(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多層ポリオレフィンフィルム、及び前記多層ポリオレフィン延伸テープが、第1の熱可塑性樹脂からなる層の両面に、第1の熱可塑性樹脂よりも低い融点を有する第2の熱可塑性樹脂からなる層を積層した層構造を有する、請求項2に記載の網状積層不織布。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の割繊維不織布及び、特許文献2の広幅網状延伸膜に、網状組織の割繊維を積層した連続的な網状不織布は、縦方向及び横方向の延伸強化繊維を直交積層しているため、縦方向及び横方向の強度は高い。しかし、斜め方向に関しては、その構造上、縦方向及び横方向の強度と比較して、引張強度に劣るという問題があった。
【0007】
一方、縦・両斜めの3軸の格子目状に交点を接着した網状体は、製品として販売されている。しかし、この網状不織布は、縦方向及び斜め方向の強度に優れるものの、横方向の強度が弱い上に伸展性もないという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献1、2のいずれの技術においても、繊維自体に伸展性がないことに起因して、不織布あるいは網状体自体が、伸展性を具備することがなかった。
【0009】
斜め方向への引張強度に優れ、かつ、特定方向に伸展性を具備する網状積層不織布が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、網状積
層不織布であって、互いに並行に延びる幹
繊維と、隣接する前記幹繊維同士を繋ぐ枝繊維
とを備えた一軸延伸網状フィルム層と、前記一軸延伸網状フィルム層の延伸方向に斜交し
、且つ互いに並行に延びる第1の延伸テープ群からなる第1の延伸テープ群層と、前記第
1の延伸テープ群層と反対方向から前記一軸延伸網状フィルム層の延伸方向に斜交し、且
つ互いに並行に延びる第2の延伸テープ群からなる第2の延伸テープ群層と、を積層して
なる。
【0011】
前記網状積層不織布において、前記一軸延伸網状フィルム層が、長手方向に一軸延伸された多層ポリオレフィンフィルムを割繊後、拡幅して、得られた割繊維フィルム層であり、前記第1の延伸テープ及び前記第2の延伸テープが、長手方向に一軸延伸された多層ポリオレフィン延伸テープであることが好ましい。
【0012】
前記網状積層不織布において、前記多層ポリオレフィンフィルム、及び前記多層ポリオレフィン延伸テープが、第1の熱可塑性樹脂からなる層の両面に、第1の熱可塑性樹脂よりも低い融点を有する第2の熱可塑性樹脂からなる層を積層した層構造を有することが好ましい。
【0013】
前記網状積層不織布において、前記第1の延伸テープ群を構成する複数の第1の延伸テープが、略等間隔で配置され、前記第2の延伸テープ群を構成する複数の第2の延伸テープが、前記第1の延伸テープ群と同じ略等間隔で配置されることが好ましい。
【0014】
前記網状積層不織布において、前記第1の延伸テープ群と、前記第2の延伸テープ群とが、30〜150°の角度をなすことが好ましい。
【0015】
本発明は、また別の実施形態によれば、網状積層不織布の製造方法であって、長手方向に一軸延伸された多層フィルムを割繊後、拡幅して、一軸延伸網状フィルム層を得る工程と、前記一軸延伸網状フィルム層と、長手方向に一軸延伸された第1の多層ポリオレフィン延伸テープ群からなる第1の延伸テープ群層と、長手方向に一軸延伸された第2の多層ポリオレフィン延伸テープ群からなる第2の延伸テープ群層とを積層する工程であって、前記第1の延伸テープ群が、前記一軸延伸網状フィルム層の延伸方向に斜交して積層され、前記第2の延伸テープ群が、前記第1の延伸テープ群と反対方向から前記一軸延伸網状フィルム層の延伸方向に斜交して積層される工程と、前記一軸延伸網状フィルム層と、前記第1の延伸テープ群層と、前記第2の延伸テープ群層とを、それらの交点で接着する工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一軸延伸網状フィルム層の延伸方向及び斜め方向に高い引張強度を有し、かつ、幅方向あるいは長手方向といった延伸方向とは異なる特定の方向に伸展性と強度のバランスのとれた網状積層不織布を得ることができる。また、網状フィルムの幹繊維の幅方向における単位長さあたりの本数を調整できるので、所望の伸展性を得ることができ、かつ、多様なデザインが可能であるという利点もある。さらに、本発明に係る網状積層不織布は、意匠性にも優れ、衛生材料、ハウスラップ、プロデュースバッグ、内装材などの多くの用途に使用することが可能になる。特には、優れた伸展性により、内装材等として、凹凸面に追随させて貼付する用途において、有利である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0019】
本発明は、一実施形態によれば網状積層不織布に関する。網状積層不織布は、互いに並
行に延びる幹
繊維と、隣接する前記幹繊維同士を繋ぐ枝繊維とを備えた一軸延伸網状フィ
ルム層と、前記一軸延伸網状フィルム層の延伸方向に斜交し、且つ互いに並行に延びる第
1の延伸テープ群からなる第1の延伸テープ群層と、前記第1の延伸テープ群層と反対方
向から前記一軸延伸網状フィルム層の延伸方向に斜交し、且つ互いに並行に延びる第2の
延伸テープ群からなる第2の延伸テープ群層とを積層してなる。
【0020】
網状フィルム層は、上記幹
繊維と枝繊維の構造的特徴を備える一軸延伸フィルムであれ
ば、特には限定されないが、例えば、網状フィルムの好ましい例として、割繊維フィルム
を挙げることができる。割繊維フィルムは、長手方向に一軸延伸された多層フィルムを割
繊後、拡幅することにより得られる。以下の実施形態においては、主に、網状フィルムと
して割繊維フィルムを用いる態様について説明するが、本発明の網状フィルムは割繊維フ
ィルムには限定されない。本明細書において、不織布及びこれを構成するフィルムの「長
手方向」とは、縦方向ともいい、不織布及びこれを構成するフィルムを製造する際の機械
方向すなわち送り方向を意味し、図中では、Lで表す。一方、「幅方向」とは、横方向と
もいい、縦方向と直角な方向を意味し、図中では、Tで表す。
【0021】
図1に本発明の一実施形態に係る網状積層不織布の概念的な平面図を示す。当該網状積層不織布100は、一軸延伸網状フィルム層の一例である割繊維フィルム層20と、第1の延伸テープ30群からなる第1の延伸テープ群層と、第2の延伸テープ40群からなる第2の延伸テープ群層とから主として構成される。
【0022】
(1)割繊維フィルム層
図2に、繊維直交積層不織布100として積層される前の、割繊維フィルム20単体の斜視図を示す。
図2(a)に示すように、互いに並行に延びた複数の幹繊維20aと、幹繊維20aに対して交差して延び、隣接する幹繊維20a同士を繋ぐ枝繊維20bとで構成される。枝繊維20bは幹繊維20aと比べて細く、割繊維フィルム20の機械的強度は主として幹繊維20aによって与えられる。割繊維フィルム20は、
図2(b)に示すように、第1の熱可塑性樹脂からなる層20cの両面に、第1の熱可塑性樹脂よりも低い融点を有する第2の熱可塑性樹脂からなる層20dを積層した層構造を有する。
【0023】
第2の熱可塑性樹脂からなる層20dの厚みは、割繊維フィルム20全体の厚みの50%以下、望ましくは40%以下である。後述する延伸テープ群との熱溶着時の接着強度等の諸物性を満足させるためには、第2の熱可塑性樹脂からなる層20dの厚みは5μm以上であればよいが、好ましくは10〜100μmの範囲から選択される。
【0024】
割繊維フィルム20を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンおよびこれらの共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート群のポリエステルおよびこれらの共重合体、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドおよびこれらの共重合体、ポリ塩化ビニル、メタクリル酸またはその誘導体の重合体および共重合体、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリテトラクロロエチレンポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。割繊維フィルム20は、その延伸方向に高い引張強度を有している。その中でも、割繊性の良好なポリオレフィンおよびその重合体、ポリエステルおよびその重合体が好ましい。また、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との融点の差は、製造上の理由から、5℃以上であることが必要であり、好ましくは10〜50℃である。
【0025】
割繊維フィルム20の製造方法としては、例えば、以下に示すような方法が挙げられる。まず、各層を構成する樹脂を混練し、次いで、多層インフレーション法あるいは多層Tダイ法などの押出成形により、第1の熱可塑性樹脂からなる層20cの両面に第2の熱可塑性樹脂からなる層20dが積層された3層構造の原反フィルムを製造する。次いで、この原反フィルムを長手方向(縦方向)に延伸する。延伸倍率は、1.1〜15倍が好ましく、より好ましくは3〜10倍である。延伸倍率が1.1倍未満では、機械的強度が十分でなくなるおそれがある。一方、延伸倍率が15倍を超えると、通常の方法で延伸することが難しく、高価な装置を必要とするなどの問題が生じる場合がある。延伸は、多段で行うことが延伸むらを防止するために好ましい。次いで、延伸したフィルムを、スプリッターを用いて縦方向に千鳥掛けに割繊(スプリット処理)して多数の平行なスリットを形成する。さらにこれと直交する方向に拡幅する。これにより、
図2(a)に示すような、幹繊維20aがほぼ縦方向に配列された割繊維フィルム20が得られる。このようにして製造された割繊維フィルム層20はその延伸方向に高い引張強度を有している。
【0026】
網状フィルム層としては、詳述した割繊維フィルム層20以外にも、例えば割繊維フィルム層20と同様の構成を備える原反フィルムに、横方向に多数のスリットを形成した後、幅方向に、割繊維フィルム層20と同様の延伸倍率で延伸して得られるものを用いることができる。この場合、第1の延伸テープ群層、第2の延伸テープ群層と積層して得られる網状積層不織布は、横方向に強度があり縦方向の伸展性に優れるという特性を備えるものとなる。
【0027】
(2)第1の延伸テープ群層
第1の延伸テープ群層は、割繊維フィルム層20の延伸方向に斜交し、且つ互いに並行に延びる第1の延伸テープ群からなる。
図1中、紙面の左下から右上に延びる複数の第1の延伸テープ30群が、第1の延伸テープ群層を構成する。ある第1の延伸テープ30は、隣り合う他の第1の延伸テープ30と、所定の一定の距離をもって、略平行に配置されることが好ましい。第1の延伸テープ30群の左下から右上に延びる向きは、割繊維フィルム層20の延伸方向Lに対し、角度αをなす。αの値は、当業者が、その目的及び用途に応じて決定することができる。典型的な実施形態においては、αは、15〜75°、好ましくは30〜60°であるが、特定の角度には限定されない。図示する実施形態においては、αは、60°である。なお、網状フィルムが、割繊維フィルムではない場合も、当該網状フィルムの延伸方向に対して、同様に上記角度αを設定する。
【0028】
第1の延伸テープ群層において、隣り合う第1の延伸テープ30間の距離は、特定の距離には限定されず、その目的及び用途に応じて決定することができる。好ましい実施形態において、隣り合う第1の延伸テープ30間の距離はすべて、概ね等しい。すなわち、第1の延伸テープ群層において、それぞれの第1の延伸テープ30が略等間隔に配置される。別の実施形態においては、隣り合う延伸テープ間の距離が、異なっていてもよい。
【0029】
第1の延伸テープ30の幅もまた、当業者が、その目的及び用途に応じて決定することができる。第1の延伸テープ30の幅は、網状積層不織布100の幅方向並びに斜め方向の強度に影響を及ぼしうる。好ましい実施形態において、それぞれの第1の延伸テープ30は、略同一の幅を有する。別の実施形態においては、第1の延伸テープ30は、それぞれが異なる幅を有していてもよい。また、第1の延伸テープ30の線密度は、例えば、95〜540デニールであってよいが、特定の値には限定されない。また、上記線密度の範囲において、テープ幅は、テープ厚みとの関係で決定される。
【0030】
第1の延伸テープ30は、割繊維フィルム層20と同様に、第1の熱可塑性樹脂からなる層の両面に、第1の熱可塑性樹脂よりも低い融点を有する第2の熱可塑性樹脂からなる層を積層した層構造を有することが好ましい。そして、第1の延伸テープ30の長手方向に一軸延伸されている。第2の熱可塑性樹脂からなる層の厚みは、割繊維フィルム20について説明したのと同様の態様であってよい。
【0031】
第1の延伸テープ30を構成する材料としては、割繊維フィルム層20と同様であってよく、特には、割繊維フィルム層20と同一の材料からなることが好ましい。熱溶着により接着する際に有利だからである。しかしながら、第1の延伸テープ30は、割繊維フィルム層20とは異なる材料であってもよい。
【0032】
第1の延伸テープ30は、好ましくは、長手方向に一軸延伸された多層ポリオレフィン延伸テープである。第1の延伸テープ30群の製造方法としては、種々の公知の方法が挙げられる。例えば、長手方向に一軸延伸された多層ポリオレフィン延伸テープは、多層インフレーション法あるいは多層Tダイ法などの押出成形により、第1の可塑性樹脂からなる層の両面に、第2の熱可塑性樹脂からなる層が積層された3層構造の原反フィルムを製造した後、所定幅、好ましくは一定幅に裁断し、次いで、所定の延伸倍率、例えば、1.1〜15倍の延伸倍率で裁断方向に平行に一軸延伸することにより、得ることができる。なお、延伸倍率は、割繊維フィルム層20の製造において使用した好ましい倍率と同様であってよい。あるいは、原反フィルムを製造した後、上記所定の延伸倍率に延伸した後に、延伸方向に沿って、所定幅に裁断することにより、長手方向に一軸延伸された多層ポリオレフィン延伸テープを得ることもできる。一方、ポリエステルからなる延伸テープ群については、例えば、特開2011−174201号公報に記載の方法により製造することができる。
【0033】
また、第1の延伸テープ30の厚みは、割繊維フィルム層20の厚みに対して、同一であってもよく、異なってもよく、当業者が適宜決定することができる。例えば、割繊維フィルム層20の厚みは、例えば、10〜200μm程度、好ましくは、10〜70μm程度であってよく、第1の延伸テープ30の厚みも同様であってよい。
【0034】
(3)第2の延伸テープ群層
第2の延伸テープ群層は、前記第1の延伸テープ群層と反対方向から割繊維フィルム層20の延伸方向に斜交し、且つ互いに並行に延びる第2の延伸テープ群からなる。
図1中、紙面の右下から左上に延びる複数の第2の延伸テープ40群が、第2の延伸テープ群層を構成する。ある第2の延伸テープ40は、隣り合う他の第2の延伸テープ40と、所定の一定の距離をもって、略平行に配置されることが好ましい。第2の延伸テープ40の右下から左上に延びる向きは、割繊維フィルム20の延伸方向である縦方向Lに対し、角度α’をなすように決定される。α’の値は、当業者が、その目的及び用途に応じて決定することができる。典型的な実施形態においては、α’は、前述のαと同一であってよい。別の実施形態においては、α’は、αとは異なっていてもよい。例えば、α’+αが所定の値になるように、α及びα’の値を決定することができる。α’+αは、好ましくは、30〜150°であり、より好ましくは、60〜120°である。第2の延伸テープ40についても、網状フィルムが、割繊維フィルムではない場合は、当該網状フィルムの延伸方向に対して、同様に上記角度α’を設定する。
【0035】
第2の延伸テープ群層において、隣り合う第2の延伸テープ40間の距離は、第1の延伸テープ群層について説明した態様であってよい。すなわち、好ましい実施形態において、第2の延伸テープ群層において、隣り合う第2の延伸テープ40は略等間隔で配置されてよい。
【0036】
特に好ましい実施形態においては、隣り合う第2の延伸テープ40の間隔は、略等間隔であり、かつ、第2の延伸テープ群層と、第1の延伸テープ群層において、同一の略等間隔である。隣り合う延伸テープ30、40の間隔により、隣り合う2本の第1の延伸テープ30と隣り合う2本の第2の延伸テープ40とで形成される方形の大きさが変わり、積層された際に、方形中に位置する幹繊維20aの本数も変わりうる。また、幹繊維20aの繊維幅も、例えば、0.4〜2mm程度の範囲で変わり、及び/または、幹繊維20a間隔も変わり得る。一例として、方形中に位置する割繊維フィルム層20の幹繊維20aの本数は、隣り合う延伸テープ間隔が9mm幅の方形では1〜3本、隣り合う延伸テープ間隔が55mm幅の方形では、17〜30本程度とすることができる。このような隣り合う2本の延伸テープの間隔及び/または幹繊維20aの幅及び/または幹繊維と幹繊維との間隔を相対的に調節することで、幅方向(横方向)への伸展性を調節することができる。なお、一軸延伸網状フィルム層が、割繊維フィルム層でない場合にも、同様に、上記延伸テープ間隔や幹繊維幅、幹繊維間隔を相対的に調節し、例えば、縦方向への伸展性を調節することができる。
【0037】
第2の延伸テープ40の幅については、第1の延伸テープ30について説明した態様であってよい。好ましい実施形態において、第2の延伸テープ群層において、それぞれの第2の延伸テープ40の幅は同一である。また、特に好ましい実施形態においては、第2の延伸テープ40の幅は、第1の延伸テープ30の幅と同一である。しかしながら、第2の延伸テープ40の幅は、第1の延伸テープ30の幅と異なっていてもよい。
【0038】
第2の延伸テープ40の層構成、厚み、材料、並びにその製造方法についても、第1の延伸テープ30について説明した態様であってよい。好ましい実施態様においては、第2の延伸テープ群層を構成する各延伸テープ40の層構成、厚み、材料、並びにその製造方法は、第1の延伸テープ群層を構成する各延伸テープ30と同一である。しかしながら、第2の延伸テープ40の層構成、厚み、材料、並びにその製造方法は、第1の延伸テープ30と異なっていてもよい。
【0039】
本実施形態による網状積層不織布100においては、割繊維フィルム層20、第1の延伸テープ群層、第2の延伸テープ群層の積層順は特に限定されない。例えば、割繊維フィルム層20、第2の延伸テープ群層、第1の延伸テープ群層の順であってもよく、割繊維フィルム層20、第1の延伸テープ群層、第2の延伸テープ群層の順であってもよく、第1の延伸テープ群層、割繊維フィルム層20、第2の延伸テープ群層の順であってもよい。なお、網状積層不織布100に、上下や表裏の区別はなく、上記積層順は、逆順であっても同じ意味を表す。いずれの積層態様であっても、各層が交差し、接触する面にて接着されている。接着の態様は、任意であってよく、例えば、適当な接着剤によって接着されていてもよいが、熱溶着によって接着されていることが好ましい。
【0040】
次に、本発明の一実施形態に係る網状積層不織布を製造方法の観点から説明する。網状積層不織布の製造方法は、例えば、
図3に示す製造装置を用いて実施することができる。
【0041】
図3は本発明に係る網状積層不織布100を製造する製造装置の一例を示す略図である。
図3中、コンベヤ1は、進行方向左右に、それぞれ所定のピッチで糸掛け用ピン2を縦方向1列に配したピン列を有し、矢印で示す縦方向(長手方向、機械方向)に進行する。その上方に縦方向に対し所定の角度βでコンベヤを横切る2組の平行軌道3,3’と円筒カム4,4’を備える。これらによって両端を支えられたトラバース具5は、円筒カム4,4’の回転により、軌道に沿って縦方向への平行を維持してトラバースし、第1の直線軌条をなす。第2の直線軌条8は、コンベヤ上に該軌条と異なる高さで交差し、コンベヤを所定の角度γで横切る。給糸ガイド7は、第1の軌条となるトラバース具5に遊合する直動軸受9,9’にて移動することができるように取付けられている。一方、給糸ガイド7の一端は、第2の直線軌条8に遊合する直動軸受10にて、第2の直線軌条8に沿って移動することができるように、把持されている。給糸ガイド7は、トラバース具5(第1の直線軌条)に沿って縦方向への平行を維持しつつ、第2の直線軌条8に従ってトラバースする。糸目のパターンは、第2の直線軌条8と縦方向のなす角βによって定まる。したがって角度βは任意で良いが通常はβ=90°が採用される場合が多い。
【0042】
コンベヤのピンと同ピッチで縦方向1列に多数本の糸ガイド用細管6が配設された給糸ガイド7は、トラバース具5と一体に取付けられ、トラバース具5と共にコンベヤの左右ピン列間を往復する。図示してないがコンベヤ1の速度と給糸ガイド7の往復速度は、給糸ガイド7の1往復の間に、その細管と同数のピンが進行するように、駆動装置にて定められている。そして、給糸ガイドの細管に供給された多数本の延伸テープ30、40群は、それぞれコンベヤの左右ピンにジグザグ形に引掛けられて、コンベヤ上に互いに交差した延伸テープ30群及び延伸テープ40群からなる斜交体を形成する。
図3に示されるように、角度γ=90°とすれば、コンベヤ上で延伸テープ30群及び延伸テープ40群は、コンベヤの進行方向に対し互いに等しい角度で逆斜め方向に交差した斜交体とすることができる。
【0043】
斜交体の上面又は下面には、好ましくは先に記載した方法で製造され、所定の拡幅倍率に拡幅した上記割繊維フィルム層20などの網状フィルムを供給する。拡幅倍率は、例えば、1.2倍〜10倍程度であってよく、2.5〜8.0倍程度が好ましいが、これらには限定されない。目的とする割繊維フィルム層20の仕様に合わせて、当業者が、適宜、拡幅倍率を決定することができる。図示する実施形態では、コンベヤ上に割繊維フィルム層20を繰り出しながら、第1及び第2の延伸テープ30、40を糸掛け用ピン2に、引っ掛けて、第1及び第2の延伸テープ群を整列配置する。そして、斜交体を形成しながら、コンベヤに載って矢印方向に移動する割繊維フィルム層20に積層する。あるいは、別の実施形態においては、斜交体を形成し、斜交体を図示する装置のピンから外す直前もしくは直後に、斜交体と拡幅された割繊維フィルム層20を積層する。積層後、第1の延伸テープ30、第2の延伸テープ40と、幹繊維20a及び枝繊維20bの交点を接着、好ましくは熱溶着して網状積層不織布100とする。熱溶着は、これらの積層体を、所定の温度に加熱したロール間に通すことにより実施することができる。
【0044】
本実施形態においては、一例として、
図3に示す装置を用いた網状積層不織布の製造方法について説明したが、本発明の網状積層不織布の製造方法は、特定の装置を用いた方法には限定されない。図示した装置以外にも、特開2001−146669号公報等に開示された装置や、市販の装置や既知の装置、方法を使用して、本実施形態による網状積層不織布を得ることができる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0046】
本発明に係る網状積層不織布100を製造した。上述の実施形態に記載の方法により、2種類の仕様の割繊維フィルム20を製造した。具体的には、
図2を参照して詳述した三層ポリエチレンの原反フィルムを製造した後、積層体を、後述する特定の延伸倍率により、縦方向に一軸延伸し、拡幅して割繊維フィルム20を得た。延伸時の温度条件は、いずれも、95℃とした。第1の仕様の割繊維フィルムは、厚み35μm、延伸倍率8倍、繊維幅0.9mmであり、第2の仕様の割繊維フィルムは、厚み33μm、延伸倍率7倍、繊維幅0.6mmであった。一方、割繊維フィルム20と同一の層構成の三層ポリエチレン原反フィルムを、機械方向に沿って一定幅にカットし、8倍に延伸して、幅1.4mmの延伸テープを製造した。これを、第1の延伸テープ30、第2の延伸テープ40とした。
【0047】
上記割繊維フィルム20、第1の延伸テープ30、第2の延伸テープ40を用い、
図3に示す装置を用いて、網状積層不織布100を形成した。隣り合う延伸テープ群の一定の間隔は、第1の延伸テープ群、第2の延伸テープ群とも同じとした。また、第1の延伸テープ30が割繊維フィルム20の延伸方向Lとなす角度α及び第2の延伸テープ40が割繊維フィルム20の延伸方向Lとなす角度α’は、いずれも60°とした。実施形態において詳述したように斜交体を形成しながら、繰り出した割繊維フィルム20と積層し、140℃のローラーを通過させることにより、これらの接触点を熱溶着し、網状積層不織布100を製造した。網状積層不織布100における層構成は、第1の延伸テープ群層/第2の延伸テープ群層/割繊維フィルム層20であり、平面視した場合に、概ね
図1に示す通りの形状を備えるものであった。
【0048】
実施例1〜4は、隣り合う延伸テープの中心間距離が、それぞれ、5mm、10mm、20mm、30mmで、上記第1の仕様の割繊維フィルムを用いた。実施例5は、隣り合う延伸テープの中心間距離が、30mmで、上記第2の仕様の割繊維フィルムを用いた。延伸テープの中心間距離とは、隣り合う延伸テープの幅方向中心間の距離をいう。
【0049】
実施例1〜5の網状積層不織布について、引張試験及びひずみ率の測定を行った。引張試験については、JIS L1096に準拠し、引張強さ及び伸び率を、機械方向(MD)、幅方向(CD)について測定した。試験片幅50mm×チャック間100mmとし、引張速度を、200mm/minとした。一方、斜め強度は、同じく、JIS L1096に準拠し、引張強さ及び伸び率を斜め45℃方向について測定した。試験片幅50mm×チャック間200mmとし、引張速度を、200mm/minとした。
【0050】
ひずみ率については、JIS L1096に準拠し、伸縮織物の伸縮性:伸縮回復率及び残留ひずみ率B−1法にて荷重 5.0N、保持時間1時間とし、荷重を取り除く直前のひずみ率を測定した。ひずみ率は、以下の式により得られる。
ひずみ率=(L
1−L
0)/L
0×100(%)
L
1:定荷重を1時間加えた後の印間の長さ(mm)
L
0:初荷重を加えたときの印間の長さ
【0051】
結果を、表1に示す。実施例1〜5とも、特に、幅方向に大きな伸展性を持ち、延伸テープ間隔や、割繊維フィルムの仕様により、ひずみ率の値を調整可能であることがわかった。
【0052】
【表1】
【0053】
従来、このような特性の不織布が得られたことはなく、特に、従来技術である、ワリフ・クラフ(JX日鉱日石エネルギー(株)登録商標)や、ソフ(積水フィルム(株)登録商標)の利点に加えて、さらに、幅方向に伸展性を付与することができた。