【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンドレスタイラー式架線集材システムでは、作業現場において、元柱および先柱の間に架け渡した主索に沿って走行可能な一対の荷掛滑車から吊り下げた荷掛フックによって集材が行われる。主索に沿った搬器(荷掛フック)の移動は、搬器に両端が連結されたエ
ンドレス索を走行させることにより行われる。荷掛フックの昇降は、搬器に取り付けた一対の荷掛け滑車を介して荷掛フックに連結されたリフティング索の繰り出し・巻き上げによって行われる。また、横取り時における荷掛フックの移動は、当該荷掛フックに連結したホールバック索の繰り出し・巻き上げによって行われる。これらの3本の索の繰り出し・巻き上げ等を行うウインチは、エンジンおよびトランスミッションを備えた機械式の駆動機構を用いて行われている。
【0006】
エンドレスタイラー式架線集材システムの場合には、機械式の集材機の運転操作が煩雑であり、誤操作が荷の落下、索の切断に直結する危険性をはらんでいる。また、ランニングスカイライン方式に比べて広範囲に索が張られ、操作対象の索の本数も3本と多い。このため、集材機オペレーターは目視できない索の動き、搬器の動きを先山荷掛者の無線指示と集材機周辺の雰囲気から判断して運転する等、安全を長年の勘に頼って確保することも求められる。このように、集材機オペレーターには長年の経験に基づく高い技量が求められるので、オペレーターの確保が困難であるという課題を抱えている。
【0007】
しかしながら、従来においては、エンドレスタイラー式架線集材システムに用いる操作性および安全性に優れた集材機については提案されていない。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、エンドレスタイラー式架線集材システムに用いる操作性および安全性に優れた油圧集材機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、エンドレスタイラー式架線集材システムに用いる油圧集材機であって、
エンドレス索を走行させるエンドレスウインチと、
リフティング索の繰り出し・巻き上げを行うリフティングウインチと、
ホールバック索の繰り出し・巻き上げを行うホールバックウインチと、
前記エンドレスウインチ、前記リフティングウインチおよび前記ホールバックウインチを駆動する油圧駆動装置と、
操作部材と、
前記操作部材の操作に応じて入力される操作指令に基づき、前記油圧駆動装置を制御して、前記エンドレスウインチ、前記リフティング
ウインチおよび前記ホールバックウインチを駆動する制御装置と、
を有していることを特徴としている。
【0010】
本発明の油圧集材機では、オペレーターによる操作部材の操作に応じて入力される操作指令に基づき、制御装置は油圧駆動装置を駆動制御して3本の索のそれぞれの走行、繰り出し・巻き上げ等の動作を制御する。エンジン回転を、トランスミッションを介してウインチに伝達する機械式集材機に比べて、油圧ポンプによってウインチを回転駆動する油圧駆動式の集材機は、クラッチ操作、制動操作などが不要であり、操作性および安全
性に優れている。
【0011】
本発明の油圧集材機は、前記油圧駆動装置によって駆動され、油圧集材機本体フレームを集材現場の所定場所に固定するためのリアアンカー索の繰り出し・巻き上げを行うリアアンカーウインチを有し、前記制御装置は、前記操作部材の操作に応じて入力される操作指令に基づき前記油圧駆動装置を制御して、前記リアアンカーウインチを駆動
する。
【0012】
従来においては、集材機を作業現場において移動しないように固定するために、手作業によってアンカー索
の引き回し作業、張設作業を行っている。本発明によれば、リアアン
カーウインチが搭載されているので、集材機のアンカー作業を簡単に行うことができる。
【0013】
本発明の油圧集材機は、前記油圧駆動装置によって駆動され、集材場所における各索の引き回しのために使用するリードロープの繰り出し・巻き上げを行うリードロープウインチを有し、前記制御装置は、前記操作部材の操作に応じて入力される操作指令に基づき前記油圧駆動装置を制御して、前記リードロープを駆動することが望ましい。
【0014】
従来においては、手作業によりリードロープウインチの引き回しが行われている。本発明によれば、リードロープウインチが搭載されているので、リードロープの引き回しをより簡単に行うことができる。
【0015】
本発明の油圧集材機は、前記油圧集材機本体フレームに着脱可能に搭載されたエンジンフレームを有し、前記油圧駆動装置は、前記油圧集材機本体フレームに搭載された本体側油圧回路部、および、前記エンジンフレームに搭載されたエンジンフレーム側油圧回路部を備え、前記エンジンフレーム側油圧回路部は、エンジンおよび当該エンジンによって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプを備えた作動油発生部であることが望ましい。
【0016】
本発明の油圧集材機は、所謂、3胴油圧集材機であり、3台のウインチが搭載されている。また、リアアンカーウインチおよびリードロープウインチが搭載される場合には5台のウインチが搭載され、各ウインチを駆動するための油圧ポンプもそれぞれ搭載される。したがって、油圧集材機の重量が大きくなり、その運搬作業等が困難になるおそれがある。本発明では、油圧集材機における重量のあるエンジン回りの部分を、着脱可能なエンジフレームとしてある。したがって、作業現場に対する搬入搬出においては、エンジ
ンフレームを油圧集材機から外し、個別に運搬することができる。なお、エンジンフレームを取り外すことができるように、エンジンフレームと本体側の間を結ぶ油圧ホース、電気配線には、コネクタ等を取り付けて、着脱できるように構成することは勿論である。
【0017】
本発明の油圧集材機において、各部を次のように配置することができる。前記油圧集材機本体フレームにおける前後方向の途中の部位には運転席が配置される。前記油圧集材機本体フレームにおいて、前記運転席の前側の部位には、前記リフティングウインチが配置され、当該リフティングウインチの前側の部位には前記ホールバックウインチが配置される。前記油圧集材機本体フレームにおいて、前記ホールバックウインチの左右の部位にはそれぞれエンドレスウインチおよびリードロープウインチが配置される。前記油圧集材機本体フレームの後端部の左右には、前記リアアンカーウインチとして、左リアアンカーウインチおよび右リアアンカーウインチが配置される。また、前記油圧集材機本体フレームにおける前記リアアンカーウインチと前記運転席の間の部位に、前記エンジンフレームが搭載される。
【0018】
次に、本発明の油圧集材機は、前記操作部材として、動作モードスイッチおよび操作レバーを備え、前記動作モードスイッチを操作して、前記制御装置による動作モードとして、集材時モードおよび据付時モードのいずれかを選択可能であることが望ましい。前記集材時モードは、前記操作レバーの操作に応じて、前記エンドレス索の走行、前記リフティング索および前記ホールバック索の繰り出し・巻き上げを行って、集材動作を行うモードであり、前記据付時モードは、前記油圧集材機本体フレームを所定場所に固定する据付時に、前記操作レバーの操作に応じて前記リアアンカー索の繰り出し・巻き上げを行うモードである。
【0019】
このように、動作モードを選択できるようにすることで、操作レバーによる操作機能を切り替えることができる。これにより、油圧集材機を据付作業において、エンドレス索、リフティング索、ホールバック索が不用意に繰り出される等の誤操作を確実に防止できる
。同様に、集材時にリアアンカー索、リードロープが誤操作によって繰り出される等の弊害を確実に防止できる。
【0020】
この場合、前記動作モードスイッチは、前記集材時モードとして、単動モードおよびインターロック制御モードを選択可能であることが望ましい。前記単動モードでは、前記操作レバーの操作に応じて前記エンドレス索、前記リフティング
索および前記ホールバック索のそれぞれの繰り出し・巻き上げを独立して制御する。前記インターロック制御モードでは、前記エンドレス索の走行制御および前記リフティング索の繰り出し・巻き上げ制御のそれぞれにおいて、前記ホールバックウインチを常に巻き上げ方向に駆動し、前記ホールバック索の張力が増加して所定値以上になると前記ホールバックウインチを空回りさせて前記ホールバック索を繰り出し可能にする。また、前記ホールバック索の巻き上げ・繰り出し制御において、前記リフティング索を常に巻き上げ方向に駆動し、前記リフティング索の張力が増加して所定値以上になると前記リフティングウインチを空回りさせて前記リフティング索を繰り出し可能にする。
【0021】
このように3本の索の操作時にインターロック制御を行うことにより、索が過剰な弛み状態、あるいは、過剰な緊張状態に陥ることを自動的に防止できる。よって、簡素な操作レバーの操作によって安全に集材作業を行うことができる。
【0022】
また、この場合において、前記操作レバーとして、運転席に配置した第1操作レバーおよび第2操作レバーを備え、前記第1、第2操作レバーは、油圧集材機の前後方向および左右方向のそれぞれに操作可能であり、前記集材時モードでは、前記第1操作レバーの前後方向および左右方向のうちの一方の方向への操作によって、前記ホールバック索の繰り出し・巻き上げ指令が入力され、前記第2操作レバーの前後方向および左右方向のうちの一方の方向への操作によって前記エンドレス索の走行指令が入力され、前記第2操作レバーの他方の方向への操作によって前記リフティング索の繰り出し・巻き上げ指令が入力されることが望ましい。
【0023】
このようにすれば、2本の操作レバーを用いて3本の索の駆動を制御できる。よって、左右の手で3本の索の駆動を簡単に制御できる。
【0024】
また、前記第1操作レバーは前記第2操作レバーに対して左側に配置された左操作レバーであり、前記第2操作レバーは右操作レバーであり、前記据付時モードでは、前記左操作レバーの左右方向の操作によって前記左リアアンカー索の繰り出し
・巻き上げ指令が入力され、前記左操作レバーの前後方向の操作によって前記リードロープの繰り出し
・巻き上げ指令が入力され、前記右操作レバーの左右方向の操作によって前記右リアアンカー索の繰り出し・巻き上げ指令が入力されることが望ましい。
【0025】
本発明では、動作モードに応じて2本の操作レバーに異なる操作機能を割り当てている。これにより、2本の操作レバーのみで、5本の索(ロープ)を操作できる。また、操作レバーの操作方向は前後左右方向の二方向のみであり、各方向への操作が可能な場合に比べて、オペレーターは索の動きに対応する方向への操作を短時間で習得できるという利点もある。