特許第6243786号(P6243786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243786
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】飲食物の殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/005 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   A23L3/005
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-76318(P2014-76318)
(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-195772(P2015-195772A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136642
【氏名又は名称】株式会社フロンティアエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】星野 弘
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−288095(JP,A)
【文献】 特開2000−093170(JP,A)
【文献】 特開2001−291574(JP,A)
【文献】 特開2006−026683(JP,A)
【文献】 特開2013−218983(JP,A)
【文献】 特表平02−501348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00−3/54
A61L 2/00−2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極対に電力を供給して前記電極対の間に供給された飲食物材料を殺菌処理する飲食物の殺菌装置であって、
外部からの交流電流を直流電流に整流するサイリスタと、
前記直流電流を高周波電流に変換するインバータと、
前記高周波電流を昇圧して高電圧パルスを発生するトランスと、
前記サイリスタと前記インバータの作動を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記サイリスタを起動させた状態のもとで、前記インバータのオンオフを制御して前記高電圧パルスを前記電極対に印加する、飲食物の殺菌装置。
【請求項2】
請求項1記載の飲食物の殺菌装置において、前記電極対に前記高電圧パルスを印加するパルス殺菌工程の前後に、前記高電圧パルスの電圧よりも低い電圧を印加して飲食物材料をジュール熱により加熱する、飲食物の殺菌装置。
【請求項3】
請求項2記載の飲食物の殺菌装置において、飲食物材料の温度を検出する温度センサを有し、飲食物材料の温度がジュール熱により加熱温度に到達したら、前記電極対に対する印加を停止する、飲食物の殺菌装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲食物の殺菌装置において、前記電極対の間の1mm当たりの高電圧パルスの電圧は、300Vp/1mm以上である、飲食物の殺菌装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の飲食物の殺菌装置において、飲食物材料ジュール熱により加熱する際における前記電極対の間の1mm当たりの加熱電圧は、前記高電圧パルスの電圧よりも低い電圧である、飲食物の殺菌装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の飲食物の殺菌装置において、前記インバータから出力される高周波パルスを1サイクル毎に検出する発振制御部と、前記電極対に印加される前記高電圧パルスの数をカウントし、前記発振制御部に対して前記高周波パルスの出力を停止するプログラマブルロジックコントローラとを有し、
前記発振制御部は、前記電極対に対して設定された数の前記高電圧パルスを出力したら、前記電極対に対する前記高電圧パルスの印加を停止する、飲食物の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果汁やスープ等の飲食物材料を高電圧パルスにより殺菌するようにした飲食物の殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
果汁や肉汁、スープ等の飲食物材料に、交流高電界つまり高電圧パルスを印加することにより、飲食物材料に含まれる細菌を殺菌するようにした殺菌装置が、特許文献1に記載されるように、開発されている。この殺菌装置においては、一対の電極間に飲食物材料を流すようにしており、電極間を流れる飲食物材料の1mmの厚みに対して数100V以上の高電圧パルスを殺菌電圧として印加することにより、飲食物材料を殺菌処理するようにしている。
【0003】
高電圧パルスを飲食物材料に印加して飲食物材料を殺菌する場合には、液状の飲食物材料を流路内に連続的に搬送しながら連続処理する場合のみならず、電極が設けられた容器内に飲食物材料を供給して飲食物材料をバッチ処理する場合にも適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−86259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飲食物材料を連続的に搬送しながら飲食物材料を連続処理したり、一定量毎にバッチ処理したりする場合のいずれの処理方式においても、電極間の隙間に供給される飲食物材料に高電圧パルスを印加するために、商用の交流電流をサイリスタにより整流し、直流電流をインバータによりパルス電流に変換するようにしている。インバータにより所定周波数の高周波に変換された電力は、トランスにより高電圧の殺菌電圧に昇圧され、昇圧された高電圧パルスが電極に印加される。
【0006】
高電圧パルスを飲食物材料に印加するようにした従来の殺菌装置においては、制御部から通電開始信号をサイリスタに供給するようにしている。制御部には操作パネルが接続されており、操作パネルのスタートスイッチが操作されると、制御部からはサイリスタに通電開始信号と、通電停止信号とが送られるようになっている。
【0007】
しかしながら、サイリスタに制御部から通電開始信号が送られた後に、実際に電極に高電圧パルスが印加されるまでには、数秒の時間遅れが発生している。制御部からサイリスタに通電停止信号が送られた後にも、実際に電極に対する高電圧パルスの印加が停止されるまでには、数秒の時間遅れが発生している。このように、サイリスタの立ち上がりと立ち下がりに数秒程度かかることは、サイリスタの特性上、避けることができない。このため、飲食物材料の中の細菌を殺菌するために必要な所定の殺菌電圧に、電極対の間の電界が到達するまでには、数秒程度かかることになる。したがって、所定の殺菌電圧に到達するまでの立ち上がり時間の間にも、飲食物材料は通電されることになり、この間における通電により飲食物材料が100℃程度の温度にまで加熱されることになる。
【0008】
高電圧パルス殺菌処理技術においては、飲食物材料に、0.1秒以下の瞬間的でも高電圧パルスを印加すれば、飲食物材料に含まれる細菌を破壊して、殺菌処理を行うことができる。しかしながら、サイリスタをオンオフすることにより、飲食物材料に高電圧パルスを印加するようにすると、サイリスタの特性上、所定の殺菌電圧に到達するまでの立ち上がりの間でも飲食物材料に電流が流れて通電加熱され、飲料物材料が過加熱されることが避けられない。飲食物材料が過度に通電加熱されると、飲食物材料によっては、変質したり、風味が損なわれたりすることが避けられない。
【0009】
本発明の目的は、飲食物材料を過度に加熱することなく、飲食物材料を殺菌処理し得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の飲食物の殺菌装置は、電極対に電力を供給して前記電極対の間に供給された飲食物材料を殺菌処理する飲食物の殺菌装置であって、外部からの交流電流を直流電流に整流するサイリスタと、直流電流を高周波電流に変換するインバータと、前記高周波電流を昇圧して高電圧パルスを発生するトランスと、前記サイリスタと前記インバータの作動を制御する制御部とを、有し、前記制御部は、前記サイリスタを起動させた状態のもとで、前記インバータのオンオフを制御して高電圧パルスを前記電極対に印加する。
【発明の効果】
【0011】
インバータをオンオフ制御して高電圧パルスを電極対に印加するようにしたので、サイリスタをオンオフ制御して高電圧パルスを電極対に印加する場合に比して、短時間で殺菌電圧にまで電極対に高電圧パルスを印加することができる。短時間で殺菌電圧が電極対に印加されると、殺菌電圧にまで電極対が立ち上がるまでに飲食物材料が過度に通電加熱されることなく、飲食物材料を殺菌処理することができる。これにより、飲食物材料が変質したり、風味が損なわれたりすることなく、飲食物材料を殺菌処理することができ、殺菌処理後の飲食物の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態である飲食物の殺菌装置における殺菌容器の外観を示す一部切り欠き斜視図である。
図2】殺菌装置における電源ユニットを示すブロック図である。
図3】殺菌処理のための高電圧パルスの1サイクルを示すタイムチャートである。
図4】殺菌処理のためのジュール加熱条件とパルス殺菌条件の具体例を示す通電条件表である。
図5】一実施の形態である殺菌処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図6】他の実施の形態である殺菌処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、飲食物の殺菌装置を構成する殺菌容器10の外観を示し、飲食物材料は一定量毎に殺菌容器10内で処理される。殺菌容器10は底壁部11と平面四角形の筒体12とを有し、絶縁性材料により形成されている。殺菌容器10の上端部には開口部13が設けられている。殺菌容器10内には2枚の板状の電極14,15が隙間を介して配置されており、2つの板状の電極14,15により電極対16が形成されている。電極対16の間の隙間により通電スペース17が形成されており、殺菌処理される飲食物材料は、開口部13から通電スペース17内に供給される。供給された状態のもとで、電極対16に印加される電力により飲食物材料は殺菌処理される。このように、図1に示す殺菌容器10は、バッチ処理により飲食物材料を一定量毎に殺菌するようにしている。
【0014】
電極対16には、電源ユニット20から電力が供給される。電源ユニット20は、図2に示されるように、サイリスタスタック21を有している。サイリスタスタック21は、図示しないサイリスタ(SCR)と冷却ファンと交互に配置してこれらを束ねた形態となっており、外部からの例えば200Vまたは400Vの3相の商用交流電流を直流電流に整流する。サイリスタスタック21の出力端子にはインバータ22が接続されており、サイリスタスタック21から出力された直流電流は、インバータ22により高周波電流に変換される。インバータ22は20〜400kHzの高周波電流つまり高周波パルスを出力する。
【0015】
インバータ22の出力端子にはトランス23が接続されている。トランス23は、インバータ22から出力された高周波電流を昇圧して高電圧パルスを発生させ、電極対16に高電圧パルスを印加する。
【0016】
電源ユニット20は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)24を有している。このPLC24には、操作パネル25が接続されており、操作パネル25には、飲食物材料に対する通電条件を入力するためのキー等からなる入力部が設けられている。さらに、入力された通電条件等を表示するための図示しないディスプレイが操作パネル25に設けられている。PLC24は、サイリスタスタック21とインバータ22に対する制御信号を演算するマイクロプロセッサと、制御プログラム、演算式、マップデータ等が格納されるメモリを有している。
【0017】
サイリスタスタック21の作動を制御するために、サイリスタスタック21には定電圧制御部26が接続されている。インバータ22の作動を制御するために、インバータ22には発振制御部27が接続されている。定電圧制御部26と発振制御部27は、それぞれPLC24から制御信号により作動し、PLC24とともにサイリスタスタック21とインバータ22の作動を制御する制御部を構成している。図1に示すように、通電スペース17内に供給された飲食物材料の温度を検出するために、温度センサ28が通電スペース17内に配置されており、温度センサ28の検出信号は、PLC24に送られる。
【0018】
定電圧制御部26によりサイリスタスタック21の起動つまりオンオフが制御されるとともに、サイリスタスタック21の出力電圧が定電圧制御部26にフィードバックされる。定電圧制御部26からは、PLC24に対して、サイリスタスタック21を起動させた状態と起動を停止させた状態との検出信号がフィードバックされる。
【0019】
一方、発振制御部27によりインバータ22の起動が制御されるとともに、インバータ22から出力される高周波パルスを1サイクル毎に発振制御部27にフィードバック信号が出力される。さらに、発振制御部27は、PLC24に対してインバータ22に対する発振開始信号と発振終了信号とを出力し、インバータ22から出力された高周波パルスの数がPLC24によりカウントされる。インバータ22から出力される高周波パルスの数が設定数となると、PLC24は発振制御部27に発振の停止つまり高周波パルスの出力停止信号を出力し、インバータ22の出力を停止する。
【0020】
インバータ22から出力された高周波パルスを昇圧することにより、飲食物材料に高電圧パルスを印加して飲食物材料を殺菌処理する場合には、サイリスタスタック21を起動させた状態のもとで、インバータ22のオンオフを制御して高電圧パルスを飲食物材料に印加する。このように、インバータ22をオンオフ制御して高電圧パルスを飲食物材料に印加するようにすると、インバータ22の立ち上がりと立ち下がりの速度を迅速に設定することができ、瞬時に殺菌電圧の高電圧パルス飲食物材料に印加することができる。これにより、飲食物材料が過加熱される前に、飲食物材料に含まれる細菌を殺菌することができ、殺菌後の飲食物材料が変質したり、風味が損なわれたりすることなく、高品質の殺菌処理を行うことができる。
【0021】
これに対し、従来のように、サイリスタスタック21をオンオフさせて、飲食物材料に対する高電圧パルスの印加と印加停止とを制御するようにすると、PLC24からサイリスタスタック21にオン信号を出力してから、実際に電極対16に高電圧パルスが出力されるまでに、数秒程度かかることになる。このように、立ち上がり時間がかかると、飲食物材料に高電圧の殺菌電圧が印加されまでに、飲食物材料には殺菌電圧にまで立ち上がる過程でも電流が印加されることになり、飲食物材料はジュール熱により加熱される。このため、飲食物材料はジュール熱により過加熱されることになり、殺菌後の飲食物材料が変質したり、風味が損なわれたりすることが避けられなかった。
【0022】
図3は飲食物材料に印加される高電圧パルスの1サイクルの波形を示す。殺菌するための高電圧パルスの数は、飲食物材料に応じて相違しており、任意の高電圧パルスを飲食物材料に印加することができる。実験によると、ジュースやスープ等の飲食物材料は、1サイクルまたは数サイクルの高電圧パルスを印加すれば、大腸菌等の細菌を死滅させることができた。
【0023】
飲食物材料に印加される高電圧パルスの電圧Vpは、図4に示されるように、電極対16間の1mm当たり、300Vp/1mm以上となるように、設定される。電極対16の間の距離をLmmとすると、電極対16に印加される電圧V0は、Vp×Lに設定される。また、飲食物材料に印加される高電圧パルスの周波数は、20〜400kHzのいずれかに飲食物材料に応じて選択される。
【0024】
図4に示されるように、例えば、飲食物材料に印加される高電圧パルスの周波数を20kHzとすると、高電圧パルスの立ち上がり時間t1と立ち下がり時間t3は、いずれも2μsとなり、高電圧パルス電圧Vpの印加時間t2,t4は、いずれも22μsとなる。高電圧パルスの周波数を30〜400にした場合の上述した立ち上がり時間t1、立ち下がり時間つまり反転時間t3および印加時間t2,t4は、図4に示す通りであり、立ち上がり時間および立ち下がり時間は、いずれも、2μsよりも短くなる。
【0025】
このように、飲食物材料に対する高電圧パルスの印加タイミングを発振制御部27により制御すると、飲食物材料の過加熱を防止し、高品質の飲食物を殺菌処理することができる。
【0026】
電源ユニット20により飲食物材料に対する殺菌処理は、高電圧パルスの印加のみにより行う形態と、高電圧パルスとジュール熱とにより殺菌を行うこともできる。高電圧パルス殺菌工程と、ジュール熱殺菌工程とにより飲食物材料を殺菌処理するには、図1に示された殺菌容器10内に飲食物材料が供給された状態のもとで、連続的に行うことができ、ジュール熱殺菌工程は、高電圧パルス殺菌工程の前後に行うことができる。
【0027】
ジュール熱殺菌によって飲食物材料の加熱殺菌を行うために、飲食物材料に印加される加熱電圧Vjは、図4に示されるように、電極対16間の1mm当たり、300Vj/1mmよりも低い電圧となるように設定される。300Vj/1mmよりも低い電圧であれば、1Vj/1mm以上の任意の電圧に設定することができる。電極対16の間の距離をLmmとすると、電極対16に印加される電圧V0は、Vj×Lに設定される。また、加熱殺菌のために飲食物材料に印加される高周波電力の周波数は、例えば、20kHzに設定される。ただし、この周波数は20kHzに限られることなく、飲食物材料に応じて任意の周波数に設定することができる。
【0028】
図5は、高電圧パルスの印加のみにより飲食物材料の殺菌処理を行う場合の殺菌処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【0029】
PLC24が起動されて初期設定されると、ステップS1において、メモリに格納された高電圧パルス殺菌条件を読み出し、ステップS2においてサイリスタスタック21がオンされる。殺菌条件としては、予め飲食物材料の種類に応じて、単位長さ当たりの高電圧パルス電圧Vp/1mmと、高電圧パルスの周波数と、高電圧パルスのサイクル数とがメモリに格納されている。サイリスタスタック21のオンにより、3相の外部電力は直流電流に整流されて正負の出力端子は所定の電位差となった状態となる。
【0030】
この状態のもとで、操作パネル25の入力キーがステップS3において操作されると、インバータ22は発振を開始し(ステップS4)、インバータ22は高周波パルスを出力する。高周波パルスはトランス23により昇圧されて高電圧パルスが電極対16に印加される。例えば、20kHzの高電圧パルスを電極対16に印加する場合には、図4に示すように、2μsの立ち上がり時間t1経過後に、22μsに渡って高電圧パルスが一方の電極から他方の電極に流れる。次いで、反転時間t3が経過した後に、同様の時間に渡って高電圧パルスが他方の電極から一方の電極に反転されて印加される。
【0031】
ステップS5において高電圧パルスが1サイクル出力されたことが判定されると、ステップS6において、予め入力された設定サイクルが終了したか否かが判定される。高電圧パルスの出力サイクル数が入力された設定サイクル数となったことがステップS6において判定されると、インバータ22の発振が停止される(ステップS7)。
【0032】
このように、インバータ22をオンオフ制御することにより、高電圧パルスが殺菌電圧に到達するまでの立ち上がり時間を瞬間的に行うことができ、飲食物材料が過度に加熱されることなく、飲食物材料に含まれる細菌を殺菌することができる。
【0033】
図6は、高電圧パルスによる殺菌処理と、ジュール熱による殺菌処理とを連続的に行うようにした場合における殺菌処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【0034】
PLC24が起動されて初期設定されると、ステップS11においてサイリスタスタック21がオンされる。サイリスタスタック21のオンにより、3相の外部電力は直流電流に整流されて正負の出力端子は所定の電位差となった状態となる。サイリスタがオンされた状態のもとで、ステップS12に示すように、スタートスイッチがオンされると、ステップS13においてジュール熱殺菌条件が読み出されて、ジュール加熱が開始される(ステップS13,S14)。ジュール熱殺菌条件としては、予め飲食物材料の種類に応じて、単位長さ当たりの印加電圧つまり加熱電圧Vj/1mmと、高電圧パルスの周波数とがメモリに格納されている。
【0035】
飲食物材料の温度は温度センサ28により検出され、検出信号がPLC24に送られており、飲食物材料がジュール熱により所定の加熱温度まで加熱されたことが、ステップS15において判定されたときには、図5に示した高電圧パルス殺菌処理に移行する。この加熱温度としては、例えば、80℃に設定される。ジュール熱殺菌処理から高電圧パルス殺菌処理に移行すると、ステップS16ではパルス殺菌条件が読み出されて、インバータ22は発振を開始し、図5に示したステップS5〜ステップS7と同様に、ステップS18〜S20が実行される。
【0036】
図6に示した殺菌処理においては、ジュール熱により殺菌処理が高電圧パルス殺菌処理よりも前に行われているが、高電圧パルス殺菌処理を行った後に、ジュール熱殺菌処理を行うようにしても良い。
【0037】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。図1に示した殺菌容器10は、飲食物材料をバッチ処理するための容器であるが、飲食物材料を連続的に搬送しながら、高電圧バルス殺菌処理を行うようにしたり、これに加えてジュール熱殺菌処理を行うようにしたりしても良い。
【符号の説明】
【0038】
10 殺菌容器
11 底壁部
12 筒体
13 開口部
14,15 電極
16 電極対
17 通電スペース
20 電源ユニット
21 サイリスタスタック
22 インバータ
23 トランス
24 プログラマブルロジックコントローラ
25 操作パネル
26 定電圧制御部
27 発振制御部
28 温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6