特許第6243783号(P6243783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243783
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】廃熱回収ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/22 20060101AFI20171127BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20171127BHJP
   F22B 37/04 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F22B37/22 A
   F22B1/18 L
   F22B1/18 G
   F22B37/04
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-71641(P2014-71641)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194281(P2015-194281A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】500483219
【氏名又は名称】パンパシフィック・カッパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】岡村 博春
(72)【発明者】
【氏名】本村 竜也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅文
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−148702(JP,A)
【文献】 特開2001−304506(JP,A)
【文献】 特開平08−005001(JP,A)
【文献】 実開昭60−027205(JP,U)
【文献】 米国特許第01839125(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/22
F22B 1/18
F22B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ本体の下部側に給水ヘッダが配置され、さらにその下部側にはホッパが配置され、前記給水ヘッダと連結されて前記ボイラ本体の内面に沿って配置された水管を介して前記ボイラ本体内に導入された高温の廃ガスから廃熱を回収する廃熱回収ボイラにおいて、
前記ホッパを形成するホッパケーシングを耐食性を有するステンレス系材料で形成すると共に、前記ホッパケーシングとは異なる材質で形成された前記給水ヘッダを熱膨張率の差による伸縮の違いを吸収するように前記ホッパケーシングに対して可動可能に取り付け、
前記給水ヘッダと連結された前記水管の端部側であって前記ボイラ本体内部の温度が酸露点に至るおそれのある位置に配置されている水管のボイラ本体の内側に面する箇所を耐火物によって被覆したことを特徴とする廃熱回収ボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載の廃熱回収ボイラにおいて、
前記給水ヘッダは炭素鋼管製であり、
前記給水ヘッダを前記ホッパケーシングにボルト止めするための取付部材に設けられたボルト孔を使用するボルトの径サイズよりも大きくすることにより熱膨張率の差による伸縮を吸収するようにしたことを特徴とする廃熱回収ボイラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の廃熱回収ボイラにおいて、
前記水管は、内側には炭素鋼管で形成された内側管と、最外側には耐食性を有するステンレス系材料で形成された外側管を備えた複数層からなるコンポジット管によって形成され、前記給水ヘッダと連結された前記水管の端部側は当該給水ヘッダとの溶接を容易にするために炭素鋼からなる前記内管を露出させて形成され、
炭素鋼からなる内側管が露出した前記水管の端部側であって前記ボイラ本体の内側に面する箇所を耐火物によって被覆したことを特徴とする廃熱回収ボイラ。
【請求項4】
請求項に記載の廃熱回収ボイラにおいて、
前記耐火物と前記ホッパケーシングとの間にフリーエアの浸入を防止すると共に熱膨張率の差による伸縮時の不定形耐火物とホッパ部材の摩擦を軽減するための摩擦軽減部材を配置したことを特徴とする廃熱回収ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱回収ボイラに関し、さらに詳しくは、例えば、銅製錬に用いられる製錬炉に付帯して設けられた廃熱回収ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
銅製錬に用いられる製錬炉、例えば自溶炉には廃ガスから廃熱を回収するために廃熱回収ボイラが自溶炉に付帯して設けられている。廃熱回収ボイラの一例としては特許文献1に示すものがある。自溶炉では銅精鉱と酸素を反応させマットとスラグを生成する。その際、硫黄酸化物を含む廃ガスが発生するので廃ガスを廃熱回収ボイラに導入して熱回収を行った後、硫酸工場へ送る。廃熱回収ボイラは、廃ガスが導入される輻射部と、輻射部に連続して配置された対流部を備えており、輻射部には内壁に沿って水管が配置されると共にその下部には廃ガスに含まれるダストを回収するためのホッパが設けられている。そして、対流部には多数の水管が林立するようにして配置されており、この水管を通る水を熱媒体として廃ガスから廃熱が回収される。このような廃熱回収ボイラは、特許文献2に示すように、廃ガス中の主にSOガス成分による腐食により水管の減肉が進行しやすい。特に、輻射部のボイラ本体下部に配置されているホッパのケーシング及び排出コンベアのケーシングの腐食の進行が早いため腐食部の補修を頻繁に行う必要があった。
【0003】
腐食部を補修するためには廃熱回収ボイラを一旦冷却しなければならないため長期間にわたる操業停止を余儀なくされる。また、ホッパケーシングが腐食するとボイラ本体内へのフリーエアの侵入が進行してSOガスのSO化が促進されると共に、フリーエアによるガス温度の低下によって内部温度が酸露点に達した場合には輻射部の水管やホッパケーシング等の硫酸腐食がより一層進行しやすくなる。そのため、水管として耐腐食性の高いオーステナイト系ステンレスを表層に用いたコンポジット管を用いることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−82901号公報
【特許文献2】特開平03−62961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボイラ本体の下部側であって且つホッパの上部に溶接固定されている給水ヘッダは通常炭素鋼管によって形成されており、水管としてコンポジット管を用いた場合であっても、給水ヘッダは炭素鋼管製のものをそのまま用いることが通常とされている。
【0006】
また、上述のように、水管に耐腐食性の高いオーステナイト系ステンレスを表層に用いたコンポジット管を用いているように、銅製錬に使用される廃熱回収ボイラのホッパ等にも腐食対策としてステンレス鋼材を用いることが望ましいが、ホッパの材質として用いられるステンレス鋼材に対して給水ヘッダの材質として用いられている炭素鋼材を溶接固定することはステンレス鋼材と炭素鋼材の受熱時の熱膨張率の差による変形や割れを懸念してこれまで実施は見送られてきた。熱膨張率の差により万一給水ヘッダにクラックが発生した場合には補修のために長期間の操業停止を余儀なくされるからである。
【0007】
本発明は、上述したような、ボイラ本体の下部に配置された給水ヘッダが炭素鋼製であり、さらにその下に位置するホッパの材質を耐食性に優れたステンレス鋼材とすることは膨張率の差による変形や割れを懸念して実施することができなかったという課題を解決するために鋭意検討した結果なされたものであり、炭素鋼製の給水ヘッダとステンレス製ホッパとの接合構造を改良し、熱膨張率の影響を解消することが可能な廃熱回収ボイラを提供することを目的とする。
【0008】
また、ボイラ本体の内壁に配置される水管を、例えば、外側にステンレス系材料によって被覆されたコンポジット管とした場合であっても炭素鋼材によって形成された給水ヘッダとの連結部分となる水管の先端部側は炭素鋼材を用いることとなるが、本発明は、その水管の先端部側の炭素鋼材部分の腐食対策も同時に解決する給水ヘッダとホッパの接合構造を備えた廃熱回収ボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、ボイラ本体の下部側に給水ヘッダが配置され、さらにその下部側にはホッパが配置され、前記給水ヘッダと連結されて前記ボイラ本体の内面に沿って配置された水管を介して前記ボイラ本体内に導入された高温の廃ガスから廃熱を回収する廃熱回収ボイラにおいて、前記ホッパを形成するホッパケーシングを耐食性を有するステンレス系材料で形成すると共に、前記ホッパケーシングとは異なる材質で形成された前記給水ヘッダを熱膨張率の差による伸縮の違いを吸収するように前記ホッパケーシングに対して可動可能に取り付け、前記給水ヘッダと連結された前記水管の端部側であって前記ボイラ本体内部の温度が酸露点に至るおそれのある位置に配置されている水管のボイラ本体の内側に面する箇所を耐火物によって被覆したことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の廃熱回収ボイラにおいて、給水ヘッダは炭素鋼管製であり、給水ヘッダをホッパケーシングにボルト止めするための取付部材に設けられたボルト孔を使用するボルトの径サイズよりも大きくすることにより熱膨張率の差による伸縮を吸収するようにしたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の廃熱回収ボイラにおいて、水管は、内側には炭素鋼管で形成された内側管と、最外側には耐食性を有するステンレス系材料で形成された外側管を備えた複数層からなるコンポジット管によって形成され、給水ヘッダと連結された水管の端部側は給水ヘッダとの溶接を容易にするために炭素鋼からなる内管を露出させて形成され、炭素鋼からなる内側管が露出した水管の端部側であってボイラ本体の内側に面する箇所を耐火物によって被覆したことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項に記載の本発明は、請求項に記載の廃熱回収ボイラにおいて、前記耐火物と前記ホッパケーシングとの間にフリーエアの浸入を防止すると共に熱膨張率の差による伸縮時の不定形耐火物とホッパ部材の摩擦を軽減するための摩擦軽減部材を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る廃熱回収ボイラによれば、ホッパを形成するホッパケーシングをステンレス系材料とし、それとは異なる材質、例えば、炭素鋼材によって形成された給水ヘッダを熱膨張率の差による伸縮を吸収するようにホッパケーシングと給水ヘッダとが相対的に可動可能となるように取り付けることとしたので、異なる材質によって形成された給水ヘッダとホッパとを変形や割れを生じさせることなく接続することができるという効果がある。
【0015】
また、本発明に係る廃熱回収ボイラによれば、水管に炭素鋼を用いた場合でも、水管にコンポジット管を用いた場合でも給水ヘッダと接続する部分には炭素鋼管を用いることになるが、炭素鋼製の給水ヘッダとされる炭素鋼管からなる水管の端部側を耐火物で被覆してボイラ本体内の温度低下による酸露点に至るおそれのある位置の水管部分を腐食性ガスや硫酸等と接触させない構造としたので水管及び給水ヘッダの腐食を抑制することができるという効果がある。
【0016】
さらに、本発明に係る廃熱回収ボイラによれば、少なくともホッパを耐食性の高いステンレス系材料とすることを可能とし、さらに水管及び給水ヘッダの腐食を抑制することを可能としたので水管及びホッパの腐食による長期間の操業停止を排除することできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】自溶炉に連設された廃熱回収ボイラの概要を示す側面図である。
図2】本発明に係る廃熱回収ボイラのA−A断面図である。
図3】ボイラ本体とホッパとの連結部分の拡大断面図である。
図4】水管の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る廃熱回収ボイラの好ましい一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は自溶炉に連設された廃熱回収ボイラの概要を示す側面図、図2は本発明に係る廃熱回収ボイラのA−A断面図、図3はボイラ本体とホッパとの連結部分の拡大断面図である。
【0019】
[廃熱回収ボイラの構成]
初めに、図1に示された廃熱回収ボイラ10は、精鉱を反応させることによってマットとスラグを生成し、比重分離する自溶炉1のアップテイク3に付帯するようにして設けられており、アップテイク3の後方側(図1の右側)へ伸びるようにして配置されている。廃熱回収ボイラ10はボイラ本体11を備えており、ボイラ本体11は廃ガスが最初に導入される輻射部11aと、図示しない多数の水管が配置されて廃熱を回収する対流部11bによって構成されている。尚、対流部には上部側又は下部側に隙間が形成された隔壁12,12が前後して配置されており、廃ガスはその隙間を通って上下方向に誘導されるようになっている。
【0020】
[ボイラ本体]
輻射部11a側のボイラ本体11には、図2に示すように、両側面の下部側に給水ヘッダ20が配置されており、給水ヘッダ20のさらに下部側にはホッパ13が配置されている。さらにホッパ13の下部側にはボイラ本体11内を落下したダストを回収するための排出コンベア15が配置されている。そして、輻射部11a側のボイラ本体11の内壁に沿って水管21が配置されると共に、水管21は給水ヘッダ20と連通するようにして取り付けられている。
【0021】
[給水ヘッダ]
給水ヘッダ20は、水管21と連通されて熱媒体となる水を流通させるための配管であり、ボイラ本体11の長手方向に沿って下部側の両側に配置されている。また、ボイラ本体11の下部側は、上方から下方へ至るに従いその幅サイズが次第に狭くなった略逆角錐台形状となるようにして形成され、給水ヘッダ20はボイラ本体11の下部位置よりもやや外側に離間した位置に配置されている。そして、給水ヘッダ20は炭素鋼管により形成されている。
【0022】
[水管]
水管21は、ボイラ本体11の内壁面に沿って配置されており、給水ヘッダ20と接続される部分は給水ヘッダ20側に向かって屈曲するように形成されている。そして、水管21はボイラ本体11の上部に配置された図示しない配管と連通され、さらに対流部11bに配置されている図示しない水管と連通されており、ボイラ本体11内に導入された高温の廃ガスから熱回収される。
【0023】
水管21は、全体が炭素鋼から形成された炭素鋼管を用いることも、図4に示すような外側にオーステナイト系ステンレス鋼材によって形成された外側管21a、内側に給水ヘッダ20と同様の材質である炭素鋼によって形成された内側管21bを備えたコンポジット管を用いることもできる。尚、水管21にコンポジット管を用いる場合には、外側に耐食性を有する材料で形成された外側管21aと、給水ヘッダ20と同様の材質である炭素鋼で形成された内側管21bを備えていればよいので、二重構造のコンポジット管に限らず、例えば、内側管21bの内部にさらに他の材質から形成される図示しない配管が内装された三重又はそれ以上の構造のコンポジット管であってもよい。
【0024】
ここで、銅製錬における廃熱回収ボイラ10の回収蒸気の圧力は4〜6MPaであり、飽和蒸気温度は250〜270℃である。自溶炉1から廃熱回収ボイラ10に導入される排ガスには50〜60vol%のSOガスが含まれているが、ボイラ内ではSOの1〜3%はSOとなっている。そのSO量とガス中の水分により酸露点温度が循環水の飽和温度程度までに上昇する場合がある。その際、水管外側に高濃度の硫酸が結露し腐食が助長される。特に、ボイラ本体の下部側、すなわち給水ヘッダ20と水管21との連結部側が結露しやすい。水管21にコンポジット管を用いた場合には、外側管21aが耐食性を有するステンレス系材料で形成されているのでSOを含む廃ガスによる腐食が効果的に防止される。また、水管21に炭素鋼管を用いた場合であっても給水ヘッダ20から離れた上方側は酸露点以下にはなりにくいので腐食は急速には進行しない。
【0025】
一方、水管21に炭素鋼管を用いた場合や、コンポジット管を用いた場合の内側管21bは給水ヘッダ20と同質の炭素鋼管を備えているので両者を溶接によって接合した場合であっても熱膨張率の差がないので連結部分の変形や割れの心配がない。しかしながら、水管21が炭素鋼管である場合でもコンポジット管を用いた場合でも給水ヘッダ20と溶接によって連結される下部側部分は炭素鋼管が露出した状態となっており、この露出部分はボイラ本体11内の廃ガス中に晒されることになるので。上述のように腐食が進行しやすい。そのため、後述するように、ボイラ本体11の下部側に露出した炭素鋼管部分、すなわち、酸露点に至るおそれのある位置に配置されている水管21を腐食から保護するために耐火物30によって被覆している。
【0026】
[ホッパ]
ボイラ本体11の下部にはホッパ13が配置されており、ボイラ本体11内に導入された廃ガスに含まれるダストの回収を行う。廃ガス中には高温で溶融状態にあったダスト成分が含まれており、ボイラ本体11内で廃ガスの温度が下がることにより溶融状体にあったダスト成分が固化してダストとなって落下する。落下したダストはホッパ13の下部に配置された排出コンベア15によって回収される。尚、ホッパ13は、長手方向に沿って複数配置されている。このホッパ13を構成するホッパケーシング13aは耐食性を有するステンレス系材料が用いられている。
【0027】
[ボイラ本体とホッパ上部の連結構造]
次に、ボイラ本体11とホッパ13の上部の連結構造について説明する。図3はボイラ本体11とホッパ13との連結部分の拡大断面図である。ボイラ本体11の内壁面に沿って配置された水管21はホッパ13との連結部付近で給水ヘッダ20側へ向かうようにして外側方向に屈曲され、ボイラ本体11の下部側の両側面に配置された給水ヘッダ20にそれぞれ溶接接続されている。そして、給水ヘッダ20の下部側には板状の取付フィン20aが下方に向かって取り付けられており、この取付フィン20aとホッパ13の上面とが側面形状が略L字状の取付部材40を介して連結されている。取付フィン20aと取付部材40とは溶接によって固定され、取付部材40とホッパ13の上部とはボルト41によって締着固定されている。尚、取付フィン20a、取付部材40及びボルト41は給水ヘッダ20と同様に炭素鋼材によって形成されている。ここで、ボルト41を取り付けるために取付部材40及びホッパ13の上面に穿設されている図示しないボルト孔はボルト41の径サイズよりも大きな径サイズとされている。尚、ボルト孔は円形又は楕円形に形成することができる。これにより、ステンレス系材料によって形成されたホッパ13のホッパケーシング13aと炭素鋼材によって形成された取付部材40や給水ヘッダ20の熱膨張率の差による伸縮の違いがあっても給水ヘッダ20はホッパケーシング13aに対して可動可能に取り付けられているのでその違いは吸収されて変形や割れが効果的に防止される。
【0028】
[耐火物]
一方、給水ヘッダ20と溶接される水管21の先端側は給水ヘッダ20と同様の材質である炭素鋼製の内側管21bを露出させた状態となっている。これにより給水ヘッダ20と水管21の内側管21bとの溶接接続は容易に行われると共に熱膨張の差による影響は防止されることとなる。しかしながら、水管21の露出部分はボイラ本体11内の廃ガス中に晒されることとなり、腐食の影響を受けやすくなるため、図4に示すように、ボイラ本体11内に露出した内側管21bは耐火物30によって被覆されている。耐火物としては、不定形耐火物、例えば、株式会社ヨータイ製のキャスタブル耐火物C130等を用いることができ、不定形耐火物によって露出した内側管21bを完全に被覆する。もちろん、不定形耐火物に限るものではなく、定形耐火物を所定の形状に成型したものをボイラ本体11内に露出した内側管21bを被覆するようにして配置してもかまわない。
【0029】
さらに、耐火物30とホッパ13のホッパケーシング13aとの間にはフリーエアの浸入を防止すると共に熱膨張率の差による伸縮時の不定形耐火物とホッパー部材との摩擦を軽減するための摩擦軽減部材35が配置されている。摩擦軽減部材35としては繊維を積層してブランケット状にした耐火断熱材を用いることができ、例えば、イソライト工業株式会社製のイソウールブランケットを用いることができる。これにより、ボイラ本体11内に露出した内側管21bを耐火物30によって被覆した場合であってもホッパ13と耐火物30との間に摩擦軽減部材35を介在させているので熱膨張率の差による伸縮が生じでも耐火物30が割れたり剥がれ落ちたりすることが防止される。配置する摩擦軽減部材35の厚みはあまり薄いと耐火物30として不定形耐火物を流し込んだ場合に収縮するので摩擦力の軽減を十分に図ることができず、また、厚すぎるとフリーエアが侵入するおそれがあるので10〜30mm程度の厚みとすることが好ましい。
【0030】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。上記実施形態では給水ヘッダ20が炭素鋼管であり、ホッパ13のホッパケーシングがステンレス系材料としたがこれに限るものではなく、互いに異なる材質が用いられている場合であって熱膨張率の差による変形や割れが懸念される場合にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 自溶炉
3 アップテイク
10 廃熱回収ボイラ
11 ボイラ本体
11a 輻射部
11b 対流部
12 隔壁
13 ホッパ
13a ホッパケーシング
15 排出コンベア
20 給水ヘッダ
20a 取付フィン
21 水管
21a 外側管
21b 内側管
30 耐火物
35 摩擦軽減部材
40 取付部材
41 ボルト
図1
図2
図3
図4