特許第6243805号(P6243805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243805
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】汚泥の燃焼方法および汚泥用の燃焼炉
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/027 20060101AFI20171127BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20171127BHJP
   F23G 7/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F23G5/027 BZAB
   F23G5/50 G
   F23G5/50 H
   F23G5/50 J
   F23G7/00 104A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-128941(P2014-128941)
(22)【出願日】2014年6月24日
(65)【公開番号】特開2016-8761(P2016-8761A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 匠
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 典久
(72)【発明者】
【氏名】坂井 義広
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/191109(WO,A1)
【文献】 特開2009−139043(JP,A)
【文献】 特開2002−181320(JP,A)
【文献】 特開2002−130641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/027
F23G 5/50
F23G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を熱分解して熱分解ガスを排出する熱分解炉と、前記熱分解炉から排出された前記熱分解ガスが導入され、前記熱分解ガスに含まれる未燃物を燃焼させて排ガスを排出する二次燃焼炉と、を有する燃焼炉における汚泥の燃焼方法であって、
前記排ガス中の一酸化二窒素の許容量に応じて、前記二次燃焼炉に導入される前記熱分解ガス中の一酸化炭素の濃度の目標値を設定する工程と、
前記二次燃焼炉に導入される前記熱分解ガス中の一酸化炭素の濃度の測定値を得る工程と、
前記測定値が前記目標値よりも小さい場合、前記熱分解炉に供給する補助燃料の量、空気の量および汚泥の量の少なくともいずれか1つを制御することで、前記測定値を増大させる工程と、
を備えることを特徴とする汚泥の燃焼方法。
【請求項2】
前記測定値が前記目標値よりも小さい場合、前記熱分解炉に供給する空気の量を減少させる請求項1に記載の汚泥の燃焼方法。
【請求項3】
前記測定値が前記目標値以上に設定された上限値よりも大きい場合、前記熱分解炉に供給する空気の量を増加させる請求項2に記載の汚泥の燃焼方法。
【請求項4】
汚泥を熱分解して熱分解ガスを排出する熱分解炉と、
前記熱分解炉から排出された前記熱分解ガスが導入され、前記熱分解ガスに含まれる未燃物を燃焼させて排ガスを排出する二次燃焼炉と、
を備え、
前記二次燃焼炉に導入される前記熱分解ガス中の一酸化炭素の濃度の測定値が、前記排ガス中の一酸化二窒素の許容量に応じて設定される目標値よりも小さい場合、前記熱分解炉に供給する補助燃料の量、空気の量および汚泥の量の少なくともいずれか1つを制御することで、前記測定値を増大させることを特徴とする汚泥用の燃焼炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥等の汚泥を、熱分解炉と二次燃焼炉とを用いて燃焼させる燃焼方法および燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、廃棄物を熱分解炉および二次燃焼室にて二段階で燃焼させる二段燃焼炉が開示されている。この二段燃焼炉では、熱分解炉での燃焼により生じた熱分解ガスが、熱分解炉から排出されて二次燃焼室に導入され、二次燃焼室で二次燃焼がなされる。このとき、熱分解ガス中のCO(一酸化炭素)濃度や二次燃焼室におけるCO濃度が基準値よりも高い場合には、熱分解炉への廃棄物の供給量を減少させる。こうすることで、熱分解炉における燃焼負荷を低減し、廃棄物の完全燃焼を促進させて、CO等の有害物質を排出しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−181320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、下水汚泥等の生物性の有機固形物を含む汚泥には多量の窒素が含まれており、この窒素から生成されるN2O(一酸化二窒素)は、二酸化炭素の310倍もの温室効果があることが知られている。つまり、汚泥を燃焼させる場合には、いかにN2Oの排出量を低減するかが大きな課題となっている。しかしながら、特許文献1には、N2Oの排出量を低減させる具体的方法については示されていない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、汚泥の燃焼技術において、一酸化二窒素の排出量を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる汚泥の燃焼方法は、汚泥を熱分解して熱分解ガスを排出する熱分解炉と、前記熱分解炉から排出された前記熱分解ガスが導入され、前記熱分解ガスに含まれる未燃物を燃焼させて排ガスを排出する二次燃焼炉と、を有する燃焼炉における汚泥の燃焼方法であって、前記排ガス中の一酸化二窒素の許容量に応じて、前記二次燃焼炉に導入される前記熱分解ガス中の一酸化炭素の濃度の目標値を設定する工程と、前記二次燃焼炉に導入される前記熱分解ガス中の一酸化炭素の濃度の測定値を得る工程と、前記測定値が前記目標値よりも小さい場合、前記熱分解炉に供給する補助燃料の量、空気の量および汚泥の量の少なくともいずれか1つを制御することで、前記測定値を増大させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる汚泥用の燃焼炉は、汚泥を熱分解して熱分解ガスを排出する熱分解炉と、前記熱分解炉から排出された前記熱分解ガスが導入され、前記熱分解ガスに含まれる未燃物を燃焼させて排ガスを排出する二次燃焼炉と、を備え、前記二次燃焼炉に導入される前記熱分解ガス中の一酸化炭素の濃度の測定値が、前記排ガス中の一酸化二窒素の許容量に応じて設定される目標値よりも小さい場合、前記熱分解炉に供給する補助燃料の量、空気の量および汚泥の量の少なくともいずれか1つを制御することで、前記測定値を増大させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明(汚泥の燃焼方法および汚泥用の燃焼炉)によれば、二次燃焼炉に導入される一酸化炭素の濃度の測定値が目標値よりも小さい場合、一酸化炭素の濃度を増大させる制御がなされる。一酸化炭素は可燃性ガスであるため、導入される一酸化炭素が増加することで、二次燃焼炉内の温度が上昇する。こうして温度が上昇した二次燃焼炉では、一酸化二窒素の分解が促進され、最終的に一酸化二窒素の排出量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にかかる燃焼炉の実施形態を示す模式図である。
図2】一酸化二窒素の排出量を低減するための制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかる汚泥用の燃焼炉(以下、単に「燃焼炉」と称する)の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示す燃焼炉1は、下水汚泥等の汚泥を二段階で燃焼させるものであり、主に、一段階目の燃焼炉である熱分解炉10と、二段階目の燃焼炉である二次燃焼炉20と、熱分解炉10から排出された熱分解ガスG1を二次燃焼炉20へ導入する熱分解ガス管30と、二次燃焼炉20から排ガスG2を排出する排ガス管40と、を具備して構成される。
【0011】
(熱分解炉)
熱分解炉10は、汚泥を抑制燃焼させて、熱分解ガスG1を熱分解ガス管30へ排出する燃焼炉である。熱分解ガスG1には例えばCO、CO2、NOx、N2O等が含まれるが、このうちCOは、炭素が不完全燃焼することにより生じる未燃物である。このような未燃物は、後述する二次燃焼炉20にて、完全燃焼させられる。
【0012】
熱分解炉10は、鉛直方向に延びる筒状の形状をしており、その下部に高温の流動砂からなる流動砂層10aを有する、いわゆる「流動床型燃焼炉」である。流動砂層10aに汚泥を投入することで、汚泥の安定的な燃焼が可能となる。なお、熱分解炉10は流動床型燃焼炉に限定されず、他の型の燃焼炉としてもよい。
【0013】
熱分解炉10には、補助燃料供給手段11、空気供給手段12、および汚泥供給手段13がそれぞれ設けられる。補助燃料供給手段11は、例えば都市ガス等の補助燃料を、熱分解炉10に供給するための装置である。空気供給手段12は、熱分解炉10に空気を供給するための装置であり、空気比(=供給空気量/完全燃焼に必要な理論空気量)を変更可能に構成されている。また、汚泥供給手段13は、例えばスクリューフィーダ等からなり、熱分解炉10に汚泥を供給するための装置である。なお、熱分解炉10の空気比を0.9〜1.0、熱分解炉10の温度を750〜800℃とするように設定されている。
【0014】
(二次燃焼炉)
二次燃焼炉20は、熱分解ガス管30から導入される熱分解ガスG1に含まれる未燃物を燃焼させて、排ガスG2を排ガス管40へ排出する燃焼炉である。具体的には、例えば未燃物としてのCOを、二次燃焼炉20で完全燃焼させてCO2にする。ただし、熱分解ガスG1に含まれる未燃物はCOに限定されるものではない。
【0015】
二次燃焼炉20は、鉛直方向に延びる筒状の形状をしており、その上部に熱分解ガス管30が接続され、その下部に排ガス管40が接続される。二次燃焼炉20内に十分な空気があれば、熱分解ガス管30から導入された熱分解ガスG1が空気と混合することで燃焼が起こる。なお、二次燃焼炉20の空気比は0.3〜0.4、二次燃焼炉20の温度は850〜900℃とするように設定されている。
【0016】
二次燃焼炉20での燃焼状態を把握するため、二次燃焼炉20内の温度を測定する温度計21が設けられている。また、二次燃焼炉20の上部にはバーナー22が設けられている。温度計21で測定された温度が低く、二次燃焼炉20で十分な燃焼が行われていないと判断される場合には、バーナー22に都市ガス等の補助燃料を供給したり、補助燃料の供給量を増やすことで、二次燃焼炉20での燃焼を促進させることができる。
【0017】
二次燃焼炉20の上部には、空気供給手段23が設けられる。また、排ガス管40には、酸素濃度測定器42が設けられる。酸素濃度測定器42で測定された酸素濃度が低く、二次燃焼炉20で十分な燃焼が行われていないと判断される場合には、二次燃焼炉20における空気不足が原因で、上述のように温度計21で測定された温度が低い場合もある。このような場合には、空気供給手段23により二次燃焼炉20へ空気を供給することで、燃焼を促進させることができる。
【0018】
なお、バーナー22や空気供給手段23の操作は、温度計21で測定された温度に基づいて、後述の制御部50によって自動的に行ってもよいし、作業者によって人為的に行ってもよい。また、二次燃焼炉20での燃焼状態を把握するための指標は、二次燃焼炉20内の温度に限定されず、例えば排ガスG2の温度や組成を利用することも可能である。
【0019】
(熱分解ガス導入管)
熱分解ガス管30は、熱分解炉10と二次燃焼炉20とを接続し、熱分解炉10から排出された熱分解ガスG1を二次燃焼炉20に導入するための配管である。熱分解ガス管30には、CO濃度測定器31が設けられており、熱分解ガスG1中のCO濃度を測定できるようになっている。
【0020】
(排ガス排出管)
排ガス管40は、その一端が二次燃焼炉20に接続されており、その他端は不図示の排ガス処理装置に接続されている。二次燃焼炉20から排出された排ガスG2は、排ガス管40を経由して、排ガス処理装置に取り込まれ、最終的には不図示の煙突から外部に排出される。排ガス管40には、N2O濃度測定器41が設けられており、排ガスG2中のN2O濃度を測定できるようになっている。なお、排ガスG2中のN2O濃度をスポット的に測定できるように、排ガス管40にサンプリング口(図示せず)が設けられていてもよい。
【0021】
(N2Oの排出量を低減するための制御方法)
本発明は、排ガスG2中のN2Oが所定の許容量以下となるように、二次燃焼炉20に導入される熱分解ガスG1中のCO濃度の測定値を、所定の目標値以上に維持するように制御するものである。本実施形態では、熱分解ガスG1中のCO濃度を目標値以上とするための制御は、制御部50によって実行される。
【0022】
制御部50は、CO濃度測定器31と接続されており、CO濃度測定器31によって測定された熱分解ガスG1中のCO濃度の測定値が、適宜のタイミングで制御部50へ送られる。また、制御部50は、補助燃料供給手段11、空気供給手段12、および汚泥供給手段13のそれぞれに接続されており、制御部50から各手段11、12、13へ作動のための指令信号を送ることができる。
【0023】
2Oの排出量を低減するための制御を実行する前に、まず前提条件として、排ガスG2中のN2Oの許容量が設定される。そして、この許容量に応じて、二次燃焼炉20に導入される熱分解ガスG1中のCO濃度の目標値が設定される。例えば、N2Oの許容量を0.1kg/t−wetとする場合には、上記目標値を30000ppm、N2Oの許容量を0.2kg/t−wetとする場合には、上記目標値を15000ppmというように、N2Oの許容量が大きくなるほど目標値は小さくなる傾向にある。なお、kg/t−wetという単位は、汚泥1トン(湿ベース)当たりのN2Oの排出重量を示すものである。このようにして設定された熱分解ガスG1中のCO濃度の目標値は、あらかじめ作業者によって制御部50に入力され、N2Oの排出量を管理・低減するための制御に使用される。
【0024】
上述の目標値は、排ガスG2中のN2Oの許容量に応じて設定される、熱分解ガスG1中のCO濃度の下限値の意味合いを持つものであるが、本実施形態では、下限値(目標値)とともに上限値も設定している。熱分解ガスG1中のCO濃度の上限値を設定することで、COが二次燃焼炉20で完全燃焼されないまま排出されてしまうことを回避できる。
【0025】
図2を参照しつつ、N2Oの排出量を低減するための制御方法について説明する。制御部50は、図2に示した制御を、例えば所定時間ごとに繰り返し実行する。なお、この制御を実行するタイミングは自由に設定することが可能である。また、制御方法としては、例えばPID制御などの他の制御としてもよい。
【0026】
制御部50は、CO濃度測定器31から熱分解ガスG1中のCO濃度の測定値を受け取ると(ステップS101)、当該測定値をあらかじめ入力されている目標値と比較する(ステップS102)。その結果、測定値が目標値よりも小さかった場合には、熱分解ガスG1中のCO濃度を増大させるために、空気供給手段12から熱分解炉10への空気の供給量を減少させ(空気比を小さくし)、不完全燃焼を生じやすくする(ステップS103)。
【0027】
一方、ステップS102において測定値が目標値以上であった場合には、測定値をあらかじめ入力されている上限値と比較する(ステップS104)。その結果、測定値が上限値よりも大きかった場合には、熱分解ガスG1中のCO濃度を減少させるために、空気供給手段12から熱分解炉10への空気の供給量を増加させ(空気比を大きくし)、完全燃焼させやすくする(ステップS105)。一方、測定値が上限値以下であった場合には、空気供給手段12から熱分解炉10への供給空気量を現状維持とする。
【0028】
(効果)
以上のような制御を所定時間ごとに繰り返し実行することで、熱分解ガスG1中のCO濃度を目標値以上かつ上限値以下の適正な範囲に維持することができる。CO濃度を目標値以上に維持することで、可燃性ガスであるCOの二次燃焼炉20への導入量が一定以上に保たれ、二次燃焼炉20内の温度を例えば900℃程度の高温に維持することができる。高温の二次燃焼炉20では、N2Oが分解される反応が促進され、N2Oの排出量を低減させることができる。同時に、CO濃度を上限値以下に維持することで、二次燃焼炉20における負荷を適正な状態に保ち、COが完全燃焼しないまま排出されてしまうことを抑制できる。
【0029】
なお、本実施形態では、熱分解ガスG1中のCO濃度を、空気供給手段12から熱分解炉10への空気の供給量を調整することで制御しているが、制御方法はこれに限定されない。例えば、熱分解ガスG1中のCO濃度の測定値が目標値よりも小さい場合に、補助燃料供給手段11から熱分解炉10への補助燃料の供給量を増加させ、熱分解炉10における負荷を大きくすることで、熱分解炉10での不完全燃焼を生じやすくさせ、熱分解ガスG1中のCO濃度を大きくすることができる。この方法によれば、迅速に熱分解ガスG1中のCO濃度を大きくすることができるので、応答性を優先する場合には好適である。なお、CO濃度の測定値が上限値よりも大きい場合には、補助燃料供給手段11から熱分解炉10への補助燃料の供給量を減少させてもよい。
【0030】
あるいは、熱分解ガスG1中のCO濃度の測定値が目標値よりも小さい場合に、汚泥供給手段13から熱分解炉10への汚泥の供給量を増加させ、熱分解炉10における負荷を大きくすることで、熱分解炉10での不完全燃焼を生じやすくさせ、熱分解ガスG1中のCO濃度を大きくすることもできる。なお、CO濃度の測定値が上限値よりも大きい場合には、汚泥供給手段13から熱分解炉10への汚泥の供給量を減少させればよい。
【0031】
ただし、補助燃料の供給量を増加させると、燃焼炉1の燃費は悪化することになる。また、汚泥の供給量を調整するという手法は、時間当たりの汚泥処理量が一般的に決められているという状況を鑑みると、適切でない場合もある。そこで、本実施形態のように、熱分解ガスG1中のCO濃度を、熱分解炉10への空気の供給量を調整することで制御すれば、燃焼炉1の燃費を悪化させることなく、汚泥の供給量を一定に維持することができるので好適である。なお、空気供給手段12から熱分解炉10に供給する空気量を減らした場合、汚泥や補助燃料を完全燃焼させるのに必要な空気が不足する場合もあり得るが、その場合には、空気供給手段23から二次燃焼炉20に供給する空気量を増加させればよい。
【0032】
本実施形態では、熱分解ガス管30を二次燃焼炉20の上部に接続しているため、熱分解ガスG1中のCO濃度を大きくすることで、特に二次燃焼炉20の上部の温度を局所的に上昇させることができる。このため、二次燃焼炉20の内部全体にわたって温度を上昇させる場合と比べ、効率よく温度を上昇させることができ、N2Oの分解を一層促進しやすいものとなっている。また、二次燃焼炉20における燃焼を促進させるためのバーナー22や空気供給手段23も二次燃焼炉20の上部に設けられているため、これらを使用した場合にも、やはり局所的な温度上昇を図ることができる。ただし、熱分解ガス管30の接続位置や、バーナー22や空気供給手段23の配設位置は、必ずしも二次燃焼炉20の上部である必要はない。
【0033】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記実施形態の要素を適宜組み合わせまたは種々の変更を加えることが可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、熱分解炉10に供給する補助燃料の量、空気の量および汚泥の量のいずれか1つを制御するものとしたが、複数のものを組み合わせて制御するようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、制御部50により空気供給手段12の制御が行われるものとしたが、制御部50により制御を実行することは必須ではない。例えば、CO濃度測定器31によるCO濃度の測定値を表示手段(不図示)に表示するように構成し、表示手段に表示された測定値に応じて、作業者が空気供給手段12を適宜操作するようにしてもよい。補助燃料供給手段11や汚泥供給手段13を制御する場合についても同様である。
【0036】
また、上記実施形態では、排ガスG2中のN2Oの許容量に応じて、熱分解ガスG1中のCO濃度の目標値(または上限値)が制御部50に作業者により入力されるものとした。しかしながら、例えば制御部50に、N2Oの許容量とCO濃度の目標値(または上限値)との関係を示す数式やマップを記憶させておき、作業者により入力されたN2Oの許容量に応じて、CO濃度の目標値(または上限値)が自動的に設定されるようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、制御部50は、CO濃度測定器31による熱分解ガスG1中のCO濃度の測定値のみに基づいて制御を行うものとしたが、これに加えて他の要素も勘案して制御を行うようにしてもよい。他の要素としては、例えば温度計21による二次燃焼炉20内の測定温度、N2O濃度測定器41による排ガスG2中のN2Oの測定濃度、あるいは酸素濃度測定器42による排ガス管G2の酸素濃度等を採用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1:燃焼炉
10:熱分解炉
11:補助燃料供給手段
12:空気供給手段
13:汚泥供給手段
20:二次燃焼炉
G1:熱分解ガス
G2:排ガス
図1
図2