特許第6243789号(P6243789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243789
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】クリップの固定構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 17/00 20060101AFI20171127BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20171127BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F16B17/00 Z
   F16B17/00 A
   F16B19/00 D
   F16B35/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-85756(P2014-85756)
(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公開番号】特開2015-206382(P2015-206382A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】中島 武司
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−266053(JP,A)
【文献】 特開平11−101209(JP,A)
【文献】 実開昭63−059208(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00− 5/12
F16B 17/00−19/14
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定孔が形成された被取付部材にクリップを固定するための構造であって、
前記固定孔は、内周にネジ溝が形成されたネジ孔と、外周の一部が前記ネジ孔に連結されて、それらの境界部がくびれた連通部をなす保持孔とを有し、
前記クリップは、前記固定孔に挿入される脚部を有し、
前記脚部は、前記保持孔に挿入される保持孔挿入部を有する柱状部と、該柱状部に連結部を介して連結されると共に、前記柱状部との間に形成された空隙により撓み可能とされ、前記ネジ孔に挿入される弾性片部とを有しており、
前記弾性片部は、前記ネジ孔のネジ溝内周に係合する突起部を有し、
前記柱状部の保持孔挿入部は、前記固定孔の連通部の開口幅よりも大きな幅で形成されていることを特徴とするクリップの固定構造。
【請求項2】
前記柱状部は、前記保持孔に挿入される保持孔挿入部と、前記ネジ孔に挿入されるネジ孔挿入部とを有し、前記ネジ孔挿入部は、前記固定孔の連通部の開口幅よりも大きな幅で形成されている請求項1記載のクリップの固定構造。
【請求項3】
前記柱状部は、前記固定孔の連通部の開口周縁の形状に適合する形状をなしている請求項1又は2記載のクリップの固定構造。
【請求項4】
前記弾性片部は、その基端部側が前記連結部を介して前記柱状部に連結されており、前記突起部は、前記弾性片部の自由端部側に設けられており、基端部側には設けられていない請求項1〜3のいずれか1つに記載のクリップの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定孔が形成された被取付部材に、クリップを固定するための、クリップの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の油圧コントロールバルブのボディやバッテリーのケース等の被取付部材には、温度センサ等の取付部材が取付られている。この場合は、前記被取付部材に固定孔を形成しておき、温度センサ等を保持可能な保持部を有するクリップを固定することにより、該クリップを介して前記取付部材を取付けることが行われている。
【0003】
上記固定孔は、被取付部材を貫通したものや、貫通しない凹部状のものがある。前者の貫通した固定孔には、例えば、碇足状をなした弾性片を、固定孔の裏側周縁に係合させるクリップが用いられているが、後者の貫通しない凹部状の固定孔には、例えば、下記特許文献1に記載のネジ代替クリップを用いることができる。
【0004】
下記特許文献1には、ネジ孔を有する被取付部材に、取付孔を有する取付部材を重ね合わせて、両孔に挿入することにより両部材を固定するものであって、取付孔表側に係合する頭部とネジ孔に挿入される脚部とを備え、脚部は、ネジ孔への挿入時に、ネジ孔内周に押圧されて撓み可能とされた一対の弾性係止片部を有し、各弾性係止片部の周縁部に、ネジ孔のネジ溝内周に係合する突起が形成された、ネジ代替クリップが記載されている。また、一対の弾性係止片部の自由端部からは、フランジ部がそれぞれ延設され、これらが前記頭部をなしている。そして、被取付部材に取付部材を重ね合わせ、取付孔を通してネジ孔にクリップの脚部を挿入して、各弾性係止片部の突起をネジ溝内周に係合させると共に、取付部材の取付孔周縁にフランジ部をそれぞれ係合させることで、クリップを介して被取付部材に取付部材が取付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−25541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のクリップでは、ネジ孔のネジ溝内周に、ネジ内径側から一対の弾性係止片部の突起が係合しているだけなので、頭部をなすフランジ部に回転力が作用した場合には、クリップ全体が回ってしまったり、また、こじり力(孔に対してクリップを前後左右に動かそうとする力や、クリップを斜め上方に持ち上げるような力)が作用した場合には、クリップが取付孔やネジ孔から外れてしまうおそれがあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、クリップに回転力やこじり力が作用しても、固定孔からクリップが抜け外れることを防止できる、クリップの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のクリップの固定構造は、固定孔が形成された被取付部材にクリップを固定するための構造であって、前記固定孔は、内周にネジ溝が形成されたネジ孔と、外周の一部が前記ネジ孔に連結されて、それらの境界部がくびれた連通部をなす保持孔とを有し、前記クリップは、前記固定孔に挿入される脚部を有し、前記脚部は、前記保持孔に挿入される保持孔挿入部を有する柱状部と、該柱状部に連結部を介して連結されると共に、前記柱状部との間に形成された空隙により撓み可能とされ、前記ネジ孔に挿入される弾性片部とを有しており、前記弾性片部は、前記ネジ孔のネジ溝内周に係合する突起部を有し、前記柱状部の保持孔挿入部は、前記固定孔の連通部の開口幅よりも大きな幅で形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のクリップの固定構造においては、前記柱状部は、前記保持孔に挿入される保持孔挿入部と、前記ネジ孔に挿入されるネジ孔挿入部とを有し、前記ネジ孔挿入部は、前記固定孔の連通部の開口幅よりも大きな幅で形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明のクリップの固定構造においては、前記柱状部は、前記固定孔の連通部の開口周縁の形状に適合する形状をなしていることが好ましい。
【0011】
本発明のクリップの固定構造においては、前記弾性片部は、その基端部側が前記連結部を介して前記柱状部に連結されており、前記突起部は、前記弾性片部の自由端部側に設けられており、基端部側には設けられていないことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クリップに回転力が作用しても、保持孔に挿入された柱状部と、ネジ孔に挿入された弾性片部とで、回転規制がなされる。また、固定孔に挿入されたクリップの柱状部の保持孔挿入部は、固定孔の連通部の開口幅よりも大きな幅で形成されているので、上記の、固定孔にクリップが固定された状態で、クリップの柱状部に所定方向のこじり力が作用しても、柱状部の保持孔挿入部が固定孔の連通部の開口周縁に係合するため、柱状部が保持孔から抜けてしまうことがなく、こじり力に対抗して、クリップを所定位置に保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るクリップの固定構造の、一実施形態を示す斜視図である。
図2】同固定構造を構成するクリップを示しており、(a)はその斜視図、(b)は(a)とは異なる方向から見た斜視図である。
図3図2(a)のA−A矢示線におけるクリップの断面図である。
図4】同固定構造を構成する固定孔を示しており、(a)はその平面図、(b)は(a)のB−B矢示線における断面図である。
図5】同固定構造によって、固定孔にクリップを固定した状態の説明図である。
図6図5のD−D矢示線における断面図である。
図7】同固定構造によって、固定孔にクリップを固定した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜7を参照して、本発明に係るクリップの固定構造の、一実施形態について説明する。
【0015】
図1及び図5に示すように、この実施形態のクリップの固定構造は、固定孔2が形成された被取付部材1にクリップ10を固定するためのものであり、更に同クリップ10を介して被取付部材1に取付部材7を取付ける構造となっている。
【0016】
前記被取付部材1としては、例えば、車両の油圧コントロールバルブのボディや、ハイブリット車や電気自動車のバッテリーのケース、或いは、車体パネルや、車体フレーム等を挙げることができ、特に限定はされない。一方、前記取付部材7としては、温度センサや、電装部品、トリムボード、ガーニッシュ、アシストグリップ、バンパー、ランプ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、この実施形態においては、前記被取付部材1が車両の油圧コントロールバルブのボディであり、前記取付部材7が温度センサとなっている。
【0017】
図1及び図4(a),(b)に示すように、前記固定孔2は、軸心C1を中心として所定内径で円形状に形成されると共に、その内周にネジ溝が形成されたネジ孔3と、軸心C2を中心として所定内径で円形状に形成されると共に、その軸心C2を前記ネジ孔3の軸心C1とずらして、且つ、ネジ孔3に外周の一部が重なり合うように連結されて、それらの境界部がくびれた連通部5をなす保持孔4とを有している。
【0018】
すなわち、連通部5とは、図4(a)に示すように固定孔2を軸方向一端から見て、保持孔4の外周一部がネジ孔3に連結されたときの、両孔3,4の境界部であって、内周幅が最も小さくなるような、くびれた部分を意味している。なお、この実施形態では、ネジ孔3及び保持孔4が共に円形孔状をなしているが、例えば、保持孔4を矩形孔状(四角形や多角形状等)としてもよい(図4(a)の想像線参照)。この場合であっても、保持孔4とネジ孔3の境界部のくびれた部分が、連通部5をなしている。
【0019】
また、図4(a)に示すように、ネジ孔3と保持孔4との連通部5は、その開口幅Wが、保持孔4の最大内径D1(軸心C2を通る最も大きな内径)よりも小さくなるように形成されている。なお、保持孔4が矩形孔状の場合は、軸心を通る対向した内周面における最大幅よりも、連通部5の開口幅Wが小さくなるように形成される。また、前記連通部5の開口幅Wは、この実施形態では、ネジ孔3の軸心C1及び保持孔4の軸心C2を結ぶラインLに直交する方向に沿った長さとなる(図4(a)参照)。
【0020】
この実施形態の固定孔2の場合、ネジ孔3の内径が保持孔4の内径よりも大きく形成されている。すなわち、この固定孔2は、小径の保持孔14と大径のネジ孔3とが連結してなり、その内周途中の連通部5がエッジ状にやや角ばった形状を呈する、だるま孔状をなしている。なお、保持孔4の内径をネジ孔3の内径よりも大きく形成したり、ネジ孔3の内径と保持孔4の内径とが同一内径に形成したりしてもよく、上述したように、保持孔4の最大内径D1(或いは最大幅)よりも小さい開口幅Wを有する連通部5が形成されていればよい。
【0021】
また、この実施形態の固定孔2は、被取付部材1を貫通しない所定深さの凹部となっているが、被取付部材1を貫通した孔であってもよい。すなわち、本発明における「固定孔」とは、両端が貫通した貫通孔のみならず、一端だけが開口した凹部を含むものである。また、前記保持孔4の内周の一部に、ネジ溝と同様の溝を設けてもよい。
【0022】
なお、温度センサである取付部材7は、センサ9aが固設されたワイヤ9の両端を、一対のハーネス管8,8に挿入させ、カシメ部8aでかしめて固定した形状をなしている。
【0023】
一方、クリップ10は、本体部20と、該本体部20から延出され前記固定孔2に挿入される脚部30とを有している。
【0024】
この実施形態における本体部20は、温度センサである取付部材7を保持可能な形状をなしている。すなわち、図2(b)に示すように、本体部20は概略長方形の枠状をなしており、その裏面側(被取付部材1側)に、取付部材7のワイヤ9やセンサ9aを収容可能な収容空間21が形成されている。
【0025】
また、この収容空間21の長手方向一側は、開口しており、同開口部からは、取付部材7のワイヤ9を引き掛けるためのフック部23が突設されている。図2(b)、図3及び図5に示すように、該フック部23は、L字状をなすアーム部23aと、該アーム部23aの先端から、本体部20の表面側に向けて突設した突部23bとからなり、取付部材7のワイヤ9が引き掛けられて抜け止め保持されるようになっている。
【0026】
更に収容空間21の長手方向他側部には、本体部20の外部に連通した一対の挿通孔25,25が貫通して形成されており(図2(a)及び図3参照)、取付部材7の一対のハーネス管8,8を本体部外方に挿出可能となっている。
【0027】
なお、上記の本体部20の形状は、取付部材の形状等によって適宜設定することができ、特に限定はされない。例えば、取付部材が板状部材等のような場合には、本体部を、取付部材に形成される取付孔周縁に係合する、平板フランジ状や傘型フランジ状等としてもよい。
【0028】
一方、前記脚部30は、少なくとも前記保持孔4に挿入される柱状部31と、該柱状部31に連結部33を介して連結されると共に、柱状部31との間に形成された空隙35により撓み可能とされ、前記ネジ孔3に挿入される弾性片部37とを有している。
【0029】
この実施形態では、図2(b)に示すように、前記本体部20の長手方向他側部の裏面側から、所定長さで柱状部31が延設されている。
【0030】
図2(a),(b)及び図6に示すように、この柱状部31は、前記固定孔2のネジ孔3に挿入されるネジ孔挿入部39と、該ネジ孔挿入部39に幅狭部分40を介して連設され、前記固定孔2の保持孔4に挿入される保持孔挿入部41とを有している。
【0031】
前記ネジ孔挿入部39は、固定孔2の連通部5の、ネジ孔3側の開口周縁に適合した曲面状の外周形状をなしていると共に、前記連通部5の開口幅Wよりも大きな幅で形成されている。
【0032】
一方、前記保持孔挿入部41は、固定孔2の連通部5の、保持孔4側の開口周縁に適合した曲面状の外周形状をなしていると共に、前記連通部5の開口幅Wよりも大きな幅で形成されている。
【0033】
また、これらのネジ孔挿入部39と保持孔挿入部41との間の幅狭部分40は、前記固定孔2のエッジ状をなす連通部5に適合するような、外周面が凹状にくびれた形状をなしている。
【0034】
そして、この実施形態では、図6に示すように、固定孔2のネジ孔3及び保持孔4に、脚部30のネジ孔挿入部39及び保持孔挿入部41をそれぞれ挿入すると、ネジ孔挿入部39と保持孔挿入部41との間のくびれた幅狭部分40に、固定孔2のエッジ状をなした連通部5が入り込むと共に、連通部5のネジ孔3側の開口周縁にネジ孔挿入部39が配置され、同連通部5の保持孔4側の開口周縁に保持孔挿入部41が配置されるようになっている。
【0035】
なお、この実施形態におけるネジ孔挿入部39及び保持孔挿入部41は、前述したように、固定孔2の連通部5の、ネジ孔3側及び保持孔4側の開口周縁に適合する形状をなしているが、これに限定されるものではなく、固定孔2の連通部5の開口幅Wよりも大きな幅を有する形状であればよい。
【0036】
また、前記保持孔挿入部41は、突条部43を有している。すなわち、保持孔挿入部41の、ネジ孔挿入部39とは反対側の外周両側部が切り欠かれて、その幅方向中央に突条部43が延設されている。図6に示すように、この突条部43の外側面43aは、前記保持孔4の内周面に適合する曲面状をなしており、保持孔4に保持孔挿入部41を挿入したときに、保持孔4の内周にほぼ隙間なく当接するようになっている。また、突条部43の軸方向先端には、先端に向けて次第に高さを低くするテーパ面43bが形成されており(図2(b)及び図3参照)、保持孔4に保持孔挿入部41を挿入する際の挿入性が高められている。
【0037】
なお、上記突条部43は設けなくともよい。また、保持孔挿入部41の、ネジ孔挿入部39とは反対側の外周両側部を切り欠かずに、保持孔挿入部41の外周全体を、保持孔4の内周に適合する曲面状としてもよい。
【0038】
前記ネジ孔挿入部39の軸方向先端部(本体部20から離れた端部)には、連結部33が設けられており、この連結部33に弾性片部37の基端部が連結されている(図2(b)及び図3参照)。その結果、弾性片部37は、柱状部31との間に設けた空隙35によって、基端部側を支点として撓み可能となっている。また、弾性片部37は、その外周面が前記ネジ孔3の内周形状に適合した曲面状をなしている。なお、弾性片部37と柱状部31とを連結させる連結部33は、弾性片部37の基端部側に設けてなくともよく、その位置は特に限定されない。
【0039】
また、弾性片部37の自由端部からは、柱状部31とは反対側の外方に向かって、フランジ部45が延設されている。なお、このフランジ部45は、図5に示すように、固定孔2にクリップ10を固定した状態で、被取付部材1の表面から所定高さ離れた位置に配置されるようになっている。これによって、本体部20の裏面側が被取付部材1に当接した状態でも、フランジ部45を押して、弾性片部37を撓ませることを容易にしている。
【0040】
なお、弾性片部37は、連結部33を介して柱状部31に連結されるものの、本体部20には連結しない構造となっているので、クリップ10が固定孔2に挿入された状態で、クリップ10に回転力やこじり力が作用しても、それらの力の影響を受けにくく、固定孔2からクリップ10が抜け外れることを防止することに、寄与することができるようになっている。
【0041】
更に図2及び図3に示すように、弾性片部37の、柱状部31とは反対側の外周面には、ネジ孔3のネジ溝内周に係合するように、ネジピッチと同じ間隔で突設された複数の突起部47が形成されている。この実施形態の場合、突起部47は、弾性片部37の自由端部側に主として形成されており、連結部33近傍の基端部側には設けられていない構造となっている。これによって、脚部30を固定孔2に挿入しやすくしている。なお、複数の突起部47の形成位置や個数は、特に限定されるものではない。
【0042】
以上説明したクリップ10は、例えば、ナイロン等のポリアミド系樹脂や、ポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材料で形成することができる。また、クリップ10は、上記樹脂材料に、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等を含有させて補強した、繊維強化樹脂から形成してもよい。
【0043】
次に、本発明に係るクリップの固定構造の使用方法及び作用効果について説明する。
【0044】
まず、図1に示すように、クリップ10の本体部20の挿通孔25,25から、取付部材7のハーネス管8,8を挿出させると共に、本体部20の収容空間21にワイヤ9及びセンサ9aを収容して、同ワイヤ9をフック部23によって抜け止め保持する。
【0045】
この状態で、クリップ10の脚部30の柱状部31を、被取付部材1の固定孔2の保持孔4に整合させ、脚部30の弾性片部37を、固定孔2のネジ孔3に整合させると共に、脚部30のネジ孔挿入部39と保持孔挿入部41との間のくびれた幅狭部分40を、固定孔2のエッジ状をなした連通部5に整合させて、固定孔2に対してクリップ10の脚部30を押し込んでいく。
【0046】
すると、脚部30のくびれた幅狭部分40に、固定孔2の連通部5が入り込み、保持孔挿入部41が保持孔4に挿入され、ネジ孔挿入部39がネジ孔3に挿入されると共に(図6参照)、弾性片部37が、その突起部47がネジ孔3のネジ溝内周に押圧されて、空隙35を介して撓みつつ押し込まれていく。なお、フランジ部45を押して、弾性片部37を撓ませた状態で、ネジ孔3に脚部30を挿入してもよい。
【0047】
そして、本体部20が被取付部材1の表面側に当接するまで、脚部30を押し込んで、押し込み作業を終了すると、弾性片部37が弾性復帰して、複数の突起部47がネジ孔3のネジ溝内周に係合すると共に、被取付部材1の表面に本体部20が当接して、クリップ10を固定孔2に固定することができ(図5参照)、また、該クリップ10を介して取付部材7を被取付部材1に取付けることができる(図7参照)。
【0048】
上記のように、この固定構造においては、柱状部31を保持孔4に挿入すると共に、弾性片部37をネジ孔3に挿入するだけの作業で、固定孔2に対してクリップ10をワンタッチで簡単に固定させることができ、クリップ10の固定作業性を向上させることができる。
【0049】
また、固定孔2にクリップ10が固定された状態で、図5の矢印F5に示すように、フランジ部45を空隙35側に押し込むことにより、連結部33を介して弾性片部37を撓ませて、複数の突起部47をネジ孔3のネジ溝内周から係合解除させ、その状態を維持しつつ、ネジ孔3及び保持孔4から弾性片部37及び柱状部31を引き抜くだけの作業で、固定孔2からクリップ10を簡単に取外すことができる。
【0050】
更に、この実施形態においては、脚部30の弾性片部37の自由端部側に複数の突起部47が設けられ、基端部側には突起部47が設けられていないので、脚部30の弾性片部37を、その基端部側から固定孔2のネジ孔3内に挿入するときに、複数の突起部47がネジ孔3の開口周縁に引っ掛かることがなく、差し込みやすくすることができ、また、脚部30を押し込んでいくと、ネジ孔3のネジ溝内周に弾性片部37の基端部が押圧されて、弾性片部37の自由端部側が柱状部31に近づく方向に撓んで、弾性片部37が縮径するため、複数の突起部47をネジ溝に引っ掛かりにくくして、脚部30を容易に挿入することができる。また、弾性片部37の自由端部側を上記のように撓ませることにより、複数の突起部47をネジ孔3のネジ溝内周から係合解除させて、固定孔2からクリップ10を容易に取外すことができる。その結果、固定孔2に対してクリップ10をスムーズに着脱することができる。
【0051】
そして、この固定構造においては、固定孔2からクリップ10を引き抜く方向に、クリップ10に引き抜き力が作用しても、ネジ孔3のネジ溝内周に複数の突起部47が係合しているので、クリップ10を固定孔2に対して抜け止めした状態で固定することができる。
【0052】
また、固定孔2に脚部30が挿入されたクリップ10は、固定孔2のネジ孔3及び保持孔4に、脚部30のネジ孔挿入部39及び保持孔挿入部41がそれぞれ挿入されると共に、ネジ孔3に弾性片部37が挿入されて複数の突起部47がネジ溝内周に係合した状態となっている。
【0053】
したがって、この状態で、クリップ10に回転力が作用しても、保持孔4に挿入された保持孔挿入部41と、ネジ孔3に挿入された弾性片部37及びネジ孔挿入部39とによって、固定孔2に対してクリップ10が回転しないように回転規制することができる。
【0054】
更に、クリップ10の本体部20にこじり力、すなわち、固定孔2に対してクリップ10の柱状部31を前後左右や斜め方向に動かそうとする力(図6の矢印F1,F2,F3参照)や、クリップ10を斜め上方に持ち上げるような力(図5の矢印F4参照)が作用した場合であっても、クリップ10をしっかりと保持させることができる。
【0055】
すなわち、固定孔2に挿入されたクリップ10の柱状部31の保持孔挿入部41が、固定孔2の連通部5の開口幅Wよりも大きな幅で形成されているので、クリップ10の本体部20にこじり力が作用しても、前記保持孔挿入部41が、固定孔2の連通部5の開口周縁に係合するため、柱状部31が保持孔4から抜けてしまうことを防止して、前記こじり力に対抗して、クリップ10を所定位置に保持させることができる。
【0056】
また、この実施形態においては、クリップ10の柱状部31は、固定孔2の保持孔4に挿入される部分のほか、ネジ孔3に挿入され、固定孔2の連通部5の開口幅Wよりも大きな幅で形成された、ネジ孔挿入部39を有している。そのため、クリップ10に回転力やこじり力が作用した場合に、連通部5のネジ孔3側の開口周縁にネジ孔挿入部39が係合すると共に、連通部5の保持孔4側の開口周縁に保持孔挿入部41が係合して、固定孔2の連通部5の開口周縁に対して、ネジ孔3側及び保持孔4側の両方から、柱状部31が係合するので、固定孔2に対してクリップ10をより確実に位置決め固定することができる。
【0057】
更にこの実施形態においては、図6に示すように、クリップ10の柱状部31は、固定孔2の連通部5の開口周縁の形状に適合する形状をなしているので(ここでは、ネジ孔挿入部39及び保持孔挿入部41)、固定孔2の連通部5の開口周縁に、クリップ10の柱状部31のネジ孔挿入部39及び保持孔挿入部41をしっかりと係合させることができ、固定孔2に対してクリップ10をガタ付きを少なくして、精度よく位置決め固定することができる。
【0058】
また、クリップ10の脚部30の弾性片部37は、空隙35により撓み可能とされ、弾性を有しているので、ネジ孔3のネジ溝等に寸法誤差などがあっても、弾性片部37に設けた突起部47を、ネジ孔3のネジ溝内周に弾性的に係合させることができ、固定孔2に対してクリップ10をガタ付きを少なくして固定させることができる。
【0059】
更に上記のように、クリップ10の脚部30は、空隙35により撓み可能とされているので、例えば、クリップ10を、剛性は高いが柔軟性に乏しい繊維強化樹脂等で成形しても、弾性片部37を撓ませることによって、弾性片部37の突起部47を損傷させることなく、固定孔2に対して脚部30を抜き差しすることができ、クリップ10を繰り返し使用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 被取付部材
2 固定孔
3 ネジ孔
4 保持孔
5 連通部
7 取付部材
10 クリップ
20 本体部
30 脚部
31 柱状部
33 連結部
35 空隙
37 弾性片部
39 ネジ孔挿入部
41 保持孔挿入部
47 突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7