full range)を正規化し、0〜100%で表すようにする。このとき、計測頻度(画素値)のフルレンジ0〜100%の各レベルに対して、互いに異なる複数の色を割り当てる。複数の色は、例えば、第1の色から第1の色とは異なる第2の色へと徐々に変化する過程における各色により構成される。そして、この0〜100%の範囲において複数の特定レベルを一定間隔で均等に設定し、これら複数の特定レベルの各々について同じ特定レベルの計測頻度(画素値)を有する画素同士を線で結び、複数の等高線を生成する。各等高線は、対応するレベルに割り当てられた色で表される。本例では、計測頻度(画素値)のフルレンジ0〜100%に対して、20レベル、すなわち、5%,10%,15%,・・・,95%,100%の特定レベルを設定する。また、計測頻度(画素値)のフルレンジ0〜100%に対して、寒色から暖色へ(例えば、青色→水色→緑色→黄色→橙色→赤色)と徐々に変化する各色を割り当てる。これにより、2次元マップMを、寒色から暖色に変化する20色の等高線で表すことができる。
【0068】
なお、上記の表現形式としては、カラー等高線表現形式の他、グレースケール(gray-scale)等高線表現形式、カラー分布表現形式、グレースケール分布表現形式等が考えられる。
【0069】
グレースケール等高線表現形式とは、上記のカラー等高線形式において、色の代わりに明暗を表す明度を用いる表現形式である。すなわち、計測頻度(画素値)のフルレンジに0〜100%に対して、複数の明度例えば白色から黒色へと徐々に変化する過程における各明度を割り当て、各等高線を、対応するレベルに割り当てられた“明度”で表す。
【0070】
カラー分布表現形式とは、各画素をその計測頻度(画素値)の大きさに応じた色で表す表現形式である。例えば、2次元マップにおける計測頻度(画素値)の範囲である0から最大頻度(最大画素値)までの範囲を正規化し、0〜100%で表すようにする。このとき、計測頻度(画素値)のフルレンジ0〜100%の各レベルに対して、互いに異なる複数の色を割り当てる。そして、この0〜100%の範囲を複数の領域に区分し、それぞれの領域に対応する計測頻度(画素値)を有する画素を、対応する色で表すようにする。例えば、計測頻度(画素値)のフルレンジ0〜100%に対して、寒色から暖色へと徐々に変化する色をほぼ連続的に割り当てる。そして、計測頻度(画素値)のフルレンジ0〜100%を256領域、すなわち、0〜100・1/256%,100・1/256〜100・2/256%,100・2/256〜100・3/256%,・・・,100・254/256〜100・255/256%,100・255/256〜100・256/256%の領域に区分する。これにより、2次元マップ全体を、計測頻度(画素値)別に256色で表すことができる。
【0071】
また、グレースケール分布表現形式とは、上記のカラー分布形式において、色の代わりに明暗を表す明度を用いる表現形式である。すなわち、計測頻度(画素値)のフルレンジ0〜100%に対して、白色から黒色へと徐々に変化する明度を割り当て、区分した各領域の計測頻度(画素値)を有する画素を、対応するレベルに応じた“明度”で表す。
【0072】
なお、2次元マップMは、スムージング処理していない画像Hを所定の表現形式に変換したものあってもよい。また、2次元マップMは、スムージング処理なしの2次元ヒストグラム画像H1またはスムージング処理済みの2次元ヒストグラム画像H2を、カラー/グレースケール等高線表現形式かつカラー/グレースケール分布表現形式に変換したものであってもよい。
【0073】
ステップS6では、表示制御部310が、2次元座標系Kにおける2次元マップMを、ディスプレイ部302の画面に表示させる。
【0074】
このような本実施形態によれば、2次元座標系Kには、患者10の左右方向及び前後方向の加速度成分a
x,a
yの分布を表す2次元マップMが表示される。そのため、操作者11は、患者10の歩行中における水平面方向での体重バランスの移動範囲や集中領域などを把握することができ、これら体重バランスの移動範囲と集中領域から、患者10が理想的な体重移動をどの程度行っているか理解することができる。例えば、体重バランスの移動範囲が逆三角形を覆うような形状に近く、集中領域が逆三角形の頂点の位置に近いときは、理想的な体重移動が行われていると考えることができる。一方、体重バランスの移動範囲が台形をを覆うような形状に近く、集中領域が台形の頂点の位置に近いときは、理想から外れた体重移動が行われていると考えることができる。
【0075】
操作者11は、このような評価に基いて患者10の歩行中の動きを詳細に把握し、例えば効果的な歩行訓練プランを作成することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、患者10の歩行運動中の各時刻における左右方向及び前後方向の加速度成分a
x,a
yの2次元ヒストグラム画像H1に基づく2次元マップMを生成するが、この際に、2次元ヒストグラム画像H1を、これら2方向の加速度成分a
x,a
yを2軸とする2次元座標系Kにおいて、原点Oに近い第1の領域でのビンのサイズを第1のサイズとし、原点Oから遠い第2の領域でのビンのサイズを前記第1のサイズより大きい第2のサイズとしたものとする。そのため、分散して目立ちにくい原点Oから離れた位置にあるビンについて、その面積及び値(度数)を大きくして強調させることができ、患者10の歩行運動中における体重バランスの移動範囲や集中領域を容易に把握できる。
【0077】
また、本実施形態では、表示された2次元マップMにおける等高線または画素の色によって、体重バランスの集中度合が分かり、体重バランスの移動範囲も、等高線や着色された領域の外形によって明確に表現される。つまり、表示された2次元マップMにより、患者10の歩行中における体重バランスの「集中度合」と「移動範囲」とを同時に把握しやすい形態で表現させることができる。その結果、指導員などの操作者11は、患者10の歩行中における体重バランスの移動範囲と集中領域とを、表示の切換えや視線の切換えなしに容易に把握することができる。
【0078】
なお、発明は、上記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0079】
例えば、本実施形態では、原点Oから離れるほどサイズが大きくなるビンによる2次元ヒストグラム画像H1を形成し、当該2次元ヒストグラム画像H1に対してスムージング処理を施して2次元マップMを作成している。しかしながら、スムージング処理をどのタイミング(timing)でどのように施すかは、本実施形態に限定されず、種々のバリエーションが考えられる。例えば、まず、サイズが一定であるビンによる2次元ヒストグラム画像H0を形成し、当該2次元ヒストグラムの画像に対してスムージング処理を施し、その後、ビンのサイズを原点から離れるほど大きくなるように再定義して、スムージング処理済みの2次元ヒストグラム画像H2を形成し直すようにしてもよい。また、2次元マップMは、O原点から離れるほどサイズが大きくなるビンによる2次元ヒストグラム画像H1のスムージング処理済みである2次元ヒストグラム画像H2に基いて作成したものに限定されない。例えば、2次元マップMは、2次元ヒストグラム画像H1そのものや、2次元ヒストグラム画像H1にスムージング処理を施した2次元ヒストグラム画像H2であってもよい。
【0080】
また例えば、本実施形態では、2次元マップMの基となる2次元ヒストグラム画像として、患者10の左右方向及び前後方向の加速度成分a
x,a
yの2次元ヒストグラム画像を生成している。しかし、当該2次元ヒストグラム画像は、患者10の左右方向及び上下方向の加速度成分a
x,a
zの2次元ヒストグラム画像であってもよいし、患者10の前後方向及び上下方向の加速度成分a
y,a
zの2次元ヒストグラム画像であってもよい。
【0081】
また例えば、本実施形態は、発明を、人の歩行運動に適用した例であるが、人のその他の移動運動、例えば人の走行運動などにも適用することができる。
【0082】
また例えば、本実施形態は、人に装着した加速度センサの出力から人の移動運動中における加速度を基に、上記の2次元マップMを生成し表示する装置であるが、コンピュータをこのような装置として機能させるためのプログラムもまた発明の実施形態の一つである。