(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マイクロ空室をTSV(Through Silicon Via)の形成に用いることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のデバイスの製造方法。
【背景技術】
【0002】
半導体分野はこれまで基本電子能動素子(電子素子)の一つであるトランジスタの微細化により高集積化を進めてきている。しかし、その基本技術の一つである露光技術の停滞により、微細化による高集積化に限界説が云われ始めている。また、基本電子素子の微細化はLSIデバイス化した際のデバイスの温度上昇や電子漏洩の潜在的問題もある。最近は、微細化に依らない高集積化の技術開発もされ始めている。その一つがLSIの3次元化(3DI:3 Dimensional Integration)の技術である。この技術の実現に必要な技術の一つが、TSV(Through Silicon Via)の技術である。この技術を用いた3D集積化LSIデバイスは、ワイヤーボンディング技術を用いるパッケージレベルの3D集積化デバイスとは異なり、集積している一つ一つのデバイス間の電気的相互接続特性の飛躍的向上も期待され、次世代の高集積化デバイスとして有力である。
【0003】
TSVに要求される貫通孔の深さは数十ミクロンら数百ミクロン、アスペクト比は10以上の細く深い孔である(高アスペクト比ホール)。この様なホールの形成には、ハーフミクロンからクオーターミクロンの微細回路パターンの形成に最近採用されているドライエッチング法とレジスト除去用としての酸素プラズマアッシング法の採用が提案されている。しかし、この様なドライエッチング法においては、形成されるホール周辺部にドライエッチングガス、レジストなどに起因する堆積ポリマーが生じてホール内部及びその周辺部に残存し、高抵抗化や電気的短絡を招き歩留り低下の原因になる。又、残存堆積ポリマーの除去及びホール内部の清浄化にはウエット洗浄を必要とする。従って、TSVにおいても、これまで通りのウエットエッチング・洗浄工程への期待が増している。
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討と実験によると、以下のようなことが明らかになってきて、従来法でのウエットエッチング・洗浄では不十分であることが分かった。即ち、高アスペクト比ホールの底部をエッチングしたり、ホール内を洗浄したりする場合、従来の処理液を使用すると、ホールが細く深いためにホール内に処理液(エッチング液、洗浄液など)が侵入して行かない場合が生ずることがある。そのために、所期通りにエッチングや洗浄が行えない状況が発生する。その解決策としては、従来から実施されている方策の一つとして、処理液に界面活性剤を混入しホール内壁との濡れ性を改善して先の課題を解決することが考えられる。
【0005】
しかし、処理液の十分な機能発揮を担保しながら濡れ性を改善してその目的を達成しようとすると、エッチングでも洗浄でも適切な処理液の調合が適っていないのが現状である。更に、処理液を被処理体表面からホールに供給しようとするとホール内に雰囲気気体の気泡が形成されて、処理液のホール内侵入を妨げる現象が起きることもある。この現象は円筒状のホールで顕著に観察される。
【0006】
別には、複雑で微細な穴を複数有する太陽電池用の多結晶シリコンを、超音波振動を用いて洗浄する際に、減圧と加圧を繰り返し行う技術が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に開示された技術は、超音波振動を用いるので、本件で対象としているTSVのような高アスペクト比のホールパターンにおいては、ホールを形成している壁面構成部材の壁厚に対する壁の高さが極端に高いため、超音波振動によって壁面構成部材が崩れてしまう(パターン崩れ)場合があるという問題が発生する。この問題は、ホールのアスペクト比が高くなればなるほど、また、ホールパターンが微細になればなるほど、顕著になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、SOI基体に設けられた細く深いホール(孔)内に気泡が存在し処理液がホール底部まで浸透していかない状況を説明するための模式的説明図である。
【0013】
図1において、符号100はSOI基体、101はSi(シリコン)半導体基板、102はSiO
2(酸化シリコン)層、103はSi層(103−1,103−2)、104はホール、105は気泡、106は処理液、107は気液界面、108は内側壁面(108−1,108−2)、109は内底壁面、および、110は開口を示す。
【0014】
常圧雰囲気下で、SOI基体100の表面に処理液を供給すると、Si層103の内側壁面に対する濡れ性が良くても、ホール104内(マイクロ空間)が処理液で十分満たされない状況が起こる場合がある(
図1に一例が模式的に示される)。ホール104内が処理液で満たされない状況を良く観察すると、ホール104内に気泡105が存在している。気泡105は、SOI基体100を静止状態に維持していると処理液106で塞がれた状態でホール104内に留まっている。気泡105が存在する状況で、超音波振動をSOI基体100に掛けるとホール104内で気液交換が起こり、ホール104内は処理液で速やかに満たされる。或いは、超音波振動をSOI基体に掛けながらSOI基体100表面上に処理液を供給すると気泡の形成は比較的阻止され、気泡104が形成されにくくなる傾向がある。しかし、超音波振動も振動が大き過ぎたり激し過ぎると、形成される、或いは形成されているホールパターン(レジストパターンやエッチングパターン等)が崩れたりするので好ましくない。
本発明において超音波振動を仮に採用するとしても、パターン崩れが起こらない程度の範囲で超音波振動を穏やかにするのが望ましい。
【0015】
ホール104の開口直径を「r」とし、ホール104の開口位置から内底壁面109までの深さを「l」とすると、所謂アスペクト比は「l/ r」で示される。ホール104内に気泡105が形成される条件は、処理液の表面張力、粘度、液組成、側壁面108の表面平滑性、使用する処理液の濡れ性、「r」「l」の大小とアスペクト比等、パラメーターが多く、一概に論ずることは難しい。
【0016】
本発明者らは、先ず、
図1に示す様な構造材のSOI基体100に、ホール104の内構造を円筒に限らず種々のホールを形成し処理液として超純水を使用して気泡の形成傾向を検証してみた。ホール104の内構造は円筒形状に限らず、巾着形状(開口の下部の方が袋状或いはテーパー状に広がっている)、矩形形状(開口が正方形、長方形、ひし形などの四角形状)、三角形状、六角形状、楕円形状、超楕円形状、星形形状のものとして、サイズを種々変えて作成した。その結果、ホール104の開口110の面積を「S」、内容積を「V」とすると、どの形状のものも、「V/S」の値が「3」付近から気泡の形成し易さが急速に進む傾向にあることが分かった。その中でも、ホール104の内側壁面が曲面の場合(円筒や楕円の様な)とコーナーがある(矩形の場合の様に)場合とを比較すると、曲面の場合の方が気泡の形成がよりし易くなることも分かった。その原因は、推測の域を出ないが、内壁にコーナーがあると、気泡は球体になろうとする傾向が強いので、コーナーは気泡で占められ難くなりコーナーを通じて液が内底壁面109まで到達し、その結果気液交換が起こりやすくなってホール空間が液で満たされるものと考えられる。
【0017】
そこで、超純水に代えて、フッ酸(HF)とバッファードフッ酸(BFH)を夫々使用して、内底壁面109を構成するSiO
2層102をエッチングしてみた。その結果、フッ酸の場合は、「V/S」の値が「3」付近でも比較的気泡の形成はそれほどではなかった(「V/S」の値が「3」の300個のホールの中、気泡形成したのは15個程度)が、バッファードフッ酸の場合は80%(240個)の割合で気泡が形成されて、エッチングは十分なされなかった。そこで、本発明者等は、鋭意研究した結果、ホール底面のエッチングあるいは洗浄するSiO
2層102と同じSiO
2膜を、ホール側表面に形成することで、ホールの内壁表面を同一材料で構成し、エッチングあるいは洗浄に使用する処理液として、SiO
2に対する濡れ性に優れた薬液を使用すれば、高アスペクト比のホールでも、効率よくホール内壁面処理ができることを見出した。
【0018】
本発明においては、ホールの内空間を以後「マイクロ空室」と云うことがある。本発明においては、マイクロ空室が円筒でない構造(「非円筒」という)の場合の「r」の値は、その際のマイクロ空室を円筒と見做して、非円筒の「S」より求める。その場合の「l」は、開口位置からマイクロ空室の再奥内底壁面位置までの深さ(最大深さ)とする。本発明においての減圧の効果は、アスペクト比(l/r)が5以上かまたはアスペクト比が5未満でかつV/S(V: マイクロ空室の容積、S:開口の面積)が3以上の場合に顕著になる。特に、処理液がバッファードフッ酸で、被処理体がSOI基体の場合に一層顕著な効果を得ることができる。
【0019】
本発明において、「l/r」の値が5以上のときは、「V/S」の値に依存することなく、減圧の効果が顕著に得られる。「l/r」の値が5未満のときは、「V/S」の値に依存し、「V/S」<3であると減圧の効果はほとんど得られず、内部に気泡が残留するホールの割合が高くなる。本発明においては、「l/r」の値が5未満の場合、「V/S」の値は、より好ましくは、3.5以上とすることが望ましい。
【0020】
図2は、マイクロ空室内に処理液を導入してマイクロ空室内を処理する前に、SiO
2膜をマイクロ空室内壁表面に設けた場合を説明するための模式的説明図である。図の符番は、
図1と同じものは同じ符番を付してある。SOI基体100は、Si層103に予め所定のホ−ルが設けられ、その上で、SiO
2膜形成用のオゾンを含む薬剤を液状で又は噴霧状、気体状で該ホールに導入してオゾンを含む環境にホール内空間を晒してSiO
2膜201a(201a−1,201a−2)が内側壁面108(108−1,108−2)及びSi層103表面に形成され、ホール(マイクロ空室)204が出来る。オゾンを含む環境の形成には、オゾン水の使用が好ましい。特に、濃度が、5〜8ppmである、超純水にオゾンを直接溶解させたオゾン水の使用が好ましい。この他、オゾンを気体状で直接ホール内に導入しても良い。更に、これらのオゾン系の薬剤によるSiO
2膜形成の環境形成の他、場合によっては、シリコン(Si)を酸化する能力のある塩酸、硝酸、硫酸及びこれらの混合液を所望に応じた濃度で使用することも出来る。更に、これ等の酸に、過酸化水素水、リン酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、およびコハク酸から選ばれる少なくとも1種以上を混合して用いても良い。レジストパターンを含むようなパターンの場合の処理には、レジストを侵さないBHFの使用が望ましい。BHFは、40%フッ化アンモニウム(NH
4F)と50%フッ化水素酸を任意の割合で混合した水溶液である。SiO
2膜201aは、後で除去されるので、その厚さは、数ナノメータ程度とされるのが望ましい。SiO
2膜201aの厚みは極めて薄いので、マイクロ空室204aと元のホールとの容積は殆ど同じである。本発明においては、マイクロ空室204a内を洗浄若しくは底面のSiO
2層102をエッチングする際に使用される処理液は、SiO
2への親和性に優れた液組成の材料から選択される。その様な処理液としては、フッ化水素(HF)酸、バッファードフッ化水素酸(BHF)などのエッチング液、H
2SO
4/H
2O
2(SPM),NH
4OH/H
2O
2/H
2O(APM),HCl/H
2O
2/H
2O(HPM),HF/H
2O(DHF)などの洗浄液が挙げられる。Si層103にエッチングによってマイクロ空室204aを形成する場合のエッチング液としては、適宜所望に従って選択される。例えば、アルカリ性エッチング液としては、(1)水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、および水酸化ナトリウムから選ばれる1種以上であるアルカリ化合物およびテトラメチルアンモニウム塩酸塩、テトラメチルアンモニウム硝酸塩、テトラメチルアンモニウム硫酸塩、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウムプロピオン酸塩、テトラメチルアンモニウムシュウ酸塩、テトラメチルアンモニウムコハク酸塩、塩化カリウム、塩化ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種であるアルカリ塩を含有したアルカリ性水溶液の少なくとも一種とヒドロキシルアミンを混合したエッチング液が挙げられる。酸性エッチング液としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、およびコハク酸から選ばれる少なくとも1種以上である酸と、ケイフッ化水素酸(H
2SiF
6)、ホウフッ化水素酸(HBF
4)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化アンモニウム(NH
4F)、酸性フッ化アンモニウム(NH
4HF
2)から選ばれる少なくとも1種以上とを混合したエッチング液が挙げられる。この他、フッ化水素酸も使用される。
【0021】
図3は、本発明を具現化するための好適な製造システムの一例を説明するための模式的構成図である。
図4は、
図3に示す製造ラインの一部の模式的構成図である。
図3、4に示す製造システムに於いては、常圧だけでなく必要に応じて減圧下でも処理が行えるようになっている。
図3,4において、200は処理システム、201は減圧処理チャンバー(室)、202は被処理体設置テーブル、202−1は被処理体設置テーブル用の回転軸体、203は被処理体、204は雰囲気ガス供給ライン、205は処理(薬)液供給ライン、206は回収フード、207は減圧廃液タンク、208は大気若しくはN
2供給ライン、209は排液ライン、210は回収ライン、211,212は排気ライン、213は排気ポンプ、214〜221はバルプ、222は処理液用の供給量可変ノズル、301はスピナー、302は薬莢、および、303はアルミフレームを示す。
【0022】
処理システム200は、減圧可能な処理チャンバー(室)201、減圧可能な廃液タンク207を備えており、これらの内部は、必要に応じて、排気ポンプ213により所定値に減圧される構成になっている。処理チャンバー(室)201には、外部より、雰囲気ガス供給ライン204を介してN
2などの雰囲気ガスが、処理液供給ライン205を介して処理(薬)液が、所定のタイムミングと所定量で夫々供給される。雰囲気ガス供給ライン204の途中には、流量調整機能を備えた開閉バルブ214が設けられている。オゾン系処理液供給ライン223の先端には、供給量可変ノズル224が設けられ、処理チャンバー201内に処理液を所定通りに調整された流量で注入できるようになっている。処理チャンバー201内には、被処理体設置テーブル202が被処理体設置テーブル用の回転軸体201−1に固定されて設置されている。被処理体設置テーブル202上には、被処理体203が設置される。雰囲気ガス供給ライン204を介して減圧処理チャンバー201内に供給された雰囲気ガスは矢印Aで示す様に、回収フード206を通じて、処理液供給ライン205を介して供給された処理は、矢印Bで示す様に、回収フード206を通じて、夫々回収ライン210から廃液タンク207内に回収される。回収ライン210の途中には、開閉バルブ217が設けてある。
【0023】
廃液タンク207には、供給ライン208、排気ライン211が結合されている。供給ライン208は、大気若しくはN
2用の供給ラインである。廃液タンク207内の廃液223は、排液ライン209を介して廃液タンク207外に放出される。廃液タンク207内は、必要に応じて供給ライン208から大気若しくはN
2を供給して一気圧に戻すことができる。供給ライン208の途中には、開閉バルブ215が設けてある。又、排液ライン209の途中には、開閉バルブ216が設けてある。処理チャンバー201は、排気ライン212を介して、廃液タンク207は、排気ライン211を介して、必要に応じて、夫々ポンプ213により減圧にされる。排気ライン211の途中には、バルブ218、219が、排気ライン212の途中には、バルブ220、221が、夫々設置されてある。バルブ219、221は、流量可変機構を備えた開閉バルブである。排気ポンプ213は水分に耐性のあるポンプで、例えば、ダイヤフラム型ケミカルドライ真空ポンプ、具体的には、DTC−120(ULVAC製)が好ましく採用される。
【0024】
処理チャンバー201と廃液タンク207は
図5に示す様に、例えばアルミ製のフレーム303に取り付けられている。フレーム303には、回転軸体202−1を回転させるために設けたスピナー301も取り付けられてある。処理(薬)液供給ライン205の上流端には処理液が貯蓄されてある薬莢302が接続されている。
【0025】
図5は、薬莢302内部に備える処理(薬)液供給系の好適な構成を説明するための模式的説明図である。
図5において、400は窒素圧送方式処理(薬)液供給系、401はキャニスター、402は処理液供給ライン、403,411はストップバルブ、404は流量調節バルブ、405は流量計、406はミストトラップ、407,408は窒素ガス供給ライン、409はベント(排気)バルブ、410は分流継手、412はレギュレーター、413は継手、および、414,415はクイックコネクターを示す。
【0026】
窒素圧送方式の処理(薬)液供給系400は、キャニスター401には、継手413を介して上流側に3/8インチラインと下流側に1/4インチラインが設けてある処理液供給ライン402がクイックコネクター414を介して、1/4インチの窒素ガス供給ライン407がクイックコネクター415を介して、夫々接続されている。処理液供給ライン402の途中には、ストップバルブ403、流量調節バル404、流量計405が設けてある。そして、処理液供給ライン402のストップバルブ403側の下流部分は、処理液供給ライン205に繋がっている。窒素ガス供給ライン407の途中には、ベント(排気)バルブ409、分流継手410が設けてある。ベント(排気)バルブ409は、キャニスター401内と窒素ガス供給ライン407内の窒素ガスを外部に排気するためのものである。窒素ガス供給ライン407の下流側は、ミストトラッップ406内に挿入されてある。窒素ガスは、レギュレーター412、ストップバルブ411、窒素ガス供給ライン408を通じてミストトラッップ406内に導入される。ミストトラッップ406は、処理液が上流側に逆流するのを防止するために設けてある。
【0027】
図6は、廃液タ207の模式的構成図である。
図5において、501はドレイン用のフランジ、502は減圧用のフランジ、503は廃液導入用のフランジ、504はガス導入用のフランジ、505は真空計、506は流量計、および、507は液位観察用窓を示す。
【0028】
廃液タ207には、ドレイン用のフランジ501を介して排液ライン209が、減圧用のフランジ502を介して排液ライン211が、廃液導入用のフランジ503を介して回収ライン210が、フランジ504を介して供給ライン208が接続されている。真空計505は、廃液タンク207内の圧力を測定するものである。廃液タンク207の上部には、廃液タンク207内の廃液の水位を観察するために耐は廃液用の透明部材で構成された液位観察用窓504が設けてある。
【0029】
図7は、別の好適な処理チャンバーを説明するための模式的構成図である。
図7において、600は減圧処理チャンバー、601はチャンバー構成体、602は上蓋、603は被処理体設置用のステージ、604は回転軸体、605は磁性流体シール、606は特殊処理(薬)液供給ライン、607はオゾン水供給ライン、608は超純水供給ライン、609,610,611,618は流量計、612,613,614,617,621,624はバルブ、615はガス導入ライン、619はガス排出ライン、616,620,623はフランジ、622は廃液ライン、625は観察用窓(625−1,625−2)、および、626は真空計を示す。
【0030】
図7に示す減圧可能な処理チャンバー600が、
図3に示す処理チャンバー201と異なる点は、特殊処理(薬)液供給ライン606、オゾン水供給ライン607、超純水供給ライン608の3本の供給ラインを備えていることである。その他は、もう一つの異なる点を除いて、処理チャンバー201と構造上は基本的に変わらない。もう一つの異なる点は、処理チャンバー600に、ガス導入ライン615、ガス排出ライン619が取り付けてあることである。ガス導入ライン615を通じて処理チャンバー600内の雰囲気ガスが導入される。ガス導入ライン615は、フランジ616により処理チャンバー600に取り付けられている。ガス導入ライン615の途中には、開閉用のバルブ617、流量計618が設けてある。ガス排出ライン619は、フランジ620により処理チャンバー600に取り付けられている。ガス排出ライン615の途中には、開閉用のバルブ621が設けてある。ガス排出ライン615の下流側は、真空ポンプ213と同様のポンプ(不図示)に接続されている。処理チャンバー600は、チャンバー構成体601と上蓋602で内部が減圧状態に保持されるように構成される。上蓋602には、チャンバー600内部を観察するための2つの観察用窓625−1,625−2が設けてある。処理チャンバー600の内部には、被処理体が設置される被処理体設置用のステージ603が設けられてある。ステージ603には、ステージ603を回転させるための回転軸体604が取り外し可能な状態で固設されている。回転軸体604は、磁性流体シール605でシールされて減圧処理チャンバー600の外部に設置されているスピナーの回転軸体に接合されている。特殊処理(薬)液供給ライン606の途中には、流量計609、バルブ612が設けてある。オゾン水供給ライン607の途中には、流量計610、バルブ613が設けてある。超純水供給ライン608の途中には、流量計611、バルブ614が設けてある。減圧処理チャンバー600の底部には、廃液ライン622がフランジ623によって減圧処理チャンバー600に取り付けてある。廃液ライン622の途中には、開閉用のバルブ624が設けられてある。減圧処理チャンバー600の側面には、処理チャンバー600内の圧力を測定するための真空計626が取り付けてある。
【0031】
ガス導入ライン615に結合されたガス噴出内壁管701が減圧可能な処理チャンバー600の内壁に取り付けてある。ガス噴出内壁管701には、処理チャンバー600の内空間の中心軸に噴出し方向が向けられているガス噴出口702が所定数設けてある。ガス噴出口702の噴出し径と個数は、所定のガス噴出し流速になるように設計される。
【0032】
本発明においては、ガス噴出口702からのガス噴出(吹き出し)流速は、ガスの噴出によって処理チャンバー内でなるべく撹拌作用あるいは乱流作用が起きないように予め適宜設計時に決められるが、より正確にはガス噴出の予備実験において最適値を決定するのが望ましい。ガス噴出による撹拌作用あるいは乱流作用の程度は、ガス排気速度にも依存し、本発明においては、好ましくは、0.1〜5.0m/sec、より好ましくは、0.5〜3.0m/sec、最適には2.0m/sec前後とするのが望ましい。例えば、直径2mmの噴出口702を図示の様に20個半円周上に設ける場合は、処理チャンバー600内に200cc/minの量でN
2ガスを流すのが望ましい。この際のN
2ガスの流速は、2.0m/secである。本発明においては、処理液は、気体の吸収能を高めるために予め十分脱気しておくのが好ましい。更に、処理液供給用のラインは、酸素透過性を抑制してある樹脂製の積層チューブ(ニチアス株式会社製)を使用するのが望ましい。これまでの説明においては、雰囲気ガスとして、N
2ガスまたは大気ガスを例示的に挙げて説明してきたが、これらのガスに代えて、CO
2ガスを使用すれば、処理液への溶解量を増すことが出来るので好ましい。
【0033】
図9は、水の飽和蒸気圧曲線を示すグラフである。横軸は、温度(℃)、縦軸は、圧力(Torr)を示すものである。本発明においては、処理チャンバー内を減圧にして処理液を導入する場合は、その減圧の程度は、処理液の沸騰を避けるために30Torrを上限とするのが望ましい。減圧下で処理液を被処理基体表面上に供給した後加圧すれば、譬えホール内に気泡が残留していたとしても、気泡の体積が加圧により縮小しホールより抜け易くなるので望ましい。例えは、30Torrの減圧から760Torrまで加圧すると、気泡の体積は約1/25になる。したがって、本発明においては、減圧して処理液を充分に供給し、その後で加圧するのも好ましい態様である。さらに、この減圧と加圧は、繰り返し行ってもよい。本発明に於いては、通常、常圧下で処理がなされるが、上記の様に減圧下で行うと更に効果が上がる。例えば、上記に説明した様な減圧可能な処理チャンバーを用意して、減圧下(30Torr)で行ってみた。その結果、フッ酸水溶液(FHが1〜20%)、バッファードフッ酸(フッ化アンモニウム:20%、HF:1〜20%)の何れも100%の割合でエッチングが完全になされた。この減圧の効果は、減圧の程度にある程度依存はするが、余り減圧にするとその圧での処理液の沸点を超えるので沸点を超えない範囲の減圧とするのが装置の設計上都合が良いので望ましい。
【0034】
本発明に於いては、マイクロ空室内の処理をより確実かつより効率的に行う目的で、対SiO
2濡れ性をより向上させた処理液、例えば、界面活性剤添加BHFを使用するのは好ましい。または、同目的で、CO
2雰囲気と組み合わせることも好ましい。
[実施例]
5インチSOI基体を2枚用意した。
各基体の表面にあるSi層に、本発明の説明の中に記載した数値範囲に入るサイズであるが、深さなどのサイズは異なるホール(マイクロ空室)を、半導体分野で一般に行われているエッチングプロセスで、500個作成した(試料A、B)。
ホールパターン、各ホールサイズは、試料A、Bで同じになるように工夫した。
この試料A、Bを
図7の装置を用いて以下の様に処理した。試料Aを400rpmで回転させ、5ppmの濃度オゾン水を中心より流量1L/minで1min間供給して処理を行った。その後1200rpmで1min間、試料ウェーハを空回転させ乾燥した(事前処理)。 その後、上記の様に事前処理した試料Aを400rpmで回転させ、BHFを中心より流量1L/minで5min間供給して処理を行った。次いで、回転数400rpmで、中心より流量2L/minとして超純水を5min間供給してリンス処理をした。その後1200rpmで1min間試料Aを空回転させ乾燥した(エッチング処理)。
試料Bは、上記の事前処理を行わない以外は、試料Aと同様の処理を施した。
上記の手順終了後、試料のホール(マイクロ空室)のエッチング不良を評価したところ、事前処理の後にエッチング処理をした試料Aの場合は、不良は、500個中0個だった。
それに対して事前処理をせずにエッチング処理を行った試料Bの場合は、エッチング不良は、500個中85個にもなった。
【0035】
以上、本発明について具体的に説明してきたが、本発明の技術は、TSVに限らず、高アスペクト比ホールを必要とする技術であれば、例えば、MEMSなどの技術分野にも適用可能である。