(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記の工程1及び工程2を有するインクジェット記録用水系インクの製造方法であって、工程1より後にフミン酸の含有量を調整する工程を有し、インクジェット記録用水系インク中のフミン酸の含有量が0.1質量%以上0.5質量%以下である、インクジェット記録用水系インクの製造方法。
工程1 自己分散型顔料を水に分散させて、水分散体を得る工程
工程2 工程1で得られた水分散体と、有機溶媒とを混合してインクジェット記録用水系インクを得る工程
前記フミン酸の含有量を調整する工程が、前記工程1で得られた水分散体、又は前記工程2で得られた水系インクにフミン酸を添加する工程である、請求項1に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[インクジェット記録用水系インクの製造方法]
本発明のインクジェット記録用水系インク(以下、単に「水系インク」ともいう)の製造方法は、下記の工程1及び工程2を有するインクジェット記録用水系インクの製造方法であって、工程1より後にフミン酸の含有量を調整する工程を有し、インクジェット記録用水系インク中のフミン酸の含有量が0.1質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする。
工程1 自己分散型顔料を水に分散させて、水分散体を得る工程
工程2 工程1で得られた水分散体と、有機溶媒とを混合してインクジェット記録用水系インクを得る工程
【0009】
本発明の製造方法により、耐熱性に優れ、かつアクチュエータの金属腐食抑制に適したインクジェット記録用水系インクが得られる理由は、以下のように考えられる。
アクチュエータの部材にはアルミニウム等の軽金属部材が一般的に使用されており、該軽金属と、水系インク中に含まれるフミン酸とが酸化反応することにより、軽金属の表面に適度な酸化被膜が形成され、軽金属の腐食が抑制されると考えられる。
また、水系インク中のフミン酸含有量を、特定の製造工程において、適正な範囲に制御することにより、フミン酸の緩衝作用で水系インク中の塩濃度の上昇を抑制し、自己分散型顔料とサーマル方式のアクチュエータの加熱部(ヒータ)との電荷反発が維持されることにより、自己分散型顔料がヒータにより直接加熱されることが抑制され、該軽金属の腐食抑制と耐熱性に優れる水系インクを得ることができると考えられる。
【0010】
<工程1>
工程1は、自己分散型顔料を水に分散させて、水分散体を得る工程である。
【0011】
(自己分散型顔料)
自己分散型顔料は、アニオン性親水基、カチオン性親水基等の親水性官能基の1種以上を直接又は他の原子団を介して顔料の表面に結合させることで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水系媒体に分散可能である顔料を意味する。ここで、「分散可能」とは、水中に濃度10質量%となるように分散させた状態が、25℃で1ケ月間保存後も安定に存在することを目視で確認できることを意味する。
他の原子団としては、炭素数1以上24以下、好ましくは炭素数1以上12以下のアルカンジイル基、置換基を有してもよいフェニレン基又は置換基を有してもよいナフチレン基が挙げられる。なお、親水性官能基は、本発明の目的を阻害しない限り複数存在していてもよく、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0012】
前記アニオン性親水基としては、顔料粒子を水系媒体に安定に分散し得る程度に十分に親水性が高いものであれば、任意のものを用いることができる。その具体例としては、カルボキシ基(−COOM
1)、スルホン酸基(−SO
3M
1)、−SO
2NH
2、−SO
2NHCOR
1、ホスホン酸基(−PO
3M
12)又はそれらの解離したイオン形(−COO
-、−SO
3-、−PO
32-、−PO
3-M
1)等の酸性基が挙げられる。
上記化学式中、M
1は、同一でも異なってもよく、具体的には、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;アンモニウム;モノメチルアンモニウム基、ジメチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基;モノエチルアンモニウム基、ジエチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基;モノメタノールアンモニウム基、ジメタノールアンモニウム基、トリメタノールアンモニウム基等の有機アンモニウム等が挙げられる。
R
1は、炭素数1以上12以下のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基である。
前記カチオン性親水基としては、アンモニウム基、アミノ基等が挙げられる。これらの中でも、アンモニウム基が好ましく、第4級アンモニウム基がより好ましい。
これらの親水性官能基の中では、水系インク中の他の配合物との混合性の観点から、アニオン性親水基が好ましく、吐出信頼性を向上させる観点から、カルボキシ基(−COOM
1)、及びスルホン酸基(−SO
3M
1)から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0013】
自己分散型顔料に用いられる顔料としては、無機顔料、有機顔料、体質顔料等が挙げられる。黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。
顔料を自己分散型顔料とするには、上記の親水性官能基の必要量を、顔料表面に化学結合させればよい。親水性官能基を結合させる方法としては、例えば、硝酸、硫酸、過硫酸、ペルオキソ二硫酸、次亜塩素酸、クロム酸等の酸化性を有する酸類及びそれらの塩、あるいは過酸化水素、窒素酸化物、オゾン等の酸化剤等によってカルボキシ基、スルホン酸基等を導入する直接酸化による方法、過硫酸化合物の熱分解によってスルホン基を導入する方法、カルボキシ基、スルホン基、アミノ基等を有するジアゾニウム塩化合物によって原子団を介して上記の親水性官能基を導入する方法等が挙げられる。
自己分散型顔料の市販品としては、原子団を介したタイプの自己分散型顔料としては、CAB−O−JET 200、同300、同352K、同250C、同260M、同270Y、同450C、同465M、同470Y、同480V(キャボット社製)が挙げられる。
直接酸化法により処理された自己分散型顔料としては、BONJET CW−1、同CW−2(オリヱント化学工業株式会社製)、Aqua−Black 162(東海カーボン株式会社製)、SDP−100、SDP−1000、SDP−2000(SENSIENT社製)等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性の観点から直接酸化法により処理された自己分散型顔料が好ましい。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
【0014】
〔水分散体中の顔料の濃度〕
工程1で得られる水分散体中の顔料の濃度は、アクチュエータの金属腐食抑制の観点、及び水系インクの耐熱性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0015】
(水分散体中の水の含有量)
工程1で得られる水分散体中の水の含有量は、アクチュエータの金属腐食抑制の観点、及び水系インクの耐熱性の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは93質量%以下である。
【0016】
なお、工程1で得られる水分散体とは、水を主成分とする溶媒であればよく、他の溶剤、添加剤等も本発明の効果を損なわない限り、存在していてもよい。
工程1で得られる水分散体中における、自己分散型顔料及び水の合計含有量は、アクチュエータの金属腐食抑制の観点、及び水系インクの耐熱性の観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは100質量%である。
【0017】
<フミン酸の含有量を調整する工程>
フミン酸の含有量を調整する工程は、工程1より後に行う工程であって、本発明の製造方法により得られる水系インク中のフミン酸含有量を、0.1質量%以上0.5質量%以下に調整する工程である。
【0018】
(フミン酸)
フミン酸とは腐植酸とも呼ばれ、土壌中に存在する無定形酸性有機質である。組成は採取原料の違いにより異なるが、元素組成は、例えば、炭素原子が50質量%以上60質量%以下、水素原子が4質量%以上6質量%以下、残りの殆どが酸素原子からなり、芳香族環とカルボキシル基や水酸基等、複数の官能基を有する複合有機酸である。また、このフミン酸は、例えば、カーボンブラックを酸化処理する際にも生じることが知られている。
本発明に用いられるフミン酸としては、土壌中から抽出したフミン酸、及びカーボンブラックの酸化処理から生じたフミン酸から選ばれる1種以上が好ましい。
【0019】
〔導入方法〕
水系インク中にフミン酸を導入する方法は、例えば、(i)土壌中から抽出したフミン酸を、添加により導入する方法、(ii)嵩高い性状であるカーボンブラックの表面及び内部に残存するフミン酸を、エージング処理によって水系インク中に放出させる方法等が挙げられる。
これらの方法の中でも、アクチュエータの金属腐食抑制及び水系インクの耐熱性の観点、並びに製造工程の簡便化の観点からは、(i)添加により導入する方法が好ましく、長期保存後のpH変位を抑制する観点、及びインクに配合する化合物数を低減する観点からは、(ii)エージング処理により導入する方法が好ましい。
これらの導入方法は、得られる水系インク中のフミン酸の含有量が0.1質量%以上0.5質量%以下であれば、複数回行ってもよく、それぞれ単独で、又は組み合わせて行ってもよい。
フミン酸の含有量を調整する工程は、工程1より後であれば特に制限はない。例えば、上記(i)又は(ii)を単独で行う方法としては、工程1で得られた水分散体、工程2で得られた水系インク、又は工程1で得られた水分散体及び工程2で得られた水系インクに対して、フミン酸を1回又は2回以上に分割して添加する方法や、1回又は2回以上エージング処理する方法等が挙げられる。
上記(i)及び(ii)を組み合わせて行う方法としては、前記水分散体、前記水系インク、又は前記水分散体及び前記水系インクに対して、1回又は2回以上エージング処理した後、フミン酸を1回又は2回以上に分割して添加する方法や、フミン酸を1回又は2回以上に分割して添加した後、1回又は2回以上エージング処理する方法等が挙げられる。これらの中でも生産性の観点からは、上記(i)又は(ii)のいずれかを1回行い、フミン酸量を調整する方法が好ましい。
フミン酸の含有量を調整する方法としては、例えば、インク中のフミン酸の含有量を測定し、インク中のフミン酸量が本発明に係る特定範囲となるようにフミン酸をインク中に導入すればよい。
フミン酸の含有量の測定は、実施例に示した検量線を用いた滴定により求める方法が挙げられる。インク中にフミン酸以外の酸や塩基が含まれ、滴定でフミン酸量を測定する場合は、工程1より後のフミン酸以外の酸や塩基を含まない水分散体の状態でフミン酸量を測定し、インクの配合組成から水系インク中の含有量に換算することでフミン酸の含有量を求めることができる。
【0020】
〔(i)添加により導入する方法〕
土壌中より抽出したフミン酸は水に可溶であり、系内に添加することにより導入することが可能である。
添加により導入する方法の場合、前記フミン酸の含有量を調整する工程は、アクチュエータの金属腐食抑制及び水系インクの耐熱性の観点、並びに製造工程の簡便化の観点から、工程1で得られた水分散体、又は工程2で得られた水系インクにフミン酸を添加する工程であることが好ましく、工程1で得られた水分散体にフミン酸を添加する工程であることがより好ましい。
〔(ii)エージング処理により導入する方法〕
エージング処理により導入する方法としては、カーボンブラックを水中で所定時間加熱することにより、カーボンブラックの表面や内部に含まれているフミン酸を水系インク中に放出させて、フミン酸含有量を調整する方法が挙げられる。
【0021】
〔エージング処理温度〕
エージング処理温度は、アクチュエータの金属腐食抑制の観点、及び水系インクの耐熱性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下、より更に好ましくは85℃以下である。
【0022】
〔エージング処理時間〕
エージング処理時間は、アクチュエータの金属腐食抑制の観点、及び水系インクの耐熱性の観点から、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上、更に好ましくは6時間以上であり、そして、インクの生産性の観点から、好ましくは200時間以下、より好ましくは180時間以下、更に好ましくは30時間以下である。
【0023】
〔エージング処理開始時のpH〕
エージング処理開始時のpHはアクチュエータの金属腐食抑制の観点、及び水系インクの耐熱性の観点から、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、そして、好ましくは13以下、より好ましくは12以下である。
【0024】
〔フミン酸の含有量〕
フミン酸の含有量は、アクチュエータの金属腐食抑制の観点、及び水系インクの耐熱性の観点から、上記導入方法により導入した総量が水系インク中、0.1質量%以上0.5質量%以下であり、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上、更に好ましくは0.25質量%以上であり、そして、好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下、更に好ましくは0.35質量%以下である。
【0025】
<工程2>
工程2は、工程1で得られた水分散体と、有機溶媒とを混合してインクジェット記録用水系インクを得る工程である。
【0026】
(有機溶媒)
有機溶媒は、水系インクの湿潤剤、浸透剤として用いられる。このような有機溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類等が挙げられ、グリセリン、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパンが好ましい。
これらの有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記水分散体と、有機溶媒との混合質量比[水分散体/有機溶媒]は、水系インクの保存安定性及び吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
【0027】
(その他の添加剤)
工程2では、必要に応じて、水系インクに通常用いられる、界面活性剤等の分散剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等の粘度調整剤、シリコーン油等の消泡剤、防黴剤、防錆剤等を添加してインク物性を調整することができる。
界面活性剤としては、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
<インクジェット記録用水系インク>
以下、本発明の製造方法により得られるインクジェット記録用水系インクについて説明する。
【0029】
(自己分散型顔料の含有量)
本発明の製造方法により得られる水系インク中の自己分散型顔料の含有量は、アクチュエータの金属腐食抑制の観点、及び水系インクの耐熱性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である。
【0030】
水系インク中の顔料粒子の体積平均粒径は、プリンターのノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは80nm以上、より更に好ましくは100nm以上であり、そして、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは140nm以下である。
なお、顔料粒子の体積平均粒径は大塚電子株式会社製、レーザー粒径解析システム「ELS−6100」を用いて、25℃にて、動的光散乱法により測定することができる。
【0031】
(水の含有量)
水系インク中の水の含有量は、水系インクの保存安定性及び吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
【0032】
(有機溶剤の含有量)
水系インク中の有機溶剤の含有量は、水系インクの保存安定性及び吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
【0033】
(水系インクの静的表面張力)
水系インクの20℃における静的表面張力は、水系インクの吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは25mN/m以上、より好ましくは30mN/m以上、更に好ましくは32mN/m以上であり、そして、好ましくは45mN/m以下、より好ましくは40mN/m以下、更に好ましくは38mN/m以下である。
【0034】
(水系インクの粘度)
本発明の製造方法により得られる水系インクの32℃における粘度は、水系インクの吐出耐久性を向上させる観点から、好ましくは0.5mPa・s以上、より好ましくは1.0mPa・s以上、更に好ましくは1.5mPa・s以上、より更に好ましくは2.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは10mPa・s以下、より好ましくは7mPa・s以下、更に好ましくは4mPa・s以下、より更に好ましくは3mPa・s以下である。
【0035】
[インクジェット記録装置]
本発明のインクジェット記録装置は、本発明の製造方法により得られた水系インクと、前記水系インクが接触する軽金属部材を含むサーマル方式のアクチュエータ(駆動機構)とを有する。
本発明のインクジェット記録装置は、本発明の製造方法により得られた水系インクを用いるため、軽金属部材を含むアクチュエータの水系インクと接触する部分の金属腐食、及び水系インクの焦げ付きを抑制できる。軽金属部材の軽金属としてはアルミニウムが挙げられる。
インクの吐出方式としては、サーマル方式が用いられる。サーマル方式は、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させる方式であり、例えば米国特許第4723129号、米国特許第4740796号に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。より具体的には、特公昭61−59911号公報に記載されている方式等が挙げられる。
本発明のインクジェット記録装置におけるインクの吐出条件としては、以下の条件が好ましく挙げられる。
アクチュエータの加熱部材である抵抗素子表面温度は、サーマルインクジェット記録方式の効率性、及び本発明の効果を顕著に発揮させる観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは250℃以上であり、そして、好ましくは800℃以下、より好ましくは700℃以下、更に好ましくは600℃以下である。
印加電圧は、サーマルインクジェット記録方式の効率性、及び本発明の効果を顕著に発揮させる観点から、好ましくは1V以上、より好ましくは3V以上、更に好ましくは4V以上であり、そして、好ましくは20V以下、より好ましくは15V以下、更に好ましくは10V以下である。
駆動周波数は、耐熱性の観点から、好ましくは1kHz以上、より好ましくは3kHz以上、更に好ましくは5kHz以上であり、そして、好ましくは20kHz以下、より好ましくは18kHz以下、更に好ましくは15kHz以下である。
【0036】
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、本発明の製造方法により得られた水系インクを、前記水系インクが接触する軽金属部材を含むサーマル方式のアクチュエータを有するインクジェット用ヘッドから、記録媒体へ吐出させて画像を形成する画像形成方法である。
本発明の画像形成方法は、本発明の製造方法により得られた水系インクを用いるため、軽金属部材を含むサーマル方式のアクチュエータの水系インクと接触する部分の金属腐食、及び水系インクの焦げ付きを防止しつつ、画像を形成することができる。
本発明の画像形成方法としては、本発明のインクジェット記録装置を用いて画像を形成する方法等が挙げられる。
本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体は、特に制限されないが、紙媒体、フィルムであることが好ましく、紙媒体であることがより好ましい。紙媒体としては、普通紙、フォーム用紙、コート紙、写真用紙等が挙げられる。
【0037】
[金属腐食抑制及び焦げ付き防止方法]
本発明の軽金属部材を含むサーマル方式のアクチュエータの金属腐食抑制及び焦げ付き防止方法は、本発明の製造方法により得られた水系インクを用いる。
本発明の方法は、本発明の製造方法により得られた水系インクを用いるため、軽金属部材を含むサーマル方式のアクチュエータの水系インクと接触する部分の金属腐食、及び水系インクの焦げ付きを効果的に防止することができる。前記軽金属部材の軽金属としてはアルミニウムが挙げられる。
【0038】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のインクジェット記録用水系インクの製造方法、及びその方法により得られた水系インクを用いるインクジェット記録装置、画像形成方法、並びに金属腐食抑制及び焦げ付き防止方法を開示する。
<1> 下記の工程1及び工程2を有するインクジェット記録用水系インクの製造方法であって、工程1より後にフミン酸の含有量を調整する工程を有し、インクジェット記録用水系インク中のフミン酸の含有量が0.1質量%以上0.5質量%以下である、インクジェット記録用水系インクの製造方法。
工程1 自己分散型顔料を水に分散させて、水分散体を得る工程
工程2 工程1で得られた水分散体と、有機溶媒とを混合してインクジェット記録用水系インクを得る工程
【0039】
<2> 前記自己分散型顔料が直接酸化法により処理された顔料である、前記<1>に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<3> 前記顔料がカーボンブラックである、前記<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<4> 前記工程1で得られる水分散体中の顔料の濃度が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である、前記<1>〜<3>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<5> 前記工程1で得られる水分散体中の水の含有量が、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは93質量%以下である、前記<1>〜<4>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<6> 前記工程1で得られる水分散体中における、自己分散型顔料及び水の合計含有量が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは100質量%である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
【0040】
<7> 前記フミン酸の含有量を調整する工程が、前記工程1で得られた水分散体、又は前記工程2で得られた水系インクにフミン酸を添加する工程である、前記<1>〜<6>に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<8> 水系インク中にフミン酸を導入する方法が、好ましくはエージング処理により導入する方法である、前記<1>〜<6>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<9> エージング処理温度が、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下、より更に好ましくは85℃以下である、前記<8>に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<10> エージング処理時間が、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上、更に好ましくは6時間以上であり、そして、好ましくは200時間以下、より好ましくは180時間以下、更に好ましくは30時間以下である、前記<8>又は<9>に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<11> エージング処理開始時のpHが、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、そして、好ましくは13以下、より好ましくは12以下である、前記<8>〜<10>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
【0041】
<12> フミン酸の含有量が、水系インク中、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上、更に好ましくは0.25質量%以上であり、そして、好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下、更に好ましくは0.35質量%以下である、前記<1>〜<11>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<13> 前記水分散体と、有機溶媒との混合質量比[水分散体/有機溶媒]が、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である、前記<1>〜<12>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<14> 水系インク中の自己分散型顔料の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下である、前記<1>〜<13>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<15> 水系インク中の水の含有量が、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である、前記<1>〜<14>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<16> 水系インク中の有機溶剤の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である、前記<1>〜<15>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
【0042】
<17> 前記<1>〜<16>のいずれかに記載の製造方法により得られた水系インクと、前記水系インクが接触する軽金属部材を含むサーマル方式のアクチュエータとを有する、インクジェット記録装置。
<18> 前記軽金属部材の軽金属が、アルミニウムである、前記<17>に記載のインクジェット記録装置。
<19> 前記<1>〜<16>のいずれかに記載の製造方法により得られた水系インクを、前記水系インクが接触する軽金属部材を含むサーマル方式のアクチュエータを有するインクジェット用ヘッドから、記録媒体へ吐出させて画像を形成する、画像形成方法。
<20> 前記軽金属部材の軽金属が、アルミニウムである、前記<19>に記載の画像形成方法。
<21> 前記<1>〜<16>のいずれかに記載の製造方法により得られた水系インクを用いる、前記水系インクが接触する軽金属部材を含むサーマル方式のアクチュエータの金属腐食抑制及び焦げ付き防止方法。
<22> 前記軽金属部材の軽金属が、アルミニウムである、前記<21>に記載のアクチュエータの金属腐食抑制及び焦げ付き防止方法。
<23> 前記<1>〜<16>のいずれかに記載の製造方法により得られた水系インクのインクジェットインクとしての使用。
【実施例】
【0043】
以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
なお、自己分散型顔料の固形分濃度、水系インクの表面張力、及び水系インク中のフミン酸含有量の測定は、以下の方法により行った。
【0044】
(1)自己分散型顔料の固形分濃度の測定
30mlのポリプロピレン製容器(40mmφ、高さ30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
【0045】
(2)自己分散型顔料の体積平均粒径
工程1で得られた水分散体、又は工程2で得られた水系インクを、予め0.2μmのフィルターでろ過したイオン交換水を用いて希釈し、大塚電子株式会社製、レーザー粒径解析システム「ELS−6100」を用いて、25℃にて、動的光散乱法による顔料粒子の体積平均粒径を測定した。
【0046】
(3)水系インクの表面張力
表面張力計(協和界面科学株式会社製、商品名:CBVP−Z)を用いて、白金プレートを5gの水系インクの入った円柱ポリエチレン製容器(直径3.6cm×深さ1.2cm)に浸漬させ、20℃にて水系インクの静的表面張力を測定した。
【0047】
(4)インクの粘度
東機産業株式会社製のE型粘度計RE80を用い、測定温度32℃、測定時間1分、回転数100r/min、ロータは標準(1°34′×R24)を使用して、粘度を測定した。
【0048】
(5)フミン酸含有量
<検量線>
フミン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬)を用いて添加量の異なる水溶液を調製し、後述する酸塩基滴定によりフミン酸含有量に対する検量線を作成した。
<水系インク又は水分散体中のフミン酸量>
水系インク又は水分散体20gを付属の遠心管に充填し、超遠心分離装置(日立工機株式会社製、CP56G)を用い、25,000r/min×3時間(20℃)の条件で超遠心分離処理を行い、上澄み液を得た。得られた上澄み液から2gを秤量し、京都電子工業株式会社製電位差滴定装置AT−610を用いて0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を3〜6ml程度加え完全中和を行った後に、0.1Nの塩酸溶液にて逆滴定を行った。要した滴定量、及び前記検量線から水系インク中のフミン酸含有量を求めた。
水分散体中のフミン酸含有量を測定した場合は、配合組成から水系インク中の含有量に換算した。
【0049】
実施例1
<工程1>
SENSIENT社製自己分散カーボンブラック分散液(固形分濃度15%、体積平均粒径126nm、商品名:SDP−100、直接酸化法により処理された顔料)1000gをスターラーで撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液19.3gを1g/秒の速度で滴下した。次いで顔料の濃度を測定し、イオン交換水で顔料の濃度が10質量%となるように調整した。
次いで5μmと1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕を用いて順に濾過し、水分散体を得た。
【0050】
<工程2>
上記で得られた水分散液35.7部、フミン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬)0.2部、グリセリン(和光純薬工業株式会社製、試薬)5部、トリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、試薬)5部、トリメチロールプロパン(和光純薬工業株式会社製、試薬)7部、界面活性剤(日信化学工業株式会社製、オルフィンE1010:アセチレンジオールのエチレンオキシド(10モル)付加物)0.5部、防黴剤(アーチケミカルズジャパン株式会社製、プロキセルLV(S):1,2−ベンゾイソチアゾール−3(2H)−オン、有効分20%)0.1部、及び顔料の濃度が表1に示す値になるようにイオン交換水を添加、混合し、得られた混合液を0.45μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、水系インクを得た。実施例1で得られた水系インクの20℃における表面張力は36mN/m、32℃における粘度が2.3mPa・sであった。
【0051】
実施例2〜7、比較例1〜2
実施例1において、カーボンブラック種、フミン酸添加量、及び水系インク組成を表1に示す条件に変えた以外は、実施例1と同様にして、水系インクを得た。なお、実施例7で用いたカーボンブラック(商品名:CAB−O−JET300)は、原子団を介したタイプの顔料である。
【0052】
比較例3
<工程1>
0.1μS/cm以下のイオン交換水72.3部にアンモニア0.7部を投入後、撹拌しながらフミン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬)7部を投入した。30分間攪拌してフミン酸を溶解させた後、200メッシュSUSフィルターでろ過を行った。次に得られたろ液を攪拌しながら、デグサ社製カーボンブラック20部(商品名:NIPEX160)を投入した。カーボンブラックが充分に湿潤したら、分散液をスターバースト(スギノマシン社製、形式HJP−20035SB)を用いて、150Mpaの圧力で20パス分散処理を行い、体積平均粒径145nmの水分散体を得た。
<工程2>
実施例1の工程2において、フミン酸を添加しなかったこと以外は、実施例1の工程2と同様にして、水系インクを得た。
【0053】
実施例8
<工程1>
SENSIENT社製自己分散カーボンブラック分散液(固形分濃度15%、体積平均粒径126nm、商品名:SDP−100、直接酸化法により処理された顔料)500gを1Lの耐熱性ガラス瓶に入れ、スターラーで撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を1g/秒の速度で滴下して、表2に記載のpHになるよう、pHメータで測定を行いながら、調整を行った。次いで顔料の濃度を測定し、イオン交換水で顔料の濃度が10質量%となるように調整し、水分散体を得た。
<エージング処理>
工程1で得られた水分散体を、表2に記載のエージング条件にて恒温槽に保存してエージングを行い、エージング処理後の水分散体を得た。
<工程2>
実施例1の工程2において、フミン酸を添加しなかったこと以外は、実施例1の工程2と同様にして、水系インクを得た。
【0054】
実施例9〜15、比較例4
実施例8において、カーボンブラック種、pH、エージング条件、及び水系インク組成を表2に示す条件に変えた以外は、実施例8と同様にして、水系インクを得た。なお、実施例15で用いたカーボンブラック(商品名:CAB−O−JET300)は、原子団を介したタイプの顔料である。
【0055】
実施例1〜15、比較例1〜4で得られた水系インクについて、以下の評価を行った。
(1)抵抗値の増加率(腐食速度)の評価
LGエレクトロニクス社製のサーマルインクジェットプリンター「LPP−6010N」のイエローの中間タンクのインクを詰め替え、温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、Xerox社製の普通紙「Xerox4024」を用いて、抵抗素子温度300℃、印加電圧5v、駆動周波数11kHzの条件でノズル当たり100ミリオン回の吐出を行った。次いで、吐出前後でのアクチュエータの素材であるアルミニウムに5Vの印加電圧を加えた時の抵抗値を測定し、吐出前の抵抗値、及び吐出後の抵抗値の変位から、下記式で求められる1ミリオン回当たりの抵抗値の増加率(%/M)を、腐食速度の評価指標として算出した。なお、単位(%/M)中、Mはミリオン回を意味する。
1ミリオン回当たりの抵抗値の増加率(%/M)=[(100ミリオン回吐出後の抵抗値−100ミリオン回吐出前の抵抗値)/(100ミリオン回吐出前の抵抗値)×100/100]
また、表中の「測定不可」は100ミリオン回に満たずに吐出が出来ない状態となり評価を途中で中止した場合を示す。
【0056】
(2)焦げ付き発生回数(耐熱性)の評価
上記(1)の測定と同じプリンターを用いて、同じ吐出条件にて、印刷を行った。10ミリオン回毎に、吐出後のアクチュエータを光学顕微鏡で観察を繰り返し、ヒータ上に黒い焦げ付きが生じているか確認を行った。吐出及び観察の繰り返しを最大10回行い、焦げ付きが生じたミリオン回数(M)を水系インクの耐熱性の評価指標として評価した。表中の「>100」は100ミリオン回でも焦げ付きが生じなかったことを示す。また、「0」は10ミリオン回に満たずに吐出が出来ない状態となり評価を途中で中止した場合を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
表1、及び表2より、実施例1〜15の水系インクは、比較例1〜4の水系インクに比べて、耐熱性、及びアクチュエータの金属腐食防止効果に優れていることがわかる。また、実施例1及び実施例11(又は、実施例3及び実施例9)を比較すると、インク中のフミン酸の含有量が同じである場合、水分散体にフミン酸を導入する方法の方が、エージングによりフミン酸を導入する方法よりも、腐食速度をより低く抑えられることがわかる。さらに、実施例1及び実施例7(又は、実施例8及び実施例15)を比較すると、直接酸化法により処理された顔料を用いる方が、原子団を介したタイプの顔料を用いるよりも、耐熱性がより優れることがわかる。