(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
[光電変換層用組成物]
本発明の組成物は、半導体及び複数のイオン性基を有するイオン性低分子化合物を少なくとも含む。このような組成物は、後述するように、特に、光電変換素子を構成する光電変換層(又は電極を構成する光電変換層)を形成するための組成物として有用である。
【0019】
(半導体)
半導体は、光電変換可能である限り特に制限されず、有機半導体であってもよいが、耐久性などの点から、無機半導体が好ましく、通常、金属酸化物で構成されている。
【0020】
金属酸化物を構成する金属としては、特に制限されず、例えば、周期表第2族金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)、周期表第3族金属(例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタノイドなど)、周期表第4族金属(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなど)、周期表第5族金属(例えば、バナジウム、ニオブ、タンタルなど)、周期表第6族金属(例えば、クロム、モリブデン、タングステンなど)、周期表第7族金属(例えば、マンガンなど)、周期表第8族金属(例えば、鉄など)、周期表第9族金属(例えば、コバルトなど)、周期表第10族金属(例えば、ニッケルなど)、周期表第11族金属(例えば、銅など)、周期表第12族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第13族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムなど)、周期表第14族金属(例えば、ゲルマニウム、スズなど)、周期表第15族金属(例えば、ヒ素、アンチモン、ビスマスなど)、周期表第16族金属(例えば、テルルなど)などが挙げられる。これらの金属は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。半導体は、他の元素(又はイオン)をドープした半導体であってもよい。
【0021】
半導体は、n型半導体であってもよく、p型半導体であってもよい。特に、後述するイオン性低分子化合物のうち、n型半導体に対してはアニオン性基を有するイオン性低分子化合物、p型半導体に対してはカチオン性基を有するイオン性低分子化合物を組み合わせてもよい。
【0022】
これらのうち、電子伝導性などの点から、n型半導体、例えば、チタン酸カルシウム(CaTiO
3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、酸化チタン、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化タングステン(WO
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO
2)、これらの複合酸化物などが汎用され、光電変換率の点から酸化チタンが特に好ましい。
【0023】
酸化チタンとしては、TiO
2、Ti
2O
5、Ti
2O
3、含水酸化チタン(メタチタン酸、オルトチタン酸など)などが挙げられるが、通常、TiO
2(二酸化チタン)が汎用される。
【0024】
酸化チタンは、無定形であってもよく、結晶形(ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型など)であってもよいが、配向性が高く、酸化チタン間の接触面積を比較的大きくでき、導電性や耐久性を向上できる点から、結晶形(特に、ルチル型及び/又はアナターゼ型)が好ましい。特に、アナターゼ型を用いると、基板に対する密着性を向上でき、ルチル型を用いると、導電性(電荷の輸送性)や耐久性を向上でき、両者を組み合わせてもよい。
【0025】
半導体(例えば、酸化チタンなどの金属酸化物)の形状は、特に限定されず、粒子状、繊維状(又は針状又は棒状)、板状、正八面体状、星状などであってもよい。これらの形状は混在していてもよい。これらのうち、粒子状又は針状が好ましく、粒子状が特に好ましい。
【0026】
半導体の平均一次粒径(繊維状などの異方形状の場合、長径と短径との平均値の平均径)は100μm以下(例えば、50μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは1μm以下)の範囲から選択できる。半導体はナノメータサイズの粒子(特に酸化チタンナノ粒子)であってもよく、平均一次粒径は、例えば、1〜500nm、好ましくは3〜300nm(例えば、5〜100nm)、さらに好ましくは10〜50nm(特に15〜30nm)程度であってもよい。一次粒径が小さすぎると粒子が凝集し導電性が低下しやすく、一次粒径が大きすぎると実効表面積をあまり大きくできない。平均一次粒径は、慣用の方法、例えば、レーザー回折法などにより測定できる。
【0027】
半導体のBET比表面積は、形状などにもよるが、例えば、1〜500m
2/g、好ましくは3〜300m
2/g、さらに好ましくは5〜200m
2/g(特に10〜100m
2/g)程度である。
【0028】
なお、半導体(酸化チタンなど)は、分散液(水分散液など)として、イオン性低分子化合物(及び後述の色素)と混合してもよい。また、半導体は、市販品を利用してもよく、慣用の方法を利用して合成したものを使用してもよい。例えば、酸化チタンの分散液は、特許第4522886号公報などに記載の方法により得ることができる。
【0029】
(イオン性低分子化合物)
本発明では、前記半導体に対して、複数のイオン性基を有するイオン性低分子化合物を組み合わせることにより、半導体を導電性基板に密着できるとともに、光電変換効率も向上できる。この理由は、明確ではないが、低分子化合物がイオン性基により電荷を輸送する機能を有するとともに、半導体の分散安定性に寄与し、かつ光電変換に悪影響を及ぼさない低分子であるためであると推定できる。
【0030】
イオン性低分子化合物は、単一分子であってもよく、オリゴマーであってもよい。イオン性低分子化合物の分子量(数平均分子量)は10000以下であってもよく、例えば、50〜10000、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは200〜1000(特に300〜900)程度である。分子量は、さらに低分子であってもよく、例えば、50〜900(例えば、80〜800)、好ましくは100〜700(例えば、200〜650)、さらに好ましくは300〜600(特に400〜550)程度である。分子量が大きすぎると、絶縁層として半導体を覆いやすくなるため、電荷の輸送能力が低下し、光電変換効率が低下し易い。なお、数平均分子量の測定方法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で測定できる。
【0031】
イオン性低分子化合物は、分子内に複数のイオン性基を有していればよく、分子内に3以上のイオン性基を有していてもよいが、取り扱い性などの点から、分子内に2つのイオン性基を有するイオン性低分子化合物(特に、炭化水素骨格をベースとする主鎖の両末端に2それぞれ1つのイオン性基を有するイオン性低分子化合物)が好ましい。
【0032】
イオン性基は、アニオン性基、カチオン性基のいずれであってもよく、両基の組み合わせ(両イオン性)であってもよいが、導電性を向上できる点から、通常、アニオン性基、カチオン性基のいずれか一方の基である。アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基(スルホ基)、リン酸基などの酸基が挙げられる。アニオン性基は、複数種のアニオン性基の組み合わせであってもよい。カチオン性基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、第4級アンモニウム塩基などが挙げられる。カチオン性基も複数種のカチオン性基の組み合わせであってもよい。これらのイオン性基のうち、導電性を向上できる点から、アニオン性基が好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。
【0033】
第4級アンモニウム塩基以外のイオン性基も塩の形態であってもよい。カルボキシル基の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩;カルシウムなどのアルカリ土類金属塩;ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン類との塩;アンモニウム塩などが挙げられる。スルホン酸基の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩などが挙げられる。アミノ基の場合、第4級アンモニウム塩基と同様に、例えば、塩酸、臭素酸などのハロゲン化水素酸との塩などが挙げられる。
【0034】
イオン性低分子化合物の骨格は、通常、炭化水素骨格をベースとしており、脂肪族炭化水素骨格(例えば、メタン、エタン、ブタン、ヘキサン、オクタン、ドデカンC
1−20アルカン骨格、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどのC
2−20アルケンなど)、脂環式炭化水素骨格(例えば、シクロヘキサンなどのC
3−20シクロアルカン骨格、シクロヘキセンなどのC
3−20シクロアルケン骨格、ノルボルネンなどのC
5−20ビシクロアルケン骨格など)、芳香族炭化水素骨格(例えば、ベンゼン、ナフタレンなどのC
6−20アレーン骨格など)などをベースとして形成されている。これらのうち、半導体の光電変換効率を向上できる点から、脂肪族炭化水素骨格が好ましい。さらに、脂肪族炭化水素骨格(特にアルカン骨格)の炭素数は、半導体の光電変換効率を向上できる点からは小さい方が好ましいが、基材に対する密着性を向上できるとともに、後述するように、所定数の水素原子がフッ素置換されることにより、光電変換層の耐久性を向上できる点から、例えば、3〜20、好ましくは4〜18(例えば、5〜15)、さらに好ましくは6〜12(特に7〜10)程度であってもよく、脂肪族炭化水素骨格は、特に、C
6−10アルカン骨格(特にC
7−9アルカン骨格)であってもよい。
【0035】
イオン性低分子化合物の炭化水素骨格は、光電変換効率及び耐酸化性や耐熱性などの耐久性の点から、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換(フッ素化)されているのが好ましく、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロ炭化水素骨格(特にパーフルオロ脂肪族炭化水素骨格)が特に好ましい。
【0036】
なお、イオン性低分子化合物の炭化水素骨格は、複数のイオン性基に加えて、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、シアノ基、アミド基などの非イオン性基を有していてもよい。
【0037】
具体的に、このようなイオン性低分子化合物は、式:R−(X)
n(式中、Rは炭化水素基又はフルオロ炭化水素基であり、Xはアニオン性基又はカチオン性基であり、nは2〜4の整数である)で表される化合物であってもよい。
【0038】
前記式において、Rの炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。Rとしては、フルオロ炭化水素基が好ましく、フルオロ脂肪族炭化水素基(特にパーフルオロアルカン基)が特に好ましい。
【0039】
Xとしては、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、第4級アンモニウム塩基などが好ましく、カルボキシル基及びスルホン酸基(特にカルボキシル基)が特に好ましい。
【0040】
nとしては、2〜4程度の範囲から選択でき、2〜3(特に2)が好ましい。
【0041】
前記式で表されるイオン性低分子化合物は、カチオン性基を有する化合物であってもよいが、光電変換効率の点から、アニオン性基を有する化合物が好ましい。アニオン性基を有するイオン性低分子化合物には、アルカンポリカルボン酸、アルカンスルホカルボン酸、アルケンポリカルボン酸、シクロアルカンポリカルボン酸、シクロアルケンポリカルボン酸、アレーンポリカルボン酸、アレーンスルホカルボン酸、アレーンポリスルホン酸、及びこれらのフッ素化物などが含まれる。
【0042】
アルカンポリカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸(スベリン酸)、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸などのC
1−20アルカン−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0043】
アルカンスルホカルボン酸としては、例えば、スルホ酢酸などのスルホC
1−20アルカン−モノカルボン酸、スルホコハク酸などのスルホC
1−20アルカン−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0044】
アルケンポリカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC
2−20アルケン−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0045】
シクロアルカンポリカルボン酸としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などのC
3−20シクロアルカン−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0046】
シクロアルケンポリカルボン酸としては、例えば、ハイミック酸などのC
5−20ビシクロアルケン−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0047】
アレーンジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのC
6−20アレーンジカルボン酸;ビスアレーンジカルボン酸(例えば、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸などのビスC
6−20アレーン−ジカルボン酸;トリメリット酸などのC
6−20アレーントリカルボン酸;ピロメリット酸などのC
6−20アレーンテトラカルボン酸などが挙げられる。
【0048】
アレーンスルホカルボン酸としては、例えば、スルホ安息香酸などのスルホC
6−20アレーン−モノカルボン酸;スルホフタル酸などのスルホC
6−20アレーン−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0049】
アレーンポリスルホン酸としては、例えば、ジスルホナフタレンなどのC
6−20アレーン−ジスルホン酸などが挙げられる。
【0050】
これらのイオン性低分子化合物は、前述のように塩の形態であってもよく、特に、カルボン酸は、低級アルキルエステル、アリールエステル、酸無水物などの誘導体であってもよい。
【0051】
これらのイオン性低分子化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。さらに、これらのイオン性低分子化合物は、前述のように、フッ素化されていてもよく、光電変換効率を向上できるとともに、耐酸化性や耐熱性などの耐久性も向上できる点から、フッ素化物が好ましいが、フッ素化物と非フッ素化物との組み合わせであってもよく、フッ素化の程度が異なるフッ素化物同士の組み合わせであってもよい。
【0052】
これらのイオン性低分子化合物のうち、取り扱い性などの点から、ジカルボン酸が汎用され、耐久性と光電変換効率とを両立できる点から、フルオロ脂肪族ジカルボン酸が好ましく、フルオロアルカンジカルボン酸(特にパーフルオロアルカンジカルボン酸)が特に好ましい。さらに、フルオロアルカンジカルボン酸(特にパーフルオロアルカンジカルボン酸)の中でも、フルオロC
2−18アルカン−ジカルボン酸が好ましく、フルオロC
4−16アルカン−ジカルボン酸(特にヘキサデカフルオロセバシン酸などのフルオロC
6−10アルカン−ジカルボン酸)が特に好ましい。
【0053】
イオン性低分子化合物の割合は、半導体1重量部に対して、例えば、0.001〜15重量部(例えば、0.01〜10重量部)、好ましくは0.02〜5重量部(例えば、0.03〜1重量部)、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部(特に0.1〜0.3重量部)程度である。イオン性低分子化合物の割合が少なすぎると、導電性基板に対する光電変換層の密着性が低下し易い、多すぎると、光電変換効率が低下し易い。
【0054】
本発明では、前記イオン性低分子化合物に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、他のイオン性化合物、例えば、分子内に1つのイオン性基を有するイオン性低分子化合物(脂肪族モノカルボン酸、フルオロ脂肪族モノカルボン酸など)、イオン性高分子(分子量100以上の脂肪族ジカルボン酸、分子量100以上のフルオロ脂肪族ジカルボン酸など)を含んでいてもよい。他のイオン性化合物の割合は、イオン性低分子化合物100重量部に対して50重量部以下(例えば、0〜50重量部)、好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下(例えば、0.1〜10重量部程度)であってもよい。
【0055】
(色素)
本発明の組成物は、さらに色素を含んでいてもよい。色素を含有させると、色素増感型の光電変換層又は色素増感型の光電変換素子(色素増感太陽電池など)を効率よく形成できる。
【0056】
色素(染料、顔料)は、増感剤(増感色素、光増感色素)として機能する成分(又は増感作用を示す成分)であれば特に限定されず、有機色素、無機色素に分類される。
【0057】
無機色素としては、例えば、炭素系顔料、クロム酸塩系顔料、カドミウム系顔料、フェロシアン化物系顔料、金属酸化物系顔料、ケイ酸塩系顔料、リン酸塩系顔料などが挙げられる。
【0058】
有機色素(有機染料又は有機顔料)としては、例えば、ルテニウム錯体色素{例えば、ルテニウムのビピリジン錯体[例えば、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)ビステトラブチルアンモニウム(別名:N719)、シス−ビス(イソチオシアナト)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)、シス−ビス(シアニド)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)、トリス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)ジクロリドなど]、ルテニウムのターピリジン錯体[例えば、トリス(イソチオシアナト)ルテニウム(II)−2,2’:6’,2’’−ターピリジン−4,4’,4’’−トリカルボン酸 トリステトラブチルアンモニウム塩など]などのルテニウムのピリジン系錯体}、オスミウム錯体色素、ポルフィリン系色素(マグネシウムポルフィリン、亜鉛ポルフィリンなど)、クロロフィル系色素(クロロフィルなど)、キサンテン系色素(ローダミンB、エリスロシンなど)、シアニン系色素(メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなど)、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、クマリン系色素、キノン系色素、アントラキノン系色素、スクアリリウム系色素、アゾメチン系色素、キノフタロン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリン系色素、ニトロソ系色素、ピロロピロール系色素、塩基性色素(メチレンブルーなど)などが挙げられる。
【0059】
これらの色素は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの色素のうち、有機色素(特にルテニウム錯体色素)が好ましい。また、カルボキシル基、エステル基、スルホ基などの官能基を配位子として有する色素(例えば、N719などのカルボキシル基を有するルテニウム色素)も好ましい。このような配位子を有する色素は、酸化チタンなどの半導体表面と結合しやすく、脱離しにくいため好適である。
【0060】
なお、色素は、通常、半導体(又は半導体表面)に付着した(又は固定化された)形態で光電変換層(又は光電変換素子)に含まれる。付着(又は固定化)の態様としては、吸着(物理吸着)、化学結合などが挙げられる。そのため、色素は、半導体に対して付着しやすい色素を好適に選択してもよい。
【0061】
色素の割合は、半導体1重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.5重量部、さらに好ましくは0.01〜0.2重量部(特に0.02〜0.1重量部)程度であってもよい。
【0062】
(溶媒)
本発明の組成物は、溶媒を含む組成物(コーティング組成物)であってもよい。溶媒としては、特に限定されず、有機溶媒[例えば、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルカノール類)、芳香族系溶媒(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートなどの酢酸エステル類)、ラクトン系溶媒(β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、σ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン類)、ケトン系溶媒(例えば、アセトンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類)、エーテル系溶媒(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロアルカン類)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、ニトロ系溶媒(例えば、ニトロベンゼンなど)など]、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの溶媒のうち、γ−ブチロラクトンなどのC
3−10ラクトンが汎用される。
【0063】
溶媒を含む組成物において、固形分(又は不揮発性成分)の割合は、光電変換層を形成する際のコーティング方法などに応じて適宜選択でき、例えば、0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜40重量%(特に10〜30重量%)程度であってもよい。本発明では、比較的イオン性低分子化合物の割合を大きくできるので、半導体を含む固形分が高濃度であっても、半導体の分散安定性を十分に担保できる。
【0064】
また、溶媒を含む組成物のpHは、特に限定されないが、前記のようにイオン性低分子化合物の種類や、半導体とのイオン性低分子化合物との組み合わせに応じて、適当な範囲を選択してもよい。例えば、イオン性低分子化合物をアニオン性低分子化合物で構成する場合、溶媒を含む組成物のpH(25℃)は、10以下(例えば、0.1〜8)の範囲から選択してもよく、例えば、7未満(例えば、0.15〜6.5)、好ましくは6以下(例えば、0.2〜5)、さらに好ましくは4以下(例えば、0.3〜3)であってもよい。
【0065】
(組成物の調製方法)
本発明の組成物は、各成分(半導体、イオン性低分子化合物、必要に応じて色素など)を混合することにより得ることができる。例えば、溶媒を含む組成物は、各成分を溶媒中で混合することで調製してもよく、予め各成分(例えば、半導体及びイオン性低分子化合物)を混合した後、溶媒に混合(又は分散)させて調製してもよい。なお、前述のように、酸化チタンなどの半導体は、予め溶媒に分散させた分散液の形態で、イオン性低分子化合物(及び色素)と混合してもよい。なお、前述のように、組成物のpHを調整する場合、pHの調整は適当な段階で行うことができ、例えば、半導体の分散液中のpHを予め前記範囲となるように調整して、イオン性低分子化合物(及び色素)と混合してもよく、半導体(又はその分散液)とイオン性低分子化合物(及び色素)との混合系において組成物のpHを調整してもよい。
【0066】
また、色素は、半導体及びイオン性低分子化合物と予め混合してもよく、基板に半導体及びイオン性低分子化合物を含む組成物を塗布して形成された塗膜に、色素をコーティング(付着)させることもできる。本発明では、後述のように、半導体を焼結(焼成)させる必要がないため、予め半導体及びイオン性低分子化合物と混合することが可能である。
【0067】
[積層体及びその製造方法]
本発明の組成物は、光電変換層(又は光電変換素子を構成する光電変換層)を形成するための組成物として有用である。このような光電変換層は、通常、基板上に形成される。すなわち、光電変換層は、基板とともに積層体(電極)を構成する。
【0068】
本発明の積層体(電極)は、基板とこの基板上に積層された光電変換層(前記組成物で形成された光電変換層)とを含む。
【0069】
基板は、用途にもよるが、通常、導電性基板であってもよい。導電性基板は、導電体(又は導電体層)のみで構成してもよいが、通常、ベースとなる基板(ベース基板)上に導電体層(又は導電層又は導電膜)が形成された基板などが挙げられる。なお、このような場合、光電変換層は、導電体層上に形成される。
【0070】
導電体(導電剤)としては、用途に応じて適宜選択できるが、例えば、導電性金属酸化物[例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、アンチモンドープ金属酸化物(アンチモンドープ酸化錫など)、錫ドープ金属酸化物(錫ドープ酸化インジウムなど)、アルミニウムドープ金属酸化物(アルミニウムドープ酸化亜鉛など)、ガリウムドープ金属酸化物(ガリウムドープ酸化亜鉛など)、フッ素ドープ金属酸化物(フッ素ドープ酸化スズなど)など]などの導電体が挙げられる。これらの導電体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、導電体は、通常、透明導電体であってもよい。
【0071】
ベース基板としては、無機基板(例えば、ガラスなど)、有機基板[例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、セルロース系樹脂(セルローストリアセテートなど)、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルスルホンなど)、ポリスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィドなど)、ポリイミド樹脂などのプラスチックで形成された基板又はフィルム(プラスチック基板又はプラスチックフィルム)など]などが挙げられる。本発明では、半導体の焼結工程が不要であるため、ベース基板としてプラスチック基板(プラスチックフィルム)を用いることが可能である。
【0072】
光電変換層は、前記組成物を基板(導電体層)上に塗布(又はコーティング)することにより形成できる。塗布方法としては、特に限定されず、例えば、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、ドクターブレード法、スキージ法、ディップコート法、スプレー法、スピンコート法、インクジェット印刷法などが例示できる。塗布後、所定の温度(例えば、室温〜150℃程度)で乾燥させてもよい。
【0073】
なお、色素は、前述のように、半導体及びイオン性低分子化合物を基板上に塗布した後、半導体及びイオン性低分子化合物を含む塗膜に色素を付着させることで光電変換層に含有させてもよい。色素を付着させる方法としては、色素を含む溶液を塗膜に噴霧する方法、色素を含む溶液に塗膜を形成した基板を浸漬する方法などが挙げられる。なお、噴霧又は浸漬後、前記と同様に乾燥させてもよい。
【0074】
なお、本発明では、組成物を基板上に塗布した後、半導体を焼結(又は焼成)させることなく[又は高温(例えば、400℃以上)で加熱処理することなく]、光電変換層を形成する。本発明では、このような焼結工程を経なくても、優れた光電変換特性を有する光電変換層を形成できる。しかも、焼結すると半導体の比表面積は小さくなるが、本発明では焼結しなくても光電変換層を形成できるので、半導体由来の表面積を維持できる。
【0075】
このようにして光電変換層が基板(導電性基板)上に形成され、電極(積層体)が得られる。電極の厚みは、例えば、0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは1〜30μm程度であってもよい。また、光電変換層の厚みは、例えば、0.1〜100μm、好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは3〜20μm程度であってもよい。
【0076】
このようにして得られた積層体は、導電体層と光電変換層とを有しており、光電変換素子を構成する電極として利用できる。
【0077】
[光電変換素子]
光電変換素子は、前記積層体(電極)を含む。すなわち、光電変換素子(電池)は、前記電極と、この電極に対する対極とを備えている。代表的な光電変換素子の一例としては、太陽電池が挙げられる。特に、光電変換層が色素を含む場合、光電変換素子は、色素増感太陽電池を形成する。
【0078】
太陽電池は、例えば、電極としての積層体と、この電極(電極の光電変換層側)に対向して配置される対極と、これらの電極間に介在し、封止処理された電解質層とで構成されている。すなわち、電解質層(又は電解質)は、両電極(又はその縁部)を封止材[例えば、熱可塑性樹脂(アイオノマー樹脂など)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、シリコーン樹脂など)などで構成された封止材]により封止処理することで形成された空間又は空隙内に介在している(又は封入される)。
【0079】
なお、対極は、電極(又は積層体)を構成する半導体の種類によって、正極又は負極となる。すなわち、半導体がn型半導体であるとき、対極は正極(積層体は負極)を形成し、半導体がp型半導体であるとき、対極は負極(積層体は正極)を形成する。
【0080】
対極は、前記積層体と同様に、導電性基板と、この導電性基板上(又は導電性基板の導電体層上)に形成された触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)とで構成される。なお、導電体層が導電性に加えて還元能力を有している場合、必ずしも触媒層を設ける必要はない。なお、対極は、導電体層又は触媒層の面を積層体(又は電極)と対向させる。対極において、導電性基板は、前記と同様の基板の他、後述のようにベース基板上に導電体層と触媒層とを兼ね備えた層(導電触媒層)を形成した基板などであってもよい。また、触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)は、特に限定されず、導電性金属(金、白金など)、カーボンなどで形成できる。
【0081】
触媒層は、非多孔質層(又は非多孔性層)であってもよく、多孔質構造を有する層(多孔質層)であってもよい。このような多孔質触媒層は、多孔性触媒成分(多孔質触媒成分)で構成されていてもよく、多孔性成分(多孔質成分)とこの多孔性成分に担持された触媒成分とで構成してもよく、これらを組み合わせて構成してもよい。すなわち、多孔性触媒成分は、多孔性を有するとともに、触媒成分として機能する成分(多孔性と触媒機能とを兼ね備えた成分)である。なお、後者の態様において、多孔性成分は、触媒機能を備えていてもよい。
【0082】
多孔性触媒成分としては、例えば、金属微粒子(例えば、白金黒など)、多孔質カーボン[活性炭、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ集合体)など]などが挙げられる。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。多孔質触媒成分のうち、活性炭などを好適に用いることができる。
【0083】
多孔性成分としては、多孔質カーボンの他、金属化合物粒子[例えば、前記例示の導電性金属酸化物(例えば、錫ドープ酸化インジウムなど)の粒子(微粒子)など]などが挙げられる。これらの成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、触媒成分としては、導電性金属(例えば、金、白金)などが挙げられる。
【0084】
多孔性成分の形状(又は形態)は、特に限定されず、粒子状、繊維状などであってもよく、好ましくは粒子状である。
【0085】
粒子状の多孔性成分の平均粒径は、例えば、1〜1000μm、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜300μm(特に50〜100μm)程度である。
【0086】
多孔性成分のBET比表面積は、例えば、1〜4000m
2/g、好ましくは10〜3000m
2/g、さらに好ましくは50〜2000m
2/g(特に100〜1000m
2/g)程度である。
【0087】
なお、多孔質層(多孔質触媒層)は、必要に応じて、バインダー成分[例えば、樹脂成分[例えば、セルロース誘導体(メチルセルロース)などの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂]などを含んでいてもよい。
【0088】
バインダー成分の割合は、多孔質層全体に対して、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%程度である。
【0089】
多孔質層を有する電極は、少なくとも多孔質層を備えていればよく、通常、少なくとも基板(導電性基板であってもよい基板)と多孔質触媒層とで少なくとも構成されている。代表的な多孔質層を有する電極としては、(i)導電性基板(ベース基板上に導電体層が形成された基板、前記例示の導電性基板など)と、この導電性基板(又は導電体層)上に形成され、多孔性触媒成分で構成された多孔質触媒層とで構成された電極(又は積層体)、(ii)ベース基板(前記例示のベース基板など)と、このベース基板上に形成され、多孔性成分及び触媒成分(例えば、触媒成分が担持された多孔性成分)で構成された多孔質触媒層とで構成された電極(又は積層体)などが挙げられる。
【0090】
多孔質層(多孔質触媒層)の厚みは、例えば、0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは1〜30μm程度である。
【0091】
電解質層は、電解質と溶媒とを含む電解液で形成してもよく、電解質を含む固体層(又はゲル)で形成してもよい。電解液を構成する電解質としては、特に限定されず、汎用の電解質、例えば、ハロゲン(ハロゲン分子)とハロゲン化物塩との組み合わせ[例えば、臭素と臭化物塩との組み合わせ、ヨウ素とヨウ化物塩との組み合わせなど]などが挙げられる。ハロゲン化物塩を構成するカウンターイオン(カチオン)としては、金属イオン[例えば、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなど)など]、第4級アンモニウムイオン[テトラアルキルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩(例えば、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム塩)など]などが挙げられる。電解質は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0092】
これらのうち、好ましい電解質には、ヨウ素とヨウ化物塩との組み合わせ、特に、ヨウ素とヨウ化金属塩[例えば、アルカリ金属塩(ヨウ化リチウムなど)、第4級アンモニウム塩など]との組み合わせが挙げられる。
【0093】
電解液を構成する溶媒としては、特に限定されず、汎用の溶媒を用いることができ、例えば、アルコール類(エタノールなどのアルカノール類、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類)、ニトリル類(アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、ラクトン類(γ−ブチロラクトンなど)、エーテル類(ジメチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、スルホラン類、スルホキシド類、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、水などが挙げられる。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0094】
電解液を構成する成分はpH調整に影響を及ぼさない成分を使用してもよい。例えば、イオン性低分子化合物をアニオン性低分子化合物で構成する場合、電解液として、中性溶媒又は非塩基性溶媒(例えば、非アミン系溶媒)を使用してもよい。
【0095】
電解液において、電解質の濃度は、例えば、0.01〜10M、好ましくは0.03〜8M、さらに好ましくは0.05〜5M程度であってもよい。また、ハロゲン(ヨウ素など)とハロゲン化物塩(ヨウ化物塩など)とを組み合わせる場合、これらの割合は、ハロゲン/ハロゲン化物塩(モル比)=1/0.5〜1/100、好ましくは1/1〜1/50、さらに好ましくは1/2〜1/30程度であってもよい。
【0096】
電解質を含む固体層を構成する電解質としては、前記例示の電解質の他、固体状電解質{例えば、樹脂成分[例えば、チオフェン系重合体(例えば、ポリチオフェンなど)、カルバゾール系重合体(例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)など)など]、低分子有機成分(例えば、ナフタレン、アントラセン、フタロシアニンなど)などの有機固体成分;ヨウ化銀などの無機固体成分など}などが挙げられる。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0097】
なお、固体層は、前記電解質や電解液をゲル基材[例えば、熱可塑性樹脂(ポリエチレングリコール、ポリメチルメタクリレートなど)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)など]に保持した固体層であってもよい。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)
酸化チタン粒子(日本アエロジル(株)製「P25」、平均一次粒径21nm、BET比表面積50±15m
2/g)30重量部、ヘキサデカフルオロセバシン酸(東京化成工業(株)製)5重量部及びγ―ブチロラクトン(東京化成工業(株)製)190重量部を混合して酸化チタン分散液を調製した。
【0100】
得られた酸化チタン粒子分散液を、スキージ法によりITO付ガラス基板(ジオマテック(株)製、10Ω/sq)のITO層側に塗布したのち、大気中110℃で乾燥させ、余分な酸化チタンを削り落とし、4mm角で厚み5μmの酸化チタン膜を得た。
【0101】
乾燥後の基板を色素溶液[N719色素(東京化成工業(株)製)のアセトニトリル/ブタノール混合溶液(濃度0.5重量%)]に1日浸漬させた。浸漬後、基板をメタノールで洗浄、乾燥させて色素吸着酸化チタン電極を得た。
【0102】
得られた色素吸着酸化チタン電極のITO層側(色素吸着側)と、対極としてスパッタリング法によりITO層側に形成された白金薄膜(厚み0.003μm)を備えたITO付ガラス基板(ジオマテック(株)製、10Ω/sq)のITO層側(白金薄膜側)とを厚さ50μmで4mm口の開口を有するスペーサ(三井・デュポンポリケミカル(株)製「ハイミラン」)を介して挟み、両基板(両電極又は両ITO層)間に形成された空隙(封止材で封止された空間)内に電解液を充填し、色素増感太陽電池を作製した。なお、電解液には、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージドを0.5M、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M含むアセトニトリル溶液を用いた。
【0103】
得られた色素増感太陽電池をソーラーシミュレーター(三永電機製作所(株)製「XES-301S+EL-100」)を用い、AM 1.5、100mW/cm
2、25℃の条件で評価した。
【0104】
(実施例2)
実施例1において、ヘキサデカフルオロセバシン酸の割合を15重量部にした以外は、実施例1と同様にして、色素増感太陽電池を作製し評価した。
【0105】
(実施例3)
酸化チタン粒子(P25)30重量部、ヘキサデカフルオロセバシン酸5重量部、N719色素1重量部及びγ―ブチロラクトン190重量部を混合して酸化チタン分散液を調製した。
【0106】
得られた酸化チタン粒子分散液を、スキージ法によりITO付ガラス基板(ジオマテック(株)製、10Ω/sq)のITO層側に塗布した後、大気中110℃で乾燥させ、余分な酸化チタンを削り落とし、4mm角で厚み5μmの色素吸着酸化チタン電極を得た。
【0107】
得られた色素吸着酸化チタン電極のITO層側(色素吸着側)と、対極としてスパッタリング法によりITO層側に形成された白金薄膜(厚み0.003μm)を備えたITO付ガラス基板のITO層側(白金薄膜側)とをスペーサ(ハイミラン)を介して挟み、両基板(両電極又は両ITO層)間に形成された空隙(封止材で封止された空間)内に電解液を充填し、色素増感太陽電池を作製した。なお、電解液には、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージドを0.5M、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M含むアセトニトリル溶液を用いた。
【0108】
得られた色素増感太陽電池をソーラーシミュレーター(XES-301S+EL-100)を用い、AM 1.5、100mW/cm
2、25℃の条件で評価した。
【0109】
(実施例4)
実施例1において、ヘキサデカフルオロセバシン酸に代えてアジピン酸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、色素増感太陽電池を作製し評価した。
【0110】
(実施例5)
実施例1において、ヘキサデカフルオロセバシン酸に代えてテトラフルオロテレフタル酸を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、色素増感太陽電池を作製し評価した。
【0111】
実施例1〜5で作製した太陽電池の出力特性を
図1に示す。