特許第6243740号(P6243740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243740
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】荷役物運搬機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 19/00 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   B66F19/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-2054(P2014-2054)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2015-129045(P2015-129045A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100735
【氏名又は名称】アイコクアルファ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長沼 憲昌
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−169100(JP,A)
【文献】 特開2009−166995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 7/00− 7/28
B66F 13/00−19/02
B66C 13/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役物を昇降する機構と、この昇降機構部を駆動するエアーシリンダーと、昇降を指令する操作部と、該エアーシリンダーに支承された力点の昇降の速度を検出する速度検出器と、アームに配設した加速度検出器と、該速度検出器と該加速度検出器に接続された演算部と、該演算部からの電気信号を基に該エアーシリンダーへのエアーの圧力に変換する電気・空気圧変換器を有する荷役物運搬機において、該荷役物が着地している状態から該操作部又は操作レバーで上昇指令を出して該荷役物が地切りする前の間の該アームの動きを該加速度検出器で検出し、該加速度検出器の電気信号を基に演算部で演算し、該エアーシリンダーへのエアー圧を可変させて、該荷役物の地切りを行うことを特徴とする荷役物運搬機の制御方法。
【請求項2】
把持装置の把持操作のステップと、把持操作の後にエアー圧を上げるステップと、加速度検出器の加速度検出するステップと、加速度検出器の検出値に応じてエアー圧を調整するステップを有し、荷役物が地切りするまで加速度検出器の加速度に応じてエアー圧を調整するステップを繰り返すことを特徴とする請求項1記載の荷役物運搬機の制御方法。
【請求項3】
操作レバーの可変量に応じてエアー圧の上げ量を演算するステップと、操作レバーの操作後にエアー圧を上げるステップと、加速度検出器の加速度検出するステップと、加速度検出器の検出値に応じてエアー圧を調整するステップを有し、荷役物が地切りするまで加速度検出器の加速度に応じてエアー圧を調整するステップを繰り返すことを特徴とする請求項1記載の荷役物運搬機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役物の重量が一定でない場合の荷役物運搬機の昇降の制御において、加速度センサを用いて、荷役物の地切りの前を制御して、スムースに地切りをする制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、荷役物の重量が一定でない場合の荷役物運搬機の昇降の制御である。制御の流れは、先ず、着地している荷役物にフックを掛ける。次に、操作レバーを上昇方向に力を入れる。次に、エアーシリンダーへ急速に給気する。次に、荷役物が地切りする。次に、地切りした瞬間を速度検出器で検出する。次に、停止するようにエアー圧を補正して、昇降が停止する。
【0003】
しかし、エアーを急速に給気して荷役物を地切りすると、地切り直後では荷役物は上昇方向に動いている。その上昇方向の動きを抑制するために、地切り直後を補正するが、時間がかかっていたという欠点があった。一方、エアーの給気を若干遅くすると上昇方向の動きは小さくなるが、地切りまでの時間が掛かるという欠点があった。
【0004】
引用文献2は、クランプ機構に加速度センサを配設して、荷役物の地切りの瞬間を検出している。引用文献2の図4では、エアー圧を急速に入れた直後に加速度センサが加速度を検出しているが、クランプ機構の一瞬の揺れであり、荷役物が地切りするまでシリンダー内のエアー圧を一定で急速に上げている。そして、地切りの瞬間を判断して、シリンダー内のエアー圧を加速度センサの検出値を用いて細かく制御している。
【0005】
特許文献1と特許文献2に共通することは、荷役物の地切りの瞬間及び地切り後を速度検出器又は加速度センサで検出してから、シリンダー内のエアー圧を制御又は補正している。言い換えると、地切り前は細かな制御はせず、一気に給気し、地切りの瞬間及び地切りの後を細かく制御している。
【0006】
特許文献3の図4では、アームの中間にジャイロセンサを配設しているが、荷役物を地切りさせた後のアームの昇降状態のみを検出するのが目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−169100号公報
【特許文献2】特開2009−166995号公報
【特許文献3】特開2010−241518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、地切り後だけの細かな制御だけでは、地切りの直後は、荷役物が上昇しており、荷役物がバランス状態になるのに時間がかかっていたという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、着地している荷役物を上昇させる操作をしてから地切り直前までのエアーシリンダーへのエアー圧を細かく制御し、その制御には、地切りの前までの急速にエアー圧を上げることによりアームが撓む特性を利用し、その撓みの特性をアームの中間に配設した加速度検出器で、アームの動き検出していることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の荷役物運搬機の制御方法は、着地している荷役物を上昇させる操作をして地切り直前までのエアーシリンダーへのエアー圧を細かく制御できるので、地切り直後の上昇方向の動きは小さくなり、地切り後のシリンダー圧の補正する時間が短くなり、スムースな地切りができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施例の荷役物運搬機の総体図ある。(実施例1)
図2図2は、制御を示すブロック図である。(実施例1)
図3図3は、制御を示すチャート図である。(実施例1)
図4図4は、加速度検出器の検出値とエアーシリンダーのエアー圧のグラフである。(実施例1)
図5図5は、加速度と指令シリンダー圧の上げ量のグラフである。(実施例1)
図6図6は、アームの撓みのイメージ図である。(実施例1)
図7図7は、制御を示すチャート図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0012】
アームの中間に加速度検出器を配設して、荷役物の着地状態から地切りまでのアームの動きを加速度検出器で検出することで、荷役物の着地状態から地切りまでのエアーシリンダーのエアー圧を細かく制御することを実現した。
【実施例1】
【0013】
実施例1は、請求項1・2を示す。図1は、本発明の実施例の荷役物運搬機の総体図である。荷役物運搬機1は、旋回台2と、本体部3と、台座4と、第1アーム5と、第2アーム6と、第1アーム5の先端付近に配設された加速度検出器7と、操作部8と、操作レバー9と、吊り具10と、本体部3内にエアーシリンダー(図示せず)と、本体部3内に演算部(図示せず)と、本体部3内に速度検出器(図示せず)とで構成している。よって、作業者11が操作部8及び操作レバー9を操作することにより、吊り具10に吊られた荷役物12を3次元に運搬できる。吊り具10は、後述する把持装置である。
【0014】
図2は、制御を示すブロック図である。荷役物運搬機1は、本体部3と、第1アーム5と、第2アーム6と、第1アーム5の先端付近に配設された加速度検出器7と、操作部8と、操作レバー9と、吊り具10と、本体部3内にエアーシリンダー13と、本体部3内に演算部14と、本体部3内に速度検出器15と、本体部3内に電気・空気圧変換器16と、支点17、力点18で構成している。本体部3に、エアーシリンダー13が固着されている。エアーシリンダー13のロッド19の先端に、力点18が支承されている。電源20は演算部14に供給されている。演算部14は、操作部8と加速度検出器7と速度検出器15と電気・空気圧変換器16と電線で繋がれている。エアー源21は電気・空気圧変換器16に供給されている。電気・空気圧変換器16は、エアーシリンダー13とエアー配管で繋がれている。電気・空気圧変換器16は、演算部14からの電気信号を基にエアーシリンダー13へのエアーの圧力に変換する。演算部14では、後述する図3・4・5・7の制御をしている。
【0015】
図3は、制御を示すチャート図である。把持装置の把持操作22、エアー圧を上げる23、加速度検出器の加速度検出24、加速度検出の検出値に応じてエアー圧を調整25、地切り判定26、加速度検出器の検出値に応じた値を下げる27、終了28、のステップで構成されている。
【0016】
図4は、加速度検出器の検出値とエアーシリンダーのエアー圧のグラフである。上図が加速度検出器7の加速度検出値のグラフであり、X軸に時間、Y軸に加速度を表記してある。下図がエアーシリンダー13のエアー圧のグラフであり、X軸に時間、Y軸にエアーシリンダー13のエアー圧を表記してある。区間A・B・C・D・E・F・G・H・J・Kは、制御の中の区切りである。区間Aと区間Bの切り替わり時点は、吊り具10である把持装置の把持操作をして荷役物12を把持した時点である。
区間Hと区間Jの切り替わり時点は、荷役物12が地切りした時点である。上図のX軸は右に行くにつれて時間が経過し、Y軸は上に行くにつれ加速度が大きくなる。下図のX軸は右に行くにつれて時間が経過し、Y軸は上に行くにつれエアーシリンダー13のエアー圧がが大きくなる。点線29・30は、閾値である。上の点線29以上は、後述する図5の区間Nである。上の点線29未満で、下の点線30以上は、後述する図5の区間Mである。下の点線30未満は、後述する図5の区間Lである。
【0017】
図5は、加速度と指令シリンダー圧の上げ量のグラフである。X軸に加速度検出器7の検出値である加速度を表記してある。指令シリンダー圧の上げ量は、言い換えると、その時点のエアーシリンダー13のエアー圧に加算するエアー圧である。Y軸に指令シリンダー圧の上げ量を表記してある。区間L・M・Nは、加速度の変化の幅である。X軸は、右に行くにつれて、加速度が大きくなる。Y軸は、上に行くにつれ、指令シリンダー圧の上げ量が大きくなる。
【0018】
図6は、アームの撓みのイメージ図である。符号は、図2と同様である。実線の第1アーム5は、エアーシリンダー13のエアー圧を上げる前である。点線の第1アーム5は、エアーシリンダー13のエアー圧を急速に上げた後である。荷役物12の全重量が着地している状態から、エアーシリンダー13へ急速にエアー圧を高めると、ロッド13が矢印方向に動き、その時、第1アーム5が撓む。第1アーム5が撓む動きは、第1アーム5に配設された加速度検出器7も矢印方向に動き、加速度が検出される。力点18の下がる量は、説明しやすい様に、大きくしている。点線の湾曲は、説明しやすい様に、湾曲を大きくしている。
【0019】
図1・2・3・4・5・6とで、制御を説明する。作業者11が、操作レバー9を操作して、吊り具10である把持装置を荷役物12が把持できる位置に停止させる。荷役物10を把持できる位置で停止している間が区間Aである。次に、操作部8の把持ボタン(図示せず)を押して吊り具10で荷役物12を把持する。荷役物12を把持する操作が図3の把持装置の把持操作22である。把持した瞬間が区間Aと区間B切り替わり時点である。次に、エアーシリンダー13のエアー圧を急速に上げる。エアーシリンダー13のエアー圧を急速に上げるのが区間Bであり、図3のエアー圧を上げる23である。次に、エアーシリンダー13の圧力が急速に上がるので、エアーシリンダー13のロッド19が下がり力点18が下がる。荷役部12が着地しているので、ロッド19が下がる量はごく僅かである。ごく僅かに力点18が下がるので、第1アーム5が撓む。第1アーム5が撓んだ状態が図6である。第1アーム5が撓んで加速度検出器7が動くので、第1アーム5に配設された加速度検出器7が加速度を検出し、図3の加速度検出器の加速度検出24である。次に、加速度に応じてエアーシリンダー13のエアー圧が調整される。図3の加速度検出器に検出値に応じてエアー圧を調整25である。調整とは、エアーシリンダー13のエアー圧を上げる、エアー圧を下げる、エアー圧をそのまま維持を含むが、実施例1では、上げるで説明する。エアーシリンダー13のエアー圧を上げる量は、加速度に応じて可変させる。可変させる量は、図5である。区間Cから区間Hの地切りまで、加速度に応じてエアーシリンダー13のエアー圧を上昇させる。加速度が小さい場合は指令シリンダー圧の上げ量を大きく、加速度が大きい場合は指令シリンダー圧の上げ量を小さくすることで、地切り後の跳ね上がりを抑制する。加速度検出器7の検出値に応じて指令シリンダー圧の上げ量を可変させるので、図4の上図の様に加速度が変化する。また、加速度が変化すので、図4の下図のようにエアーシリンダー13のエアー圧のグラフ線が一直線にならない。次に、速度検出器の検出値が閾値を超えた場合は、地切りと判定する。図4の地切りの箇所である。図3では、地切り判定26である。地切りしていない場合は、図3のNOの矢印の通り、加速度検出器の加速度検出24に戻る。次に、地切り判定した直後に、加速度検出値に応じた値を下げて、荷役物12の跳ね上がりを抑止する。その区間が区間Jである。図3では、速度検出値に応じた値を下げる27である。そして、地切りの制御は終了する。図3の終了28である。図3の制御サイクルは、0.5msであり、地切り完了まで繰り返される。加速度が大きくなって跳ね上がり量が大きくなりそうになると、指令シリンダー圧を小さくする。また、加速度が小さくなったら、指令シリンダー圧を大きくする。地切りまでの第1アーム5の動きを加速度検出器7で検出することで、この地切りまでの細かな制御を行い、スムースで跳ね上がりを抑制した地切りが可能である。荷役物12が着地している状態から操作部8で上昇指令を出して荷役物12が地切りする前の間の第1アーム5の動きを加速度検出器7で検出し、加速度検出器7の電気信号を基に演算部14で演算し、エアーシリンダー13へのエアー圧を可変させて、荷役物12の地切りを行っている。その制御には、把持装置の把持操作22のステップと、把持操作の後にエアー圧を上げる23ステップと、加速度検出器の加速度検出24するステップと、加速度検出器の検出値に応じてエアー圧を調整25するステップを有し、荷役物12が地切りするまで加速度検出器7の加速度に応じてエアー圧を調整するステップ25を繰り返す。
【実施例2】
【0020】
実施例2は、請求項1・3を示す。図7は、制御を示すチャート図である。操作レバーの可変量に応じエアー圧の上げ量を演算31、エアー圧を上げる32、加速度検出器の加速度検出33、加速度検出の検出値に応じてエアー圧を調整34、地切り判定35、加速度検出器の検出値に応じた値を下げる36、終了37、のステップで構成されている。吊り具10は、引掛け式の実施例である。よって、荷役物12を吊り上げる場合は、操作レバー9を上昇方向に力を入れる。吊り具10が引掛け式であるため、図7の操作レバー9の可変量に応じエアー圧の上げ量を演算をしている。操作レバー9の可変量に応じエアー圧の上げ量を演算31以降は、実施例1と同様である。
【0021】
荷役物12が着地している状態から操作部レバー9で上昇指令を出して荷役物12が地切りする前の間の第1アーム5の動きを加速度検出器7で検出し、加速度検出器7の電気信号を基に演算部14で演算し、エアーシリンダー13へのエアー圧を可変させて、荷役物12の地切りを行っている。その制御には、操作レバーの可変量に応じてエアー圧の上げ量を演算31するステップと、操作レバーの操作後にエアー圧を上げる32ステップと、加速度検出器の加速度検出33するステップと、加速度検出器の検出値に応じてエアー圧を調整34するステップを有し、荷役物12が地切りするまで加速度検出器7の加速度に応じてエアー圧を調整34するステップを繰り返す。
【産業上の利用可能性】
【0022】
実施例1では、把持としているが、クランプや吸着を意味しており、また、アームが撓む構造の荷役物運搬機なら適用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 荷役物運搬機
2 旋回台
3 本体部
4 台座
5 第1アーム
6 第2アーム
7 加速度検出器
8 操作部
9 操作レバー
10 吊り具
11 作業者
12 荷役物
13 エアーシリンダー
14 演算部
15 速度検出器
16 電気・空気圧変換器
17 支点
18 力点
19 ロッド
20 電源
21 エアー源
22 把持装置の把持操作
23 エアーを上げる
24 加速度検出器の加速度検出
25 加速度検出の検出値に応じてエアー圧を調整
26 地切り判定
27 加速度検出器の検出器に応じた値を下げる
28 終了
29 閾値
30 閾値
31 操作レバーの可変量に応じエアー量の上げ量を演算
32 エアーを上げる
33 加速度検出器の加速度検出
34 加速度検出の検出値に応じてエアー圧を調整
35 地切り判定
36 加速度検出器の検出器に応じた値を下げる
37 終了
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7