特許第6243764号(P6243764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243764
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】可撓性実装モジュール体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/32 20060101AFI20171127BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20171127BHJP
   H05K 3/34 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
   H05K3/32 B
   H05K1/18 L
   H01L21/60 311S
   !H05K3/34 501Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-55163(P2014-55163)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-177180(P2015-177180A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松島 隆行
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/089553(WO,A1)
【文献】 特開2010−126598(JP,A)
【文献】 特開2010−129700(JP,A)
【文献】 特開2011−20399(JP,A)
【文献】 特開2006−245429(JP,A)
【文献】 特開平9−117996(JP,A)
【文献】 特表2005−522361(JP,A)
【文献】 国際公開第01/04228(WO,A1)
【文献】 米国特許第5937512(US,A)
【文献】 米国特許第5972152(US,A)
【文献】 米国特許第6687969(US,B1)
【文献】 特開平6−310839(JP,A)
【文献】 特開平11−65473(JP,A)
【文献】 特開2000−162630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00−3/46
H01L21/60
B32B7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面である配置面(7)に電子部品(9)の実装領域(10)を有する可撓性基板(11)と、導電粒子(19)を含有する熱硬化性の異方性導電膜(12)と、バンプ(13)を有する電子部品(9)とを用意する工程と、
前記実装領域(10)へ前記異方性導電膜(12)を配置する工程と、
前記異方性導電膜(12)上に前記電子部品(9)を配置する工程と、
前記電子部品(9)を加熱及び押圧し、前記電子部品(9)の前記バンプ(13)と前記可撓性基板(11)の実装領域(10)とを電気的に接続する実装工程と、
を有する可撓性実装モジュール体(15)の製造方法において、
前記可撓性基板(11)の前記配置面(7)とは反対側の面である支持面(8)のうち、少なくとも前記実装領域(10)の裏面側に位置する部分に、粘着剤(26)を含有する粘着剤層(21)と基材フィルム(22)とが積層された粘着フィルム(20)を、前記電子部品(9)を前記実装領域(10)と電気的に接続する前に予め貼付しておき、
前記粘着剤層(21)は、前記電子部品(9)の加熱及び押圧の際に、160℃において0.15MPa以上のせん断貯蔵弾性率を有するように、一次粒子径100nm未満のシリカ微粒子(25)が含有されたことを特徴とする可撓性実装モジュール体(15)の製造方法。
【請求項2】
前記支持面(8)のうち、画像表示領域(16)の裏面側に位置する部分に前記接着フィルム(20)を配置することを特徴とする請求項1記載の可撓性実装モジュール体(15)の製造方法。
【請求項3】
前記電子部品(9)を加熱及び押圧する際に、前記電子部品(9)の温度が150℃以上170℃以下の範囲に昇温させる請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の可撓性実装モジュール体(15)の製造方法。
【請求項4】
前記粘着剤層(21)の前記粘着剤(26)のガラス転移温度が、−60℃〜20℃の範囲である請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の可撓性実装モジュール体(15)の製造方法。
【請求項5】
前記粘着剤層(21)の前記粘着剤(26)がニトリルゴムである請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の可撓性実装モジュール体(15)の製造方法。
【請求項6】
前記粘着剤層(21)中のニトリルゴムのアクリルニトリル量が、18〜40.5%である請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の可撓性実装モジュール体(15)の製造方法。
【請求項7】
粉体の状態の前記粘着剤(26)100重量部に対し、前記シリカ微粒子(25)を5重量部以上含有する前記粘着剤(26)の溶液を、前記基材フィルム(22)上に配置して、前記粘着剤層(21)を形成する請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の可撓性実装モジュール体(15)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装した可撓性を有する基板を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
利便性や携帯性の観点から、フィルム液晶ディスプレイやフレキシブル有機ELディスプレイのように、画像表示部が可撓性(フレキシブル性)を有する表示装置が注目されている。
【0003】
このような表示装置は、その本体部品として、可撓性表示基板が使用される。この可撓性表示基板は、可撓性があり透明性の高いプラスチックフィルムのような可撓性基板に、画像を表示する画像表示領域と、画像表示装置の映像信号を処理する電子部品(例えば、ドライバーIC)を実装する実装領域とを有している。そして、電子部品を実装する際には、熱硬化性の異方性導電膜を実装領域に配置して、異方性導電膜上に電子部品を配置し、その後に加熱及び押圧し、固定するのが一般的である。なお、可撓性表示基板の可撓性を更に高めるために、基板となるプラスチックフィルムを薄くしたり、又はその剛性を小さくすると、上記の加熱及び押圧の際に、基板の変形や歪みが発生し、それに基づき、表示画像が劣化する傾向にある。
【0004】
他方、上記の可撓性表示基板とはその分野を異にするが、可撓性基板を使用する点では共通する配線板の分野、すなわちフレキシブルプリント配線板の技術分野では、その配線板の端部に形成される外部端子領域の裏面に補強板(裏打ち板)を貼付することで、その端部に掛かる熱や応力を裏面の補強板で支持させて、他の部品への差込や、配線板上に電子部品を実装するときに生じる歪みや変形を回避する技術がある。
上記の補強板には、具体的に、文献1〜文献3のような熱硬化性タイプの補強板、すなわち熱硬化性シートや、文献4及び文献5のような粘着シートがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−219154号公報
【特許文献2】特開2012−116870号公報
【特許文献3】特開2011−79959号公報
【特許文献4】特開2006−332187号公報
【特許文献5】特開2006−173535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そうすると、上記の可撓性表示基板の実装領域においても、その裏面側に文献1〜5のような補強板により裏打ちし、その後に電子部品を実装することが考えられる。
しかし、文献1〜文献3のような熱硬化性シートを補強板として使用する際、可撓性表示基板の画像表示領域に配置された表示素子(例えば、液晶素子、EL素子)への影響を低減するために、低温で且つ短時間での処理(100℃以下/数分)する必要があるが、上記の熱硬化性シートでは、反応速度が不十分で、必要な程度まで熱硬化しない課題がある。
【0007】
一方、文献4及び5のような粘着シートを補強板とする場合には上述の問題はないものの、異方性導電膜を実装領域に配置してIC等の電子部品を加熱(170℃/5sec)及び加圧すると、粘着シートがその熱で変形を生じ、実装状態が信頼性に欠ける課題がある。特に、IC等に形成された電極又はバンプ下面の異方性導電膜の導電粒子が十分に変形しておらず、加圧の際に、粘着シートが変形して、その結果、該導電粒子に十分な圧力が掛からないものと推察できる。
【0008】
そうすると、文献1〜文献3の熱硬化性シートに代えて、低温接続可能なように反応速度を高めるために、硬化剤を増加させることが考えられるが、それでは熱硬化性シートの保存安定性が低下してしまう。
一方、文献4及び5の粘着シートにおける粘着剤のガラス転移温度を、高めにシフトすることが考えられるが、単にガラス転移温度を高めるだけでは、異方性導電膜を加熱及び加圧により粘着シートの変形は避けられず、また、ガラス転移温度を高めにすると、総じて粘着シートの剥離強度が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するための、本発明の請求項1は、
一方の表面である配置面(7)に電子部品(9)の実装領域(10)を有する可撓性基板(11)と、導電粒子(19)を含有する熱硬化性の異方性導電膜(12)と、バンプ(13)を有する電子部品(9)とを用意する工程と、
前記実装領域(10)へ前記異方性導電膜(12)を配置する工程と、
前記異方性導電膜(12)上に前記電子部品(9)を配置する工程と、
前記電子部品(9)を加熱及び押圧し、前記電子部品(9)の前記バンプ(13)と前記可撓性基板(11)の実装領域(10)とを電気的に接続する実装工程と、
を有する可撓性実装モジュール体(15)の製造方法において、
前記可撓性基板(11)の前記配置面(7)とは反対側の面である支持面(8)のうち、少なくとも前記実装領域(10)の裏面側の部分の位置に、粘着剤(26)を含有する粘着剤層(21)と基材フィルム(22)とが積層された粘着フィルム(20)を、前記電子部品(9)を前記実装領域(10)と電気的に接続する前に予め貼付しておき、
前記粘着剤層(21)は、前記電子部品(9)の加熱及び押圧の際に、160℃において0.15MPa以上のせん断貯蔵弾性率を有するように、一次粒子径100nm未満のシリカ微粒子(25)が含有されたことを特徴とする可撓性実装モジュール体(15)の製造方法である。
前記支持面(8)のうち、前記実装領域(10)の裏面側の部分に加え、前記画像表示領域(16)の裏面側に位置する部分に前記接着フィルム(20)を配置してもよい。
前記電子部品(9)を加熱及び押圧する際に、前記電子部品(9)の温度が150℃以上170℃以下の範囲に昇温させる可撓性実装モジュール体(15)の製造方法である。(請求項3)
【0010】
また、本発明においては、前記粘着剤層(21)の前記粘着剤(26)のガラス転移温度が、−60℃〜20℃の範囲であり(請求項4)、また前記粘着剤(26)はニトリルゴムを選択でき、またニトリル量を所定の範囲とすることができる(請求項5、請求項6)。
粉体の状態の前記粘着剤(26)100重量部に対し、前記シリカ微粒子(25)を5重量部以上含有する前記粘着剤(26)の溶液を、前記基材フィルム(22)上に配置して、前記粘着剤層(21)を形成する可撓性実装モジュール体(15)の製造方法である。(請求項7)
【0011】
上記のような本発明は、フィルム液晶ディスプレイやフレキシブル有機ELディスプレイなどに使用される可撓性表示基板や、フレキシブルプリント配線板などのベース材となる「可撓性基板」の裏側に補強板となる粘着フィルムを貼付し、異方性導電膜を使ってIC等の電子部品を実装する際、当該粘着フィルムの粘着剤層が、所定のせん断貯蔵弾性率を示すように調整されているので、加熱及び押圧の際、IC等の電極によっては粘着剤層の変形が少ない。
また、粘着剤層の所定の材質を選択することで、可撓性基板に対する剥離強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
したがって、本発明の可撓性実装モジュールの製造方法によれば、異方性導電膜により電子部品を加熱押圧する際、補強板として、粘着剤層の変形が少ない粘着フィルムを使用するので、異方性導電膜に存在する導電粒子を変形又は潰れる程度に確実に圧力を加えることができ、モジュールの電気的接続が確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)〜(d):本発明の工程を説明するための図(1)
図2-1】(e)、(f):本発明の工程を説明するための図(2)
図2-2】(e)、(f):支持面のうち、画像表示領域の裏面位置に粘着フィルムを配置しない場合の工程を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2−1(f)の符号15は、本発明によって得られる可撓性実装モジュール体であり、ポリイミドフィルムまたはポリカーボネートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエステルフィルムなどから成る可撓性基板(11)と、集積回路である電子部品(9)と、柔軟性を有する表示装置(5)と、補強板としての粘着フィルム(20)とを有している。
【0015】
ポリイミド又はポリエステルフィルムからなる可撓性基板(11)の片面の配置面(7)には、画像表示領域(16)と実装領域(10)とが設けられており、表示装置(5)は画像表示領域(16)に配置され、電子部品(9)は実装領域(10)に配置されており、電子部品(9)と表示装置(5)とはパターニングされた配線膜(不図示)によって電気的に接続され、電子部品(9)を含む電気回路が表示装置(5)に出力する電気信号によって、表示装置(5)に文字や映像等が表示されるようになっている。
表示装置(5)は、柔軟性を有しており、可撓性基板(11)と一緒に湾曲可能になっている。
【0016】
粘着フィルム(20)は、ポリエステルフィルム、OPPフィルム、PEフィルム、PVAフィルム、PVCフィルムなどのような柔軟性を有する基材フィルム(22)と、基材フィルム(22)上に配置された柔軟性を有する粘着剤層(21)とを有している。符号8は、可撓性基板(11)の配置面(7)とは反対側の面である支持面であり、支持面(8)のうち、実装領域(10)の真裏位置の部分には、粘着剤層(21)が接触して粘着フィルム(20)が貼付されている。
支持面(8)のうち、実装領域(10)の真裏位置の部分に加え、画像表示領域(16)の真裏位置の部分にも接着フィルム(20)が貼付されている。
粘着剤層(21)は、非熱硬化性の樹脂から成る粘着剤(26)と、粘着剤(26)に分散された一次粒子径100nm未満のシリカ微粒子(25)とを有している。
【0017】
直径100nm未満のシリカ微粒子(25)の形状は、特に限定がなく、球状、不定形、燐片状など各種の形状が使用できる。
このようなシリカ微粒子は、例えば、日本アエロジル社のアエロジルシリーズ、及びトクヤマ社のレオロシールシリーズなどの市販品が入手でき、且つ使用可能である。
【0018】
また、非熱硬化性の樹脂には、粘着剤として十分な剥離強度が得られ、異方性導電膜の加熱及び押圧する際に到達する高温時(160℃程度)においても、比較的変形が少ないように、ガラス転移温度が−60℃〜20℃の範囲を有する樹脂から選択することができる。
具体的には、ニトリルゴム(NBR:アクリロニトリルと 1,3-ブタジエンとの共重合体)、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどのゴム系ポリマーや、通常の粘着剤に用いられるアクリルポリマーなど可撓性基板(11)の材質との関係で選択して使用することができる。
【0019】
電子部品(9)を可撓性基板(11)に搭載する手順について説明する。
図1(a)の可撓性基板(11)は、画像表示領域(16)に表示装置(5)が設けられ、電子部品(9)が搭載されていない状態である。この状態の可撓性基板(11)では、配置面(7)の実装領域(10)内に、パターニングされた金属薄膜やITO、IZOなどから成る電極(6)の表面が露出されている。
【0020】
この可撓性基板(11)の支持面(8)のうち、少なくとも実装領域(10)の真裏位置の支持面(8)を粘着剤層(21)に接触させ、粘着フィルム(20)と可撓性基板(11)とを、互いに押圧しながら粘着フィルム(20)を加熱し、粘着フィルム(20)を第一の貼付温度にして、同図(b)に示すように、粘着フィルム(20)を可撓性基板(11)に貼付する。
この貼付の際、粘着剤層(21)の粘着剤は熱硬化性樹脂ではないので、第一の貼付温度は室温に近く、可撓性基板(11)が変形する温度よりも低温である。
【0021】
次いで、同図(c)に示すように、電極(6)上に、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の熱硬化性樹脂組成物中に、導電粒子(19)が分散された異方性導電膜(12)を、電極(6)の表面に接触して配置する。
そして、同図(d)に示すように、異方性導電膜(12)上に電子部品(9)を乗せる。
電子部品(9)には、半導体チップを内蔵する素子本体(14)の底面に、半導体チップと電気的に接続されたバンプ(13)が設けられており、バンプ(13)を可撓性基板(11)側に向けて実装領域(10)上に配置したときに、バンプ(13)と配置面(7)の間に電極(6)が位置するようにされている。
【0022】
粘着フィルム(20)の基材フィルム(22)が台(30)の表面に接触するように、粘着フィルム(20)が貼付された可撓性基板(11)を台(30)上に配置し、電極(6)上にバンプ(13)が位置するように、電子部品(9)を異方性導電膜(12)上に配置し、電子部品(9)の素子本体(14)の表面上に、図2−1(e)に示すように、押圧部材(31)を接触させ、押圧部材(31)によって電子部品(9)を押圧する。
押圧部材(31)の内部には、発熱装置が設けられており、押圧部材(31)は発熱装置によって加熱され、所定温度に昇温されており、電子部品(9)は、押圧のために押圧部材(31)が接触され、熱伝導によって加熱され、昇温する。
【0023】
異方性導電膜(12)はバンプ(13)に接触しており、電子部品(9)が押圧されると、異方性導電膜(12)は、バンプ(13)によって押圧される。この異方性導電膜(12)と、電極(6)と、可撓性基板(11)と、粘着フィルム(20)とは、バンプ(13)と異方性導電膜(12)とが接触する部分と台(30)との間で一直線に並んでおり、台(30)が静止して電子部品(9)が押圧されることで、バンプ(13)と台(30)とが互いに押圧されると、電極(6)と、可撓性基板(11)と、粘着フィルム(20)とも押圧される。また、加熱された電子部品(9)が昇温すると、電子部品(9)からの熱伝導によって、異方性導電膜(12)と、電極(6)と、可撓性基板(11)と、粘着フィルム(20)とも熱伝導によって加熱され、昇温する。
【0024】
押圧された粘着フィルム(20)の粘着剤層(21)では、押圧力によって、粘着剤層(21)中の粘着剤(26)も昇温し軟化して、粘着剤が変形しやすくなる。
異方性導電膜に用いられる導電粒子(19)の樹脂粒子は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の材質が熱硬化性である接着剤特性に合わせて適宜選択される。
【0025】
電子部品(9)が台(30)に押圧されると、バンプ(13)は導電粒子(19)と接触して押圧し、導電粒子(19)を電極(6)に押し付ける。
そのとき、電極(6)の、導電粒子(19)が押し付けられた部分の真下位置では、粘着剤層(21)が強く押圧され、その周囲の粘着剤層(21)よりも、粘着剤(26)が大きく変形してしまう。その結果、粘着剤層(21)と、その上の部分の電極(6)には、周囲よりも窪んだ凹みが発生して、導電粒子(19)が電極(6)の凹みの中に入ると、導電粒子(19)は強く押圧されなくなる。
しかし、本発明では、粘着剤層(21)は、シリカ微粒子(25)を含有しており、せん断貯蔵弾性率が、160℃において0.15MPa以上になるようにされている。
電子部品(9)が押圧されても、押圧された粘着剤(26)は、可撓性基板(11)と基材フィルム(22)との間から押し出されず、粘着剤層(21)と電極(6)には凹みが発生せず、導電粒子(19)は、バンプ(13)と電極(6)に挟まれて潰され、バンプ(13)と電極(6)との間が電気的に接続される。
【0026】
要するに、電子部品(9)が、電子部品(9)上の押圧部材(31)によって加熱及び押圧されると、押圧部材(31)の押圧力によって、バンプ(13)と電極(6)の間に位置する導電粒子(19)が潰されて、バンプ(13)と電極(6)との間の電気的接続が確実な可撓性実装モジュール体(15)が得られる(図2−1(f))。
なお、異方性導電膜(12)によって、電子部品(9)を電極(6)に電気的、機械的に接続するためには、通常、電子部品(9)は、150℃以上170℃以下の範囲に昇温され、粘着フィルム(20)も、それに近い温度に昇温される。
【0027】
従って、本発明に用いる粘着剤層(21)は、シリカ微粒子(25)の含有量を調整することで、電子部品(9)に近い温度に昇温したときのせん断貯蔵弾性率が、0.15MPa以上になるようにすることが望ましい。
具体的には、上記の昇温範囲においては、粘着剤層中に、0.5〜20重量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0028】
他方、粘着剤(26)については、強い粘着力を得るために、ガラス転移温度が、−60℃〜20℃の範囲であることが望ましく、本発明では、流動性が大きい粘着剤(26)であっても、100nm未満のシリカ微粒子(25)を含有させることで、粘着剤層(21)のせん断貯蔵弾性率を0.15MPa以上にしている。
【0029】
また、本発明では、可撓性基板(11)の裏面にポリイミドフィルムが露出していて、そのポリイミドフィルムに粘着剤層(21)が粘着される場合には、粘着剤(26)は、ニトリルゴムであることが望ましく、また、ニトリルゴムのアクリルニトリル量が、18〜40.5%であることが望ましい。
なお、上記のアクリルニトリル量は、結合アクリルニトリル量平均値(JISK 6384)である。
なお、図2−2(e)のように、支持面(8)のうち、実装領域(10)の裏面側に粘着フィルム(20)を配置し、画像表示領域(16)の裏面側の表面を露出させて、画像表示領域(16)の裏面側の表面と、粘着フィルム(20)の基材フィルム(22)とを台(30)に接触させ、実装領域(10)上に配置された電子部品(9)を押圧部材(31)で押圧して、同図(f)に示すように、支持面(8)のうち、画像表示領域(16)の裏面側の部分を露出させ、実装領域(10)の裏面側の部分に粘着フィルム(20)が位置し、画像表示領域(16)の裏面側の部分には位置しない可撓性実装モジュール体15’を得ることもできる。
要するに、本発明は、少なくとも実装領域(10)の真裏位置に粘着フィルム(20)が配置されていればよい。
なお、図2−1(f)のように、画像表示領域(16)の真裏位置の部分にも接着フィルム(20)が貼付されていれば、画像表示領域(16)の裏面側と実装領域(10)の裏面側の両方に粘着フィルム(20)が位置するから、可撓性基板(11)を平坦面上に配置しても、段差等の変形は生じない。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を用いて、更に具体的に説明する。
【0031】
まず、溶剤であるMEK(メチルエチルケトン)中に、アクリロニトリルゴム(NBR−1、結合アクリルニトリル量の中心値が18%)100質量部を溶解させた樹脂溶液を攪拌しながら、一次粒子径12nmのシリカ微粒子(25)(日本アエロジル社、アエロジルR−974)を5質量部ほど添加した後、更に分散処理を行なって、アクリルニトリル樹脂溶液にシリカ微粒子が分散した分散液を得た。
次に、上記の分散液を塗布装置に投入し、基材フィルム(22)(ポリエチレンテレフタレートフィルム、75μm厚)に塗布し、乾燥炉にて上記MEKを揮発させて、厚み約17μm(基材フィルムと合わせて約92μm厚)の粘着剤層(21)が形成された実施例1の粘着フィルム(20)を得た。
【0032】
次に、上記のシリカ微粒子の添加量を、10質量部、15質量部に変えた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2及び実施例3の粘着フィルム(20)を得た。
【0033】
次に、アクリルニトリルゴムにおけるアクリル含有量を、表2のように変えた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4及び実施例5の粘着フィルム(20)を得た。
【0034】
他方、シリカ微粒子を添加しない以外は、実施例1と同様の方法で、比較例としての粘着フィルムを得た。
【0035】
(剥離強度測定)
各実施例の粘着フィルム(20)及び比較例の粘着フィルムを、常温にて、可撓性基板(11)(約10μm厚のポリイミドフィルム基板)に対し、常温で、圧力0.34MPa及び500mm/minの条件にてラミネートしたサンプル片を作成し、そのサンプル片の剥離強度(180℃ピール強度)を、剥離強度測定器(オリエンテック社、テンシロン)を使って測定しその結果を評価した。その際の評価基準は、下記の通りである。
評価基準
12N/2cm以上の場合は「◎」。
8〜12N/2cmの場合は「○」。
5〜8N/2cmの場合は「○〜△」。なお、「○〜△」と評価されても、通常の検査により良品及び不良品を判別することができるから、実質上に使用可能である。
5N/2cm未満の場合は、「×」。
【0036】
(導通抵抗及び圧着状態)
また、可撓性基板(11)(ここでは、約10μm厚みポリイミドフィルムに接続用電極を設けたサンプル基板)の電極(6)の裏面側に各実施例及び比較例の粘着フィルムを上記のサンプル片を作成した条件で貼付し、次いで、その電極(6)上に異方性導電膜(12)(DP3342MS、デクセリアルズ社)を配置し、抵抗値測定用の電子部品(9)を加熱及び圧着(160℃−1MPa−6sec)し、電子部品(9)のバンプ(13)と電極(6)との間の導通抵抗値測定と断面による圧着状態の確認(導電粒子の変形又は潰れ度合い)を、金属顕微鏡により行った。
なお、上記の異方性導電膜(12)に含有されている導電粒子(19)は、樹脂粒子にニッケル/金メッキを施され、その平均粒子径が4μmである。
圧縮状態の評価基準
導電粒子が30%以上圧縮変形又は潰れているものを「○」。
導電粒子が30%の変形に至らないものを「×」。
【0037】
(せん断貯蔵弾性率の測定)
実施例及び比較例の粘着フィルムに対し、粘弾性測定装置(HAAKE社製、品番RS−150)を用いて、160℃におけるせん断貯蔵弾性率G’を得た。
そして、実施例及び比較例の粘着フィルムの粘着剤層の成分を改めて表1に記載すると共に、上記の方法により得られた測定及び観察結果も合わせて表1に記載した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1の通り、シリカ微粒子を含有しない比較例では、ピール強度は◎と良好であるが、シリカ微粒子が含有されておらず、そのためにせん断貯蔵弾性率が低い。その結果、異方性導電膜による導電粒子の変形が不十分になり、バンプと電極との間の電気的接続が十分でないことがわかる。
その一方で、シリカ微粒子が含有され、そのせん断貯蔵弾性率が0.15MPaを超えた粘着剤層をもつ各実施例では、電気的接続及び剥離強度が共に良好なことがわかる。
なお、アクリルニトリル量を18〜40.5%の範囲で使用すると、可撓性基板(11)に対する剥離強度を調整することができ、特に下限側の18%とした場合には被着体がポリイミド基板である場合、高い剥離強度を得られることがわかる。
【符号の説明】
【0041】
7‥‥配置面
8‥‥支持面
9‥‥電子部品
10‥‥実装領域
11‥‥可撓性基板
12‥‥異方性導電膜
13‥‥バンプ
20‥‥粘着フィルム
21‥‥粘着剤層
22‥‥基材フィルム
25‥‥シリカ微粒子
26‥‥粘着剤
図1
図2-1】
図2-2】