(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243768
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】飛翔体及びパラシュートの開傘方法
(51)【国際特許分類】
B64D 17/24 20060101AFI20171127BHJP
B64G 1/62 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
B64D17/24
B64G1/62
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-61762(P2014-61762)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-182642(P2015-182642A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】上野 真也
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−182182(JP,A)
【文献】
特開平1−306397(JP,A)
【文献】
特開平3−152399(JP,A)
【文献】
特開平6−194099(JP,A)
【文献】
実開昭50−91398(JP,U)
【文献】
特開2000−344199(JP,A)
【文献】
米国特許第8006936(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/62
B64D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載したパラシュートを開いて降下する飛翔体であって、
頭部及び尾部を有する飛翔体本体と、
前記飛翔体本体の頭部及び尾部の間の胴部に形成されたパラシュート収納部に収納されるパラシュートと、
前記パラシュート収納部に収納されて該パラシュート収納部の頭部寄りの部位及び前記パラシュートを連結する懸吊索と、
前記懸吊索の中間部及び前記パラシュート収納部の尾部寄りの部位を連結する横吊用索を備え、
前記飛翔体本体の前記パラシュート収納部から引き出した前記パラシュートを開傘させて降下するパラシュート降下状態において、前記懸吊索を前記飛翔体本体の尾部寄りの部位で拘束して該懸吊索のみで前記飛翔体本体を鉛直方向に沿って縦吊りする段階から、前記飛翔体本体の尾部寄りの部位で拘束している前記懸吊索を開放して該懸吊索と前記横吊用索とで前記飛翔体本体を水平に横吊りする段階へ移行させる姿勢変換装置を備えている飛翔体。
【請求項2】
前記懸吊索を2本備え、前記姿勢変換装置は、2本の前記懸吊索を前記飛翔体本体の尾部寄りの部位で互いに間隔をおいて拘束することで、前記飛翔体本体の鉛直方向に沿う縦吊り状態を回転不能に保持する請求項1に記載の飛翔体。
【請求項3】
前記姿勢変換装置は、前記懸吊索が挿通するループ体と、前記ループ体に離脱可能に係止するフックと、前記懸吊索を前記飛翔体本体の尾部寄りの部位に引き寄せた状態のフックをロックして前記懸吊索を拘束すると共に該フックのロック状態を解除して前記懸吊索を前記飛翔体本体の尾部寄りの部位に位置させることで該懸吊索に生じる前記飛翔体本体の尾部から離間する方向の離間荷重によって前記フックを前記ループ体から離脱させるロック機構を具備し、前記ループ体は、前記飛翔体本体の前記パラシュート収納部から前記パラシュートを放出する段階において、前記パラシュート収納部から前記パラシュートに続いて引き出される前記懸吊索のガイドとしても機能する請求項1又は2に記載の飛翔体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の飛翔体のパラシュート開傘方法であって、
前記飛翔体本体の前記パラシュート収納部から引き出した前記パラシュートを開傘させて降下させるに際して、
前記姿勢変換装置によって前記懸吊索を前記飛翔体本体の尾部寄りの部位で拘束して該懸吊索のみで前記飛翔体本体を鉛直方向に沿って縦吊りし、
次いで、前記パラシュートの開傘時における前記飛翔体本体の挙動が落ち着いた時点で前記姿勢変換装置を動作させて、前記飛翔体本体の尾部寄りの部位で拘束している前記懸吊索を開放して該懸吊索と前記横吊用索とで前記飛翔体本体を水平に横吊りする飛翔体のパラシュート開傘方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載したパラシュートを開いて降下する飛翔体及びパラシュートの開傘方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したようなパラシュートを開いて降下する飛翔体としては、例えば、特許文献1に記載された飛翔体がある。
この飛翔体は、推進部を切り離してからパラシュートを開いて降下する回収型のロケットであって、ロケット本体の尾部には、パラシュート収納部が形成されている。このロケット本体の尾部とパラシュートとは、懸吊索で連結されており、懸吊索はパラシュートとともにパラシュート収納部に収納されている。
【0003】
また、このロケットは、ロケット本体の頭部及び尾部の双方とパラシュートとを連結する横吊用索を備えていると共に、懸吊索を切り離す懸吊索分離機構を備えており、横吊用索はロケット本体における頭部及び尾部の間の胴部に沿うようにして折り畳まれた状態で保持されている。
【0004】
このロケットでは、推進部を切り離すのに続いて、ロケット本体のパラシュート収納部からパラシュートを引き出して開傘させる。このパラシュートを開傘させて降下するパラシュート降下の初期段階では、パラシュートの開傘に伴う衝撃を受けたロケット本体の挙動が落ち着くまで懸吊索でロケット本体を鉛直方向に沿って縦吊りし、ロケット本体の挙動が安定した時点において、懸吊索分離機構によって懸吊索を切り離すことで、ロケット本体の胴部に折り畳まれていた横吊用索によってロケット本体を水平に横吊りするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-182182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したロケットは、推進部を切り離して降下する都合上、ロケットと推進部との間に結合分離装置を配置する必要があり、コスト面から結合分離装置を用いずに推進部を付けたまま回収するタイプのロケットの構築が望まれている。
【0007】
しかしながら、燃焼の終了した推進部を保持したまま降下するロケットの場合、その大半がロケット本体の尾部に推進部のノズルが位置することになるので、ロケット本体の尾部にパラシュート収納部を配置することができず、このような推進部を保持したまま降下するロケットの場合には、パラシュートをロケット本体の頭部及び尾部の間の胴部に収納する必要がある。
【0008】
つまり、鉛直方向に沿って降下するロケット本体の胴部からパラシュートを引き出して開傘させるのとほぼ同時に、ロケット本体が横吊用索によって水平に横吊りされることから、すなわち、ロケットの姿勢変更が急激になされることから、例えば、ロケットが尾翼を備えている場合には、横吊用索が尾翼に絡まってしまう虞があるという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0009】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、例えば、尾翼を備えている場合であったとしても、推進部の有無に係らず尾翼にパラシュートの横吊用索が絡まるといった事態が生じる虞がほとんどなく、その結果、パラシュートによる横吊り状態での降下を支障なく行うことが可能な飛翔体及びパラシュートの開傘方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、搭載したパラシュートを開いて降下する飛翔体であって、頭部及び尾部を有する飛翔体本体と、前記飛翔体本体の頭部及び尾部の間の胴部に形成されたパラシュート収納部に収納されるパラシュートと、前記パラシュート収納部に収納されて該パラシュート収納部の頭部寄りの部位及び前記パラシュートを連結する懸吊索と、前記懸吊索の中間部及び前記パラシュート収納部の尾部寄りの部位を連結する横吊用索を備え、前記飛翔体本体の前記パラシュート収納部から引き出した前記パラシュートを開傘させて降下するパラシュート降下状態において、前記懸吊索を前記飛翔体本体の尾部寄りの部位で拘束して該懸吊索のみで前記飛翔体本体を鉛直方向に沿って縦吊りする段階から、前記飛翔体本体の尾部寄りの部位で拘束している前記懸吊索を開放して該懸吊索と前記横吊用索とで前記飛翔体本体を水平に横吊りする段階へ移行させる姿勢変換装置を備えている構成としている。
【0011】
本発明の第2の態様において、前記懸吊索を2本備え、前記姿勢変換装置は、2本の前記懸吊索を前記飛翔体本体の尾部寄りの部位で互いに間隔をおいて拘束することで、前記飛翔体本体の鉛直方向に沿う縦吊り状態を回転不能に保持する構成としている。
【0012】
本発明の第3の態様において、前記姿勢変換装置は、前記懸吊索が挿通するループ体と、前記ループ体に離脱可能に係止するフックと、前記懸吊索を前記飛翔体本体の尾部寄りの部位に引き寄せた状態のフックをロックして前記懸吊索を拘束すると共に該フックのロック状態を解除して前記懸吊索を前記飛翔体本体の尾部寄りの部位に位置させることで該懸吊索に生じる前記飛翔体本体の尾部から離間する方向の離間荷重によって前記フックを前記ループ体から離脱させるロック機構を具備し、前記ループ体は、前記飛翔体本体の前記パラシュート収納部から前記パラシュートを放出する段階において、前記パラシュート収納部から前記パラシュートに続いて引き出される前記懸吊索のガイドとしても機能する構成としている。
【0013】
一方、本発明に係るパラシュート開傘方法は、上記した本発明に係る飛翔体のパラシュート開傘方法であって、前記飛翔体本体の前記パラシュート収納部から引き出した前記パラシュートを開傘させて降下させるに際して、前記姿勢変換装置によって前記懸吊索を前記飛翔体本体の尾部寄りの部位で拘束して該懸吊索のみで前記飛翔体本体を鉛直方向に沿って縦吊りし、次いで、前記パラシュートの開傘時における前記飛翔体本体の挙動が落ち着いた時点で前記姿勢変換装置を動作させて、前記飛翔体本体の尾部寄りの部位で拘束している前記懸吊索を開放して該懸吊索と前記横吊用索とで前記飛翔体本体を水平に横吊りする構成としている。
【0014】
本発明に係る飛翔体及びパラシュート開傘方法において、飛翔体本体の胴部のパラシュート収納部から引き出したパラシュートを開傘させて降下させる場合には、まず、パラシュート収納部の頭部寄りの部位と開傘したパラシュートとを連結する懸吊索を姿勢変換装置によって飛翔体本体の尾部寄りの部位で一旦拘束して、パラシュートの開傘に伴う衝撃を受けて揺れ動く飛翔体本体の挙動が落ち着くまで、この飛翔体本体を懸吊索のみで鉛直方向に沿った状態で縦吊りする。
【0015】
次いで、揺れ動く飛翔体本体の挙動が落ち着いた時点において、姿勢変換装置を動作させて飛翔体本体の尾部寄りの部位で拘束している懸吊索を開放して、懸吊索と横吊用索とで飛翔体本体を水平に横吊りする。
【0016】
このように、本発明に係る飛翔体及びパラシュート開傘方法では、飛翔体本体の胴部のパラシュート収納部からパラシュートを引き出して開傘させた時点において、懸吊索を姿勢変換装置によって飛翔体本体の尾部寄りの部位で一旦拘束して飛翔体本体を縦吊りした後、姿勢変換装置を動作させて懸吊索を開放して飛翔体本体を水平に横吊りするようにしているので、パラシュートの開傘に伴う衝撃を受けて揺れ動く飛翔体本体の挙動が落ち着いてから飛翔体本体の姿勢変更が成されることとなり、例えば、飛翔体が尾翼を備えている場合であったとしても、推進部の有無に係らず尾翼にパラシュートの横吊用索が絡まるといった事態が生じることがほとんどなく、したがって、パラシュートによる横吊り状態での降下が支障なく成されることとなる。
【0017】
この際、懸吊索を2本にして(望ましくは横吊用索も2本にして)、姿勢変換装置によって2本の懸吊索を飛翔体本体の尾部寄りの部位で互いに間隔をおいて拘束すれば、パラシュートが開傘して飛翔体本体の挙動が落ち着くまでの間、飛翔体本体の鉛直方向に沿う縦吊り状態が回転することなく保持されることとなる。
【0018】
また、姿勢変換装置として、飛翔体本体のパラシュート収納部に収納されている懸吊索が挿通するループ体と、このループ体に離脱可能に係止するフックと、このフックのロック及び解除を行うロック機構を具備している構成を採用すると、懸吊索に通したループ体を飛翔体本体の尾部寄りの部位に引き寄せたうえで、このループ体にフックを係止させるだけで懸吊索を飛翔体本体の尾部寄りの部位で拘束し得ることから、姿勢変換装置の簡略化及び小型化が図られることとなる。
【0019】
さらに、パラシュートのパラシュート収納部からの放出時には、懸吊索がパラシュートに追随してパラシュート収納部から引き出されるが、姿勢変換装置のループ体がガイドとしても機能するので、懸吊索は絡むことなく円滑にパラシュート収納部から引き出されることとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に係る飛翔体及び請求項4に係るパラシュート開傘方法では、例えば、尾翼を備えている場合であったとしても、推進部の有無に係らず尾翼にパラシュートの横吊用索が絡まるといった事態が生じる虞がほとんどなく、その結果、パラシュートによる横吊り状態での降下を支障なく行うことができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0021】
また、本発明の請求項2に係る飛翔体では、パラシュートが開傘して飛翔体本体の挙動が落ち着くまでの間、回転を抑えつつ飛翔体本体を鉛直方向に沿って縦吊りすることができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0022】
さらに、本発明の請求項3に係る飛翔体では、姿勢変換装置の簡略化及び小型化を実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る飛翔体の一実施例を示すロケットが鉛直方向に沿って降下する状態を示す側面説明図(a),ロケット本体がパラシュートに縦吊りされて降下する状態を示す側面説明図(b),ロケット本体が縦吊り状態から横吊り状態へ移行する状況を示す側面説明図(c)及びロケット本体がパラシュートに横吊りされて降下する状態を示す側面説明図(d)である。
【
図2】
図1におけるロケットの姿勢変換装置を示す部分斜視説明図である。
【
図3】
図2における姿勢変換装置のA−A線位置に基づく断面説明図(a)及びB−B線位置に基づく断面説明図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る飛翔体を図面に基づいて説明する。
図1〜
図3は、本発明に係る飛翔体の一実施例を示しており、この実施例では、本発明に係る飛翔体が燃焼の終了した推進部を付けたまま回収するタイプのロケットである場合を例に挙げて示す。
【0025】
図1に示すように、このロケット1は、ロケット本体2と、このロケット本体2の頭部3及び尾部4の間の胴部5に形成されたパラシュート収納部6と、尾部に位置するノズル(推進部)7と、複数枚の尾翼8と、パラシュート収納部6に収納されるパラシュート10と、パラシュート収納部6の頭部3寄りの部位(以下頭部連結部6Fと称する)及びパラシュート10を連結する懸吊索11と、この懸吊索11の中間部及びパラシュート収納部6の尾部4寄りの部位(以下尾部連結部6Rと称する)を連結する横吊用索12を備えており、懸吊索11及び横吊用索12は、いずれもコイル状に束ねられた状態でパラシュート10とともにパラシュート収納部6に収納されている。
【0026】
また、このロケット1は、ロケット本体2のパラシュート収納部6から引き出したパラシュート10を開傘させて降下するパラシュート降下の段階において、ロケット本体2の姿勢をパラシュート開傘直後の縦吊り状態(
図1(b)に示す状態)から着地に適した横吊り状態(
図1(d)に示す状態)へ移行させる姿勢変換装置20を備えている。
【0027】
具体的には、懸吊索11をロケット本体2の尾部4寄りの部位(以下拘束点Pと称する)で拘束することで、懸吊索11のみでロケット本体2を鉛直方向に沿って縦吊りし、一方、拘束点Pで拘束している懸吊索11を開放することで、懸吊索11及び横吊用索12の双方でロケット本体2を水平に横吊りするようにしている。
【0028】
この姿勢変換装置20は、
図2及び
図3に示すように、ロケット本体2の胴部5におけるパラシュート収納部6にコイル状に束ねられた状態で収納されている懸吊索11が挿通するループ体21と、このループ体21に離脱可能に係止するフック22と、懸吊索11をロケット本体2の拘束点Pに引き寄せた状態のフック22をロックして懸吊索11を拘束すると共にこのフック22のロック状態を解除することで懸吊索11の拘束を解くロック機構30を具備しており、ループ体21は、ロケット本体2のパラシュート収納部6からパラシュート10を放出する段階において、コイル状に束ねられた状態の懸吊索11を円滑にパラシュート収納部6から引き出すためのガイドとしても機能するようになっている。
【0029】
このロック機構30は、ブラケット9に固定されたサーボモータ31と、このサーボモータ31の出力軸31aに固定されて角度θの範囲で回動するアーム32と、このアーム32の回動により
図3(a)左右方向に往復移動するピン状を成すストッパ33と、基端部がブラケット9にピン34aを介して回動自在に支持されていると共に先端部にストッパ33と嵌合するストッパ受け34bが形成された第1レバー34と、ブラケット9に支持されてフック22とともに回動するトーションバー35と、基端部がトーションバー35に固定された第2レバー36を具備している。
【0030】
このロック機構30では、
図3に実線で示すフック22のロック状態(懸吊索11をロケット本体2の拘束点Pに引き寄せた状態)において、
図3に仮想線で示すように、サーボモータ31の作動によりアーム32を矢印♯1の方向に回動させると、ストッパ33が
図3(a)左方向に移動して第1レバー34のストッパ受け34bから離脱し、このストッパ33のストッパ受け34bからの離脱により、第1レバー34の矢印♯2の方向への回動が可能になるのに続いて、第2レバー36の矢印♯3の方向への回動が可能になる。
【0031】
ここで、フック22のロック状態において、ループ体21には、
図1(b)及び
図2に示すように、懸吊索11をロケット本体2の尾部4寄りの拘束点Pに位置させることで懸吊索11に生じるロケット本体2の尾部4から離間する方向の離間荷重F、すなわち、懸吊索11に負荷される開傘荷重Tの分力である離間荷重F及び引張荷重Rのうちの離間荷重Fが負荷されている。
【0032】
つまり、このロック機構30では、サーボモータ31の作動により第2レバー36とともにトーションバー35及びフック22の矢印♯3の方向への回動を許容し、ループ体21が離間荷重Fによって
図3(b)上方向に移動してフック22から離脱することで、懸吊索11の拘束が解除されるようになっている。
【0033】
さらに、この実施例におけるロケット1は、
図2に示すように、ロケット本体2の頭部連結部6Fとパラシュート10とを連結する懸吊索11を2本備えており、姿勢変換装置20は、2本の懸吊索11,11をロケット本体2の拘束点Pで互いに間隔をおいて拘束することで、ロケット本体2の鉛直方向に沿う縦吊り状態を回転不能に保持するようにしている。
【0034】
この実施例におけるロケット1において、
図1(a)に示すように、鉛直方向に沿うようにして落下するロケット本体2の胴部5のパラシュート収納部6からパラシュート10を放出して開傘させる場合には、まず、
図1(b)及び
図2に示すように、パラシュート収納部6から放出したパラシュート10とロケット本体2の頭部連結部6Fとを連結する懸吊索11の中間部分を姿勢変換装置20のループ体21によってロケット本体2の拘束点Pで一旦拘束して、パラシュート10の開傘に伴う衝撃を受けて揺れ動くロケット本体2の挙動が落ち着くまで、このロケット本体2を懸吊索11のみで鉛直方向に沿った状態で縦吊りする。
【0035】
上記パラシュート10のパラシュート収納部6からの放出時には、コイル状に束ねられた状態の懸吊索11がパラシュート10に追随してパラシュート収納部6から引き出されるが、姿勢変換装置20のループ体21がガイドとしても機能するので、懸吊索11は絡むことなく円滑にパラシュート収納部6から引き出されることとなる。
【0036】
次いで、揺れ動くロケット本体2の挙動が落ち着いた時点において、姿勢変換装置20におけるロック機構30のサーボモータ31の作動により、ストッパ33を第1レバー34のストッパ受け34bから離脱させて、
図3に仮想線で示すように、第2レバー36とともにトーションバー35及びフック22の矢印♯3の方向への回動を許容する。
【0037】
そして、姿勢変換装置20におけるループ体21の離間荷重Fによる
図3(b)上方向への移動によって、
図1(c)に示すように、ループ体21がフック22から離脱することで、拘束点Pで拘束している懸吊索11を開放して、
図1(d)に示すように、懸吊索11と横吊用索12とでロケット本体2を水平に横吊りする。
【0038】
このように、上記した実施例におけるロケット1では、ロケット本体2の胴部5のパラシュート収納部6からパラシュート10を引き出して開傘させた時点において、懸吊索11を姿勢変換装置20によってロケット本体2の拘束点Pで一旦拘束してロケット本体2を縦吊りした後、姿勢変換装置20を動作させて懸吊索11を開放してロケット本体2を水平に横吊りするようにしているので、パラシュート10の開傘に伴う衝撃を受けて揺れ動くロケット本体2の挙動が落ち着いてからロケット本体2の姿勢変更が成されることとなり、尾翼8にパラシュート10の横吊用索12が絡まるといった事態が生じることがほとんどなく、したがって、パラシュート10による横吊り状態での降下が支障なく成されることとなる。
【0039】
この実施例におけるロケット1では、姿勢変換装置20によって2本の懸吊索11,11をロケット本体2の拘束点Pで互いに間隔をおいて拘束するようにしているので、パラシュート10が開傘してロケット本体2の挙動が落ち着くまでの縦吊り状態や、姿勢変換後の横吊り状態がいずれも回転することなく保持されることとなる。
【0040】
また、この実施例におけるロケット1では、姿勢変換装置20として、懸吊索11が挿通するループ体21と、このループ体21に離脱可能に係止するフック22と、このフック22のロック及び解除を行うロック機構30を具備している構成を採用しているので、懸吊索11に通したループ体21をロケット本体2の拘束点Pに引き寄せたうえで、このループ体21にフック22を係止させるだけで懸吊索11を拘束点Pで拘束し得ることから、姿勢変換装置20の簡略化及び小型化が図られることとなる。
【0041】
上記した実施例では、本発明に係る飛翔体が燃焼の終了した推進部としてのノズル7を付けたまま回収するタイプのロケット1である場合を例に挙げて示したが、これに限定されるものではなく、本発明に係る飛翔体が燃焼の終了した推進部を切り離すタイプの回収ロケットであってもよい。
【0042】
本発明に係る飛翔体の構成は、上記した実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
1 ロケット(飛翔体)
2 ロケット本体(飛翔体本体)
3 ロケット本体の頭部
4 ロケット本体の尾部
5 ロケット本体の胴部
6 パラシュート収納部
6F 頭部連結部(パラシュート収納部の頭部寄りの部位)
6R 尾部連結部(パラシュート収納部の尾部寄りの部位)
10 パラシュート
11 懸吊索
12 横吊用索
20 姿勢変換装置
21 ループ体
22 フック
30 ロック機構
P 拘束点(ロケット本体の尾部寄りの部位)